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天体観測のゲームチェンジャー、新時代のスマート天体望遠鏡Seestar S50。「天体写真はイロイロ難しい」というこれまでの「常識」が一気に変わります!しかもお値段は今どきビックリの9万円切り!そんな「Seestar S50」の全てを総力解説します!

(*)特別協賛とは、本記事のサムネイルおよび記事中にスポンサー様の特別広告枠を掲載することにより対価をいただく形です。記事そのものの編集ポリシーは通常の天リフ記事と同等です。

広告)オールインワンスマート望遠鏡・Seestar S50

目次

天体観測(天体写真)のゲームチェンジャ−・Seestar S50

誰でも簡単に天体の姿が見られる「スマート望遠鏡」

Seestar S50で撮影。左)ペガサス座のエッジオン銀河NGC891(総露光時間7分20秒)、右)こぎつね座の惑星状星雲M27(総露光時間18分20秒)。ここまでの画像なら、特別な技術がなくてもSeestar S50任せで撮影ができます。

「宇宙は美しい」。無限ともいえる彼方に存在するさまざまな天体。神秘的な色と形、まさに「桁違い」のスケール。そんな宇宙の姿に感動し「自分も見てみたい、撮ってみたい」と思ったことのある方は、決して少なくはないことでしょう。

しかし、胸ときめかせて天体望遠鏡を手に入れて宇宙に接した時、誰もが「こんなはずじゃなかった」と思ったのではないでしょうか。さまざまな機材を大枚叩いて購入し、頭の痛くなるようなパーツ群を組み合わせて機材を設置し、得られた(見られた)リザルトは・・・「ハッブル宇宙望遠鏡とまではいかないにしても、もう少し写って(見えて)くれてもいいんじゃないの?!」

このスタートラインで「なにくそっ」と思って深みにズンズンとハマっていく人も多いのですが、一気に打ちのめされてそれっきりになってしまう人はそれ以上に多いはず。技術的なハードルの高さがこれほど高い趣味はないのではないでしょうか。



Seestar S50でNGC7023アイリス星雲を撮影中。エンハンスモード(ライブスタック)36分露光の状態です。広がった淡い部分と中心の明るい部分をきっちり表現するのはなかなか難しい対象なのですが、ここまで写るのは驚きでした。スマホのキャプチャ画面は無調整です。

しかし、Seestar S50をはじめとする「スマート天体望遠鏡」の登場で、その状況は一気に変わりました。Seestar S50では、まさに上の画像の通りのシンプルなシステムで、宇宙の姿を「見る(*)」ことができるのです。

(*)見るといっても、光学望遠鏡のように眼で覗いて見るわけではありません。デジタル的に得られた映像をスマートフォン・ダブレットのモニタ画面に表示します。

箱から本体と三脚を取り出して、設置はわずか数分。十分に充電しておけば電源ケーブルすら不要。アプリを操作して、目的の天体を選んで、後は待つだけ。Seestar S50が自動で天体の方角に動き、微弱な天体の光をイメージセンサーに蓄積し、色鮮やかな天体の姿を表示してくれます。

スマート望遠鏡とは?

ここで「スマート望遠鏡」とは何かについて、独断ですが明確にしておきましょう。スマート望遠鏡の何が「スマート」なのか。それは、これまで苦労しないとできなかったことが簡単に(または意識することすらなく)できるようになったのです。

デジタル映像をモバイルデバイスで見る

https://hoshimiya.com/?pid=174095976 より引用

一つめのスマートは、まさにIT技術的なスマートさです。スマート望遠鏡はその名の通り「スマートフォン(ないしはタブレット)」を使用して望遠鏡を操作し、得られた映像を表示します。

スマートフォンは今や「1人一台」といえるほど普及していますから、多くの人がその操作にすでに「慣れて」います。専用の機器の特別な操作を要求しないことで、操作のしきいを大幅に下げることができるのです。

また、これまでの天体撮影では専用の機器を組み合わせて使用することが一般的でしたが、この場合機器それぞれにをケーブルで接続(もちろん給電も)する必要がありました。スマート望遠鏡では基本的に機器はオールインワンで操作は無線。「ケーブルレス」もスマート望遠鏡の大きな特徴といえるでしょう。

デジタルイメージング技術を駆使して暗い天体でも見える

ライブスタックのイメージ図。短い露光時間の映像であっても多数重ね合わせる(スタック、加算平均)ことで、暗い対象が時間とともに浮かび上がってきます。https://hoshimiya.com/?pid=174095976 より引用

二つめのスマートさは「天体」に特化したデジタルイメージング技術です。21世紀以降急速に進歩したイメージセンサーは、人間の眼と比較してまだ苦手な分野(*1)もあるものの、とても暗い天体を見る上では、「光を長時間蓄積できる」アドバンテージが圧倒的に大きく(*2)なります。

(*)デジタルイメージングの一番の弱点は、極端な明暗差を表現することに限界があることでしょう。現在の一般的なディスプレイではせいぜい1:1000程度の輝度差しか表現できません。ただし、輝度差1:100万クラスの表示デバイスはすでに実現しているため、近い将来この弱点も解消されてくるかもしれません。

(*)超ざっくりいって「100倍」くらい暗い星まで見ることができます。星の明るさを表す「等級」でいうと5等級分。Seestar S50の対物レンズの有効径はわずか5cmですが、10倍の口径50cm分くらいのパワーがあります。

さらに、圧倒的に「暗い」天体の映像を鮮明にとらえるために「ライブスタック」の技術が使用されます。これは、スマホカメラの「ナイトモード」をイメージするとわかりやすいでしょう。連続して何枚もの画像を繰り返し撮影し、日周運動や機械的な追尾誤差(*)を補正して重ね合わせるのです。

(*)スマホカメラでは「手ぶれ」に相当します。

Seestar S50で星雲星団モードで撮影を開始すると「10秒露光」の撮像を繰り返して画像をスタックしていきますが、放置しておくだけでどんどん映像がキレイになっていきます。天体を正しく追尾している限り(*)はいくらでも光を蓄積していけるのです。

(*)最大どれくらいの時間、露光を積み重ねられるかは機械的な追尾精度に依存しますが、筆者の使用例では30分程度であれば特に問題ありませんでした。ネットでは2時間露光した例も見かけます。人間の根気の続く時間くらいは大丈夫なようです。

いて座のM8ラグーン星雲。左はデジタルカメラで撮影した映像ですが、肉眼での印象を再現したのが右です。肉眼では明るい星以外は色はごく薄くしか確認できず、ぼんやりと暗い部分のディテールも写真よりはるかに弱くなります。

また、人間の眼は暗所では「色」を感じる能力が極端に低下してしまいますが、イメージセンサーではそのようなことはありません。イメージセンサーなら暗い天体でも色付きで見ることができるのです。

天体を簡単に導入・追尾できる

Seestar S50のさまざまな対象の指定方法。左から、トップ画面の「今夜のオススメ」から選択する、星図モードから対象を選択する、星図モードの天体検索からカテゴリ・対象名などで指定する。とても使いやすく洗練された操作性です。ただし、検索顔面はプレビュー画面からも直接飛べるといいのですが。

3つめのスマートさは、目的の天体を簡単に見つけて追いかけられることです。宇宙にはそれこそ「星の数ほど」天体があります。「どこを見ればどんな天体があるのか」を人間の記憶力だけで解決するのは至難の技です。

スマート望遠鏡ではこの問題を3つの技術で解決しています。一つめは天体のデータベースを使いやすい形で用意すること。Seestar S50アプリの場合、アプリの中に「星図」と「天体カタログ」が搭載されていて、星図から直接天体を指定することも、天体の名前やカタログ番号から直接指定することも可能です。また「今夜のオススメ」のような形で、何の知識がなくても人気のある天体を指定することができます。

https://hoshimiya.com/?pid=174095976 より引用

二つめは望遠鏡を対象の天体に正確に向ける技術。具体的には、スマートフォンのGPS情報と本体に内蔵された高度方位のセンサーの情報をもとに「だいたいの方角」に望遠鏡を向けます。次にその向きの天体の画像を1枚撮像し、星並びから正確な今の向きを割り出します(Plate Solve技術)。このような動きを繰り返して、センサーや機械的な誤差があっても望遠鏡を正しい向きに向けることができるのです。

三つめは、刻々と「日周運動」で移動していく天体を正確に追尾する技術。天体は地球の自転によって1時間に約15°、天の北極を中心に回転していますが、架台の回転軸の向きさえ正確に把握できれば、天体の動きを計算して追尾することは理論的には(*)難しいことではありません。

(*)機械誤差も含めて正確に追尾するのは実はそれほど簡単な話ではないのですが、Seestar S50の追尾精度は「完璧とはいえないがなかなか健闘している」と感じました。

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最新技術も細かな配慮も全部入り

3枚玉アポクロマート・屈曲光学系

Seestar S50の光学系。対物レンズはEDガラスを1枚使用した3枚玉、口径は50mm。焦点距離は250mmですが、内部に2枚のミラーを内蔵した屈曲光学系を採用することでコンパクト化を実現しています。 https://hoshimiya.com/?pid=174095976 より引用

「ポン置きして、アプリを操作して対象を指定するだけで天体が撮れる」。一言で表現できてしまうSeestar S50のユースケースですが、このことを実現するためには、前項の「スマート望遠鏡の条件」だけでなく、様々な最新技術が取り入れられています。そしてこれらの技術の多くは、ユーザーの眼には直接触れない形にまでブラックボックス化されているのがSeestar S50のスゴイところです。

実は一番驚いたのが、コンパクトでありながら天体望遠鏡として非常に優秀な光学性能を発揮しているところ。EDレンズを使用した口径50mm焦点距離250mmの3枚構成の対物レンズ(*)は、非常にシャープな像を結びます。天体写真の大敵である青・紫の色にじみもほぼ感じられず、天体撮影用の望遠鏡として一級品のクオリティです。

(*)口径比F5とそこそこ明るいですが、イメージセンサー(ソニー製IMX462)が5.6×3.2mmと小さいため、フラットナーのような補正レンズを入れなくても周辺像に流れはなく、十分満足できる画質が得られています。

Seeastar本体は中央の画像のようにL字型の架台部と上下に回転する鏡胴部から構成されています。鏡胴部が上下に回転し架台部の底部に水平に回転するターンテーブルがあります。https://hoshimiya.com/?pid=174095976 より引用

そして大胆にも、内部に2枚のミラーを入れた屈曲光学系(*)によってコンパクト化を実現。光学系を収めた上下に回転する「鏡胴部」の全長をわずか18cmに収めることができたのはこの効果。鏡胴部が短くなることで慣性モーメントも小さくなり架台への負担も小さくなっているのでしょう。

(*)このような考え方は、iPhone 15 Pro Maxの望遠カメラや双眼鏡など光学製品では珍しくはないのですが、一般向けの天体望遠鏡ではほとんど例を見ないものです。

ピント合わせもワンタッチ・オートフォーカス搭載

https://hoshimiya.com/?pid=174095976 より引用

そしてこれまたスゴイのがオートフォーカスの採用。ピント合わせは画面上の「AF」アイコンをタップするだけ(*)。天体写真における最初の関門ともいえる「ピント合わせ」が一発でできるのは素晴らしすぎる!

(*)デジタルカメラで多く採用されている「像面位相差」方式ではなく、ピント位置をずらしながら連続撮影し、ボケ方のカーブからピント位置を判断している(オリンパスのOM-1などで採用されている「星空AF」と同じような考え方)ような挙動をします。ピント合わせの所要時間は一瞬ではなく10秒ほど待たされますが、精度はとても高いと感じました。

光害カットフィルター内蔵

https://hoshimiya.com/?pid=174095976 より引用

これまた驚いたのが、強力な光害カットフィルター(*1)が内蔵されていて、画面上でタップするだけであり/なしを切り替えられること。筆者の知る限り「内蔵」した製品は初めてです。これはスゴイ。この光害カットフィルターは星雲が発する特定の波長以外の光を大幅にカットすることで、市街地でも淡い星雲の姿をとらえることができ、空の暗い場所で使用すると淡い星雲をさらにはっきりと浮かび上がらせることができます。

(*1)半値幅は20〜30nm。

輝線星雲である「北アメリカ星雲(NGC7000)」には光害カットフィルターが初期状態で使用されることを意味する緑丸が表示されています。一方、効果があまり見込めない反射星雲であるプレアデス星団(メローペ付近のNGC1435)には緑マークが表示されていません。

光害カットフィルターを使う効果のある天体(輝線星雲)には、Seestarの対象リストに小さな緑の丸が表示されます。この緑マークのついた天体を導入すると光害カットフィルターに自動的に切り替わるようになっています。手動でOFFにすることも可能です。

内蔵されているフィルターは三種類(*1)。光害カットフィルターのほかには、通常の撮影を行うための「UV/IRカットフィルター」とダーク画像(*2)撮像用の「遮光フィルター」です。

(*1)専門的な天体撮影の場合、複数のフィルターを切り替える回転式の「フィルターホイール」を使用するのですが、電動式は安いものでも3万円ほどします。8万円台というSeestar S50にこんなマニアな?仕組みを入れてくるとは・・・スゴイ。

(*2)光を遮断した状態の画像をあらかじめ撮像しておき、対象の画像から引き算することでイメージセンサーのノイズを補正する方法。デジタルカメラでも「長秒時ノイズ低減」のような名前で実装されています。

Seestar S50で撮影したM42オリオン大星雲の比較。左)光害カットフィルターなし、総露光130秒。右)光害カットフィルターあり、総露光150秒。福岡市内より撮影。

Seestar S50内蔵の光害カットフィルターの効果を比較してみました。M42オリオン大星雲はとても明るい天体なので市街地でも撮影できるのですが、光害カットフィルターを使用した右の画像では、周辺の淡い部分があるかによく描出されています。

露よけヒーター内蔵

設定画面で「結露防止ヒーター」をONにしておけば、夜露に悩まされることもありません。ただし消費電力が大きくなるのでバッテリの消耗には注意が必要です。

湿度が高く夜間冷え込むような環境では、天体望遠鏡のレンズへの結露は頭の痛い問題です。実際のところ、これまでの光学望遠鏡では結露防止対策は遮光を兼ねた「フード」を搭載するのみで、結露を防止するには自分でヒーターを準備し対策することが当たり前とされてきました。

しかし、Seestar S50には「結露防止ヒーター」が内蔵されているのです。本当に必要なものはスマートにあらかじめ製品に実装する、というスマート望遠鏡のコンセプト(*)が細かなところまで実現されています。

(*)誰かが定義したものではありませんが、一般に「スマート」を冠するデジタルデバイスに通じるものでしょう。

実際、ある夜にSeestar S50の対物レンズに夜露がべっとり付いてしまうことがありましたが、結露防止ヒーターをONにすることで、10分程で露が撮れてクリアになりました。これは本当にありがたいことです。

驚きの低価格

そして・・・びっくりするほど安い。デジタル式のスマート天体望遠鏡が初めて発売された(*)のが2021年ですが、この時の価格は50万ほどでした。一方でSeestar S50は一桁近くも安い、驚きの82,300円(2023年10月13日現在、消費税込。発売後に円安が進行したこともあり少し値上げされました)。

(*)ユニステラ社の「eVscope」が最初のスマート天体望遠鏡だといってよいと思います。米国のCESに初めて出展されたのが2017年、クラウドファンディングで製品が初めてユーザーの手に届いたのが2019年。通常の製品として販売が始まったのが2021年です。

初心者向けの光学式天体望遠鏡ですら、現在の市場価格は数万円〜7万円程度。もうそのくらいの価格帯までスマート望遠鏡が降りてきたのです。

これからは「初めて購入した天体望遠鏡はスマート天体望遠鏡だった」という人が大幅に増えてくることでしょう。天体観測・天体写真という趣味への「入口」が根本的に変わってしまうインパクトを秘めているのです。

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Seestar S50の外観

パッケージ概要

それでは、Seestar S50の外観を見ていきましょう。

段ボール箱にスチロールの間仕切り、という至って地味なパッケージが多い天体望遠鏡ですが、Seestar S50はいかにも「家電製品風」な取っ手付きの化粧箱に収められています。

箱を開けると灰色の硬質スチロールのケースが入っています。このケースを10年使い続けるのは難しいかもしれませんが、収納や持ち運び用に問題なく使えるレベルです。このような「梱包材を兼ねたお手軽キャリングケース」はコストダウンにも貢献しているといえるでしょう。

Seestar S50の製品構成はこれまでの初心者用の光学望遠鏡よりもさらにシンプル。本体・三脚・USBケーブル・太陽観察用のフィルターと小冊子だけ。基本的には、追加で購入すべきものはありません(*)。

(*)後述しますが、付属の三脚はかなり短く背が低いため、長めの三脚に換装したくなる場合もあります。本体への給電・充電用にモバイルバッテリがあると便利ですが、内蔵電池だけでも公称6時間の使用が可能です。

現在販売されている中級向け以上の天体望遠鏡は「本体だけ購入しても実際はそれだけでは使えずパーツを買い足さなくてはならない(*)」ものがほとんどです。このパッケージだけで基本的には全て足るというのは実は画期的なことなのです。

(*)例えば天体写真用途の場合、何らかの「カメラ」が必要なことはもちろん、画像処理用に「パソコン」がほぼ必須です。ほかにも撮影用の補正レンズやアダプタリングなど、細々としたものもいろいろ必要になります。

本体

Seestar S50本体は、なかなかクール・シンプルなデザイン。収納状態では角の丸い直方体に半円のカマボコ型を組み合わせた形状です。望遠鏡の光学系、水平・垂直方向に可動する自動導入架台(経緯台)が一体となっています。

三脚に取り付けられたL字型の本体に、光学系を含んだアームが取り付けられていて上下に回転します。収納状態では望遠鏡は地面の真下を向く形になっています。

重量は三脚を含めて実測わずか約3kg(*)。これに加えてあと必要なものはスマホだけ。これさえあれば、美しい天体の姿を見ることができるのです。

(*)本体が2320g、三脚が610g、付属品を含めたケースが670gでした。

右の画像の奥に見えるのがイメージセンサー。

対物レンズは当然ですがフルマルチコート。レンズから本体内部を覗き込むと内面は黒色のプラそのままですが、三カ所ほどに遮光環の役割を果たすくり抜きがあって迷光を防ぐようになっているようです。遮光環のサイズはセンサーと比較してかなり余裕があります(*)。

(*)一回り大きなセンサーを搭載することも想定した設計なのかもしれません。

20231021追記)対物レンズには迷光対策のためにフードを付けたくなるところですが、レンズ部の内側にはネジは切られていません。仮にネジが切られたとしても、フードを装着すると収納状態では本体と干渉するので、オートパワーオフを設定で切っておくなど注意が必要です。

電源ボタンは鏡筒部の反対側にあり、その下の4つのランプは電源インジケーターです。Seestar S50本体で発光する部分はこの面しかありません。暗闇で使う場合、本体も三脚も黒いことと相まって、誤って蹴り倒してしまうこともあるかもしれません。さすがのSeestar S50もそこまで手が回らなかったのでしょうか。三脚の先に蓄光テープを貼るなどの対策をオススメします。

手前のコネクタは、Seestar S50の唯一の物理インターフェースとなるUSB-C端子。本体の充電と本体に保存されたデータの吸い出しに使用します(*)。

(*)USB-CケーブルでPCに接続すると外部ドライブとして認識されます。なお、ネットワークの設定にもよりますがWiFi経由でSeestar S50にアクセスすることも可能です。

下段左の冊子「セキュリティの概要」は、星見屋で販売されるSeestar S50では、今後オンライン版のQRコードが書かれた紙に置き換わるそうです。

ケースから三脚を取り外した下の凹みに付属品一式が収納されています。とはいっても、USB-Cケーブルと説明冊子が2つ、乾燥剤と太陽フィルターのみ。実質的には本体と三脚のみで運用できます。

本体底面には、三脚取付用のネジ穴の空いた直径40mmほどの丸いリングがあり、このリングが回転することで水平方向に本体が動きます。注意しなければならないのは、このリングと本体のクリアランスがわずかしかないこと。三脚側の取付部は「リングには密着するが本体とは接していない」状態でなくてはなりません。

このため、三脚や雲台側の取付面に凹凸があると、リングだけでなく本体にも圧着されてしまい、水平方向の動作ができなくなる危険があります。付属の三脚はその点何も考える必要がないのですが、社外品の三脚を使用する場合は注意が必要です。

三脚

付属の三脚は2段のカーボン製で長さは実測で縮長約27.5cm(地上高23.5cm)、最大長42cm(同36cm)。「ミニ三脚」くらいの長さです。カーボン製の三脚は高価なものですが、まさに「カーボン製三脚が奢られている(*)」といっていいでしょう。

(*)「奢られている」というのは、昭和・平成時代のクルマ雑誌でよく使用されていた表現。高価なパーツ・素材が惜しげもなく使用されている、の意。この製品価格でカーボン三脚が付属するのにはちょっとビックリ。

三脚の本体との嵌合部には水準器が付いています。Seestar S50を設置する際には水平が大きく狂っていると導入・追尾に悪影響が出るため、この水準器を頼りに、だいたいの水平を取って設置するようにします。

Seestar底面の3/8UNCネジ穴。

本体との取付はいわゆるカメラ用の「太ネジ(UNC3/8)」です。このサイズの三脚は「細ネジ(UNC1/4)」仕様が多いのですが、3kgの本体を安定して脱着する意味で(*)太ネジの採用は妥当といえるでしょう。ただし、後述しますが細ネジ仕様の三脚をアダプタを介して使用する場合は微妙に注意が必要です。

(*)三脚または本体をクルクル回して脱着する場合、細ネジでは斜めに無理矢理ねじ込んでネジ山を「なめて」しまう危険がありますが、太ネジならそのリスクは小さくなります。

電源

本体底面にはリチウムイオン電池が収納されていますが、日本向けの製品ではケースを止めるネジにシールが貼られていて「バッテリーの取り外し、交換はできません」とアナウンスされています。

日本国内における規制・認証の関係だと推測しますが、USB-Cで給電しながら使用できるため特に不便は感じませんでした。デジタルカメラで多い「電池が切れたら予備電池と交換する」という仕様よりも、ずっとシンプルで使いやすいといえます。

ちなみに、Seestar S50には「オートパワーオフ」の機能があります。何も操作せず放置すると(*)15分で電源がオフになるという機能です。電源の切り忘れによる電池の無駄な消耗を避ける意味でも便利な機能です。

(*)設定でオートパワーオフをOFFにすることもできます。もちろん、ライブスタックやタイムラプス撮影の実行中にシャットダウンされることはありません。

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Seestar S50の基本操作

地上風景を見る

左)Seestar S50アプリのトップ画面の中段、一番右に「風景」モードのボタンがあります。中)Seestar S50を地上風景に向けているところ。黄色の枠が撮影範囲。右)Seestar S50の風景モード実写画面。

Seestar S50を購入されたら、まず昼間の風景を「風景」モードで見てみることをオススメします。Seestar S50がカメラレンズでいえばかなりの超望遠(*)であること、上下左右に望遠鏡の向きを変える操作、ピント合わせ(AF)の方法、画面の明るさ調整など、基本的な操作感をすぐに理解できることでしょう。

(*)画角的にはフルサイズ換算で焦点距離約1680mm相当になります。

左)カーソルを少しだけスライドすると微動。白い矢印が表示されます。右)大きくスライドすると粗動。赤い矢印が表示されます。

特に、画面上に表示された「カーソル」を上下左右にスライドさせて動かす操作は、ある程度慣れておく必要があります。少しスライドすると白表示で微動、大きくスライドすると赤表示で粗動です。微動でもけっこう速いため、つい「行きすぎてしまう」のがちょっと気になります。このあたりの動作は今後チューニングされるのではないかと推測しますが、手動で思った位置に望遠鏡を向けるには慣れが必要でしょう。

なお、地上風景モードでは天体と違って追尾はされません。月の出・月の入りなどを風景を固定して撮影したい場合はこの風景モードを使用するのがよいでしょう。

太陽を見る

Seestar S50で撮影した太陽面。オレンジ色に着色しているのは太陽フィルターの色です。

Seestar S50を昼間の屋外に持ち出したのなら、ぜひ「太陽モード」で太陽面を観察してみましょう。これまでの他社のスマート天体望遠鏡で「太陽面」の観察をサポートした製品は存在しませんでした。これはSeestar S50だけの機能です。

一般に天体望遠鏡で太陽を見ることは、何も減光処置をせず肉眼で太陽を直視すると失明する危険があることから、もはや「禁忌(タブー)」くらいの勢いになっています。、口径の大きな天体望遠鏡では機材を損傷するどころか、まさに「炎上」するリスクすらあります。

付属の太陽フィルターを装着しているところ。フィルターは収納状態では取り付けることができないので、望遠鏡の向きを少し上向きに移動してから装着します。

肉眼で直視しないSeestar S50の場合、少なくとも失明の心配はありません。ただし、筐体の対物レンズ側に「太陽フィルター」をしっかり装着する必要があります。このフィルターは太陽の光を10万分の1くらいにまで減光するもので、これさえ装着していればセンサーを傷める心配はありません。逆にこれを装着せずにうっかり太陽に向けてしまうと、イメージセンサーが焼け焦げてしまいますので、絶対に装着を忘れずに!

Seestar S50で太陽面を見ると、太陽黒点のようすが日々変わっていくことをあらためて実感します。太陽という最も身近な「恒星」の姿を簡単に観察できるのは素晴らしい!リスクが存在する中、太陽の観察を可能にした本機能には拍手喝采を贈りたいと思います。

注意点を2つ。一つめは、この太陽フィルターは専用の太陽望遠鏡(*)のように「プロミネンス」「彩層」「ダークフィラメント」などを観察できるものではありません。画面上では太陽がオレンジ色に着色していて、なんとなくそれらしく見えるのですが、実際には単なる少し色の付いた減光フィルターです。

(*)プロミネンスなどを観測できる「太陽望遠鏡」は、特定の波長だけをごく狭く通す特殊なフィルターが内蔵されていて、最も低価格の製品でも10万円以上する高価なものです。

このような太陽のすぐ近くに建物がある場合では、太陽の導入に失敗することがあります。

二つめは、視界が開けていない場所では太陽の導入に失敗するケースがあることです。Seestar S50の太陽導入では、本体の方位・角度センサーでまずだいたいの方向に望遠鏡を向けた後、水平方向に空をスキャンして得られた背景の空の明るさのカーブから太陽の向きを判断しているようです。このため、スキャンする途中に建物や雲があると導入に失敗する確率が高くなるようです(*)。

(*)アプリV1.9の場合。今後改良される可能性があります。

太陽を手動で導入する際、筆者は本体のへりのラインを頼りに行いましたが、太陽はとても眩しいので濃いサングラスを着用した方がより安全かもしれません。

導入に失敗すると手動で太陽の方向に向けるしかないのですが、このとき太陽を肉眼で直視しないように注意してください。手動導入の際は太陽の明るい光球面が視野内のどこかにあるか、上の右の画像のように「太陽が近くにある」状態になれば、再度導入を行えば太陽を中心に導入してくれます。

最新版のアプリ1.9.1では、太陽の追尾機能がさらにパワーアップしています。それまでの単純な太陽時追尾ではなく、機械的な誤差や設置の誤差を補正し太陽が常に中心に表示されるようになりました(*)。日食の経過を追い続けるような用途で大いに役立つことでしょう。

(*)ただし、長時間のタイムラプス撮影の場合は微妙に太陽が中心からフラフラ動いてしまいます。さらなるアプリのバージョンアップに期待したいところです。

星雲・星団を見る

赤枠が「星雲星団」モードの切替ボタン。

さて、風景と太陽を見たら、次は夜の星空に向けてみましょう。風景と太陽を見て基本操作を練習していれば、つまづくことなく星雲星団も見ることができるでしょう。

左)水平が大きくずれているときは「Seestarが水平ではありません。調整してください」というメッセージが表示されます。中)調整画面。画面に傾きが白色の円で表示されます。右)三脚を調整してずれが表示が緑色になるとOK。誤差0°まで追い込む必要はありません。

ひとつ、大事なことがあります。Seestar S50の基本として、三脚をなるべく水平に立てることです。付属の三脚には水準器がついているので、これをたよりに「だいたい」水平に設置します。大きくズレている場合、Seestarアプリ画面に「三脚の水平を調整してね!」というメッセージが表示されますので、表示が緑になるように三脚の長さや足を動かして調整します(*)。

(*)最終的な導入では星並びから望遠鏡の向きを自動で判別してSeestar S50が自動的に調整してくれるので、あまり神経質になる必要はありません。目で見て「傾いていない」程度なら大丈夫です。

目的の天体は、アプリの対象一覧または星図から対象を選択します。あとはSeestar S50が自動的に動いて対象に向けてくれます。ただし、当たり前ですが目標の天体が雲や建物に隠されていて見えない場合は導入ができません。視界の制限されたベランダなどで観察する際は、目的の天体の方角が「見えている」ことを確認する必要があります。アプリの星図画面でスマホを空にかざして「コンパス」をONにすれば、一かざした方角の星空を表示してくれるので、これが目安になります。

オリオン大星雲M42の例。左)プレビュー状態。ほんのわずかしか星と星雲は写っていません。中)10秒露光。オリオン大星雲の姿が明瞭に浮かび上がってきました。右)3分露光。周辺の淡い部分も見えてきました。同時に背景のノイズが大幅に少なくなっています。

めでたく天体が導入できたら、画面下部の撮影ボタンをタップしてみましょう。このボタンを押す前のプレビュー状態では、イメージセンサーは短い露光時間で動作しているため明るい星がパラパラと見えるだけなのですが、撮影ボタンを押すと「10秒露出」で対象を次々と撮影し、得られた画像を積み重ねる(スタック)することで、暗い天体が徐々に浮かび上がってきます。あとは、満足のいくまでSeestar S50に撮影をまかせてスタックを続けるだけです。

Seestar S50の標準の出力画像は背景がやや暗め、コントラストと彩度の強調もマイルドです。これは「星空らしい」テイストで好ましいのですが、天体の淡い部分をもっと絞り出したい場合はスマホの写真アプリなどで明るさ・コントラスト。彩度を強調するとよいでしょう。

ノイズレベルの違いがわかりやすくなるように、Photoshopを使用してトーンカーブで強調し彩度も上げてみました。10秒露光ではザラザラだった背景が3分露光ではだいぶ滑らかになっています。

オリオン座の馬頭星雲を撮影中。光害カットフィルター使用。中)20秒露光。「馬の首」は判然としませんが、右)の28分露光ではだいぶはっきりと見えてきました。左)撮影風景。隣のマンションの共用灯がすごく明るい悪条件下です。馬頭星雲の画像はPhotoshopで調整しています。

M42オリオン大星雲のような明るい対象の場合、10秒露光の最初の1枚だけでも、しっかりと天体の姿が見えてきます。一方で「馬頭星雲」のような淡い天体は、何十枚もスタックしないと見えてきません。このような「目的の天体の姿が浮かび上がってくる様子を見守る」のも、スマート天体望遠鏡の醍醐味のひとつです。

なお、撮影ボタンを最初にタップしたときは「画像補正(ダークフレーム撮影)」が自動的に実行され、1分間ほど待つ必要があります。ダークフレームとは光を遮断した状態で撮影されたイメージセンサーのノイズのみの画像のことで、撮影画像からダークフレームを引き算することで画質を向上させるために必要なものです。

ダークフレームは温度が大きく変わらない場合は使い回しが可能なため、次に電源ONするまでの間は同じダークフレームが使用されます、このプロセスは電源をONにした最初の星雲星団撮影の際のみ動作するようです。

月を見る

Seestar S50で見たさまざまの月齢の月。月を毎日追いかけるのもなかなか楽しいもの。地平高度による色の微妙な違いも再現されています(右端は昇ってすぐの低い満月)。ホワイトバランスが太陽光で固定されているものと思われますが、皆同じ色になってしまうよりもずっといい感じ。

Seestar S50には「月モード」も搭載されています。太陽と同様に、月も画面にちょうどいっぱいに収まるくらいの大きさに見えます。

月の導入の際の動作は太陽モードとほぼ同じで、背景の空の明るさをスキャンしているようです。ただし、月が出ている状態でも普通は星空はそれなりに見えていますので、月の近くの天体を星雲星団モードで観察した後なら、太陽よりは確率高く月を導入してくれるようです。

後述しますがSeestar S50は光学系の実焦点距離が約250mmと天体望遠鏡としてはかなり短めで、光学系の理論限界レベルの解像度は期待できないのですが、月の全体像をのんびりと眺めるにはうってつけのツールといえるでしょう。

Seestar S50で撮影したものではありません。口径81mm屈折望遠鏡とデジタルカメラで撮影、多段階合成。

要望があるとすれば「地球照」も写したいところ。Seestar S50の月モードは、露出が完全自動なので調整の余地がありません。簡単な操作で露出補正ができるようになれば、地球照も写せるのですが。理想は、自動で多段階露光を行って上の画像のようなHDR合成までやってくれることでしょう(*)。

(*)まじめな話、この機能が実装されても筆者はまったく驚きません。現在のZWO社の技術をもってすれば、この機能は製品企画の優先度の問題でしょう。「月を楽しむ」ユーザーの満足度向上のために、ぜひ実現してほしいものです。

アクティベーション

記事の構成上最後になりましたが、Seestar S50を最初に購入した際には「アクティベーション」という操作が必要です。アクティベーションの方法については上の解説動画を参照ください!

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Seestar S50を使いこなす

付属の三脚はとても短い・三脚を換装する際の注意

左)長いカメラ三脚に取り付けたところ。右)標準の三脚の場合。低すぎて視界がほとんどベランダに遮られてしまいます。

Seestar S50付属の三脚はとても軽くてコンパクトなのはよいのですが、ベランダなど近くに遮蔽物がある場所で使用するときなどは低すぎると感じることも多いでしょう。

テーブルなど高さのある台に置いて使うのも一つの方法ですが、より長いカメラ用の三脚に換装する手があります。

左)Seestar S50の三脚穴に「フランジ付き」のネジ変換アダプタを装着したところ。少しネジ穴が出っ張ってしまいます。右)Seestar S50の三脚穴。フランジを装着しても出っ張らないように少し凹みを付けてくれるとよかったのですが。

この場合注意事項あります。細ネジ仕様の三脚(雲台)を使用する場合です。 Seestar S50本体の3/8UNCのネジ穴はザグリが浅く、フランジが付いたネジ変換アダプタを使用するとSeestar S50本体と三脚側の接合面にすき間ができてしまい、安定して固定することができません。細ネジ(1/4UNC)仕様の三脚を使用する場合は注意が必要です。

[比較レビュー] 国内メーカーのカメラネジ変換アダプター4種
https://www.butuyoku-keisoku.com/2021/06/13/2566/

もう一つ、前の三脚の項で触れたように、Seestar S50底面の回転するリングと、三脚側の面がきちんと接合するかも要確認です(*)。

(*)製品によっては接合面に段があって、回転するリングではなく本体と三脚が接合してしまう場合があります。

筆者は別の長い三脚を使う際は、上の画像のようなレベリングベースを介して装着するようにしました。Seestar S50と三脚をネジで直結するには、三脚か本体かのどちらかをクルクル回さなくてはなりませんが(*)、レベリングベースにアルカスイスプレートを装着することでこれもワンタッチ。レベリングベースなので水平出しにも使えて一挙両得。

(*)短くて軽量な付属の三脚なら本体をひっくり返して三脚を回して装着できるのですが、長い重い三脚ではそうもいかず、本体を回さなくてはなりません。

使用したこちらのレベリングベースはアマゾンで4000円ほど。あまり剛性は高くないのですが(*)、Seestarは小型で慣性モーメントが小さいせいか振動は気になりませんでした。

(*)SWATのような重量級ポータブル赤道儀の極軸合わせ用にはとても使えない感じです。

ステーションモード(STA)の活用

ステーションモードの設定は「私のSeestar/Wifi」のSTAモード画面で行います。

Seestarとのネットワーク接続は、Seestar S50本体のSSIDを直接指定してもよいのですが、自宅などインターネット接続可能なWiFiが通じている場所では「ステーションモード」で接続するのが便利です。

ステーションモード(STAモード)で接続すると、Seestarアプリを使用している状態でもスマホからインターネットに接続可能になります。また、Seestar S50本体までの距離が長くて直接接続できない場合でも、WiFiネットワークに繫がる状態になっていればSeestar S50を操作することができます。

ステーションモードは2.4G帯のWiFiでのみ使用できます。なお一般的な注意ですが、5G帯のWiFiは日本では電波法の規制の関係で屋内でしか使用することができません。野外で使用する場合は2.4G帯で使用するようにしてください。

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生データ(fitsデータ)を自分で画像処理する

SeestarとPCを接続して「MyWorks」ディレクトリ以下を開いたところ。天体の対象名でディレクトリが掘られ、スタック結果のfitsファイルとサムネイルのjpegファイルが保存されていました。このような形式ではなく日付単位のディレクトリで保存したい人もいるかもしれません。今後リリースされるとの「Proモード」でカスタマイズできるようになるといいですね!

Seestar S50で撮影した天体の画像は、スマホのフォトストリーム中に自動で保存されていますが、この画像は天体の淡い部分や色がよくわかるようにSeestarがコントラストや彩度を強調するなどの「画像処理」をしたものです。

Seestarの画像処理アルゴリズムはたいへん優秀で、普通はそのままでもじゅうぶん観賞にたえるものですが、よりキレイな画像にしたい場合は「生データ」を自分で加工することも可能です。この生データ(*)は「fits形式」という専門的な天体写真で広く使われているフォーマットで、いってみればデジタルカメラのrawファイルのようなものです。データのビット数も大きく、強い強調処理に耐える豊富な情報をふくんでいます。

(*)ダーク減算とスタック処理が行われた結果のリニア画像が保存されています。恐らくフラット処理も行われているのではないかと推測しました。また、Seestarアプリ1.9からは、スタック前の個別のデータをfitsファイルに保存する設定が追加されました。

左)PixInsightで開いた状態のリニア画像。中)PixInsightのScreenTransferProsessでオートストレッチしたもの。右)ASIFitsViewerで開いた状態のオートストレッチ画像

ただし、天体写真の画像処理の知識と経験がある人向けです。一般の人はそこまでするよりも、スマホのフォトストリームに保存されたjpeg画像をカメラアプリでレタッチする(*)方がキレイな結果を得られるでしょう。

(*)Seestarが出力する画像は、コントラスト・彩度ともやや控えめになっています。好みもありますが、すこしぐらい「盛った」ほうが「映える」かもしれません。

「観測」への活用

別のスマート望遠鏡であるユニステラ社のeVscopeでは「市民天文学」というコンセプトの下、「観測ミッション」を登録した観測者のアプリに配布し観測結果をネットで集約するなど、アマチュア観測者の「数の力」を天文学に役立てようという試みがなされていて、大きな成果を上げています。

Seestar S50は、このような「システムとしての観測支援の機能」はないものの、設置導入が容易であること、低価格であることなどを生かすことで、eVscopeとはまた別の切り口からの天文学的な観測・研究・科学教育に利用できる可能性があります。



SeeStar S50 を使った測光観測の検証

こちらの記事は日本変光星研究会の今村さんによるものですが「星の光度を正確に測定する」変光星の観測において、Seestar S50が有効に使えるであろうことが実際の検証結果をもとにまとめられています。

変光星観測者にはもちろんのこと、Seestar S50の開発スタッフにとっても、観測用途におけるのニーズとSeestar S50の可能性について示唆に富んだ記事になっています。ぜひご一読をオススメします。

Seestar S50が苦手なこと

惑星面の観察には向かない

左)星図画面で木星を指定しているところ。中)エンハンスモード(10秒露光)で撮影。ガリレオ衛星はしっかり写っていますが、木星は完全にしろつぶレしています。右)より露光時間の短いプレビューモードで撮影し明るさを最小にしましたが、それでも木星面は露光オーバーです。

Seestar S50は、フルサイズ換算の焦点距離1680mmとかなりの「超望遠」なのですが、現時点では「惑星モード」の設定が存在しないため、導入しても惑星面は白くツブれてしまいます。

露光条件を変えれば(*)それなりに見えるはずなのですが、理論的に口径50mmぶんの解像度しか得られないため、ソフトが対応したとしても見え方には限界があるものと思われます。

(*)惑星面と深宇宙天体では、面積あたりの明るさが圧倒的に(数万倍〜数十万倍)違うため、そのまま撮影すると完全に露出オーバーになります。

しかし、先行製品であるユニステラ社のeVscopeも発売当初は「深宇宙天体(星雲星団)専用」というコンセプトで、惑星を見ると同じように露光オーバーになりましたが、後に「惑星モード」が追加され、非力なりにも木星の縞模様や土星の環が見られるようになりました。特に初めて天体望遠鏡を手にする人にとって、土星や木星は「絶対見てみたい!」天体です。Seestar S50も、惑星モードの搭載を望むものです。

Seestar S50で昼間の金星。昼間ならSeestar S50の自動露出でも極端な露出オーバーにはならないようです。

Seestar S50で挑戦してみたい撮影があります。昼間の金星の撮影です。上の画像は太陽を撮影した後、星図モードから金星を指定して導入してみました。一度太陽を導入して同期しておけば、運がよければ?金星がこのように導入できるかもしれません(*)。

(*)上記一度しか試せていないのですが、Plate Solveが使えない場合のSeestar S50の導入精度はさほど高くないので、導入できるかどうかは運次第?です。

ただし注意点があります。金星に望遠鏡が向くまで太陽フィルターを外さないこと。うっかり太陽に向いた状態で太陽フィルターを外すと、センサーを傷めてしまいます。念のため「よい子はマネしないでくださいね!」と書いておきます、、、自己責任でお願いします。

木星や土星のような「大きな惑星」のディテールを見るには不向きなSeestar S50ですが、天王星・海王星・冥王星などの準惑星・小惑星などを見るにはなかなか強力です。光学望遠鏡で眼で見ることが可能なのは、せいぜい海王星と明るい小惑星までですが、Seestar S50なら市街地からでも14等級の冥王星を捉えることができます。

上の例は天王星の3日間の動きをとらえたもの。「動きをとらえる」ほかにも、土星や天王星の暗い「衛星」も射程範囲内です。肉眼では観察できなかったこれらの天体を見るのもSeestar S50の楽しみ方の一つでしょう。

「大きな天体」は視野からはみ出す

Seestar S50の星図モードでみた左)北アメリカ星雲、中)M31アンドロメダ銀河、右)バラ星雲。これらの大きな天体はSeestar S50の視野から完全にはみ出します。

換算焦点距離1680mmというSeestar S50の画角は、銀河や惑星状星雲のような小さな天体を見るには強力なのですが、広がった天体は視野から完全にはみ出てしまいます。たとえば天体写真で人気のある、M31アンドロメダ銀河や北アメリカ星雲、バラ星雲などは天体の一部のみを切り取る形になります(*)。

(*)次項でも述べていますが、経緯台式のSeestar S50では天体の時角(南中時刻からどれくらい前後しているか)にとって写野の傾きが変化するため、「大きな天体を切り取る」際に最適な構図を追い込むのはなかなか簡単ではないでしょう。

さすがのSeestar S50もこの価格では「ズーム機構」は搭載できなかったようで、これはそういうものだとして使うしかありません。逆に、大きな天体の「一部」を切り出して撮影する(*)などの楽しみ方もあるかもれません。

(*)Seestar S50で広がった大きな天体を対象名を指定して導入すると、天体の「中心」に向きます。この状態から望遠鏡の向きを微調整して淡い広がった天体の「一部」を切り出すのは難度が少し高くなります。

経緯台式マウントの宿命・視野が回転する、天頂付近は導入・追尾できない〜

「Zenith」は「天頂」のことです。地平高度85°以上に導入しようとすると、右のようなメッセージが表示されます。

Seestar S50は、上下・水平の2軸方向に回転する「経緯台式」のマウントです。なぜそうなのかは本稿では略しますが、経緯台式の架台は天頂付近が苦手です。導入精度が大幅に低下し追尾ができなくなってしまうのです。このため、Seestar S50は地平高度85°以上には望遠鏡が向かない制限(*)がかけられています。これは経緯台式架台の宿命です。

(*)制限を超えた状態の天体には導入できません。追尾中に制限を超えた場合は追尾が停止します。

視野回転の例。露光時間6分ですが、長辺側にわずかな陰りが出はじめています。撮影)ひらがなぐっち様

経緯台式であることによる「宿命」はあと2つあります。一つは長時間追尾をすると視野が徐々に回転していくこと。この回転によるズレはライブスタック機能が自動的に位置合わせしてくれるので星像は流れないのですが、長時間スタックを続けると視野の長辺が徐々に陰ってくることがあります(*)。

(*)暗い空の下では意外なほど陰りが少ないようです。「なぜ陰らないの?トリミングしてるんじゃない?」と感じるくらいにライブスタックのアルゴリズムは優秀です。

 

東天に昇ってきたオリオン大星雲M42を撮影したところ。天の北極が上になるようにしてみました。このように経緯台式マウントでは、撮影画像の方位が不定になります。

もうひとつ、経緯台式マウントでは、視野の縦横の角度が天体の位置によって不定になります。天体の南中時では「上が北」になりますが、東の空から昇ってきた直後では緯度分だけ傾いた「西が上」となります。これも「そういうものである」という認識で使うことになります(*)。

(*)方位をいつも北上に合わせたい、というニーズはSesstarの想定ユーザー層にはあまりないと思いますが、常に「縦位置」でしか撮影ができないのがもどかしいところです。これを解決するにはイメージセンサーを回転する機構が必要になり、大きく製品コストに跳ね返ってきます(そんなことほんとに実現できるんですかね?というくらい難度が高そうです)

可能であれば、対象名を画面上に描き込める「マーク」ボタンを押した際に、赤緯・赤経線もあわせて描きこんでくれるようになると(*)良いかもしれません。

(*)ZWO社の天体撮影ツール「ASIAIR」にも「マーク」機能に相当する「アノテーション」という機能があるのですが、こちらにも赤緯赤経線の描画機能がありません。ASIAIRにはぜひ実現してほしい機能です。

「横位置」ができず縦長画像になる

Seestar S50では、縦横比16:9のやや細長いフォーマットのイメージセンサー(ソニー製IMX462)が採用されていますが、このセンサーは長辺方向が縦になるように設置されています。Seestarで地上風景を見るとき、南中した天体を見るときは「縦位置」になります。

縦長がよいのか横長がよいのかは議論の余地があるでしょうが(*1)、これは固定で変えようがない(*2)ので「苦手」というより仕様です。

(*1)スマホ世代には縦長が好まれるという判断でしょう。一方でこのようなWeb記事を書く際には、縦長だと画像がでかくなりすぎて読みにくくなるのが悲しいところ。IMX533のような正方形センサーが一番フィットするとは思うのですが。

(*2)手動でもいいのでセンサー部を自由に回転できるようになれば「神仕様」なのですが。

対象の導入に失敗する場合

9月中旬、夕方の薄明の空の西村彗星。まだ星がほとんど見えない状態で、Seestar S50で導入することができませんでした。この画像は焦点距離75mmのレンズでデジタルカメラで撮影したもの。

Seestar S50のPlate Solveを使用した自動導入機能は非常に優秀ですが、それはあくまで「星が見えている(写る)」条件下でのこと。星が見えない昼間や明るい薄明中、地平高度が極端に低い状態では、Plate Solveを正しく行うのに十分な数の星が写らないため、自動導入は機能してくれません。

また、暗夜であっても雲が通過している場合は、これまた星が写らないと導入することができません。ちぎれ雲が空を動いているような場合、たまたま最初にSeestar S50が向いた方向に雲があると、導入に失敗することになります。

考えてみれば当たり前の話なのですが「Seestar S50は対象が見えないと正確に導入できない」ことは大事なポイントです。

太陽の導入で、初期導入位置が大きくズレた例。

対象(星、太陽、月)が見えている場合でも導入に失敗する場合があります。失敗の要因は複数あるのですが(*)、回避しにくい大きな問題は方位センサーのズレと思われます。

(*)Seestar S50の設置の際の水平だしと、コンパスのキャリブレーションも導入エラーの原因になります。大きく狂っているとSeestar S50が検知した場合は、再調整を促す画面が表示されますので、画面の指示に沿って操作してください。

Seestar S50は最初の自動導入の際は、Seestar S50本体に内蔵された高度方位センサーを頼りに対象天体の方向に望遠鏡を向けていると思われますが、このセンサーだけでSeestarの画角内(対角線で1.5°程度)に導入するには若干精度が足りません。特に方位センサーが地磁気を使用している場合は、建物内の鉄骨などで大きな狂いが発生します(*)。

(*)Seestar S50の問題というよりは、一般的に「そういうもの」です。

左)すぐ隣を鉄骨が通っているこの場所からだとスマホの方位センサーが大きく狂っていました。右)鉄骨から離れると狂いが少なくなりました。

集合住宅では磁気センサーに悪影響をおよぼす太い鉄骨が通っている場合があり、望遠鏡の設置場所によっては大きく狂うことがあることに注意が必要です。

これらの誤差が発生しうることはSeestar S50では織り込み済みで、太陽・月の導入の場合は背景の空の輝度分布をスキャンすることでより正確に導入できるようになっています。星雲星団の場合は、空を撮影した画像から星ならびを頼りに望遠鏡の向きを割り出して、現在の望遠鏡の向きを正確に決定します。

とはいえ、やっぱり導入に失敗することがあります。太陽・月の場合は初期導入の精度が低い場合、対象の近傍に雲が多かったり建物などの遮蔽物があったりすると、背景輝度分布を正しく測定できなくなり失敗する確率が高くなるようです。

星雲星団の場合は、初期導入が大きく狂っていても望遠鏡が向いた方角に星があればちゃんと導入されるのですが、星が見えない方向(雲の中や建物など)を向いてしまった場合はちょっと対処が面倒になります。何らかの方法でSeestar S50を星が見える領域に向け、Seestar S50が望遠鏡の向きを判別できるようにしなければなりません。

単純に考えると、手動でSeestar S50をカーソルで操作して星のある方向に向ければいいと思ってしまうのですが、Seestarは「識別中(星を撮影して星並びから向きを判別しようとしている状態)」はカーソルで方角を動かすことができません。「識別」を終了すると次の対象を何らか指定して導入しないと「識別」が始まりません。プレビュー画面でカーソルを操作して星の見える場所に動かした後、対象を指定せず「識別」させたいのですが・・(*1)。Seestarのプレビュー画面に「識別」ボタンがあるとシンプルに解決するのですが(*2)、ぜひ当該機能の実装を要望するものです。

(*1)「星の見える場所」のだいたいの方角がわかれば、星図上でその場所を探して「同期」すればいいのですが、Seestarユーザーにそれを望むのは酷でしょう。あまりクールな方法ではないですが、)Seestar S50が「識別中」の状態で、三脚ごと望遠鏡を動かしてどこか星がある領域に向ければいいのかもしれません。こちらの操作は実験できていないので、わかり次第追記予定です。

(*2)eVscopeはこの機能を備えています。

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どんな人に向いているか

天リフレビュー恒例、脳内ユーザーの声です。年齢、コメントは編集部が創作したもので、登場する人物とは全く関係ありません。フリー素材「PAKUTASO」を使用しています。https://www.pakutaso.com

「なんか面白そう!」と興味を持った人に

これまで、天文に興味を持って初めて天体望遠鏡を購入する人へのイチオシのリコメンドは小型の屈折望遠鏡でした(*)。しかし、価格帯的にこれらの光学天体望遠鏡とあまりかわらないSeestar S50は「初心者向けの最初の天体望遠鏡」として、十分オススメ対象に入ってきます。

(*)天リフ的には、予算7万円なら「口径80mmの屈折式経緯台望遠鏡」です。

ただし、土星の環や木星の縞模様を見るのはあきらめてくださいね!もうひとつ、スマートフォンの操作に抵抗がないことは絶対条件です。

「天体写真は難しい」とあきらめていた人に

1978年ごろ。フィルムカメラと自作のポータブル赤道儀で天体写真を撮影していた筆者。当時の天体写真では1枚の完成作品に至るまでの道のりは、あまりに険しいもものした^^;デジタルになって撮影そのものは劇的に楽になったものの、今度は撮像画像の後処理が難しくなりました。

天体写真やるぞ!と意気込んで、赤道儀式の天体望遠鏡を買い込んでみたものの、「やっぱり難しすぎる・・・」と挫折した人は、実は昭和の時代から大変多かったのではないかと推測します。この50年の間に天体写真ではさまざまな技術革新があり、その度に「より手軽に」「より高精細・高画質に」天体写真が撮れるようになってきましたが、Seestar S50のような「スマート天体望遠鏡」のイノベーションは、その最大のものだといえるでしょう。

Seestar S50の登場によって天体写真の「難しさ」の敷居は、もう「これ以上簡単にはならない!」レベルにまで低くなりました。これまでの天体写真の「入り口」まで立ったことのある人なら、たぶんSeestar S50は使いこなせるはずです。断言します。「貴方にも天体写真が撮れます!」

「ガチマニア」の「もう一台」に

西村彗星(C/2023 P1)チャレンジ。ガチ撮影機材を2セット展開して、プラスワンにSeestar S50。彗星の地平高度が極端に低かったため、三脚だけは背の高いものに換装。

Seestar S50は32cm×32cm×16cm(約16リットル)のコンパクトな箱に必要なもの全てが収納できます。ややこしい小物も全く不要、三脚・本体・ケースを合わせた重量は約3.4kg。この箱一つを持ち歩くだけで、ディープスカイ天体観測を手軽に楽しめます。

ガチな撮影・観望機材をどっさり持っていくような遠征でも、「もう一つ」Seestar S50を加えるだけで、手間いらずのリザルトが加わります。遠征のプラスワンにSeestar S50はいかがでしょうか?

Seestar S50で撮影した西村彗星C/2023 P1。Seestar S50が出力したそのままの画像です。2023年9月9日撮影。この時点のバージョンでは、総露光時間・撮影地・対象名などメタデータ(画像情報)が保存されていませんでしたが、現在のバージョンでは画面下に描き込まれるようになりました。

特にオススメしたいのは「彗星おっかけ用」です。Seestar S50の換算焦点距離は約1680mmでかなり拡大した絵が撮れますし、星さえ見えていれば(*1)彗星の導入も簡単です。8等級クラスの「暗い」彗星でも、Seestar S50ならちゃんとテールが写る(*2)かもしれません。

(*1)夕方の空低い彗星の場合、薄明中でPlate Solveができないとかなり難度が高くなります。

(*2)もちろん、彗星そのものが尾を噴き出していないと写りません^^;

導入も自動、追尾も自動。上の画像は恒星基準の追尾・スタックなので動きの速い彗星本体は流れて写ってしまいましたが、本体にスタック前の全てのfitsファイルも保存する設定にしておき自分でスタック処理すれば、彗星基準での撮影も可能になります。

「星空案内人」を指向する人に

河川敷に天体望遠鏡を多数展開し、子供たちを含む一般の方に向けた星空観望会を開催中。このような場にSeestar S50があれば、宇宙の別の見方・見え方を案内することができるでしょう。2018年8月、飯塚市にて。

スマート天体望遠鏡の登場によって、一般の人向けに星を見てもらう「星空観察会(*)」界隈に静かな動きが起きはじめています。見る人を威圧するほどデカイ天体望遠鏡でなくても、スマート天体望遠鏡なら宇宙のリアルな姿をよりカラフルに多くの人に見てもらえるからです。

(*)天体観望会、星空観賞会、天体観測会、などさまざまな呼び名があります。

「星空を案内する人」にとって、Seestar S50は強力な武器になることでしょう。これまでの天体観測会の機材にSeestar S50と大型モニタを1台用意するだけで(*)、来場者の楽しみは確実に2倍になることでしょう。

(*)Seestar S50の筐体は小さすぎて「押し出しが弱い(来場者の目に留まりにくい)」という欠点もあります。運用する際は背の高い三脚に載せたり「台」の上に置く、大型のディスプレイを用意して多くの人に見てもらえるようにする、などの工夫が必要になります。今後、そのあたりの運営ノウハウも蓄積されてくることでしょう。

天文現象のライブ配信にも

「中秋の名月ライブ配信 ・天リフ編集長のがちふわトークライブ(10)スペシャル」https://www.youtube.com/live/PIZ_44eIZXk?si=gZshEghw_gmvH_hT

Seestar S50は望遠鏡で見えるものを「スマホの画面に映し出す」ことができる機械です。肉眼での体験は残念ながらその場でしか共有できませんが、Seestar S50のデジタル映像は、OBSなどのライブ配信ソフトがあれば全世界にリアルタイムで発信することができるのです(*)。Seestar S50の登場でそんなライブ映像の発信がより活発に行われるようになることでしょう。

(*)筆者はこれまでデジタルカメラなどを使用した天体のライブ配信を行ってきましたが、Seestarを使用した配信は機材のセットアップが劇的に簡単でした。

Seestarの画角はフルサイズ相当約1680mm相当の超望遠なので広い範囲の星空は映せませんが、逆に日食・月食のライブ配信では月がちょうどよい大きさになります。上の画像は2023年9月29日の「中秋の名月」をSeestar S50でライブ配信したときのもの。映像がキレイなのはもちろんですが、装備がコンパクトなのも大いに助かりました。

こちらは2023年9月21日、さそり座の一等星アンタレスが月に隠される現象をライブ配信したもの。昼間のアンタレスがSeestar S50でちゃんと観測できることがわかりました!

天体だけに限らず「ライブ配信用の超望遠カメラ」としても使いみちがあるかもしれませんね。

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さらに未来へ・Seestar S50に望むこと

もっと広い画角も欲しい

イメーセンサーの大きさの比較イメージ。天体写真で実績のあるイメージセンサーのサイズを並べてみました。一番左がSeestar S50で使用されている「IMX462」相当の大きさ。5.6mm×3.2mmは小指の爪よりまだ小さいサイズです。

Seestar S50を使ってみると、もう少し視野が広ければと思うことがあります。

使用されているイメージセンサーは非常に高感度なソニー製IMX462を使用していますが「1/2.8インチ」というとても小さなセンサーです。推測するに、IMX462は1920×1080ピクセルと画素数もあまり多くなく、画像処理やファイルサイズに負担をかけないようにという判断から選択されたのでしょう。この判断は非常に賢明で的確だとは思いますが、将来もう一回り大きなセンサーが搭載されれば(*)、より画角の広い使いやすい製品になるのではないでしょうか。

(*)光学系はそのままであってももう一回り大きなセンサーを搭載したモデルに期待したいところです。Seestar 「S50」という型番からいろいろなことを想像してしまいます。さしあたっては、1/1.8インチセンサーIMX678搭載の「Seestar S50II」ですかね^^ 

撮影データをもっと見やすく管理したい

画像に埋め込まれる「星座観察のウォーターマーク」。もう少しフォントが大きい方がいいとか、時刻は秒まで欲しいとか、撮影地は緯度経度も欲しいとか、商品のブランディングのためにはロゴがもっと大きくてもいいんじゃ?とか、いろいろ思うことはありますが、このあたりのレイアウトや表示項目はユーザーのフィードバックで改善されていくことでしょう。

撮影から天体の表示までのワークフローとリザルトはとても素晴らしいSeestar S50なのですが、撮影した天体の映像の「メタデータ(対象名、撮影地、総露光時間など)」の表示・管理がまだ弱いところがあります。アプリのバージョンアップでだいぶ改善されたのですが(*)、もう少しビジュアルに撮影データを表示してくれるともっと天体撮影が楽しくなることでしょう。また、本格的な観測用途を考慮して動画にも時刻を秒単位で埋め込めるオプションが欲しいところです。

(*)設定に「星座観察のウォーターマーク」というオプションが追加され、上の画像のように撮影画像に埋め込まれるようになりました。

実はさまざまな詳細な撮影データは、Seestar S50本体に保存されるfitsファイル(天体写真で使用される画像格納フォーマット)に書き込まれているのですが、現時点では生の「fitsヘッダ」の形で見ることしかできません(*)。こちらも今後のアプリの機能追加・改良を期待したいところです。

(*)ZWO社が提供する無料のアプリ「ASISTUDIO」を使用すれば閲覧できます。fits形式は天体観測用の特殊なフォーマットであるため、ファイルのブラウズソフトは他社製品を含めて基本的な機能しかないものしかないのが現状です。そんな中でも実は「ASISTUDIO」が一番よくできているのでは?という気がします。

ソフトウェアは進化する・ZWO社の驚愕の開発スピード

【短期集中連載】ASI AIR PROレビュー(1)外観編

SeeStar S50をさかのぼること5年前の2018年、ZWO社は「ASIAIR」という天体撮影ツールを発売しました。ASIAIRは、天体撮影で使用する赤道儀・ガイドカメラ・撮影用カメラなどさまざまな機器を統合し、スマホ・タブレットからコントロールできるコンピューターです(*)。発売以来、ハードウェアもソフトウェアも着々とバージョンアップされ進化を重ね、今では天体写真フリークに大きな支持を得ています。

(*)「Raspberry Pi(ラズベリー パイ)」と呼ばれているARMプロセッサ・Linuxベースで動作するシングルボードコンピュータに、専用ソフトが組み込まれており、スマートフォンからWiFiで接続して使用します。

Seestarはハードウェア的には全く新しいZWO社のプロダクトですが、ソフトウェアにはこのASIAIRで開発されたさまざまな技術が投入されているものと推測します。Seestarのソフトウェアが非常に洗練されていて、しかも安定して動作するのはそのためでしょう。

設定画面の「バグの報告とログ」からZWO社に直接不具合レポートを送信することができます(Seestarのコミュニティ機能へのアカウント登録とログインが必要)。送信されたレポートには随時ZWO開発スタッフからのフィードバックが返ります。実はこのレポートシステムはZWO社の製品群で共通のものになっていて、他の製品に対するフィードバックも送信できます。

もうひとつ注目すべきことは、ZWO社がユーザーからのフィードバック(*)をもとに製品を改良することに注力していることです。Seestar S50には「コミュニティ」という機能があり、撮影した画像を世界のSeestarユーザーにシェアできるのですが、そのアカウントから不具合と製品改善のレポートも送ることができます(*)。

(*)実際に不具合と確認されれば改修が開始し、完了すれば完了連絡が返ってきます。筆者もASIAIRについていくつかレポートをアップしていて、改修されています。

このシステムは、ソフトウェア開発におけるいわゆる「イシュートラッキングシステム(問題管理システム)」そのもので、それがZWO社の全製品について、ユーザーを巻き込んだ形で機能していることになります。筆者がZWO社の製品開発で一番スゴイと思うのは実はここです(*)。

(*)Seestarアプリのバージョンが発売直後なのに「1.9」というのはスゴイと思いませんか?これは発売前からアーリーユーザーを巻き込んで、日々アップデートを重ねてきた結果なのです。

星見屋.comについて

ネット専業の天体望遠鏡ショップ

https://hoshimiya.com

本記事にご協賛頂いた「星見屋」様(以下敬称略)について簡単にご紹介しておきます。星見屋はネット専業の天体望遠鏡ショップです。

星見屋はZWO社の日本における最初の正規代理店の一つとして、2013年から天体用CMOSカメラなどZWO社各種製品を取り扱われています。

星見屋・店主の南口さん。Seestar S50のご購入・ご相談は、ぜひ星見屋へ!

https://twitter.com/Hoshimiya_Shop

星見屋では公式Twitter(現X)でもSeestar S50の最新情報を発信しています。こちらもぜひフォローください!

Seestar S50のFAQ、オンラインマニュアルを公開中

ZWO社 SeeStar S-50 オンラインマニュアル(最初にお読みください)
https://note.com/mminamig/n/na2f7db470304
ZWO社 SeeStar S-50 オンラインマニュアル(普通の使い方手順書) https://note.com/mminamig/n/n431034dc67b2
ZWO社 SeeStar S-50 オンラインマニュアル(星空観望するときに困ったり迷ったら読んでください) https://note.com/mminamig/n/n9f6bbd8e709b
オールインワン望遠鏡 SeeStar-S50 FAQ集
https://hoshimiya.com/?tid=6&mode=f43

星見屋ではSeestar S50に関するサポートページを作成・公開されています。本記事で触れることができなかった細かなことまで、さまざまな情報が記述されています。Seestar S50にご興味のある方、購入された方はぜひご一読をオススメします。

Seestar S50の競合製品

「安すぎる」Seestar S50

Seestar S50の発売当初の価格(約7.6万円)は衝撃的でした。先行する競合製品よりも圧倒的に低価格で、機能的にも最も洗練されたものだったからです。

正直いって、業界目線で見ると15万円でも十分「安い!」と思えるぐらいの性能を備えています。もちろん一般消費者にとっては安くて嬉しくないわけはありませんし、この価格ならエントリ層にも手が届くので、天文趣味人口を拡大してくれるでしょう。業界目線でも悲しいわけはありません。Seestar S50を世に出したZWO社には賞賛こそあれ、disる理由は一つもありません。

しかし、、、スマート望遠鏡を手がけている競合各社にとっては大変な状況と推察します。Seestar S50の登場によって、製品戦略・価格戦略を大幅に見直さざるを得なくなっていることでしょう。

これは筆者の私見ですが、産業界で「独占」「寡占」は長い目で見ると健全な状態ではありません。Seestar S50しか存在しない世界は、決してよい世界ではありません。競合各社様におかれましては、ぜひZWO社が青ざめるような、斬新で素晴らしい製品の開発を期待するものです。

スマート天体望遠鏡の元祖「eVscope」

新時代のデジタル天体望遠鏡・eVscope2レビュー

スマート天体望遠鏡の「元祖」として、ユニステラ社の「eVscope」を外すわけにはいきません。eVscopeは2017年に米国の見本市「CES」で初めて登場しました。その斬新なコンセプトは、当時の天文業界・天文趣味界隈が「どう受け止めればいいのか」と戸惑うほどでした。

その後、クラウドファンディングを経てeVscopeは2021年に一般販売も開始されました。eVscopeは口径114mmの大きな反射鏡を備え光学性能も高く、洗練されたソフトウェアともあいまって、手にした多くの人たちが「新しい時代」の到来を体感したのです。

ピント合わせが自動ではないこと、光害カットフィルターの装着が簡単ではないことなど、後発のSeestar S50が勝る点もありますが、Nikonの技術を導入し「肉眼でも覗ける」電子ビューファインダーを備えた「eVscope2」は、唯一無二のスマート望遠鏡です。また「市民天文学」というコンセプトを掲げ、アマチュア天文家の観測ネットワークを実現した「eVscope」ならではの機能もあり、小惑星による恒星食観測で大きな成果を上げるなど、天文学に大きく貢献しています。

唯一のネックは「価格」です。電子ビューファインダーを持たない低価格モデルの「eQuinox2」でも37万円ほどします。正直発売当初から感覚的には「お高い」印象だったのですが、Seestar S50の登場で今後低価格化が進むことに期待したいところです。

価格破壊だった「Vespera」

https://vaonis.com/vespera より引用

eVscopeの後に登場した製品が、フランスのVaonis社の「Vespera」です。白を基調(*)としたスタイリッシュなデザインは、最も「スマート天体望遠鏡らしい」外観です。

(*)対物レンズ周りは迷光を防ぐために黒い、というのも渋い配慮ですね。太陽観察時に熱くならない、夜間でも見失って蹴とばす心配が少ないなど、筆者の個人的意見ではありますが、色は黒より白が実用上も勝っている気がします。

いちはやくオートフォーカス機能を備え5kgと軽量、IP43の防水性能、写野の狭さをカバーするモザイク撮影機能(*)など、スマート望遠鏡のコンセプトをeVscopeよりさらに一歩進めた印象でした。価格設定もeVscopeよりも大幅に安く、「価格破壊が始まったか!?」と思われたのですが、Seestar S50の登場でさらに価格破壊が進んだことになります。

(*)視野をずらして複数のフレームを撮影しつなぎ合わせることで、広い画角を得ることができる機能。

繰り返しになりますが、技術革新は複数の会社が競い合うことで進みます。Vesperaには、ZWO社も驚くような次の展開(後述の「HESTIA」もその一つかもしれませんね)を期待したいところです。

これって「スマート望遠鏡」なの?

日本ではMakuakeのクラウドファンディングとなったBEAVERLABプロジェクト。「スマート天体望遠鏡」を謳っていますが、小型の天体望遠鏡の接眼部にイメージセンサーを装着しただけでライブスタックの機能はなく、導入は付属の星座早見盤を使用して手動で行うものと思われます。

「スマート天体望遠鏡」が一大ムーブメントを引き起こしたのを見て、「雨後の筍」とまではいかないにしても、数多くの会社が参入を試みています。中には「スマート天体望遠鏡とはとても呼べないような自称スマート天体望遠鏡」もあり、注意が必要です。

何をもって「スマート天体望遠鏡」と呼ぶかは誰かが定義しているわけでもないので「言った者勝ち」になってしまっているところがあります。僭越ながら、天リフが「スマート天体望遠鏡」が最低限備えるべき要件を再度列挙させていただきます。

  1. デジタル映像をスマートフォン、タブレットなどのモバイルデバイスで見ることができる
  2. 映像を蓄積する(ライブスタック)することで、暗い天体でも見える
  3. 天体を簡単に導入・追尾できる

最低でも上記の3つの要件を満たさない製品は「ナンチャッテスマート天体望遠鏡」です(*)。

(*)一般論ですが「クラウドファンディング」にはより注意した方がいいでしょう。クラウドファンディングはプロジェクトの枠組みにもよりますが、「商品販売」ではありません。納品遅延や約束された機能が実現しないなどは普通にあります。また、ユーザーの誤認を確信犯的に狙う悪質なプロジェクトもないとはいえません。

一方で、前掲の「3つの条件」を満たすことは実は必須ではないのかも?と逆に思わせるのがこちらの「HESTIA」。「Vespea」と同じフランスのVaonis社の製品です。専用の架台は持たずカメラ三脚に装着して使用します。自動導入・追尾の機能はありませんが(*)、スマートフォン上で動作する星図アプリで対象を導入します。天体の日周運動はライブスタックの際に補正するのでしょう。

(*)天体を追尾しなくても視野から天体が逃げない時間内であれば、短時間露光の画像をライブスタックすることで光を蓄積することが可能になるはずです。天体を導入する際にセレストロン社の「StarSense Explorer」のようにPlate Solveを併用する方法なのであれば、実用上十分な導入精度になると思われます。

「天体撮影向けの特別な機能が入ったスマホ用の外付け超望遠レンズキット」と考えるとイメージしやすいでしょう。「専用の架台を持たない」のは大胆な割り切りです。このような従来の発想にとらわれない大胆な製品コンセプトは注目に値します。

「天文趣味」とSeestar S50

「星空の体験」と「宇宙への窓」

ガリレオが手製の天体望遠鏡を最初に宇宙に向け、「土星の耳(実は環)」や「ガリレオ衛星」「月のクレーター」を目にしたときの驚きと感動はいかほどだったでしょうか。「望遠鏡」の進歩によって見える世界が広がることで、これまで何度も天文学は大きく進歩し、同時に新たな発見と感動を生み出してきました。

天文趣味の面白さ・楽しさは、このような発見と感動の歴史を追体験することでもあります。望遠鏡というパワフルな宇宙への窓を手にすることで、これまで体験できなかった宇宙の姿に触れることができるのです。Seestar S50のような誰でも使えるスマート望遠鏡によって、そんな体験がより多くの人にもたらされることでしょう。

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この眼でナマの宇宙を体験すること

もう一つ強調しておきたいことは、宇宙を体験する手段はSeestar S50のようなスマート望遠鏡だけではないいうことです。人工光の全くない場所で、満天の星を肉眼だけで見ることも至福の体験ですし、光学式の天体望遠鏡や双眼鏡で月や惑星、天の川の無数の星や何千何万光年もの彼方の天体のナマの姿を見るのも「新たな発見と感動」の体験です。

もし、Seestar S50で天体を楽しむことができて、さらにいろいろな世界を体験したいと思われたら、ぜひ生の宇宙の姿をこの眼で見ることも体験してみてください。貴方にとっての宇宙が、またひとつ広がることでしょう。

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宇宙は「誰が見ても同じ」なのか

これほどまでに簡単に、誰でも天体の姿を「撮影」できてしまうSeestar S50の登場によって、素朴な疑問が浮かんできます。「天体って誰が撮っても結局同じなんじゃない?」「それって意味あるの?」

実際、とあるSNSのグループで「〇〇さんがアップされたSeestar S50で撮った月の画像、私が撮った月の画像とほんとそっくりですね」という書き込みを見かけました。そのとおりです。間違っていません(*)。

(*)実は、月は短い時間で欠け際が大きく変化して見える天体なのですが、それでも時刻が同じなら区別がつかないくらい「同じ」です。同じものを見ているのだから同じであるのは当たりまえ。天体写真に現れる「個性」があるとすれば、構図の切り方を除けば①天候(大気の状態)②光学系(望遠鏡)の違い③撮影画像の後処理(レタッチ、画像処理)の大きく3つです。Seestar S50では②も③は誰のSeestar S50でもみな同じです。唯一の違いは天候だけ。月の場合、雲がなければ本当に「ほぼ同じ」になります。深宇宙(ディープスカイ)天体の場合は「背景の空の暗さ」が効いてきますが、これも光害カットフィルターを使用すればかなり差が小さくなります。

しかし、逆に「誰が見ても同じように見えるのが宇宙である」ともいえます。そして、同じ宇宙であっても、それを見て何を感じるのかはその人次第。宇宙を見る感動はその人だけのものなのです。

もうひとつ。Seestar S50をどう使うのか。Seestar S50ではなく別の方法で宇宙を見たり撮ったりする選択も、それぞれの人にゆだねられています。Seestar S50というとても優れたスマート望遠鏡を、ぜひこれまでの常識にとらわれない発想で活用し、楽しんでみてください。

「誰が撮っても(見ても)同じ」になろうとも、それを楽しむ心・面白がる心があるかぎり、これからも天文趣味は無限の可能性を持ち続けることでしょう。

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まとめ

モンゴル・ゲルキャンプにSeestar S50を持ち込んで使用中。重量わずか3kgのSeestar S50は海外遠征のお供にも最適。

いかがでしたか?

9万円でお釣りがくる「Seestar S50」。かつて、天文台の大型望遠鏡でしか撮影できなかった何千光年・何億光年もの彼方の宇宙の姿が、マジでこれ一つで(*)手軽に楽しめるのです。スゴイ時代になりました!

(*)唯一、インターネットに接続できるスマホまたはタブレットが別途必須です。

この手の製品にありがちな「実はまだちゃんと動いてない」というような、大きな初期トラブルの話も聞こえていないようです。ZWO社は、これまで天体用CMOSカメラや天体撮影用ソフトウェアの分野では非常に「いい仕事」をしてきていますが、天体望遠鏡の「光学系」や「架台(マウント)」の歴史はまだ浅く、製品がどのくらいの完成度なのか不安なところも個人的には感じていたのですが、杞憂だったようです。マジ、製品の完成度は高いです。

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本記事執筆時点の2023年10月では、Seestar S50は大人気で今注文しても年内に納品できるかわからないくらいの品薄になっています。あとは、今後も安定した品質と数量の製品が供給されることを願うばかりです。

という業界的な興味や心配はさておいて、Seestar S50は掛け値なしにゲームチェンジャーといえる製品でした!Seestar S50が宇宙の姿をより多くの人の手元に引き寄せてくれたことは間違いありません。ぜひ、多くの人にたっぷり楽しんでいただきたい思います!

それでは、皆様のご武運をお祈りしております。あと心配なのは、お天気だけ!(*) Clear Sky!!

(*)ここまで簡単に使える製品が登場すると、空が曇っているのに「おたくで買ったSeestar S50だけど、何も見えないよ!」とサポートに電話してくる人がマジで出てくるかもしれませんね。曇り空を透視できる能力はSeestar S50には備わっていませんが、「曇っていても星が見える」製品が発売される日が現実味を帯びてきたと感じています。そういえば「プラネタリウム」という天気に関係なく星が見られるものがありましてね・・・


  • 本連載は星見屋.com様に機材貸与および特別協賛をいただき、天文リフレクション編集部が独自の責任で企画・制作したものです。文責は全て天文リフレクションズ編集部にあります。
  • 本記事で使用したSeestar S50は初回ロットの製品版です。また使用したアプリはver1.9.0ベータ版および1.9.1製品版です。本記事における挙動に関する記述は2023年10月17日時点のものです。最新のアプリでは動作と異なる可能性があります。
  • 本記事に掲載したSeestar S50の実写画像は、注記のないものはトリミング・サイズ調整以外はSeestar S50から出力された画像をそのまま使用しています。
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  • 文中の商品名・会社名は各社の商標および登録商標です。
  • 機材の価格・仕様は執筆時(2023年10月17日)のものです。
  • 「Seestar S50」のご購入およびご購入のご相談は星見屋.com様にお願いいたします。
https://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2023/10/192c1e7bf27df9fc829eafb101f5f0ab-1024x538.jpghttps://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2023/10/192c1e7bf27df9fc829eafb101f5f0ab-150x150.jpg編集部望遠鏡望遠鏡  この記事の内容星見屋.com 特別協賛!(*)天体観測のゲームチェンジャー、新時代のスマート天体望遠鏡Seestar S50。「天体写真はイロイロ難しい」というこれまでの「常識」が一気に変わります!しかもお値段は今どきビックリの9万円切り!そんな「Seestar S50」の全てを総力解説します! (*)特別協賛とは、本記事のサムネイルおよび記事中にスポンサー様の特別広告枠を掲載することにより対価をいただく形です。記事そのものの編集ポリシーは通常の天リフ記事と同等です。 天体観測(天体写真)のゲームチェンジャ−・Seestar S50 誰でも簡単に天体の姿が見られる「スマート望遠鏡」 「宇宙は美しい」。無限ともいえる彼方に存在するさまざまな天体。神秘的な色と形、まさに「桁違い」のスケール。そんな宇宙の姿に感動し「自分も見てみたい、撮ってみたい」と思ったことのある方は、決して少なくはないことでしょう。 しかし、胸ときめかせて天体望遠鏡を手に入れて宇宙に接した時、誰もが「こんなはずじゃなかった」と思ったのではないでしょうか。さまざまな機材を大枚叩いて購入し、頭の痛くなるようなパーツ群を組み合わせて機材を設置し、得られた(見られた)リザルトは・・・「ハッブル宇宙望遠鏡とまではいかないにしても、もう少し写って(見えて)くれてもいいんじゃないの?!」 このスタートラインで「なにくそっ」と思って深みにズンズンとハマっていく人も多いのですが、一気に打ちのめされてそれっきりになってしまう人はそれ以上に多いはず。技術的なハードルの高さがこれほど高い趣味はないのではないでしょうか。 しかし、Seestar S50をはじめとする「スマート天体望遠鏡」の登場で、その状況は一気に変わりました。Seestar S50では、まさに上の画像の通りのシンプルなシステムで、宇宙の姿を「見る(*)」ことができるのです。 (*)見るといっても、光学望遠鏡のように眼で覗いて見るわけではありません。デジタル的に得られた映像をスマートフォン・ダブレットのモニタ画面に表示します。 箱から本体と三脚を取り出して、設置はわずか数分。十分に充電しておけば電源ケーブルすら不要。アプリを操作して、目的の天体を選んで、後は待つだけ。Seestar S50が自動で天体の方角に動き、微弱な天体の光をイメージセンサーに蓄積し、色鮮やかな天体の姿を表示してくれます。 スマート望遠鏡とは? ここで「スマート望遠鏡」とは何かについて、独断ですが明確にしておきましょう。スマート望遠鏡の何が「スマート」なのか。それは、これまで苦労しないとできなかったことが簡単に(または意識することすらなく)できるようになったのです。 デジタル映像をモバイルデバイスで見る 一つめのスマートは、まさにIT技術的なスマートさです。スマート望遠鏡はその名の通り「スマートフォン(ないしはタブレット)」を使用して望遠鏡を操作し、得られた映像を表示します。 スマートフォンは今や「1人一台」といえるほど普及していますから、多くの人がその操作にすでに「慣れて」います。専用の機器の特別な操作を要求しないことで、操作のしきいを大幅に下げることができるのです。 また、これまでの天体撮影では専用の機器を組み合わせて使用することが一般的でしたが、この場合機器それぞれにをケーブルで接続(もちろん給電も)する必要がありました。スマート望遠鏡では基本的に機器はオールインワンで操作は無線。「ケーブルレス」もスマート望遠鏡の大きな特徴といえるでしょう。 デジタルイメージング技術を駆使して暗い天体でも見える 二つめのスマートさは「天体」に特化したデジタルイメージング技術です。21世紀以降急速に進歩したイメージセンサーは、人間の眼と比較してまだ苦手な分野(*1)もあるものの、とても暗い天体を見る上では、「光を長時間蓄積できる」アドバンテージが圧倒的に大きく(*2)なります。 (*)デジタルイメージングの一番の弱点は、極端な明暗差を表現することに限界があることでしょう。現在の一般的なディスプレイではせいぜい1:1000程度の輝度差しか表現できません。ただし、輝度差1:100万クラスの表示デバイスはすでに実現しているため、近い将来この弱点も解消されてくるかもしれません。 (*)超ざっくりいって「100倍」くらい暗い星まで見ることができます。星の明るさを表す「等級」でいうと5等級分。Seestar S50の対物レンズの有効径はわずか5cmですが、10倍の口径50cm分くらいのパワーがあります。 さらに、圧倒的に「暗い」天体の映像を鮮明にとらえるために「ライブスタック」の技術が使用されます。これは、スマホカメラの「ナイトモード」をイメージするとわかりやすいでしょう。連続して何枚もの画像を繰り返し撮影し、日周運動や機械的な追尾誤差(*)を補正して重ね合わせるのです。 (*)スマホカメラでは「手ぶれ」に相当します。 Seestar S50で星雲星団モードで撮影を開始すると「10秒露光」の撮像を繰り返して画像をスタックしていきますが、放置しておくだけでどんどん映像がキレイになっていきます。天体を正しく追尾している限り(*)はいくらでも光を蓄積していけるのです。 (*)最大どれくらいの時間、露光を積み重ねられるかは機械的な追尾精度に依存しますが、筆者の使用例では30分程度であれば特に問題ありませんでした。ネットでは2時間露光した例も見かけます。人間の根気の続く時間くらいは大丈夫なようです。 また、人間の眼は暗所では「色」を感じる能力が極端に低下してしまいますが、イメージセンサーではそのようなことはありません。イメージセンサーなら暗い天体でも色付きで見ることができるのです。 天体を簡単に導入・追尾できる 3つめのスマートさは、目的の天体を簡単に見つけて追いかけられることです。宇宙にはそれこそ「星の数ほど」天体があります。「どこを見ればどんな天体があるのか」を人間の記憶力だけで解決するのは至難の技です。 スマート望遠鏡ではこの問題を3つの技術で解決しています。一つめは天体のデータベースを使いやすい形で用意すること。Seestar S50アプリの場合、アプリの中に「星図」と「天体カタログ」が搭載されていて、星図から直接天体を指定することも、天体の名前やカタログ番号から直接指定することも可能です。また「今夜のオススメ」のような形で、何の知識がなくても人気のある天体を指定することができます。 二つめは望遠鏡を対象の天体に正確に向ける技術。具体的には、スマートフォンのGPS情報と本体に内蔵された高度方位のセンサーの情報をもとに「だいたいの方角」に望遠鏡を向けます。次にその向きの天体の画像を1枚撮像し、星並びから正確な今の向きを割り出します(Plate Solve技術)。このような動きを繰り返して、センサーや機械的な誤差があっても望遠鏡を正しい向きに向けることができるのです。 三つめは、刻々と「日周運動」で移動していく天体を正確に追尾する技術。天体は地球の自転によって1時間に約15°、天の北極を中心に回転していますが、架台の回転軸の向きさえ正確に把握できれば、天体の動きを計算して追尾することは理論的には(*)難しいことではありません。 (*)機械誤差も含めて正確に追尾するのは実はそれほど簡単な話ではないのですが、Seestar S50の追尾精度は「完璧とはいえないがなかなか健闘している」と感じました。 最新技術も細かな配慮も全部入り 3枚玉アポクロマート・屈曲光学系 「ポン置きして、アプリを操作して対象を指定するだけで天体が撮れる」。一言で表現できてしまうSeestar S50のユースケースですが、このことを実現するためには、前項の「スマート望遠鏡の条件」だけでなく、様々な最新技術が取り入れられています。そしてこれらの技術の多くは、ユーザーの眼には直接触れない形にまでブラックボックス化されているのがSeestar S50のスゴイところです。 実は一番驚いたのが、コンパクトでありながら天体望遠鏡として非常に優秀な光学性能を発揮しているところ。EDレンズを使用した口径50mm焦点距離250mmの3枚構成の対物レンズ(*)は、非常にシャープな像を結びます。天体写真の大敵である青・紫の色にじみもほぼ感じられず、天体撮影用の望遠鏡として一級品のクオリティです。 (*)口径比F5とそこそこ明るいですが、イメージセンサー(ソニー製IMX462)が5.6×3.2mmと小さいため、フラットナーのような補正レンズを入れなくても周辺像に流れはなく、十分満足できる画質が得られています。 そして大胆にも、内部に2枚のミラーを入れた屈曲光学系(*)によってコンパクト化を実現。光学系を収めた上下に回転する「鏡胴部」の全長をわずか18cmに収めることができたのはこの効果。鏡胴部が短くなることで慣性モーメントも小さくなり架台への負担も小さくなっているのでしょう。 (*)このような考え方は、iPhone 15 Pro Maxの望遠カメラや双眼鏡など光学製品では珍しくはないのですが、一般向けの天体望遠鏡ではほとんど例を見ないものです。 ピント合わせもワンタッチ・オートフォーカス搭載 そしてこれまたスゴイのがオートフォーカスの採用。ピント合わせは画面上の「AF」アイコンをタップするだけ(*)。天体写真における最初の関門ともいえる「ピント合わせ」が一発でできるのは素晴らしすぎる! (*)デジタルカメラで多く採用されている「像面位相差」方式ではなく、ピント位置をずらしながら連続撮影し、ボケ方のカーブからピント位置を判断している(オリンパスのOM-1などで採用されている「星空AF」と同じような考え方)ような挙動をします。ピント合わせの所要時間は一瞬ではなく10秒ほど待たされますが、精度はとても高いと感じました。 光害カットフィルター内蔵 これまた驚いたのが、強力な光害カットフィルター(*1)が内蔵されていて、画面上でタップするだけであり/なしを切り替えられること。筆者の知る限り「内蔵」した製品は初めてです。これはスゴイ。この光害カットフィルターは星雲が発する特定の波長以外の光を大幅にカットすることで、市街地でも淡い星雲の姿をとらえることができ、空の暗い場所で使用すると淡い星雲をさらにはっきりと浮かび上がらせることができます。 (*1)半値幅は20〜30nm。 光害カットフィルターを使う効果のある天体(輝線星雲)には、Seestarの対象リストに小さな緑の丸が表示されます。この緑マークのついた天体を導入すると光害カットフィルターに自動的に切り替わるようになっています。手動でOFFにすることも可能です。 内蔵されているフィルターは三種類(*1)。光害カットフィルターのほかには、通常の撮影を行うための「UV/IRカットフィルター」とダーク画像(*2)撮像用の「遮光フィルター」です。 (*1)専門的な天体撮影の場合、複数のフィルターを切り替える回転式の「フィルターホイール」を使用するのですが、電動式は安いものでも3万円ほどします。8万円台というSeestar S50にこんなマニアな?仕組みを入れてくるとは・・・スゴイ。 (*2)光を遮断した状態の画像をあらかじめ撮像しておき、対象の画像から引き算することでイメージセンサーのノイズを補正する方法。デジタルカメラでも「長秒時ノイズ低減」のような名前で実装されています。 Seestar S50内蔵の光害カットフィルターの効果を比較してみました。M42オリオン大星雲はとても明るい天体なので市街地でも撮影できるのですが、光害カットフィルターを使用した右の画像では、周辺の淡い部分があるかによく描出されています。 露よけヒーター内蔵 湿度が高く夜間冷え込むような環境では、天体望遠鏡のレンズへの結露は頭の痛い問題です。実際のところ、これまでの光学望遠鏡では結露防止対策は遮光を兼ねた「フード」を搭載するのみで、結露を防止するには自分でヒーターを準備し対策することが当たり前とされてきました。 しかし、Seestar S50には「結露防止ヒーター」が内蔵されているのです。本当に必要なものはスマートにあらかじめ製品に実装する、というスマート望遠鏡のコンセプト(*)が細かなところまで実現されています。 (*)誰かが定義したものではありませんが、一般に「スマート」を冠するデジタルデバイスに通じるものでしょう。 実際、ある夜にSeestar S50の対物レンズに夜露がべっとり付いてしまうことがありましたが、結露防止ヒーターをONにすることで、10分程で露が撮れてクリアになりました。これは本当にありがたいことです。 驚きの低価格 そして・・・びっくりするほど安い。デジタル式のスマート天体望遠鏡が初めて発売された(*)のが2021年ですが、この時の価格は50万ほどでした。一方でSeestar S50は一桁近くも安い、驚きの82,300円(2023年10月13日現在、消費税込。発売後に円安が進行したこともあり少し値上げされました)。 (*)ユニステラ社の「eVscope」が最初のスマート天体望遠鏡だといってよいと思います。米国のCESに初めて出展されたのが2017年、クラウドファンディングで製品が初めてユーザーの手に届いたのが2019年。通常の製品として販売が始まったのが2021年です。 初心者向けの光学式天体望遠鏡ですら、現在の市場価格は数万円〜7万円程度。もうそのくらいの価格帯までスマート望遠鏡が降りてきたのです。 これからは「初めて購入した天体望遠鏡はスマート天体望遠鏡だった」という人が大幅に増えてくることでしょう。天体観測・天体写真という趣味への「入口」が根本的に変わってしまうインパクトを秘めているのです。 Seestar S50の外観 パッケージ概要 それでは、Seestar S50の外観を見ていきましょう。 段ボール箱にスチロールの間仕切り、という至って地味なパッケージが多い天体望遠鏡ですが、Seestar S50はいかにも「家電製品風」な取っ手付きの化粧箱に収められています。 箱を開けると灰色の硬質スチロールのケースが入っています。このケースを10年使い続けるのは難しいかもしれませんが、収納や持ち運び用に問題なく使えるレベルです。このような「梱包材を兼ねたお手軽キャリングケース」はコストダウンにも貢献しているといえるでしょう。 Seestar S50の製品構成はこれまでの初心者用の光学望遠鏡よりもさらにシンプル。本体・三脚・USBケーブル・太陽観察用のフィルターと小冊子だけ。基本的には、追加で購入すべきものはありません(*)。 (*)後述しますが、付属の三脚はかなり短く背が低いため、長めの三脚に換装したくなる場合もあります。本体への給電・充電用にモバイルバッテリがあると便利ですが、内蔵電池だけでも公称6時間の使用が可能です。 現在販売されている中級向け以上の天体望遠鏡は「本体だけ購入しても実際はそれだけでは使えずパーツを買い足さなくてはならない(*)」ものがほとんどです。このパッケージだけで基本的には全て足るというのは実は画期的なことなのです。 (*)例えば天体写真用途の場合、何らかの「カメラ」が必要なことはもちろん、画像処理用に「パソコン」がほぼ必須です。ほかにも撮影用の補正レンズやアダプタリングなど、細々としたものもいろいろ必要になります。 本体 Seestar S50本体は、なかなかクール・シンプルなデザイン。収納状態では角の丸い直方体に半円のカマボコ型を組み合わせた形状です。望遠鏡の光学系、水平・垂直方向に可動する自動導入架台(経緯台)が一体となっています。 三脚に取り付けられたL字型の本体に、光学系を含んだアームが取り付けられていて上下に回転します。収納状態では望遠鏡は地面の真下を向く形になっています。 重量は三脚を含めて実測わずか約3kg(*)。これに加えてあと必要なものはスマホだけ。これさえあれば、美しい天体の姿を見ることができるのです。 (*)本体が2320g、三脚が610g、付属品を含めたケースが670gでした。 対物レンズは当然ですがフルマルチコート。レンズから本体内部を覗き込むと内面は黒色のプラそのままですが、三カ所ほどに遮光環の役割を果たすくり抜きがあって迷光を防ぐようになっているようです。遮光環のサイズはセンサーと比較してかなり余裕があります(*)。 (*)一回り大きなセンサーを搭載することも想定した設計なのかもしれません。 20231021追記)対物レンズには迷光対策のためにフードを付けたくなるところですが、レンズ部の内側にはネジは切られていません。仮にネジが切られたとしても、フードを装着すると収納状態では本体と干渉するので、オートパワーオフを設定で切っておくなど注意が必要です。 電源ボタンは鏡筒部の反対側にあり、その下の4つのランプは電源インジケーターです。Seestar S50本体で発光する部分はこの面しかありません。暗闇で使う場合、本体も三脚も黒いことと相まって、誤って蹴り倒してしまうこともあるかもしれません。さすがのSeestar S50もそこまで手が回らなかったのでしょうか。三脚の先に蓄光テープを貼るなどの対策をオススメします。 手前のコネクタは、Seestar S50の唯一の物理インターフェースとなるUSB-C端子。本体の充電と本体に保存されたデータの吸い出しに使用します(*)。 (*)USB-CケーブルでPCに接続すると外部ドライブとして認識されます。なお、ネットワークの設定にもよりますがWiFi経由でSeestar S50にアクセスすることも可能です。 ケースから三脚を取り外した下の凹みに付属品一式が収納されています。とはいっても、USB-Cケーブルと説明冊子が2つ、乾燥剤と太陽フィルターのみ。実質的には本体と三脚のみで運用できます。 本体底面には、三脚取付用のネジ穴の空いた直径40mmほどの丸いリングがあり、このリングが回転することで水平方向に本体が動きます。注意しなければならないのは、このリングと本体のクリアランスがわずかしかないこと。三脚側の取付部は「リングには密着するが本体とは接していない」状態でなくてはなりません。 このため、三脚や雲台側の取付面に凹凸があると、リングだけでなく本体にも圧着されてしまい、水平方向の動作ができなくなる危険があります。付属の三脚はその点何も考える必要がないのですが、社外品の三脚を使用する場合は注意が必要です。 三脚 付属の三脚は2段のカーボン製で長さは実測で縮長約27.5cm(地上高23.5cm)、最大長42cm(同36cm)。「ミニ三脚」くらいの長さです。カーボン製の三脚は高価なものですが、まさに「カーボン製三脚が奢られている(*)」といっていいでしょう。 (*)「奢られている」というのは、昭和・平成時代のクルマ雑誌でよく使用されていた表現。高価なパーツ・素材が惜しげもなく使用されている、の意。この製品価格でカーボン三脚が付属するのにはちょっとビックリ。 三脚の本体との嵌合部には水準器が付いています。Seestar S50を設置する際には水平が大きく狂っていると導入・追尾に悪影響が出るため、この水準器を頼りに、だいたいの水平を取って設置するようにします。 本体との取付はいわゆるカメラ用の「太ネジ(UNC3/8)」です。このサイズの三脚は「細ネジ(UNC1/4)」仕様が多いのですが、3kgの本体を安定して脱着する意味で(*)太ネジの採用は妥当といえるでしょう。ただし、後述しますが細ネジ仕様の三脚をアダプタを介して使用する場合は微妙に注意が必要です。 (*)三脚または本体をクルクル回して脱着する場合、細ネジでは斜めに無理矢理ねじ込んでネジ山を「なめて」しまう危険がありますが、太ネジならそのリスクは小さくなります。 電源 本体底面にはリチウムイオン電池が収納されていますが、日本向けの製品ではケースを止めるネジにシールが貼られていて「バッテリーの取り外し、交換はできません」とアナウンスされています。 日本国内における規制・認証の関係だと推測しますが、USB-Cで給電しながら使用できるため特に不便は感じませんでした。デジタルカメラで多い「電池が切れたら予備電池と交換する」という仕様よりも、ずっとシンプルで使いやすいといえます。 ちなみに、Seestar S50には「オートパワーオフ」の機能があります。何も操作せず放置すると(*)15分で電源がオフになるという機能です。電源の切り忘れによる電池の無駄な消耗を避ける意味でも便利な機能です。 (*)設定でオートパワーオフをOFFにすることもできます。もちろん、ライブスタックやタイムラプス撮影の実行中にシャットダウンされることはありません。 Seestar S50の基本操作 地上風景を見る Seestar S50を購入されたら、まず昼間の風景を「風景」モードで見てみることをオススメします。Seestar S50がカメラレンズでいえばかなりの超望遠(*)であること、上下左右に望遠鏡の向きを変える操作、ピント合わせ(AF)の方法、画面の明るさ調整など、基本的な操作感をすぐに理解できることでしょう。 (*)画角的にはフルサイズ換算で焦点距離約1680mm相当になります。 特に、画面上に表示された「カーソル」を上下左右にスライドさせて動かす操作は、ある程度慣れておく必要があります。少しスライドすると白表示で微動、大きくスライドすると赤表示で粗動です。微動でもけっこう速いため、つい「行きすぎてしまう」のがちょっと気になります。このあたりの動作は今後チューニングされるのではないかと推測しますが、手動で思った位置に望遠鏡を向けるには慣れが必要でしょう。 なお、地上風景モードでは天体と違って追尾はされません。月の出・月の入りなどを風景を固定して撮影したい場合はこの風景モードを使用するのがよいでしょう。 太陽を見る Seestar S50を昼間の屋外に持ち出したのなら、ぜひ「太陽モード」で太陽面を観察してみましょう。これまでの他社のスマート天体望遠鏡で「太陽面」の観察をサポートした製品は存在しませんでした。これはSeestar S50だけの機能です。 一般に天体望遠鏡で太陽を見ることは、何も減光処置をせず肉眼で太陽を直視すると失明する危険があることから、もはや「禁忌(タブー)」くらいの勢いになっています。、口径の大きな天体望遠鏡では機材を損傷するどころか、まさに「炎上」するリスクすらあります。 肉眼で直視しないSeestar S50の場合、少なくとも失明の心配はありません。ただし、筐体の対物レンズ側に「太陽フィルター」をしっかり装着する必要があります。このフィルターは太陽の光を10万分の1くらいにまで減光するもので、これさえ装着していればセンサーを傷める心配はありません。逆にこれを装着せずにうっかり太陽に向けてしまうと、イメージセンサーが焼け焦げてしまいますので、絶対に装着を忘れずに! Seestar S50で太陽面を見ると、太陽黒点のようすが日々変わっていくことをあらためて実感します。太陽という最も身近な「恒星」の姿を簡単に観察できるのは素晴らしい!リスクが存在する中、太陽の観察を可能にした本機能には拍手喝采を贈りたいと思います。 注意点を2つ。一つめは、この太陽フィルターは専用の太陽望遠鏡(*)のように「プロミネンス」「彩層」「ダークフィラメント」などを観察できるものではありません。画面上では太陽がオレンジ色に着色していて、なんとなくそれらしく見えるのですが、実際には単なる少し色の付いた減光フィルターです。 (*)プロミネンスなどを観測できる「太陽望遠鏡」は、特定の波長だけをごく狭く通す特殊なフィルターが内蔵されていて、最も低価格の製品でも10万円以上する高価なものです。 二つめは、視界が開けていない場所では太陽の導入に失敗するケースがあることです。Seestar S50の太陽導入では、本体の方位・角度センサーでまずだいたいの方向に望遠鏡を向けた後、水平方向に空をスキャンして得られた背景の空の明るさのカーブから太陽の向きを判断しているようです。このため、スキャンする途中に建物や雲があると導入に失敗する確率が高くなるようです(*)。 (*)アプリV1.9の場合。今後改良される可能性があります。 導入に失敗すると手動で太陽の方向に向けるしかないのですが、このとき太陽を肉眼で直視しないように注意してください。手動導入の際は太陽の明るい光球面が視野内のどこかにあるか、上の右の画像のように「太陽が近くにある」状態になれば、再度導入を行えば太陽を中心に導入してくれます。 最新版のアプリ1.9.1では、太陽の追尾機能がさらにパワーアップしています。それまでの単純な太陽時追尾ではなく、機械的な誤差や設置の誤差を補正し太陽が常に中心に表示されるようになりました(*)。日食の経過を追い続けるような用途で大いに役立つことでしょう。 (*)ただし、長時間のタイムラプス撮影の場合は微妙に太陽が中心からフラフラ動いてしまいます。さらなるアプリのバージョンアップに期待したいところです。 星雲・星団を見る さて、風景と太陽を見たら、次は夜の星空に向けてみましょう。風景と太陽を見て基本操作を練習していれば、つまづくことなく星雲星団も見ることができるでしょう。 ひとつ、大事なことがあります。Seestar S50の基本として、三脚をなるべく水平に立てることです。付属の三脚には水準器がついているので、これをたよりに「だいたい」水平に設置します。大きくズレている場合、Seestarアプリ画面に「三脚の水平を調整してね!」というメッセージが表示されますので、表示が緑になるように三脚の長さや足を動かして調整します(*)。 (*)最終的な導入では星並びから望遠鏡の向きを自動で判別してSeestar S50が自動的に調整してくれるので、あまり神経質になる必要はありません。目で見て「傾いていない」程度なら大丈夫です。 目的の天体は、アプリの対象一覧または星図から対象を選択します。あとはSeestar S50が自動的に動いて対象に向けてくれます。ただし、当たり前ですが目標の天体が雲や建物に隠されていて見えない場合は導入ができません。視界の制限されたベランダなどで観察する際は、目的の天体の方角が「見えている」ことを確認する必要があります。アプリの星図画面でスマホを空にかざして「コンパス」をONにすれば、一かざした方角の星空を表示してくれるので、これが目安になります。 めでたく天体が導入できたら、画面下部の撮影ボタンをタップしてみましょう。このボタンを押す前のプレビュー状態では、イメージセンサーは短い露光時間で動作しているため明るい星がパラパラと見えるだけなのですが、撮影ボタンを押すと「10秒露出」で対象を次々と撮影し、得られた画像を積み重ねる(スタック)することで、暗い天体が徐々に浮かび上がってきます。あとは、満足のいくまでSeestar S50に撮影をまかせてスタックを続けるだけです。 ノイズレベルの違いがわかりやすくなるように、Photoshopを使用してトーンカーブで強調し彩度も上げてみました。10秒露光ではザラザラだった背景が3分露光ではだいぶ滑らかになっています。 M42オリオン大星雲のような明るい対象の場合、10秒露光の最初の1枚だけでも、しっかりと天体の姿が見えてきます。一方で「馬頭星雲」のような淡い天体は、何十枚もスタックしないと見えてきません。このような「目的の天体の姿が浮かび上がってくる様子を見守る」のも、スマート天体望遠鏡の醍醐味のひとつです。 なお、撮影ボタンを最初にタップしたときは「画像補正(ダークフレーム撮影)」が自動的に実行され、1分間ほど待つ必要があります。ダークフレームとは光を遮断した状態で撮影されたイメージセンサーのノイズのみの画像のことで、撮影画像からダークフレームを引き算することで画質を向上させるために必要なものです。 ダークフレームは温度が大きく変わらない場合は使い回しが可能なため、次に電源ONするまでの間は同じダークフレームが使用されます、このプロセスは電源をONにした最初の星雲星団撮影の際のみ動作するようです。 月を見る Seestar S50には「月モード」も搭載されています。太陽と同様に、月も画面にちょうどいっぱいに収まるくらいの大きさに見えます。 月の導入の際の動作は太陽モードとほぼ同じで、背景の空の明るさをスキャンしているようです。ただし、月が出ている状態でも普通は星空はそれなりに見えていますので、月の近くの天体を星雲星団モードで観察した後なら、太陽よりは確率高く月を導入してくれるようです。 後述しますがSeestar S50は光学系の実焦点距離が約250mmと天体望遠鏡としてはかなり短めで、光学系の理論限界レベルの解像度は期待できないのですが、月の全体像をのんびりと眺めるにはうってつけのツールといえるでしょう。 要望があるとすれば「地球照」も写したいところ。Seestar S50の月モードは、露出が完全自動なので調整の余地がありません。簡単な操作で露出補正ができるようになれば、地球照も写せるのですが。理想は、自動で多段階露光を行って上の画像のようなHDR合成までやってくれることでしょう(*)。 (*)まじめな話、この機能が実装されても筆者はまったく驚きません。現在のZWO社の技術をもってすれば、この機能は製品企画の優先度の問題でしょう。「月を楽しむ」ユーザーの満足度向上のために、ぜひ実現してほしいものです。 アクティベーション 記事の構成上最後になりましたが、Seestar S50を最初に購入した際には「アクティベーション」という操作が必要です。アクティベーションの方法については上の解説動画を参照ください! 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