ポータブルvsコンパクト昭和の時代からの呼び名「ポータブル赤道儀」。一方「星ナビ」誌は「コンパクト赤道儀」という呼び名を全面に押し出しています。
どっちが正しいの?どっちがわかりやすいの?なんでいろんな呼び名があるの?そんな疑問について考えてみました。

 

*2017/2/9 「読者の声」を追記しました。

「星ナビ」誌は「コンパクト赤道儀」推し

「星ナビ」の最新号。
特集は「コンパクト赤道儀で星空を撮る」。

ん??「コンパクト赤道儀」??「ポータブル赤道儀」じゃなかったのか?

というわけで、反射的にこんなツイートをしてしまいました。

でも、いろいろ調べたり知人にお話をお聞きすると、どうやら「星ナビ」誌はかなり前から「コンパクト赤道儀」という呼び名を推しておられたようです。伝聞なので正確ではありませんが、星ナビ誌によると

「星景写真や星野写真を撮影することを主目的として製作された、赤経軸のみを持つ小型の赤道儀」

を「コンパクト赤道儀」と定義されているそうです。

 

星ナビ誌がこの呼称をどの時点でどう定義されたのかは調査できていませんが、2013年6月号に「コン赤」という記事がありました。

アストロアーツ・星ナビ6月号は「コンパクト赤道儀で星の写真を撮る」
http://www.astroarts.co.jp/news/2013/05/01hoshinavi/index-j.shtml

「ポータブル赤道儀」の定義と由来

一方で、「ポータブル赤道儀」の定義はどうなのでしょうか。

Wikipedia ポータブル赤道儀
https://ja.wikipedia.org/wiki/ポータブル赤道儀

Wikipediaのリンクを貼りましたが、「一般的な定義」という記述がすでに一般性を欠いていそうな感じなので言及は避け、あえて編集部の独断で定義するとこうなります。

「星景写真や星野写真を撮影することを主目的として製作された、可搬性に優れた小型の赤道儀」

「写真撮影用」「持ち運びできる大きさ」この2点がポイントです。正直いって星ナビさんの定義と大差ありません。

これも編集部の独断ですが、現在においては「ポータブル赤道儀」「コンパクト赤道儀」という呼称が指すものは実質的には同じものといえます。

なお、ポータブル赤道儀の歴史的背景については、元天文ガイド編集長の高槻さんのブログに記述があります。本稿の趣旨とは若干ずれますが、ご一読をおすすめします。

星爺から若人へ・ポータブル赤道儀という用語
http://tentai.asablo.jp/blog/2015/06/02/7660478


それが縁で誠文堂新光社の天文ガイド編集部に就職したら、最初に命じられた仕事が『ポータブル赤道儀の作り方』という別冊の編集でした。この類の本はよほど売れたのでしょう。
この頃にはポータブル赤道儀(略してポタセキ)の名称は天文ファンに周知されて独り歩きを始め、小型の簡易赤道儀や間に合わせの自作赤道儀のことと思われていたようでした。

「ポータブル」は死語?

ポータブルという日本語の元になった「Portable」という言葉は「持ち運びできる」「携帯用の」という意味ですが、これまで多くの商品の接頭語として「持ち運びできるようになった新製品」に付与されてきました。

ところが、現代では多くのものが「携帯可能」であることが当たり前になり、「ポータブル」という接頭語には新鮮味が少なくなってきているように感じます。

Wikipedia・ポータブル
https://ja.wikipedia.org/wiki/特別:前方一致ページ一覧/ポータブル
画面キャプチャ・編集部

このリストはWikipediaによる「ポータブル」で始まるものの一覧ですが、多くのものがもう「昔のもの」になってしまっています。

星ナビ誌が「コンパクト赤道儀」という呼称を推すようになったのは、「昭和の天文ファンの自作赤道儀」というイメージを脱ぎ捨てて「新時代の星空撮影用のツール」というイメージを打ち出すためだったものと推察します。

「ポータブル」という言葉は、今や一般的にも赤道儀に対しても、古くさいイメージがぬぐえなくなってきているのではないでしょうか。

海外ではどうなのか

では、海外ではどうでしょうか。

結論からいって、海外では「ポータブル赤道儀」という用語はほぼ使われていません。Amazon.comを「portabe Equatorial」で検索すると結果はたったの18件。その半分近くは日本製品の輸入品です。

体が大きい外国人にとっては日本人ほど「ポータブル」に価値を見いださないという理由もありますがそもそも「赤道儀」という呼び方もあまりされていません。赤道儀も経緯台も、商品カテゴリ的には「Mount(架台)」です。

最近は自動導入の架台も増えていることもあり「赤道儀」「経緯台」でカテゴリを分けても、ユーザーにとってはあまり利便性はないのかもしれませね。

また、日本でメジャーなポータブル赤道儀である「ビクセン・ポラリエ」をAmazon.comで検索してみるとPolarie Star Tracker 」という名前になっています。この「Star Tracker(スター・トラッカー)」という名称は、他の製品でも割と使われているようです。

でもやっぱり「ポータブル赤道儀」・・・

日本では「ポータブル赤道儀」「コンパクト赤道儀」のどちらの名前が多いのでしょうか。

Google検索してみました。

ポータブル赤道儀

画面キャプチャ:編集部

コンパクト赤道儀

画面キャプチャ:編集部

ヒット件数はほんのわずかだけ「コンパクト赤道儀」が多いのですが、記事タイトルには上位2件目ですでに「コンパクト赤道儀」ではなく「ポータブル赤道儀」が・・・

おそらく、SEOの設定で皆「コンパクト赤道儀」もキーワードに設定しているのでしょう。やはりコンパクト赤道儀という呼称はあまり浸透していないようです。

では、どう呼ぶのがいいの?

「ポータブル赤道儀」という名前は古くさい。でも、古くからの天文ファンには広く浸透していて、現状世の中での情報量は「ポータブル赤道儀」が大きく優位。

そもそも「赤道儀」という呼び名自体が、どうも小難しくて「これから天体写真を始めたい人」向きには、覚えにくいしキャッチーでもない・・・

困った。さて、どうしよう・・・?

この件、ビクセンがポラリエを「星空雲台」と呼んでいたり、TOAST社は「モバイル赤道儀」、各社苦労されているようですね。。

うーん、残念。あの「星ナビ」が「コンパクト赤道儀」という呼び名を定着させられないくらいですから「新しいいい呼び名」を今から考えて定着させるのは、まだ難しいようです。

まとめ

結論のない話になってしまいましたが、言いたかったことは一つです。

製品名はマーケティング戦略の体現である

誰にどんなイメージと用途を訴求したいのか。製品名はその体現であるべきです。これまでの天文趣味層にアピールするだけでいいなら「ポータブル赤道儀」でぜんぜんかまいませんが、新しいユーザー層を開拓したいのであれば、もっと呼びやすい・親しみやすい名前を提案するか、割り切って「ポータブル赤道儀」という呼び名を親しみやすいように「刷り込んで」いくしかありません。

というわけで、天リフでは今後も「ポータブル赤道儀」という言葉を使ってゆくこととしますが、誰かいい名前を考えてくれませんかね・・・

読者の声

本記事に寄せられた読者様の声です。天リフTwitterフォローワー様限定なので、一定のバイアスがかかっている前提でごらんください。

コン>ポタ?ポタ>コン?
この感覚も人によって違うようです。編集部ではポタ>コンの認識でしたが、これは往年の名機タカハシのP型赤道儀(PはポータブルのP)の影響のせいかもしれません。

若者が「ポタ赤」をカッコイイと感じるかどうかは別として、おじさん世代は「ポタ赤」には独特の響きが感じられますね。

個人的には「コン赤」はカッコイイとは思えないのですが・・それを言い出すと「コンデジ」もたいがいカッコワルイのですが。