みなさんこんにちは!ナローバンド、やってますか?!

天リフでは「光害地でも撮影できる」「高い星雲の強調効果」というメリットのある「(ワンショット)ナローバンド」撮影を強く推してきました。

今回ご紹介するOptolong社の「L-eXtreme」と「L-eNhance」フィルターは、その中でも特にナローバンド効果の高い、単色ナローバンドフィルターに匹敵するほどの半値幅を持つ製品です。



さっそく、その特徴と作例を見ていくことにしましょう。

「ワンショットナローバンド」とは?

ナローバンドは「狭い帯域」

「ワンショットナローバンド」って何?という方のために簡単に解説しておきます(すでにご存じの方は飛ばしてもらって大丈夫です)。まず、「ナローバンド」とは「狭い帯域」という意味です。ここでの「帯域」とは、光の波長のこと。青〜緑〜赤までの人間の眼で感じる光を「波長」で見ると、ざっくり400nm(1ミリの1万分の4)から660nmくらいまであるのですが(*)、通常の写真はこの波長帯域のだいたい全部の光を使用しています。これを「ブロードバンド(広い帯域)」と呼びます。

(*)可視光線の範囲の定義は諸説あります。

一方でナローバンドの場合、広い場合でも帯域(*)は30nm程度、狭い場合は3nmくらい。ブロードバンドの帯域の1/10〜1/100くらい狭いのです。こんな「狭い帯域」だけを通す特殊なフィルターを使用して撮影される天体写真が「ナローバンド」なのです。

(*)この帯域の広さは「光を50%以上通す」幅の半分である「半値幅」という単位で表されます。

帯域を狭くしても弱くならない「輝線スペクトル」

帯域を狭くすると、透過する光の総量はとうぜん少なくなります。「弱い星を捉えるのが天体写真なのに、なんで光をわざわざ少なくするの?」という疑問が当然出てきますよね。しかし、ある種の天体、特に天文ファンが大好きな宇宙に浮かぶガス星雲は、特定の波長の光で特に強く光っているのです。

例えば、電離水素のガス星雲(天文学的には「HII領域」、口語的には「赤い星雲」)は、656nmというごく狭い波長の光で特に強く光っています(1*)。では、この近辺の波長だけを通す帯域の全幅30nm(*2)のフィルターで撮影するとどうなるでしょうか。「赤い星雲」の光はほとんど減衰されない一方で、それ以外の星の光や背景の空の光はざっくり1/9くらいになります(*3)。つまり、星雲の光がその分「9倍」に強調されることになるのです。

(*1)このような光を「輝線スペクトル」ないしは単に「輝線」と呼びます。

(*2)半値幅でいえば15nm

(*3)「赤」の帯域だけで見れば1/3

輝線以外の光をカットすることで、月や市街光に照らされた環境でも天体写真の撮影が可能になります(*)。街中の自宅の庭でもそれなりに撮れることもナローバンドの大きなメリットです。

デジカメに適した「ワンショット」とは

では、「ワンショット」とはどういうことでしょうか。カラー写真の撮影には、赤(R)、緑(G)、青(B)の光の三原色それぞれの情報が必要です。少し前まではナローバンド対応のフィルターは、一つの色(単色)のものしかありませんでした。「赤い星雲」用のHα線を通すフィルターなら赤色だけ。それだけではカラー写真にはなりません(*)。

(*)割り切ってモノクロ写真にする方法もあります。

ZWO社のフィルターホイール。フィルターの収納された円盤を回転させることでフィルターを自動的に切替えながらの撮影が可能になる装置。 https://www.kyoei-osaka.jp/SHOP/zwo-efw-7.html

単色のナローバンドフィルターを使用してカラー写真を撮影するためには、2種類または3種類、さらにはそれ以上の数のフィルターを交換しながら撮影し、それぞれのデータを後からカラー合成(*)する方法が一般的です。「ワンショット」に対比していえば「マルチショット」です。

(*)Photoshopなどの画像処理ソフトで「比較的」簡単にできます。実戦的にはそれなりに面倒くさいのですが。

ワンショットナローバンドフィルターの概念図。現在では、輝線ごとの半値幅や透過する輝線の種類(Hα、OIII、Hβ、SIIなど)の異なる、様々なフィルターが販売されています。

ところが、数年前から「1枚のフィルターで複数の波長の狭い帯域だけを透過する」フィルターが販売されるようになってきました。天体の出すもう一つの強い光は、酸素の出す青緑色の波長496nmと501nmの輝線です。今販売されている「ワンショットナローバンドフィルター」のほとんどは、この酸素と水素の輝線を通すようになっています。

「ワンショット」の何がいいのか?カラーのデジカメを使えば、フィルターを交換したり後から合成処理をする必要がないのです。つまりより手軽な「一発撮り」で星雲を強調したカラーの天体写真が撮れるのです。

【デジカメで】STC Astro Duoナローバンドフィルター【ナローバンド一発撮り】

「ワンショットナローバンド」については、2年前のこちらの天リフ記事もぜひごらんください。ここで紹介されているSTC社の製品はワンショットナローバンドの草分けともいえるもので、その圧倒的な効果で天文ファンを唸らせました。以来、各社から様々な特性を持つワンショットナローバンドフィルターが次々と発売されています。

「L-eXtreme」と「L-eNhance」フィルターの波長特性

超・攻めた「L-eXtreme」

https://optcorp.com/products/optolong-l-extreme-dual-band-filter-2-inch

今回ご紹介するOptolong社の「L-eXtreme」フィルターは、とにかく攻めた製品。透過帯域がこれまで以上に狭くなっています。海外サイトの商品説明では「半値幅7nm」を謳っているようです。ここまで狭い帯域のワンショットナローバンドフィルターは、他社も含めて日本ではまだ販売されていないようです(*1)。

(*1)日本のメーカー「アイキャスエンタープライズ(IDAS)」社も、同じくらい狭いフィルター「NBX」の発売を予定しているようです。海外ではこちらの超マニアックなフィルターもあるようです。

この「7nm」という半値幅は、これまでの「単色」ナローバンドフィルターと同じくらいの狭さ。星雲の「写り」の点でももう遜色がないレベルです。「単色」ナローバンド撮影では水素基線(Hα)と酸素輝線(OIII)を「別撮り」する必要がありました。撮影時間も倍。ところが、「L-eXtreme」を使えば同じくらい狭い帯域でワンショットで撮れます。つまり、半分の所要時間で撮影することができる(*2)のです。この「時短メリット」もワンショットナローバンドの大きな長所です。

(*2)実際は酸素輝線OIIIは水素輝線Hαよりもかなり弱く、より長い露出時間が必要とされているので「OIIIを撮れば自動的にHαも撮れている」くらいに考えた方がよいでしょう。

Copyright: ©José Jiménez (Spain) http://www.optolong.com/cms/document/detail/id/100.html

「L-eXtreme」を使った驚愕の海外作例がこちら。マニアに人気のある「フライングバット星雲の中にある青いダイオウイカ星雲」です(*)

(*)筆者もこのレベルを目指したかったのですが、さすがに露出時間が全く足りませんでした^^

上の作例は総露出時間がなんと10時間超。「攻めたワンショットナローバンド」はスゴイ作品が撮れるのですが、そのためには「超」長い総露出時間が必要です。最低でも2時間は撮らないと話になりません。でも10時間を越えれば「世界レベル」のリザルトにもチャレンジできることでしょう。

「赤い星雲」を特に攻めた「L-eNhance」

https://optcorp.com/products/optolong-l-extreme-dual-band-filter-2-inch

もう一つのフィルター「L-eNhance」は、水素の赤いHα輝線の帯域は「L-eXtreme」と同じくらい狭いのですが、酸素のOIII輝線の帯域はやや広めとなっています。この後ごらんいただく作例を見るとわかるように、OIIIの強調効果は「L-eXtreme 」と比べるとだいぶ下がります。

その分価格も安いのですが、このフィルターは「L-eXtremeの廉価版」とは考えない方がよいでしょう。Hαの帯域幅とOIIIの帯域幅に大きな差があることで別の効果をもたらします。「L-eNhance」で撮影してみると、Rチャンネルの光量がかなり少ないため、カラーバランスをニュートラルに補正すると自動的にRを強調する結果になります(*)。つまり、Hαがより強調されるのです。

(*)IDAS社のLPS-V4フィルターも帯域幅の広さはブロードですが、赤を狭くして強調するコンセプトはよく似ています。

ただし、Rチャンネルの光量が少ないため、ニュートラルに補正した状態ではRのノイズはGBよりもずっと大きくなります。高品位の作品に仕上げるためには、総露出時間は「L-eXtreme」と同じとまでいかないにしても、Rチャンネルのノイズが十分下がるくらいはかけてやる必要がある(*)、と考えた方がよいでしょう。つまり、性格が違うだけで、「L-eNhance」も「L-eXtreme 」と同じくらい「ガチ」なフィルターなのです。

(*)BとGの帯域が広い分、BとGのノイズは同じ露出時間ならL-eXtremeよりも少なくなります。

実写作例

光害地での撮影

FSQ106ED(F3.8)  EOS6D(SEO-SP4天体改造)  Optolong L-eXtremeフィルター 5分13枚 SXP赤道儀 福岡県福岡市荒津

L-eXtremeフィルターを使用して、はくちょう座の網状星雲を筆者の自宅(福岡市内)のすぐ近くの海岸から撮影してみました。街灯や港のナトリウム灯など、光満ちあふれる^^;;明るい場所ですが、ワンショットナローバンドフィルターの効果で、水素輝線と酸素輝線で輝く「超新星残骸」の姿をとらえることができました。

「光害に強い」のはワンショットナローバンドの大きなメリットです。特にL-eXtremeフィルターは半値幅が狭く、天体撮影に有害な街灯りを9割以上もカットします。網状星雲のような比較的輝度の高い輝線星雲に対しては、空の暗い場所のブロードバンド撮影よりも良く写るほどです。

このときの撮影の様子を動画にしています。「こんな明るい場所でも天体が撮れる」という視点で、ぜひごらんになってください!

極限の「淡もの」にチャレンジ!

FSQ106ED(F3.8) EOS6D(SEO-SP4天体改造)  Optolong L-eXtremeフィルター 10分×15枚、RGB 2分×39枚 SXP赤道儀 福岡県東峰村

空の暗い場所まで出かけて「遠征撮影」すれば、ブロードバンドではとうてい写し出せないような淡い対象をナローバンドでは撮ることができます。上の作例は赤い「フライングバット星雲(sh2-129)」と、その中にある青い「ダイオウイカ星雲」です。

この対象は難物中の難物として知られていて、ブロードバンドで撮影するのはきわめて困難なのですが、ワンショットナローバンドのL-eXtremeフィルターの威力で、わずか?2.5時間(*)の総露出で姿をとらえることができました。

(*)「美しい作品」レベルには、まだぜんぜん露出が足りません。かなり無理目の画像処理で荒れてしまいましたが、10時間以上かけてクリアに写しだしたいものです。

点在するHII領域を広角星野で

α7S(天体改造) SIGMA105mmF1.4Art F2.0  Ha,OIII:Optolong L-eNhanceフィルター 30秒×140 2モザイク ISO25600  SWAT-310赤道儀 熊本県産山村

天の川に沿って広く分布している、水素のHα線で輝く輝線星雲(HII領域)を85mm〜135mmくらいの中望遠レンズ(*)で一網打尽にするのもナローバンドの面白さの一つです。上の作例は、秋の天の川のケフェウス座付近を、L-eNhanceフィルターを使用して、105mmレンズの2枚モザイク合成で撮影したもの。いたるところ「赤い星雲だらけ」です。

(*)カメラレンズで使用する場合、フィルターの装着場所が問題になります。上の作例では、内部にフィルターを挿入できるタイプのマウントアダプタを、ミラーレスカメラに装着しています。

広く分布しているHα線に対して、青緑色の酸素のOIII輝線で光る天体はずっと少なく(*)、広視野のカメラレンズでは撮影対象としては見かけの大きさも小さすぎます。そんなHα線主体の対象の場合は、L-eNhance フィルターがより適しているといえるでしょう。OIIIの強調効果がL-eXtremeより小さいというデメリットが、逆にRチャンネル以外のノイズレベルを下げるというメリットにもなります。

(*)超新星残骸や惑星状星雲、明るいHII領域の中心部など。上の作例では、クワガタ星雲の右側のツノやIC1396の中心部などがマゼンタを帯びているのがOIII由来の色です。この色をもっと出したければL-eXtremeがより適しているといえるでしょう。

ナローバンドとRGBのハイブリッド

α7S(天体改造) SIGMA105mmF1.4Art F2.0  Ha,OIII:Optolong L-eNhanceフィルター 30秒×140 2モザイク ISO25600 、RGB :Baader Lフィルター 30秒×110 2モザイク ISO3200 SWAT-310赤道儀 熊本県産山村

ワンショットナローバンドにも欠点があります。その一つが星の色が出にくいこと。特に青色のBチャンネルの波長が最短でも500nm程度なので、青い星の輝きが寂しくなってしまいます。



その弱点をカバーすべく、フィルターを使用しない通常のブロードバンドで撮影した画像に、前出のワンショットナローバンドの画像を比較明合成してみたのが上の作例。撮影も画像処理もより大変になりますが、天の川の微光星群の青い光が入ったことで、赤の輝線星雲やガーネットスターの赤もより引き立ってきます。

このようなナローバンドとRGBのハイブリッド合成は、単調な色になりがちなワンショットナローバンドの欠点(*)を補ってくれます。ワンショットナローバンドの色表現上のキモは、青色にあるのです。

(*)色表現を豊かにするためには、硫黄のSII輝線を加えた3波長でナローバンド撮影する方法がありますが、SII輝線は水素輝線と同様に「赤色」なので、デジカメによるワンショットナローバンドではこの2つを違う色に割り当てることができないのが弱点ではあります。

HαとOIIIの強度比に応じたワンショットナローバンドの使い分け

FSQ106ED(F3.8) EOS6D(SEO-SP4天体改造) Optolong L-eXtremeフィルター 5分×11枚 5段アンダー短秒画像で飽和復元 SXP赤道儀  熊本県産山村

具体的には「青」の輝きを、どの対象のどんな部分に求めるかです。輝線星雲の光は圧倒的に水素のHα線が優位(分布も広く輝度も高い)なので、ともすれば赤が画面を支配しがち。その中で、青のアクセントをどう出すのかが重要になってきます。

上の作例のオリオン座中心部の場合、ブロードバンドやOIII帯域の広い(OIIIの強調度が低い)ワンショットナローバンドで撮ると「ほとんど赤」になってしまいがちなのですが、OIII輝線の強調効果が高い「L-eXtreme」フィルターで撮影することで大星雲の周辺部の青色と馬頭星雲の赤色の対比が美しく仕上がりました(*)。

(*)L-eNhanceでも同じ領域を撮っておくべきでしたが、おそらく青(緑)が弱まるため、より全体的に赤に振れるでしょう。

FSQ106ED(F8) α7SIII Optolong L-eXtremeフィルター ISO25600 5分×9枚  SXP赤道儀  ASI AIR 福岡県東峰村

とはいえ、OIIIの帯域は狭ければいい、というものでもありません。上の作例はおおいぬ座の「ミルクポット星雲」を、OIIIの強調効果のより高い「L-eXtreme」フィルターで撮影したものですが、今度は逆に「ほとんど青緑」になっていまいました。

すこし淡くて見にくいですが、左がL-eXtreme、右がL-eNhanceで撮影したもの。ミルクポット星雲の周辺はごく淡い水素輝線も広がっているのですが、L-eXtreme ではほとんど赤色が出ていないのに対して、L-eNhanceではL-eXtreme で青く写ったところも赤みを帯びています。

輝線星雲の中の「Hα線で光っている領域」と「OIII線で光っている領域」は、まったく別々に存在するのではなく、ある程度重複しています。HαとOIIIの比率によって、青く写ったり赤く写ったりすることがあるのです。

この作例の場合、L-eXtremeでは赤い星雲の色が出ず、L-eNhanceではミルクポット星雲の存在がかすかになってしまい、どちらも痛しかゆしという結果になってしまいました。

EF300mmF2.8L IS α7S(天体改造) Optolong L-eXtremeフィルター , Optolong L-eNhanceフィルター  各ISO25600 30秒×30枚  SWAT-310 V-spec Premium赤道儀  ASI AIR 福岡県東峰村

そこで!この2つを1:1でブレンドしてみました。これはなかなかいい。赤と青の対比が引き立ち、L-eXtremeだと青緑だったミルクポット星雲のすぐ上の星雲がオレンジ色になっています。

画像処理をうまく行えば、HαとOIIIの輝線星雲の輝度をコントロールすることでこのような表現も不可能ではないのですが(*)、ワンショットナローバンドではフィルターの特性によって対象によって向き不向きがある、という認識が必要かもしれません。

(*)StarNet++のような機能を使用して星と星雲を分離して画像処理すれば、「背景ニュートラル縛り」から逃れてより自由度の高い星雲の色のコントロールができるでしょう。

非改造機で撮る

 FSQ106ED(F5) α7SIII  AOO  Optolong L-eXtremeフィルター ISO25600 5分25枚, RGB ISO3200 2分16枚 Vixen SXP赤道儀 、ASI AIRでオートガイド、福岡県東峰村

「赤い星雲の写りが悪い」ノーマルのデジタルカメラですが、ワンショットナローバンドフィルターを使用すれば「これがノーマル機?」と驚くほどに赤い星雲を撮ることも可能です。

上の作例はノーマル機で撮影したぎょしゃ座の勾玉星雲。L-eXtremeフィルターとブロードバンドのハイブリッドです。勾玉星雲の赤い広がりと中心の青い模様(*)、左隣の骸骨星雲のOIIIの輝き、間にある「ファイブスター」の色を両立させるのが目標。

(*)ブロードバンドで撮ると骸骨星雲も勾玉の中心も同じように青みを帯びるのですが、骸骨の青はOIII主体、勾玉の青は連続スペクトル主体のようです。

非改造機なので勾玉の赤い部分の広がりが狭くしか撮れなかったのですが、その分勾玉中心の青が鮮やかになりました。骸骨星雲はRとGBの輝度が同じくらいになり、淡いピンク色になってしまいましたが、これはこれであまり見ない面白い色合いかもしれません。

ワンショットナローバンドを活用すれば、非改造機でも赤い星雲が「それなりに」撮れるというのは福音かもしれません。「改造してしまうと子供の運動会が撮れなくなる・・」とカメラの天体改造に躊躇されている方には、ワンショットナローバンドという手もあるかもしれません。

参考までに合成前のナローバンド・ブロードバンド画像。右のブロードバンド(RGB)画像は、先の作例でに使用した以上に強調していますが、それでもHαの赤はごくわずか。さすがノーマル機です^^;;

ここで言いたいことは、ブロードバンド画像では星が星雲より相対的に圧倒的に明るいため、星雲をあぶりだすために強調すると星が肥大してしまうということです(天体写真のデジタル処理を経験された方にとっては当たり前のことなのですが)。ナローバンドの効果は「背景の主に光害の光を抑える」ことだけでなく「星の肥大を抑えて星雲をより強調できる」ことにもあるのです。

「電視観望」的に!お手軽・短秒・時短撮影

α7S(天体改造) EF300mmF2.8 Optolong L-eNhanceフィルター 30秒  ISO25600 SWAT310 premium赤道儀、福岡県東峰村

「ナローバンドは星雲が良く写る」のは歴然とした事実ですが、ナローバンドフィルターが輝線星雲の光を増やしてくれるわけではありません。基本的にナローバンドは、ブロードバンドよりも長時間の露出時間が必要になる撮影方法です。

しかし。その逆張りを試してみました。「ナローバンドでお手軽短時間撮影。30秒露出の1枚撮りでどこまで写るか」です。

結果はご覧のとおり。これってイケてませんか?サクサク30秒で、あちこちを撮影。自動導入のないポタ赤だったので導入には手間取りましたが^^;;カメラのモニターにもこの画像とあまり変わらないレベルで赤い星雲がその場で写しだされます。これは楽しい!

最近天体用CMOSカメラのライブスタックによる「電視観望」が絶賛流行中ですが、高感度のカメラによる「1枚撮り」でも、同じようなコンセプトが実現可能だといえるでしょう。この撮り方では淡いOIIIはあまり写らないので、ガチガチのL-eXtremeよりも光を多く通すL-eNhanceの方が有利でしょう。

もちろん、ISO25600の1枚撮りなので等倍拡大するとザラザラではありますが、それは織り込み済み。「ナローバンドは長時間の露出が必要」なのはあくまでも「同じ対象を撮るのなら」という話。元々輝度の高い対象なら、ナローバンドでも短い露出時間で写し出せるのです。

どんな人に向いているか

天リフレビュー恒例、脳内ユーザーの声です。年齢、コメントは編集部が創作したもので、登場する人物とは全く関係ありません。フリー素材「PAKUTASO」を使用しています。https://www.pakutaso.com

カラーカメラでナローバンドがやりたい方に

ノーマル機で撮影した北アメリカ星雲。α7SIII EF300mmF2.8 Optolong L-eXtremeフィルター 30秒×20枚  ISO25600 SWAT310 premium赤道儀、福岡県東峰村

ベイヤーセンサーのデジタルカメラは、ガチな画質勝負ではモノクロセンサーに負けます。画素の数も受ける総光子数も、Rチャンネルの場合1/4、若干有利なGチャンネルでも1/2です。勝てるはずがありません。しかし、手軽さという点ではデジカメによるワンショット撮影ははるかに楽です。

ガチにナローで撮りたいがモノクロカメラは敷居が高い。そんな貴方に最適なのがワンショットナローバンドです。特に半値幅の狭い「L-eXtreme」なら、単色ナローバンドフィルターに負けないリザルトが可能です。

光害地でも天体写真を撮りたい方に

α7S(天体改造) FSQ106ED(F5) Optolong L-eXtremeフィルター 30秒×225枚  ISO25600 SXP赤道儀、福岡県福岡市自宅にて

光害地で天体写真を撮る。ナローバンドの光害カット効果はL-eXtremeなら約10倍(*)。理想的な条件の場所でなくても天体撮影が可能。明るい天体やテスト撮影は自宅・ここ一番では遠征で撮るなど、ただでさえ少ない撮影の機会を増やすことができるのもメリット。

(*)半値幅7.5nm、ブロードバンドの帯域を300nmとして計算。

赤い星雲が撮りたい方に

30秒の1枚撮りです。α7S(天体改造) EF300mmF2.8 Optolong L-eNhanceフィルター 30秒  ISO25600 SWAT310 premium赤道儀、福岡県東峰村

みんな大好き、赤い星雲。Rチャンネルの帯域が細い「L-eNhance」では、カラーバランスを単純に補正した状態ではHαの強調効果は「L-eXtreme」以上。「青(い星雲)よりも赤!」というテイストをお持ちの方には「L-eNhance」もオススメです。

上の画像も「30秒1枚撮り」のお手軽撮影。ややこしいことをせず、とにかく「赤いのが撮りたい」なら、ワンショットナローバンドは有力な選択肢。

長時間露出をいとわない方に

EOS6D(SEO-SP4) EF300mmF2.8 Optolong L-eNhanceフィルター 3分×38枚  ISO12800 SWAT310 premium赤道儀、福岡県東峰村

ただし、狭帯域のフィルターほど長い露出時間が必要です。天体写真のクオリティは背景の空のノイズの多寡に大きく左右されます。絶対的な光量が少ないナローバンドでキレイなリザルトを得るためには、星雲の強調効果と同じくらいの倍数の露出時間をかけなくてはなりません。

逆に、たっぷり露出時間を重ねれば、驚くほどすんなりと淡い星雲の姿を描き出すことができるでしょう。その意味では「一晩一対象」くらいの勢いで、じっくりと腰を落ち着けて撮ることをいとわない人に向いているといえます。

Optolong社について

Optolong Optics Co,. Ltd

https://www.optolongfilter.com/en/about-us/introduction

Optolong社は中国・昆明市に本社を構えるフィルターを始めとする光学製品のメーカーです。同社の製品は日本をはじめとする世界各国で販売され、天文ファンに愛用されています。

http://www.optolong.com/cms/index/index.html

商品サイトはこちら。

Optolong社製品取扱ショップ

https://www.syumitto.jp/SHOP/187175/1050920/list.html

Optolong社のフィルターは、日本ではサイトロンジャパン社が輸入代理店となっています。「L-eXtreme」と「L-eNhance」は現状世界的に品薄の状態だそうで、2020年10月時点ではまだ「L-eXtreme」と「L-eNhance」の日本での取扱はありませんが、12月ごろに販売を開始する予定とのことです(*)。

(*)今回使用したフィルターは「フィルター枠48mm」のタイプです。カメラ側に装着するクリップタイプや1.25インチ(31.7mm)サイズの販売の有無についても、正式な発表をお待ちください。

モニターを募集します!→締め切りました。

モニターに多数の応募をありがとうございました。応募は締め切らせていただきました。多数の応募をありがとうございました!

Optolong社様のご厚意で、編集部でお借りしているフィルター(48mmねじ込みタイプ)を、天リフ読者の方にモニター使用して頂けることになりました!下記の要項をご確認の上、メール(tenrefinfoアットマークgmail.com)までご連絡ください。応募者が多い場合はご希望に添えない場合もありますがご了承ください。

10/30追記)twitterのアカウントをお持ちの方は天リフ編集部(@tenmonReflexion)にDMいただいてもOKです。11/3頃に一度締め切って対象者を決定し、なるべく11/7の週末に間に合うように発送します。希望者が多い場合は期間を一ヵ月程度にさせていただくかもしれません。

  • モニター期間は2ヵ月程度を想定しています。
  • 返送時の送料のみご負担下さい。
  • 以下の内容を明記ください。
    • ご希望のフィルター(L-eNhanceまたはL-eXtreme)
    • 使用予定の光学系
    • 撮ってみたい対象
    • SNS、ブログ、ツイッターなどをご使用の場合そのアドレス
    • 送付先の住所などはこの時点では不要です。送付の際に改めて伺います。
  • 撮影された作品は天リフTwitterまたはブログでご紹介させていただきたいと思います。ご了承をお願いいたします。

こちらのモニター枠とは別に「我こそは日本の天体写真界を代表する者であるっ!」という方は、サンプルを提供し作例をOptolong社に提供することを前提に、直接Optolong社の担当者様をご紹介します。こちらもふるってご応募ください!

まとめ

勾玉星雲を撮影中、L-eXtremeの撮って出し画像。このイメージがカメラの液晶モニタに出てくるのですからたまりません^^ (撮影中の実写画像、2段階露出の合成です)

いかがでしたか?

ナローバンドには強い魔力があります。本が読めるほどの光害地であっても、しっかり星雲の姿が写る。そして、撮影直後のカメラのモニターにはっきりと対象が浮かび上がる姿を見るのは、感動的ですらあります。

天リフの過去記事で何度も書いていることですが、フィルターは使い分けです。フィルターの数だけ最適な対象と使い方があります。その特性をしっかり把握し、自分の撮影目的に合わせて使うのが肝要です。

そんな中でも「L-eXtreme」フィルターは、ガチ中のガチ。長時間の露光時間さえいとわなければ、これまでの単色ナローバンドのカラー合成にも負けないリザルトを叩き出してくれます。「L-eNhance」フィルターは若干マイルドな波長特性ではありますが、RとGBの攻めたバランスのお陰で(RがGBよりかなり狭い)HII領域の強調っぷりはある意味「L-eXtreme」を凌ぐほどです。

「フィルターケース」に、もう一枚「ワンショットナローバンド」を追加してみませんか?「3枚」ではなく「1枚」でいいのが「ワンショットナローバンド」の魅力。「デジタルカメラでワンショットナローバンド」は、これからの新しい撮影スタイルといえるでしょう!


  • 本記事は Optolong Optics Co,. Ltd様より機材のサンプル提供を受け、天文リフレクションズ編集部が独自の費用と判断で作成したものです。文責は全て天文リフレクションズ編集部にあります。
  • 記事に関するご質問・お問い合わせなどは天文リフレクションズ編集部宛にお願いいたします。
  • 製品の購入およびお問い合わせはOptolong製品を取り扱う販売店様にお願いします。
  • 2020年10月現在、日本において「L-eXtremeフィルター」を取り扱っている店舗はありません。新しい情報が入り次第、記事を補足する予定です。
  • 記事中でEF300mmF2.8L ISに48mmフィルターを使用していますが改造したフィルターボックスを使用しています。純正品は52mm規格のため勘合しないことにご注意下さい。
  • 本記事によって読者様に発生した事象については、その一切について編集部では責任を取りかねますことをご了承下さい。
  • 特に注記のない画像は編集部で撮影したものです。
  • 記事中の製品仕様および価格は執筆時(2020年10月)のものです。
  • 記事中の社名、商品名等は各社の商標または登録商標です。
https://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2020/10/38e762b5a02aa850497d297f64e63497-1024x538.jpghttps://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2020/10/38e762b5a02aa850497d297f64e63497-150x150.jpg編集部フィルターフィルターみなさんこんにちは!ナローバンド、やってますか?! 天リフでは「光害地でも撮影できる」「高い星雲の強調効果」というメリットのある「(ワンショット)ナローバンド」撮影を強く推してきました。 今回ご紹介するOptolong社の「L-eXtreme」と「L-eNhance」フィルターは、その中でも特にナローバンド効果の高い、単色ナローバンドフィルターに匹敵するほどの半値幅を持つ製品です。 さっそく、その特徴と作例を見ていくことにしましょう。 「ワンショットナローバンド」とは? ナローバンドは「狭い帯域」 「ワンショットナローバンド」って何?という方のために簡単に解説しておきます(すでにご存じの方は飛ばしてもらって大丈夫です)。まず、「ナローバンド」とは「狭い帯域」という意味です。ここでの「帯域」とは、光の波長のこと。青〜緑〜赤までの人間の眼で感じる光を「波長」で見ると、ざっくり400nm(1ミリの1万分の4)から660nmくらいまであるのですが(*)、通常の写真はこの波長帯域のだいたい全部の光を使用しています。これを「ブロードバンド(広い帯域)」と呼びます。 (*)可視光線の範囲の定義は諸説あります。 一方でナローバンドの場合、広い場合でも帯域(*)は30nm程度、狭い場合は3nmくらい。ブロードバンドの帯域の1/10〜1/100くらい狭いのです。こんな「狭い帯域」だけを通す特殊なフィルターを使用して撮影される天体写真が「ナローバンド」なのです。 (*)この帯域の広さは「光を50%以上通す」幅の半分である「半値幅」という単位で表されます。 帯域を狭くしても弱くならない「輝線スペクトル」 帯域を狭くすると、透過する光の総量はとうぜん少なくなります。「弱い星を捉えるのが天体写真なのに、なんで光をわざわざ少なくするの?」という疑問が当然出てきますよね。しかし、ある種の天体、特に天文ファンが大好きな宇宙に浮かぶガス星雲は、特定の波長の光で特に強く光っているのです。 例えば、電離水素のガス星雲(天文学的には「HII領域」、口語的には「赤い星雲」)は、656nmというごく狭い波長の光で特に強く光っています(1*)。では、この近辺の波長だけを通す帯域の全幅30nm(*2)のフィルターで撮影するとどうなるでしょうか。「赤い星雲」の光はほとんど減衰されない一方で、それ以外の星の光や背景の空の光はざっくり1/9くらいになります(*3)。つまり、星雲の光がその分「9倍」に強調されることになるのです。 (*1)このような光を「輝線スペクトル」ないしは単に「輝線」と呼びます。 (*2)半値幅でいえば15nm (*3)「赤」の帯域だけで見れば1/3 輝線以外の光をカットすることで、月や市街光に照らされた環境でも天体写真の撮影が可能になります(*)。街中の自宅の庭でもそれなりに撮れることもナローバンドの大きなメリットです。 デジカメに適した「ワンショット」とは では、「ワンショット」とはどういうことでしょうか。カラー写真の撮影には、赤(R)、緑(G)、青(B)の光の三原色それぞれの情報が必要です。少し前まではナローバンド対応のフィルターは、一つの色(単色)のものしかありませんでした。「赤い星雲」用のHα線を通すフィルターなら赤色だけ。それだけではカラー写真にはなりません(*)。 (*)割り切ってモノクロ写真にする方法もあります。 単色のナローバンドフィルターを使用してカラー写真を撮影するためには、2種類または3種類、さらにはそれ以上の数のフィルターを交換しながら撮影し、それぞれのデータを後からカラー合成(*)する方法が一般的です。「ワンショット」に対比していえば「マルチショット」です。 (*)Photoshopなどの画像処理ソフトで「比較的」簡単にできます。実戦的にはそれなりに面倒くさいのですが。 ところが、数年前から「1枚のフィルターで複数の波長の狭い帯域だけを透過する」フィルターが販売されるようになってきました。天体の出すもう一つの強い光は、酸素の出す青緑色の波長496nmと501nmの輝線です。今販売されている「ワンショットナローバンドフィルター」のほとんどは、この酸素と水素の輝線を通すようになっています。 「ワンショット」の何がいいのか?カラーのデジカメを使えば、フィルターを交換したり後から合成処理をする必要がないのです。つまりより手軽な「一発撮り」で星雲を強調したカラーの天体写真が撮れるのです。 https://reflexions.jp/tenref/orig/2018/09/28/6458/ 「ワンショットナローバンド」については、2年前のこちらの天リフ記事もぜひごらんください。ここで紹介されているSTC社の製品はワンショットナローバンドの草分けともいえるもので、その圧倒的な効果で天文ファンを唸らせました。以来、各社から様々な特性を持つワンショットナローバンドフィルターが次々と発売されています。 「L-eXtreme」と「L-eNhance」フィルターの波長特性 超・攻めた「L-eXtreme」 今回ご紹介するOptolong社の「L-eXtreme」フィルターは、とにかく攻めた製品。透過帯域がこれまで以上に狭くなっています。海外サイトの商品説明では「半値幅7nm」を謳っているようです。ここまで狭い帯域のワンショットナローバンドフィルターは、他社も含めて日本ではまだ販売されていないようです(*1)。 (*1)日本のメーカー「アイキャスエンタープライズ(IDAS)」社も、同じくらい狭いフィルター「NBX」の発売を予定しているようです。海外ではこちらの超マニアックなフィルターもあるようです。 この「7nm」という半値幅は、これまでの「単色」ナローバンドフィルターと同じくらいの狭さ。星雲の「写り」の点でももう遜色がないレベルです。「単色」ナローバンド撮影では水素基線(Hα)と酸素輝線(OIII)を「別撮り」する必要がありました。撮影時間も倍。ところが、「L-eXtreme」を使えば同じくらい狭い帯域でワンショットで撮れます。つまり、半分の所要時間で撮影することができる(*2)のです。この「時短メリット」もワンショットナローバンドの大きな長所です。 (*2)実際は酸素輝線OIIIは水素輝線Hαよりもかなり弱く、より長い露出時間が必要とされているので「OIIIを撮れば自動的にHαも撮れている」くらいに考えた方がよいでしょう。 「L-eXtreme」を使った驚愕の海外作例がこちら。マニアに人気のある「フライングバット星雲の中にある青いダイオウイカ星雲」です(*) (*)筆者もこのレベルを目指したかったのですが、さすがに露出時間が全く足りませんでした^^ 上の作例は総露出時間がなんと10時間超。「攻めたワンショットナローバンド」はスゴイ作品が撮れるのですが、そのためには「超」長い総露出時間が必要です。最低でも2時間は撮らないと話になりません。でも10時間を越えれば「世界レベル」のリザルトにもチャレンジできることでしょう。 「赤い星雲」を特に攻めた「L-eNhance」 もう一つのフィルター「L-eNhance」は、水素の赤いHα輝線の帯域は「L-eXtreme」と同じくらい狭いのですが、酸素のOIII輝線の帯域はやや広めとなっています。この後ごらんいただく作例を見るとわかるように、OIIIの強調効果は「L-eXtreme 」と比べるとだいぶ下がります。 その分価格も安いのですが、このフィルターは「L-eXtremeの廉価版」とは考えない方がよいでしょう。Hαの帯域幅とOIIIの帯域幅に大きな差があることで別の効果をもたらします。「L-eNhance」で撮影してみると、Rチャンネルの光量がかなり少ないため、カラーバランスをニュートラルに補正すると自動的にRを強調する結果になります(*)。つまり、Hαがより強調されるのです。 (*)IDAS社のLPS-V4フィルターも帯域幅の広さはブロードですが、赤を狭くして強調するコンセプトはよく似ています。 ただし、Rチャンネルの光量が少ないため、ニュートラルに補正した状態ではRのノイズはGBよりもずっと大きくなります。高品位の作品に仕上げるためには、総露出時間は「L-eXtreme」と同じとまでいかないにしても、Rチャンネルのノイズが十分下がるくらいはかけてやる必要がある(*)、と考えた方がよいでしょう。つまり、性格が違うだけで、「L-eNhance」も「L-eXtreme 」と同じくらい「ガチ」なフィルターなのです。 (*)BとGの帯域が広い分、BとGのノイズは同じ露出時間ならL-eXtremeよりも少なくなります。 実写作例 光害地での撮影 L-eXtremeフィルターを使用して、はくちょう座の網状星雲を筆者の自宅(福岡市内)のすぐ近くの海岸から撮影してみました。街灯や港のナトリウム灯など、光満ちあふれる^^;;明るい場所ですが、ワンショットナローバンドフィルターの効果で、水素輝線と酸素輝線で輝く「超新星残骸」の姿をとらえることができました。 「光害に強い」のはワンショットナローバンドの大きなメリットです。特にL-eXtremeフィルターは半値幅が狭く、天体撮影に有害な街灯りを9割以上もカットします。網状星雲のような比較的輝度の高い輝線星雲に対しては、空の暗い場所のブロードバンド撮影よりも良く写るほどです。 このときの撮影の様子を動画にしています。「こんな明るい場所でも天体が撮れる」という視点で、ぜひごらんになってください! 極限の「淡もの」にチャレンジ! 空の暗い場所まで出かけて「遠征撮影」すれば、ブロードバンドではとうてい写し出せないような淡い対象をナローバンドでは撮ることができます。上の作例は赤い「フライングバット星雲(sh2-129)」と、その中にある青い「ダイオウイカ星雲」です。 この対象は難物中の難物として知られていて、ブロードバンドで撮影するのはきわめて困難なのですが、ワンショットナローバンドのL-eXtremeフィルターの威力で、わずか?2.5時間(*)の総露出で姿をとらえることができました。 (*)「美しい作品」レベルには、まだぜんぜん露出が足りません。かなり無理目の画像処理で荒れてしまいましたが、10時間以上かけてクリアに写しだしたいものです。 点在するHII領域を広角星野で 天の川に沿って広く分布している、水素のHα線で輝く輝線星雲(HII領域)を85mm〜135mmくらいの中望遠レンズ(*)で一網打尽にするのもナローバンドの面白さの一つです。上の作例は、秋の天の川のケフェウス座付近を、L-eNhanceフィルターを使用して、105mmレンズの2枚モザイク合成で撮影したもの。いたるところ「赤い星雲だらけ」です。 (*)カメラレンズで使用する場合、フィルターの装着場所が問題になります。上の作例では、内部にフィルターを挿入できるタイプのマウントアダプタを、ミラーレスカメラに装着しています。 広く分布しているHα線に対して、青緑色の酸素のOIII輝線で光る天体はずっと少なく(*)、広視野のカメラレンズでは撮影対象としては見かけの大きさも小さすぎます。そんなHα線主体の対象の場合は、L-eNhance フィルターがより適しているといえるでしょう。OIIIの強調効果がL-eXtremeより小さいというデメリットが、逆にRチャンネル以外のノイズレベルを下げるというメリットにもなります。 (*)超新星残骸や惑星状星雲、明るいHII領域の中心部など。上の作例では、クワガタ星雲の右側のツノやIC1396の中心部などがマゼンタを帯びているのがOIII由来の色です。この色をもっと出したければL-eXtremeがより適しているといえるでしょう。 ナローバンドとRGBのハイブリッド ワンショットナローバンドにも欠点があります。その一つが星の色が出にくいこと。特に青色のBチャンネルの波長が最短でも500nm程度なので、青い星の輝きが寂しくなってしまいます。 その弱点をカバーすべく、フィルターを使用しない通常のブロードバンドで撮影した画像に、前出のワンショットナローバンドの画像を比較明合成してみたのが上の作例。撮影も画像処理もより大変になりますが、天の川の微光星群の青い光が入ったことで、赤の輝線星雲やガーネットスターの赤もより引き立ってきます。 このようなナローバンドとRGBのハイブリッド合成は、単調な色になりがちなワンショットナローバンドの欠点(*)を補ってくれます。ワンショットナローバンドの色表現上のキモは、青色にあるのです。 (*)色表現を豊かにするためには、硫黄のSII輝線を加えた3波長でナローバンド撮影する方法がありますが、SII輝線は水素輝線と同様に「赤色」なので、デジカメによるワンショットナローバンドではこの2つを違う色に割り当てることができないのが弱点ではあります。 HαとOIIIの強度比に応じたワンショットナローバンドの使い分け 具体的には「青」の輝きを、どの対象のどんな部分に求めるかです。輝線星雲の光は圧倒的に水素のHα線が優位(分布も広く輝度も高い)なので、ともすれば赤が画面を支配しがち。その中で、青のアクセントをどう出すのかが重要になってきます。 上の作例のオリオン座中心部の場合、ブロードバンドやOIII帯域の広い(OIIIの強調度が低い)ワンショットナローバンドで撮ると「ほとんど赤」になってしまいがちなのですが、OIII輝線の強調効果が高い「L-eXtreme」フィルターで撮影することで大星雲の周辺部の青色と馬頭星雲の赤色の対比が美しく仕上がりました(*)。 (*)L-eNhanceでも同じ領域を撮っておくべきでしたが、おそらく青(緑)が弱まるため、より全体的に赤に振れるでしょう。 とはいえ、OIIIの帯域は狭ければいい、というものでもありません。上の作例はおおいぬ座の「ミルクポット星雲」を、OIIIの強調効果のより高い「L-eXtreme」フィルターで撮影したものですが、今度は逆に「ほとんど青緑」になっていまいました。 すこし淡くて見にくいですが、左がL-eXtreme、右がL-eNhanceで撮影したもの。ミルクポット星雲の周辺はごく淡い水素輝線も広がっているのですが、L-eXtreme ではほとんど赤色が出ていないのに対して、L-eNhanceではL-eXtreme で青く写ったところも赤みを帯びています。 輝線星雲の中の「Hα線で光っている領域」と「OIII線で光っている領域」は、まったく別々に存在するのではなく、ある程度重複しています。HαとOIIIの比率によって、青く写ったり赤く写ったりすることがあるのです。 この作例の場合、L-eXtremeでは赤い星雲の色が出ず、L-eNhanceではミルクポット星雲の存在がかすかになってしまい、どちらも痛しかゆしという結果になってしまいました。 そこで!この2つを1:1でブレンドしてみました。これはなかなかいい。赤と青の対比が引き立ち、L-eXtremeだと青緑だったミルクポット星雲のすぐ上の星雲がオレンジ色になっています。 画像処理をうまく行えば、HαとOIIIの輝線星雲の輝度をコントロールすることでこのような表現も不可能ではないのですが(*)、ワンショットナローバンドではフィルターの特性によって対象によって向き不向きがある、という認識が必要かもしれません。 (*)StarNet++のような機能を使用して星と星雲を分離して画像処理すれば、「背景ニュートラル縛り」から逃れてより自由度の高い星雲の色のコントロールができるでしょう。 非改造機で撮る 「赤い星雲の写りが悪い」ノーマルのデジタルカメラですが、ワンショットナローバンドフィルターを使用すれば「これがノーマル機?」と驚くほどに赤い星雲を撮ることも可能です。 上の作例はノーマル機で撮影したぎょしゃ座の勾玉星雲。L-eXtremeフィルターとブロードバンドのハイブリッドです。勾玉星雲の赤い広がりと中心の青い模様(*)、左隣の骸骨星雲のOIIIの輝き、間にある「ファイブスター」の色を両立させるのが目標。 (*)ブロードバンドで撮ると骸骨星雲も勾玉の中心も同じように青みを帯びるのですが、骸骨の青はOIII主体、勾玉の青は連続スペクトル主体のようです。 非改造機なので勾玉の赤い部分の広がりが狭くしか撮れなかったのですが、その分勾玉中心の青が鮮やかになりました。骸骨星雲はRとGBの輝度が同じくらいになり、淡いピンク色になってしまいましたが、これはこれであまり見ない面白い色合いかもしれません。 ワンショットナローバンドを活用すれば、非改造機でも赤い星雲が「それなりに」撮れるというのは福音かもしれません。「改造してしまうと子供の運動会が撮れなくなる・・」とカメラの天体改造に躊躇されている方には、ワンショットナローバンドという手もあるかもしれません。 参考までに合成前のナローバンド・ブロードバンド画像。右のブロードバンド(RGB)画像は、先の作例でに使用した以上に強調していますが、それでもHαの赤はごくわずか。さすがノーマル機です^^;; ここで言いたいことは、ブロードバンド画像では星が星雲より相対的に圧倒的に明るいため、星雲をあぶりだすために強調すると星が肥大してしまうということです(天体写真のデジタル処理を経験された方にとっては当たり前のことなのですが)。ナローバンドの効果は「背景の主に光害の光を抑える」ことだけでなく「星の肥大を抑えて星雲をより強調できる」ことにもあるのです。 「電視観望」的に!お手軽・短秒・時短撮影 「ナローバンドは星雲が良く写る」のは歴然とした事実ですが、ナローバンドフィルターが輝線星雲の光を増やしてくれるわけではありません。基本的にナローバンドは、ブロードバンドよりも長時間の露出時間が必要になる撮影方法です。 しかし。その逆張りを試してみました。「ナローバンドでお手軽短時間撮影。30秒露出の1枚撮りでどこまで写るか」です。 結果はご覧のとおり。これってイケてませんか?サクサク30秒で、あちこちを撮影。自動導入のないポタ赤だったので導入には手間取りましたが^^;;カメラのモニターにもこの画像とあまり変わらないレベルで赤い星雲がその場で写しだされます。これは楽しい! 最近天体用CMOSカメラのライブスタックによる「電視観望」が絶賛流行中ですが、高感度のカメラによる「1枚撮り」でも、同じようなコンセプトが実現可能だといえるでしょう。この撮り方では淡いOIIIはあまり写らないので、ガチガチのL-eXtremeよりも光を多く通すL-eNhanceの方が有利でしょう。 もちろん、ISO25600の1枚撮りなので等倍拡大するとザラザラではありますが、それは織り込み済み。「ナローバンドは長時間の露出が必要」なのはあくまでも「同じ対象を撮るのなら」という話。元々輝度の高い対象なら、ナローバンドでも短い露出時間で写し出せるのです。 どんな人に向いているか カラーカメラでナローバンドがやりたい方に ベイヤーセンサーのデジタルカメラは、ガチな画質勝負ではモノクロセンサーに負けます。画素の数も受ける総光子数も、Rチャンネルの場合1/4、若干有利なGチャンネルでも1/2です。勝てるはずがありません。しかし、手軽さという点ではデジカメによるワンショット撮影ははるかに楽です。 ガチにナローで撮りたいがモノクロカメラは敷居が高い。そんな貴方に最適なのがワンショットナローバンドです。特に半値幅の狭い「L-eXtreme」なら、単色ナローバンドフィルターに負けないリザルトが可能です。 光害地でも天体写真を撮りたい方に 光害地で天体写真を撮る。ナローバンドの光害カット効果はL-eXtremeなら約10倍(*)。理想的な条件の場所でなくても天体撮影が可能。明るい天体やテスト撮影は自宅・ここ一番では遠征で撮るなど、ただでさえ少ない撮影の機会を増やすことができるのもメリット。 (*)半値幅7.5nm、ブロードバンドの帯域を300nmとして計算。 赤い星雲が撮りたい方に みんな大好き、赤い星雲。Rチャンネルの帯域が細い「L-eNhance」では、カラーバランスを単純に補正した状態ではHαの強調効果は「L-eXtreme」以上。「青(い星雲)よりも赤!」というテイストをお持ちの方には「L-eNhance」もオススメです。 上の画像も「30秒1枚撮り」のお手軽撮影。ややこしいことをせず、とにかく「赤いのが撮りたい」なら、ワンショットナローバンドは有力な選択肢。 長時間露出をいとわない方に ただし、狭帯域のフィルターほど長い露出時間が必要です。天体写真のクオリティは背景の空のノイズの多寡に大きく左右されます。絶対的な光量が少ないナローバンドでキレイなリザルトを得るためには、星雲の強調効果と同じくらいの倍数の露出時間をかけなくてはなりません。 逆に、たっぷり露出時間を重ねれば、驚くほどすんなりと淡い星雲の姿を描き出すことができるでしょう。その意味では「一晩一対象」くらいの勢いで、じっくりと腰を落ち着けて撮ることをいとわない人に向いているといえます。 Optolong社について Optolong Optics Co,. Ltd Optolong社は中国・昆明市に本社を構えるフィルターを始めとする光学製品のメーカーです。同社の製品は日本をはじめとする世界各国で販売され、天文ファンに愛用されています。 http://www.optolong.com/cms/index/index.html 商品サイトはこちら。 Optolong社製品取扱ショップ Optolong社のフィルターは、日本ではサイトロンジャパン社が輸入代理店となっています。「L-eXtreme」と「L-eNhance」は現状世界的に品薄の状態だそうで、2020年10月時点ではまだ「L-eXtreme」と「L-eNhance」の日本での取扱はありませんが、12月ごろに販売を開始する予定とのことです(*)。 (*)今回使用したフィルターは「フィルター枠48mm」のタイプです。カメラ側に装着するクリップタイプや1.25インチ(31.7mm)サイズの販売の有無についても、正式な発表をお待ちください。 モニターを募集します!→締め切りました。 モニターに多数の応募をありがとうございました。応募は締め切らせていただきました。多数の応募をありがとうございました! Optolong社様のご厚意で、編集部でお借りしているフィルター(48mmねじ込みタイプ)を、天リフ読者の方にモニター使用して頂けることになりました!下記の要項をご確認の上、メール(tenrefinfoアットマークgmail.com)までご連絡ください。応募者が多い場合はご希望に添えない場合もありますがご了承ください。 10/30追記)twitterのアカウントをお持ちの方は天リフ編集部(@tenmonReflexion)にDMいただいてもOKです。11/3頃に一度締め切って対象者を決定し、なるべく11/7の週末に間に合うように発送します。希望者が多い場合は期間を一ヵ月程度にさせていただくかもしれません。 モニター期間は2ヵ月程度を想定しています。 返送時の送料のみご負担下さい。 以下の内容を明記ください。 ご希望のフィルター(L-eNhanceまたはL-eXtreme) 使用予定の光学系 撮ってみたい対象 SNS、ブログ、ツイッターなどをご使用の場合そのアドレス 送付先の住所などはこの時点では不要です。送付の際に改めて伺います。 撮影された作品は天リフTwitterまたはブログでご紹介させていただきたいと思います。ご了承をお願いいたします。 こちらのモニター枠とは別に「我こそは日本の天体写真界を代表する者であるっ!」という方は、サンプルを提供し作例をOptolong社に提供することを前提に、直接Optolong社の担当者様をご紹介します。こちらもふるってご応募ください! まとめ いかがでしたか? ナローバンドには強い魔力があります。本が読めるほどの光害地であっても、しっかり星雲の姿が写る。そして、撮影直後のカメラのモニターにはっきりと対象が浮かび上がる姿を見るのは、感動的ですらあります。 天リフの過去記事で何度も書いていることですが、フィルターは使い分けです。フィルターの数だけ最適な対象と使い方があります。その特性をしっかり把握し、自分の撮影目的に合わせて使うのが肝要です。 そんな中でも「L-eXtreme」フィルターは、ガチ中のガチ。長時間の露光時間さえいとわなければ、これまでの単色ナローバンドのカラー合成にも負けないリザルトを叩き出してくれます。「L-eNhance」フィルターは若干マイルドな波長特性ではありますが、RとGBの攻めたバランスのお陰で(RがGBよりかなり狭い)HII領域の強調っぷりはある意味「L-eXtreme」を凌ぐほどです。 「フィルターケース」に、もう一枚「ワンショットナローバンド」を追加してみませんか?「3枚」ではなく「1枚」でいいのが「ワンショットナローバンド」の魅力。「デジタルカメラでワンショットナローバンド」は、これからの新しい撮影スタイルといえるでしょう! 本記事は Optolong Optics Co,. Ltd様より機材のサンプル提供を受け、天文リフレクションズ編集部が独自の費用と判断で作成したものです。文責は全て天文リフレクションズ編集部にあります。 記事に関するご質問・お問い合わせなどは天文リフレクションズ編集部宛にお願いいたします。 製品の購入およびお問い合わせはOptolong製品を取り扱う販売店様にお願いします。 2020年10月現在、日本において「L-eXtremeフィルター」を取り扱っている店舗はありません。新しい情報が入り次第、記事を補足する予定です。 記事中でEF300mmF2.8L ISに48mmフィルターを使用していますが改造したフィルターボックスを使用しています。純正品は52mm規格のため勘合しないことにご注意下さい。 本記事によって読者様に発生した事象については、その一切について編集部では責任を取りかねますことをご了承下さい。 特に注記のない画像は編集部で撮影したものです。 記事中の製品仕様および価格は執筆時(2020年10月)のものです。 記事中の社名、商品名等は各社の商標または登録商標です。編集部発信のオリジナルコンテンツ