Facebookのグループ「ZWO ASIAIR」に投稿された、ZWO社のAM5赤道儀をウェイトレス運用していたユーザーの転倒事故が話題になっています。AM5赤道儀のような「波動ギア」を採用した架台はバランスウェイトなしで運用できるのが大きなメリットですが、三脚を含めたシステム全体の構造によっては、子午線付近でのアンバランスによって転倒するリスクがあることに注意が必要です。

状況(推測)

とりあえずは運用できるレベルですが、実はやや微妙。ガイド鏡の脱着時など、うっかり触るとグラッとくる危険も。

元記事には転倒時の状況の画像がないため推測ですが、おそらく上記画像のような「天頂付近」を向いた際に、重心が2本の脚の交点の外側に出てしまい、転倒してしまったのでしょう。

上の画像は屈折鏡筒ですが、鏡筒の太いシュミカセでは重心がより三脚の中心から離れます。さらに、三脚をじゅうぶんに長く伸ばしていない場合(*)も危険が増加します。

(*)赤道儀が小型になると三脚も短くしてコンパクトにしたくなってしまうのも原因の一つかも。

三脚・架台がじゅうぶんに重ければよいのですが、波動ギア赤道儀の場合、公称搭載重量は本体よりも大きいのが常(*)。うっかり何も考えずに搭載するとキケンですよ、という認識を持つべきでしょう。

(*)AM5赤道儀の場合、本体重量は5kg、ウェイトレス時の公称搭載重量は13kg

ネットでの反応

 

「赤道儀本体が重量に耐えられる」ことと、「システム全体のバランス」は別物。波動ギア赤道儀は「頭でっかち」になりやすいことに注意が必要。

特に、波動ギア赤道儀は「クランプフリー」状態でいろいろな姿勢を試すことが簡単にはできません。ホームポジションだけでなく、子午線上やイナバウアー状態まで、安定しているかどうかを確認すべきでしょう。




それくらい分かれよ、的なご意見^^;; 全くその通りなのですが、ユーザーが増えれば増えるほど事故は増えるでしょう。業界としても適切なガイドラインを示す必要があるかもしれません。

転倒を防止するためには

では、どうすれば転倒事故を防止できるのでしょうか。

まず、一番確実なのは「ウェイトレス」にしないこと。バランスウェイトを鏡筒の反対側に設置すれば安定します。

とはいえ、通常のドイツ式赤道儀のように完全にバランスをとるだけのウェイトを設置すると、せっかくの波動ギア赤道儀のメリットが少なくなってしまいます。補助的なものであってもウェイトを付けるのかなど「ウェイトレス運用をどこまでやるか」は搭載機材に応じて使用者が適切に判断すべきでしょう。

AM5がやって来た  その6 運用上のリスク回避

もう一つ。筆者自身が試したわけではないので何の保証もできませんが、三脚の向きを南北逆にするという方法があります。 鏡筒と干渉しやすくなるので屈折鏡筒では逆に危険になる可能性もありますが。

AM5がやって来た  その9 転倒防止策

こちらの記事では、三脚に補助ウェイトをぶら下げて安定性を増す方法が紹介されています。三脚にウェイトを付けるのなら赤道儀に付けてもよい気がしますが、モバイル電源などの重量物であれば三脚にぶら下げるのは効果的でしょう。

さらに、三脚を長くする(3つの設置部でできる三角形の面積を広くする)のも確実な改善です。

まとめ

いかがでしたか?

架台の転倒事故をおこすと悲惨です。波動ギア赤道儀でウェイトレス運用するときは「最もバランスが崩れた状態」でも大丈夫か、事前にしっかり確認しておきましょう。強風時でも大丈夫か、設置・撤収時に危険がないか(*)も含めて、余裕を持った機材構成を心がけるのが吉かと思います。

(*)風の力をなめてはいけません。暴風が吹くと大抵のものは倒れると思っていた方が確実。 https://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2022/09/305269053_10229283221206068_52318753145295428_n-1024x768.jpghttps://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2022/09/305269053_10229283221206068_52318753145295428_n-150x150.jpg編集部特選ピックアップFacebookのグループ「ZWO ASIAIR」に投稿された、ZWO社のAM5赤道儀をウェイトレス運用していたユーザーの転倒事故が話題になっています。AM5赤道儀のような「波動ギア」を採用した架台はバランスウェイトなしで運用できるのが大きなメリットですが、三脚を含めたシステム全体の構造によっては、子午線付近でのアンバランスによって転倒するリスクがあることに注意が必要です。 ZWO AM5 crashed on ground A Celestron C8 EDGE dead in accident AM5赤道儀使用者注意,赤道儀に過大な負荷をかけないこと,どうしても過大な負荷がかかる場合はカウンターウェイトを使用すること。 過負荷のAM5が地上に墜落:EDGE望遠鏡が全損。 情報元:https://t.co/AwMmL8FgcW pic.twitter.com/vyElRWGiy1 — Kennedy Observatory 雨傘革命 8週年 (@102Refractor) September 26, 2022 状況(推測) 元記事には転倒時の状況の画像がないため推測ですが、おそらく上記画像のような「天頂付近」を向いた際に、重心が2本の脚の交点の外側に出てしまい、転倒してしまったのでしょう。 上の画像は屈折鏡筒ですが、鏡筒の太いシュミカセでは重心がより三脚の中心から離れます。さらに、三脚をじゅうぶんに長く伸ばしていない場合(*)も危険が増加します。 (*)赤道儀が小型になると三脚も短くしてコンパクトにしたくなってしまうのも原因の一つかも。 三脚・架台がじゅうぶんに重ければよいのですが、波動ギア赤道儀の場合、公称搭載重量は本体よりも大きいのが常(*)。うっかり何も考えずに搭載するとキケンですよ、という認識を持つべきでしょう。 (*)AM5赤道儀の場合、本体重量は5kg、ウェイトレス時の公称搭載重量は13kg ネットでの反応   「赤道儀本体が重量に耐えられる」ことと、「システム全体のバランス」は別物。波動ギア赤道儀は「頭でっかち」になりやすいことに注意が必要。 特に、波動ギア赤道儀は「クランプフリー」状態でいろいろな姿勢を試すことが簡単にはできません。ホームポジションだけでなく、子午線上やイナバウアー状態まで、安定しているかどうかを確認すべきでしょう。 それくらい分かれよ、的なご意見^^;; 全くその通りなのですが、ユーザーが増えれば増えるほど事故は増えるでしょう。業界としても適切なガイドラインを示す必要があるかもしれません。 転倒を防止するためには では、どうすれば転倒事故を防止できるのでしょうか。 まず、一番確実なのは「ウェイトレス」にしないこと。バランスウェイトを鏡筒の反対側に設置すれば安定します。 とはいえ、通常のドイツ式赤道儀のように完全にバランスをとるだけのウェイトを設置すると、せっかくの波動ギア赤道儀のメリットが少なくなってしまいます。補助的なものであってもウェイトを付けるのかなど「ウェイトレス運用をどこまでやるか」は搭載機材に応じて使用者が適切に判断すべきでしょう。 ウェイトレスの場合、従来のような三脚の1本を真北に向ける設置(1枚目)では子午線(天頂)に向けたとき「三脚の脚と脚の間に加重が掛かる形になるので転倒のリスクが高くなります」「三脚の1本が南側に向くように設置した方が(2枚眼)踏ん張ってくれる形になる」 pic.twitter.com/Fwq2pgox7k — 天リフ編集部 (@tenmonReflexion) September 20, 2022 https://star-party.jp/wp/?p=31023 もう一つ。筆者自身が試したわけではないので何の保証もできませんが、三脚の向きを南北逆にするという方法があります。 鏡筒と干渉しやすくなるので屈折鏡筒では逆に危険になる可能性もありますが。 https://star-party.jp/wp/?p=31054 こちらの記事では、三脚に補助ウェイトをぶら下げて安定性を増す方法が紹介されています。三脚にウェイトを付けるのなら赤道儀に付けてもよい気がしますが、モバイル電源などの重量物であれば三脚にぶら下げるのは効果的でしょう。 さらに、三脚を長くする(3つの設置部でできる三角形の面積を広くする)のも確実な改善です。 まとめ いかがでしたか? 架台の転倒事故をおこすと悲惨です。波動ギア赤道儀でウェイトレス運用するときは「最もバランスが崩れた状態」でも大丈夫か、事前にしっかり確認しておきましょう。強風時でも大丈夫か、設置・撤収時に危険がないか(*)も含めて、余裕を持った機材構成を心がけるのが吉かと思います。 (*)風の力をなめてはいけません。暴風が吹くと大抵のものは倒れると思っていた方が確実。編集部発信のオリジナルコンテンツ