ファインシャット極(きわみ)」をご存じですか?今回、光陽オリエント様のご厚意で、サンプル品を使用する機会をいただくことができましたのでレビューをお届けします。

光陽オリエントジャパン株式会社・ファインシャット極
https://www.ko-pro.tech/fine-shut-kiwami/

ガチの天文ファンなら、内面反射防止対策として、何らかの「反射防止シート(植毛紙など)」のお世話になったことがきっとあることかと思います。天リフ編集部でのレビューの結果、「ファインシャット極(きわみ)」は、現在入手可能な同系統の製品の中で、最もクオリティの高いものの一つであると感じました。

本記事では、「ファインシャット極(きわみ)」をご紹介しつつ、「内面反射」がどんなときに問題になって、「反射防止シート」を含むどんな対策が可能かを適用例とともに解説したいと思います。

闇が闇であるために。内面反射処理の重要性

内面反射による迷光の例。同じ口径・焦点距離の天体望遠鏡でも、内面反射処理の違いによってコントラストが大きく変わってきます。

近年、デジタルカメラの高性能化・高画素化で、光学系の性能が非常に高いレベルで問われるようになり「MTF曲線」や「スポットダイアグラム」などで表される「結像性能」についての理解が進み、ユーザーの高性能化に対する欲求はますます高まっています。その一方で、光学製品の性能を表すもう一つの指標〜「闇を闇として描き出せる性能」〜については、まだ理解と定量化(*)がじゅうぶんとはいえないと感じています。

(*)定量化が難しい指標だと思うのですが、何らかの形で測ることはできないものでしょうか。

光学的な「結像性能」が被写体の光を正確に精緻に網膜やセンサーに描き出す能力であるのに対して、内面反射が少ないことは「闇を闇として描き出す」ための性能。光あるところに闇があり、闇が闇だからこそ光が際立つ。写真が美しくあるためには「闇が闇であること」が大事なのです。

「暗闇の中に光る星々」を撮る天体写真では、内面反射処理は特に重要。特に「人工光にかき消された弱い星の光をあぶり出す」ようなスタイルにならざるを得ない、日本国内での天体写真ではなおさら重要になるはずです。

ファインシャット極(きわみ)とは

反射率1%以下を実現

筆者の使用しているEF/ソニーEマウントアダプタ。初期の製品で内面反射防止処理がプアだったため「ファインシャットSP」を使用して対策していました。

「ファインシャットSP」という製品は、従来からかなり知名度のある製品です。実は筆者も4年ほど前に購入し、マウントアダプタの内面反射処理に使用していました。

https://www.ko-pro.tech/fine-shut-kiwami/より引用

その「ファインシャットSP(以下、「従来品」と表記した場合はこれを指します)」に加えて、より反射率の低い上位バージョン「ファインシャット極(きわみ)」が最近発売されました。上のグラフは2つの製品の分光反射率を比較したものですが、従来品と比較して半分近くになっていることがわかります。

これは期待が持てますね!実は、ファインシャットSPは「あんまり黒くない」と感じていて少し不満があったからです。

従来品・植毛紙と反射率を比較する

筆者の手元にある3つの製品を比較してみました。「ファインシャットSP」「ファインシャット極(きわみ)」。もうひとつは、こちらの「植毛紙」です。

植毛紙の上にファインシャットの小片を貼り付けて撮影したのですが、普通の露出時間で撮るとどれも真っ黒ですね^^

露出補正をかなりプラスに振ってみました。んん?植毛紙が一番黒いような気がしますね・・

実はこれ、正面から(入射角0度)見た場合なのですが、このとき一番黒いのは、なんと一番安価な「植毛紙」でした。えっ。

重要なのは入射角が「深い」ときの反射率

ところが・・・ナナメから見てみると、明らかに「ファインシャット極が一番黒い。これ、すごく大事なところです。反射防止シートの優劣を比較する際、正面から見て黒さを比べてもあまり参考になりません。

上の図のように、光学製品で内面反射が問題になる場合、その多くは入射角が深い場合。正面から見て黒いだけで品質を判断してはだめで、深い入射角で評価しなければなりません(*)。

(*)レンズ表面の反射防止コーティングの場合は、逆に正面からの入射光に対する反射率がまず第一です。また、入射角が深くなるにつれ、反射率は急激に増えていきます。最近では深い入射角でも反射が少ないコーティングが実用化され(キヤノンのSWCコートなど)、超広角レンズなどに適用され効果を上げています。

高性能の秘密は表面の微細加工による「ミゾ」

https://www.ko-pro.tech/fine-shut-kiwami/より引用

「ファインシャット極(きわみ)」は、従来品や植毛紙以上に深い入射角での反射防止効果が高いことがわかりました。それを実現しているのが表面の微細加工。上の画像を見てわかるとおり、表面に微細なスジ状の構造が形成されていて、これが深い入射角度での反射率抑制に役立っているのです(*)。

(*)逆にこのことは、シートに「正しい向き」があることを意味します。スジ状構造が光軸と垂直になるようにしなくてはなりません。

追記)シートの向きは肉眼でも視認できます。シートの細かい穴はミクロレベルですが、スジ状の構造はよく見れば判別可能です。また、斜入光状態で90度回転させて反射が寄り少なくなる方向からも確認できます。

 

後述しますが、このスリーブに「ファインシャット極」を貼り付けることでさらに反射を抑制することができました。

このように「表面にスジを入れる」手法は、内面反射防止のセオリーでもあります。上の画像はCMOSカメラ用の1.25インチスリーブですが、金属製の筒の内部に細かなスジが彫られています。スジの「山」によって光が遮られ「谷」の部分が影になるためです。

適用事例

前口上はこのくらいにして、実践してみましょう。筆者が使用しているさまざまな製品・パーツに「ファインシャット極(きわみ)」を貼ってみました!

フィルター枠

天体撮影では定番の48mmフィルター。ナローバンドからUV/IRカットまでいろいろ。ところが、フィルター枠の内面の反射防止は手抜きされていることがママあります。上の画像の例では、フィルター枠のメスネジ側がピカピカです。対物側の端に装着する場合ならともかく、光路の途中に入れる場合は、この光沢部分に明るい星が重なると、ゴーストの原因となることでしょう。

そこで「ファインシャット極(きわみ)」で対策、ビフォー・アフター。一目で効果大。この対策は面積も少なく加工も容易なのでオススメです。

CMOSカメラ接続リング

前出の「スジの切られたスリーブ内面」です。元製品のつや消し黒塗装の品質は決して悪くないのですが、それも「ファインシャット極」を貼り付けるとビフォー・アフターの差は歴然。

焦点面直前のスリーブは、外形上の制約で遮光リングを入れることが困難な場合があり、従来のファイナルアンサーは「スジ加工+つや消し黒塗装」でした。しかし、ファインシャット極を使用すれば、その限界を1段超えることができるでしょう。

コマコレクタ・Tマウントアダプタ

反射望遠鏡用の補正レンズ「コマコレクタ」。低価格の補正レンズでは、内面反射防止処理にあまり気合が入っていない製品もあります。この製品の場合、あちこち反射防止シートを貼りたくなってきます^^;; とはいえ、レンズ群内部の筒には手出しできないので、一番影響の大きそうなTマウントアダプタのツヤツヤ面に「ファインシャット極」を貼付。こちらも効果大。

EF/MFTマウントアダプタ

EOS to MFTのマウントアダプタです。このアダプタの場合特につや消し塗装もスジもない、黒色アルマイト加工のみのピカピカ状態。サードベンダー製のマウントアダプタは玉石混交です。

大径to小径のアダプタの場合、小径部のリングが遮光環の働きをするため、大径部の内側の内面反射はあまり問題になりませんが、小径部の内面反射は上の画像のようにダイレクトにセンサーに届いてしまいます。そこで小径部の内側のみに「ファインシャット極」を貼り付けました。こちらもビフォー・アフターの差は歴然。

加工・貼付作業の注意

「ファインシャット極」をあちこち貼りまくるのは、基本的には楽しい工作ですが、慣れないといろいろ難しいところもあります。いろいろやってみて感じたことをまとめておきます。

採寸と切断

ベストなのは図面をきちんと引いて、XYカッターのような機械で型どおり切り抜くことなのでしょうが、アマチュア工作ではそうそう手がでません。貼り付ける先の幅と直径を採寸して、カッターナイフで丁寧に切り抜くのが当たり前ですが近道です。

筆者の場合、おおざっぱに少し幅広・長めに切り取って、貼り付けた後はみ出した部分をカッターナイフでそぎ取りました。ちょっと無駄が出ますが、簡便な方法です。

保護フィルムが剥がしにくい

この手の製品の常道として、貼付面が両面テープになっていて、透明なフィルムを剥がして貼り付けるようになっていますが、この「透明フィルム」を剥がすのにはちょっとコツがいります。筆者は2ミリほど角をガシガシ折り曲げて、透明フィルムを浮かせてはぎ取りました。

慎重に、丁寧に

筆者はどちらかというと手先の器用さを要求される作業が苦手なのですが、ひたすら手抜きせず丁寧にやるしかありません。ピンセットや先の細いマイナスドライバーなどの工具があると役立ちます。基本的にはテープを貼るだけの作業なので、慣れればなんとかなるでしょう^^;;;;ご武運をお祈りまします。

効果のある部位はどこか

キヤノンのサンニッパ。さすがに配慮が行き届いていて、手を加える余地はありませんでした^^

内面反射を意識し始めると、いろいろな場所の反射が気になってきます。しかし、場所によってはピカピカ状態でもほとんど問題にならない場所もあります(*)。まずは、上の画像のようにライトパネルにかざしてみたり、青空に向けて背後から見てみるなど、「悪さ」をしていそうな場所を探るのがよいでしょう。

(*)例えば、絞り環や光路中の段差(細→太、太→細)などに挟まれた部位は、そもそも光がほとんど入射しないので内面反射への影響が少ないといえます。

その上で優先度を付けるとしたら、無塗装平滑面(ツヤツヤ面)→黒塗装済み平滑面→黒塗装済みギザギザ面となります。「ファインシャット極(きわみ)」は、手持ちの機材で比較したかぎりでは、上の3つのどれよりも反射率が低く、貼り付ければ一定の効果があるものと思います。

上の画像は、性能にかなり定評のある某社のレデューサですが、ファインシャット極(きわみ)と比較してしまうと、内面反射がけっこうあることがわかります。実用的にはレンズがセンサーよりもかなり大きいので悪影響が少ないのかも知れませんが、現在の天体用補正レンズの内面反射防止対策は「まだやれる余地がある」のではと感じました(*)。

(*)スジ・ネジを切ってある部分はまだいいのですが、平滑面に黒塗装のみの場所はなんとかしてほしいものです。

「ファインシャット極(きわみ)」のそのほかの特長

薄いこと

マウントアダプタやカメラ直前のスリーブ内面に貼る場合、反射防止シートの厚みが問題なってきます。厚いシートを貼ってしまうと光束を遮り逆にケラレの原因になってしまうのです。

その点では植毛紙は不利。「ファインシャット極(きわみ)」が0.42mmであるのに対して、植毛紙は0.67mm。植毛視は「毛足」の分だけ、どうしても厚みを持ってしまいます(*)。

わずかな差のようですが、内周に貼ればこの2倍で効いてきます。薄いに越したことはありません。

(*)薄くするためには、貼付のための両面テープの厚みも重要です。こちらも「ファインシャット極(きわみ)」では0.05mmと非常に薄手になっています。

ホコリを生み出さないこと

ネットで見かける古スコ(古い望遠鏡)の使用記で「植毛紙が経年劣化でボロボロになっていた」という記述を見かけることがあります。その原因がどの辺にあるのかは不明ですし、すべての植毛紙でそうだとは必ずしも言えませんが、植毛紙はその構造上、毛が抜け落ちてしまう可能性をゼロにすることができません

植毛紙にテープを貼ってビリリと剥がすと、このように毛が抜けているのがわかります。センサー面に近い部分では若干心配になりますね。

その点「ファインシャット極(きわみ)」は「植毛」ではなく「表面の微細加工」で反射防止効果を出しているので、毛が飛び散る心配はないといって良いでしょう。

波長特性

反射防止の効果は波長によっても変わってきます。通常のデジタル一眼カメラの場合は、波長400nm〜650nmで低反射であれば十分ですが、天体用カメラでは700nm域まで必要になりますし、近赤外写真の場合は1000nmあたりまで意識する必要が出てきます。その点、ファインシャットはFSも極も、波長2000nm程度までなら心配ありません。

IR86フィルターで撮影。フィルム時代の古いレンズでは、黒塗装が近赤外域で効果が下がってしまうものもありました。

フィルム時代の黒色塗装には上のように近赤外域での反射防止効果が低いものもありました(*)が、筆者の手持ちの機材の場合、問題になる製品は上の画像のカメラレンズ以外はありませんでした。長波長側でも反射抑制効果が低下しないのはファインシャット極の長所の一つですが、Hα線(656nm)程度の長波長ではこのメリットが突出しているといわけではないでしょう。

(*)実戦的にはこれだけではなく、レンズのコーティングが近赤外で役立たずになる現象も大きな問題になります。

ただし、1000nm〜2000nm域の波長を使用する場合は「ファインシャットFS」と「極」の差が大きくなってきます。一般のデジカメではほとんど射程外の波長ですが、研究用途などでこの波長域を使用するなら従来品と比較して「極」は非常に効果の高いソリューションではないかと推測します。

コストの評価

筆者が使用している20cmシュミットカセグレン望遠鏡用の巻き付けフード。樹脂ママだったので植毛紙を貼っています。安価な植毛紙はこういう用途では助かります。

いろいろといいことずくめの「ファインシャット極(きわみ)」ですが、かなりお値段は張ります。たとえば、大口径反射望遠鏡のフードの内側などに使用すると、結構な出費となります。上の画像の例を「極」でやるとお値段も「極(きわみ)」。これは賢い使い方ではありません^^;;;

「ファインシャット極(きわみ)」が高いコスパを発揮するのは、面積が比較的小さくセンサーに近い、内面反射がよりクリティカルになる部位(取付リング・フィルター枠・マウントアダプタなど)でしょう。逆に、そんな「コストをかけても高い性能を発揮させたい」ニーズのための製品であるといえまます。

まとめ・ピンポイントの反射防止に活用しよう

いかがでしたか?

ファインシャット極(極)は、高い反射防止効果を持ち、薄手で狭い場所にも使いやすく、毛落ちによるゴミの問題も少ないなど、非常に効果の高い反射防止シートであると感じました。

仕上げが雑で恐縮ですが、頑張って貼りました^^。たいぶ改善したのですが、ドロチューブ内に貼ればさらに効果が出そう。キレイに貼るには難易度が高そうなのですが。。

「実際のところどのくらい効果があったのか」については今回は検証できていないのですが、この「ファインシャット極(きわみ)強化版」のニュートン反射+コマコレクタを使用して実写してみたいと思います(*)。

(*)Before/Afterの比較を正確に検証するには、現場で撮影して「いったん全部剥がして」比較しないといけなくなるのですが・・・・さすはにそれは^^;;

「フラット処理をしても不規則なムラが残る」ことでお悩みの方は、お使いの機材の内面反射の状況をチェックしてみて、反射防止シートの適用を検討されてみてはいかがでしょうか?


  • 本記事は光陽オリエント様より製品のサンプル提供を受け、天文リフレクションズ編集部が独自の費用と判断で作成したものです。文責は全て天文リフレクションズ編集部にあります。
  • 記事に関するご質問・お問い合わせなどは天文リフレクションズ編集部宛にお願いいたします。
  • 製品の購入およびお問い合わせは各販売店様にお願いいたします。
  • 本記事によって読者様に発生した事象については、その一切について編集部では責任を取りかねますことをご了承下さい。
  • 特に注記のない画像は編集部で撮影したものです。
  • 記事中の製品仕様および価格は執筆時(2019年5月)のものです。
  • 記事中の社名、商品名等は各社の商標または登録商標です。
http://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2019/05/fc6927a4cd7fc6f068de9eb5d3ae4aff-3-1024x683.jpghttp://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2019/05/fc6927a4cd7fc6f068de9eb5d3ae4aff-3-150x150.jpg編集部新着機材その他「ファインシャット極(きわみ)」をご存じですか?今回、光陽オリエント様のご厚意で、サンプル品を使用する機会をいただくことができましたのでレビューをお届けします。 光陽オリエントジャパン株式会社・ファインシャット極 https://www.ko-pro.tech/fine-shut-kiwami/ ガチの天文ファンなら、内面反射防止対策として、何らかの「反射防止シート(植毛紙など)」のお世話になったことがきっとあることかと思います。天リフ編集部でのレビューの結果、「ファインシャット極(きわみ)」は、現在入手可能な同系統の製品の中で、最もクオリティの高いものの一つであると感じました。 本記事では、「ファインシャット極(きわみ)」をご紹介しつつ、「内面反射」がどんなときに問題になって、「反射防止シート」を含むどんな対策が可能かを適用例とともに解説したいと思います。 闇が闇であるために。内面反射処理の重要性 近年、デジタルカメラの高性能化・高画素化で、光学系の性能が非常に高いレベルで問われるようになり「MTF曲線」や「スポットダイアグラム」などで表される「結像性能」についての理解が進み、ユーザーの高性能化に対する欲求はますます高まっています。その一方で、光学製品の性能を表すもう一つの指標〜「闇を闇として描き出せる性能」〜については、まだ理解と定量化(*)がじゅうぶんとはいえないと感じています。 (*)定量化が難しい指標だと思うのですが、何らかの形で測ることはできないものでしょうか。 光学的な「結像性能」が被写体の光を正確に精緻に網膜やセンサーに描き出す能力であるのに対して、内面反射が少ないことは「闇を闇として描き出す」ための性能。光あるところに闇があり、闇が闇だからこそ光が際立つ。写真が美しくあるためには「闇が闇であること」が大事なのです。 「暗闇の中に光る星々」を撮る天体写真では、内面反射処理は特に重要。特に「人工光にかき消された弱い星の光をあぶり出す」ようなスタイルにならざるを得ない、日本国内での天体写真ではなおさら重要になるはずです。 ファインシャット極(きわみ)とは 反射率1%以下を実現 「ファインシャットSP」という製品は、従来からかなり知名度のある製品です。実は筆者も4年ほど前に購入し、マウントアダプタの内面反射処理に使用していました。 その「ファインシャットSP(以下、「従来品」と表記した場合はこれを指します)」に加えて、より反射率の低い上位バージョン「ファインシャット極(きわみ)」が最近発売されました。上のグラフは2つの製品の分光反射率を比較したものですが、従来品と比較して半分近くになっていることがわかります。 これは期待が持てますね!実は、ファインシャットSPは「あんまり黒くない」と感じていて少し不満があったからです。 従来品・植毛紙と反射率を比較する 筆者の手元にある3つの製品を比較してみました。「ファインシャットSP」「ファインシャット極(きわみ)」。もうひとつは、こちらの「植毛紙」です。 植毛紙の上にファインシャットの小片を貼り付けて撮影したのですが、普通の露出時間で撮るとどれも真っ黒ですね^^ 露出補正をかなりプラスに振ってみました。んん?植毛紙が一番黒いような気がしますね・・ 実はこれ、正面から(入射角0度)見た場合なのですが、このとき一番黒いのは、なんと一番安価な「植毛紙」でした。えっ。 重要なのは入射角が「深い」ときの反射率 ところが・・・ナナメから見てみると、明らかに「ファインシャット極が一番黒い。これ、すごく大事なところです。反射防止シートの優劣を比較する際、正面から見て黒さを比べてもあまり参考になりません。 上の図のように、光学製品で内面反射が問題になる場合、その多くは入射角が深い場合。正面から見て黒いだけで品質を判断してはだめで、深い入射角で評価しなければなりません(*)。 (*)レンズ表面の反射防止コーティングの場合は、逆に正面からの入射光に対する反射率がまず第一です。また、入射角が深くなるにつれ、反射率は急激に増えていきます。最近では深い入射角でも反射が少ないコーティングが実用化され(キヤノンのSWCコートなど)、超広角レンズなどに適用され効果を上げています。 高性能の秘密は表面の微細加工による「ミゾ」 「ファインシャット極(きわみ)」は、従来品や植毛紙以上に深い入射角での反射防止効果が高いことがわかりました。それを実現しているのが表面の微細加工。上の画像を見てわかるとおり、表面に微細なスジ状の構造が形成されていて、これが深い入射角度での反射率抑制に役立っているのです(*)。 (*)逆にこのことは、シートに「正しい向き」があることを意味します。スジ状構造が光軸と垂直になるようにしなくてはなりません。 追記)シートの向きは肉眼でも視認できます。シートの細かい穴はミクロレベルですが、スジ状の構造はよく見れば判別可能です。また、斜入光状態で90度回転させて反射が寄り少なくなる方向からも確認できます。   このように「表面にスジを入れる」手法は、内面反射防止のセオリーでもあります。上の画像はCMOSカメラ用の1.25インチスリーブですが、金属製の筒の内部に細かなスジが彫られています。スジの「山」によって光が遮られ「谷」の部分が影になるためです。 適用事例 前口上はこのくらいにして、実践してみましょう。筆者が使用しているさまざまな製品・パーツに「ファインシャット極(きわみ)」を貼ってみました! フィルター枠 天体撮影では定番の48mmフィルター。ナローバンドからUV/IRカットまでいろいろ。ところが、フィルター枠の内面の反射防止は手抜きされていることがママあります。上の画像の例では、フィルター枠のメスネジ側がピカピカです。対物側の端に装着する場合ならともかく、光路の途中に入れる場合は、この光沢部分に明るい星が重なると、ゴーストの原因となることでしょう。 そこで「ファインシャット極(きわみ)」で対策、ビフォー・アフター。一目で効果大。この対策は面積も少なく加工も容易なのでオススメです。 CMOSカメラ接続リング 前出の「スジの切られたスリーブ内面」です。元製品のつや消し黒塗装の品質は決して悪くないのですが、それも「ファインシャット極」を貼り付けるとビフォー・アフターの差は歴然。 焦点面直前のスリーブは、外形上の制約で遮光リングを入れることが困難な場合があり、従来のファイナルアンサーは「スジ加工+つや消し黒塗装」でした。しかし、ファインシャット極を使用すれば、その限界を1段超えることができるでしょう。 コマコレクタ・Tマウントアダプタ 反射望遠鏡用の補正レンズ「コマコレクタ」。低価格の補正レンズでは、内面反射防止処理にあまり気合が入っていない製品もあります。この製品の場合、あちこち反射防止シートを貼りたくなってきます^^;; とはいえ、レンズ群内部の筒には手出しできないので、一番影響の大きそうなTマウントアダプタのツヤツヤ面に「ファインシャット極」を貼付。こちらも効果大。 EF/MFTマウントアダプタ EOS to MFTのマウントアダプタです。このアダプタの場合特につや消し塗装もスジもない、黒色アルマイト加工のみのピカピカ状態。サードベンダー製のマウントアダプタは玉石混交です。 大径to小径のアダプタの場合、小径部のリングが遮光環の働きをするため、大径部の内側の内面反射はあまり問題になりませんが、小径部の内面反射は上の画像のようにダイレクトにセンサーに届いてしまいます。そこで小径部の内側のみに「ファインシャット極」を貼り付けました。こちらもビフォー・アフターの差は歴然。 加工・貼付作業の注意 「ファインシャット極」をあちこち貼りまくるのは、基本的には楽しい工作ですが、慣れないといろいろ難しいところもあります。いろいろやってみて感じたことをまとめておきます。 採寸と切断 ベストなのは図面をきちんと引いて、XYカッターのような機械で型どおり切り抜くことなのでしょうが、アマチュア工作ではそうそう手がでません。貼り付ける先の幅と直径を採寸して、カッターナイフで丁寧に切り抜くのが当たり前ですが近道です。 筆者の場合、おおざっぱに少し幅広・長めに切り取って、貼り付けた後はみ出した部分をカッターナイフでそぎ取りました。ちょっと無駄が出ますが、簡便な方法です。 保護フィルムが剥がしにくい この手の製品の常道として、貼付面が両面テープになっていて、透明なフィルムを剥がして貼り付けるようになっていますが、この「透明フィルム」を剥がすのにはちょっとコツがいります。筆者は2ミリほど角をガシガシ折り曲げて、透明フィルムを浮かせてはぎ取りました。 慎重に、丁寧に 筆者はどちらかというと手先の器用さを要求される作業が苦手なのですが、ひたすら手抜きせず丁寧にやるしかありません。ピンセットや先の細いマイナスドライバーなどの工具があると役立ちます。基本的にはテープを貼るだけの作業なので、慣れればなんとかなるでしょう^^;;;;ご武運をお祈りまします。 効果のある部位はどこか 内面反射を意識し始めると、いろいろな場所の反射が気になってきます。しかし、場所によってはピカピカ状態でもほとんど問題にならない場所もあります(*)。まずは、上の画像のようにライトパネルにかざしてみたり、青空に向けて背後から見てみるなど、「悪さ」をしていそうな場所を探るのがよいでしょう。 (*)例えば、絞り環や光路中の段差(細→太、太→細)などに挟まれた部位は、そもそも光がほとんど入射しないので内面反射への影響が少ないといえます。 その上で優先度を付けるとしたら、無塗装平滑面(ツヤツヤ面)→黒塗装済み平滑面→黒塗装済みギザギザ面となります。「ファインシャット極(きわみ)」は、手持ちの機材で比較したかぎりでは、上の3つのどれよりも反射率が低く、貼り付ければ一定の効果があるものと思います。 上の画像は、性能にかなり定評のある某社のレデューサですが、ファインシャット極(きわみ)と比較してしまうと、内面反射がけっこうあることがわかります。実用的にはレンズがセンサーよりもかなり大きいので悪影響が少ないのかも知れませんが、現在の天体用補正レンズの内面反射防止対策は「まだやれる余地がある」のではと感じました(*)。 (*)スジ・ネジを切ってある部分はまだいいのですが、平滑面に黒塗装のみの場所はなんとかしてほしいものです。 「ファインシャット極(きわみ)」のそのほかの特長 薄いこと マウントアダプタやカメラ直前のスリーブ内面に貼る場合、反射防止シートの厚みが問題なってきます。厚いシートを貼ってしまうと光束を遮り逆にケラレの原因になってしまうのです。 その点では植毛紙は不利。「ファインシャット極(きわみ)」が0.42mmであるのに対して、植毛紙は0.67mm。植毛視は「毛足」の分だけ、どうしても厚みを持ってしまいます(*)。 わずかな差のようですが、内周に貼ればこの2倍で効いてきます。薄いに越したことはありません。 (*)薄くするためには、貼付のための両面テープの厚みも重要です。こちらも「ファインシャット極(きわみ)」では0.05mmと非常に薄手になっています。 ホコリを生み出さないこと ネットで見かける古スコ(古い望遠鏡)の使用記で「植毛紙が経年劣化でボロボロになっていた」という記述を見かけることがあります。その原因がどの辺にあるのかは不明ですし、すべての植毛紙でそうだとは必ずしも言えませんが、植毛紙はその構造上、毛が抜け落ちてしまう可能性をゼロにすることができません 植毛紙にテープを貼ってビリリと剥がすと、このように毛が抜けているのがわかります。センサー面に近い部分では若干心配になりますね。 その点「ファインシャット極(きわみ)」は「植毛」ではなく「表面の微細加工」で反射防止効果を出しているので、毛が飛び散る心配はないといって良いでしょう。 波長特性 反射防止の効果は波長によっても変わってきます。通常のデジタル一眼カメラの場合は、波長400nm〜650nmで低反射であれば十分ですが、天体用カメラでは700nm域まで必要になりますし、近赤外写真の場合は1000nmあたりまで意識する必要が出てきます。その点、ファインシャットはFSも極も、波長2000nm程度までなら心配ありません。 フィルム時代の黒色塗装には上のように近赤外域での反射防止効果が低いものもありました(*)が、筆者の手持ちの機材の場合、問題になる製品は上の画像のカメラレンズ以外はありませんでした。長波長側でも反射抑制効果が低下しないのはファインシャット極の長所の一つですが、Hα線(656nm)程度の長波長ではこのメリットが突出しているといわけではないでしょう。 (*)実戦的にはこれだけではなく、レンズのコーティングが近赤外で役立たずになる現象も大きな問題になります。 ただし、1000nm〜2000nm域の波長を使用する場合は「ファインシャットFS」と「極」の差が大きくなってきます。一般のデジカメではほとんど射程外の波長ですが、研究用途などでこの波長域を使用するなら従来品と比較して「極」は非常に効果の高いソリューションではないかと推測します。 コストの評価 いろいろといいことずくめの「ファインシャット極(きわみ)」ですが、かなりお値段は張ります。たとえば、大口径反射望遠鏡のフードの内側などに使用すると、結構な出費となります。上の画像の例を「極」でやるとお値段も「極(きわみ)」。これは賢い使い方ではありません^^;;; 「ファインシャット極(きわみ)」が高いコスパを発揮するのは、面積が比較的小さくセンサーに近い、内面反射がよりクリティカルになる部位(取付リング・フィルター枠・マウントアダプタなど)でしょう。逆に、そんな「コストをかけても高い性能を発揮させたい」ニーズのための製品であるといえまます。 まとめ・ピンポイントの反射防止に活用しよう いかがでしたか? ファインシャット極(極)は、高い反射防止効果を持ち、薄手で狭い場所にも使いやすく、毛落ちによるゴミの問題も少ないなど、非常に効果の高い反射防止シートであると感じました。 「実際のところどのくらい効果があったのか」については今回は検証できていないのですが、この「ファインシャット極(きわみ)強化版」のニュートン反射+コマコレクタを使用して実写してみたいと思います(*)。 (*)Before/Afterの比較を正確に検証するには、現場で撮影して「いったん全部剥がして」比較しないといけなくなるのですが・・・・さすはにそれは^^;; 「フラット処理をしても不規則なムラが残る」ことでお悩みの方は、お使いの機材の内面反射の状況をチェックしてみて、反射防止シートの適用を検討されてみてはいかがでしょうか? 本記事は光陽オリエント様より製品のサンプル提供を受け、天文リフレクションズ編集部が独自の費用と判断で作成したものです。文責は全て天文リフレクションズ編集部にあります。 記事に関するご質問・お問い合わせなどは天文リフレクションズ編集部宛にお願いいたします。 製品の購入およびお問い合わせは各販売店様にお願いいたします。 本記事によって読者様に発生した事象については、その一切について編集部では責任を取りかねますことをご了承下さい。 特に注記のない画像は編集部で撮影したものです。 記事中の製品仕様および価格は執筆時(2019年5月)のものです。 記事中の社名、商品名等は各社の商標または登録商標です。編集部発信のオリジナルコンテンツ