2019/6/1追記)

本記事の内容はいくつかの重大な誤りを含むため以下の改訂版を作成しています。こちらをご参照ください。

訂正・お詫びあり【続報】スペースXの「Starlink」打ち上げ・星空への影響は?

 

追記終わり)


 



スペースXの「Starlink(スターリンク)」についての前回の記事には多くの反響がありました。スターリンクで何が起きそうか?という意図は多くの方に伝わったものと思います。また、賛否両論、さまざまなご意見がありました。

スペースXの「Starlink」打ち上げ・星空への影響は?

前記事で作成した「想像図」は科学的にはかなり適当で誇張した絵だったのですが、より正確にシミュレーションした画像をほんのり光房様よりお送りいただきました。「スターリンクで何が起きるか」をより正確に知っていただくために、以下掲載させていただきます。

追記5/28 16:00)

ほんのり光房・衛星群「スターリンク」を観察しました
http://kuusou.asablo.jp/blog/2019/05/28/9078025

衛星高度を340km,550km,1150kmの3種に設定しより計画最終型に近づけたシミュレーション画像が作成されています。高度1150kmの衛星は夏至ごろには一晩中天頂付近で光っているとの結果になっており、これはより深刻な事態かもしれません。ちなみに、計画では高度1150kmの衛星は、高度550kmに1600個打ち上げられた次に、2800機打ち上げられる計画になっています。

追記終わり)

地球の影の面積はかなり大きい

2020年6月21日(夏至)の日没後90分の星空。天文薄明が終わる少し前の時刻。筆者は天頂まで衛星が光っているものと推測していたのですが、前記事での推測よりも「地球の影」はより広い範囲の空を覆っていることが明らかになりました。衛星が見えているのは、北西の空を中心に地平高度50度くらいまでです。数は前記事の筆者のお絵かき画像よりも特に地平千側でかなり多くなっています。ただし、地平線に近い衛星は「たぶん」より暗い(*)ので、本物でどんなふうに見えるのかはこの絵からはまだ即断できません。

(*)地平線に近い衛星ほど、距離が遠い・大気の吸収の2つの理由で暗くなるはず

シミュレーションの前提と計算方法

今回のシミュレーションの前提事項と計算方法について簡単にまとめておきます。

【計算方法】
120×100=12000基の衛星データ(軌道要素)を機械的に生成し、ステライメージver8で描画しています。

【軌道の想定】
Starlink衛星がどう全天に配置されるかは無視し、一定の前提をおいて「地球全体をだいたい均一に覆う」想定になっています。具体的には、

  • 地上高550km(*)の円軌道
  • 赤道に対して53度(現在のstarlinkと同じ)傾いた3.6度刻みの軌道が100本
  • それぞれの軌道に衛星が3度間隔で120個ある

という設定です。

(*)後述する時間経過による地球の影の影響は、この地上高に大きく依存し、衛星が低いほど、地球の影に隠れる面積が多くなります。starlink衛星の地上高度は下記リンクによると「高度550kmの約1,600基」「次いで高度1,150kmの約2,800基」「さらに高度340kmの約7,500基」とあります。本シミュレーションは計画および最終状態とは異なります。また、スペースX社以外に他社が参入すれば、当然衛星の数も増えるでしょう。

wikipedia スターリンク
https://ja.wikipedia.org/wiki/スターリンク

【星図上の描画方法】
月明かりと地上の人工光は無視し、薄明のみ描画。衛星は全て「1等星(*)」とみなしています。これはかなり荒っぽい想定です。

(*)太陽電池パネルの大きさ・構造・角度、太陽・衛星・観測者の位置関係など、様々な要因によって衛星の光度は大きく変わると推測されますが、現時点ではそれらは加味されていません。また、通常は暗くても「イリジウム衛星」のように突発的に明るく輝く(フレア)可能性も考えられます。

また、地球の影に入った場合は衛星を表示しない(*)ようにしています。高度・方位の目盛は10度です。

(*)この地球の影の計算はステラナビゲータver8の機能に依存しています。

地球の影を無視した場合の2020年6月21日の日没120分後の状態。個々の衛星の正確な位置は実際とは異なりますが、衛星の分布密度はほぼ正しいと考えてよいでしょう。

日没後2時間経過すればかなり衛星の見える範囲は狭くなる

日没後の時間経過によるstarlink衛星の分布のシミュレーションです。こちらも、前記事で懸念したほどには空の広い範囲を衛星が占めるわけではないようです(*)。

(*)ただし、衛星の高度がすべて「550km」の場合であることに注意が必要です。starlinkの地上高度は「高度550kmの約1,600基」「次いで高度1,150kmの約2,800基」「さらに高度340kmの約7,500基」という情報もあります。高度が低いほど衛星は明るく見えますが地球の影に早く隠され、高度が高いほど衛星は暗く見えますがより空の広い面積を占めることになります。

夏至の日の夕方の30分毎の変化。地球の影は、太陽と同じように西空に「沈んで」ゆきます。このため、日没120分後には、見えている一番高い衛星の地平高度は30度ほど。これならかなりマイルドですね。

太陽がより深く沈む冬至の場合は、地球の影もより速く昇ります。日没後120分で衛星の最大地平高度は20度弱。少なくとも冬場は、あまり人工衛星の存在を意識しない夜を送れそうです。

日没後・日の出前の「人工衛星薄明」

Starlinkがもっとも顕著に見られるのは日没後と日の出前。上の画像は夏至の夕方、星が輝きはじめる日没後60分ごろの状態ですが、天頂をすぎても衛星の姿が見られ、衛星が見える領域は空の面積の半分を超えています。

このとき衛星の明るさが仮に1等級あるとすると、この後1時間くらいの間までは、星空の様相を一変させる、それなりにすごい眺めになりそうです。でも3等級なら・・・かなり微妙ですが、星座の星並びがかき消されるようなことはありうるでしょう。

天文学・天文愛好家への影響

天文学・天文ファンへの影響は現実的にかなり大きいものと考えられます。以下、箇条書きで。

  • いわゆる「深宇宙(ディープスカイ)」の撮影においては影響はあるものの限定的です。深夜の時間帯なら影響はありませんし、画像処理で移動物体を消すことは現状でも行われている対策です。一方で、太陽に近づく彗星のような天体の場合は、相当に大きな影響があるでしょう。
  • 天体望遠鏡で星を見るような場合はほぼ影響はないと予測しますが、数多くの衛星で星並びがわかりにくくなり、目的の天体を捉えにくくなるようなケースは考えられます。また、一般向けの天体観望会は夕方の早い時間に行われることが多いため、星座の解説のプロシージャを大きく変える必要があるかもしれません。
  • 打ち上げ初期に見られる「銀河鉄道」は、一般の人にも相当に受けのよいイベントになるでしょう。すでに「予報」や「観望ガイド」などが各所で発信されていますが、このチャンスを活用しない手はありません。
  • 天文学の研究のための観測においては、人工天体の存在はある意味「織り込み済み」ではありますが、木曽観測所の「トモエゴゼン」のような広視野サーベイシステムはかなり大きな影響を受けると推測します。「大気圏外に出るしかない」ような観測分野がより増えてしまうかもしれません。
  • 星空と風景の写真を撮影する「星景写真」の分野では、衛星の明るさによってはかなり影響を受けると考えられます。特に2月〜4月ごろの「明け方の東空の天の川」は人工衛星の軌跡で埋めつくされてしまうかもしれません。
  • 人工衛星そのものを被写体とする「インスタ映え」的な写真は多くのFAVを集めることになるでしょう。

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