みなさんこんにちは!

n晩一対象でじっくり撮るか、時短撮影でイロイロ撮るか。天体写真にはさまざまな楽しみ方があります。クオリティを追求し、1つの対象にひたすら露出時間を重ねて見えないものをあぶりだすのもよし、お手軽な機材で短時間でたくさんの対象を撮るもよし。

今回は「ひたすら時短」の手法(ライブスタック、ノータッチガイド)にフォーカスし「一晩でどのくらいの対象を一気撮りできるか」にチャレンジしてみました。



春の銀河まつり

ででん!といきなりリザルト。テーマは「春の銀河まつり」です(*)。銀河は比較的輝度が高く、短時間露出でもそれなりに構造が描出できるのが特徴。今回使用した機材構成なら、導入に1対象2分・総露出2分間で、1時間で15対象が撮影可能。春の星座には数多くの銀河が集中していて、一気撮りするのにはベストなシーズン。2時間足らずの間にメシエ天体を30個撮りました。これって凄くないですか?!

(*)実は撮影したのは半年近く前だったのですが^^;;;昨今のライブ配信注力ですっかりリザルトのまとめが遅れてしまいました^^;;;

撮影機材:メイン鏡筒はSV503

銀河は見かけの大きさが小さいので、長焦点の方が有利。今回はSVBONY様よりお借りした、口径102mm/焦点距離714mmのEDレンズ使用の2枚玉「SV503」をメイン鏡筒にしました。F値は「7」とあまり明るくはないのですが、銀河の撮影なら充分。むしろ換算焦点距離約1400mmの長焦点が大いに生きてきます。これなら小さい銀河も大きく撮れます。

SV503は、ED硝材使用の天体望遠鏡の中では有数の低価格ですが、造りはとてもしっかりしています。デュアルスピードフォーカサ付きの接眼部はピント合わせも楽。ブロードバンド撮影でも普通に使える10cmの大口径がここまでお手頃価格とは、よい時代になったものです。

SV503(口径102mmF7) タカハシマルチフラットナーx1.04 ASI294MC UV/IRカットフィルター 10秒×87枚 EQ5GOTO恒星時追尾10秒露出の87枚ライブスタック。

SV503の「ややガチ撮り」のリザルトをごらんください。今回の銀河祭りとは別枠で、総露出時間は15分。南天に低いM83ですが、しっかり銀河の姿を写し出すことができています。輝星の周りには若干青ハロが出ていますが、Photoshopで簡単に削れるレベルです。価格・扱いやすさから考えれば、ライトな撮影にはとてもよいチョイスでした。

なお、後述しますが、SV503で「ガチめ」に撮る場合には「UV/IRカットフィルター」を使用した方がよいでしょう。青ハロだけでなく近赤外域の光で星像がボテッとすることを抑止できます。

 

カメラはZWOのASI294MC(非冷却)。ガチで画質を追求するなら冷却モデルに軍配が上がりますが、ライブスタックの電視なら、非冷却モデルでも充分威力を発揮できます。小型の筐体、冷却のための12V電源が不要など、機材のライト化のメリットも。

ただし、ダーク減算だけは必須です。総露出時間が短いライブスタックなら撮像の手間も少ないので、きちんとダークを撮影しておくのが吉です。ちなみに、ASI AIR PROでライブスタックする場合は、撮影時にダークを指定しておけば自動で減算されているので、後の画像処理で何かする必要はありません(*)。

(*)逆にライブスタックでは、撮影「前」にダークを撮像しておかなくてはなりません。

赤道儀はSky-WatcherのEQ5GOTO。実売10万円を切る自動導入赤道儀。標準では有線接続の「ハンドコントローラー」で操作しますが、これに実売5000円前後の「WiFiアダプタ(上画像右)」を装着することで、WiFi経由でスマホなどで制御可能になります。これはEQ5GOTOにはぜひオススメしたいアイテム。時刻や設置場所の緯度経度もスマホのGPSに連動しますし、アライメント・導入などの操作もずっと簡単に。

さらに、「ASI AIR PRO」と併用すれば、Plate Solvingで対象を楽々導入可能に。自動導入の際の微妙な誤差をPlate Solvingがきっちり補正してくれるので、対象が確実に「ど真ん中」に導入できます。これは一度使うと二度と手放せなくなるレベルです。電視のような時短撮影の強力な武器になります。

(*)今回は「オートガイド」は使用していません。露出10秒のライブスタックなので、焦点距離700mmであっても追尾誤差はほとんど問題にならないからです。これが30秒以上の露出時間になると歩留まりが落ちてくるので、オートガイドを考えた方がいいかもしれません。

 

注意が必要なのは、ASI AIR PROとSynscan WiFiアダプタ相互のネットワーク接続。2つのWiFi機器が存在する形になるため、ネットワークを相互に接続する必要があります。具体的にはどちらかのWiFiを「ステーションモード」で動作させ、もう一つのWiFiがそれに接続する形になります。

どちらをステーションモードにしても動作するのですが、接続先の指定がより簡単(*)なのはASI AIR PROをステーションモードで動かす方です。上の画像はASI AIRのアプリ画面ですが、WiFiのメニューからステーションモードに切り替えて、SinScanのWiFiにASI AIRが接続する形になります。この手順は次項の動画の中でも解説していますので、ぜひごらんください。

(*)ASI AIRアプリでは、接続したことのあるWiFiネットワークを複数記憶してくれます。

撮影記・動画版



今回の撮影風景をスマホ画面を動画で記録し、準備を含め3時間ほどの工程を15分にダイジェストしました。こんな感じで撮影が進むのだという所をぜひごらんください。

画像処理

実は画像処理もライブで録画しています。こちらは編集パワー不足でベタ尺の動画ですが・・・とても長いので後編は別の動画になっています。時間があればこれらの動画も編集して見やすくしてみたいと思います。

この中で特にご紹介しておきたいのが「アノテーション」。画像を自動的に星表データと照合し、赤緯・赤経線や天体名を画像に描き込んでくれる機能です。今回は「PixInsight」を使用しました(*)。若干慣れが必要ですが、↓のnabeさんのブログ記事を読めば使えるようになるはずです。

星撮り日記・GS-200RCでしし座の三つ子銀河
https://starphotographing.blog.fc2.com/blog-entry-94.html

(*)なお、ASI AIRアプリの最新バージョンにもアノテーション機能が実装されました。記事制作時点では赤経線・赤緯線が入らないなど機能的にはPixInsightが勝りますが、お手軽さはこちらの方がはるかに上です。

そのほかのリザルト

夏の散開星団も

「春の銀河祭り」は無事2時間ほどで終了しましたが、時間が余ったので夏の対象もいくつか撮ってみました。長焦点の屈折鏡筒は球状星団にも適。散開星団は少し大きくなりすぎますが、若干ハロがある効果?で、星団が見栄え良く写ります。

α7S+CBPフィルターでお手軽撮影

SV503(口径102mmF7) タカハシマルチフラットナーx1.04 α7S(フィルターレス) Comet BPフィルター ISO12800 30秒1枚 EQ5GOTO恒星時追尾

薄明開始の直前に「Commet BP(CBP)フィルター」を使用して、M8/M20を時短撮影してみました。30秒露出の1枚撮りです。30秒にしては良く写っていると思いませんか?

シュミット・https://www.syumitto.jp/SHOP/SY0094.html

CBPフィルターは、QBPフィルターに近い星雲強調効果があるのに加えて、360〜420nmの青も透過するため、QBPフィルターよりも星の色の表現が素直になるのが特徴。三裂星雲の青い部分も出ていますね。

ノイズ低減とシャープの強さはスライダーで簡単に調整できます。やりすぎると塗り絵っぽくなる、星像がいびつになる、などの副作用もあります。

このリザルトにはひとつ秘密があって、「Topaz Denoise AI」を使用しています。その効果は絶大で、背景のザラザラを抑制して星像を小さく引き締めてくれます。DenoiseAIは元画像のクオリティが低いほど効果が大きいように感じています。「チョイ悪」元画像には効果テキメンなのです(*)。

(*)その反面、たっぷり露出した画像ではあまり劇的な効果はありません。じっくり撮った元画像は、正攻法で処理する方がいいのかもしれませんね。

比較明光跡撮影^^;;;

SV503(口径102mmF7) タカハシマルチフラットナーx1.04 α7S(フィルターレス) Comet BPフィルター ISO12800 30秒 55枚比較明合成

実はもう1個リザルトが^^;; 実は一つ前のM8/20は30分ほど撮影していたのですが、早々に電源切れでガイドが止まってしまっていたのでした^^;; 折角なので比較明合成してみました。左端が球状星団M22。M8と同じくらいの赤緯だと学習しました。

TIPS

今回の撮影で得られた豆知識を2つだけご紹介しておきましょう。

赤外をカットしないことの弊害

最近、光害カット効果の高い「赤外撮影」が注目を集めていますが、一方で赤外域の収差の問題も認識されるようになってきました。上の画像は、UV/IRカットフィルターを使用した場合と使用しない場合の比較です。

一目で明らかですが、UV/IRカットを「しない」場合は、星が滲んでボテッとしていることがわかります。屈折望遠鏡の場合、近赤外線の色収差の補正が不足してしまうことが原因です。

反面、フィルターなしの方が多くの光をセンサーに取り込むことができます。きちんと測定していないので感覚的なものですが、倍くらいは違うように感じました。そのため、ノイズはフィルターなしの方が少なくなっています。お手軽撮影で露出時間をあまり長くしたくない場合は、少々の星像肥大は許容してフィルターなしで撮る戦略もあるでしょう。

バーティノフマスクと色収差

○で囲んだ部分が近赤外・近紫外光に相当します。SV503(口径102mmF7) タカハシマルチフラットナーx1.04 ASI294MC

色収差による焦点位置の違いは、バーティノフマスクで可視化することができます。上の画像は、SV503にバーティノフマスクを装着して撮影した星像ですが、回折による光条が直線にならず少し曲がっている(*)ことが分かります。

(*)バーティノフマスクの光条は、星に近いところから順に一次回折像・二次回折像・三次回折像・・・と続きますが、色収差は特に一次回折像で明瞭になります。高次の回折像では、前後の回折像と重なり合って平均化されることで曲がりが目立たなくなっています。

注目すべきは、UV/IRカットフィルターの有無による違い。特に近赤外域の曲がりが顕著になっています。屈折望遠鏡で「素通し」の天体用CMOSカメラを使用する場合は、近赤外域の収差による「ハロ」を抑制するためにも、UV/IRカットフィルターを使用することが有効だといえます。

アクロマート対物レンズでも同じことを試してみました。これはもうグニャグニャですね^^;; アクロマートでは短波長側の焦点位置が大きくずれるのが通常ですが、それ以上に近赤外域の焦点ずれ(色収差)が大きいことがわかります。しかも、近赤外域ではCMOSセンサーはRだけでなくBG画素にも一定の感度があるため、「赤ハロ」ではなく「白ハロ」となって星像が肥大してしまいます。

まとめ

M8/20を撮影中。実はこの時すでに電源終了で赤道儀は追尾を停止していました^^;;;

いかがでしたか?

テーマを決めて、短時間で、集中してたくさんの対象を撮る。これはこれで、とても面白いものだと感じました。対象が多い分、画像処理もそれなりにしんどいのですが^^;; 長距離走のような充実感^^があります。

ど根性のある方は、この手法で「メシエ(フル)マラソン」にチャレンジしてみてはいかがでしょうか?110対象なら1対象4分で7時間20分。じゅうぶんに一晩で達成可能な時間でしょう。

そこまで根性を出さなくても、50対象で「ハーフメシエマラソン」や、今回のような「春の銀河・ミニマラソン」も面白いと思います。天リフのイベントとして、対象リストを決めて一晩で撮ったリザルトを持ち寄るのも面白そうですね!こちらも企画してみますので、お楽しみに!

それでは、皆様のご武運をお祈りしています。またお会いしましょう!


機材協力:

  • SVBONY [SV503口径102mm天体望遠鏡]

  https://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2021/09/755f92a4a566aa31443195045e2fbe78-1024x576.jpghttps://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2021/09/755f92a4a566aa31443195045e2fbe78-150x150.jpg編集部実践・天体写真撮影記みなさんこんにちは! n晩一対象でじっくり撮るか、時短撮影でイロイロ撮るか。天体写真にはさまざまな楽しみ方があります。クオリティを追求し、1つの対象にひたすら露出時間を重ねて見えないものをあぶりだすのもよし、お手軽な機材で短時間でたくさんの対象を撮るもよし。 今回は「ひたすら時短」の手法(ライブスタック、ノータッチガイド)にフォーカスし「一晩でどのくらいの対象を一気撮りできるか」にチャレンジしてみました。 春の銀河まつり ででん!といきなりリザルト。テーマは「春の銀河まつり」です(*)。銀河は比較的輝度が高く、短時間露出でもそれなりに構造が描出できるのが特徴。今回使用した機材構成なら、導入に1対象2分・総露出2分間で、1時間で15対象が撮影可能。春の星座には数多くの銀河が集中していて、一気撮りするのにはベストなシーズン。2時間足らずの間にメシエ天体を30個撮りました。これって凄くないですか?! (*)実は撮影したのは半年近く前だったのですが^^;;;昨今のライブ配信注力ですっかりリザルトのまとめが遅れてしまいました^^;;; 撮影機材:メイン鏡筒はSV503 銀河は見かけの大きさが小さいので、長焦点の方が有利。今回はSVBONY様よりお借りした、口径102mm/焦点距離714mmのEDレンズ使用の2枚玉「SV503」をメイン鏡筒にしました。F値は「7」とあまり明るくはないのですが、銀河の撮影なら充分。むしろ換算焦点距離約1400mmの長焦点が大いに生きてきます。これなら小さい銀河も大きく撮れます。 SVBONY SV503。接眼部はラック&ピニオン式、デュアルスピードフォーカサ付。接眼部全体がファインダー脚とともに回転する機構。細身の鏡筒バンドは実測約560gと軽量。 pic.twitter.com/K7OJK87jE9 — 天リフ編集部 (@tenmonReflexion) May 14, 2021 SV503は、ED硝材使用の天体望遠鏡の中では有数の低価格ですが、造りはとてもしっかりしています。デュアルスピードフォーカサ付きの接眼部はピント合わせも楽。ブロードバンド撮影でも普通に使える10cmの大口径がここまでお手頃価格とは、よい時代になったものです。 SV503の「ややガチ撮り」のリザルトをごらんください。今回の銀河祭りとは別枠で、総露出時間は15分。南天に低いM83ですが、しっかり銀河の姿を写し出すことができています。輝星の周りには若干青ハロが出ていますが、Photoshopで簡単に削れるレベルです。価格・扱いやすさから考えれば、ライトな撮影にはとてもよいチョイスでした。 なお、後述しますが、SV503で「ガチめ」に撮る場合には「UV/IRカットフィルター」を使用した方がよいでしょう。青ハロだけでなく近赤外域の光で星像がボテッとすることを抑止できます。   カメラはZWOのASI294MC(非冷却)。ガチで画質を追求するなら冷却モデルに軍配が上がりますが、ライブスタックの電視なら、非冷却モデルでも充分威力を発揮できます。小型の筐体、冷却のための12V電源が不要など、機材のライト化のメリットも。 ただし、ダーク減算だけは必須です。総露出時間が短いライブスタックなら撮像の手間も少ないので、きちんとダークを撮影しておくのが吉です。ちなみに、ASI AIR PROでライブスタックする場合は、撮影時にダークを指定しておけば自動で減算されているので、後の画像処理で何かする必要はありません(*)。 (*)逆にライブスタックでは、撮影「前」にダークを撮像しておかなくてはなりません。 赤道儀はSky-WatcherのEQ5GOTO。実売10万円を切る自動導入赤道儀。標準では有線接続の「ハンドコントローラー」で操作しますが、これに実売5000円前後の「WiFiアダプタ(上画像右)」を装着することで、WiFi経由でスマホなどで制御可能になります。これはEQ5GOTOにはぜひオススメしたいアイテム。時刻や設置場所の緯度経度もスマホのGPSに連動しますし、アライメント・導入などの操作もずっと簡単に。 さらに、「ASI AIR PRO」と併用すれば、Plate Solvingで対象を楽々導入可能に。自動導入の際の微妙な誤差をPlate Solvingがきっちり補正してくれるので、対象が確実に「ど真ん中」に導入できます。これは一度使うと二度と手放せなくなるレベルです。電視のような時短撮影の強力な武器になります。 (*)今回は「オートガイド」は使用していません。露出10秒のライブスタックなので、焦点距離700mmであっても追尾誤差はほとんど問題にならないからです。これが30秒以上の露出時間になると歩留まりが落ちてくるので、オートガイドを考えた方がいいかもしれません。   注意が必要なのは、ASI AIR PROとSynscan WiFiアダプタ相互のネットワーク接続。2つのWiFi機器が存在する形になるため、ネットワークを相互に接続する必要があります。具体的にはどちらかのWiFiを「ステーションモード」で動作させ、もう一つのWiFiがそれに接続する形になります。 どちらをステーションモードにしても動作するのですが、接続先の指定がより簡単(*)なのはASI AIR PROをステーションモードで動かす方です。上の画像はASI AIRのアプリ画面ですが、WiFiのメニューからステーションモードに切り替えて、SinScanのWiFiにASI AIRが接続する形になります。この手順は次項の動画の中でも解説していますので、ぜひごらんください。 (*)ASI AIRアプリでは、接続したことのあるWiFiネットワークを複数記憶してくれます。 撮影記・動画版 https://youtu.be/cb8ASJ86xbM 今回の撮影風景をスマホ画面を動画で記録し、準備を含め3時間ほどの工程を15分にダイジェストしました。こんな感じで撮影が進むのだという所をぜひごらんください。 画像処理 https://youtu.be/NgO5It5b2qY 実は画像処理もライブで録画しています。こちらは編集パワー不足でベタ尺の動画ですが・・・とても長いので後編は別の動画になっています。時間があればこれらの動画も編集して見やすくしてみたいと思います。 この中で特にご紹介しておきたいのが「アノテーション」。画像を自動的に星表データと照合し、赤緯・赤経線や天体名を画像に描き込んでくれる機能です。今回は「PixInsight」を使用しました(*)。若干慣れが必要ですが、↓のnabeさんのブログ記事を読めば使えるようになるはずです。 星撮り日記・GS-200RCでしし座の三つ子銀河 https://starphotographing.blog.fc2.com/blog-entry-94.html (*)なお、ASI AIRアプリの最新バージョンにもアノテーション機能が実装されました。記事制作時点では赤経線・赤緯線が入らないなど機能的にはPixInsightが勝りますが、お手軽さはこちらの方がはるかに上です。 そのほかのリザルト 夏の散開星団も 「春の銀河祭り」は無事2時間ほどで終了しましたが、時間が余ったので夏の対象もいくつか撮ってみました。長焦点の屈折鏡筒は球状星団にも適。散開星団は少し大きくなりすぎますが、若干ハロがある効果?で、星団が見栄え良く写ります。 α7S+CBPフィルターでお手軽撮影 薄明開始の直前に「Commet BP(CBP)フィルター」を使用して、M8/M20を時短撮影してみました。30秒露出の1枚撮りです。30秒にしては良く写っていると思いませんか? CBPフィルターは、QBPフィルターに近い星雲強調効果があるのに加えて、360〜420nmの青も透過するため、QBPフィルターよりも星の色の表現が素直になるのが特徴。三裂星雲の青い部分も出ていますね。 このリザルトにはひとつ秘密があって、「Topaz Denoise AI」を使用しています。その効果は絶大で、背景のザラザラを抑制して星像を小さく引き締めてくれます。DenoiseAIは元画像のクオリティが低いほど効果が大きいように感じています。「チョイ悪」元画像には効果テキメンなのです(*)。 (*)その反面、たっぷり露出した画像ではあまり劇的な効果はありません。じっくり撮った元画像は、正攻法で処理する方がいいのかもしれませんね。 比較明光跡撮影^^;;; 実はもう1個リザルトが^^;; 実は一つ前のM8/20は30分ほど撮影していたのですが、早々に電源切れでガイドが止まってしまっていたのでした^^;; 折角なので比較明合成してみました。左端が球状星団M22。M8と同じくらいの赤緯だと学習しました。 TIPS 今回の撮影で得られた豆知識を2つだけご紹介しておきましょう。 赤外をカットしないことの弊害 最近、光害カット効果の高い「赤外撮影」が注目を集めていますが、一方で赤外域の収差の問題も認識されるようになってきました。上の画像は、UV/IRカットフィルターを使用した場合と使用しない場合の比較です。 一目で明らかですが、UV/IRカットを「しない」場合は、星が滲んでボテッとしていることがわかります。屈折望遠鏡の場合、近赤外線の色収差の補正が不足してしまうことが原因です。 反面、フィルターなしの方が多くの光をセンサーに取り込むことができます。きちんと測定していないので感覚的なものですが、倍くらいは違うように感じました。そのため、ノイズはフィルターなしの方が少なくなっています。お手軽撮影で露出時間をあまり長くしたくない場合は、少々の星像肥大は許容してフィルターなしで撮る戦略もあるでしょう。 バーティノフマスクと色収差 色収差による焦点位置の違いは、バーティノフマスクで可視化することができます。上の画像は、SV503にバーティノフマスクを装着して撮影した星像ですが、回折による光条が直線にならず少し曲がっている(*)ことが分かります。 (*)バーティノフマスクの光条は、星に近いところから順に一次回折像・二次回折像・三次回折像・・・と続きますが、色収差は特に一次回折像で明瞭になります。高次の回折像では、前後の回折像と重なり合って平均化されることで曲がりが目立たなくなっています。 注目すべきは、UV/IRカットフィルターの有無による違い。特に近赤外域の曲がりが顕著になっています。屈折望遠鏡で「素通し」の天体用CMOSカメラを使用する場合は、近赤外域の収差による「ハロ」を抑制するためにも、UV/IRカットフィルターを使用することが有効だといえます。 アクロマート対物レンズでも同じことを試してみました。これはもうグニャグニャですね^^;; アクロマートでは短波長側の焦点位置が大きくずれるのが通常ですが、それ以上に近赤外域の焦点ずれ(色収差)が大きいことがわかります。しかも、近赤外域ではCMOSセンサーはRだけでなくBG画素にも一定の感度があるため、「赤ハロ」ではなく「白ハロ」となって星像が肥大してしまいます。 まとめ いかがでしたか? テーマを決めて、短時間で、集中してたくさんの対象を撮る。これはこれで、とても面白いものだと感じました。対象が多い分、画像処理もそれなりにしんどいのですが^^;; 長距離走のような充実感^^があります。 ど根性のある方は、この手法で「メシエ(フル)マラソン」にチャレンジしてみてはいかがでしょうか?110対象なら1対象4分で7時間20分。じゅうぶんに一晩で達成可能な時間でしょう。 そこまで根性を出さなくても、50対象で「ハーフメシエマラソン」や、今回のような「春の銀河・ミニマラソン」も面白いと思います。天リフのイベントとして、対象リストを決めて一晩で撮ったリザルトを持ち寄るのも面白そうですね!こちらも企画してみますので、お楽しみに! それでは、皆様のご武運をお祈りしています。またお会いしましょう! 機材協力: SVBONY  編集部発信のオリジナルコンテンツ