この記事の概要
先日発表された7月14日発売予定のビクセンの新補正レンズですが、発売記念キャンペーンとして旧ED鏡筒ユーザ向けの「SD改造」をキャンペーン価格で提供することが告知されています。
さらに、SD/EDシリーズ鏡筒の他社製品と比較した焦点距離/F値、重量/価格のスペック比較をまとめてみました。
(6/16 14:25補足)
後述の通り「SDレデューサHDキット」(定価56,000円)を購入したユーザが対象です。

キャンペーン内容

株式会社ビクセン
「SDレデューサーHDキット」発売記念  天体望遠鏡EDシリーズ鏡筒のデジタル対応SD改造サービスキャンペーンを実施 7月14日(金)から開始

総合光学機器メーカー、株式会社ビクセン(本社:埼玉県所沢市、代表取締役:新妻和重)は、「SDレデューサーHDキット」の発売を記念して、既存のED81S/ED81SII/ED103S/ED115S鏡筒(F7.7シリーズ)をフルサイズ対応にするSD改造サービスキャンペーンを2017年7月14日(金)に開始します。

概要は以下の通り。詳細はリンク先をご確認下さい。

  • ドローチューブ改造が特別価格(税送料別3500円)に
    (SDレデューサHDキット(定価56,000円)を購入したユーザに対して。旧製品ED81S/ED81SII/ED103S/ED115S鏡筒対象)
  • 期間は2017年7月14日~2018年7月20日の約1年間
  • キャンペーン期間終了後は税送料別7,000円
  • 同時にオーバーホール(分解清掃)も可能。追加料金は4800円〜5800円。

レデューサHD、SD鏡筒とは?

先日以下の記事でもご紹介しましたが、簡単にいうと評価がいまひとつだった旧製品に代わる、高性能の補正レンズがレデューサHD、フラットナーHD、それに合わせて最適化された新鏡筒がSDシリーズ鏡筒です。



【新製品】ビクセンからレデューサHD・フラットナーHD・SD鏡筒

SDとEDの違いは何?

結論からいって、旧EDシリーズと新SDシリーズの光学系は同じ。HPの説明では「SD(超特殊低分散:ビクセンHPによる)」と「ED(超低分散:同)」という2つの言葉がありますが、旧EDシリーズと新SDシリーズも、どちらも「FPL53」という同じガラス材が使用されています。

両者の違いは写真撮影の際の周辺部の光量を確保するため、鏡筒内部の「遮光環」が改良されたこと。

この「遮光環」は、鏡筒内の有害な内面反射を防ぎ、「ヌケ」の良い像を得るための必須の機構なのですが、眼視性能を重視した設計では、大きなイメージサークルを求められる最近の写真撮影においては「絞りすぎ」だったものと思われます。

ビクセンの発表資料によると、改造前後による周辺光量差は以下の通り。

イメージサークルΦ44mm周辺光量※1
鏡筒 改造前 改造後
ED81S/ED81SII鏡筒※2 64% 72%
ED103S鏡筒 54% 63%
ED115S鏡筒 51% 60%

ビクセンHPより引用



改造により10%前後程度周辺光量が向上するようで、改造後の周辺光量はいずれも60%以上となっています。

SDシリーズ鏡筒の位置づけの再確認

EDシリーズから続く、ロングセラーのビクセンの2枚玉アポクロマートですが、今回のフラットナー・レデューサの発表で、写真用途でも充分魅力的なスペックになったといえるでしょう。

上の図は、SDシリーズを含む各社の屈折鏡筒のF値と焦点距離をグラフ上にプロットしてみたもの。赤丸が今回のSDシリーズです。

これまで天文ファンの関心の中心は「F4級」と書かれた水色の丸のセグメントにありました。暗い広がった天体を狙うにはF値が明るい方が有利。焦点距離は300mmから長くて500mmまで。

ところが、SDシリーズはこのセグメントとは全く異なる場所に位置します。「F5.6級」と書かれた赤い丸のセグメントがそれ。F8ではさすがに暗すぎるし、焦点距離が800mmを越えるとガイドにも問題が出てきます。F5.6とやや暗くても500mm〜700mmあれば小さな天体でもより大きく写り、フルサイズ対応であればある程度広がった天体でも対象になります。

特に最近はデジタルカメラの高感度性能が向上していることとや、ベランダを含む(やや)光害地での撮影を楽しむ人が増えていることもあり、F5.6の「暗さ」はあまり不利ではなくなってきたと言えるのではないでしょうか。

上の図は同じく、価格と重量をグラフ上にプロットしてみたもの。当然とはいえ、明るくて長焦点の機材は重くて高い
15万円〜30万円の予算で、比較的手軽に深宇宙を大きく撮影でき、眼視も楽しめる。新レデューサの登場でED/SDシリーズの魅力は倍加したのではないでしょうか。

後は実写画像を待つばかり。
発売は7/14、この夏のリザルトが楽しみですね。 https://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2017/06/0930a9b87493d7592551c9d59f296b41.pnghttps://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2017/06/0930a9b87493d7592551c9d59f296b41-150x150.png編集部望遠鏡  この記事の概要 先日発表された7月14日発売予定のビクセンの新補正レンズですが、発売記念キャンペーンとして旧ED鏡筒ユーザ向けの「SD改造」をキャンペーン価格で提供することが告知されています。 さらに、SD/EDシリーズ鏡筒の他社製品と比較した焦点距離/F値、重量/価格のスペック比較をまとめてみました。 (6/16 14:25補足) 後述の通り「SDレデューサHDキット」(定価56,000円)を購入したユーザが対象です。 キャンペーン内容 株式会社ビクセン 「SDレデューサーHDキット」発売記念  天体望遠鏡EDシリーズ鏡筒のデジタル対応SD改造サービスキャンペーンを実施 7月14日(金)から開始 総合光学機器メーカー、株式会社ビクセン(本社:埼玉県所沢市、代表取締役:新妻和重)は、「SDレデューサーHDキット」の発売を記念して、既存のED81S/ED81SII/ED103S/ED115S鏡筒(F7.7シリーズ)をフルサイズ対応にするSD改造サービスキャンペーンを2017年7月14日(金)に開始します。 概要は以下の通り。詳細はリンク先をご確認下さい。 ドローチューブ改造が特別価格(税送料別3500円)に。 (SDレデューサHDキット(定価56,000円)を購入したユーザに対して。旧製品ED81S/ED81SII/ED103S/ED115S鏡筒対象) 期間は2017年7月14日~2018年7月20日の約1年間。 キャンペーン期間終了後は税送料別7,000円。 同時にオーバーホール(分解清掃)も可能。追加料金は4800円〜5800円。 レデューサHD、SD鏡筒とは? 先日以下の記事でもご紹介しましたが、簡単にいうと評価がいまひとつだった旧製品に代わる、高性能の補正レンズがレデューサHD、フラットナーHD、それに合わせて最適化された新鏡筒がSDシリーズ鏡筒です。 http://reflexions.jp/blog/ed_tenmon/archives/739 SDとEDの違いは何? 結論からいって、旧EDシリーズと新SDシリーズの光学系は同じ。HPの説明では「SD(超特殊低分散:ビクセンHPによる)」と「ED(超低分散:同)」という2つの言葉がありますが、旧EDシリーズと新SDシリーズも、どちらも「FPL53」という同じガラス材が使用されています。 両者の違いは写真撮影の際の周辺部の光量を確保するため、鏡筒内部の「遮光環」が改良されたこと。 この「遮光環」は、鏡筒内の有害な内面反射を防ぎ、「ヌケ」の良い像を得るための必須の機構なのですが、眼視性能を重視した設計では、大きなイメージサークルを求められる最近の写真撮影においては「絞りすぎ」だったものと思われます。 ビクセンの発表資料によると、改造前後による周辺光量差は以下の通り。 イメージサークルΦ44mm周辺光量※1 鏡筒 改造前 改造後 ED81S/ED81SII鏡筒※2 64% 72% ED103S鏡筒 54% 63% ED115S鏡筒 51% 60% ビクセンHPより引用 改造により10%前後程度周辺光量が向上するようで、改造後の周辺光量はいずれも60%以上となっています。 SDシリーズ鏡筒の位置づけの再確認 EDシリーズから続く、ロングセラーのビクセンの2枚玉アポクロマートですが、今回のフラットナー・レデューサの発表で、写真用途でも充分魅力的なスペックになったといえるでしょう。 上の図は、SDシリーズを含む各社の屈折鏡筒のF値と焦点距離をグラフ上にプロットしてみたもの。赤丸が今回のSDシリーズです。 これまで天文ファンの関心の中心は「F4級」と書かれた水色の丸のセグメントにありました。暗い広がった天体を狙うにはF値が明るい方が有利。焦点距離は300mmから長くて500mmまで。 ところが、SDシリーズはこのセグメントとは全く異なる場所に位置します。「F5.6級」と書かれた赤い丸のセグメントがそれ。F8ではさすがに暗すぎるし、焦点距離が800mmを越えるとガイドにも問題が出てきます。F5.6とやや暗くても500mm〜700mmあれば小さな天体でもより大きく写り、フルサイズ対応であればある程度広がった天体でも対象になります。 特に最近はデジタルカメラの高感度性能が向上していることとや、ベランダを含む(やや)光害地での撮影を楽しむ人が増えていることもあり、F5.6の「暗さ」はあまり不利ではなくなってきたと言えるのではないでしょうか。 上の図は同じく、価格と重量をグラフ上にプロットしてみたもの。当然とはいえ、明るくて長焦点の機材は重くて高い。 15万円〜30万円の予算で、比較的手軽に深宇宙を大きく撮影でき、眼視も楽しめる。新レデューサの登場でED/SDシリーズの魅力は倍加したのではないでしょうか。 後は実写画像を待つばかり。 発売は7/14、この夏のリザルトが楽しみですね。編集部発信のオリジナルコンテンツ