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ソニー製の最新の4/3サイズセンサーIMX294CJKを搭載した天体用CMOSカメラ、ASI294MC。ようやくベランダで試写できました。そのリザルトと検証結果をレポートします。

ででん。まずはリザルト

Founder Optics FOT85 純正フラットナー F6.6 fl=560mm ASI294MC 8sec*340 LPS-V4 DSSで加算平均、ダーク*100、フラット50、フラットダーク50 ゲイン400 輝度マスク使用

まずは今回の最終リザルト。あの手この手でいじった最終画像ですが、光害地のベランダにしては、なかなか楽しめるできばえになりました。

撮影コンセプト

Founder Optics FOT85にASI294MCと純正フラットナーを装着したところ。ASI294MCにはEOSメスアダプタを装着、フラットナーにはT2/EOSオスアダプタを装着。LPS-V4フィルターはカメラ側のアダプタ内に装着。カメラの位置はドロチューブ根元からかなり遠いですが、ASI294MCはたいへん軽量なのでたわみの心配が少ないのもメリット。

光害地のベランダからの撮影なので、明るいM42の中心部をできるだけ解像感高く撮ることを目標にし、光学系は焦点距離560mmの3枚玉アポFOT85をフラットナーのみで撮影。ASI294MCと組み合わせると焦点距離はフルサイズ換算1120mmになります。

ベランダでの撮影風景。この写真ではASI294MCはFOT85ではなくFSQ106EDに装着されています。赤道儀はSXP、GT40とワテックのビデオカメラでオートガイド。1コマ8秒なのでオートガイドはしなくても問題ないでしょう。

極軸合わせを追い込まないお手軽ベランダ撮影なので、1コマの露出は8秒と短く設定。また、光害カット効果のより高いLPS-V4フィルターを使用。露出不足は否めませんが、ASI294MCの高感度性能に期待し、340枚コンポジットして総露出時間43分です。

カメラはCoolモデルではない非冷却ですが、外気温は約1度と福岡市内にしてはかなり寒い夜でした。冷却モデルであれば、外気温が30度の熱帯夜でも今回くらいのクオリティは出ると考えてよいでしょう。

ダークは100枚を撮影後同じ環境で鏡筒に蓋をして撮影。フラットは翌日iPadを筒先に当てて、同一露出条件の下、50枚を室内で撮影しました。フラットダークも同じ枚数入れています。

ASI294MCの評価は?

詳細は後半部にまとめていますが、総じて非常によい印象です。1回だけの撮影で結論を出すことはできませんが、ダークノイズ・ホットピクセル・クールピクセル・感度ムラのいずれも少なく、使い方と割り切り(*1)によってはダークなしフラットなしでも十分実用になると感じました。

(*1)長時間の露光が不要な明るい対象で、あまり強調しない場合。淡い対象をあぶり出す場合はダークもフラットも必須になると考えられます。

ASI294MCのセンサーサーズは対角約4/3インチ(*2)。フルサイズの半分の長さ、1/4の面積です。昨今、可処分所得の多いマニア層ではフルサイズが全盛ではありますが「センサーはでかければいいというわけではない」ということを今回の撮影で感じました。

(*2)実はASI294MCのサイズはいわゆる4/3センサーよりやや大きく、縦横比も4:3ではなく長辺がすこし長くなっています。

センサーサイズが小さくても、ピクセルサイズ4.63μmという高解像度を生かすことで(D810Aは4.88μm)光学系の性能をフルに発揮した撮影が可能になります。

左が今回撮影した画像、右がAPS-Cサイズ改造デジカメとFSQ106ED+レデューサで撮影した画像。機材も撮影地も画像処理も全く違うのですが、小さなセンサーで大きく撮ることにはちゃんと意味があります。

上の画像は今回撮影したM43の等倍拡大。右は遠征地でFSQ106EDとEOS-Kiss X5で撮影したものです。焦点距離も口径も元画像の画角も全部違いますし、ピントも右は若干甘かったりするのですが、細部の描写は完全に上回っています。

高解像度の小センサーカメラは、淡い広がった対象を撮るにはあまり適さないかもしれませんが、小さな対象を大きく、高精細に撮る目的には適しているといえるでしょう。

これから春にかけて、M81/82やしし座のトリオ、M8、M16、M17といった対象を換算1000mmの拡大で撮ったり、高性能の中望遠レンズで広めの画角での撮影などに試してみる予定です。


検証結果の詳細

筆者はふだんのデジタルカメラでの撮影の際は、ダークはおろかフラットも手抜きすることが多いのですが、今回はまじめに全部撮って、いろいろ検証してみました。

ダークフレーム

ASI294MCの強調無しのダークフレーム画像。

ダークファイルをDSSでLight Frameとしてコンポジットした1枚、100枚の画像(ベイヤー変換されたもの)と、ディベイヤーしていないDSSのMater Dark画像です。

強調なしなのでノイズが少なくて当たり前ではありますが、こんな感じです。

強調してみました。わずかにアンプノイズ(*3)が下辺にありますがこれはPure raw(画像処理エンジンが一切後処理を行わない)であるCMOSカメラの宿命でしょうか。

また、左辺・右辺上部に光線漏れ?のようにも見える筋がありますが、暗黒の室内でカメラを黒布で覆ってダークを撮像しても同じ結果になりました。こちらもアンプノイズのようです。

(*3)ASI294MCをはじめとするCMOSカメラでは、アンプノイズにはけっこうな個体差があるという情報があります。本記事のフラットは編集部の個体固有のものであることをお断りしておきます。
そういった個体差を補正することがダーク補正の目的でもあります。

レベルを切り詰めたダークの1000%拡大画像。左から1枚ディベイヤー画像、100枚コンポジットのディベイヤー画像、DSSが出力するディベイヤーされていない100枚コンポジット画像です。

他のセンサー・カメラと比較しての善し悪しについてはここで言及することはやめておきますが、感覚的には上記の結果は「かなり良い」印象です。

フラットフレーム

ASI294MC+FOT85のフラット画像。
iPadを鏡筒の全面において撮像。上は強調なし、下は強調あり。ゲイン400・露出時間8秒はライトフレームと同じ条件、50枚の画像をダークを入れてDSSでコンポジットしました。

レベルを切り詰め極端に強調してみても、心配していた「クールピクセル」も規則的なパターンもありませんでした。ピクセル単位のセンサーの感度ムラなどを補正する意味でのフラットは必要なさそうです。

むしろフラットダークを引いているのに輝点が残っている上にノイズが多いのが気になります。わざわざ露光条件をLight画像と同じように暗くしてノイズが乗ってしまうくらいなら、十分に露光をかけて(ライトパネルを明るくして)ノイズの少ないフラットにした方が最終品質は良くなるかもしれません。

バイアスフレーム

今回の最終画像には使用していないのですが、参考までにバイアスフレームも撮ってみました(下)。こちらも50枚コンポジットです。

同じレベル調整を施したダークフレーム(上)と比較してみました。この2枚の輝度差が、露出時間8秒で乗ったランダムノイズの平均値ということになります。下辺のアンプノイズ?はバイアス画像には現れていないことから、これは長時間露出による熱ノイズであると推測されます。

バイアスとダークの同じ場所、同じ強調の画像をアニメーションにしてみました。バイアスの時点でも存在している輝点は、ダークにも同じ輝度で存在していることがわかります。これが何を意味するのかはわかりませんが・・・

ダーク・フラットの効果

今回「まじめ」にダーク・フラットを入れて処理したのですが、比較のために、ダーク・フラットの有無による画質の違いを検証してみました。

画像の大域的な「ムラ」を取る効果

画面全体の画像を思い切りレベルを詰めた画像。左がフラット、ダークともになし、右がフラットありです。これだけ強調しているのに周辺減光が目立たないのは小センサーのメリットの一つでであるといえます。

アンプノイズもここまで強調するとけっこう目立ってきますが、ダークを引いた右ではこの2つは無事補正できています。

また、周辺減光とセンサーorフィルター上のゴミは、定石通りフラットを入れた右では補正できました。その代わり、画面中央やや下に大きな円状の暗い丸い部分が出てきました。これは何らかの理由でフラットが合っていないせいでしょう。カメラ側ではなく光学系側の問題ですが、毎度ながらフラットには苦労させられます。

画像の局所的なノイズとムラを取る効果は??

画面中央付近を拡大した画像。左はダークフラットともに「なし」、右は「あり」です。

一目、ノイズレベルに大した違いは見られません。フラット・ダークの有無で微妙な画像のレベルが違うため強調条件が厳密には同じではないのですが、むしろ「なしなし」の方がノイズが少なく感じられるほどです(*4)

(*4)露出時間、ゲイン、強調の度合によっては一概に言えない可能性があります。あくまで今回の撮影条件と処理条件では、です。

輝点ノイズがほとんど視認できないのは、ディザリングと極軸のずれによる写野の回転によって、ノイズが平滑化されたものと推測されます。

上の画像は全画像340枚を比較明合成したもの。左下を中心に視野が回転しているのは極軸のズレによるものです。また、100枚を1セットにして、撮影中4回、ガイド星をわずかにずらすディザリングを行っています。

このようなガイドのズレとセンサー上の同じ位置に出現する輝点・暗点が組み合わされると、イヤな「縞ノイズ」に悩まされるものですが、今回の撮影の場合は「縞ノイズ」はほとんど見られませんでした。これはクールピクセルが極めて少なかったからでしょう。

結局ダークとフラットはいるの?いらないの?

ここまでの検証結果から、ASI294MCについていえることをまとめると、まず今回のような短秒露出・多数枚撮影で「ディザリング」を前提とする限りはノイズを減らす意味でのダーク・フラットはほぼ必要ないいえます。

上の画像は輝点ノイズがダーク減算で消えている例のサンプル。水色の丸で囲んだ部分が輝点ノイズです。PCで拡大しないとたぶんわからないでしょう。

80枚コンポジットでは輝点ノイズはかすかな線になっています。この程度ならディザリングで判別不能になるのもうなずけます。ダーク減算の効果は確かに「あるといえばある」のですが、鑑賞距離で判別するのは不可能でしょう。

一方で、画面全体の「ムラ」を補正する意味のフラットの重要性には変わりはありません。ただし4/3という小さなセンサーで、イヤな「ミラーボックスけられ」のないASI294MCの場合、ソフトでの補正で済ますという考え方は十分あり得ます。

また、強い強調処理をかける場合はアンプノイズを補正する意味でのダークが重要になりそうです。今回はベランダ撮影だったので極端な強調をしていませんが、今後淡い対象でさらに検証予定です。

多数枚コンポジットによる画質向上

80枚コンポジットと340枚コンポジットの比較。当然ではありますが、340枚コンポジットのほうがはるかにノイズが少なく高画質です。

短時間多数枚と長時間少数枚の優劣の比較にはさまざまな議論があり、決定的な結論はまだない感じなのですが、少なくともASI294MCにおいては短時間露出・多数枚のアプローチは十分意味があるといえそうです。

シグマ(σ)クリップの効果

短時間露出・多数枚コンポジットのメリットの一つとして、多数枚のデータを処理する際に統計的な手法を使用して画質を向上させることがあります。広く使われている「シグマ(σ)クリップ」の場合、人工衛星の光跡を消したり、一時的に発生した雲の影響を最小化したりすることが可能になります。

340枚をDSSでコンポジット。Method: Kappa-Sigma (Kappa = X.X, Iterations = 5)

今回の画像でも比較してみました。シグマクリップの方がノイズが少ないだろうという期待だったのですが、意に反して単純な加算平均の方が滑らかになりました。

σ=1.5の場合は約13%、σ=2.0の場合は約5%のデータが、異常値とみなされ最終画像に反映されなくなります。その分ライト画像の情報は減ることになるのですが、この数字以上に差があるよういに感じられます。以前にも他のデジタルカメラを使用してDSSで処理した場合に、同様に加算平均の方がノイズ感が少なく滑らかに感じられることがあったのですが、なぜこのような結果になるのかは不明です。

FOT85について

http://reflexions.jp/blog/ed_tenmon/archives/3494

今回使用した鏡筒です。
日本ではまだユーザーが少ないのですが、非常に高性能な、TOAなどと同じ「分離式3枚玉アポクロマート」です。詳細はリンク先をご参照ください。

遠征地の淡い対象の撮影にも使っていきますので、これからのレポートにご期待ください。


※本連載は星見屋.com様に取材協力をいただいていますが、文責は全て天文リフレクションズ編集部にあります。記事に関するご質問・お問い合わせなどは天文リフレクションズ編集部宛にお願いいたします。

 

http://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2018/02/679ecd15c4fdcbebb6f3ba938a67948e-1024x538.jpghttp://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2018/02/679ecd15c4fdcbebb6f3ba938a67948e-150x150.jpg編集部天体用カメラ  この記事の内容星見屋.com Presents! ソニー製の最新の4/3サイズセンサーIMX294CJKを搭載した天体用CMOSカメラ、ASI294MC。ようやくベランダで試写できました。そのリザルトと検証結果をレポートします。 ででん。まずはリザルト まずは今回の最終リザルト。あの手この手でいじった最終画像ですが、光害地のベランダにしては、なかなか楽しめるできばえになりました。 撮影コンセプト 光害地のベランダからの撮影なので、明るいM42の中心部をできるだけ解像感高く撮ることを目標にし、光学系は焦点距離560mmの3枚玉アポFOT85をフラットナーのみで撮影。ASI294MCと組み合わせると焦点距離はフルサイズ換算1120mmになります。 極軸合わせを追い込まないお手軽ベランダ撮影なので、1コマの露出は8秒と短く設定。また、光害カット効果のより高いLPS-V4フィルターを使用。露出不足は否めませんが、ASI294MCの高感度性能に期待し、340枚コンポジットして総露出時間43分です。 カメラはCoolモデルではない非冷却ですが、外気温は約1度と福岡市内にしてはかなり寒い夜でした。冷却モデルであれば、外気温が30度の熱帯夜でも今回くらいのクオリティは出ると考えてよいでしょう。 ダークは100枚を撮影後同じ環境で鏡筒に蓋をして撮影。フラットは翌日iPadを筒先に当てて、同一露出条件の下、50枚を室内で撮影しました。フラットダークも同じ枚数入れています。 ASI294MCの評価は? 詳細は後半部にまとめていますが、総じて非常によい印象です。1回だけの撮影で結論を出すことはできませんが、ダークノイズ・ホットピクセル・クールピクセル・感度ムラのいずれも少なく、使い方と割り切り(*1)によってはダークなしフラットなしでも十分実用になると感じました。 (*1)長時間の露光が不要な明るい対象で、あまり強調しない場合。淡い対象をあぶり出す場合はダークもフラットも必須になると考えられます。 ASI294MCのセンサーサーズは対角約4/3インチ(*2)。フルサイズの半分の長さ、1/4の面積です。昨今、可処分所得の多いマニア層ではフルサイズが全盛ではありますが「センサーはでかければいいというわけではない」ということを今回の撮影で感じました。 (*2)実はASI294MCのサイズはいわゆる4/3センサーよりやや大きく、縦横比も4:3ではなく長辺がすこし長くなっています。 センサーサイズが小さくても、ピクセルサイズ4.63μmという高解像度を生かすことで(D810Aは4.88μm)光学系の性能をフルに発揮した撮影が可能になります。 上の画像は今回撮影したM43の等倍拡大。右は遠征地でFSQ106EDとEOS-Kiss X5で撮影したものです。焦点距離も口径も元画像の画角も全部違いますし、ピントも右は若干甘かったりするのですが、細部の描写は完全に上回っています。 高解像度の小センサーカメラは、淡い広がった対象を撮るにはあまり適さないかもしれませんが、小さな対象を大きく、高精細に撮る目的には適しているといえるでしょう。 これから春にかけて、M81/82やしし座のトリオ、M8、M16、M17といった対象を換算1000mmの拡大で撮ったり、高性能の中望遠レンズで広めの画角での撮影などに試してみる予定です。 検証結果の詳細 筆者はふだんのデジタルカメラでの撮影の際は、ダークはおろかフラットも手抜きすることが多いのですが、今回はまじめに全部撮って、いろいろ検証してみました。 ダークフレーム ASI294MCの強調無しのダークフレーム画像。 ダークファイルをDSSでLight Frameとしてコンポジットした1枚、100枚の画像(ベイヤー変換されたもの)と、ディベイヤーしていないDSSのMater Dark画像です。 強調なしなのでノイズが少なくて当たり前ではありますが、こんな感じです。 強調してみました。わずかにアンプノイズ(*3)が下辺にありますがこれはPure raw(画像処理エンジンが一切後処理を行わない)であるCMOSカメラの宿命でしょうか。 また、左辺・右辺上部に光線漏れ?のようにも見える筋がありますが、暗黒の室内でカメラを黒布で覆ってダークを撮像しても同じ結果になりました。こちらもアンプノイズのようです。 (*3)ASI294MCをはじめとするCMOSカメラでは、アンプノイズにはけっこうな個体差があるという情報があります。本記事のフラットは編集部の個体固有のものであることをお断りしておきます。 そういった個体差を補正することがダーク補正の目的でもあります。 レベルを切り詰めたダークの1000%拡大画像。左から1枚ディベイヤー画像、100枚コンポジットのディベイヤー画像、DSSが出力するディベイヤーされていない100枚コンポジット画像です。 他のセンサー・カメラと比較しての善し悪しについてはここで言及することはやめておきますが、感覚的には上記の結果は「かなり良い」印象です。 フラットフレーム ASI294MC+FOT85のフラット画像。 iPadを鏡筒の全面において撮像。上は強調なし、下は強調あり。ゲイン400・露出時間8秒はライトフレームと同じ条件、50枚の画像をダークを入れてDSSでコンポジットしました。 レベルを切り詰め極端に強調してみても、心配していた「クールピクセル」も規則的なパターンもありませんでした。ピクセル単位のセンサーの感度ムラなどを補正する意味でのフラットは必要なさそうです。 むしろフラットダークを引いているのに輝点が残っている上にノイズが多いのが気になります。わざわざ露光条件をLight画像と同じように暗くしてノイズが乗ってしまうくらいなら、十分に露光をかけて(ライトパネルを明るくして)ノイズの少ないフラットにした方が最終品質は良くなるかもしれません。 バイアスフレーム 今回の最終画像には使用していないのですが、参考までにバイアスフレームも撮ってみました(下)。こちらも50枚コンポジットです。 同じレベル調整を施したダークフレーム(上)と比較してみました。この2枚の輝度差が、露出時間8秒で乗ったランダムノイズの平均値ということになります。下辺のアンプノイズ?はバイアス画像には現れていないことから、これは長時間露出による熱ノイズであると推測されます。 バイアスとダークの同じ場所、同じ強調の画像をアニメーションにしてみました。バイアスの時点でも存在している輝点は、ダークにも同じ輝度で存在していることがわかります。これが何を意味するのかはわかりませんが・・・ ダーク・フラットの効果 今回「まじめ」にダーク・フラットを入れて処理したのですが、比較のために、ダーク・フラットの有無による画質の違いを検証してみました。 画像の大域的な「ムラ」を取る効果 画面全体の画像を思い切りレベルを詰めた画像。左がフラット、ダークともになし、右がフラットありです。これだけ強調しているのに周辺減光が目立たないのは小センサーのメリットの一つでであるといえます。 アンプノイズもここまで強調するとけっこう目立ってきますが、ダークを引いた右ではこの2つは無事補正できています。 また、周辺減光とセンサーorフィルター上のゴミは、定石通りフラットを入れた右では補正できました。その代わり、画面中央やや下に大きな円状の暗い丸い部分が出てきました。これは何らかの理由でフラットが合っていないせいでしょう。カメラ側ではなく光学系側の問題ですが、毎度ながらフラットには苦労させられます。 画像の局所的なノイズとムラを取る効果は?? 画面中央付近を拡大した画像。左はダークフラットともに「なし」、右は「あり」です。 一目、ノイズレベルに大した違いは見られません。フラット・ダークの有無で微妙な画像のレベルが違うため強調条件が厳密には同じではないのですが、むしろ「なしなし」の方がノイズが少なく感じられるほどです(*4)。 (*4)露出時間、ゲイン、強調の度合によっては一概に言えない可能性があります。あくまで今回の撮影条件と処理条件では、です。 輝点ノイズがほとんど視認できないのは、ディザリングと極軸のずれによる写野の回転によって、ノイズが平滑化されたものと推測されます。 上の画像は全画像340枚を比較明合成したもの。左下を中心に視野が回転しているのは極軸のズレによるものです。また、100枚を1セットにして、撮影中4回、ガイド星をわずかにずらすディザリングを行っています。 このようなガイドのズレとセンサー上の同じ位置に出現する輝点・暗点が組み合わされると、イヤな「縞ノイズ」に悩まされるものですが、今回の撮影の場合は「縞ノイズ」はほとんど見られませんでした。これはクールピクセルが極めて少なかったからでしょう。 結局ダークとフラットはいるの?いらないの? ここまでの検証結果から、ASI294MCについていえることをまとめると、まず今回のような短秒露出・多数枚撮影で「ディザリング」を前提とする限りはノイズを減らす意味でのダーク・フラットはほぼ必要ないといえます。 上の画像は輝点ノイズがダーク減算で消えている例のサンプル。水色の丸で囲んだ部分が輝点ノイズです。PCで拡大しないとたぶんわからないでしょう。 80枚コンポジットでは輝点ノイズはかすかな線になっています。この程度ならディザリングで判別不能になるのもうなずけます。ダーク減算の効果は確かに「あるといえばある」のですが、鑑賞距離で判別するのは不可能でしょう。 一方で、画面全体の「ムラ」を補正する意味のフラットの重要性には変わりはありません。ただし4/3という小さなセンサーで、イヤな「ミラーボックスけられ」のないASI294MCの場合、ソフトでの補正で済ますという考え方は十分あり得ます。 また、強い強調処理をかける場合はアンプノイズを補正する意味でのダークが重要になりそうです。今回はベランダ撮影だったので極端な強調をしていませんが、今後淡い対象でさらに検証予定です。 多数枚コンポジットによる画質向上 80枚コンポジットと340枚コンポジットの比較。当然ではありますが、340枚コンポジットのほうがはるかにノイズが少なく高画質です。 短時間多数枚と長時間少数枚の優劣の比較にはさまざまな議論があり、決定的な結論はまだない感じなのですが、少なくともASI294MCにおいては短時間露出・多数枚のアプローチは十分意味があるといえそうです。 シグマ(σ)クリップの効果 短時間露出・多数枚コンポジットのメリットの一つとして、多数枚のデータを処理する際に統計的な手法を使用して画質を向上させることがあります。広く使われている「シグマ(σ)クリップ」の場合、人工衛星の光跡を消したり、一時的に発生した雲の影響を最小化したりすることが可能になります。 今回の画像でも比較してみました。シグマクリップの方がノイズが少ないだろうという期待だったのですが、意に反して単純な加算平均の方が滑らかになりました。 σ=1.5の場合は約13%、σ=2.0の場合は約5%のデータが、異常値とみなされ最終画像に反映されなくなります。その分ライト画像の情報は減ることになるのですが、この数字以上に差があるよういに感じられます。以前にも他のデジタルカメラを使用してDSSで処理した場合に、同様に加算平均の方がノイズ感が少なく滑らかに感じられることがあったのですが、なぜこのような結果になるのかは不明です。 FOT85について http://reflexions.jp/blog/ed_tenmon/archives/3494 今回使用した鏡筒です。 日本ではまだユーザーが少ないのですが、非常に高性能な、TOAなどと同じ「分離式3枚玉アポクロマート」です。詳細はリンク先をご参照ください。 遠征地の淡い対象の撮影にも使っていきますので、これからのレポートにご期待ください。 ※本連載は星見屋.com様に取材協力をいただいていますが、文責は全て天文リフレクションズ編集部にあります。記事に関するご質問・お問い合わせなどは天文リフレクションズ編集部宛にお願いいたします。  編集部発信のオリジナルコンテンツ