みなさんこんにちは!レナード彗星(C/2021 A1)「追っかけ記」後編です!

前編では予想外?に明るくなったレナード彗星の「近地点通過(12月12日)前」の姿をお届けしましたが、後編では近地点通過から近日点通過(1月3日)までの撮影記です。思いがけないアウトバーストの連発もあり、日々姿を変えていくイオンテイルと、2007年のホームズ彗星(17P)を彷彿させるかのような頭部の姿が印象的でした!それでは、さっそくリザルトを振り返っていきましょう!



<前編はこちらから!>

【連載17】実践・天体撮影記・「レナード彗星C/2021 A1追っかけ記」前編

12月22日・バースト!大分県釈迦岳再び

まだまだこれからだったレナード彗星

12月9日の撮影でそこそこ満足してしまい、地平高度が低くなったことも重なって、自分にとってのレナード彗星は「もう終わったつもり」になっていました。12月12日の近地点通過以降は夕方の西の空に回るのですが、上の図のとおり地平高度は相当に低く、日の入り45分後でも10度以下。普通に考えれば「見えても所在確認程度」と思っても仕方ないでしょう。

しかし、ここからレナード彗星は「大化け」してゆくのです。

12月15日に撮影されたレナード彗星。「風船のような不思議な形に変化」とあり、2007年のホームズ彗星17Pを彷彿させるようなバーストの兆候?和歌山の津村光則さんの観測では12月15日に「狭い範囲(5分角)の測定で2.6等」との報告が。

その後も「暗くなった」「まだ明るい!」の情報がネット上を交錯。これはもう何が起きても不思議ではない。晴れたら出撃!の準備で待つことにしました。

釈迦岳、再出撃。

17時15分、日没。地平線のすぐ上には少し雲がありますがまあ大丈夫でしょう。釈迦岳の山頂は東側も海まで視界が開けています。

超低空の彗星を狙うため、今回も標高が高く視界の開けた釈迦岳へ。彗星が見える南東から東南東の方角には、大牟田市・玉名市の街灯りが若干ありますが、30キロほど離れているのでそれほど大きな影響はありません。

左・FSQ106EDにはエクステンダー1.6xを装着し焦点距離850mm、頭部の微細構造を狙います。右・EF300mmF2.8はテイルの全体像用。赤道儀はSWAT-310。駐車場で低空を狙う場合「手すり」の存在がネックになる場合も。

今回の狙いは「バーストしてるかもしれない彗星の頭部の微細構造(850mm)」と、「バーストで吹き出しているかもしれないイオンテイルの複雑な構造(300mm)」です。さらに、3台目のカメラでは105mmの固定撮影で、夕焼け空から沈むまでのタイムラプス。

幸いにも天気は快晴。日没までに機材を組立ててあらかじめフラットを撮影。スマホアプリで北極星のあるはずの場所に当たりをつけて、極軸望遠鏡で北極星を視認、速攻で極軸を合わせてアライメント。主砲は自動導入赤道儀なので導入は一発(*)。

(*)この日のためにスターブックテンの軌道要素ファイルも更新しておきました。ビクセン赤道儀は、彗星を自動導入すると「彗星モード」で追尾してくれます。動きの速い彗星の場合に便利です。

彗星が沈むまでの濃密な時間

18:03、日没後48分経過。FSQ106ED x1.6エクステンダー  850mmF8 α7S UV/IRカットフィルター  ISO800 3.2秒

レナード彗星が「あるはず」の場所に望遠鏡を向けたまま、シャッターを切ります。空がどんどん暗くなってゆき、星が写り始めました。薄明の空の中に淡い彗星の姿を発見!これ、けっこう明るいんじゃないの?!

彗星の尾が横長構図に入るように構図を調整し、18:17から連写開始。天文薄明終了まであと25分。

18:21 天文薄明終了まであと20分。肉眼ではもうかなり空は暗くなっていますが、写真では夕焼けが赤く残っています。EOS5DMarkIII シグマ105mmF1.4Art F2.0 ISO3200 2秒

固定撮影用のEOS5D3でも連写を開始。上の画像は105mmのノートリミングですが、短辺の画角は13度。この時点で彗星の地平高度は約8度ほどでしょうか。低空にもかかわらず彗星の姿は明瞭です。

18:27 FSQ106ED x1.6エクステンダー  850mmF8 α7S UV/IRカットフィルター  ISO6400 20秒

連写中の1コマをトリミング。薄明終了まであと15分ですが、薄明と地平高度の追いかけっこになるため、どの時間帯が一番彗星が良く写るかは、撮ってみないことにはわかりません。20秒露出で1時間ほど撮り続けました。

18:35 EOS5DMarkIII シグマ105mmF1.4Art F2.0 ISO6400 3.2秒

薄明終了10分前。たった15分間で空の明るさも色も大きく変わってゆきます。ここから30分ぐらいが一番彗星が条件良く撮影できたようです。

肉眼ではこうは見えなかったことでしょう。こんな彗星の姿を、その場でリアルタイムで見ることができるのは、デジタル機器の進歩のおかげです。「電視観望」が一番「観望っぽく」楽しめるのは、実は「(大)彗星」ではないでしょうか。

カメラのモニタで再生したところ。マジっすか?!こんな姿の彗星を目にするのは初めてでした。控えめに言ってもけっこう興奮しました!

19:13 右の建物は気象レーダー基地。

3台のカメラで撮影中。彗星が間もなく沈む頃。撮り始めると特にやることもなく、双眼鏡で眺めたり動画を撮ったり。

19:24 FSQ106ED x1.6エクステンダー  850mmF8 α7S UV/IRカットフィルター  ISO6400 20秒

彗星が水平線に吸い込まれる直前、最後のカット。こんなに低くなるともうダメですが、折角なので最後まで連写しました。

リザルト

EOS6D(SEO-SP4) EF300mmF2.8L IS F2.8 20秒35枚 恒星基準合成+彗星基準合成  SWAT-310赤道儀 大分県釈迦岳

まずは恒星基準・彗星基準の合成バージョン。テイルのあぶり出しは控えめ。それでも、イオンテールがいったん途切れた後、こぶこぶのような形で続いているのがわかります。

EOS6D(SEO-SP4) EF300mmF2.8L IS F2.8 20秒58枚 彗星基準合成(σ=1.5)SWAT-310赤道儀 大分県釈迦岳

こちらは彗星基準でσクリップし、強めに強調。このモニョモニョしたイオンテールが一期一会の彗星の醍醐味^^

FSQ106ED x1.6エクステンダー  850mmF8 α7S UV/IRカットフィルター  ISO6400 20秒×60枚 加算平均合成(σ=1.0)

850mmで頭部の拡大。イオンテールが細く筋状に吹き出し、その周りをダストテールが放物線状に弧を描いています。これはバーストで放出されて広がったダストを、後側から見ているためにこのように見えるようです(*)。

(*)某師の解説によると「スカートを斜め下から覗いているようなもの」とのこと。写真ではダストが核の前側にも広がって見えますが、実際には前に出ているわけではないということですね。

FSQ106ED x1.6エクステンダー  850mmF8 α7S UV/IRカットフィルター  ISO6400 20秒×60枚 加算平均合成(σ=1.0)

頭部付近のトリミング。何とも言えない神秘的な姿。これを見られただけでも、遠くまで出かけた甲斐がありました!

この日の撮影については上のショート動画にもまとめています。105mmレンズによるタイムラプス動画など、こちらもぜひごらんください!

12月23日・薄明と光害の中・福岡市地行浜

レンチャン回避で自宅近くで

18:21 彗星の方角はモロに福岡市の市街地。中央右が福岡タワー、その左がヒルトンホテルと福岡ドーム。

翌日23日。好天ではあったのですが、レンチャンは回避して、自宅近くで撮れないかにチャレンジしてみました。超低空なのでだめもと、近赤外ならどこまで写るか?の検証です。撮影地は福岡市・博多湾の海岸。標高は0mです。

18:34 α7S シグマ105mmF1.4Art F2.0 ISO125 1.6秒 固定撮影

まず、RGBブロードバンド、フィルターなしの画像を。低空の光害が酷く、ISO感度を125まで落としても1.6秒が適正露出。彗星どころか、星もほとんど見えていません・・・

近赤外の威力?

18:28 α7S シグマ105mmF1.4Art F2.0 ISO1600 3.2秒 SC72フィルター 固定撮影

光害に強い近赤外ではどうでしょうか。上の画像は「SC72」フィルターを使用しましたが、それでもこの有様。ちょっと歯が立たないレベルです。

それでも、等倍拡大して注意深くチェックすると、彗星が存在することは確認できました。もう少し写ってくれるかと思ったのですが、地平高度が低すぎたようです。

彗星の地平高度が10度を下回るくらいに低くなると、光害の影響を受けやすくなるのももちろんですが、低空の雲や霞の影響も受けやすくなります。その意味では「標高を稼ぐ」ことが大きく効いてくるようです。前日の釈迦岳(1100m)との差を痛感することになりました。

12月28日・フォマルハウトまで伸びる尾・和歌山県串本町

レナード祭り

年末年始は、まさに全国各地(*)でレナード祭り。バーストを繰り返し、活発にテイルを撒き散らす姿を多数の人が追いかける状態に。その盛り上がりは、記事末にもご紹介した「あるぺ」さんのTogetterをぜひごらんください!

(*)冬型の気圧配置となるこの時期、関東平野など太平洋側は好天に恵まれる日が多かったのですが、日本海側は悪天続きだったようです。お天気は仕方のないこととはいえ、彗星が来るのは日本全国で晴天に恵まれる季節であってほしいものです。

南紀へ

この日の撮影ポイントは紀伊大島の海金剛。

で、天リフ編集部ですが、実は虎視眈々とチャンスを伺っていました。出撃先は南紀(*)。冬型の気圧配置が決まったときの南紀は晴天率最強。南は海で空は漆黒。いざ、南紀へ出撃!

(*)筆者の奈良の実家から南紀までは京奈和道〜R168経由で約200km、4時間。なんとこのルートを2往復半することになるとは、この時は夢にも思っていませんでした^^

普通に立ってもこの高さです。すぐ右に低木の茂みがあるため、この高さにしないと極軸望遠鏡の視野に北極星が入りませんでした。

昼間のうちに入念にロケハン。地平高度が低いので、視界を遮るものがないかをチェック。手すりが高い上に、北極星を見るためには三脚をかなり高くする必要がありましたが、いくつかの候補の中から最終的にこの場所をセレクト。地上高を稼げる3段伸縮のカメラ用三脚はこういう場合に便利です。

50mmF1.4 動画から切り出し

長い彗星の尾を捉えるため、レンズはシグマ105mmF1.4Art、赤道儀はSWAT-350を1台のみ(*)。カメラはEOS6Dです。彗星は低いものの、低空まで透明度も良く、長い尾が期待できそう。ネットにはフォマルハウトを越えたところまで尾が伸びている姿がアップされていたこともあり、彗星が沈んだ後も今回はモザイクで尾を狙います。

(*)赤道儀を2台持っていかなかったことが最大の後悔・・・でも設置と撤収は楽になりました^^

リザルト

EOS6D シグマ105mmF1.4Art F2.0 ISO1600 60秒 追尾5枚、固定1枚 SWAT-350赤道儀

ででん!長い尾、キター!!1分5枚ですが、暗く透明な空もあいまって、狙ったとおりに長い尾を撮ることができました!やったね!

上の画像は彗星と星空を追尾撮影し、海上の風景は固定撮影したものを合成しています。この手法だと、彗星をかなり「盛れる」のですが、さすがに彗星が低すぎて追尾フレームを稼げないので「無茶盛り」ではありません(*)。

(*)やりたくてもできない^^;;



こちらが素材画像。中の「固定一枚」と右の「追尾5枚」を、水平線の上のあたりにぼかしマスクをかけて繋ぎました。ごらんの通り、普通に強調はしていますが、カメラの眼では彗星はこのように見えた、といって間違いないでしょう。

口径35mmの双眼鏡でも彗星を見てみました。写真のように長い尾は見えないものの、しっかりとしたコマと尾を確認することができました。

12/28 18:18〜42(JST) EOS6D(天体改造) シグマ105mmF1.4Art F2.0 ISO1600 1分8枚恒星基準コンポジット、2フレームモザイク

もうひとつ。彗星が沈んだ後もさらに先を撮ってみました。なんと、フォマルハウトの先まで尾が伸びています!こっちもヤッタネ!

でも・・これならさらにもう1フレーム撮るべきだったのか・・「一期一会」の彗星の撮影には、いつもこんな後悔と自問自答が・・・まあ、過ぎてしまったものは仕方ない^^(*)

(*)天文ガイド2022年3月号に、津村光則さんのレナード彗星撮影記が掲載されています。この記事読みたさに筆者も購入^^ 

ちなみに、筆者はふだんはデジカメ撮影ではダークは撮りません。多数枚コンポジットする場合はあまり効果を見いだせないからなのですが、枚数を稼げない彗星の撮影の場合は別(*)。少しでも画質を上げられるよう、まじめにダークを撮りました。ダーク減算とフラット補正は、補正後もrawファイルとして出力できる「RStacker」をもっぱら使用しています。

(*)ライトフレームの枚数が少ない=ダークフレームの枚数も少なくて済む、というのもあります。

12月30日・和歌山県太地町

南紀再び

太地町の有名な「東屋」から海岸側に少し降りたところ。

奈良の実家に帰省し、年末をのんびり過ごすつもりだったのですが、ネットの画像を眺めているとムラムラと撮りたい気持ちが・・ここで出撃を回避したら後悔するかもしれない・・・15分ほどぐずぐず悩んだのですが、再出撃を決意。30日の13時ごろに実家を出発し再び南紀へ。17時前には太地町に到着。このエリアは28日に津村さんが撮影された近くで、「大阪のNさん」もいらしていました。

今回は300mmで頭部を撮って、返す刀で105mmでモザイク撮影の構想。海上の雲が取れるかどうか微妙な天気でしたが、幸いにも日が暮れたころには快晴に。

苦い失敗と微妙なリザルト

α7S EF300mmF2.8L IS F2.8 15秒×4枚 ISO3200

しかし・・・この日の撮影は失敗続き。盤石の信頼を置いているSWAT赤道儀なのですが、つまらないミスと仕様の理解不足(*)で、彗星を撮るべき短い時間帯を大きくロスしてしまいました。

(*)SWATは起動する際に「スタンバイモード」となって数十秒間高速駆動するのですが、状況によっては最長「2分」かかることがあります。ところが、構図調整中に電源プラグをひっかけてしまい、スタンバイモードに突入・・動揺してしまって「追尾が始まらない〜」と大あせり。挙げ句の果てに三脚を蹴ってしまって極軸の合わせ直しでさらにロス・・・

上の画像は少ない枚数の中からコンポジットした300mmでのリザルト。実はこの日は「バーストの谷間」だったようで、前々日の28日と比べるとすっかり貧弱な姿に。不幸中の幸いなのか、不幸中の不幸なのか・・・冴えない結果となりました。

EOS6D シグマ105mmF1.4Art F2.0 ISO3200 60秒 8枚  SWAT-350赤道儀

こちらは105mmでの微妙すぎるリザルト。300mmの撮影で手間取ってしまい、105mmに切り替えたときにはレナードはもう沈んでしまっていました・・それでも悔し紛れにフォマルハウトから先を3フレームもモザイクで撮ったのですが、低空に薄雲があったようで酷い色ムラ。かぶり補正する気力を失い、強調ママの画像です^^;;(*)

(*)和歌山方面から「せっかく撮ったんやから、ちゃんとやらなあかんで!」の声が聞こえてきた気がします・・

これでも、なんとなくフォマルハウトの下に「ウネウネイオンテール」が見えてますよね?!

東屋を振り返ったところ。北側は太地町市街の街灯りが若干あるものの、一級品の星空です。

全天写真。南側はほぼ無光害なのですが、低空には赤みを帯びた薄雲が。前々日よりも空の条件はずっとよくなかったようです。

ちなみに、駐車場のすぐ隣には強烈なLED灯があり、駐車場の東側はこのライトに照らされてしまいます。この明かりを避けるような設置が吉でしょう。

熊野本宮大社に立ち寄る

α7SIII 14mmF1.8GM よしみカメラクリップソフトフィルター(Lee No.3) F2.8 ISO6400 30秒

傷心の中撤収し帰還します。折角なので、帰り道の熊野本宮大社で星景撮影。冬型が強まる予報で、山岳性の雲が湧いてきました。

本宮大社は、国道沿いはオレンジの光でライトアップされていますが、大鳥居周辺には灯火はなく、アングルに注意すれば冬の天の川が普通に見えるレベルの星空でした。

α7SIII 14mmF1.8GM よしみカメラクリップソフトフィルター(Lee No.3) F2.8 ISO6400 30秒 2フレームモザイク

あと2つ寝ればお正月の12月30日。人のほとんどいない、新年前の静かな本宮大社でした。

1月3日・和歌山県すさみ町

三たび南紀へ

2022年の新年を迎えて1月3日。三たび南紀へ。今回は津村さんのお誘いですさみへ出撃です。もちろん彗星は狙いますが、朝方のしぶんぎ群までフルコースの星空観望を想定。宿泊はかねてから行ってみたかった「ホテル・ベルヴェデーレ」。

すさみの「名切崎」で。若干低空には雲が残りそうな感じ。すぐ隣に駐車場があり、釣りスポットになっているようです。赤道儀を設置した場所の向こう側は崖状になっていて、その下で釣り人が夜釣りをされていました。

ベルヴェデーレへの宿泊を直前に決めたこともあり、夕食の時間(19時まで!)と彗星の撮影好機の時間が重なってしまうことが発覚。当初想定していた「日本童謡の園公園」だと夕食に間に合わない!そこでいくつか目星を付けていたホテルの近くのスポットをセレクトしました。

雲にいじめられる

18:19 EOS6D(SEO-SP4) シグマ105mmF1.4Art F2.0 ISO1600 30秒 SWAT-350赤道儀

結論から言ってレナード彗星のリザルトは冴えませんでした。上の画像は天文薄明終了(18:31)の12分前。この後すぐレナード彗星は右の雲の中に吸い込まれてしまい、満足なコマ数を稼ぐことはできませんでした。

18:28 EOS6D(SEO-SP4) シグマ105mmF1.4Art F2.0 ISO1600 30秒 SWAT-350赤道儀

時間切れ寸前、かろうじて見えたレナード彗星の頭部。わずか10分の間ですが、写真で撮ると空の色がまったく違っていることがわかります。12/22の釈迦岳の撮影の際は、薄明中でもけっこう撮れるものだと感じたのですが、今回のように薄雲がかかってしまうと強い強調に耐えない画像になり、圧倒的に苦しくなります。薄明にせよ光害にせよ、背景が明るい場合は「空気の透明度と均一性」が重要になることを痛感。

18:28 EOS6D(SEO-SP4) シグマ105mmF1.4Art F2.0 ISO1600 追尾30秒×3枚 固定30秒1枚  SWAT-350赤道儀

彗星が姿を見せたコマ3枚をかき集めて?コンポジット。心眼含み?で見ると尾は結構長いようですが、固定フレームを薄明終了後に撮影しているため、空と地上のカラーバランスが変。空の色が変化することに対応するために、せめて最初に1コマ固定フレームを撮影しておけばよかった(*)。これも次回に生かしたい経験。

(*)SWAT赤道儀を電源OFFで追尾をOFFにすると、追尾に戻す際にスタンバイモードによる時間ロスが発生してしまいます。これを嫌って固定フレームを最後に撮ったのですが、実は「DECモード(Premiumの一部機種のみ対応)」に切り替えれば時間ロスなしで追尾を止められることが後に判明。

2022/2/17追記)DECモードが標準搭載されているのは「現行SWAT-330およびSWAT-350(2020年8月~)」です。SWAT-310は非搭載です。訂正しお詫び申し上げます。

撮影終了は18:31。大急ぎで機材を撤収しベルヴェデーレにとんぼ返り。無事19:00の夕食に間に合いました。

濃密な時間

夕食後、津村さんに合流。すさみの広場では多くの方が撮影や観望にいそしまれていました。Eさんにおでんをごちそうになり(ありがとうございました!)、天文談議に花が咲きます。

津村さんの自作50cmドブ(*)で眼視観望大会。M42や数々のキラキラ星団などを満喫。皆が「おお見える!」とはしゃいでいた馬頭星雲を、自分だけがなかなか確認できなくて凹みますw

(*)このドブは口径50cmクラスでは世界一取り回しの良いドブではないでしょうか。眼視での稼働率を上げるための工夫が随所に凝らされています。

OIIIフィルターでの眼視の印象を再現。

この日の白眉は「ミルクポット星雲」。淡い対象なので「眼視で見えるわけないだろう」と思い込んでいたのですが、津村さん曰く「よう見えるでぇ」。上の図はその印象を写真で再現したものですが、ポットの口の左側の円弧が特に明るく、さしたる苦労もなしに見ることができました。

OIIIフィルターでの眼視の印象を再現。

こちらはトールのかぶと星雲。シャネルのロゴのような形がはっきりわかるのは勿論ですが、時間をかけて見ていると、中心の周りになにやら微細構造がありそうなこと、2つのリングがかなり淡く長く伸びていることがわかってきます。

津村さんの導入の技の高さももちろんあるのですが、津村さんの50cmドブは、背の低い女性でも無理のない姿勢で覗くことができるので、大口径ドブにありがちな「脚立の上り下り」がありません。複数人数でもサクサクと天体を見てゆくことができ、数多くの天体を楽しむことができました。津村さん、ありがとうございました!

しぶんぎ群

23時ごろにいったんホテルに戻って仮眠。4時ごろに再び起き出して、今度は「しぶんぎ座流星群」です。

月明かりもなく、極大予想時刻も理想的な条件でしたが、体感的にはあまり流れませんでした^^; それでも、動画では約30個ほどの流星が写っています。上のショート動画もぜひごらんください!

しぶんぎ群 新年早々 初さそり。

そして夜明け。東の空にはアンタレスが昇ってきました。レナード彗星を熱く追いかけたシーズンが終わり、2022年のはじまりです。本年も天文リフレクションズをよろしくお願い申し上げます!

まとめ

「ホテル・ベルヴェデーレ」は天文ファンへの活動を広くサポートされています。「星の見える展望デッキ」は常連の天文ファンが実現に協力されたそう。ホテルには、津村さんや大阪あすとろぐらふぃ〜迷人会のメンバーの写真や星空ガイドが展示されています。

いかがでしたか?

約一ヵ月強の期間でしたが、大小合わせて合計9回の出撃。筆者的には、一昨年のネオワイズ彗星を上回る熱量で追いかけた彗星となりました。決して「大彗星」ではありませんでしたが、これまでの天文ライフの中で最も思い出深い彗星になったように思います。

さて。そして次ですよ。今回のレナード彗星を上回る熱量で楽しめる「大彗星」が、あまり遠くない将来にやってくることを楽しみに待ちたいと思います!

それでは皆様のご武運をお祈りしております。また次回お会いしましょう!

参考リンク

「あるぺ☆」さんのtogetterまとめ

Twitter界隈でのレナード彗星の秀逸なまとめ。前半・後半に分けて、主だった撮影・眼視の記録から国立天文台や天文雑誌・サイトまで、膨大な情報が時系列に網羅されている労作です。

こちらは後編です!


機材協力:

https://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2022/02/d5414a1a1542761d63b035191628dbde-1-1024x538.jpghttps://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2022/02/d5414a1a1542761d63b035191628dbde-1-150x150.jpg編集部実践・天体写真撮影記天文現象  みなさんこんにちは!レナード彗星(C/2021 A1)「追っかけ記」後編です! 前編では予想外?に明るくなったレナード彗星の「近地点通過(12月12日)前」の姿をお届けしましたが、後編では近地点通過から近日点通過(1月3日)までの撮影記です。思いがけないアウトバーストの連発もあり、日々姿を変えていくイオンテイルと、2007年のホームズ彗星(17P)を彷彿させるかのような頭部の姿が印象的でした!それでは、さっそくリザルトを振り返っていきましょう! <前編はこちらから!> https://reflexions.jp/tenref/orig/2022/02/13/13415/ 12月22日・バースト!大分県釈迦岳再び まだまだこれからだったレナード彗星 12月9日の撮影でそこそこ満足してしまい、地平高度が低くなったことも重なって、自分にとってのレナード彗星は「もう終わったつもり」になっていました。12月12日の近地点通過以降は夕方の西の空に回るのですが、上の図のとおり地平高度は相当に低く、日の入り45分後でも10度以下。普通に考えれば「見えても所在確認程度」と思っても仕方ないでしょう。 しかし、ここからレナード彗星は「大化け」してゆくのです。 https://twitter.com/kumagayakimura/status/1471131340351619079 12月15日に撮影されたレナード彗星。「風船のような不思議な形に変化」とあり、2007年のホームズ彗星17Pを彷彿させるようなバーストの兆候?和歌山の津村光則さんの観測では12月15日に「狭い範囲(5分角)の測定で2.6等」との報告が。 その後も「暗くなった」「まだ明るい!」の情報がネット上を交錯。これはもう何が起きても不思議ではない。晴れたら出撃!の準備で待つことにしました。 釈迦岳、再出撃。 超低空の彗星を狙うため、今回も標高が高く視界の開けた釈迦岳へ。彗星が見える南東から東南東の方角には、大牟田市・玉名市の街灯りが若干ありますが、30キロほど離れているのでそれほど大きな影響はありません。 今回の狙いは「バーストしてるかもしれない彗星の頭部の微細構造(850mm)」と、「バーストで吹き出しているかもしれないイオンテイルの複雑な構造(300mm)」です。さらに、3台目のカメラでは105mmの固定撮影で、夕焼け空から沈むまでのタイムラプス。 幸いにも天気は快晴。日没までに機材を組立ててあらかじめフラットを撮影。スマホアプリで北極星のあるはずの場所に当たりをつけて、極軸望遠鏡で北極星を視認、速攻で極軸を合わせてアライメント。主砲は自動導入赤道儀なので導入は一発(*)。 (*)この日のためにスターブックテンの軌道要素ファイルも更新しておきました。ビクセン赤道儀は、彗星を自動導入すると「彗星モード」で追尾してくれます。動きの速い彗星の場合に便利です。 彗星が沈むまでの濃密な時間 レナード彗星が「あるはず」の場所に望遠鏡を向けたまま、シャッターを切ります。空がどんどん暗くなってゆき、星が写り始めました。薄明の空の中に淡い彗星の姿を発見!これ、けっこう明るいんじゃないの?! 彗星の尾が横長構図に入るように構図を調整し、18:17から連写開始。天文薄明終了まであと25分。 固定撮影用のEOS5D3でも連写を開始。上の画像は105mmのノートリミングですが、短辺の画角は13度。この時点で彗星の地平高度は約8度ほどでしょうか。低空にもかかわらず彗星の姿は明瞭です。 連写中の1コマをトリミング。薄明終了まであと15分ですが、薄明と地平高度の追いかけっこになるため、どの時間帯が一番彗星が良く写るかは、撮ってみないことにはわかりません。20秒露出で1時間ほど撮り続けました。 薄明終了10分前。たった15分間で空の明るさも色も大きく変わってゆきます。ここから30分ぐらいが一番彗星が条件良く撮影できたようです。 カメラのモニタで再生したところ。マジっすか?!こんな姿の彗星を目にするのは初めてでした。控えめに言ってもけっこう興奮しました! 3台のカメラで撮影中。彗星が間もなく沈む頃。撮り始めると特にやることもなく、双眼鏡で眺めたり動画を撮ったり。 彗星が水平線に吸い込まれる直前、最後のカット。こんなに低くなるともうダメですが、折角なので最後まで連写しました。 リザルト まずは恒星基準・彗星基準の合成バージョン。テイルのあぶり出しは控えめ。それでも、イオンテールがいったん途切れた後、こぶこぶのような形で続いているのがわかります。 こちらは彗星基準でσクリップし、強めに強調。このモニョモニョしたイオンテールが一期一会の彗星の醍醐味^^ 850mmで頭部の拡大。イオンテールが細く筋状に吹き出し、その周りをダストテールが放物線状に弧を描いています。これはバーストで放出されて広がったダストを、後側から見ているためにこのように見えるようです(*)。 (*)某師の解説によると「スカートを斜め下から覗いているようなもの」とのこと。写真ではダストが核の前側にも広がって見えますが、実際には前に出ているわけではないということですね。 頭部付近のトリミング。何とも言えない神秘的な姿。これを見られただけでも、遠くまで出かけた甲斐がありました! https://youtu.be/GY7LvSjFlFQ この日の撮影については上のショート動画にもまとめています。105mmレンズによるタイムラプス動画など、こちらもぜひごらんください! 12月23日・薄明と光害の中・福岡市地行浜 レンチャン回避で自宅近くで 翌日23日。好天ではあったのですが、レンチャンは回避して、自宅近くで撮れないかにチャレンジしてみました。超低空なのでだめもと、近赤外ならどこまで写るか?の検証です。撮影地は福岡市・博多湾の海岸。標高は0mです。 まず、RGBブロードバンド、フィルターなしの画像を。低空の光害が酷く、ISO感度を125まで落としても1.6秒が適正露出。彗星どころか、星もほとんど見えていません・・・ 近赤外の威力? 光害に強い近赤外ではどうでしょうか。上の画像は「SC72」フィルターを使用しましたが、それでもこの有様。ちょっと歯が立たないレベルです。 それでも、等倍拡大して注意深くチェックすると、彗星が存在することは確認できました。もう少し写ってくれるかと思ったのですが、地平高度が低すぎたようです。 彗星の地平高度が10度を下回るくらいに低くなると、光害の影響を受けやすくなるのももちろんですが、低空の雲や霞の影響も受けやすくなります。その意味では「標高を稼ぐ」ことが大きく効いてくるようです。前日の釈迦岳(1100m)との差を痛感することになりました。 12月28日・フォマルハウトまで伸びる尾・和歌山県串本町 レナード祭り https://twitter.com/hiropon_hp2/status/1473249486835417092 年末年始は、まさに全国各地(*)でレナード祭り。バーストを繰り返し、活発にテイルを撒き散らす姿を多数の人が追いかける状態に。その盛り上がりは、記事末にもご紹介した「あるぺ」さんのTogetterをぜひごらんください! (*)冬型の気圧配置となるこの時期、関東平野など太平洋側は好天に恵まれる日が多かったのですが、日本海側は悪天続きだったようです。お天気は仕方のないこととはいえ、彗星が来るのは日本全国で晴天に恵まれる季節であってほしいものです。 南紀へ で、天リフ編集部ですが、実は虎視眈々とチャンスを伺っていました。出撃先は南紀(*)。冬型の気圧配置が決まったときの南紀は晴天率最強。南は海で空は漆黒。いざ、南紀へ出撃! (*)筆者の奈良の実家から南紀までは京奈和道〜R168経由で約200km、4時間。なんとこのルートを2往復半することになるとは、この時は夢にも思っていませんでした^^ 昼間のうちに入念にロケハン。地平高度が低いので、視界を遮るものがないかをチェック。手すりが高い上に、北極星を見るためには三脚をかなり高くする必要がありましたが、いくつかの候補の中から最終的にこの場所をセレクト。地上高を稼げる3段伸縮のカメラ用三脚はこういう場合に便利です。 長い彗星の尾を捉えるため、レンズはシグマ105mmF1.4Art、赤道儀はSWAT-350を1台のみ(*)。カメラはEOS6Dです。彗星は低いものの、低空まで透明度も良く、長い尾が期待できそう。ネットにはフォマルハウトを越えたところまで尾が伸びている姿がアップされていたこともあり、彗星が沈んだ後も今回はモザイクで尾を狙います。 (*)赤道儀を2台持っていかなかったことが最大の後悔・・・でも設置と撤収は楽になりました^^ リザルト ででん!長い尾、キター!!1分5枚ですが、暗く透明な空もあいまって、狙ったとおりに長い尾を撮ることができました!やったね! 上の画像は彗星と星空を追尾撮影し、海上の風景は固定撮影したものを合成しています。この手法だと、彗星をかなり「盛れる」のですが、さすがに彗星が低すぎて追尾フレームを稼げないので「無茶盛り」ではありません(*)。 (*)やりたくてもできない^^;; こちらが素材画像。中の「固定一枚」と右の「追尾5枚」を、水平線の上のあたりにぼかしマスクをかけて繋ぎました。ごらんの通り、普通に強調はしていますが、カメラの眼では彗星はこのように見えた、といって間違いないでしょう。 口径35mmの双眼鏡でも彗星を見てみました。写真のように長い尾は見えないものの、しっかりとしたコマと尾を確認することができました。 もうひとつ。彗星が沈んだ後もさらに先を撮ってみました。なんと、フォマルハウトの先まで尾が伸びています!こっちもヤッタネ! でも・・これならさらにもう1フレーム撮るべきだったのか・・「一期一会」の彗星の撮影には、いつもこんな後悔と自問自答が・・・まあ、過ぎてしまったものは仕方ない^^(*) (*)天文ガイド2022年3月号に、津村光則さんのレナード彗星撮影記が掲載されています。この記事読みたさに筆者も購入^^  ちなみに、筆者はふだんはデジカメ撮影ではダークは撮りません。多数枚コンポジットする場合はあまり効果を見いだせないからなのですが、枚数を稼げない彗星の撮影の場合は別(*)。少しでも画質を上げられるよう、まじめにダークを撮りました。ダーク減算とフラット補正は、補正後もrawファイルとして出力できる「RStacker」をもっぱら使用しています。 (*)ライトフレームの枚数が少ない=ダークフレームの枚数も少なくて済む、というのもあります。 12月30日・和歌山県太地町 南紀再び 奈良の実家に帰省し、年末をのんびり過ごすつもりだったのですが、ネットの画像を眺めているとムラムラと撮りたい気持ちが・・ここで出撃を回避したら後悔するかもしれない・・・15分ほどぐずぐず悩んだのですが、再出撃を決意。30日の13時ごろに実家を出発し再び南紀へ。17時前には太地町に到着。このエリアは28日に津村さんが撮影された近くで、「大阪のNさん」もいらしていました。 今回は300mmで頭部を撮って、返す刀で105mmでモザイク撮影の構想。海上の雲が取れるかどうか微妙な天気でしたが、幸いにも日が暮れたころには快晴に。 苦い失敗と微妙なリザルト しかし・・・この日の撮影は失敗続き。盤石の信頼を置いているSWAT赤道儀なのですが、つまらないミスと仕様の理解不足(*)で、彗星を撮るべき短い時間帯を大きくロスしてしまいました。 (*)SWATは起動する際に「スタンバイモード」となって数十秒間高速駆動するのですが、状況によっては最長「2分」かかることがあります。ところが、構図調整中に電源プラグをひっかけてしまい、スタンバイモードに突入・・動揺してしまって「追尾が始まらない〜」と大あせり。挙げ句の果てに三脚を蹴ってしまって極軸の合わせ直しでさらにロス・・・ 上の画像は少ない枚数の中からコンポジットした300mmでのリザルト。実はこの日は「バーストの谷間」だったようで、前々日の28日と比べるとすっかり貧弱な姿に。不幸中の幸いなのか、不幸中の不幸なのか・・・冴えない結果となりました。 こちらは105mmでの微妙すぎるリザルト。300mmの撮影で手間取ってしまい、105mmに切り替えたときにはレナードはもう沈んでしまっていました・・それでも悔し紛れにフォマルハウトから先を3フレームもモザイクで撮ったのですが、低空に薄雲があったようで酷い色ムラ。かぶり補正する気力を失い、強調ママの画像です^^;;(*) (*)和歌山方面から「せっかく撮ったんやから、ちゃんとやらなあかんで!」の声が聞こえてきた気がします・・ これでも、なんとなくフォマルハウトの下に「ウネウネイオンテール」が見えてますよね?! 東屋を振り返ったところ。北側は太地町市街の街灯りが若干あるものの、一級品の星空です。 全天写真。南側はほぼ無光害なのですが、低空には赤みを帯びた薄雲が。前々日よりも空の条件はずっとよくなかったようです。 ちなみに、駐車場のすぐ隣には強烈なLED灯があり、駐車場の東側はこのライトに照らされてしまいます。この明かりを避けるような設置が吉でしょう。 熊野本宮大社に立ち寄る 傷心の中撤収し帰還します。折角なので、帰り道の熊野本宮大社で星景撮影。冬型が強まる予報で、山岳性の雲が湧いてきました。 本宮大社は、国道沿いはオレンジの光でライトアップされていますが、大鳥居周辺には灯火はなく、アングルに注意すれば冬の天の川が普通に見えるレベルの星空でした。 あと2つ寝ればお正月の12月30日。人のほとんどいない、新年前の静かな本宮大社でした。 1月3日・和歌山県すさみ町 三たび南紀へ 2022年の新年を迎えて1月3日。三たび南紀へ。今回は津村さんのお誘いですさみへ出撃です。もちろん彗星は狙いますが、朝方のしぶんぎ群までフルコースの星空観望を想定。宿泊はかねてから行ってみたかった「ホテル・ベルヴェデーレ」。 ベルヴェデーレへの宿泊を直前に決めたこともあり、夕食の時間(19時まで!)と彗星の撮影好機の時間が重なってしまうことが発覚。当初想定していた「日本童謡の園公園」だと夕食に間に合わない!そこでいくつか目星を付けていたホテルの近くのスポットをセレクトしました。 雲にいじめられる 結論から言ってレナード彗星のリザルトは冴えませんでした。上の画像は天文薄明終了(18:31)の12分前。この後すぐレナード彗星は右の雲の中に吸い込まれてしまい、満足なコマ数を稼ぐことはできませんでした。 時間切れ寸前、かろうじて見えたレナード彗星の頭部。わずか10分の間ですが、写真で撮ると空の色がまったく違っていることがわかります。12/22の釈迦岳の撮影の際は、薄明中でもけっこう撮れるものだと感じたのですが、今回のように薄雲がかかってしまうと強い強調に耐えない画像になり、圧倒的に苦しくなります。薄明にせよ光害にせよ、背景が明るい場合は「空気の透明度と均一性」が重要になることを痛感。 彗星が姿を見せたコマ3枚をかき集めて?コンポジット。心眼含み?で見ると尾は結構長いようですが、固定フレームを薄明終了後に撮影しているため、空と地上のカラーバランスが変。空の色が変化することに対応するために、せめて最初に1コマ固定フレームを撮影しておけばよかった(*)。これも次回に生かしたい経験。 (*)SWAT赤道儀を電源OFFで追尾をOFFにすると、追尾に戻す際にスタンバイモードによる時間ロスが発生してしまいます。これを嫌って固定フレームを最後に撮ったのですが、実は「DECモード(Premiumの一部機種のみ対応)」に切り替えれば時間ロスなしで追尾を止められることが後に判明。 2022/2/17追記)DECモードが標準搭載されているのは「現行SWAT-330およびSWAT-350(2020年8月~)」です。SWAT-310は非搭載です。訂正しお詫び申し上げます。 撮影終了は18:31。大急ぎで機材を撤収しベルヴェデーレにとんぼ返り。無事19:00の夕食に間に合いました。 濃密な時間 夕食後、津村さんに合流。すさみの広場では多くの方が撮影や観望にいそしまれていました。Eさんにおでんをごちそうになり(ありがとうございました!)、天文談議に花が咲きます。 津村さんの自作50cmドブ(*)で眼視観望大会。M42や数々のキラキラ星団などを満喫。皆が「おお見える!」とはしゃいでいた馬頭星雲を、自分だけがなかなか確認できなくて凹みますw (*)このドブは口径50cmクラスでは世界一取り回しの良いドブではないでしょうか。眼視での稼働率を上げるための工夫が随所に凝らされています。 この日の白眉は「ミルクポット星雲」。淡い対象なので「眼視で見えるわけないだろう」と思い込んでいたのですが、津村さん曰く「よう見えるでぇ」。上の図はその印象を写真で再現したものですが、ポットの口の左側の円弧が特に明るく、さしたる苦労もなしに見ることができました。 こちらはトールのかぶと星雲。シャネルのロゴのような形がはっきりわかるのは勿論ですが、時間をかけて見ていると、中心の周りになにやら微細構造がありそうなこと、2つのリングがかなり淡く長く伸びていることがわかってきます。 津村さんの導入の技の高さももちろんあるのですが、津村さんの50cmドブは、背の低い女性でも無理のない姿勢で覗くことができるので、大口径ドブにありがちな「脚立の上り下り」がありません。複数人数でもサクサクと天体を見てゆくことができ、数多くの天体を楽しむことができました。津村さん、ありがとうございました! しぶんぎ群 https://youtu.be/i6r-3i19Pbg 23時ごろにいったんホテルに戻って仮眠。4時ごろに再び起き出して、今度は「しぶんぎ座流星群」です。 月明かりもなく、極大予想時刻も理想的な条件でしたが、体感的にはあまり流れませんでした^^; それでも、動画では約30個ほどの流星が写っています。上のショート動画もぜひごらんください! そして夜明け。東の空にはアンタレスが昇ってきました。レナード彗星を熱く追いかけたシーズンが終わり、2022年のはじまりです。本年も天文リフレクションズをよろしくお願い申し上げます! まとめ いかがでしたか? 約一ヵ月強の期間でしたが、大小合わせて合計9回の出撃。筆者的には、一昨年のネオワイズ彗星を上回る熱量で追いかけた彗星となりました。決して「大彗星」ではありませんでしたが、これまでの天文ライフの中で最も思い出深い彗星になったように思います。 さて。そして次ですよ。今回のレナード彗星を上回る熱量で楽しめる「大彗星」が、あまり遠くない将来にやってくることを楽しみに待ちたいと思います! それでは皆様のご武運をお祈りしております。また次回お会いしましょう! 参考リンク 「あるぺ☆」さんのtogetterまとめ Twitter界隈でのレナード彗星の秀逸なまとめ。前半・後半に分けて、主だった撮影・眼視の記録から国立天文台や天文雑誌・サイトまで、膨大な情報が時系列に網羅されている労作です。 こちらは後編です! https://twitter.com/alpe_terashima/status/1487319091069132802 機材協力: ユニテック株式会社編集部発信のオリジナルコンテンツ