みなさんこんにちは!話題のネオワイズ彗星、ごらんになれましたか?幸運にも長い尾を引いた「大彗星」の姿を見られた方も、あいにくの梅雨空で悔しい思いをした方も多いことかと思います。
天リフ編集部のある福岡県北部では、幸運にも7月16〜25日までの間で4日間の晴れ間があり、最も明るい期間は逃したものの、彗星の姿を捉えることができました!
それらのリザルトを振り返っていきたいと思います!
来たぞ今世紀最大の大彗星!ネオワイズ彗星(C/2020F3)徹底ガイド
7月中旬までは連敗が続く・・・
アトラス彗星が消滅してしまい空振りに終わってしまったせいもあって、ネオワイズ彗星は静かな立ち上がりでした。6月中はここまで明るくなるとは予想できず、天リフで特集記事を掲載したのが7月11日。主に北海道で素晴らしい映像がゲットされていた頃です。
九州でも晴れ間を狙って何度か出撃したのですが、空振りが続きます。
ちょうどこのころ、九州北部では連日の豪雨で道路がまともでない危険があり、晴れ間を追いかけて遠出するのは自粛。思い切って北海道に飛ぼうかとも思いましたが、タイミングが合わず断念。ネットの連日の大彗星の姿に欲求不満がたまります・・・
7月16日・福岡県宗像市「北斗の水汲み公園」で
はじめてのネオワイズ彗星
7月16日。ようやくwindy.comの予報で福岡県北部海岸地方に晴れ間の可能性が出てきました。昼間は到底晴れそうにない天気だったのですが、予報を信じて出撃。出発予定時間が30分ほど遅れたものの(*)「北斗の水汲み公園」に着いたときには快晴の予感。期待が高まります。
(*)1996年(百武彗星の年)の羽生七冠誕生にも匹敵する、藤井棋聖誕生の瞬間をこの眼で見とどけたかったのですが、涙を飲んで「1997年のへールボップ以来の大彗星」を優先しました^^;
20時15分ごろ(薄明終了50分程前)には、すでに彗星の姿は双眼鏡で確認できるくらいになっていたようです。この画像は20時39分ごろ。このころには薄明の空に尾を引く彗星の姿がはっきりと双眼鏡で確認できるようになっていました。
「ウエスト彗星よりはずっと暗いけど、コホーテクよりは明るいぞ!」子供の頃に見た彗星の記憶を引っ張り出しながら、薄明の空の中「大彗星」を予感させる姿がそこにありました。感無量です。
サンニッパ(300mmF2.8)では長すぎた
実はこの時点でもまだネオワイズ彗星の実力をなめていました。想定した撮影プランは300mmの望遠レンズで彗星全体の姿を、105mmの中望遠で水平線上の彗星の姿を収めようというものでしたが、300mmでは長すぎたようで、ダストテイルがはみ出してしまいました。この画像を見る限りどこに出しても恥ずかしくない大彗星です。
この時点では「たぶん今日が最後でもう晴れることはないだろう」と思っていました。後悔のないように、決めた方法でひたすら撮り続けようと決めていたので、薄明中から21:30ごろまで400枚ほど撮り続けました(*)。
(*)ひとつ前の画像はその中から低空の雲の影響が少なそうな時間帯を選別して処理したものですが、それでもなかなか背景を均一に揃えることができません。ど根性を出して選別して彗星基準・恒星基準でコンポジットすれば、もうすこしマシな画像が得られるかもしれませんが、この後予想に反して翌日も晴れてしまい「ど根性処理」はまだ保留中です^^;;
こちらは薄明中の1枚撮りをあっさり強調したもの。無理矢理な強調よりも、こちらの方が風情があるかもしれません。この路線なら、水平をとった縦位置にすべきでした。
もうひとつ戦術的にミスしたことは、薄明中の露光と同じ条件で最後まで撮り続けたため、後半が露出不足気味になってしまったことでした。海岸の風がかなり強く、ブレを恐れて露出時間を伸ばせなかったこともあるのですが。
条件が刻々変わってゆく薄明中の彗星撮影では「コンポジットしようとは思わずに1枚撮りで完結させる」「毎コマ毎に露出時間を調整する」方針の方がよかったのかもしれません。
低空の薄雲に負けない大彗星の姿
この日は赤道儀を1セットしか持ち出さなかったので、300mm望遠レンズ以外は固定撮影です。「彗星は明るいだろうから固定撮影でもなんとかなるだろう」「尾の長さの予測がつかなかったので状況に応じて焦点距離を変えて撮ることになるだろう」という読みです。
今画像を見返すと「もっといろいろ撮っておけよ」と思うのですが^^;; まあ薄明と低い地平高度との闘いの中、眼視でもしっかり見ておきたかったのでまあ仕方ないでしょう。
上の画像は薄明も終わり、105mmの中望遠でも彗星と水平線が収まる時間帯。1枚撮りですが立派な彗星の姿です。
固定撮影ですが、彗星と地上を別々にコンポジット。強く強調すると長いイオンテールも出てきました。しかし、当日感じた以上に低空には薄雲が漂っていたようです。夕焼けが残る時間帯に縦位置にして撮るべきでしたね^^;;
こちらは夕焼けがほんの少し残る時間帯。手前は328で撮影中のSWAT-310赤道儀です。右下の強い光は漁船。この季節、玄界灘ではイカ漁が盛んで、こんな状況になることがよくあります。織り込み済みとはいえ、もう少し控えめならよかったのですが。
【連載】最強!赤道儀伝説(2)・SWAT-310
一連のネオワイズ彗星の撮影では、SWAT-310赤道儀が大活躍しフル出動しました。時間との勝負になる彗星撮影、特に導入に不自由しない「大彗星」なら、シンプルな恒星時駆動赤道儀が最適。極軸合わせも割り切って、覗き穴のみで合わせました。短秒多数枚ならさほど(*)?問題にはなりません。
(*)実際のところ、縞ノイズには悩まされましたが、極軸を正確に合わせても機材のたわみで縞ノイズは出てしまいます。ディザリングまで行うなら、自動導入赤道儀にASI AIRやステラショットの組み合わせの方が良い結果を得られるかもしれません。ただし正解はなく、臨機応変なチョイスが重要でしょう。
スマホでも撮れた!
スマホでも撮ってみました。iPhone11の標準カメラアプリは、低照度環境では1秒間ほど連写しカメラ内でコンポジットするモードになります。ザラザラですが、彗星の尾がはっきり写っています。「2等級の彗星なら、スマホでも写せる」といえそうです。次の大彗星が来るときにはカメラの性能がさらに進化して、もっとキレイに撮れるようになるでしょう。今回以上であろうSNSでの「彗星祭り」が楽しみですね。
双眼鏡の威力
20年ぶりの大彗星ですから、この眼でしかと見とどけようと眼視も重視しました。多くの方が書かれていますが、(大)彗星観察に最適なアイテムはなんといっても双眼鏡。今回は賞月観星のプリンスUWA 7倍35mmを持参しました。
上の画像は薄明終了30分以上前ですが、眼視のイメージに合わせて調整しました。肉眼では彗星の姿を見つけるのは無理な条件であっても、双眼鏡ならはっきりと尾の姿をみることができました。薄明の明るさと色が刻一刻と変わる中、双眼鏡で見る彗星の姿には素晴らしいものがあります。広視野タイプの7×35mmのチョイスも大正解です。大彗星には低倍率・広視野の双眼鏡。これは改めて歴史に刻んでおくべき真実だと実感しました^^
核の輝き
より倍率の高い天体望遠鏡で見る彗星の姿も、また別の美しさがあります。眼視専用部隊にはSVBONYの「SV503(口径80mmF7)」を配置。ペンタックスのXW-20を装着して28倍。
より高倍率で見る彗星の白眉は、なんといっても輝く核と青緑色のコマです。上の画像はこの日に328で撮影した画像を眼視の印象をもとに加工したものですが、イオンテイルは盛っているものの(*)それ以外はまさにこの通りのイメージです。そして、キラキラと輝く核の美しさはこの画像では伝わりません。4等級クラスの肉眼彗星と、1等級に迫る大彗星の迫力の差は、核の輝きであると断言してもよいのではないでしょうか。
(*)イオンテールは「そらし目」で見るとなんとなくあるような?ないような?という感じでした。
タイムラプスは大失敗^^;;
3台目のカメラではひたすらタイムラプスを撮影していたのですが、こちらは6月の部分日食(*)に続いて大失敗。なんだよ、この構図(^^;;;。もう少し左に振らないと・・・水平も取れてないし(大汗)。
(*)Twitterでは「これを糧にします」と書いているのに^^;; 「糧にします」という日本語がおかしかったのが敗因?
仮に構図がしっかり合わせられていたとしても、北斗七星が目立たなさすぎですね。彗星のディテールが失われるのを恐れてソフトフィルターを使わなかったのですが「プロソフトンクリア」を使うべきでした(*)。
(*)翌日以降にフィルター有無の比較を撮影しましたが、ネオワイズ級の彗星ならディテール喪失はあまり心配しなくても良さそうです。
仕方ないので、トリミングして間引きした後、比較明合成。彗星が沈んでいくさまがわかってまあいっか^^;
ちなみに、北海道ではネオワイズ彗星は一時期「一晩中沈むことのない」周極星となりました。星ナビ9月号に素晴らしい連続写真が掲載されています。
7月17日・「北斗の水汲み公園」再び
2日連続の出撃
なんと翌17日も好天の気配。あんな大彗星の姿を一度見てしまったら、もういても立ってもいられません。可能ならもっと街灯り(漁り火灯り)の影響の少ない場所に行きたかったのですが、天気予報的には山間部は良くなく、昨日同様玄界灘・響灘沿岸が好天の予報。そこで昨夜と同じ「北斗の水汲み公園」に連チャンすることに決定。
少し余裕を持って早めの時刻に到着。予定では最近導入したジンバルMOZA AirCross2で彗星フィーバーの風景を撮るつもりだったのですが、まだ慣れておらず実際に試してみると暗所ではなかなか思うようになりません(*)。
(*)暗所では絞りをできるだけ開けたいのですが、焦点深度が浅くなってピント合わせに難儀します。AFが使えるカメラが欲しい・・・ということでα7SIIIを検討中です。
そこであっさり方針変更。昨夜の反省を生かし、夕焼け空の彗星と長く伸びたテールを、105mmで視野いっぱいに撮ろうという魂胆。
夕焼けとネオワイズ彗星
昨日撮り逃した夕焼け空のネオワイズ彗星をリベンジ。おめでとう、狙い通りです!あえていえば、105mmじゃなくて85mmが最適でしたね。昨夜も同じようなイメージを見ているのだから学習しろよと自分に言いたい^^;;;
こちらは、地平高度が低くなってから。こんなに低いのに、こんなに明るくて立派な尾。昨日よりも透明度が良く、肉眼でも長い尾がはっきりと見えていました。
この日北海道に遠征中だった「福島の分子雲の巨匠」と「和歌山の変態レジェンド」が撮影された画像によると、イオンテールがなんと北極星を通り越して天頂まで伸びていたそうです。ほんと彗星はどう化けるかわかりませんね。その逆ももちろんあるのですが・・・
105mmでもまだ長すぎた
105mmのガチ撮りリザルト。長く伸びた青いイオンテイル、いくつもの筋状のストリーエ(シンクロニックバンド)が刻まれたダストテイル。ネットでは1976年のウエスト彗星に似た風貌であるとの声を多く聞きました。高感度のカメラとデジタル画像処理の力を借りているとはいえ、忘れられない姿です。
水平線上の北斗とネオワイズ彗星
北斗七星とネオワイズ彗星の2ショットも撮りたいテーマだったのですが、彗星が低すぎてちょっと迫力不足でした。昨日の反省を生かして、ソフトフィルター(プロソフトンクリア)を入れています。
こちらの画像は近日別記事にまとめる予定ですが、ソフトフィルターの有無による比較。ソフトフィルターありの場合、若干彗星の姿は弱まりますが「プロソフトンクリア」なら十分妥協可能な範囲ですね。
次は20年後?
「大彗星」の情報は一般の人にも拡散していたようで、準備をしているときに何組かの一般の方に声をかけられました。「見える?」「うん、ぼんやりしてしっぽがある!」「次に見えるのは何年後かな?」「20年後?」「そのときはもうすっかりオトナだね」
マスコミでは「次は5000年後」みたいなテンプレートが流布していますが、「自分が見られる次の大彗星がいつなのか」は誰にもわかりません。前回の大彗星へールボップから23年。あと20年くらい待てばきっと次の大彗星が見られるはずです(*)。
(*)史上最高の条件と言われた1910年のハレー彗星の際は、その直前にも別の大彗星が現れたそうです。大彗星の出現は気まぐれ。今年の後半に大彗星が現れても不思議ではありません。
7月21日・山口県下関市「厚島展望公園」で
長焦点でディテールにチャレンジ
実はその翌日18日も晴れ間があったようなのですが、体力がもたず休養。雨の日をはさんで21日、今回も同じパターンで玄界灘・響灘周辺にチャンスあり。この日はもう少し暗い空で彗星が見たくて、本州の西端、下関まで遠征。
今回の狙いは「仕事(作例撮り)」です^^;; 借用レビュー中のSVBONY社のSV503で彗星を撮ろうという魂胆です。
オトナの天文趣味入門に最適・SVBONY SV503天体望遠鏡(1)外観編
焦点距離560mmだと完全にはみ出すことは目に見えているのですが、頭部のコマの微細構造とイオンテイルの微妙な拡散の様子がどこまで写るかにチャレンジ。青緑色のコマが彗星らしくて美しいですね。しかし、彗星の移動が速く、上の恒星基準のコンポジットではディテールが消えてしまいます。
こちらは彗星核基準でコンポジット。ダストテールのストリーエ(シンクロニックバンド)も、イオンテイルの複雑な吹き出しの様子も出てきました。大彗星はどんな焦点距離で撮っても面白い。次回の大彗星に備えて、全ての天文ファンにこの役に立たない?アドバイスを贈ります^^
肉眼でも見えた長い尾
日に日に地平高度を上げてきたネオワイズ彗星。彗星は暗くなる一方ですが、より条件は良くなり、前回よりもさらに長い尾を肉眼でも見ることができました。上の画像は、同じ場所でお会いした地元の野鳥愛好家ご一行。ふだんは意識して星を見ることはないそうですが、ネットでの騒ぎを見て駆けつけられたそうです。
こちらは同行させていただいた、天界を支える漢・北九州のKさん。この撮影ポイントはKさんのリコメンドです。
北斗七星とネオワイズ彗星
悲願の北斗七星コラボも、若干ネオワイズの勢いが改善^^ 上の画像は1枚撮りですが、もっと多数枚撮っておくべきでした^^
「スターリンク」襲来!
撮影中に「スターリンク衛星」の襲来がありました。上の画像は105mmでの撮影ですが、見事な平行線が写り込んでいます(*)。
(*)逆にこの程度であれば「多数枚撮影なら」コンポジットの際に「σクリッピング」で行えば消えてくれます。でも1枚撮りなら取り返しがつきません。写真撮影におけるスターリンクの影響は、撮影や画像処理の方法でまったく異なってきます。
105mmでの多数枚撮影画像をコンポジットしたもの。イオンテール・ダストテールともに過去3回の撮影の中では最高。今回のネオワイズ彗星は「超凄い」から「しょぼい」まで、見る人によって大きな評価の差があります。その違いの大半は空の条件の差によるものでしょう。
1997年のへール・ボップ彗星は、核の光度がマイナス等級あり、市街地で一般の人にも「自然と目に留まる」クラスでしたが、1等〜2等クラスの彗星の場合、やはり空の暗さによる差が非常に大きかったようです(*)。
(*)大彗星到来の際に、一般の人に対して「街中からも見えますよ!」とアウトリーチするのがいいのか、「感動的な大彗星はぜひ空の暗い場所で見てみましょう!」とするのがいいのか、これからも悩みどころになりそうです。前者は常に必要だと思うのですが、やはり暗い空で大きな感動も味わってほしい気がします。次回は意識して「両方」プロパガンダしようと思っています。
木星・土星と天の川
ふだんなら今の季節、天文ファンは南の空の天の川ばかり見ているはずなのですが、今回ばかりはひたすら北西の空^^ ネオワイズ3回目にしてようやく天の川を撮りました^^ 木星と土星が天の川の左で接近中。今回の撮影ポイントは南天がごらんのように山で隠れてしまうため「こんな時くらいしか使わない」そうです^^
7月25日・福岡県糸島市「二見浦」で
海辺の彗星・漁り火の中で
ひたすら天気の良くなかった地方の方には申し訳ない気持ちなのですが、さらに晴れの日が訪れました。4日後の7月25日、福岡西部の糸島方面に出撃。上の画像の左にあるのは月齢4の月。この月が日々太く明るくなってくるので、ネオワイズ彗星の「大彗星」としての見ごろは、これがほぼ最後かもしれません。
この日の彗星の明るさは3等〜4等ほどだったでしょうか。あいにく玄界灘にはいつも以上のイカ漁船の灯りが。それでも、彗星の地平高度もそこそこ高く、双眼鏡で見れば彗星の尾は楽勝。日々遠ざかっていく彗星の姿を追い続けるのも、なかなか味わい深いものがあると感じました。
一点狙い・北斗七星とネオワイズ彗星
この日のテーマはこれ一点。北斗七星に負けないネオワイズ彗星の姿を撮ることです。上の画像は、あの手この手で北斗七星もネオワイズ彗星も強調したもの。彗星はこの日105mmレンズで撮影した画像を比較明で貼り込みました。科学写真としてはあり得ない、鑑賞写真としても微妙なラインですが、こんな姿を見たかった。これで思い残すことはありません^^
大火球ひしゃくを貫き、大彗星飛び出づる。
さらに驚愕のオマケが。大火球が撮影中に飛び込んできました。九州各地でこの火球は目撃されたようです。実はこのときもう撤収準備に入っていて、機材を順に片付けて車に積み込んでいるところでした。こんなに明るい火球だったのに(*)、流れたことさえ気づかずにいました。残念。この眼で見たかった^^
(*)流星が写り込んだ次のコマをチェックしても流星痕がまったく確認できませんでした。こんなに明るかったのに、なぜなのでしょうか。
合成なしの1枚画像がこちら。彗星も写ってはいるのですが、北斗七星と比べるとちょっと(かなり)寂しい^^;;何より火球明るすぎ^^ 控えめにみてもマイナス7等級はあったのではないでしょうか。こんな明るい火球が撮れたのは初めてです。一生分のツキを使い切りました^^;;
最後のご褒美・沈む月の美しさ
さらにご褒美がありました。火球の興奮がさめやらぬ中、西空に目を向けると月がムーンロードの向こうに。彗星や火球のような「珍しい天文現象」とは違って、月は毎月・毎日、東の空から昇って西の空にしずんでゆく「日常」の現象です。しかし、その美しさは彗星にも火球にもまったく見劣りしません。
星見の中でこんな風景に出会えると、天文趣味をやっていてほんとうに良かったといつも思います。
まとめ
いかがでしたか?
記事執筆時点(8/2)では、ネオワイズ彗星の光度は5等近くにまで暗くなり、ダストの尾もおとなしくなって「普通の肉眼彗星」になっています。ようやく各地で梅雨が明けたものの8/4の満月を過ぎるまでは一休みといったところでしょうか。8月中旬頃まではまだ明るさを保っているでしょうから、長焦点での良い対象となるでしょう。
筆者にとっては1997年のへール・ボップ彗星以来(*)の「大彗星」。忘れられぬ思い出になりました。次の大彗星が何年先になるかはわかりませんが、次はもっと万全の準備と緊急出撃の心の準備をして臨みたいと思います!
(*)実はこの時天文活動休止中で、彗星の到来のことは全く知らなかったのですが、旅行先でたまたま西空を見たら、そこに大彗星がありました。こんな体験は間違いなく二度とできないでしょう^^
それでは皆様のご武運をお祈りしております。また次回お会いしましょう!
機材協力:
https://reflexions.jp/tenref/orig/2020/08/02/11389/https://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2020/08/fc6927a4cd7fc6f068de9eb5d3ae4aff-1024x538.jpghttps://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2020/08/fc6927a4cd7fc6f068de9eb5d3ae4aff-150x150.jpg編集部実践・天体写真撮影記天文現象みなさんこんにちは!話題のネオワイズ彗星、ごらんになれましたか?幸運にも長い尾を引いた「大彗星」の姿を見られた方も、あいにくの梅雨空で悔しい思いをした方も多いことかと思います。
天リフ編集部のある福岡県北部では、幸運にも7月16〜25日までの間で4日間の晴れ間があり、最も明るい期間は逃したものの、彗星の姿を捉えることができました!
それらのリザルトを振り返っていきたいと思います!
https://reflexions.jp/tenref/navi/know/starguide/10617/
7月中旬までは連敗が続く・・・
アトラス彗星が消滅してしまい空振りに終わってしまったせいもあって、ネオワイズ彗星は静かな立ち上がりでした。6月中はここまで明るくなるとは予想できず、天リフで特集記事を掲載したのが7月11日。主に北海道で素晴らしい映像がゲットされていた頃です。
九州でも晴れ間を狙って何度か出撃したのですが、空振りが続きます。
ちょうどこのころ、九州北部では連日の豪雨で道路がまともでない危険があり、晴れ間を追いかけて遠出するのは自粛。思い切って北海道に飛ぼうかとも思いましたが、タイミングが合わず断念。ネットの連日の大彗星の姿に欲求不満がたまります・・・
7月16日・福岡県宗像市「北斗の水汲み公園」で
はじめてのネオワイズ彗星
7月16日。ようやくwindy.comの予報で福岡県北部海岸地方に晴れ間の可能性が出てきました。昼間は到底晴れそうにない天気だったのですが、予報を信じて出撃。出発予定時間が30分ほど遅れたものの(*)「北斗の水汲み公園」に着いたときには快晴の予感。期待が高まります。
(*)1996年(百武彗星の年)の羽生七冠誕生にも匹敵する、藤井棋聖誕生の瞬間をこの眼で見とどけたかったのですが、涙を飲んで「1997年のへールボップ以来の大彗星」を優先しました^^;
20時15分ごろ(薄明終了50分程前)には、すでに彗星の姿は双眼鏡で確認できるくらいになっていたようです。この画像は20時39分ごろ。このころには薄明の空に尾を引く彗星の姿がはっきりと双眼鏡で確認できるようになっていました。
「ウエスト彗星よりはずっと暗いけど、コホーテクよりは明るいぞ!」子供の頃に見た彗星の記憶を引っ張り出しながら、薄明の空の中「大彗星」を予感させる姿がそこにありました。感無量です。
サンニッパ(300mmF2.8)では長すぎた
実はこの時点でもまだネオワイズ彗星の実力をなめていました。想定した撮影プランは300mmの望遠レンズで彗星全体の姿を、105mmの中望遠で水平線上の彗星の姿を収めようというものでしたが、300mmでは長すぎたようで、ダストテイルがはみ出してしまいました。この画像を見る限りどこに出しても恥ずかしくない大彗星です。
この時点では「たぶん今日が最後でもう晴れることはないだろう」と思っていました。後悔のないように、決めた方法でひたすら撮り続けようと決めていたので、薄明中から21:30ごろまで400枚ほど撮り続けました(*)。
(*)ひとつ前の画像はその中から低空の雲の影響が少なそうな時間帯を選別して処理したものですが、それでもなかなか背景を均一に揃えることができません。ど根性を出して選別して彗星基準・恒星基準でコンポジットすれば、もうすこしマシな画像が得られるかもしれませんが、この後予想に反して翌日も晴れてしまい「ど根性処理」はまだ保留中です^^;;
こちらは薄明中の1枚撮りをあっさり強調したもの。無理矢理な強調よりも、こちらの方が風情があるかもしれません。この路線なら、水平をとった縦位置にすべきでした。
もうひとつ戦術的にミスしたことは、薄明中の露光と同じ条件で最後まで撮り続けたため、後半が露出不足気味になってしまったことでした。海岸の風がかなり強く、ブレを恐れて露出時間を伸ばせなかったこともあるのですが。
条件が刻々変わってゆく薄明中の彗星撮影では「コンポジットしようとは思わずに1枚撮りで完結させる」「毎コマ毎に露出時間を調整する」方針の方がよかったのかもしれません。
低空の薄雲に負けない大彗星の姿
この日は赤道儀を1セットしか持ち出さなかったので、300mm望遠レンズ以外は固定撮影です。「彗星は明るいだろうから固定撮影でもなんとかなるだろう」「尾の長さの予測がつかなかったので状況に応じて焦点距離を変えて撮ることになるだろう」という読みです。
今画像を見返すと「もっといろいろ撮っておけよ」と思うのですが^^;; まあ薄明と低い地平高度との闘いの中、眼視でもしっかり見ておきたかったのでまあ仕方ないでしょう。
上の画像は薄明も終わり、105mmの中望遠でも彗星と水平線が収まる時間帯。1枚撮りですが立派な彗星の姿です。
固定撮影ですが、彗星と地上を別々にコンポジット。強く強調すると長いイオンテールも出てきました。しかし、当日感じた以上に低空には薄雲が漂っていたようです。夕焼けが残る時間帯に縦位置にして撮るべきでしたね^^;;
こちらは夕焼けがほんの少し残る時間帯。手前は328で撮影中のSWAT-310赤道儀です。右下の強い光は漁船。この季節、玄界灘ではイカ漁が盛んで、こんな状況になることがよくあります。織り込み済みとはいえ、もう少し控えめならよかったのですが。
https://reflexions.jp/tenref/orig/2019/08/23/9283/
一連のネオワイズ彗星の撮影では、SWAT-310赤道儀が大活躍しフル出動しました。時間との勝負になる彗星撮影、特に導入に不自由しない「大彗星」なら、シンプルな恒星時駆動赤道儀が最適。極軸合わせも割り切って、覗き穴のみで合わせました。短秒多数枚ならさほど(*)?問題にはなりません。
(*)実際のところ、縞ノイズには悩まされましたが、極軸を正確に合わせても機材のたわみで縞ノイズは出てしまいます。ディザリングまで行うなら、自動導入赤道儀にASI AIRやステラショットの組み合わせの方が良い結果を得られるかもしれません。ただし正解はなく、臨機応変なチョイスが重要でしょう。
スマホでも撮れた!
スマホでも撮ってみました。iPhone11の標準カメラアプリは、低照度環境では1秒間ほど連写しカメラ内でコンポジットするモードになります。ザラザラですが、彗星の尾がはっきり写っています。「2等級の彗星なら、スマホでも写せる」といえそうです。次の大彗星が来るときにはカメラの性能がさらに進化して、もっとキレイに撮れるようになるでしょう。今回以上であろうSNSでの「彗星祭り」が楽しみですね。
双眼鏡の威力
20年ぶりの大彗星ですから、この眼でしかと見とどけようと眼視も重視しました。多くの方が書かれていますが、(大)彗星観察に最適なアイテムはなんといっても双眼鏡。今回は賞月観星のプリンスUWA 7倍35mmを持参しました。
上の画像は薄明終了30分以上前ですが、眼視のイメージに合わせて調整しました。肉眼では彗星の姿を見つけるのは無理な条件であっても、双眼鏡ならはっきりと尾の姿をみることができました。薄明の明るさと色が刻一刻と変わる中、双眼鏡で見る彗星の姿には素晴らしいものがあります。広視野タイプの7×35mmのチョイスも大正解です。大彗星には低倍率・広視野の双眼鏡。これは改めて歴史に刻んでおくべき真実だと実感しました^^
核の輝き
より倍率の高い天体望遠鏡で見る彗星の姿も、また別の美しさがあります。眼視専用部隊にはSVBONYの「SV503(口径80mmF7)」を配置。ペンタックスのXW-20を装着して28倍。
より高倍率で見る彗星の白眉は、なんといっても輝く核と青緑色のコマです。上の画像はこの日に328で撮影した画像を眼視の印象をもとに加工したものですが、イオンテイルは盛っているものの(*)それ以外はまさにこの通りのイメージです。そして、キラキラと輝く核の美しさはこの画像では伝わりません。4等級クラスの肉眼彗星と、1等級に迫る大彗星の迫力の差は、核の輝きであると断言してもよいのではないでしょうか。
(*)イオンテールは「そらし目」で見るとなんとなくあるような?ないような?という感じでした。
タイムラプスは大失敗^^;;
3台目のカメラではひたすらタイムラプスを撮影していたのですが、こちらは6月の部分日食(*)に続いて大失敗。なんだよ、この構図(^^;;;。もう少し左に振らないと・・・水平も取れてないし(大汗)。
(*)Twitterでは「これを糧にします」と書いているのに^^;; 「糧にします」という日本語がおかしかったのが敗因?
仮に構図がしっかり合わせられていたとしても、北斗七星が目立たなさすぎですね。彗星のディテールが失われるのを恐れてソフトフィルターを使わなかったのですが「プロソフトンクリア」を使うべきでした(*)。
(*)翌日以降にフィルター有無の比較を撮影しましたが、ネオワイズ級の彗星ならディテール喪失はあまり心配しなくても良さそうです。
仕方ないので、トリミングして間引きした後、比較明合成。彗星が沈んでいくさまがわかってまあいっか^^;
ちなみに、北海道ではネオワイズ彗星は一時期「一晩中沈むことのない」周極星となりました。星ナビ9月号に素晴らしい連続写真が掲載されています。
7月17日・「北斗の水汲み公園」再び
2日連続の出撃
なんと翌17日も好天の気配。あんな大彗星の姿を一度見てしまったら、もういても立ってもいられません。可能ならもっと街灯り(漁り火灯り)の影響の少ない場所に行きたかったのですが、天気予報的には山間部は良くなく、昨日同様玄界灘・響灘沿岸が好天の予報。そこで昨夜と同じ「北斗の水汲み公園」に連チャンすることに決定。
少し余裕を持って早めの時刻に到着。予定では最近導入したジンバルMOZA AirCross2で彗星フィーバーの風景を撮るつもりだったのですが、まだ慣れておらず実際に試してみると暗所ではなかなか思うようになりません(*)。
(*)暗所では絞りをできるだけ開けたいのですが、焦点深度が浅くなってピント合わせに難儀します。AFが使えるカメラが欲しい・・・ということでα7SIIIを検討中です。
そこであっさり方針変更。昨夜の反省を生かし、夕焼け空の彗星と長く伸びたテールを、105mmで視野いっぱいに撮ろうという魂胆。
夕焼けとネオワイズ彗星
昨日撮り逃した夕焼け空のネオワイズ彗星をリベンジ。おめでとう、狙い通りです!あえていえば、105mmじゃなくて85mmが最適でしたね。昨夜も同じようなイメージを見ているのだから学習しろよと自分に言いたい^^;;;
こちらは、地平高度が低くなってから。こんなに低いのに、こんなに明るくて立派な尾。昨日よりも透明度が良く、肉眼でも長い尾がはっきりと見えていました。
この日北海道に遠征中だった「福島の分子雲の巨匠」と「和歌山の変態レジェンド」が撮影された画像によると、イオンテールがなんと北極星を通り越して天頂まで伸びていたそうです。ほんと彗星はどう化けるかわかりませんね。その逆ももちろんあるのですが・・・
105mmでもまだ長すぎた
105mmのガチ撮りリザルト。長く伸びた青いイオンテイル、いくつもの筋状のストリーエ(シンクロニックバンド)が刻まれたダストテイル。ネットでは1976年のウエスト彗星に似た風貌であるとの声を多く聞きました。高感度のカメラとデジタル画像処理の力を借りているとはいえ、忘れられない姿です。
水平線上の北斗とネオワイズ彗星
北斗七星とネオワイズ彗星の2ショットも撮りたいテーマだったのですが、彗星が低すぎてちょっと迫力不足でした。昨日の反省を生かして、ソフトフィルター(プロソフトンクリア)を入れています。
こちらの画像は近日別記事にまとめる予定ですが、ソフトフィルターの有無による比較。ソフトフィルターありの場合、若干彗星の姿は弱まりますが「プロソフトンクリア」なら十分妥協可能な範囲ですね。
次は20年後?
「大彗星」の情報は一般の人にも拡散していたようで、準備をしているときに何組かの一般の方に声をかけられました。「見える?」「うん、ぼんやりしてしっぽがある!」「次に見えるのは何年後かな?」「20年後?」「そのときはもうすっかりオトナだね」
マスコミでは「次は5000年後」みたいなテンプレートが流布していますが、「自分が見られる次の大彗星がいつなのか」は誰にもわかりません。前回の大彗星へールボップから23年。あと20年くらい待てばきっと次の大彗星が見られるはずです(*)。
(*)史上最高の条件と言われた1910年のハレー彗星の際は、その直前にも別の大彗星が現れたそうです。大彗星の出現は気まぐれ。今年の後半に大彗星が現れても不思議ではありません。
7月21日・山口県下関市「厚島展望公園」で
長焦点でディテールにチャレンジ
実はその翌日18日も晴れ間があったようなのですが、体力がもたず休養。雨の日をはさんで21日、今回も同じパターンで玄界灘・響灘周辺にチャンスあり。この日はもう少し暗い空で彗星が見たくて、本州の西端、下関まで遠征。
今回の狙いは「仕事(作例撮り)」です^^;; 借用レビュー中のSVBONY社のSV503で彗星を撮ろうという魂胆です。
https://reflexions.jp/tenref/navi/goods/telescope/10643/
焦点距離560mmだと完全にはみ出すことは目に見えているのですが、頭部のコマの微細構造とイオンテイルの微妙な拡散の様子がどこまで写るかにチャレンジ。青緑色のコマが彗星らしくて美しいですね。しかし、彗星の移動が速く、上の恒星基準のコンポジットではディテールが消えてしまいます。
こちらは彗星核基準でコンポジット。ダストテールのストリーエ(シンクロニックバンド)も、イオンテイルの複雑な吹き出しの様子も出てきました。大彗星はどんな焦点距離で撮っても面白い。次回の大彗星に備えて、全ての天文ファンにこの役に立たない?アドバイスを贈ります^^
肉眼でも見えた長い尾
日に日に地平高度を上げてきたネオワイズ彗星。彗星は暗くなる一方ですが、より条件は良くなり、前回よりもさらに長い尾を肉眼でも見ることができました。上の画像は、同じ場所でお会いした地元の野鳥愛好家ご一行。ふだんは意識して星を見ることはないそうですが、ネットでの騒ぎを見て駆けつけられたそうです。
こちらは同行させていただいた、天界を支える漢・北九州のKさん。この撮影ポイントはKさんのリコメンドです。
北斗七星とネオワイズ彗星
悲願の北斗七星コラボも、若干ネオワイズの勢いが改善^^ 上の画像は1枚撮りですが、もっと多数枚撮っておくべきでした^^
「スターリンク」襲来!
撮影中に「スターリンク衛星」の襲来がありました。上の画像は105mmでの撮影ですが、見事な平行線が写り込んでいます(*)。
(*)逆にこの程度であれば「多数枚撮影なら」コンポジットの際に「σクリッピング」で行えば消えてくれます。でも1枚撮りなら取り返しがつきません。写真撮影におけるスターリンクの影響は、撮影や画像処理の方法でまったく異なってきます。
105mmでの多数枚撮影画像をコンポジットしたもの。イオンテール・ダストテールともに過去3回の撮影の中では最高。今回のネオワイズ彗星は「超凄い」から「しょぼい」まで、見る人によって大きな評価の差があります。その違いの大半は空の条件の差によるものでしょう。
1997年のへール・ボップ彗星は、核の光度がマイナス等級あり、市街地で一般の人にも「自然と目に留まる」クラスでしたが、1等〜2等クラスの彗星の場合、やはり空の暗さによる差が非常に大きかったようです(*)。
(*)大彗星到来の際に、一般の人に対して「街中からも見えますよ!」とアウトリーチするのがいいのか、「感動的な大彗星はぜひ空の暗い場所で見てみましょう!」とするのがいいのか、これからも悩みどころになりそうです。前者は常に必要だと思うのですが、やはり暗い空で大きな感動も味わってほしい気がします。次回は意識して「両方」プロパガンダしようと思っています。
木星・土星と天の川
ふだんなら今の季節、天文ファンは南の空の天の川ばかり見ているはずなのですが、今回ばかりはひたすら北西の空^^ ネオワイズ3回目にしてようやく天の川を撮りました^^ 木星と土星が天の川の左で接近中。今回の撮影ポイントは南天がごらんのように山で隠れてしまうため「こんな時くらいしか使わない」そうです^^
7月25日・福岡県糸島市「二見浦」で
海辺の彗星・漁り火の中で
ひたすら天気の良くなかった地方の方には申し訳ない気持ちなのですが、さらに晴れの日が訪れました。4日後の7月25日、福岡西部の糸島方面に出撃。上の画像の左にあるのは月齢4の月。この月が日々太く明るくなってくるので、ネオワイズ彗星の「大彗星」としての見ごろは、これがほぼ最後かもしれません。
この日の彗星の明るさは3等〜4等ほどだったでしょうか。あいにく玄界灘にはいつも以上のイカ漁船の灯りが。それでも、彗星の地平高度もそこそこ高く、双眼鏡で見れば彗星の尾は楽勝。日々遠ざかっていく彗星の姿を追い続けるのも、なかなか味わい深いものがあると感じました。
一点狙い・北斗七星とネオワイズ彗星
この日のテーマはこれ一点。北斗七星に負けないネオワイズ彗星の姿を撮ることです。上の画像は、あの手この手で北斗七星もネオワイズ彗星も強調したもの。彗星はこの日105mmレンズで撮影した画像を比較明で貼り込みました。科学写真としてはあり得ない、鑑賞写真としても微妙なラインですが、こんな姿を見たかった。これで思い残すことはありません^^
大火球ひしゃくを貫き、大彗星飛び出づる。
さらに驚愕のオマケが。大火球が撮影中に飛び込んできました。九州各地でこの火球は目撃されたようです。実はこのときもう撤収準備に入っていて、機材を順に片付けて車に積み込んでいるところでした。こんなに明るい火球だったのに(*)、流れたことさえ気づかずにいました。残念。この眼で見たかった^^
(*)流星が写り込んだ次のコマをチェックしても流星痕がまったく確認できませんでした。こんなに明るかったのに、なぜなのでしょうか。
合成なしの1枚画像がこちら。彗星も写ってはいるのですが、北斗七星と比べるとちょっと(かなり)寂しい^^;;何より火球明るすぎ^^ 控えめにみてもマイナス7等級はあったのではないでしょうか。こんな明るい火球が撮れたのは初めてです。一生分のツキを使い切りました^^;;
最後のご褒美・沈む月の美しさ
さらにご褒美がありました。火球の興奮がさめやらぬ中、西空に目を向けると月がムーンロードの向こうに。彗星や火球のような「珍しい天文現象」とは違って、月は毎月・毎日、東の空から昇って西の空にしずんでゆく「日常」の現象です。しかし、その美しさは彗星にも火球にもまったく見劣りしません。
星見の中でこんな風景に出会えると、天文趣味をやっていてほんとうに良かったといつも思います。
まとめ
いかがでしたか?
記事執筆時点(8/2)では、ネオワイズ彗星の光度は5等近くにまで暗くなり、ダストの尾もおとなしくなって「普通の肉眼彗星」になっています。ようやく各地で梅雨が明けたものの8/4の満月を過ぎるまでは一休みといったところでしょうか。8月中旬頃まではまだ明るさを保っているでしょうから、長焦点での良い対象となるでしょう。
筆者にとっては1997年のへール・ボップ彗星以来(*)の「大彗星」。忘れられぬ思い出になりました。次の大彗星が何年先になるかはわかりませんが、次はもっと万全の準備と緊急出撃の心の準備をして臨みたいと思います!
(*)実はこの時天文活動休止中で、彗星の到来のことは全く知らなかったのですが、旅行先でたまたま西空を見たら、そこに大彗星がありました。こんな体験は間違いなく二度とできないでしょう^^
それでは皆様のご武運をお祈りしております。また次回お会いしましょう!
機材協力:
SVBONY
賞月観星編集部山口
千宗kojiro7inukai@gmail.comAdministrator天文リフレクションズ編集長です。天リフOriginal
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