スターミストフィルターとは?

ソフトフィルターを使用されていますか?

星空の写真では、フィルターなしで撮ると明るい星が弱々しくしか写りません。これはデジタルカメラでは、点光源である星が簡単に「白飛び」してしまうからです。昨今の高画素のセンサーと高解像度のレンズでは、星の光はセンサー上のわずか数ピクセルほどの径に全ての光が収束してしまいます。このため、明るい星ほど本来星が発している光をセンサーが受け止めきれず「飽和」してしまうのです(*)。



(*)フィルムの時代は、フィルムの乳剤中の光の散乱や、レンズの解像度が今よりずっと低く星像径が大きかったため、あまり問題になりませんでした。

そのため、レンズの前面に「ソフトフィルター」を装着して意図して星を「滲ませる」ことにより、星の輝度差を「星の大きさ」に置き換えて表現する手法が広く用いられてきました。しかし「レンズ前面」にソフトフィルターを置くと、広角レンズの場合周辺の明るい星が放射状の「楕円形」になる問題がありました。

【リア装着ソフトフィルターの決定版】よしみカメラプロデュース クリップタイプソフトフィルター

 

その対策として、ごく薄いシートタイプのソフトフィルターをレンズの後面に貼り付けたり、専用のフィルター枠にはめ込んで使用されていました。上の記事は、今回ご紹介するものと同じフィルター枠に「Lee」フィルターをはめ込んだ製品です。

しかし、この「ごく薄いシートタイプのソフトフィルター」が数年前に製造終了になってしまい、代替品もないという状況がずっと続いていました。

STC クリップタイプ スターミストフィルター 星を強調するソフトフィルター
https://yoshimi.ocnk.net/product/391

そんな状況の中で開発されたのが「スターミストフィルター」です。ごく薄い(0.5mm)ガラス材の表面に微細な加工を施すことで、Leeフィルターと同じようなソフト効果を実現した、台湾・STC社の製品です。各社のカメラボディの形状に合わせた専用の「枠」が用意され、マウント内部にセットして使うようになっています。

天リフ編集部では、よしみカメラ様より本製品の試作品をお借りして、実写評価を行いました。以下、その結果をご紹介したいと思います。

ソフト強度比較・FE20mmF1.8Gの例

試写した結果、滲み効果の強さは、プロソフトンクリア≒Lee No3>スターミスト2 ぐらいの感じでした。「スターミスト2」は効果が弱めで、Leeフィルターでいうと No2〜No1相当と感じました。一般ユーザーのニーズとしては、もう少し効果の強いほうが高いかもしれません。より効果の強い「スターミスト3」が現在開発中とのことです。

[共通データ]

ソニーα7SIII FE20mmF1.8G 絞りF2.8 ISO6400 10秒露光 固定撮影
カラーバランス・露出補正 、周辺減光のみレンズ補正 、ノイズ低減処理・シャープ処理なし

プロソフトンクリア

Lee No3

スターミスト2

フィルターなし

Lee No4

スターミスト1

以下、スターミスト1、1/2、1/4は試作品です。現時点では、よしみカメラからの発売の予定はありません。

スターミスト1/2

スターミスト1/4

 

ソフト強度比較・FE14mmGMの例

ソフト効果の傾向はFE20mmF1.8とほぼ同じでした。

[共通データ]

ソニーα7SIII FE14mmF1.8GM 絞り解放
ISO6400 4秒露光 固定撮影
カラーバランス・露出補正 、周辺減光のみレンズ補正 、ノイズ低減処理・シャープ処理なし

スターミスト2

Lee No3

フィルターなし

ソフト強度比較・タムロン35mmF1,4(F045)の例

焦点距離による滲み加減の差はあまり感じられませんでした。

[共通データ]

ソニーα7SIII タムロン35mmF1.4(F045)  F2.8
ISO6400 10秒露光 固定撮影
カラーバランス・露出補正 、周辺減光のみレンズ補正 、ノイズ低減処理・シャープ処理なし

スターミスト2

プロソフトンクリア



フィルターなし

絞り値による滲みの差

絞り値による比較です。絞り値による収差変動(パープルフリンジ)がありますが、それ以外の滲みの違いは感じられませんでした。

周辺像の悪化について

リアタイプのフィルターは周辺像を悪化させる場合があります。これは重要なことなので、しっかり認識しておいてください。最近の広角・超広角レンズの性能向上はめざましく、解放でもほぼ点像を維持している製品が現れ始めています。逆に、こういった高性能レンズの場合、薄いフィルターといえども、光路中に設計時に想定(*1)しない「異物」が入ると、とたんに性能が悪化してしまう(*2)のです。

(*)たとえばセンサーの直前には「UVIRカットフィルター」「色補正フィルター」「ローパスフィルター」などの平面素子が存在しますが、あらかじめこの厚みを想定して光学設計が行われています。このため、他社製レンズをマウントアダプタ経由で装着した場合、本来の性能が出ないケースもあるようです。

(*2)リアフィルター挿入による周辺像の悪化は2つの理由が考えられます。

    1. フランジバックのずれによるレンズの近距離補正の誤作動。撮影距離による収差変動を補正する「近距離補正」機構が、フィルターの挿入によって本来の被写体距離でない補正がかかってしまうことで収差が増大することがあります。20mmGレンズの場合スターミストフィルターによって距離目盛2m相当で無限遠が合焦しました。Leeの場合は50m前後でした。14mmGMレンズの場合スターミストが1m、Leeが20m前後でした。
    2. 平面ガラスによる非点収差の発生
      参考)https://note.com/lensculinaris/n/n5a2ea26088a5

次項以降に実写例を掲載しましたが、超広角(FE14mmF1.8G)では周辺像は明らかに悪化します、これがリアタイプガラスフィルターの、薄いシート型のLeeフィルターに対する最大の欠点です。

一方で、影響の少ないレンズもあります。FE20mmF1.8では顕著な周辺像の悪化はなく、ノーフィルター時の四隅の像のバラツキ(製造公差によるものと推測)ほどは悪化しませんでした。むしろ流れが少なくなる場合もありました。

高性能広角レンズの周辺の流れは個体差による問題もあり、一概にはいえないという結果になりましたが、悪影響がないはずはない(*)、という認識を持った方が良いと思います。

(*)「無限遠全振り(近距離の収差変動をあえて補正していない?)」という噂もあるシグマ14mmF1.4でどうなるのか、たいへん興味深いところです。

最後に。スターミストフィルターは一般にフィルター材として使用されることが多い「白板ガラス(B270など)」ではなく、溶融石英が使用されています。溶融石英はより屈折率が低く、フィルターを9%ほど薄くしたのと同じ効果があり、周辺像の悪化を抑制しています。

参考)
溶融石英の屈折率:1.4586、0.5mm厚フィルターの光路長(近軸値):0.157mm
白板ガラスB270の屈折率1.5230、0.5mm厚フィルターの光路長(近軸値):0.172mm
フィルター材に溶融石英を使用することによる光路短縮効果は9%程度。

20mmF1.8G

共通データ

ソニーα7SIII FE20mmF1.8G 絞りF2.8 ISO6400 10秒露光 固定撮影
カラーバランス・露出補正 、周辺減光のみレンズ補正 、ノイズ低減処理・シャープ処理なし

中央部ではどれも差異がありません。星の色が緑・マゼンタに転び、エッジがボロボロになっているのはソニーカメラ固有の「StarEater現象」によるものです。

右上隅はスターミスト2がより顕著に流れていますが、フィルターなしでもそれなりに流れています。

左上隅では逆にスターミスト2が最も星像が良く、フィルターなしが一番流れています。筆者がFE20mmGの購入当初はこれほどの流れはなかった記憶があるのですが・・・

右下隅から1/4あたり。やや星像が甘いものの非点収差はどれもほとんど感じられません。

結果的にFE20mmF1.8Gでは、フィルターなしでも4隅の流れが不均等でレンズの光軸ないしはマウント部のスケアリングにずれがあり、フィルター装着によるバックフォーカス差による悪化の影響はそれよりは少なかったと推測しました。

14mmF1.8G

傾向はFE20mmGと大きな差はなく、こちらもLeeNo3使用時が一番周辺星像が良いようです。元々のレンズのバックフォーカスが若干ズレているのかもしれません。ただし、スターミスト2は最周辺の流れが相当に大きくなっています。

四隅から離れるにつれどの程度星像が改善するかを等倍画像で比較してみました。等倍拡大では最周辺はなかなか厳しいですが、APS-Cの四隅程度なら許容範囲でしょう。

しかし、鑑賞距離で流れが目立つ、というほどではありません。普通にみただけでは問題を感じない人も多いのではないでしょうか。これが使えるか使えないかはユーザーの価値基準と拡大率(A3にプリントするとはっきりわかるでしょう)次第と考えられます。

タムロン35mmF1.4

筆者のこれまでの経験では、レフ機用レンズはリアフィルター装着時の周辺像の悪化が比較的少ないようです。EFマウント用のタムロン35mmF1.4(F045)では周辺像の悪化は感じられず、安定した星像が得られました。

この傾向はレフ機用レンズはテレセントリック性が高い(斜入射光成分が少ない)ためと推測しています。

まとめ

ニコンZマウント用の装着例。フィルター枠はボディの形状に合わせて用意されています。お手持ちのカメラが対応しているかどうかをよく確認してくださいね! https://yoshimi.ocnk.net/product/391
STC クリップタイプ スターミストフィルター 星を強調するソフトフィルター
https://yoshimi.ocnk.net/product/391

いかがでしたか?

定番だったシートタイプのソフトフィルター「Lee」が生産終了になって以来、「ソフトフィルター難民」という言葉が生まれて久しいですが、ようやく星空の撮影に使用できるリアタイプのソフトフィルターが「限定品」でなく商品化されるのは喜ばしいことです。

現状ではやや効果の弱い(「プロソフトンクリア」より弱く、Lee No1〜No2相当)「スターミスト2」の一種類ですが、より効果の大きい「スターミスト3」も開発中とのことで(販売時期未定)、用途・目的に応じて選択できるようになるのも遠い日ではないことでしょう。

ただし、繰り返しになりますが、リアタイプのフィルターは周辺像の悪化をもたらす可能性があることに注意が必要です。影響の大きなレンズもあれば小さいレンズもありました。実写しても個体差の問題もあるため、一般的にどの程度の影響があるのかは本記事では明確にできないのですが、これはリアタイプフィルターの「宿命」と考えるべきでしょう。

それでは、皆様のご武運をお祈りしております。お気に入りのフィルターでガンガン星空を撮りましょう!


  • 本記事は よしみカメラ様より機材のサンプル提供を受け、天文リフレクションズ編集部が独自の費用と判断で作成したものです。文責は全て天文リフレクションズ編集部にあります。
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  • 特に注記のない画像は編集部で撮影したものです。
  • 記事中の製品仕様および価格は執筆時(2023年10月)のものです。
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https://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2023/10/fc6927a4cd7fc6f068de9eb5d3ae4aff-1024x538.jpghttps://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2023/10/fc6927a4cd7fc6f068de9eb5d3ae4aff-150x150.jpg編集部フィルターフィルタースターミストフィルターとは? ソフトフィルターを使用されていますか? 星空の写真では、フィルターなしで撮ると明るい星が弱々しくしか写りません。これはデジタルカメラでは、点光源である星が簡単に「白飛び」してしまうからです。昨今の高画素のセンサーと高解像度のレンズでは、星の光はセンサー上のわずか数ピクセルほどの径に全ての光が収束してしまいます。このため、明るい星ほど本来星が発している光をセンサーが受け止めきれず「飽和」してしまうのです(*)。 (*)フィルムの時代は、フィルムの乳剤中の光の散乱や、レンズの解像度が今よりずっと低く星像径が大きかったため、あまり問題になりませんでした。 そのため、レンズの前面に「ソフトフィルター」を装着して意図して星を「滲ませる」ことにより、星の輝度差を「星の大きさ」に置き換えて表現する手法が広く用いられてきました。しかし「レンズ前面」にソフトフィルターを置くと、広角レンズの場合周辺の明るい星が放射状の「楕円形」になる問題がありました。 https://reflexions.jp/tenref/orig/2022/01/26/13262/   その対策として、ごく薄いシートタイプのソフトフィルターをレンズの後面に貼り付けたり、専用のフィルター枠にはめ込んで使用されていました。上の記事は、今回ご紹介するものと同じフィルター枠に「Lee」フィルターをはめ込んだ製品です。 しかし、この「ごく薄いシートタイプのソフトフィルター」が数年前に製造終了になってしまい、代替品もないという状況がずっと続いていました。 STC クリップタイプ スターミストフィルター 星を強調するソフトフィルター https://yoshimi.ocnk.net/product/391 そんな状況の中で開発されたのが「スターミストフィルター」です。ごく薄い(0.5mm)ガラス材の表面に微細な加工を施すことで、Leeフィルターと同じようなソフト効果を実現した、台湾・STC社の製品です。各社のカメラボディの形状に合わせた専用の「枠」が用意され、マウント内部にセットして使うようになっています。 天リフ編集部では、よしみカメラ様より本製品の試作品をお借りして、実写評価を行いました。以下、その結果をご紹介したいと思います。 ソフト強度比較・FE20mmF1.8Gの例 試写した結果、滲み効果の強さは、プロソフトンクリア≒Lee No3>スターミスト2 ぐらいの感じでした。「スターミスト2」は効果が弱めで、Leeフィルターでいうと No2〜No1相当と感じました。一般ユーザーのニーズとしては、もう少し効果の強いほうが高いかもしれません。より効果の強い「スターミスト3」が現在開発中とのことです。 ソニーα7SIII FE20mmF1.8G 絞りF2.8 ISO6400 10秒露光 固定撮影 カラーバランス・露出補正 、周辺減光のみレンズ補正 、ノイズ低減処理・シャープ処理なし プロソフトンクリア Lee No3 スターミスト2 フィルターなし Lee No4 スターミスト1 以下、スターミスト1、1/2、1/4は試作品です。現時点では、よしみカメラからの発売の予定はありません。 スターミスト1/2 スターミスト1/4   ソフト強度比較・FE14mmGMの例 ソフト効果の傾向はFE20mmF1.8とほぼ同じでした。 ソニーα7SIII FE14mmF1.8GM 絞り解放 ISO6400 4秒露光 固定撮影 カラーバランス・露出補正 、周辺減光のみレンズ補正 、ノイズ低減処理・シャープ処理なし スターミスト2 Lee No3 フィルターなし ソフト強度比較・タムロン35mmF1,4(F045)の例 焦点距離による滲み加減の差はあまり感じられませんでした。 ソニーα7SIII タムロン35mmF1.4(F045)  F2.8 ISO6400 10秒露光 固定撮影 カラーバランス・露出補正 、周辺減光のみレンズ補正 、ノイズ低減処理・シャープ処理なし スターミスト2 プロソフトンクリア フィルターなし 絞り値による滲みの差 絞り値による比較です。絞り値による収差変動(パープルフリンジ)がありますが、それ以外の滲みの違いは感じられませんでした。 周辺像の悪化について リアタイプのフィルターは周辺像を悪化させる場合があります。これは重要なことなので、しっかり認識しておいてください。最近の広角・超広角レンズの性能向上はめざましく、解放でもほぼ点像を維持している製品が現れ始めています。逆に、こういった高性能レンズの場合、薄いフィルターといえども、光路中に設計時に想定(*1)しない「異物」が入ると、とたんに性能が悪化してしまう(*2)のです。 (*)たとえばセンサーの直前には「UVIRカットフィルター」「色補正フィルター」「ローパスフィルター」などの平面素子が存在しますが、あらかじめこの厚みを想定して光学設計が行われています。このため、他社製レンズをマウントアダプタ経由で装着した場合、本来の性能が出ないケースもあるようです。 (*2)リアフィルター挿入による周辺像の悪化は2つの理由が考えられます。 フランジバックのずれによるレンズの近距離補正の誤作動。撮影距離による収差変動を補正する「近距離補正」機構が、フィルターの挿入によって本来の被写体距離でない補正がかかってしまうことで収差が増大することがあります。20mmGレンズの場合スターミストフィルターによって距離目盛2m相当で無限遠が合焦しました。Leeの場合は50m前後でした。14mmGMレンズの場合スターミストが1m、Leeが20m前後でした。 平面ガラスによる非点収差の発生 参考)https://note.com/lensculinaris/n/n5a2ea26088a5 次項以降に実写例を掲載しましたが、超広角(FE14mmF1.8G)では周辺像は明らかに悪化します、これがリアタイプガラスフィルターの、薄いシート型のLeeフィルターに対する最大の欠点です。 一方で、影響の少ないレンズもあります。FE20mmF1.8では顕著な周辺像の悪化はなく、ノーフィルター時の四隅の像のバラツキ(製造公差によるものと推測)ほどは悪化しませんでした。むしろ流れが少なくなる場合もありました。 高性能広角レンズの周辺の流れは個体差による問題もあり、一概にはいえないという結果になりましたが、悪影響がないはずはない(*)、という認識を持った方が良いと思います。 (*)「無限遠全振り(近距離の収差変動をあえて補正していない?)」という噂もあるシグマ14mmF1.4でどうなるのか、たいへん興味深いところです。 最後に。スターミストフィルターは一般にフィルター材として使用されることが多い「白板ガラス(B270など)」ではなく、溶融石英が使用されています。溶融石英はより屈折率が低く、フィルターを9%ほど薄くしたのと同じ効果があり、周辺像の悪化を抑制しています。 参考) 溶融石英の屈折率:1.4586、0.5mm厚フィルターの光路長(近軸値):0.157mm 白板ガラスB270の屈折率1.5230、0.5mm厚フィルターの光路長(近軸値):0.172mm フィルター材に溶融石英を使用することによる光路短縮効果は9%程度。 20mmF1.8G 共通データ ソニーα7SIII FE20mmF1.8G 絞りF2.8 ISO6400 10秒露光 固定撮影 カラーバランス・露出補正 、周辺減光のみレンズ補正 、ノイズ低減処理・シャープ処理なし 中央部ではどれも差異がありません。星の色が緑・マゼンタに転び、エッジがボロボロになっているのはソニーカメラ固有の「StarEater現象」によるものです。 右上隅はスターミスト2がより顕著に流れていますが、フィルターなしでもそれなりに流れています。 左上隅では逆にスターミスト2が最も星像が良く、フィルターなしが一番流れています。筆者がFE20mmGの購入当初はこれほどの流れはなかった記憶があるのですが・・・ 右下隅から1/4あたり。やや星像が甘いものの非点収差はどれもほとんど感じられません。 結果的にFE20mmF1.8Gでは、フィルターなしでも4隅の流れが不均等でレンズの光軸ないしはマウント部のスケアリングにずれがあり、フィルター装着によるバックフォーカス差による悪化の影響はそれよりは少なかったと推測しました。 14mmF1.8G 傾向はFE20mmGと大きな差はなく、こちらもLeeNo3使用時が一番周辺星像が良いようです。元々のレンズのバックフォーカスが若干ズレているのかもしれません。ただし、スターミスト2は最周辺の流れが相当に大きくなっています。 四隅から離れるにつれどの程度星像が改善するかを等倍画像で比較してみました。等倍拡大では最周辺はなかなか厳しいですが、APS-Cの四隅程度なら許容範囲でしょう。 しかし、鑑賞距離で流れが目立つ、というほどではありません。普通にみただけでは問題を感じない人も多いのではないでしょうか。これが使えるか使えないかはユーザーの価値基準と拡大率(A3にプリントするとはっきりわかるでしょう)次第と考えられます。 タムロン35mmF1.4 筆者のこれまでの経験では、レフ機用レンズはリアフィルター装着時の周辺像の悪化が比較的少ないようです。EFマウント用のタムロン35mmF1.4(F045)では周辺像の悪化は感じられず、安定した星像が得られました。 この傾向はレフ機用レンズはテレセントリック性が高い(斜入射光成分が少ない)ためと推測しています。 まとめ STC クリップタイプ スターミストフィルター 星を強調するソフトフィルター https://yoshimi.ocnk.net/product/391 いかがでしたか? 定番だったシートタイプのソフトフィルター「Lee」が生産終了になって以来、「ソフトフィルター難民」という言葉が生まれて久しいですが、ようやく星空の撮影に使用できるリアタイプのソフトフィルターが「限定品」でなく商品化されるのは喜ばしいことです。 現状ではやや効果の弱い(「プロソフトンクリア」より弱く、Lee No1〜No2相当)「スターミスト2」の一種類ですが、より効果の大きい「スターミスト3」も開発中とのことで(販売時期未定)、用途・目的に応じて選択できるようになるのも遠い日ではないことでしょう。 ただし、繰り返しになりますが、リアタイプのフィルターは周辺像の悪化をもたらす可能性があることに注意が必要です。影響の大きなレンズもあれば小さいレンズもありました。実写しても個体差の問題もあるため、一般的にどの程度の影響があるのかは本記事では明確にできないのですが、これはリアタイプフィルターの「宿命」と考えるべきでしょう。 それでは、皆様のご武運をお祈りしております。お気に入りのフィルターでガンガン星空を撮りましょう! 本記事は よしみカメラ様より機材のサンプル提供を受け、天文リフレクションズ編集部が独自の費用と判断で作成したものです。文責は全て天文リフレクションズ編集部にあります。 記事に関するご質問・お問い合わせなどは天文リフレクションズ編集部宛にお願いいたします。 製品の購入およびお問い合わせは製品を取り扱う販売店様にお願いします。 本記事によって読者様に発生した事象については、その一切について編集部では責任を取りかねますことをご了承下さい。 特に注記のない画像は編集部で撮影したものです。 記事中の製品仕様および価格は執筆時(2023年10月)のものです。 ...編集部発信のオリジナルコンテンツ