Twitterフォロアーを対象に、「正像」「裏像」について簡単なアンケートを実施してみました。有効回答数は70。

ごく一部だった「裏像否定」派

質問の意図は、天頂ミラー・プリズムによる「裏返しの像」について皆さんがどう思われているのかを知りたい、特にその「比率」でした。

編集子の予想を超えて「裏像イヤ」層は少なく、わずか7%にしか過ぎませんでした。また、半分は「どっちでもいい」と回答しています。

70票のサンプルではありますが、これが全体の傾向に近いのであれば、天体望遠鏡の標準付属品が「天頂ミラー」「天頂プリズム」であることはやむなし、なのでしょうか。

正像と裏像の比較

「正像」vs「裏像」をいろいろな対象で比較してみました。

土星

初心者の天体望遠鏡ニーズの多くを占める「土星」。ごらんの通り、このレベルの画像では裏像も正像も判別不能です。土星の場合、よほど追い込んだ観測をするのではない限り「別にどっちでもいい」といえます。惑星でいえば、木星も裏像で不自然を感じるのはよほどのベテラン観測者のみ。裏像が問題になるとすれば、火星くらいでしょうか。

手持ちのよい例がなかったのですが、三日月の地球照の画像。月の全体像がしっかり頭に入っている人には、裏像の月は不自然かもしれませんが、初心者では全く問題にならないでしょう。

高倍率で欠け際を拡大した場合もそれは同じです。この場合はむしろ「鏡像」の月面になれている人には逆に正像が不自然に映るかもしれません。

ディープスカイ(1)メジャー天体

オリオン大星雲。この星雲の形状が頭に刻み込まれている編集子にとっては、これを裏像で見るのは大変な違和感を感じます。何としてでも正像で見たい対象の一つです。

M42に限らず、M8やプレアデス星団など、形状が左右非対称で形状の印象の強い対象や、馬頭星雲のように形状の記憶を頼りに極淡い光を捉えたい天体では、ぜひ正像で見たいと編集子は思います。

ディープスカイ(2)球状星団と楕円銀河

しかし、対象によっては、「別にどうでもいい」ものもあります。上の画像は球状星団「ω星団」ですが、正像と裏像の違いを指摘できる人は(特に眼視では)ほんのわずかでしょう。



球状星団・楕円銀河などはみなこのカテゴリになります。

ディープスカイ(3)微細構造をもつ対象

M81/M82。正像と裏像の比較は微妙です。ちょっと違うなとは感じますが、違和感というほどではありません。

ただし、このような対象を眼視でじっくり見るときには別の問題が出てきます。M81の腕やM82のジェットを視認できた際に、写真の画像と対照したくなることがあります。この場合、正像の写真と比較するには、望遠鏡も正像でないと難しくなります。

「裏像の画像を用意する」のも一手ですが・・・それって逆じゃないの?と思うかどうか、でしょうか。

スターホッピング

自動導入で視野中心に入る環境ならよいのですが、手動導入で空を「流す」場合、裏像では導入が難しくなります。また、この場合は「倒立」像も問題になってきます。正立・正像のファインダーと鏡筒の組み合わせが一番使いやすいと思います。

逆に、倒立正像のファインダーと、倒立鏡像の鏡筒では・・・少なくとも編集子は、ついて行けません・・

きれいなおねえさん

フリー画像素材pakutasoより。https://www.pakutaso.com/20171055279post-13592.html 茜さや

最後に。上の画像、どちらがカワイイですか?どちらが鏡像(裏像)でしょうか?スマホのカメラの位置からどちらが鏡像かは判別できます。

「正像であろうと裏像であろうと、どうでもいい(第3者的には)」の典型。でも、この女性の肉親や恋人からすると、そうではないでしょう。さらには、自分で自分を見る像はおおむね鏡像です。

念のため、データを考察する

最後に、データを机上の推測から若干考察しておきます。

ニュートン反射、ドブソニアンユーザー

ニュートン反射は何もしなくても正像です。回答者のうち、主にニュートン反射(特にドブソニアン)ユーザーはごく自然に「別にどっちでもいい」と回答した可能性があります。コアな眼視派にドブユーザが多いであろうことから推測すると、「裏像のデメリット」があまり眼視派からは湧いてこない現状はあるかもしれません。

質問の意味がわからない

「裏像イヤ」とあまり変わらない数の回答が「質問の意味がわからない」でした。奇数回反射の光学系が「裏返し」であることすら、十分に認識されていないのかもしれません。また、「正像」「裏像」という言葉が一般的でなかった可能性もあります。(「鏡像」とすべきだったかも)

裏像でも我慢している理由

1/3強の回答が、裏像のデメリットを認識しつつも、現状の裏像で「我慢」しています。この数字を大きいと見るか、小さいと見るか。主流の製品を作るメーカーからみると少数派かもしれませんが「現在のユーザーの不満を解消した新しい製品」にチャレンジする立場から見ると、十分に新規市場を開拓する可能性がある、と編集子は見ますが、いかがでしょうか。

まとめ

編集子はアンケート的には「裏像イヤ」派です。裏返しのM42には我慢できません。でも、冷静に見ると、裏像が明確なデメリットにならないケースも多いことがわかります。

それにもかかわらず、1/3のユーザーは裏像に我慢している現状があります。市場は何かを求めている、と考えることもできるのではないでしょうか。

低コストで「90度視」を実現するには1回反射のミラー・プリズムしか選択肢がない現状は認めるしかありませんが、「正像にこだわるのは一部のマニアだけ」という認識は正しくない気がします。

この状況を打破する動きに期待したいと思います。

 

正像vs裏像アンケートhttps://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2018/09/c2391359d40a4ea7492b26985870718d-1024x591.jpghttps://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2018/09/c2391359d40a4ea7492b26985870718d-150x150.jpg編集部天体観望Twitterフォロアーを対象に、「正像」「裏像」について簡単なアンケートを実施してみました。有効回答数は70。 https://twitter.com/tenmonReflexion/status/1041834981276868608 ごく一部だった「裏像否定」派 質問の意図は、天頂ミラー・プリズムによる「裏返しの像」について皆さんがどう思われているのかを知りたい、特にその「比率」でした。 編集子の予想を超えて「裏像イヤ」層は少なく、わずか7%にしか過ぎませんでした。また、半分は「どっちでもいい」と回答しています。 70票のサンプルではありますが、これが全体の傾向に近いのであれば、天体望遠鏡の標準付属品が「天頂ミラー」「天頂プリズム」であることはやむなし、なのでしょうか。 正像と裏像の比較 「正像」vs「裏像」をいろいろな対象で比較してみました。 土星 初心者の天体望遠鏡ニーズの多くを占める「土星」。ごらんの通り、このレベルの画像では裏像も正像も判別不能です。土星の場合、よほど追い込んだ観測をするのではない限り「別にどっちでもいい」といえます。惑星でいえば、木星も裏像で不自然を感じるのはよほどのベテラン観測者のみ。裏像が問題になるとすれば、火星くらいでしょうか。 月 手持ちのよい例がなかったのですが、三日月の地球照の画像。月の全体像がしっかり頭に入っている人には、裏像の月は不自然かもしれませんが、初心者では全く問題にならないでしょう。 高倍率で欠け際を拡大した場合もそれは同じです。この場合はむしろ「鏡像」の月面になれている人には逆に正像が不自然に映るかもしれません。 ディープスカイ(1)メジャー天体 オリオン大星雲。この星雲の形状が頭に刻み込まれている編集子にとっては、これを裏像で見るのは大変な違和感を感じます。何としてでも正像で見たい対象の一つです。 M42に限らず、M8やプレアデス星団など、形状が左右非対称で形状の印象の強い対象や、馬頭星雲のように形状の記憶を頼りに極淡い光を捉えたい天体では、ぜひ正像で見たいと編集子は思います。 ディープスカイ(2)球状星団と楕円銀河 しかし、対象によっては、「別にどうでもいい」ものもあります。上の画像は球状星団「ω星団」ですが、正像と裏像の違いを指摘できる人は(特に眼視では)ほんのわずかでしょう。 球状星団・楕円銀河などはみなこのカテゴリになります。 ディープスカイ(3)微細構造をもつ対象 M81/M82。正像と裏像の比較は微妙です。ちょっと違うなとは感じますが、違和感というほどではありません。 ただし、このような対象を眼視でじっくり見るときには別の問題が出てきます。M81の腕やM82のジェットを視認できた際に、写真の画像と対照したくなることがあります。この場合、正像の写真と比較するには、望遠鏡も正像でないと難しくなります。 「裏像の画像を用意する」のも一手ですが・・・それって逆じゃないの?と思うかどうか、でしょうか。 スターホッピング 自動導入で視野中心に入る環境ならよいのですが、手動導入で空を「流す」場合、裏像では導入が難しくなります。また、この場合は「倒立」像も問題になってきます。正立・正像のファインダーと鏡筒の組み合わせが一番使いやすいと思います。 逆に、倒立正像のファインダーと、倒立鏡像の鏡筒では・・・少なくとも編集子は、ついて行けません・・ きれいなおねえさん 最後に。上の画像、どちらがカワイイですか?どちらが鏡像(裏像)でしょうか?スマホのカメラの位置からどちらが鏡像かは判別できます。 「正像であろうと裏像であろうと、どうでもいい(第3者的には)」の典型。でも、この女性の肉親や恋人からすると、そうではないでしょう。さらには、自分で自分を見る像はおおむね鏡像です。 念のため、データを考察する 最後に、データを机上の推測から若干考察しておきます。 ニュートン反射、ドブソニアンユーザー ニュートン反射は何もしなくても正像です。回答者のうち、主にニュートン反射(特にドブソニアン)ユーザーはごく自然に「別にどっちでもいい」と回答した可能性があります。コアな眼視派にドブユーザが多いであろうことから推測すると、「裏像のデメリット」があまり眼視派からは湧いてこない現状はあるかもしれません。 質問の意味がわからない 「裏像イヤ」とあまり変わらない数の回答が「質問の意味がわからない」でした。奇数回反射の光学系が「裏返し」であることすら、十分に認識されていないのかもしれません。また、「正像」「裏像」という言葉が一般的でなかった可能性もあります。(「鏡像」とすべきだったかも) 裏像でも我慢している理由 1/3強の回答が、裏像のデメリットを認識しつつも、現状の裏像で「我慢」しています。この数字を大きいと見るか、小さいと見るか。主流の製品を作るメーカーからみると少数派かもしれませんが「現在のユーザーの不満を解消した新しい製品」にチャレンジする立場から見ると、十分に新規市場を開拓する可能性がある、と編集子は見ますが、いかがでしょうか。 まとめ 編集子はアンケート的には「裏像イヤ」派です。裏返しのM42には我慢できません。でも、冷静に見ると、裏像が明確なデメリットにならないケースも多いことがわかります。 それにもかかわらず、1/3のユーザーは裏像に我慢している現状があります。市場は何かを求めている、と考えることもできるのではないでしょうか。 低コストで「90度視」を実現するには1回反射のミラー・プリズムしか選択肢がない現状は認めるしかありませんが、「正像にこだわるのは一部のマニアだけ」という認識は正しくない気がします。 この状況を打破する動きに期待したいと思います。  編集部発信のオリジナルコンテンツ