みなさんこんにちは!星空撮影で「ソフトフィルター」は使用されていますか?

サイトロンジャパン社から5月19日に「スターエンハンサー」が発売になります。明るい星をほんのわずかに滲ませて大きくする「ソフトフィルター」の効果と、ナトリウム灯・水銀灯などの「空に変な色かぶりをもたらす人工光」の影響を低減させる「光害カットフィルター」の効果を兼ね備えた待望の製品です。

シュミット・スターエンハンサー
https://www.syumitto.jp/SHOP/EN-49S-82S.html

本記事では、天リフ編集部による実写比較(*)と合わせて「スターエンハンサー」の効果と特徴、使いこなしの勘所を解説します!

(*)使用したものは「スターエンハンサー」の試作版となります。製品版とは若干異なる可能性があります。

その効果は?あり/なしの比較

EOS 6D(SEO-SP4天体改造) シグマ24mmF1.4Art F2.8 30秒 SWAT赤道儀で恒星時追尾 熊本県産山村で撮影

左がフィルターなし、右がフィルターあり。カラーバランスと露出補正は個別に行いましたが、他の現像条件は同じ。ソフトフィルターなしでは目立たなかったオリオン座やシリウスがはっきりとした存在感となり、星の滲みが鮮やかに色づきました。

赤い星雲の出方には顕著な差はありませんが、ほんの気持ちだけフィルターありの方がバーナードループが濃い印象。何より大きな違いは地上付近の街明かり。フィルターなしでは白飛びしてしまうほどですが、スターエンハンサーを使用するとかなりマイルドになっています。

EOS 6D(SEO-SP4天体改造) シグマ24mmF1.4Art F2.8 30秒 SWAT赤道儀で恒星時追尾 熊本県産山村で撮影

こちらは全く同一の現像条件での比較。フィルターなしの画像のヒストグラムのRGBの山を揃えました。地上付近の街明かりは黄色と緑色が強くなっていて、これは主にナトリウム灯と水銀灯によるものだと思われます。それが、スターエンハンサーを使用することでより自然になっていることがわかります(*)。

(*)写真のレタッチ(画像処理)に慣れた人なら、カラーバランスと輝度は自由に調整できるので、この画像の色の違いは「良い悪い」の問題ではありません。このフィルターが「どんな光を透過(吸収)するか」を見ていただくためのものです。

スターエンハンサーを使用すると、ほんのわずかに暗めになっていることにも注目。スターエンハンサーの露出倍数は体感値で1/3〜1/2程度と感じました。イヤな色かぶりの元になる市街光を吸収することはメリットですが、星の光もその分減ってしまう(*)ことは大前提として受け入れる必要があります。

(*)とはいえ「強い光害カットフィルター」と比較するとほんのわずかで、画質の悪化を気にするほどの違いではありませんでした。

ごく弱いソフト効果

EOS 6D(SEO-SP4天体改造) シグマ24mmF1.4Art F2.8 30秒 SWAT赤道儀で恒星時追尾 熊本県産山村で撮影

上の画像はソフト効果の比較。スターエンハンサーのソフト効果は、ケンコー・トキナー社の「プロソフトンクリア」とほぼ同じという結果になりました。「プロソフトンクリア」は「効果がより弱いものを」とのユーザーの声を受けて発売された製品で、星空写真界隈で人気のある製品です(*)。その意味で「スターエンハンサー」のソフト効果も「ちょうどいい」加減であるといえます。

(*)「星をどのくらい滲ませたいか」は個人の好みもあり正解はないのですが、地上風景にある街灯などが「滲みすぎる」とせっかくの雰囲気を損なうことがあります。最適なソフト効果は、地上風景と星のバランスで判断するのがよいかもしれません。

これくらいがちょうどいい!星景写真の新標準・ケンコー プロソフトンクリア

2つの機能を併せ持つメリット

スターエンハンサーが「光害カット」効果と「(ちょうどいい)ソフト効果」の両方を合わせ持つことはわかりました。でも、2枚の別のフィルターであるほうが、組み合わせの自由度が高まるのでは?」という疑問が湧いてきます。2つの効果を「1枚で」実現することにはどんなメリットがあるのでしょうか?「

周辺のケラレが少ない

EOS 6D(SEO-SP4天体改造) シグマ24mmF1.4Art F2.8 30秒 SWAT赤道儀で恒星時追尾 熊本県産山村で撮影

一つめのメリットは「2枚重ねの弊害」を回避できることです。フィルターを2枚重ねしたときに星空の撮影で一番問題になるのは、広角・超広角レンズの場合の周辺のケラレ。

上の画像はやや強調したものですが、フィルターを2枚重ねすると四隅のケラレ(陰り)が大きくなっていることがわかります。最近のフィルター枠は一昔前よりも薄枠化が進んではいるのですが、それでも2枚重ねるとケラレてしまいます。

フィルター脱着の面倒が少ない

左がプロソフトンクリア+スターリーナイトフィルター。右がスターエンハンサー(試作品)

とはいえ、周辺の(わずかな)ケラレや画質悪化は「気にしない」ことも可能なレベルではあります。筆者が使用して一番感じたのは「使いやすい」ことでした。2枚のフィルターを併用するのは正直いって「面倒くさい」です。ねじ込んで重ねるのも面倒。外すのも面倒。2枚重ねするとフィルターケースに入らないし。バッグからフィルターを探すのも面倒。露よけ対策も面倒。1枚になるとこんなに楽チンなのか、、ひしと感じました。

実は筆者の場合この「面倒くささ」が、これまでソフトフィルターと光害カットフィルターをあまり併用しない理由でした。これが一枚になるのなら、今後はレンズに付けっぱなしで「常用」してもいいくらいです。

星空撮影をこれから始めようという方、これからソフトフィルターも試してみようかな?という方には、断然「スターエンハンサー」をオススメします。



2枚重ねで使う場合との価格差は?

気になるお値段はどうでしょうか。「スターエンハンサー」の実売価格(*1)は52mm径が7,524円、72mm径で10,296円。似た機能を持つケンコー・トキナー社の「プロソフトンクリア」がネット通販(*2)では52mm径が3,600円、72mm径で5,590円、「スターリーナイトフィルター」が52mm径が 円、72mm径で6,220円。

(*1)サイトロンジャパンの直営ショップ・シュミットで2023年5月12日現在
(*2)Amazon.co.jpで2023年5月12日現在

うーん、これは微妙^^; 52mmは別々に買うのがわずかに安く、72mmは1枚で買う方が安くなりました。一消費者としては「別々に買うよりもせめて2-3割は安くしてほしい!」と思いますが、これは市場が決めることなので(*)ただ受け入れるのみです。価格と費用対効果は、皆様のお考えでご判断ください。筆者から申し上げられることは「販売価格をよく調べてから買おうね!」のみです。

(*)フィルターはどちらかというと希望小売価格と実売価格の差が大きな商品です。

ケンコー・トキナー社の「スターリーナイト プロソフトン」

「スターエンハンサー」は今年のCP+2023で発表された製品なのですが、同時にケンコー・トキナー社からも全く同じコンセプトの製品「スターリーナイト プロソフトン」が発表されています。会場やネットからは「同じ製品なの?」という質問が多くありましたが、この2つは明確に別の製品です(*)。

(*)Webや雑誌上でも「それぞれが独自に企画・開発した」というコメントがありました。

左が「スターリーナイト」右が「スターエンハンサー」。スターエンハンサーの方が青みを帯びています。

「スターリーナイト プロソフトン」は本記事制作時点では未発売ですが「スターリーナイトフィルター」と「プロソフトンクリア」の機能を併せ持つ、とのことです。ソフト効果は「スターエンハンサー」とほぼ同等として、光害カット特性はどう違うのでしょうか。

EOS 6D(SEO-SP4天体改造) シグマ24mmF1.4Art F2.8 30秒 SWAT赤道儀で恒星時追尾 熊本県産山村で撮影

同一の現像条件で比較してみました。ほぼフィルターの外見上通りの差で、スターエンハンサーは青みがかった色になります。地平線近くの市街光の明るさは同じくらいで、光害カット効果には大差がないようです。

EOS 6D(SEO-SP4天体改造) シグマ24mmF1.4Art F2.8 30秒 SWAT赤道儀で恒星時追尾 熊本県産山村で撮影

カラーバランスを個別に調整して、同じ色味になるようにしてみました。ほとんど同じで、ブラインドテストに正解できる自信は全くありません^^;;; 少しくらいのカラーバランスの差はレタッチで調整できてしまうので、中級レベルのレタッチ技術があればこの2つには事実上差はないといえるでしょう。

しかし、星空の写真では「青系」の空の色が好まれる傾向にあります。レタッチ無しの撮って出しの色みは、スターエンハンサーの方が好印象です。「撮って出しでもいい感じになる」という意味では、スターエンハンサーの方が初心者に向いているのかもしれません。

後は価格です。ここまでの検証からは、どちらかが決定的に安ければそちらがオススメ!になりそうですが、ケンコー・トキナー社から「スターリーナイト プロソフトン」が発売されてからのお楽しみです。

実写作例

作例を少しばかり。

2月の中旬。ZTF彗星を撮影するために、熊本県のくじゅう周辺に遠征しました。撮影後、あちこちを回って星景撮影。フットワーク良く星空を撮るには、フィルターの付け外しの面倒は考えずにすませたいもの。24mm広角レンズに「スターエンハンサー」を装着して、一本勝負で撮りました。

EOS 6D(SEO-SP4天体改造) シグマ24mmF1.4Art F2.2 20秒 固定撮影 熊本県産山村で撮影 スターエンハンサー使用

2本の電線の間にこと座が。低空が市街光に照らされているこんな条件下は「スターエンハンサー」の一番の得意分野です。

 

EOS 6D(SEO-SP4天体改造) シグマ24mmF1.4Art F2.8 30秒 固定撮影 熊本県産山村で撮影 スターエンハンサー使用

ようやく昇ってきたさそり座。その右はおおかみ座とケンタウルス座です。ソフトフィルターで星を滲ませると、ω星団と星の区別がつきにくくなりますが、ω星団はどれだかわかるでしょうか?

EOS 6D(SEO-SP4天体改造) シグマ24mmF1.4Art F2.5 15秒 固定撮影 熊本県産山村で撮影 スターエンハンサー使用

昇る月と夏の銀河。ごく弱いソフトフィルターなら、月が写野に入っても滲みすぎることがなく、星座を強調するソフト効果を併用できます。この状況では光害カット効果は無くても大きな問題にはならないのですが「常用フィルター」なのでこれでアリです。

まとめ

EOS 6D(SEO-SP4天体改造) シグマ24mmF1.4Art F2.2 10秒,0.6秒 固定撮影 熊本県産山村で撮影 スターエンハンサー使用 峠に上がると、もう一度月の出が見られました。多段合成で月の形を出しています。普通ならソフトフィルターも光害カットも使わない条件かもしれませんが、ソフトフィルターの効果でさそり座のS字が明瞭になりました。

いかがでしたか?

この10年、天体写真・星空写真界隈では、フィルターワークの重要性に対する認識が大きく上がってきています。様々な特性のフィルターを、状況と目的に合わせて使い分けることで、より自由な表現とクオリティの高い作品が作り込めるようになりました。その中でも「ソフトフィルター」と「(色ガラス系)光害カットフィルター」は、初心者でも使いやすく、わかりやすい効果があります。

その2つの機能を合わせ持った「スターエンハンサー」は、これからの星空撮影の常用フィルターといえるかもしれません。フィルターを使いこなして、楽しい天文ライフを!うまく使って素晴らしい作品をゲットしてくださいね!


  • 本記事は株式会社サイトロンジャパン様よりサンプル提供を受け、天文リフレクションズ編集部が独自の費用と判断で作成したものです。文責は全て天文リフレクションズ編集部にあります。
  • 記事に関するご質問・お問い合わせなどは天文リフレクションズ編集部宛にお願いいたします。
  • 製品の購入およびお問い合わせはメーカー様・販売店様にお願いいたします。
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  • 特に注記のない画像は編集部で撮影したものです。
  • 記事中の製品仕様および価格は執筆時(2023年5月)のものです。
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https://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2023/05/fc6927a4cd7fc6f068de9eb5d3ae4aff-1-1024x538.jpghttps://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2023/05/fc6927a4cd7fc6f068de9eb5d3ae4aff-1-150x150.jpg編集部フィルターフィルターみなさんこんにちは!星空撮影で「ソフトフィルター」は使用されていますか? サイトロンジャパン社から5月19日に「スターエンハンサー」が発売になります。明るい星をほんのわずかに滲ませて大きくする「ソフトフィルター」の効果と、ナトリウム灯・水銀灯などの「空に変な色かぶりをもたらす人工光」の影響を低減させる「光害カットフィルター」の効果を兼ね備えた待望の製品です。 光害カット・ソフトフィルター「スターエンハンサー」5/19(金)発売。サイズは49mm〜82mmまでの9種類。「サイトロンジャパン新潟胎内工場で生産」の「メイド・イン・ジャパン」。二枚重ねによる広角レンズでのケラレが発生しにくい。 シュミットブログよりピックアップ。 https://t.co/yfHOIelWrc — 天リフ編集部 (@tenmonReflexion) May 12, 2023 シュミット・スターエンハンサー https://www.syumitto.jp/SHOP/EN-49S-82S.html 本記事では、天リフ編集部による実写比較(*)と合わせて「スターエンハンサー」の効果と特徴、使いこなしの勘所を解説します! (*)使用したものは「スターエンハンサー」の試作版となります。製品版とは若干異なる可能性があります。 その効果は?あり/なしの比較 左がフィルターなし、右がフィルターあり。カラーバランスと露出補正は個別に行いましたが、他の現像条件は同じ。ソフトフィルターなしでは目立たなかったオリオン座やシリウスがはっきりとした存在感となり、星の滲みが鮮やかに色づきました。 赤い星雲の出方には顕著な差はありませんが、ほんの気持ちだけフィルターありの方がバーナードループが濃い印象。何より大きな違いは地上付近の街明かり。フィルターなしでは白飛びしてしまうほどですが、スターエンハンサーを使用するとかなりマイルドになっています。 こちらは全く同一の現像条件での比較。フィルターなしの画像のヒストグラムのRGBの山を揃えました。地上付近の街明かりは黄色と緑色が強くなっていて、これは主にナトリウム灯と水銀灯によるものだと思われます。それが、スターエンハンサーを使用することでより自然になっていることがわかります(*)。 (*)写真のレタッチ(画像処理)に慣れた人なら、カラーバランスと輝度は自由に調整できるので、この画像の色の違いは「良い悪い」の問題ではありません。このフィルターが「どんな光を透過(吸収)するか」を見ていただくためのものです。 スターエンハンサーを使用すると、ほんのわずかに暗めになっていることにも注目。スターエンハンサーの露出倍数は体感値で1/3〜1/2程度と感じました。イヤな色かぶりの元になる市街光を吸収することはメリットですが、星の光もその分減ってしまう(*)ことは大前提として受け入れる必要があります。 (*)とはいえ「強い光害カットフィルター」と比較するとほんのわずかで、画質の悪化を気にするほどの違いではありませんでした。 ごく弱いソフト効果 上の画像はソフト効果の比較。スターエンハンサーのソフト効果は、ケンコー・トキナー社の「プロソフトンクリア」とほぼ同じという結果になりました。「プロソフトンクリア」は「効果がより弱いものを」とのユーザーの声を受けて発売された製品で、星空写真界隈で人気のある製品です(*)。その意味で「スターエンハンサー」のソフト効果も「ちょうどいい」加減であるといえます。 (*)「星をどのくらい滲ませたいか」は個人の好みもあり正解はないのですが、地上風景にある街灯などが「滲みすぎる」とせっかくの雰囲気を損なうことがあります。最適なソフト効果は、地上風景と星のバランスで判断するのがよいかもしれません。 https://reflexions.jp/tenref/orig/2020/08/05/11475/ 2つの機能を併せ持つメリット スターエンハンサーが「光害カット」効果と「(ちょうどいい)ソフト効果」の両方を合わせ持つことはわかりました。でも、2枚の別のフィルターであるほうが、組み合わせの自由度が高まるのでは?」という疑問が湧いてきます。2つの効果を「1枚で」実現することにはどんなメリットがあるのでしょうか?「 周辺のケラレが少ない 一つめのメリットは「2枚重ねの弊害」を回避できることです。フィルターを2枚重ねしたときに星空の撮影で一番問題になるのは、広角・超広角レンズの場合の周辺のケラレ。 上の画像はやや強調したものですが、フィルターを2枚重ねすると四隅のケラレ(陰り)が大きくなっていることがわかります。最近のフィルター枠は一昔前よりも薄枠化が進んではいるのですが、それでも2枚重ねるとケラレてしまいます。 フィルター脱着の面倒が少ない とはいえ、周辺の(わずかな)ケラレや画質悪化は「気にしない」ことも可能なレベルではあります。筆者が使用して一番感じたのは「使いやすい」ことでした。2枚のフィルターを併用するのは正直いって「面倒くさい」です。ねじ込んで重ねるのも面倒。外すのも面倒。2枚重ねするとフィルターケースに入らないし。バッグからフィルターを探すのも面倒。露よけ対策も面倒。1枚になるとこんなに楽チンなのか、、ひしと感じました。 実は筆者の場合この「面倒くささ」が、これまでソフトフィルターと光害カットフィルターをあまり併用しない理由でした。これが一枚になるのなら、今後はレンズに付けっぱなしで「常用」してもいいくらいです。 星空撮影をこれから始めようという方、これからソフトフィルターも試してみようかな?という方には、断然「スターエンハンサー」をオススメします。 2枚重ねで使う場合との価格差は? 気になるお値段はどうでしょうか。「スターエンハンサー」の実売価格(*1)は52mm径が7,524円、72mm径で10,296円。似た機能を持つケンコー・トキナー社の「プロソフトンクリア」がネット通販(*2)では52mm径が3,600円、72mm径で5,590円、「スターリーナイトフィルター」が52mm径が3,327 円、72mm径で6,220円。 (*1)サイトロンジャパンの直営ショップ・シュミットで2023年5月12日現在 (*2)Amazon.co.jpで2023年5月12日現在 うーん、これは微妙^^; 52mmは別々に買うのがわずかに安く、72mmは1枚で買う方が安くなりました。一消費者としては「別々に買うよりもせめて2-3割は安くしてほしい!」と思いますが、これは市場が決めることなので(*)ただ受け入れるのみです。価格と費用対効果は、皆様のお考えでご判断ください。筆者から申し上げられることは「販売価格をよく調べてから買おうね!」のみです。 (*)フィルターはどちらかというと希望小売価格と実売価格の差が大きな商品です。 ケンコー・トキナー社の「スターリーナイト プロソフトン」 cpplus2023。こちらはケンコートキナーの「スターリーナイトプロソフトン」。6月発売。文字通り2つのフィルターが1枚に。ソフト効果は「クリア」相当。 pic.twitter.com/GPp764g5PA — 天リフ編集部 (@tenmonReflexion) February 23, 2023 「スターエンハンサー」は今年のCP+2023で発表された製品なのですが、同時にケンコー・トキナー社からも全く同じコンセプトの製品「スターリーナイト プロソフトン」が発表されています。会場やネットからは「同じ製品なの?」という質問が多くありましたが、この2つは明確に別の製品です(*)。 (*)Webや雑誌上でも「それぞれが独自に企画・開発した」というコメントがありました。 「スターリーナイト プロソフトン」は本記事制作時点では未発売ですが「スターリーナイトフィルター」と「プロソフトンクリア」の機能を併せ持つ、とのことです。ソフト効果は「スターエンハンサー」とほぼ同等として、光害カット特性はどう違うのでしょうか。 同一の現像条件で比較してみました。ほぼフィルターの外見上通りの差で、スターエンハンサーは青みがかった色になります。地平線近くの市街光の明るさは同じくらいで、光害カット効果には大差がないようです。 カラーバランスを個別に調整して、同じ色味になるようにしてみました。ほとんど同じで、ブラインドテストに正解できる自信は全くありません^^;;; 少しくらいのカラーバランスの差はレタッチで調整できてしまうので、中級レベルのレタッチ技術があればこの2つには事実上差はないといえるでしょう。 しかし、星空の写真では「青系」の空の色が好まれる傾向にあります。レタッチ無しの撮って出しの色みは、スターエンハンサーの方が好印象です。「撮って出しでもいい感じになる」という意味では、スターエンハンサーの方が初心者に向いているのかもしれません。 後は価格です。ここまでの検証からは、どちらかが決定的に安ければそちらがオススメ!になりそうですが、ケンコー・トキナー社から「スターリーナイト プロソフトン」が発売されてからのお楽しみです。 実写作例 作例を少しばかり。 2月の中旬。ZTF彗星を撮影するために、熊本県のくじゅう周辺に遠征しました。撮影後、あちこちを回って星景撮影。フットワーク良く星空を撮るには、フィルターの付け外しの面倒は考えずにすませたいもの。24mm広角レンズに「スターエンハンサー」を装着して、一本勝負で撮りました。 2本の電線の間にこと座が。低空が市街光に照らされているこんな条件下は「スターエンハンサー」の一番の得意分野です。   ようやく昇ってきたさそり座。その右はおおかみ座とケンタウルス座です。ソフトフィルターで星を滲ませると、ω星団と星の区別がつきにくくなりますが、ω星団はどれだかわかるでしょうか? 昇る月と夏の銀河。ごく弱いソフトフィルターなら、月が写野に入っても滲みすぎることがなく、星座を強調するソフト効果を併用できます。この状況では光害カット効果は無くても大きな問題にはならないのですが「常用フィルター」なのでこれでアリです。 まとめ いかがでしたか? この10年、天体写真・星空写真界隈では、フィルターワークの重要性に対する認識が大きく上がってきています。様々な特性のフィルターを、状況と目的に合わせて使い分けることで、より自由な表現とクオリティの高い作品が作り込めるようになりました。その中でも「ソフトフィルター」と「(色ガラス系)光害カットフィルター」は、初心者でも使いやすく、わかりやすい効果があります。 その2つの機能を合わせ持った「スターエンハンサー」は、これからの星空撮影の常用フィルターといえるかもしれません。フィルターを使いこなして、楽しい天文ライフを!うまく使って素晴らしい作品をゲットしてくださいね! 本記事は株式会社サイトロンジャパン様よりサンプル提供を受け、天文リフレクションズ編集部が独自の費用と判断で作成したものです。文責は全て天文リフレクションズ編集部にあります。 記事に関するご質問・お問い合わせなどは天文リフレクションズ編集部宛にお願いいたします。 製品の購入およびお問い合わせはメーカー様・販売店様にお願いいたします。 本記事によって読者様に発生した事象については、その一切について編集部では責任を取りかねますことをご了承下さい。 特に注記のない画像は編集部で撮影したものです。 記事中の製品仕様および価格は執筆時(2023年5月)のものです。 記事中の社名、商品名等は各社の商標または登録商標です。編集部発信のオリジナルコンテンツ