天リフ眼視推進委員会がお送りする「アイピース探訪」シリーズ。第6回は「賞月観星」の個性あふれるアイピースの3ラインナップ「SWA(70°)原点」シリーズ、「UWA(82°)」シリーズ、「UF(65°)」シリーズの一気ご紹介です。

賞月観星・3つのラインナップの特長

本記事でご紹介する3つのラインナップ、7本の接眼レンズ。前列が「SWA原点70°」シリーズ(赤字)、後列右が「UWA82°」シリーズ(青字)、後列左が「UF65°」シリーズ(緑字)。

「SWA(70°)原点」シリーズ

26mmは2インチサイズ。20mmと10mmは1.25インチサイズです。他に26mm、15mmがあります。
賞月観星SWA(70°)原点シリーズ接眼レンズ
http://blog.livedoor.jp/forrest1437/archives/78710459.html

※上記リンク先の価格は旧価格です。4/5時点ではさらに値下げされています。価格は販売サイトでご確認ください。

http://blog.livedoor.jp/forrest1437/archives/78710459.html

「SWA(70°)原点シリーズ」は、70°という広視界でありながら高いコスパ(税込4,200円〜7,200円)を実現した接眼レンズです。レンズ構成はフラットナーレンズを使用した4群5枚(26mmのみ3群5枚)。



賞月観星のアイピースは、どのシリーズにもシンプルな「開発の目標」が掲げられていますが、SWA(70°)原点シリーズの場合は「安い値段で高級接眼レンズの見え味を再現すること」。後で詳しく見ていきますが、この開発目標は十分果たされていると感じました。

「UWA(82°)」シリーズ

16mm、7mmともに1.25インチサイズ。レンズ枚数は多いですが、外径・重量ともに比較的コンパクト。他に4mmがあります。
賞月観星UWA(82°)シリーズ接眼レンズ 
http://blog.livedoor.jp/forrest1437/archives/77785020.html

※上記リンク先の価格は旧価格です。4/5時点ではさらに値下げされています。価格は販売サイトでご確認ください。

http://blog.livedoor.jp/forrest1437/archives/77785020.html

「UWA(82°)」シリーズは、開発目標はずばり「世界トップクラスの高級品テレビューNagler(ナグラー)Type6の見え味を再現すること。」「UWA(82°)」シリーズの見かけ視野82°・アイレリーフ12mm・4群7枚という仕様はテレビュー社のNagler Type6シリーズと全く同じです。

一方で価格はNagler(ナグラー)シリーズが実売税込4.5万円前後であるのに対して、「UWA(82°)」シリーズは8,800円〜9,500円と1/4の激安価格。前回レビューしたXWAシリーズも、同じテレビューの「イーソス」シリーズを強く意識し、1/3以下の価格を実現していました。いやがおうにも、UWAシリーズに対する期待も膨らみますね(*)。

(*)筆者は残念ながらナグラーシリーズは一本も所有しておらず、サイドバイサイドでないレビューになることをお許しください。

「UF」シリーズ

見かけ視野を65°に抑えた効果で、24mm・18mmともにスリーブ径は1.25インチです。24mmは太めでやや大ぶり。他に15mmがあります。
賞月観星UFシリーズ天地両用接眼レンズ
http://blog.livedoor.jp/forrest1437/archives/77236765.html 

※上記リンク先の価格は旧価格です。4/5時点ではさらに値下げされています。価格は販売サイトでご確認ください。

http://blog.livedoor.jp/forrest1437/archives/77236765.html

「UF」シリーズは、見かけ視野は65°とさほど広くない代わりに、視野の平坦さと歪曲の少なさを重視して設計された接眼レンズです。天体用途の眼視光学系では、本来直線であるべき対象が周辺部にいくにしたがって歪んでしまう「歪曲収差」の補正優先度が低く(*)、地上を観察するフィールドスコープ(スポッティングスコープ)や双眼望遠鏡では「気持ち悪さ」を感じてしまうことがあります。

(*)天体には「直線」状の対象がほぼ存在しないことが最大の理由です。

それに対して、UFシリーズは「天体のことだけを想定する」のではなく、地上風景を見る用途も重視しています。開発の目標は「天体用はもちろん、地上景色を観賞するフィールドスコープや大型双眼鏡にも相応しい接眼レンズ。」見かけ視野を抑えめにした代わりに、歪曲収差をより補正し、周辺までフラット(平坦:ピント位置の差が少ない)な視界をより重視した設計です。

レンズ構成はフラットナーレンズを含む5群8枚。価格は税込8,900円〜15,800円。高性能アイピースとしては相当に押さえられた価格です。

外観

コーティング

全製品、全面マルチコートです。

近年めざましく高性能化したコーティング。全面マルチコートは低価格品でも常識になりつつあります。レビューした3つのラインナップもすべて全面マルチコート。原点シリーズは若干反射率の高い面も含まれているようですが、それでも上質なマルチコートが施されています。

 

他社製品と比較してみました。一番右は、コーティングに定評のあるペンタックスのXW20mmですが、並べて見ても全く見劣りがしません。低価格にもかかわらず、コーティングは大変優秀です。

内面反射

一方で、内面反射処理を見てみると、鏡胴内に若干反射率の高い場所が存在します。特に原点シリーズはつや消し塗装されていない止めリングも見受けられます。

実際のところ、上記画像のような比較はやや意地悪なテストでもあります。反射率の高い面が存在している場合でも、視野絞りなどで隠れてしまう場所であれば大きな影響は出ません(*)。

(*)視野絞りの大きさ・位置にもよりますが、視野レンズに近い部分ほど問題になる可能性が高くなります。

FSQ106ED エクステンダー1.6 原点20mmによるコリメート iPhone11の広角カメラを使用。

実際に覗いてみた印象では、内面反射によるフレアは全く感じられませんでした。上の画像は「SWA原点20mm」を装着した状態ですが、確認できる内面反射は対物光学系で発生しているもので、接眼レンズ起因のものはほとんど確認できません。このあたりの違いは見え味には大きな影響はなく、外観上の「仕上げや美観の差(*)」というべきでしょう。

(*)製品を並べて比べると、やはり内部の仕上がりが良い製品の方が、よりよい製品に見えるものです。

重量と大きさ

SWA原点シリーズは、焦点距離が長くなるほど急激にサイズが大きくなります。一方で、スマイスレンズを使用したUWAシリーズは、焦点距離が違っても皆同じくらいのサイズ。UFシリーズは全体に太く大きめ。

接眼レンズを選ぶときは、大きさとスリーブサイズはとても重要な要素です。前回ご紹介した100°オーバーのXWAシリーズは巨大ですが、今回の3シリーズはどれもマイルドな大きさです。特にUWAシリーズは見かけ視野が82°もある割にはとても小ぶりで、使いやすく感じました。

実視レビュー

どれも良く見える中心像

原点10mmで土星を観望中。鏡筒はBKP130。

昼間の風景、月面、星雲星団などで比較しましたが、中心像はどれも優秀でよく見えます。筆者の眼では違いを感じることはほぼありませんでした。中倍率・低倍率用途としては、どの製品を使用しても十分満足できるでしょう(*)。

(*)この連載で何度も書いていますが、筆者の眼はかなり劣化(白内障・乱視)が進んでいて、中・低倍率の限界性能や、フレアの差はたぶんチェックできていないと思います。若い眼・厳しい眼で見ると違う結果が出ることは十分予測されます。

しかし、今回使用した対物光学系は、一番明るいF値でも5です。F4クラスのニュートン反射など、より明るい光学系の場合は違いが出てくる可能性はあるかもしれません。中心像では明らかな差は確認できませんでしたが、FSQ106EDでの比較では、F5とエクステンダーを使用したF8では、全体的にF8の方が周辺像は良くなりました(*)。

(*)一般的な傾向として、F値の明るい光学系ほどアイピース側の収差もよりシビアになってくるのでしょうか。その意味では、バローレンズやエクステンダーを使用して「対物側のF値を暗くする」ことで眼視パフォーマンスを上げることができると言えるかもしれません。

バランスの良いSWA(70°)原点シリーズ

左:目当てを最も低くした状態 右:目当てを最も高くした状態。調整は少しひねるだけです。

SWA70°原点シリーズの目当ては、上の画像のように少し回転させるだけで繰り出すことができ、眼位置を調整することができます。この機構は便利なのですが、それ以上に原点シリーズは眼位置に寛容で、特に調整しなくても快適に覗くことができました。

スマイスレンズを使用しない接眼レンズは短焦点になるほどアイレリーフが短くなるのですが(*)、逆に眼位置に寛容でラフに眼を置いても全体をカゲリなく見ることができます。その意味でも「使いやすい」接眼レンズです。

(*)一番焦点距離の短い「SWA(70°)原点10mm」でアイレリーフは10mmです。メガネ使用ではちょっと視野全体を見るのは苦しくなります。

ただし、周辺像はそれなりに悪化します。最周辺では像面湾曲と非点収差がやや大きく感じられます(*)。良像範囲は対物側にもよりますが50%〜70%程度です。よりコストをかけてレンズ枚数を増やした製品と差があるのは仕方ありませんが、PENTAX XW20mmと比較してもそれほど悪い数字ではありません。手持ちの他の低価格品と比較するとより良好で、価格を考慮するとパフォーマンスは高いと感じました。コーティングや仕上げも含めて、従来の「激安品」とは一線を画したクオリティです。

(*)後述しますが、周辺像はメガネ着用・非着用によっても大きく変わることがあります。

もう一つ、バローレンズとの相性は良好でした。FSQ106ED(F5)との組み合わせでは、バローレンズを使用した方が周辺像はより良好に感じられました。

広視野でコンパクトなUWA(82°)シリーズ

20cmシュミカセC8にUWA18mm、約110倍でM104を観望中。高倍率で銀河を観望するときでも、広視野アイピースは導入しやすく便利です。

UWAシリーズは見かけ視野82°。広視野を求めるなら、今回レビューした3シリーズではこれ一択です。これが1万円を切る価格というのは驚きです。ただし、アイレリーフが12mmと若干短いため、メガネ着用では視野の端まで覗けない場合もあるかもしれません(*)。

(*)筆者の場合はゴム見口を畳めばちょうど良い眼位置でした。

良像範囲は70〜80%でしょうか。最周辺では急激に星が崩れますが、広視野アイピースの周辺像悪化は、結局は「わざわざ端に視線をやることは少ない」ので、さほど問題ではありません。170g以下というこぶりな筐体はアイピース交換時にジャマになることも少なく、こちらも価格を考えれば大いに使える接眼レンズと感じました。ただし、焦点域が最長でも16mmと低倍率側をカバーしていないのがちょっと残念です。

ただし、眼位置にはシビアで、正確にアイポイントに眼を置かないとカゲリがでます。高倍率で月面を見るときには気になりますが、これは仕方ないでしょう。今回レビューしていない「UWA4mm」ではさらにシビアかもしれません。



歪曲が少なく気持ちの良いUF65°シリーズ

UFシリーズは歪曲収差がよく補正されています。この画像では若干糸巻状ですが、肉眼で見るとほとんど歪曲が感じられず、非常にすっきりした見え方です。iPhone11 広角カメラでコリメート撮影。

UF65°シリーズは開発目標のとおり、地上風景を見た際の「気持ちよさ」はダントツでした。天体用のアイピースは全般に糸巻き型の歪曲が強く、ビルの壁面のような直線物を見ると「目が回る」ように感じられるのですが、UFの歪曲補正は群を抜いています。上のコリメート画像では若干糸巻き傾向ですが、実視の印象ではほぼ直線です(*)。フィールドスコープ用・双眼望遠鏡用の接眼レンズとしては間違いなくイチオシでしょう。

(*)筆者は強度の近視なのでメガネの樽型収差と打ち消し合ったのでしょう。歪曲の「体感値」を正しく評価するにはメガネ着用の有無も重要な要素です。

星見用途でもUFの性能は優秀です。フラットフィールドな対物光学系(FSQ106EDのF5とエクステンダーを使用したF8)では、地上風景の観察では良像範囲は90%以上あるように感じるほどです(点像の星の場合は70〜80%程度)。F6.6のアクロマートのBORG76やF5のニュートン反射BKP130との組み合わせでは主に対物側の像面湾曲のため(*)良像範囲は制限されますが、UF18mmとの組み合わせはより平坦で良好です(*)。

(*)UF18mmとUF15mmは「双眼鏡用の光学系と共用」とのことで、対物側の像面湾曲を補正するフラットナーレンズが入っているそうです。この効果で「フラットフィールドでない」対物光学系との組み合わせがより良好なのかもしれません。フラットフィールドな対物では逆に良くない結果になる懸念がありますが、FSQ106EDで実視した限りでは問題なく、じゅうぶんに平坦でした。

ただし、近視でメガネ非着用時には、かなり大きな像面湾曲を感じます。後述しますが、全般に、メガネ着用・非着用で像面湾曲の傾向がかなり異なるように感じました。その傾向は特にUFでは顕著で、裸眼では像面湾曲がかなり大きくなり良像範囲が狭くなります。この現象は、双眼鏡でも同じ傾向を感じています。ぜひ他の方の体験的・理論的な裏付けを待ちたいと考えています。

この注意点を除けばUFシリーズは非常に良好な周辺像です。後は「見かけ視野が65°」と、決して広視野でないところをどう評価するかでしょう。

視野の広さと歪曲の比較

iPhone11 広角カメラでコリメート撮影。UWA82°の7mmは、スマホのカメラと相性が悪く全視野をカゲリ無く撮ることができませんでした。2枚の画像はカメラの位置を前後に変えて撮ったものです。

参考までに、スマホのカメラを使用したコリメート撮像画像を並べておきます。リファレンスはペンタックスのXW20mmです。

UF65度とUWA82°では、視野の広さと歪曲収差の傾向が対照的です。UFは設計コンセプトどおり、視野は狭めですが、地上を観察しても全く違和感のない像です。UWA82°は強い糸巻型の歪曲が残っていますが、これも視野の広さを重視したことによるものです。

原点70°はPENTAX XW20mmと比較するとわずかに視野が狭いですが(特に10mm)、厳密な測定ではないので誤差の範囲かもしれません。

同焦点なのはUWA(82°)シリーズだけ

コスパが高くよく見える賞月観星の接眼レンズですが、UWA16mmと7mmを除いて(*)同焦点設計ではありません。交換するとピント位置の調整がそれなりに必要です。

(*)16mmと7mmも完全に同じではありません。4mmは使用していないので同焦点かどうかは不明です。

筆者は同焦点であることはとても重要だと思うのですが(*)、なかなか難しいところですね。潔く「同焦点化」を設計目標から外す考え方も、接眼レンズの置かれた現状からみて(**)ありなのかもしれません。

(*)天体をより面白く見るためには、対象に応じた倍率の選択が極めて重要だと筆者は考えています。倍率の変更のたびにピント位置を大きく変える必要があると、倍率変更がおっくうになってしまい、同じ倍率で見続けることになってしまいます。

(**)現実には、たとえば筆者が所有する接眼レンズの場合、焦点位置が同じ製品は一本もありません^^;;;

どんな人に向いているか

「アイピース探訪」でも定番化、脳内ユーザーの声です。年齢、コメントは編集部が創作したもので、登場する人物とは全く関係ありません。フリー素材「PAKUTASO」を使用しています。https://www.pakutaso.com

眼視デビューに

前列:SWA原点(70°)シリーズ 後列:激安品のSVBONY4mm、10mm、プローセル25mm。後列の3本も安くてよく見える製品ですが、良像範囲・視野の広さともに原点シリーズが大きく上回ります。

しつこく「眼視は面白いぞ!」のプロパガンダを繰り返している天リフですが^^;;、眼視観望デビューには最低でも2本、できれば3本の焦点距離の異なる接眼レンズが欲しいもの。数千円の「激安品」を買うのも一手ですが、やはり高価な高性能品には「ならではの価値」があります。とすると、それなりのお値段になってしまします。

そこで「賞月観星」はいかがでしょうか。安く広い焦点域を揃えたいなら「原点シリーズ」の大人買い。五本コンプリートしても3万円以下です。もう少し予算があれば、低倍率用にはUFシリーズ、高倍率用にはUWAシリーズがオススメ。UF24mmならF7の鏡筒で瞳径3.4mm。UWA16mmが税込9,500円、UWA4mmが同8,800円。82°の広視野でこの価格はまさに激安。数万円以上する高性能品と遜色のないしっかりした性能のアイピースがエントリ価格で入手できるのです。

コンパクト広視界、UWAシリーズ

こんなにも大きさが違う、賞月観星の100°アイピースXWAシリーズと、82°アイピースUWAシリーズ。

広視界を極めるなら、前回ご紹介した100°オーバーのXWAシリーズというチョイスもありますが、サイズが超大型。お値段も張る上、「気軽に観望する」という感じではなくなってきます。UWAシリーズなら、82°とじゅうぶんな視野の広さがありながら、170g以下とコンパクト。小型望遠鏡の三脚プレートにも無理なく載ります。

オールラウンド、UFシリーズ

焦点距離20mm前後の接眼レンズは、倍率的に一番使いやすく稼働率が高いレンジです。右は筆者にとって一番稼働率の高いPENTAX XW20。覗きやすくよく見える製品ですが、UF18mmはこれと十分に「正面対抗」できるでしょう。

稼働率の高い一本。眼視観望では、オールラウンドに使える「お気に入りの倍率」の「お気に入りアイピース」をぜひ一本確保しておきたいところ。筆者なら、低倍率寄りのUF18mmかUF24mmをチョイスするでしょう。視野は「激広」ではないですが、良像範囲が広く歪曲の少ない自然な見え方で、どんな対象にでも威力を発揮することでしょう。

双眼望遠鏡と地上観望

http://blog.livedoor.jp/forrest1437/archives/77236765.html

眼視を極めると行き着くのが「双眼」。2つの眼で見る宇宙の姿は、より立体感を感じる最高の体験です。ただし「双眼装置」を使って鏡筒を1本で済ませたとしても、接眼レンズは2本必要です。つまり、お値段もさらに倍、ドン。

でも、賞月観星ならUF18mmを2本揃えても19,000円。諭吉2枚でお釣りがきます。UFシリーズはやや太めですが、24mmでも最大径55mm、よほど眼幅が狭くない限り双眼対応は余裕でしょう。歪曲も少なくほどよい広視界は、双眼にもにうってつけです。

まとめ

賞月観星のアイピースの梱包は、どれもが緩衝材でしっかり巻かれた丁寧なものです。「手書きのイラスト」を含め、商品に対する深い愛情が感じられます。

いかがでしたか?

高性能な接眼レンズは、これまでは「3万円」という価格が一つの目安ではなかったでしょうか。今回レビューした「賞月観星・UWA(82°)」と「賞月観星・UF(65°)」は、それらの半分ないしはそれ以下の低価格。おサイフに優しく「かなりイイ接眼レンズ」が手にできるのです。前回レビューした「XWAシリーズ」同様に、画期的なことでしょう。

さらに「SWA(70°)原点シリーズ」はさらに低価格。眼視観望の間口が大きく下がったと感じました。1万円札が2枚あれば他にできることはいろいろありますが、「ちょっといい接眼レンズ」をぜひ加えてみませんか?貴方の天文ライフが1ランク楽しくなることまでは、天リフが保証します!そんな良い接眼レンズがこれまでよりずっと低価格で手に入れられる「賞月観星」の製品群は、広くオススメできると思います!

おまけ・接眼レンズについての備忘録

今回の検証の中で気がついた、(もしかしたら)一般的な事象(かもしれない)ことについて、簡単に整理しておきます。あくまで経験ベースの話なので、正しくないかもしれません。読者の皆様の追検証やご意見をお待ちしています。

像面湾曲と最適なピント位置

典型的な屈折式天体望遠鏡の収差図。周辺ほどピント位置が内側になり、サジタル・メリディオナル方向のピント位置が異なります。

屈折望遠鏡・反射望遠鏡ともに、一般的な天体望遠鏡の対物光学系には、像面湾曲と非点収差が残存しています。このため、完全に収差が補正されたアイピースであっても、対物側のこの収差によって周辺像は悪化します。

しかし、実際にはこの収差の影響を体感するシーンはあまりありません。ひとつの理由は、倍率がある程度高く実視野が狭ければ(入射角度が浅ければ)収差は急激に減ること、もう一つの理由は人間の眼がある程度の焦点移動を吸収してくれるからです。

ただし、加齢によって眼の焦点調節機能が衰えると後者の働きが期待できなくなり、焦点位置の移動を吸収できなくなってきます。筆者はそれなりの老眼なので、たぶん若い人よりもこの収差に敏感になっていることでしょう。

この問題を低減する手段として「中心でピントを合わせるのではなく、すこし外れたところでピントを合わせる」テクニックがあります。接眼レンズを含めて天文機材の像面湾曲は一般に周辺に行くほど内ピン、つまり対象が遠くにあるのと同じことになります。中心でピントを合わせてしまうと、特に近視の人はそれ以上「遠い」対象にはピントが合わせられなくなります。すこし外れたところでピントを合わせておけば、中心側のピント移動はある程度眼の調整能力が期待できます。こうすることで「みかけの良像範囲」を若干広くすることができました。

メガネ着用・メガネなしの比較

筆者は強度の近視(-10D程度)です。右目は乱視がさほど酷くないので、観望の際にはメガネを外して見ることが多いのですが、メガネの有無で周辺像が大きく変わることに気がつきました。特に「UF(65°)」でその傾向が顕著です。

具体的には、メガネ非着用の場合、周辺の像面湾曲の内ピン傾向が大きくなります。ピントの繰り出し量が変わることが原因なのか、メガネの凹レンズそのものに像面湾曲を補正する働きがあるのか、強度の近視は像面湾曲を伴うのか、理由はよくわかりません。100°アイピースではあまり感じなかったのですが、なぜなのでしょうか。

鏡筒との相性

「Fの明るい鏡筒は接眼レンズを選ぶ」「対物光学系と接眼レンズには相性がある」「バローレンズの使用で像がよりよくなることがある」、これらの言説はネットでもよく見かけます。

今回のレビューでは口径20cm・F10のシュミカセ(C8)、口径10.6cm・F5とF8のフラットフィールド鏡筒(FSQ106ED)、口径13cm・F5のニュートン反射の3機種を使用して比較しました。その中で上記言説の検証を試みたのですが、明確に結論を出すには至りませんでした。

感じたことを以下に「仮説」として提示しておきます。これも、読者の皆様の追検証とご意見をお待ちしています。

  • 今回使用した製品のように一定のパフォーマンスを持った接眼レンズの場合、「相性」はないとはいえないが、大勢に影響があるほどの差はない
  • F値を暗くするエクステンダーやバローレンズは、収差補正が不完全な接眼レンズでは特に有効である
  • 低倍率・広視野・高性能の接眼レンズを使用する場合以外は、対物側のフラットフィールド性はさほど大きな影響を与えない

色とヌケ

「気がついた」というよりも、本記事のレビューの限界です。製品毎の「色」の傾向と「ヌケ」についてはほとんど評価できていません。

「色」については、確かにside by sideで比較すれば「青っぽい」「黄色っぽい」のような違いを感じることはあります。しかし、月のような明るい・白色の天体を見るのでない限り、その差が天体に対して有意な影響を与えると感じたことは、筆者はこれまではありません。このような「色の差(カラーバランス)」については、本連載ではあまり重視していないことをお断りしておきます。逆に「こんなケースでは、色の差がけっこう効いてくるよ!」のような事例があれば、ぜひお寄せください。

「ヌケ」については筆者の眼の限界です。若干白内障気味なので、正確に評価できないのが現状です。なにか良い客観的指標・測定方法があるとよいのですが・・・


  • この記事は賞月観星様に機材貸与を受け、天文リフレクションズ編集部が独自の費用と判断で執筆したものです。文責は全て天文リフレクションズ編集部にあります。
  • 本記事は極力客観的に実視をもとに作成していますが、本記事によって発生した読者様の事象についてはその一切について責任を負いかねますことをご了承下さい。
  • アイピースは使用する鏡筒や接続環、プリズムなどによってピントが出ない場合があります。購入をされる場合は十分に検討ください。接続の組み合わせについてのお問い合わせは、機材をご購入ないしはご購入予定の販売店様にお願いいたします。
  • 記事中の製品名・社名等は各社の商標または登録商標です。
  • 参考文献:「天文アマチュアのための望遠鏡光学・屈折編」 1989 吉田正太郎
  • 機材の価格・仕様は執筆時(2020年4月)のものです。
https://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2020/04/fc6927a4cd7fc6f068de9eb5d3ae4aff-1024x538.jpghttps://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2020/04/fc6927a4cd7fc6f068de9eb5d3ae4aff-150x150.jpg編集部レビューアイピースアイピースアイピース探訪天リフ眼視推進委員会がお送りする「アイピース探訪」シリーズ。第6回は「賞月観星」の個性あふれるアイピースの3ラインナップ「SWA(70°)原点」シリーズ、「UWA(82°)」シリーズ、「UF(65°)」シリーズの一気ご紹介です。 賞月観星・3つのラインナップの特長 「SWA(70°)原点」シリーズ 賞月観星SWA(70°)原点シリーズ接眼レンズ http://blog.livedoor.jp/forrest1437/archives/78710459.html ※上記リンク先の価格は旧価格です。4/5時点ではさらに値下げされています。価格は販売サイトでご確認ください。 「SWA(70°)原点シリーズ」は、70°という広視界でありながら高いコスパ(税込4,200円〜7,200円)を実現した接眼レンズです。レンズ構成はフラットナーレンズを使用した4群5枚(26mmのみ3群5枚)。 賞月観星のアイピースは、どのシリーズにもシンプルな「開発の目標」が掲げられていますが、SWA(70°)原点シリーズの場合は「安い値段で高級接眼レンズの見え味を再現すること」。後で詳しく見ていきますが、この開発目標は十分果たされていると感じました。 「UWA(82°)」シリーズ 賞月観星UWA(82°)シリーズ接眼レンズ  http://blog.livedoor.jp/forrest1437/archives/77785020.html ※上記リンク先の価格は旧価格です。4/5時点ではさらに値下げされています。価格は販売サイトでご確認ください。 「UWA(82°)」シリーズは、開発目標はずばり「世界トップクラスの高級品テレビューNagler(ナグラー)Type6の見え味を再現すること。」「UWA(82°)」シリーズの見かけ視野82°・アイレリーフ12mm・4群7枚という仕様はテレビュー社のNagler Type6シリーズと全く同じです。 一方で価格はNagler(ナグラー)シリーズが実売税込4.5万円前後であるのに対して、「UWA(82°)」シリーズは8,800円〜9,500円と1/4の激安価格。前回レビューしたXWAシリーズも、同じテレビューの「イーソス」シリーズを強く意識し、1/3以下の価格を実現していました。いやがおうにも、UWAシリーズに対する期待も膨らみますね(*)。 (*)筆者は残念ながらナグラーシリーズは一本も所有しておらず、サイドバイサイドでないレビューになることをお許しください。 「UF」シリーズ 賞月観星UFシリーズ天地両用接眼レンズ http://blog.livedoor.jp/forrest1437/archives/77236765.html  ※上記リンク先の価格は旧価格です。4/5時点ではさらに値下げされています。価格は販売サイトでご確認ください。 「UF」シリーズは、見かけ視野は65°とさほど広くない代わりに、視野の平坦さと歪曲の少なさを重視して設計された接眼レンズです。天体用途の眼視光学系では、本来直線であるべき対象が周辺部にいくにしたがって歪んでしまう「歪曲収差」の補正優先度が低く(*)、地上を観察するフィールドスコープ(スポッティングスコープ)や双眼望遠鏡では「気持ち悪さ」を感じてしまうことがあります。 (*)天体には「直線」状の対象がほぼ存在しないことが最大の理由です。 それに対して、UFシリーズは「天体のことだけを想定する」のではなく、地上風景を見る用途も重視しています。開発の目標は「天体用はもちろん、地上景色を観賞するフィールドスコープや大型双眼鏡にも相応しい接眼レンズ。」見かけ視野を抑えめにした代わりに、歪曲収差をより補正し、周辺までフラット(平坦:ピント位置の差が少ない)な視界をより重視した設計です。 レンズ構成はフラットナーレンズを含む5群8枚。価格は税込8,900円〜15,800円。高性能アイピースとしては相当に押さえられた価格です。 外観 コーティング 近年めざましく高性能化したコーティング。全面マルチコートは低価格品でも常識になりつつあります。レビューした3つのラインナップもすべて全面マルチコート。原点シリーズは若干反射率の高い面も含まれているようですが、それでも上質なマルチコートが施されています。   他社製品と比較してみました。一番右は、コーティングに定評のあるペンタックスのXW20mmですが、並べて見ても全く見劣りがしません。低価格にもかかわらず、コーティングは大変優秀です。 内面反射 一方で、内面反射処理を見てみると、鏡胴内に若干反射率の高い場所が存在します。特に原点シリーズはつや消し塗装されていない止めリングも見受けられます。 実際のところ、上記画像のような比較はやや意地悪なテストでもあります。反射率の高い面が存在している場合でも、視野絞りなどで隠れてしまう場所であれば大きな影響は出ません(*)。 (*)視野絞りの大きさ・位置にもよりますが、視野レンズに近い部分ほど問題になる可能性が高くなります。 実際に覗いてみた印象では、内面反射によるフレアは全く感じられませんでした。上の画像は「SWA原点20mm」を装着した状態ですが、確認できる内面反射は対物光学系で発生しているもので、接眼レンズ起因のものはほとんど確認できません。このあたりの違いは見え味には大きな影響はなく、外観上の「仕上げや美観の差(*)」というべきでしょう。 (*)製品を並べて比べると、やはり内部の仕上がりが良い製品の方が、よりよい製品に見えるものです。 重量と大きさ 接眼レンズを選ぶときは、大きさとスリーブサイズはとても重要な要素です。前回ご紹介した100°オーバーのXWAシリーズは巨大ですが、今回の3シリーズはどれもマイルドな大きさです。特にUWAシリーズは見かけ視野が82°もある割にはとても小ぶりで、使いやすく感じました。 実視レビュー どれも良く見える中心像 昼間の風景、月面、星雲星団などで比較しましたが、中心像はどれも優秀でよく見えます。筆者の眼では違いを感じることはほぼありませんでした。中倍率・低倍率用途としては、どの製品を使用しても十分満足できるでしょう(*)。 (*)この連載で何度も書いていますが、筆者の眼はかなり劣化(白内障・乱視)が進んでいて、中・低倍率の限界性能や、フレアの差はたぶんチェックできていないと思います。若い眼・厳しい眼で見ると違う結果が出ることは十分予測されます。 しかし、今回使用した対物光学系は、一番明るいF値でも5です。F4クラスのニュートン反射など、より明るい光学系の場合は違いが出てくる可能性はあるかもしれません。中心像では明らかな差は確認できませんでしたが、FSQ106EDでの比較では、F5とエクステンダーを使用したF8では、全体的にF8の方が周辺像は良くなりました(*)。 (*)一般的な傾向として、F値の明るい光学系ほどアイピース側の収差もよりシビアになってくるのでしょうか。その意味では、バローレンズやエクステンダーを使用して「対物側のF値を暗くする」ことで眼視パフォーマンスを上げることができると言えるかもしれません。 バランスの良いSWA(70°)原点シリーズ SWA70°原点シリーズの目当ては、上の画像のように少し回転させるだけで繰り出すことができ、眼位置を調整することができます。この機構は便利なのですが、それ以上に原点シリーズは眼位置に寛容で、特に調整しなくても快適に覗くことができました。 スマイスレンズを使用しない接眼レンズは短焦点になるほどアイレリーフが短くなるのですが(*)、逆に眼位置に寛容でラフに眼を置いても全体をカゲリなく見ることができます。その意味でも「使いやすい」接眼レンズです。 (*)一番焦点距離の短い「SWA(70°)原点10mm」でアイレリーフは10mmです。メガネ使用ではちょっと視野全体を見るのは苦しくなります。 ただし、周辺像はそれなりに悪化します。最周辺では像面湾曲と非点収差がやや大きく感じられます(*)。良像範囲は対物側にもよりますが50%〜70%程度です。よりコストをかけてレンズ枚数を増やした製品と差があるのは仕方ありませんが、PENTAX XW20mmと比較してもそれほど悪い数字ではありません。手持ちの他の低価格品と比較するとより良好で、価格を考慮するとパフォーマンスは高いと感じました。コーティングや仕上げも含めて、従来の「激安品」とは一線を画したクオリティです。 (*)後述しますが、周辺像はメガネ着用・非着用によっても大きく変わることがあります。 もう一つ、バローレンズとの相性は良好でした。FSQ106ED(F5)との組み合わせでは、バローレンズを使用した方が周辺像はより良好に感じられました。 広視野でコンパクトなUWA(82°)シリーズ UWAシリーズは見かけ視野82°。広視野を求めるなら、今回レビューした3シリーズではこれ一択です。これが1万円を切る価格というのは驚きです。ただし、アイレリーフが12mmと若干短いため、メガネ着用では視野の端まで覗けない場合もあるかもしれません(*)。 (*)筆者の場合はゴム見口を畳めばちょうど良い眼位置でした。 良像範囲は70〜80%でしょうか。最周辺では急激に星が崩れますが、広視野アイピースの周辺像悪化は、結局は「わざわざ端に視線をやることは少ない」ので、さほど問題ではありません。170g以下というこぶりな筐体はアイピース交換時にジャマになることも少なく、こちらも価格を考えれば大いに使える接眼レンズと感じました。ただし、焦点域が最長でも16mmと低倍率側をカバーしていないのがちょっと残念です。 ただし、眼位置にはシビアで、正確にアイポイントに眼を置かないとカゲリがでます。高倍率で月面を見るときには気になりますが、これは仕方ないでしょう。今回レビューしていない「UWA4mm」ではさらにシビアかもしれません。 歪曲が少なく気持ちの良いUF65°シリーズ UF65°シリーズは開発目標のとおり、地上風景を見た際の「気持ちよさ」はダントツでした。天体用のアイピースは全般に糸巻き型の歪曲が強く、ビルの壁面のような直線物を見ると「目が回る」ように感じられるのですが、UFの歪曲補正は群を抜いています。上のコリメート画像では若干糸巻き傾向ですが、実視の印象ではほぼ直線です(*)。フィールドスコープ用・双眼望遠鏡用の接眼レンズとしては間違いなくイチオシでしょう。 (*)筆者は強度の近視なのでメガネの樽型収差と打ち消し合ったのでしょう。歪曲の「体感値」を正しく評価するにはメガネ着用の有無も重要な要素です。 星見用途でもUFの性能は優秀です。フラットフィールドな対物光学系(FSQ106EDのF5とエクステンダーを使用したF8)では、地上風景の観察では良像範囲は90%以上あるように感じるほどです(点像の星の場合は70〜80%程度)。F6.6のアクロマートのBORG76やF5のニュートン反射BKP130との組み合わせでは主に対物側の像面湾曲のため(*)良像範囲は制限されますが、UF18mmとの組み合わせはより平坦で良好です(*)。 (*)UF18mmとUF15mmは「双眼鏡用の光学系と共用」とのことで、対物側の像面湾曲を補正するフラットナーレンズが入っているそうです。この効果で「フラットフィールドでない」対物光学系との組み合わせがより良好なのかもしれません。フラットフィールドな対物では逆に良くない結果になる懸念がありますが、FSQ106EDで実視した限りでは問題なく、じゅうぶんに平坦でした。 ただし、近視でメガネ非着用時には、かなり大きな像面湾曲を感じます。後述しますが、全般に、メガネ着用・非着用で像面湾曲の傾向がかなり異なるように感じました。その傾向は特にUFでは顕著で、裸眼では像面湾曲がかなり大きくなり良像範囲が狭くなります。この現象は、双眼鏡でも同じ傾向を感じています。ぜひ他の方の体験的・理論的な裏付けを待ちたいと考えています。 この注意点を除けばUFシリーズは非常に良好な周辺像です。後は「見かけ視野が65°」と、決して広視野でないところをどう評価するかでしょう。 視野の広さと歪曲の比較 参考までに、スマホのカメラを使用したコリメート撮像画像を並べておきます。リファレンスはペンタックスのXW20mmです。 UF65度とUWA82°では、視野の広さと歪曲収差の傾向が対照的です。UFは設計コンセプトどおり、視野は狭めですが、地上を観察しても全く違和感のない像です。UWA82°は強い糸巻型の歪曲が残っていますが、これも視野の広さを重視したことによるものです。 原点70°はPENTAX XW20mmと比較するとわずかに視野が狭いですが(特に10mm)、厳密な測定ではないので誤差の範囲かもしれません。 同焦点なのはUWA(82°)シリーズだけ コスパが高くよく見える賞月観星の接眼レンズですが、UWA16mmと7mmを除いて(*)同焦点設計ではありません。交換するとピント位置の調整がそれなりに必要です。 (*)16mmと7mmも完全に同じではありません。4mmは使用していないので同焦点かどうかは不明です。 筆者は同焦点であることはとても重要だと思うのですが(*)、なかなか難しいところですね。潔く「同焦点化」を設計目標から外す考え方も、接眼レンズの置かれた現状からみて(**)ありなのかもしれません。 (*)天体をより面白く見るためには、対象に応じた倍率の選択が極めて重要だと筆者は考えています。倍率の変更のたびにピント位置を大きく変える必要があると、倍率変更がおっくうになってしまい、同じ倍率で見続けることになってしまいます。 (**)現実には、たとえば筆者が所有する接眼レンズの場合、焦点位置が同じ製品は一本もありません^^;;; どんな人に向いているか 眼視デビューに しつこく「眼視は面白いぞ!」のプロパガンダを繰り返している天リフですが^^;;、眼視観望デビューには最低でも2本、できれば3本の焦点距離の異なる接眼レンズが欲しいもの。数千円の「激安品」を買うのも一手ですが、やはり高価な高性能品には「ならではの価値」があります。とすると、それなりのお値段になってしまします。 そこで「賞月観星」はいかがでしょうか。安く広い焦点域を揃えたいなら「原点シリーズ」の大人買い。五本コンプリートしても3万円以下です。もう少し予算があれば、低倍率用にはUFシリーズ、高倍率用にはUWAシリーズがオススメ。UF24mmならF7の鏡筒で瞳径3.4mm。UWA16mmが税込9,500円、UWA4mmが同8,800円。82°の広視野でこの価格はまさに激安。数万円以上する高性能品と遜色のないしっかりした性能のアイピースがエントリ価格で入手できるのです。 コンパクト広視界、UWAシリーズ 広視界を極めるなら、前回ご紹介した100°オーバーのXWAシリーズというチョイスもありますが、サイズが超大型。お値段も張る上、「気軽に観望する」という感じではなくなってきます。UWAシリーズなら、82°とじゅうぶんな視野の広さがありながら、170g以下とコンパクト。小型望遠鏡の三脚プレートにも無理なく載ります。 オールラウンド、UFシリーズ 稼働率の高い一本。眼視観望では、オールラウンドに使える「お気に入りの倍率」の「お気に入りアイピース」をぜひ一本確保しておきたいところ。筆者なら、低倍率寄りのUF18mmかUF24mmをチョイスするでしょう。視野は「激広」ではないですが、良像範囲が広く歪曲の少ない自然な見え方で、どんな対象にでも威力を発揮することでしょう。 双眼望遠鏡と地上観望 眼視を極めると行き着くのが「双眼」。2つの眼で見る宇宙の姿は、より立体感を感じる最高の体験です。ただし「双眼装置」を使って鏡筒を1本で済ませたとしても、接眼レンズは2本必要です。つまり、お値段もさらに倍、ドン。 でも、賞月観星ならUF18mmを2本揃えても19,000円。諭吉2枚でお釣りがきます。UFシリーズはやや太めですが、24mmでも最大径55mm、よほど眼幅が狭くない限り双眼対応は余裕でしょう。歪曲も少なくほどよい広視界は、双眼にもにうってつけです。 まとめ いかがでしたか? 高性能な接眼レンズは、これまでは「3万円」という価格が一つの目安ではなかったでしょうか。今回レビューした「賞月観星・UWA(82°)」と「賞月観星・UF(65°)」は、それらの半分ないしはそれ以下の低価格。おサイフに優しく「かなりイイ接眼レンズ」が手にできるのです。前回レビューした「XWAシリーズ」同様に、画期的なことでしょう。 さらに「SWA(70°)原点シリーズ」はさらに低価格。眼視観望の間口が大きく下がったと感じました。1万円札が2枚あれば他にできることはいろいろありますが、「ちょっといい接眼レンズ」をぜひ加えてみませんか?貴方の天文ライフが1ランク楽しくなることまでは、天リフが保証します!そんな良い接眼レンズがこれまでよりずっと低価格で手に入れられる「賞月観星」の製品群は、広くオススメできると思います! おまけ・接眼レンズについての備忘録 今回の検証の中で気がついた、(もしかしたら)一般的な事象(かもしれない)ことについて、簡単に整理しておきます。あくまで経験ベースの話なので、正しくないかもしれません。読者の皆様の追検証やご意見をお待ちしています。 像面湾曲と最適なピント位置 屈折望遠鏡・反射望遠鏡ともに、一般的な天体望遠鏡の対物光学系には、像面湾曲と非点収差が残存しています。このため、完全に収差が補正されたアイピースであっても、対物側のこの収差によって周辺像は悪化します。 しかし、実際にはこの収差の影響を体感するシーンはあまりありません。ひとつの理由は、倍率がある程度高く実視野が狭ければ(入射角度が浅ければ)収差は急激に減ること、もう一つの理由は人間の眼がある程度の焦点移動を吸収してくれるからです。 ただし、加齢によって眼の焦点調節機能が衰えると後者の働きが期待できなくなり、焦点位置の移動を吸収できなくなってきます。筆者はそれなりの老眼なので、たぶん若い人よりもこの収差に敏感になっていることでしょう。 この問題を低減する手段として「中心でピントを合わせるのではなく、すこし外れたところでピントを合わせる」テクニックがあります。接眼レンズを含めて天文機材の像面湾曲は一般に周辺に行くほど内ピン、つまり対象が遠くにあるのと同じことになります。中心でピントを合わせてしまうと、特に近視の人はそれ以上「遠い」対象にはピントが合わせられなくなります。すこし外れたところでピントを合わせておけば、中心側のピント移動はある程度眼の調整能力が期待できます。こうすることで「みかけの良像範囲」を若干広くすることができました。 メガネ着用・メガネなしの比較 筆者は強度の近視(-10D程度)です。右目は乱視がさほど酷くないので、観望の際にはメガネを外して見ることが多いのですが、メガネの有無で周辺像が大きく変わることに気がつきました。特に「UF(65°)」でその傾向が顕著です。 具体的には、メガネ非着用の場合、周辺の像面湾曲の内ピン傾向が大きくなります。ピントの繰り出し量が変わることが原因なのか、メガネの凹レンズそのものに像面湾曲を補正する働きがあるのか、強度の近視は像面湾曲を伴うのか、理由はよくわかりません。100°アイピースではあまり感じなかったのですが、なぜなのでしょうか。 鏡筒との相性 「Fの明るい鏡筒は接眼レンズを選ぶ」「対物光学系と接眼レンズには相性がある」「バローレンズの使用で像がよりよくなることがある」、これらの言説はネットでもよく見かけます。 今回のレビューでは口径20cm・F10のシュミカセ(C8)、口径10.6cm・F5とF8のフラットフィールド鏡筒(FSQ106ED)、口径13cm・F5のニュートン反射の3機種を使用して比較しました。その中で上記言説の検証を試みたのですが、明確に結論を出すには至りませんでした。 感じたことを以下に「仮説」として提示しておきます。これも、読者の皆様の追検証とご意見をお待ちしています。 今回使用した製品のように一定のパフォーマンスを持った接眼レンズの場合、「相性」はないとはいえないが、大勢に影響があるほどの差はない F値を暗くするエクステンダーやバローレンズは、収差補正が不完全な接眼レンズでは特に有効である 低倍率・広視野・高性能の接眼レンズを使用する場合以外は、対物側のフラットフィールド性はさほど大きな影響を与えない 色とヌケ 「気がついた」というよりも、本記事のレビューの限界です。製品毎の「色」の傾向と「ヌケ」についてはほとんど評価できていません。 「色」については、確かにside by sideで比較すれば「青っぽい」「黄色っぽい」のような違いを感じることはあります。しかし、月のような明るい・白色の天体を見るのでない限り、その差が天体に対して有意な影響を与えると感じたことは、筆者はこれまではありません。このような「色の差(カラーバランス)」については、本連載ではあまり重視していないことをお断りしておきます。逆に「こんなケースでは、色の差がけっこう効いてくるよ!」のような事例があれば、ぜひお寄せください。 「ヌケ」については筆者の眼の限界です。若干白内障気味なので、正確に評価できないのが現状です。なにか良い客観的指標・測定方法があるとよいのですが・・・ この記事は賞月観星様に機材貸与を受け、天文リフレクションズ編集部が独自の費用と判断で執筆したものです。文責は全て天文リフレクションズ編集部にあります。 本記事は極力客観的に実視をもとに作成していますが、本記事によって発生した読者様の事象についてはその一切について責任を負いかねますことをご了承下さい。 アイピースは使用する鏡筒や接続環、プリズムなどによってピントが出ない場合があります。購入をされる場合は十分に検討ください。接続の組み合わせについてのお問い合わせは、機材をご購入ないしはご購入予定の販売店様にお願いいたします。 記事中の製品名・社名等は各社の商標または登録商標です。 参考文献:「天文アマチュアのための望遠鏡光学・屈折編」 1989 吉田正太郎 機材の価格・仕様は執筆時(2020年4月)のものです。編集部発信のオリジナルコンテンツ