新連載の画像処理ワンポイントですが、ご好評をいただきほっとしています。やはり「天体・星景写真の画像処理」について、多くの人が既存の情報源に満足されていないということなのでしょうか。調子に乗ってガンガン進めます!

第2回のテーマは、主に星景写真向けのテクニック「シャドーを持ち上げる」です。

星景写真で一番暗いのは地上風景

EOS5DMarkIII タムロン15-30mmF2.8 絞りF2.8 30秒 ISO3200 PSで周辺減光のみ補正

今回の素材画像はこれです。周辺減光を補正した以外はほぼ撮って出し。

撮影地は九州、くじゅう山のふもと「ヒゴタイ公園」。九州ではなかなか星のよく見える暗い場所。愛車と展開機材を入れた星空スナップなのですが、周囲が暗すぎて地上は黒く潰れてしまっています。

そう、星景写真で一番暗いところは地上風景なのです。

街灯りの強い場所ではこんなことにはならないのですが、星がよく見える遠征地での月のない暗夜では、地上の風景は空よりもずっと暗いため、こんな風に真っ暗になってしまいます。これをなんとかしよう。これが今回のテーマです。

Camera rawでシャドーを持ち上げる

こんな時にどうするか。方法はカンタン。PhotoshopのCamera rawフィルターの「シャドウ」を持ち上げます。この作例では+100に目一杯持ち上げました。これで地上の風景が浮き上がってきました!

たったこれだけ。簡単にシャドーを持ち上げることができました。この操作はPhotoshopだけでなく、LightRoomでも、デジカメ付属の標準のraw現像ソフトにも基本的には同じような機能が付いています。

ちょっと簡単すぎましたかね?中級者以上の方には常識かもしれませんが、この機能はかなり使えるので初級者の方はぜひ覚えて置いてくださいね!

シャドーを持ち上げる弊害とその解決

シャドーを持ち上げると弊害もあります。露出不足のシャドーを持ち上げてしまうと、ノイズが浮いてきてしまいます。これではちょっと見苦しいですね。

こんなときはCamra rawフィルターで「ノイズ軽減」しましょう。上の例では「輝度」を20、「カラー」を30にしてノイズ軽減をしています。ノイズ軽減はディテールを損なう「ダメージ処理」なので乱用は禁物ですが、この程度であればWeb品質なら大した問題にはなりません(*)。

(*)ノイズ低減についてはいずれ別記事で詳しくご紹介したいと思います。持ち上げたシャドー部だけをマスクでノイズ軽減すれば、星空のディテールを損なわずシャドーだけをノイズ低減することが可能です。

できあがり。最後に少し明るく補正(露出補正+0.35)し、彩度を少し上げて(+10)カラーバーランスを微調整しました。また、地上だけマスクをかけてさらにノイズ低減を35/50しています。

トーンカーブでシャドーを持ち上げる

さて。もう少しいろいろ試してみましょう。Camera rawの「シャドーの持ち上げ」は実際のところどんな処理をやっているのでしょうか。単にヒストグラムの左側を持ち上げているだけなら、トーンカーブでも同じような操作が可能なはず。

しかし!なかなかうまくいかないんですよねえ。空を明るくせずに地上だけを持ち上げるのが難しい。持ち上げても、なんだかのっぺりしてしまって、Camera rawの持ち上げのようにはなりません。

トーンカーブの達人ならうまくやれるのかなあ・・・「こうやればいいんだよ!」という方法をご存じの方は、ぜひご教示ください!

いずれにしても、トーンカーブで(簡単には)同じことが再現できないのだとすると、Camera rawの「シャドーの持ち上げ」はますます使える小技ということになります。

マスクで領域指定して持ち上げる

別の方法を試してみました。マスクをかけてシャドーを持ち上げる方法です。領域の選択は「クイック選択ツール」を使用しました(*)。

(*)他にも輝度マスクを使う方法もあります。

地上部分をマスク選択し「明るさ・コントラスト」で明るさを+70、コントラストを-20したもの(*)。こちらの方がトーンカーブをいじるよりは「マシ」ですね。それでも、まだCamera rawフィルターの「シャドウ」持ち上げには負けているような気がします。

(*)このやり方の場合、マスクの境界線をいかに自然にするかがポイントになります。この例はマスクの境界を4px縮小し3pxぼかしています。

今回の作例のような、人工光のようなハイライトが存在しない、ひたすら暗い領域を持ち上げる場合は、マスクやトーンカーブでややこしい操作をするよりも、Camera rawフィルターの「シャドウ」持ち上げ一発で補正する方が簡単で結果も良いように思います。

マスクを使用した輝度コントロールについては、また別の機会で解説したいと思います!

ライトアップ vs 輝度マスク

ソフトウェアによる持ち上げ処理は、結局のところ「人為的な処理」です。特にマスク処理の場合、お絵かき・塗り絵と何が違うのか?と問われると「ソフトウェアのアルゴリズムによる塗り絵です(キリッ」と答えるしかありません(マスク処理自体がそういうものです)。

「人為的な処理」が良いことなのか悪いことなのかについては、本稿の意図するところではありませんので答はないのですが、もうひとつの「人為的な処理」である「ライトアップ」との比較について若干言及しておきます。

本稿の「シャドーを持ち上げる」という操作は、いってみれば「ソフトウェアによるライトアップ」です。暗いところをソフトウェア的に持ち上げる(明るくする)。やろうとしている目的はライトアップと同じ。

上の3つの画像は、人工光源によるライトアップとソフトウェアによるシャドー持ち上げ処理の比較。人工光源を当てると対象をいくらでも明るく照らすことができる反面、遠景ほどライトアップの効果がなくなってしまいます。ソフトウェアによる持ち上げの場合は、光源からの距離に関係なく持ち上げが可能。これが一番大きな効果の違いです(*)。

(*)もちろん特定の対象を明るくすることがよりよい効果をもたらす場合もありますが、世の中のライトアップ写真の多くは照らすことが目的化してしまい、明るく照らしすぎています。見るからに「照らしてます」といわんばかり。

ライトアップによる写真表現の可能性は否定しないし、ライトアップをしないことを第三者に強制するような根拠も残念ながらありません。しかし、無粋なライトアップをするくらいなら、ソフトウェア処理のほうがよっぽど良い作品をつくることが可能です。他人に迷惑もかけません。夜は夜らしく撮るのが、粋な写真だと思いませんか?

まとめ

いかがでしたか?シャドー持ち上げを使いこなせるようになると、輝度差のある対象の表現の幅が大きく広がります。やり方さえ覚えてしまえば実に簡単。デジタル写真ならではの「調味料」ないしは「料理法」といえるでしょう。

別の作例を。左が元画像、右はシャドウを+70したもの。黒くつぶれていたおねえさんのお肌を持ち上げました(*^^*)

注意点としては、シャドーを持ち上げたい場合は露出時間を多めに取ることです。露出が足りないとシャドーを持ち上げてもザラザラになってしまうだけです。

最後に、心に留めておきたいのは、露骨すぎる処理は自然さを失うということ。あらゆる画像処理・強調処理と同じく、主題と対象をよく見極めて行いましょう。某社の薄口醤油のコマーシャルではないですが(*)、

「シャドー持ち上げを使うコツ。効果を見ながら控えめに、控えめに」

を心がけてくださいね!

それでは、皆様のご武運をお祈り申し上げます。次回またお会いしましょう!

(*)ぐぐってみたのですが、ぜんぜん出てきません^^;; かなり古いか関西限定だったのかも?


  • 作例は特に注記のないものは編集部で撮影したものです。

 

http://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2018/11/0445b890c9df308d0291aa769be12d6a-1024x730.jpghttp://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2018/11/0445b890c9df308d0291aa769be12d6a-150x150.jpg編集部画像処理ワンポイント新着新連載の画像処理ワンポイントですが、ご好評をいただきほっとしています。やはり「天体・星景写真の画像処理」について、多くの人が既存の情報源に満足されていないということなのでしょうか。調子に乗ってガンガン進めます! 第2回のテーマは、主に星景写真向けのテクニック「シャドーを持ち上げる」です。 星景写真で一番暗いのは地上風景 今回の素材画像はこれです。周辺減光を補正した以外はほぼ撮って出し。 撮影地は九州、くじゅう山のふもと「ヒゴタイ公園」。九州ではなかなか星のよく見える暗い場所。愛車と展開機材を入れた星空スナップなのですが、周囲が暗すぎて地上は黒く潰れてしまっています。 そう、星景写真で一番暗いところは地上風景なのです。 街灯りの強い場所ではこんなことにはならないのですが、星がよく見える遠征地での月のない暗夜では、地上の風景は空よりもずっと暗いため、こんな風に真っ暗になってしまいます。これをなんとかしよう。これが今回のテーマです。 Camera rawでシャドーを持ち上げる こんな時にどうするか。方法はカンタン。PhotoshopのCamera rawフィルターの「シャドウ」を持ち上げます。この作例では+100に目一杯持ち上げました。これで地上の風景が浮き上がってきました! たったこれだけ。簡単にシャドーを持ち上げることができました。この操作はPhotoshopだけでなく、LightRoomでも、デジカメ付属の標準のraw現像ソフトにも基本的には同じような機能が付いています。 ちょっと簡単すぎましたかね?中級者以上の方には常識かもしれませんが、この機能はかなり使えるので初級者の方はぜひ覚えて置いてくださいね! シャドーを持ち上げる弊害とその解決 シャドーを持ち上げると弊害もあります。露出不足のシャドーを持ち上げてしまうと、ノイズが浮いてきてしまいます。これではちょっと見苦しいですね。 こんなときはCamra rawフィルターで「ノイズ軽減」しましょう。上の例では「輝度」を20、「カラー」を30にしてノイズ軽減をしています。ノイズ軽減はディテールを損なう「ダメージ処理」なので乱用は禁物ですが、この程度であればWeb品質なら大した問題にはなりません(*)。 (*)ノイズ低減についてはいずれ別記事で詳しくご紹介したいと思います。持ち上げたシャドー部だけをマスクでノイズ軽減すれば、星空のディテールを損なわずシャドーだけをノイズ低減することが可能です。 できあがり。最後に少し明るく補正(露出補正+0.35)し、彩度を少し上げて(+10)カラーバーランスを微調整しました。また、地上だけマスクをかけてさらにノイズ低減を35/50しています。 トーンカーブでシャドーを持ち上げる さて。もう少しいろいろ試してみましょう。Camera rawの「シャドーの持ち上げ」は実際のところどんな処理をやっているのでしょうか。単にヒストグラムの左側を持ち上げているだけなら、トーンカーブでも同じような操作が可能なはず。 しかし!なかなかうまくいかないんですよねえ。空を明るくせずに地上だけを持ち上げるのが難しい。持ち上げても、なんだかのっぺりしてしまって、Camera rawの持ち上げのようにはなりません。 トーンカーブの達人ならうまくやれるのかなあ・・・「こうやればいいんだよ!」という方法をご存じの方は、ぜひご教示ください! いずれにしても、トーンカーブで(簡単には)同じことが再現できないのだとすると、Camera rawの「シャドーの持ち上げ」はますます使える小技ということになります。 マスクで領域指定して持ち上げる 別の方法を試してみました。マスクをかけてシャドーを持ち上げる方法です。領域の選択は「クイック選択ツール」を使用しました(*)。 (*)他にも輝度マスクを使う方法もあります。 地上部分をマスク選択し「明るさ・コントラスト」で明るさを+70、コントラストを-20したもの(*)。こちらの方がトーンカーブをいじるよりは「マシ」ですね。それでも、まだCamera rawフィルターの「シャドウ」持ち上げには負けているような気がします。 (*)このやり方の場合、マスクの境界線をいかに自然にするかがポイントになります。この例はマスクの境界を4px縮小し3pxぼかしています。 今回の作例のような、人工光のようなハイライトが存在しない、ひたすら暗い領域を持ち上げる場合は、マスクやトーンカーブでややこしい操作をするよりも、Camera rawフィルターの「シャドウ」持ち上げ一発で補正する方が簡単で結果も良いように思います。 マスクを使用した輝度コントロールについては、また別の機会で解説したいと思います! ライトアップ vs 輝度マスク ソフトウェアによる持ち上げ処理は、結局のところ「人為的な処理」です。特にマスク処理の場合、お絵かき・塗り絵と何が違うのか?と問われると「ソフトウェアのアルゴリズムによる塗り絵です(キリッ」と答えるしかありません(マスク処理自体がそういうものです)。 「人為的な処理」が良いことなのか悪いことなのかについては、本稿の意図するところではありませんので答はないのですが、もうひとつの「人為的な処理」である「ライトアップ」との比較について若干言及しておきます。 本稿の「シャドーを持ち上げる」という操作は、いってみれば「ソフトウェアによるライトアップ」です。暗いところをソフトウェア的に持ち上げる(明るくする)。やろうとしている目的はライトアップと同じ。 上の3つの画像は、人工光源によるライトアップとソフトウェアによるシャドー持ち上げ処理の比較。人工光源を当てると対象をいくらでも明るく照らすことができる反面、遠景ほどライトアップの効果がなくなってしまいます。ソフトウェアによる持ち上げの場合は、光源からの距離に関係なく持ち上げが可能。これが一番大きな効果の違いです(*)。 (*)もちろん特定の対象を明るくすることがよりよい効果をもたらす場合もありますが、世の中のライトアップ写真の多くは照らすことが目的化してしまい、明るく照らしすぎています。見るからに「照らしてます」といわんばかり。 ライトアップによる写真表現の可能性は否定しないし、ライトアップをしないことを第三者に強制するような根拠も残念ながらありません。しかし、無粋なライトアップをするくらいなら、ソフトウェア処理のほうがよっぽど良い作品をつくることが可能です。他人に迷惑もかけません。夜は夜らしく撮るのが、粋な写真だと思いませんか? まとめ いかがでしたか?シャドー持ち上げを使いこなせるようになると、輝度差のある対象の表現の幅が大きく広がります。やり方さえ覚えてしまえば実に簡単。デジタル写真ならではの「調味料」ないしは「料理法」といえるでしょう。 注意点としては、シャドーを持ち上げたい場合は露出時間を多めに取ることです。露出が足りないとシャドーを持ち上げてもザラザラになってしまうだけです。 最後に、心に留めておきたいのは、露骨すぎる処理は自然さを失うということ。あらゆる画像処理・強調処理と同じく、主題と対象をよく見極めて行いましょう。某社の薄口醤油のコマーシャルではないですが(*)、 「シャドー持ち上げを使うコツ。効果を見ながら控えめに、控えめに」 を心がけてくださいね! それでは、皆様のご武運をお祈り申し上げます。次回またお会いしましょう! (*)ぐぐってみたのですが、ぜんぜん出てきません^^;; かなり古いか関西限定だったのかも? 作例は特に注記のないものは編集部で撮影したものです。  編集部発信のオリジナルコンテンツ