サイトロンジャパンから新しい天体撮影用フィルター「Comet BP (コメット バンドパス)フィルター」が5月18日に発売されます。その名の通り、彗星撮影にフォーカスした狭帯域のフィルターです。サイズは48mmと52mmです。価格は現時点では確認できていませんが、わかり次第追記したいと思います。

追記)協栄産業では48mmサイズが税込19,800円、52mmサイズが同23,980円となっています。

追記2)シュミットHPにも商品情報が追加されています。



サイトロン Comet BP フィルター(コメット バンドパス)
https://www.syumitto.jp/SHOP/SY0094.html

Comet BPフィルターの特徴

サイトロンジャパン社発表資料より。

「Comet BPフィルター」は、水銀とナトリウムの光害輝線を回避し、星雲のHα・OIII・Hβ・SII輝線を全て透過するという点では既存製品である「Quad BPフィルター」と同じですが、さらに彗星のコマやイオンテイルが発するCN,C2,C3輝線を透過するようにしているのが大きな特徴です。

波長特性グラフを見てもわかるように、波長360nm〜420nmの青色の光も透過します。市街光の連続光成分は短波長ほど大きいため、光害カットという点では「Quad BPフィルター」よりも不利ですが、逆により豊かな色表現を期待できます(*)。

(*)QBPフィルターは波長特性上、青と緑の色が分離されにくく「AOO」に近い仕上がりになります。

他のフィルターとの比較

波長特性を「Comet BPフィルター」と「Quad BPフィルター」で比較してみると、「Comet BPフィルター」はRバンドはほとんと同じですが、Gバンドがやや広く、さらにBバンドが加わっていることがわかります。RGBの透過帯域幅もバランスがよく、極端な色ころびなく撮影画像を自然に調整することができることでしょう。

(*)参考までにSTC社の「Astro Duo」フィルターの波長特性も付記しましたが、こちらはより透過帯域が狭い「ナローバンドを攻める」という別コンセプトの製品です。QBP/CBPはよりRGB撮影に近い、露出倍数があまり大きくない撮影を主な用途としています。



想定される用途

光害をカットしつつ、彗星のイオンテールとコマを強調できるのはこれまでになかったコンセプトで、彗星を撮るならもう買うしかありません^^;;

大彗星となることが期待されたアトラス彗星(C/2019 Y4)が期待外れに終わりそうなのは残念ですが、大彗星とはいかなくても撮影して面白い彗星は毎年のように出現しています。彗星のためだけでも「Comet BPフィルター」は個人的にはぜひ1枚持っておきたいところです。

サイトロンジャパン社発表資料より。

しかし、用途は彗星だけではありません。上の画像はフィルター有無の比較ですが、実は400nmより短い波長をしっかり通す光害カットフィルターはこれまでありませんでした(*)。Bバンドの透過域が広い「Comet BPフィルター」は、星の色の表現と輝線星雲の強調をバランス良く両立させる、天体撮影用フィルターの決定版になる可能性もあるかもしれません。

(*)「みんな嫌い」な青ハロの減少を狙っているのか、Lフィルターでも400nm以下の波長がカットされる製品が多いようです。

機会があれば、ぜひ実写比較してみたいと思います。

サイズ・材質

フィルター径は48mm径と52mm径の2タイプです。52mm径も提供されるのでビクセン系の機材などにもマッチします。好評であれば31.7mm(1.25インチ)サイズも発売されるかもしれませんね。

なお、フィルターの硝材は「QBP」の第2世代と同様に「合成石英ガラス」です。一般的にフィルターはB270(白板)と呼ばれる硝材が使われることが多いのですが、「合成石英ガラス」は白板と比較して低分散・低屈折率で光学的な悪影響がより少ない硝材です。

まとめ

いかがでしたか?

かえすがえすもアトラス彗星C/2019 Y4の不発は残念ですが、まだ消えたわけではありません。SWAN彗星(C/2020 F8)も低高度ながら明るくなってきています。一期一会の彗星、ぜひ後悔のない機材検討をしたいものですね! https://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2020/05/fc6927a4cd7fc6f068de9eb5d3ae4aff-1024x628.jpghttps://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2020/05/fc6927a4cd7fc6f068de9eb5d3ae4aff-150x150.jpg編集部フィルターサイトロンジャパンから新しい天体撮影用フィルター「Comet BP (コメット バンドパス)フィルター」が5月18日に発売されます。その名の通り、彗星撮影にフォーカスした狭帯域のフィルターです。サイズは48mmと52mmです。価格は現時点では確認できていませんが、わかり次第追記したいと思います。 追記)協栄産業では48mmサイズが税込19,800円、52mmサイズが同23,980円となっています。 追記2)シュミットHPにも商品情報が追加されています。 サイトロン Comet BP フィルター(コメット バンドパス) https://www.syumitto.jp/SHOP/SY0094.html Comet BPフィルターの特徴 「Comet BPフィルター」は、水銀とナトリウムの光害輝線を回避し、星雲のHα・OIII・Hβ・SII輝線を全て透過するという点では既存製品である「Quad BPフィルター」と同じですが、さらに彗星のコマやイオンテイルが発するCN,C2,C3輝線を透過するようにしているのが大きな特徴です。 波長特性グラフを見てもわかるように、波長360nm〜420nmの青色の光も透過します。市街光の連続光成分は短波長ほど大きいため、光害カットという点では「Quad BPフィルター」よりも不利ですが、逆により豊かな色表現を期待できます(*)。 (*)QBPフィルターは波長特性上、青と緑の色が分離されにくく「AOO」に近い仕上がりになります。 他のフィルターとの比較 波長特性を「Comet BPフィルター」と「Quad BPフィルター」で比較してみると、「Comet BPフィルター」はRバンドはほとんと同じですが、Gバンドがやや広く、さらにBバンドが加わっていることがわかります。RGBの透過帯域幅もバランスがよく、極端な色ころびなく撮影画像を自然に調整することができることでしょう。 (*)参考までにSTC社の「Astro Duo」フィルターの波長特性も付記しましたが、こちらはより透過帯域が狭い「ナローバンドを攻める」という別コンセプトの製品です。QBP/CBPはよりRGB撮影に近い、露出倍数があまり大きくない撮影を主な用途としています。 想定される用途 光害をカットしつつ、彗星のイオンテールとコマを強調できるのはこれまでになかったコンセプトで、彗星を撮るならもう買うしかありません^^;; 大彗星となることが期待されたアトラス彗星(C/2019 Y4)が期待外れに終わりそうなのは残念ですが、大彗星とはいかなくても撮影して面白い彗星は毎年のように出現しています。彗星のためだけでも「Comet BPフィルター」は個人的にはぜひ1枚持っておきたいところです。 しかし、用途は彗星だけではありません。上の画像はフィルター有無の比較ですが、実は400nmより短い波長をしっかり通す光害カットフィルターはこれまでありませんでした(*)。Bバンドの透過域が広い「Comet BPフィルター」は、星の色の表現と輝線星雲の強調をバランス良く両立させる、天体撮影用フィルターの決定版になる可能性もあるかもしれません。 (*)「みんな嫌い」な青ハロの減少を狙っているのか、Lフィルターでも400nm以下の波長がカットされる製品が多いようです。 機会があれば、ぜひ実写比較してみたいと思います。 サイズ・材質 フィルター径は48mm径と52mm径の2タイプです。52mm径も提供されるのでビクセン系の機材などにもマッチします。好評であれば31.7mm(1.25インチ)サイズも発売されるかもしれませんね。 なお、フィルターの硝材は「QBP」の第2世代と同様に「合成石英ガラス」です。一般的にフィルターはB270(白板)と呼ばれる硝材が使われることが多いのですが、「合成石英ガラス」は白板と比較して低分散・低屈折率で光学的な悪影響がより少ない硝材です。 まとめ いかがでしたか? かえすがえすもアトラス彗星C/2019 Y4の不発は残念ですが、まだ消えたわけではありません。SWAN彗星(C/2020 F8)も低高度ながら明るくなってきています。一期一会の彗星、ぜひ後悔のない機材検討をしたいものですね!編集部発信のオリジナルコンテンツ