アストロアーツHPで、星ナビ2020年9月号の内容が告知されています。発売は8月5日水曜日です。

今月の内容は!?

7月に大きく盛り上がった「ネオワイズ彗星」「火球」に加え、「究極のジュピター」では、探査機ジュノーによる木星の極の観測を中心に紹介します。

星ナビ9月号は「ネオワイズ彗星」「火球が習志野にヒット」「究極のジュピター」
http://www.astroarts.co.jp/article/hl/a/11408_hoshinavi

■表紙

Thierry Legaultさんが撮影したモンサンミシェルを巡るネオワイズ彗星です。

表紙となった作品はSNSでも拡散していたので見覚えのある方も多いことでしょう。フランスの「モンサンミシェル」の上に浮かんだネオワイズ彗星です。目次ページにご本人のコメントがありますが「こういう魔法のひとときが大好き」「(処理したり公開するときより)撮影しているときの方がずっと楽しい」とあります。彗星のような大きな天文現象もそうですが、天文趣味は「その場のリアル感・ワクワク感」がやっぱり最高ですね。

■北半球で23年ぶり 大騒ぎのネオワイズ彗星(解説/吉田誠一)

北半球ではヘール・ボップ彗星以来、23年ぶりの待ちに待った大彗星が到来! しかし、日本列島は長い梅雨の真っ只中。雲量サイトにかじりつき、わずかな雲間を狙った人も多かったのではないでしょうか。そんなお騒がせ彗星の1か月を振り返ります。

そのネオワイズ彗星、8ページの特集。アトラス彗星・スワン彗星と立て続けの「崩壊」の陰でひっそりと増光し、最大光度0等級という「(北半球では)へール・ボップ彗星以来」の大彗星となったのです。



記事ではそのネオワイズ彗星の発見から増光までの顛末、SNS時代特有のネットでの盛り上がり(大騒ぎ^^;)が、宇宙空間を含む各所からの素晴らしい画像と共に紹介されています。ガチ天マニアおなじみの「荒井師」「三本松師」の両「巨匠」の見開き超絶画像にも注目です。

【連載14】ネオワイズ彗星・前半戦を振り返る

天リフ編集部でもネオワイズ彗星の撮影記をアップしています。こちらもぜひご笑覧ください^^

■深夜の轟速球、火球が習志野にヒット 火球経路解析と隕石発見(解説/佐藤幹哉)

7月2日の深夜、満月級の明るい光を放ちながら飛来した隕石。その飛来物は、どこから現れ、どこに落ちたのでしょうか。火球の経路解析と習志野で隕石が発見されるまでを追いました。

本記事の冒頭。「7月1日の夜。東京は雨が降っていた」「私は」

「とツイッターに書いて就寝したのを覚えている」

 

「その夜、宇宙からの来訪者が関東上空にやってきたのだった」


7月2日未明の「大火球」と、その後まもなく発見された「習志野隕石」。著名な映像クリエータKAGAYAさんが動画撮影に成功されたなど、マスコミでも大きな話題になりました。しかし、その成果を支えたのは「SonotaCo(ソノタコ)」をはじめとする、アマチュアの観測ネットワークでした。火球を常時動画カメラでモニターし、軌道計算まで一気通貫で行うシステムが全国規模で10年以上前から稼働しているのです。

本記事では、今回の火球の詳細の記録とともに、アマチュア観測者たちの仕事とその成果がわかりやすくまとめられています。探査機「はやぶさ(2)」のサンプルリターンに勝るとも劣らない「待ち受け型サンプルリターン」とも呼ぶべきSonotaCoネットワークは、日本のアマチュア天文界の誇りです。いずれ時間の問題で、第二・第三の成果が得られることでしょう。

■探査機ジュノーがあばく 究極のジュピター(解説/中野太郎)

南の空で今、見頃を迎えている木星。探査機ボイジャーが木星を観測してから40年、木星探査機ジュノーによる木星の「極」の姿を中心に案内します。

木星探査機「ジュノー」。2016年7月5日以来、木星の「極から極」へと周回する軌道(極軌道)を約53日の周期で周回を続けています。「(木星の)極地方を観測できる」という特長を生かし「木星の極の渦」や「極の高エネルギー電子(オーロラ)」「極の嵐」などの数々の新しい発見をもたらしました。

「ジュノー」はNASAの科学ミッションの中では予算規模が比較的小さな「中規模」ミッション。予算面でのいろいろな「割り切り」もあったそうですが、アウトリーチも含めて、その成果はとても大きかったのではないでしょうか。そんな「ジュノー」のこれまで4年間の成果を、豊富な画像(*)とともに8ページで解説したのが本記事です。

(*)実は掲載された可視光域の画像は「成果を教育・普及に活用する(アウトリーチ)」ためのもので、いってみれば「オマケ」のようなものだそうです。いつの時代も一番魅力的なのは「オマケ」なのかも?!

■新連載 マユコの星ナビch 突撃!ラボ訪問(紹介/マユコ)

YouTubeチャンネル「アスナロサイエンス」で情報発信を行う大学院生の「マユコ」さん。第1回はマユコさん自身のこれまでの経験と、専門である系外惑星観測について紹介します。記事のこぼれ話を動画にしたYouTubeチャンネルも見逃せません!

ご存じですか?アスナロサイエンス。「天文学を専攻する大学院生のマユコ」さんのYouTubeチャンネルです。マユコさんの専攻は「系外惑星(太陽系外の恒星の周りを周回している惑星)」ですが、今回始まった連載はそんなマユコさんが「様々な分野の研究者にインタビューする」というもの。第1回はマユコさん自身のご紹介。

「私のリアルをお届けする」「誰かの未来が少し見通しやすくなるかも」「研究者に親しみを感じてもらいたい」そんなコンセプトの「アスナロサイエンス」とのコラボ企画。本誌発売とたぶん同時に公開されるであろう動画にも注目。チャンネル登録はこちらから!

「院試ってツラいよね」落第生だった編集長はこの動画をみてホロリ。

◎広告ピックアップ

■セレストロンStarSense Explorer

セレストロン社の代理店になったビクセン。2ヶ月連続のセレストロン商品です。これは先月ご紹介したアプリ「Sky Portal」とは別のアプリ「StarSense Explorer」。何が違うかというと、スマホのカメラそのもので星空を実際に撮像し、星図データと自動照合して望遠鏡の向きを判別して対象を探せるというものです(*)。

(*)架台にはモーターは付いていません。望遠鏡をIT制御で駆動するのではなく、望遠鏡が今向いている場所をIT制御でリアルタイムに検知し画面に表示する仕組みです。

キャッチコピーは「ゲーム感覚で星を探す」となっていますが、その本質は自動導入革命ともいうべきもの(*)。ある意味、目的地から目的地に一直線の「地下鉄」であったGOTOから、車窓からの風景を眺めながら自力で目的地に進むことを「アシスト」する形へ。業界全体のトレンドを大きく変える可能性のある技術です。この製品がどう市場に受け入れられていくか、競合他社がどんな動きに出てくるかに注目です。



(*)業界の大御所が評価用に早速自腹購入したという情報も^^

◎天リフ独断ピックアップ

■KAGAYA通信・夢に見た隕石火球をとらえた!

「生きているうちに一度は隕石火球が上空を横切るかもしれない」隕石火球の一部始終をみごとに動画でとらえたKAGAYAさんがカメラを設置したのが2年前。試行錯誤とトラブルを乗り越え「たった2年でとらえることができた」のは偶然の中の必然であったというのは既報の通りです。臨場感あふれる手記を、ぜひ本誌を手にとってごらんいただければと思います。

■ネットよ今夜もありがとう

今月はムササビWAT01さんの「ムササビの星空ノート2」と、藤井保さんの「かひちやうの部屋」です。

「ムササビWAT01」さんのブログは筆者は「2」になる前から拝見していますが、古くから彗星を中心に観測をされていらっしゃる方で、日本の彗星観測者のネットワークである星の広場HAL-Newsにも熱心に投稿をされています。

「かひちやうの部屋」は恥ずかしながら初見。「1963年7月21日、北海道羅臼岳で初めてコロナを見た」とありますので、筆者が生まれる前からの筋金入りの天文ファンの方のようです。小惑星1995XE1(Tamotsu)は藤井さんのお名前からの命名。「老体にむち打って」とありますが、老体予備軍の筆者も励みにしたいと思います^^

■星ナビギャラリー

今月のトップ下はFさんの「太陽と月ありがとう」。テーマ設定から仕上げまで、高い完成度で新しい表現の可能性を示されました。日食作品は多数の応募があったようで、もう2ページ見開きで紹介されています。

個人的イチオシはSさんのネオワイズ彗星に集まった人たちのスナップと、Oさんの周極彗星の図。まさに「彗星のように」現れた彗星ですが(当然か^^;;)それだけに、ふだんから実践している撮影テーマと手法、そして臨機応変な応用が結実するチャンスでもあったようです。まさに彗星は一期一会!

■エーゲ海の風16「豊壌の母から潔癖の処女へ 月の女神アルテミス」(解説/早水 勉)

太陽神アポロンの妹または姉とされるアルテミス。野山を駆け巡るクールなイメージですが、彼女の最古の文学作品でのデビューはあまり芳しいものではありませんでした。「月の女神」アルテミスはどこからやってきたのでしょうか。

「女神アルテミスとオリオンは、本当に相思相愛の恋人だったのでしょうか」。いきなり締めくくりを引用して恐縮ですが、ギリシャ神話における「月の女神アルテミス」の描かれ方の多様性は「女性」という存在に対する見方の多様性なのかもしれません^^;;

「さっそうと野山を駆け巡るクールな(狩猟の)女神」「たくさんの乳房を持つ(*)多産と豊穣の女神」「(大神ゼウスの悪妻ヘラに)頬をはたかれて泣いて逃げたかよわい女神」「潔癖で容赦ない強い女神」「(アルテミスを侮辱した)オリオンを毒サソリで殺した」「禁断の恋の相手オリオンをアポロンの策略から矢で射ぬいて殺してしまった」などなど。

(*)上画像左。ちょちょちょ、これまじっすか。

各種の「諸説あります」を紐解いて、自分なりの「神話像」を選ぶのも、ギリシャ神話の楽しみ方なのかもしれません。

■科学のロマンを形にした物語 星狩りの夜(紹介/ささきさとこ)

同人誌「星狩りの夜」は、星空や天文描写にこだわり作られた作品です。実は物語誕生のきっかけは、実際に販売しているグッズなのだとか。科学へのロマンを形にしたアイテムや物語の誕生について、作者のささきさんに語っていただきました。

これは素晴らしい。漫画「星狩りの夜」(*)。「科学へのロマン」という7文字をどう具体的に形にしていくか、その一つの表現がここにあります。ぜひリンク先をお読みになってください。

「星狩り」ってカッコイイネーミングですね!昭和時代の「天キチ」に始まって、「天文ファン」「宙ガール®」「ガチ天」などいろいろな言葉がありましたが、これは最上級にCool。

(*)pixivで公開されています。登録なしでも2話まで読めます。

作者の「ささきさとこ」さんは、天文をはじめとする「理科雑貨(*)」を販売するブランド「ルーチカ」を運営されています。「星狩りの夜」も、当初は販売する星座早見盤の広告用漫画として誕生したものだそうです。

(*)「理科雑貨」と聞くと真っ先に頭に浮かぶのがブログ「天文古玩」。ルーチカについては「理科趣味という、一種捉えどころのないものに、明確な輪郭を与えたものと感じます」と書かれています。

ささきさんは「私は理系出身(だが)」「科学的な部分よりも文学的なロマンや、それらを手元に置こうと試行錯誤した先人達の意匠に惹かれる」と書かれています。人はなぜ星を見るのか。なにがどう面白くて楽しいのか。その表現や伝達方法にはいろんな形があるものですね!

まとめ

いかがでしたか?

「ほうき星の尾の先が曲がって旗のように見えた」姿。中国ではこのような姿を蚩尤旗と呼んだそうです。ネオワイズ彗星はこれほどではありませんでしたが、写真での姿には近いものがありました。https://ja.wikipedia.org/wiki/マックノート彗星_(C/2006_P1)

蚩尤旗

〘名〙 彗星の一種。ほうき星の尾の先が曲がって旗のように見えるものをいう。古代中国では、世が乱れ、天子が四方を征伐する前兆とされた。-コトバンクより引用。

「尾の先が曲がって旗のように(写真では^^;;)見えた」彗星、ネオワイズ彗星。「旗のよう」というのは、ダストテールが広がりカーブしていくさまを指しているのでしょう。「天文現象と地上の現象に科学的な因果関係はない」というのが天リフの立場ですが、人間の心の動きはそれとは別。

本稿執筆時点(8月1日)ようやく関東甲信越地方でも梅雨明けが宣言されました。同時に、過去最高を記録した東京のコロナ感染者数の公表値。私たちは日々やるべきこと(やらぬべきこと)を自身の判断で淡々と成す(成さない)のみです。「いつもと違う夏」ですが「いつもと同じ楽しむ心」を持ちたいですね!

そんな中でも毎日一度は天文リフレクションズ。そして毎月5日は天文雑誌!9月号も楽しみですね!

星ナビ9月号は「ネオワイズ彗星」「火球が習志野にヒット」「究極のジュピター」
http://www.astroarts.co.jp/article/hl/a/11408_hoshinavi

※アストロアーツ様より告知文・内容サンプル画像の転載許可をいただいています。

天文ガイドも合わせて読みたいですね!! https://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2020/08/9b9c7e3dd16ec41e946dd00b0406de9e-1024x538.jpghttps://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2020/08/9b9c7e3dd16ec41e946dd00b0406de9e-150x150.jpg編集部雑誌・書籍アストロアーツHPで、星ナビ2020年9月号の内容が告知されています。発売は8月5日水曜日です。 今月の内容は!? 7月に大きく盛り上がった「ネオワイズ彗星」「火球」に加え、「究極のジュピター」では、探査機ジュノーによる木星の極の観測を中心に紹介します。 星ナビ9月号は「ネオワイズ彗星」「火球が習志野にヒット」「究極のジュピター」 http://www.astroarts.co.jp/article/hl/a/11408_hoshinavi ■表紙 表紙となった作品はSNSでも拡散していたので見覚えのある方も多いことでしょう。フランスの「モンサンミシェル」の上に浮かんだネオワイズ彗星です。目次ページにご本人のコメントがありますが「こういう魔法のひとときが大好き」「(処理したり公開するときより)撮影しているときの方がずっと楽しい」とあります。彗星のような大きな天文現象もそうですが、天文趣味は「その場のリアル感・ワクワク感」がやっぱり最高ですね。 ■北半球で23年ぶり 大騒ぎのネオワイズ彗星(解説/吉田誠一) そのネオワイズ彗星、8ページの特集。アトラス彗星・スワン彗星と立て続けの「崩壊」の陰でひっそりと増光し、最大光度0等級という「(北半球では)へール・ボップ彗星以来」の大彗星となったのです。 記事ではそのネオワイズ彗星の発見から増光までの顛末、SNS時代特有のネットでの盛り上がり(大騒ぎ^^;)が、宇宙空間を含む各所からの素晴らしい画像と共に紹介されています。ガチ天マニアおなじみの「荒井師」「三本松師」の両「巨匠」の見開き超絶画像にも注目です。 https://reflexions.jp/tenref/orig/2020/08/02/11389/ 天リフ編集部でもネオワイズ彗星の撮影記をアップしています。こちらもぜひご笑覧ください^^ ■深夜の轟速球、火球が習志野にヒット 火球経路解析と隕石発見(解説/佐藤幹哉) 本記事の冒頭。「7月1日の夜。東京は雨が降っていた」「私は」 https://twitter.com/kaicho_sato/status/1278262194304479232 「とツイッターに書いて就寝したのを覚えている」   https://twitter.com/kaicho_sato/status/1278457445266817024 「その夜、宇宙からの来訪者が関東上空にやってきたのだった」 7月2日未明の「大火球」と、その後まもなく発見された「習志野隕石」。著名な映像クリエータKAGAYAさんが動画撮影に成功されたなど、マスコミでも大きな話題になりました。しかし、その成果を支えたのは「SonotaCo(ソノタコ)」をはじめとする、アマチュアの観測ネットワークでした。火球を常時動画カメラでモニターし、軌道計算まで一気通貫で行うシステムが全国規模で10年以上前から稼働しているのです。 本記事では、今回の火球の詳細の記録とともに、アマチュア観測者たちの仕事とその成果がわかりやすくまとめられています。探査機「はやぶさ(2)」のサンプルリターンに勝るとも劣らない「待ち受け型サンプルリターン」とも呼ぶべきSonotaCoネットワークは、日本のアマチュア天文界の誇りです。いずれ時間の問題で、第二・第三の成果が得られることでしょう。 ■探査機ジュノーがあばく 究極のジュピター(解説/中野太郎) 木星探査機「ジュノー」。2016年7月5日以来、木星の「極から極」へと周回する軌道(極軌道)を約53日の周期で周回を続けています。「(木星の)極地方を観測できる」という特長を生かし「木星の極の渦」や「極の高エネルギー電子(オーロラ)」「極の嵐」などの数々の新しい発見をもたらしました。 「ジュノー」はNASAの科学ミッションの中では予算規模が比較的小さな「中規模」ミッション。予算面でのいろいろな「割り切り」もあったそうですが、アウトリーチも含めて、その成果はとても大きかったのではないでしょうか。そんな「ジュノー」のこれまで4年間の成果を、豊富な画像(*)とともに8ページで解説したのが本記事です。 (*)実は掲載された可視光域の画像は「成果を教育・普及に活用する(アウトリーチ)」ためのもので、いってみれば「オマケ」のようなものだそうです。いつの時代も一番魅力的なのは「オマケ」なのかも?! ■新連載 マユコの星ナビch 突撃!ラボ訪問(紹介/マユコ) ご存じですか?アスナロサイエンス。「天文学を専攻する大学院生のマユコ」さんのYouTubeチャンネルです。マユコさんの専攻は「系外惑星(太陽系外の恒星の周りを周回している惑星)」ですが、今回始まった連載はそんなマユコさんが「様々な分野の研究者にインタビューする」というもの。第1回はマユコさん自身のご紹介。 「私のリアルをお届けする」「誰かの未来が少し見通しやすくなるかも」「研究者に親しみを感じてもらいたい」そんなコンセプトの「アスナロサイエンス」とのコラボ企画。本誌発売とたぶん同時に公開されるであろう動画にも注目。チャンネル登録はこちらから! https://youtu.be/aNMrad6bMHk 「院試ってツラいよね」落第生だった編集長はこの動画をみてホロリ。 ◎広告ピックアップ ■セレストロンStarSense Explorer セレストロン社の代理店になったビクセン。2ヶ月連続のセレストロン商品です。これは先月ご紹介したアプリ「Sky Portal」とは別のアプリ「StarSense Explorer」。何が違うかというと、スマホのカメラそのもので星空を実際に撮像し、星図データと自動照合して望遠鏡の向きを判別して対象を探せるというものです(*)。 (*)架台にはモーターは付いていません。望遠鏡をIT制御で駆動するのではなく、望遠鏡が今向いている場所をIT制御でリアルタイムに検知し画面に表示する仕組みです。 キャッチコピーは「ゲーム感覚で星を探す」となっていますが、その本質は自動導入革命ともいうべきもの(*)。ある意味、目的地から目的地に一直線の「地下鉄」であったGOTOから、車窓からの風景を眺めながら自力で目的地に進むことを「アシスト」する形へ。業界全体のトレンドを大きく変える可能性のある技術です。この製品がどう市場に受け入れられていくか、競合他社がどんな動きに出てくるかに注目です。 (*)業界の大御所が評価用に早速自腹購入したという情報も^^ ◎天リフ独断ピックアップ ■KAGAYA通信・夢に見た隕石火球をとらえた! 「生きているうちに一度は隕石火球が上空を横切るかもしれない」隕石火球の一部始終をみごとに動画でとらえたKAGAYAさんがカメラを設置したのが2年前。試行錯誤とトラブルを乗り越え「たった2年でとらえることができた」のは偶然の中の必然であったというのは既報の通りです。臨場感あふれる手記を、ぜひ本誌を手にとってごらんいただければと思います。 ■ネットよ今夜もありがとう 今月はムササビWAT01さんの「ムササビの星空ノート2」と、藤井保さんの「かひちやうの部屋」です。 「ムササビWAT01」さんのブログは筆者は「2」になる前から拝見していますが、古くから彗星を中心に観測をされていらっしゃる方で、日本の彗星観測者のネットワークである星の広場HAL-Newsにも熱心に投稿をされています。 「かひちやうの部屋」は恥ずかしながら初見。「1963年7月21日、北海道羅臼岳で初めてコロナを見た」とありますので、筆者が生まれる前からの筋金入りの天文ファンの方のようです。小惑星1995XE1(Tamotsu)は藤井さんのお名前からの命名。「老体にむち打って」とありますが、老体予備軍の筆者も励みにしたいと思います^^ ■星ナビギャラリー 今月のトップ下はFさんの「太陽と月ありがとう」。テーマ設定から仕上げまで、高い完成度で新しい表現の可能性を示されました。日食作品は多数の応募があったようで、もう2ページ見開きで紹介されています。 個人的イチオシはSさんのネオワイズ彗星に集まった人たちのスナップと、Oさんの周極彗星の図。まさに「彗星のように」現れた彗星ですが(当然か^^;;)それだけに、ふだんから実践している撮影テーマと手法、そして臨機応変な応用が結実するチャンスでもあったようです。まさに彗星は一期一会! ■エーゲ海の風16「豊壌の母から潔癖の処女へ 月の女神アルテミス」(解説/早水 勉) 「女神アルテミスとオリオンは、本当に相思相愛の恋人だったのでしょうか」。いきなり締めくくりを引用して恐縮ですが、ギリシャ神話における「月の女神アルテミス」の描かれ方の多様性は「女性」という存在に対する見方の多様性なのかもしれません^^;; 「さっそうと野山を駆け巡るクールな(狩猟の)女神」「たくさんの乳房を持つ(*)多産と豊穣の女神」「(大神ゼウスの悪妻ヘラに)頬をはたかれて泣いて逃げたかよわい女神」「潔癖で容赦ない強い女神」「(アルテミスを侮辱した)オリオンを毒サソリで殺した」「禁断の恋の相手オリオンをアポロンの策略から矢で射ぬいて殺してしまった」などなど。 (*)上画像左。ちょちょちょ、これまじっすか。 各種の「諸説あります」を紐解いて、自分なりの「神話像」を選ぶのも、ギリシャ神話の楽しみ方なのかもしれません。 ■科学のロマンを形にした物語 星狩りの夜(紹介/ささきさとこ) これは素晴らしい。漫画「星狩りの夜」(*)。「科学へのロマン」という7文字をどう具体的に形にしていくか、その一つの表現がここにあります。ぜひリンク先をお読みになってください。 「星狩り」ってカッコイイネーミングですね!昭和時代の「天キチ」に始まって、「天文ファン」「宙ガール®」「ガチ天」などいろいろな言葉がありましたが、これは最上級にCool。 (*)pixivで公開されています。登録なしでも2話まで読めます。 作者の「ささきさとこ」さんは、天文をはじめとする「理科雑貨(*)」を販売するブランド「ルーチカ」を運営されています。「星狩りの夜」も、当初は販売する星座早見盤の広告用漫画として誕生したものだそうです。 (*)「理科雑貨」と聞くと真っ先に頭に浮かぶのがブログ「天文古玩」。ルーチカについては「理科趣味という、一種捉えどころのないものに、明確な輪郭を与えたものと感じます」と書かれています。 ささきさんは「私は理系出身(だが)」「科学的な部分よりも文学的なロマンや、それらを手元に置こうと試行錯誤した先人達の意匠に惹かれる」と書かれています。人はなぜ星を見るのか。なにがどう面白くて楽しいのか。その表現や伝達方法にはいろんな形があるものですね! まとめ いかがでしたか? 蚩尤旗 〘名〙 彗星の一種。ほうき星の尾の先が曲がって旗のように見えるものをいう。古代中国では、世が乱れ、天子が四方を征伐する前兆とされた。-コトバンクより引用。 「尾の先が曲がって旗のように(写真では^^;;)見えた」彗星、ネオワイズ彗星。「旗のよう」というのは、ダストテールが広がりカーブしていくさまを指しているのでしょう。「天文現象と地上の現象に科学的な因果関係はない」というのが天リフの立場ですが、人間の心の動きはそれとは別。 本稿執筆時点(8月1日)ようやく関東甲信越地方でも梅雨明けが宣言されました。同時に、過去最高を記録した東京のコロナ感染者数の公表値。私たちは日々やるべきこと(やらぬべきこと)を自身の判断で淡々と成す(成さない)のみです。「いつもと違う夏」ですが「いつもと同じ楽しむ心」を持ちたいですね! そんな中でも毎日一度は天文リフレクションズ。そして毎月5日は天文雑誌!9月号も楽しみですね! 星ナビ9月号は「ネオワイズ彗星」「火球が習志野にヒット」「究極のジュピター」 http://www.astroarts.co.jp/article/hl/a/11408_hoshinavi ※アストロアーツ様より告知文・内容サンプル画像の転載許可をいただいています。 天文ガイドも合わせて読みたいですね!!編集部発信のオリジナルコンテンツ