みなさん、こんにちは!天体望遠鏡で星見てますか?!

最近の筆者(編集長)のマイブームは「天体観賞(観望)」。写真は写真で面白いのですが(*)、肉眼視にはそれとは違った体験があります。天体望遠鏡で星を見るのって、やっぱり楽しいのです。

(*)もちろん天体写真や星空の風景を撮影するのも楽しいし、実際のところ「眼視機材セット」を持ち出すのは10回に1回あるかないかなのですが・・



でも、この楽しさをどうやったら自分以外の人に伝えられるのだろう?

天体写真と違って、肉眼で見た記憶を記録することは簡単ではありません。絵心があれば「スケッチ」という手もあるのですが、そんなものは持ち合わせない私。「星がキラキラと輝き、ぼんやりと浮かぶ星雲の姿に宇宙の神秘を感じた」とか、わかったようなわからないような「ポエム」を書くのも・・・限界がありますよね。

そこで!肉眼で見た天体の印象を、画像処理で再現してみよう!と思い立ちました。本記事はその記録と考察です。

とはいえ、写真と肉眼視には臨場感という根本的な違いがあります。キラキラとまたたく星の輝きは静止画では再現できません。夜の暗闇の中、天体望遠鏡と空気の向こうに見える満天の星、その先にある「宇宙」という大きな存在を常に感じながら星を見るという総合的な体験が、肉眼視による「天体観賞」。でもそれは本記事とは別の文脈なのでまた別の機会に。今回は「なんとか写真で眼視の体験を記録できないか」がテーマです。

注)本記事では「天体望遠鏡を使って肉眼で天体を観察すること」を「肉眼視」または「天体観賞」と呼称しています。天文界隈では普通「眼視(観望)」と呼ばれているものと同じです。

まずはリザルト

いて座M8干潟星雲

FSQ106ED(口径106mm 焦点距離530mm) SONY α7S(クリア改造) UV/IRカットフィルター ISO12800 15秒露出(1枚) 山口県長門市 視野円は倍率53倍・約2°

一つめはいて座の干潟星雲M8です。左が普通に撮影してカラーバランスだけ整えた「天体写真」ですが、それをあれこれ「肉眼視風」に加工したのが右。視野円の範囲は見かけ視界100°の53倍(口径は106mm)の範囲に合わせています。

全天有数の明るさの星雲(+星団)であるM8は、肉眼視でも大変美しく楽しめる対象ですが、この画像のような印象で見るためには、それなりに暗い空が必要でしょう。この日は実測でSQM21.2(機器の個体差を加味すると21.4程度)でした。

FSQ106ED(口径106mm 焦点距離530mm) SONY α7S(クリア改造) UV/IRカットフィルター ISO12800 15秒露出(1枚) 山口県長門市 視野円は倍率53倍・約2°

もう少し大きく。そこそこ空の暗い場所(SQM=21.5程度)で口径10cmクラスの天体望遠鏡で見た印象にだいぶ近づいたように思いますが、いかがでしょう?

実際のところは、肉眼視の印象に及ばないところがいくつかあります。一つは輝星の輝き。もっと小さく鋭く輝いていて、ごく淡い光芒に取り囲まれた印象です(*)。星雲も微光星もほとんど色がないのはこの画像の通りですが、オレンジと青の輝星は派手な原色ではないものの、明瞭に色づいています。

(*)筆者の白内障のせい?

背景の空の明るさは、この画像よりももっと暗い印象。ただ、ある程度背景を上げないと星も星雲も力弱くなってしまいます。このへんのさじ加減が難しい(*)

(*)部屋を暗くするとより肉眼の印象に近づきます。

星雲は中央の暗黒帯は明瞭に認識できるのですが、この画像よりはぼんやりした感じ。小さな星団と重なった部分はもっと「もやっ」として透明な感じ。この「透明感」も写真では表現が難しいところ。

さらに、今回は見かけ視界100°の接眼レンズを使用したため、この画像のようには視野円を「一望」することはできません。視野円が視野の隅にくるくらいに眼を思いっきり近づけると、その印象により近くなります。

M24バンビの横顔

FSQ106ED(口径106mm 焦点距離530mm) SONY α7S(クリア改造) UV/IRカットフィルター ISO12800 15秒露出(1枚) 山口県長門市 視野円は倍率53倍・約2°

バンビの横顔は望遠鏡なしの肉眼でも、ぼんやりと確認できる天の川の「濃い部分」です。この画像では「バンビの頭」も「眼」も明瞭にわかるのですが、実際に見た印象では「大きすぎて」横顔全部を見渡すことができず、同定するまでけっこう時間がかかりました(*)。

(*)見かけ視界の「広すぎる」100°接眼レンズでは、視野内に対象全部が入っていたとしても、全体の形の認識が困難な場合があるようです。

無数の星々が視野いっぱいに広がって素晴らしい光景ではあるのですが、54倍では「バンビ全体を眺める」という感覚とはちょっと違う感じ。より低倍率で全体を見渡せるようにした方が楽しめるかもしれません(*)。

(*)瞳径の限界を無視して13倍!でも見てみましたが、背景が明るくなりすぎてちょっと残念な感じでした。適切な倍率を選ぶのは、対象の大きさに応じてという意味もありますが、背景の明るさのコントロールの意味も大きいと感じました。

はくちょう座M39

FSQ106ED(口径106mm 焦点距離530mm) SONY α7S(クリア改造) UV/IRカットフィルター ISO12800 20秒露出(1枚) 山口県長門市 視野円は倍率53倍・約2°

まばらながらも明るい星20個ばかりが三角形に集まった、はくちょう座の散開星団です。地味ながら、小口径の望遠鏡でこそ美しく眺められる星団の一つ。特に、青い星とオレンジの星の色の対比がチャームポイント。

上の画像では輝星の色を強めに強調しているのでやや不自然感がありますが、肉眼の印象ということで許してください^^; とはいえ、画像にしてしまうとやっぱり地味(*)ですね^^;;;

(*)肉眼で実際に眺めると、星団の星々がキラキラと輝いて本当に美しい。これはデジタルプラネタリウムと光学式プラネタリウムの違いにも似ています。

FSQ106ED(口径106mm 焦点距離530mm) SONY α7S(クリア改造) UV/IRカットフィルター ISO12800 20秒露出(1枚) 山口県長門市 視野円は倍率53倍・約2°

天体写真風仕上げ。天の川の最も星が多いエリアでもあり、微光星がびっしりと写ります。星の多さが逆に背景輝度を上げてしまい、肉眼での「漆黒の空に輝く星々」の印象から遠くなってしまうのが「写真」の弱み。散開星団こそ、肉眼で一番楽しめる対象といえるのではないでしょうか(*)。

(*)実際、天体写真の対象としては散開星団は人気がありません。

アンドロメダ座M31

FSQ106ED(口径106mm 焦点距離530mm) SONY α7S(クリア改造) UV/IRカットフィルター ISO12800 20秒露出(1枚) 山口県長門市 視野円は倍率53倍・約2°

肉眼がっかり天体の代表格、M31。筆者も小学生のときに初めて口径77mmの望遠鏡で見てがっかりしました。M31を見て「美しい」と思えるようになるには、ある程度の天体観賞の経験と、バイアスのかかった?マニア心が必要になります(*)

(*)こういう書き方をするとその筋のエキスパートに怒られそうですが、残念な対象の「残念さ」は冷静に自己認識しておかないと、一般ピープルと会話が成り立たなくなります^^;; 

経験を積んで様々な銀河を一通り見た後M31を見ると、若干見方が変わってきます。「なんてデカイ!(他の銀河は圧倒的に小さい)」「腕の暗黒帯がはっきりわかる!(口径10cmで腕がわかる銀河はごくわずか)」などなど。

2つの伴銀河の存在もチャームポイント。250万光年先の隣人、そしてはるか先の未来に我が天の川銀河(銀河系)と衝突して合体する日を夢想すると、宇宙の広さと永遠の時間を感じずにはいられません。

FSQ106ED(口径106mm 焦点距離530mm) SONY α7S(クリア改造) UV/IRカットフィルター ISO12800 20秒露出(1枚) 山口県長門市 視野円は倍率53倍・約2°

こちらは写真風仕上げ。たった20秒の1枚なので天体写真としては「超Lo-Fi(低画質・低再現度)」ですが、それでも肉眼視の姿とは全くといっていいほど違います。人間の眼では、輝度の低い渦巻は「ぼやっ」としか見えないし、中心部の黄色と腕の青色の差は全く認識できないのです。

しかし、このような写真での天体の姿が頭に入っていると、より肉眼視を楽しむ助けにもなります。知識と先入観は紙一重ではありますが、知っているからこそ見える・感じることもあるのが天体観賞の面白いところ。

まだリザルトはいくつかあるのですが、前半はまずはこのくらいにしておきましょう。

「肉眼視」と「天体写真」の違いを意識した画像処理

https://ja.wikipedia.org/wiki/網膜 より引用

それでは、どのように画像を処理すれば「肉眼で見たような天体の姿」に近づけることができるのでしょうか。

ポイントは人間の眼の特性にあります。視細胞は高解像で色も感じ取れる「錐体細胞」と、高感度だが解像力が低く色も感じない「桿体細胞」の2種類があります。

明るい星では錐体細胞が働き、星の鋭い「芯」や色を感じることができます。反面、星雲や銀河のような暗い対象の場合は錐体細胞は無力化してしまい、低解像でモノクロの世界になってしまいます。

さらに、極限に暗い状態では、桿体細胞は天体写真でいう「ビニング」のような作用によって解像度を犠牲にして高感度化するようで(*)、暗い天体ほどぼんやりとしか見えないようです。

(*)参考:https://tenkyo.net/kaiho/pdf/2007_03/2007-03-11.pdf

以上のような視細胞の特性を再現するような画像処理を行っていくことになります。

星と星雲を分離する

StarXTerminatorで星消しを行った画像

単位面積当たりの輝度が低い星雲においては、色を感じる錐体細胞の出番はほとんどありません。そこで、まず星と淡い星雲を分離します。

ガチ天体写真でよく使われている「StarNet++」や「StarXTerminator」を使えば一発で「星消し画像」を作ることができます。上の画像は星消し後の画像。今回はPhotoshopのプラグインStarXTerminatorを試用しました。処理は一発です。

元画像から星消し画像を減算して生成した「星のみ画像」

元画像から星消し画像を減算すれば「星だけ画像」ができます。この2つに対して別々に処理を行っていきます。

星消し画像の処理・Gチャンネルでモノクロ化

RGBチャンネル毎の星消し画像。M8の中心部はOIII輝線が強く出ます。OIIIの波長(500nm前後)はBチャネル、Gチャネルどちらも同じくらいの感度があります。どちらを使っても大きくは違わないと想定しました。

星消し画像の情報を知覚できるのは主に色を感じない桿体細胞。そこでばっさりとモノクロ化します。桿体細胞は緑〜青の光にしか感度がないため、Rチャンネルは潔く破棄。作例ではGチャンネルのみでモノクロ化しました(*)。

(*)暗順応が進んだ状態では「プルキンエ現象」でむしろBの感度が高くなるのですが、今回の処理コンセプトでは誤差の範囲とみなしました。

星消し画像の処理・ガウスぼかしで解像度を下げる

星消し画像をぼかしの強さを変えたものの比較。明るい中心部は「ガウスぼかし10px」くらいのディテールが見えている気がしますが、淡い外周部は「ガウスぼかし20px」でもまだ足りないようです。

桿体細胞で見る暗い対象は低解像なので、これにガウスぼかしをかけました。長辺4240ピクセルのα7Sの場合、半径5〜20ピクセルのあたりが肉眼で見た感じになりました。

ぼかし量は対象に応じて、もっと言えば輝度毎に調整した方がよさそうでした。20ピクセルでぼかすとM17の白鳥などの明るい領域ではぼかしすぎになり、逆にごく淡い周辺部では20ピクセルでもぼかし足りない感じもありました。

今回の作例では、5,10,20ピクセルのぼかし画像を作成しておき、ブレンド比を調整して肉眼の印象に近づけるようにしました(*)。

(*)輝度マスクを併用すればさらに再現度が上がることでしょう。

星のみ画像の処理

星のみ画像に対しては輝度に応じた処理を行います。考え方は①輝星以外はモノクロ化する②微光星は消す③星の光度差を誇張する、の3点です。

輝星選択の例。まず輝度選択で星を選択します。次に「選択範囲を縮小」で2px縮小。この操作で微光星が選択から外れます。さらに「選択範囲を拡大」で2px拡大すれば、輝星の選択範囲のみが元に戻ります。

「輝度に応じた処理」にはいろいろなやり方があるかと思いますが、今回は輝度選択で星を選択した後、範囲縮小して微光星を消し、範囲拡大で選択範囲の大きさを元に戻す方法で行いました。縮小/拡大のピクセル数を変えることで「輝星だけ画像」「微光星消し画像」を作ることができます。

ぼかし星消し画像と、輝星のみ画像を比較明合成したところ。輝星画像は彩度強調して色を出します。星雲中心部の星がシアンになってしまったのは星雲の色がピンクであることによる副作用。よい解決法が見つからず、最終画像では選択的に星の色を調整しました。

さらに輝星画像は若干ぼかした画像を比較明合成することで「滲み感」を加えるようにしました(*)。

(*)白内障のない若い人は違った見え方をしているかも・・・

後は肉眼の印象に近づくように「輝星だけ画像」「微光星消し画像」「星のみ画像」の彩度を適宜調整した上で(*)ブレンド比を調整します。

(*)「輝星だけ画像」以外は彩度ゼロにしています。

最終画像の調整

最後に、調整した星消し画像と星のみ画像それぞれを比較明合成(*)し、最後にトーンカーブ等で背景の明るさを調整、彩度を調整しています。



(*)当初比較明合成でやっていたのですが「覆い焼き(リニア)-加算」で処理する方法もあります。「覆い焼き(リニア)-加算」では、より星が明るくなるようです。

さらに再現度を上げるには

今回の処理はあくまで試作レベルです。ガチ天界隈の諸氏の画像処理技術をもってすれば、他にもいろいろなやり方や工夫による改善が可能だと思います(*)。

(*)さしあたっては、輝星をもっと小さくした上で滲みの大きさによって光度差を表現できれば、よりリアリティが出るのではないかと感じています。

やってみると意外と面白いです。ぜひチャレンジしてみてください!

今回使用した機材とそのほかの構成例

フォトビジュアル鏡筒FSQ106ED+フルサイズミラーレスカメラ

2インチスリーブの延長筒にカメラ(α7S)を装着。フラットフィールドな天体望遠鏡の強み。

今回の撮影は「ガチな(Hi-Fi指向の)天体写真とは全く逆。肉眼視の印象を再現するのが目的なので、全対象15〜20秒の1枚撮りという、ほとんど電視に近いスタイルです。

カメラを取り外して正立プリズムと接眼レンズに換装。主にニコンNAV-12.5HW(10mm)を使用。倍率53倍、実視野は2°弱。赤道儀はSXP。自動導入架台は初心者にとても優しい^^

撮影と肉眼視の切替は2インチスリーブへの機材抜き差しで行いました。使用した鏡筒FSQ106EDは、フラットナーやレデューサを装着しなくても天体写真が撮影できるフォトビジュアル型なので、今回のような使い方にはまさにうってつけです(*)。

(*)ねじ込み装着型のフラットナー・レデューサを使用する場合は、けっこう換装が面倒になると思われます。

小型鏡筒ないしはファインダーで親子亀

今回は撮影にフルサイズのミラーレス一眼を使用したので、肉眼視の視野範囲を撮影でもカバーできましたが、小センサーのCMOSカメラ(*)だと拡大率が大きくなりすぎてしまいます。

(*)CMOSカメラを使用する場合は、SharpCapのようなソフトでライブスタックして「電視」するか、ASIAIRのような撮像デバイスを使うことになります。その点、デジカメは撮影が簡便なのがメリットです。

上の画像の構成例はAskarのFMA180PlayerOneのNeptuneCIIを親子亀で装着したもの。換算焦点距離は725mmと少し長いものの、実視界1.7°の視野円(倍率35倍・見かけ視界60°接眼レンズに相当)をカバーするので、今回のような用途にも使えそうです。

ただし、注意が必要なのは主光学系とサブ光学系の光軸を合わせること。 上の画像の鏡筒バンドは「固定」のみで調整機能がありません。別途、ファインダー脚として使える調整可能な台座を使用するのが吉でしょう。

上記のようなCマウントレンズ+1/3 or 1/2センサーの構成もありだと思います。

高感度スマホによるコリメート撮影

高感度に強いスマホをお持ちなら、上の画像のようなコリメート撮影が一番簡単かもしれません。この際注意が必要なのは接眼レンズとスマホの固定方法。市販のスマホアダプタは光軸とアイポイントを調整しづらいものが多いため、接眼レンズを1個スマホ専用に(*)用意して、接眼レンズとスマホをセットで交換するのが便利です。

(*)スマホカメラの視野はそんなに広くないので、見かけ視界45°程度のアイポイントに寛容なクラシック接眼レンズが良いと感じました。

iPhone11 ナイトモード30秒露出 FSQ106ED(焦点距離530mm) セレストロンPL25mm

残念ながら筆者のスマホ(iPhone11)では若干感度不足で冴えませんでしたが、コリメート方式は合成F値をかなり小さく(明るく)することができ、最新の製品では天体写真と遜色がないほどのリザルトが得られるようです。

 

「撮影(電視)+肉眼による天体観賞」のスタイルがどのくらい天文ファンに受け入れられるかは不明ですが^^;; 機材的には何の問題もなく実現可能になっていることは確かです。さまざまな工夫の余地もありそうなので、ぜひチャレンジしてみてください!

リザルト(その2)

M20 三裂星雲

FSQ106ED(口径106mm 焦点距離530mm) SONY α7S(クリア改造) UV/IRカットフィルター ISO12800 20秒露出(1枚) 山口県長門市 視野円は倍率53倍・約2°

M20三裂星雲も、天体写真の美しい映像を期待すると「がっかり」する対象の一つですが、口径10cmあればだいぶ面白くなってきます。さすがに「三裂」までは識別できませんでしたが、折れ曲がった暗黒帯で上半分と下半分に割れているのがなんとかわかりました。

この手の小さな淡い天体では、使用する望遠鏡の「口径」が大きく見え方に効いてきます。口径20cmなら「三裂」までわかりますし、50cmクラスのドブソニアンならだいぶ写真に近いイメージになってきます。口径別にこんな「眼視風画像」を作って「大口径病」を煽ってみたい機材による見え方の違いも可視化してみたいものです。

M8 ナローバンド版

FSQ106ED(口径106mm 焦点距離530mm) SONY α7S(クリア改造) UV/IRカットフィルター ISO12800 20秒露出(1枚) 山口県長門市 視野円は倍率53倍・約2° Optolong L-eXtremeフィルター

ナローバンドフィルター(*)も使ってみました。星雲の発する輝線だけを鋭く通すフィルターです。

(*)OIIIとHαを通すOptolongの製品を使用しました。Hαは肉眼ではほとんど感じないので星雲がより見えるわけではありませんが、明るい恒星はOIIIのみの単色ネビュラフィルターよりも自然な色に見えるように感じました。

このフィルターを装着すると、星雲の明るさはほとんど変わらないのに対して、背景は1/10以下にまで暗くなります。接眼レンズを覗いた瞬間はほぼ真っ暗で何もみえないほどなのですが、じっくり眺めていると(*)星雲の姿が暗黒の背景に浮かび上がってきます。

(*)最低でも15秒、できれば3分。10分粘れば相当に淡いところまで見えてきます。

人間の眼はSQM=28相当まで光の存在を感じることができるそうです(*1)。これはSQM=21.5の理想的な空の、さらに1000分の1の暗さ。極限に暗い中で視覚を最大限に発揮するのも、天体観賞の楽しみの一つかもしれません(*2)。

(*1)沖田博文さんのツイート参照。

(*2)こういった「極限の闇とその中に見えるかすかな光」を感じる体験は、光に満ちた昼間の風景を眺めるのとは全く違います。私見ですが、文明を手に入れ「本当の夜」から離れてしまった人間の視覚が本来持っていた能力を発揮するとき、哺乳類としての「原初」の体験が甦ってくるように感じます。

球状星団 M22

FSQ106ED(口径106mm 焦点距離530mm) SONY α7S(クリア改造) UV/IRカットフィルター ISO12800 20秒露出(1枚) 山口県長門市 視野円は倍率75倍 賞月観星UWA7mm

少し倍率を上げて、75倍での印象の再現。倍率を上げることで背景がより引き締まり、微光星の輝きが増してきます。

球状星団も肉眼視と写真で大きく印象が違います。大口径で大型の球状星団(M13やω星団など)を見ると本当に「びっしり」と星が見えるのですが、口径10cmでのM22はそこまでには見えません。

それでも、丸いぼんやりとした光芒の中に多数の微光星が集まっていて「球状星団らしさ」が出てきたな、という印象です。

こちらは写真仕上げ。写真では微光星も高解像で捉えられるため「周辺までびっしり」な球状星団になります。

網状星雲(西)NGC 6992

FSQ106ED(口径106mm 焦点距離530mm) SONY α7S(クリア改造) UV/IRカットフィルター ISO12800 20秒露出(1枚) 山口県長門市 視野円は倍率53倍・約2°

「網状星雲は肉眼視でもちゃんと見える」これは声を大にして言いたいところです。暗い空なら双眼鏡でも見えるそうですが、やはり口径が大きいほど「網状」らしく見えてきます。上の画像は口径106mm、フィルターなしの印象。見えるけどやっぱり淡いです^^;

FSQ106ED(口径106mm 焦点距離530mm) SONY α7S(クリア改造) UV/IRカットフィルター ISO12800 20秒露出(1枚) 山口県長門市 視野円は倍率53倍・約2° Optolong L-eXtremeフィルター

ところが!ナローバンドフィルター(ネビュラフィルター)を使うと「おお、網状!」と声が出るほど網状らしく見えてきます。超新星の残骸が、こんなふうに自分の眼で見える!これってかなりの感動です^^

口径60cm 200倍くらい ネビュラフィルター(OIII)使用。

こちらはオマケ。以前口径60cmのドブで網状を見せてもらったときの記憶の再現、網状の先っぽ。このクラスの大口径では、網状のフィラメント構造も見えてきます。倍率200倍では網状の全体は視野に入らず、全体を辿っていくのがこれまた楽しい。

3年ほど前のことなので記憶バイアスがどのくらい入っているか微妙なのですが、、皆様のご意見をコメントいただけると嬉しいです。

M27 亜鈴状星雲

FSQ106ED(口径106mm 焦点距離530mm) SONY α7S(クリア改造) UV/IRカットフィルター ISO12800 20秒露出(1枚) 山口県長門市 視野円は倍率53倍・約2°

単位面積当たりの輝度の高い惑星状星雲では、より細かな構造が見えてきます。上の画像では、5ピクセルのガウスぼかし画像にぼかしなしの画像をほんの少しブレンドしています。口径10cmでは色はよくわかりませんが、若干青緑に見えないこともない?くらいの感じでした。大口径ならはっきりと認識できるでしょう。

今回は時間がなくて高倍率でちゃんと見ることができませんでしたが、倍率53倍は低すぎでしょう。200倍くらいにしてナローバンドフィルターを付ければ、もっと微細構造がみえてくるかもしれません。惑星状星雲の面白さはそういった「微細構造チャレンジ」にもあります。

M17

FSQ106ED(口径106mm 焦点距離530mm) SONY α7S(クリア改造) UV/IRカットフィルター ISO12800 20秒露出(1枚) 山口県長門市 視野円は倍率53倍・約2° Optolong L-eXtremeフィルター

ナローバンドフィルターを使用した印象。フィルターなしでは見えるのは「逆さ白鳥」のあたりまでですが、フィルターを使うと外周の大きなループが見えてきます。「逆さ白鳥」の胴体も、なんだか「ごつごつした構造」があるような雰囲気です。この感じはM82やNGC253と似ています。

北アメリカ星雲

FSQ106ED(口径106mm 焦点距離530mm) SONY α7S(クリア改造) UV/IRカットフィルター ISO12800 20秒露出(1枚) 山口県長門市 視野円は倍率27倍 約2.5°相当 Optolong L-eXtremeフィルター

北アメリカ星雲もちゃんと肉眼視で見える天体です。ただし、フィルターなしでは天の川の明るい星々の光に幻惑されてしまうのか、メキシコ半島とメキシコ湾の切れ込みくらいしかわかりませんでした。

もうひとつ、北アメリカ星雲が視野内ぎりぎりだと、ナローバンドフィルターを付けても全体の形がいまひとつよくわかりませんでした。40mmの接眼レンズを使用した倍率13倍(実視野5°程度)で見ると「おー、北アメリカ!」という感じに明瞭に確認できました。バラ星雲もそうなのですが「淡い対象が視野一杯」の状態になると、全体像の確認が難しいのかもしれません。

こちらは肉眼視の「印象以上」に盛った画像。筆者の眼ではここまでは見えませんでしたが「記憶」というのは個人差もあれば時間とともに変わってもいきます。眼視初心者にアピールするには若干盛ってもいい気もする一方で「がっかり」されても困ります^^;; どのあたりを落とし所にするのかは、長い時間をかけて多くの人の印象を平均化していく必要があるのかもしれませんね。

 

まだ幾つか素材はあるのですが、今回はこのくらいにしておきます。「肉眼の印象の再現」はなかなか面白く、もっといろいろな天体・機材での情報をまとめていけば、現代版の星雲星団ガイドブックが作れるかもしれません。多くの方のトライアルをお待ちしています!

まとめ

ガチ撮影と違って、シンプルに赤道儀一つ・鏡筒一つ。熱帯夜で大汗かきながらも、なかなか楽しい一夜でした。ただし、帰宅後の画像処理は面倒です^^; 次回は基本処理はPSのバッチ処理化をやってみますか。

いかがでしたか?

肉眼で見る星空、天体望遠鏡で見る星空は本当に美しい。しかし、天文趣味クラスタ全体の中で「眼視(肉眼視)」は「少数派(マイナー)」と思われている(*)のはなぜなのか。

(*)これも眼視派の方に怒られそうですが・・・^^;;

筆者が考える最大の理由は、眼視は未体験者から見て「映える」要素がないからです。記憶には鮮やかに残っているのに、記録に残らないが故に第三者にその素晴らしさを伝えにくい。ならば、記録に残して伝えてみようぞ。

筆者は「肉眼視(眼視観望ないしは天体観賞)」は、天文趣味の原点としての価値があると確信しています。どうやったら、肉眼視をもっと楽しめるのか、より多くの人にその楽しさを伝えられるのか。

まだまだ、いろいろやってみるつもりです。お楽しみに!

https://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2022/08/fc6927a4cd7fc6f068de9eb5d3ae4aff-2-1024x538.jpghttps://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2022/08/fc6927a4cd7fc6f068de9eb5d3ae4aff-2-150x150.jpg編集部特選ピックアップ天体観賞(観望)天体観賞みなさん、こんにちは!天体望遠鏡で星見てますか?! 最近の筆者(編集長)のマイブームは「天体観賞(観望)」。写真は写真で面白いのですが(*)、肉眼視にはそれとは違った体験があります。天体望遠鏡で星を見るのって、やっぱり楽しいのです。 (*)もちろん天体写真や星空の風景を撮影するのも楽しいし、実際のところ「眼視機材セット」を持ち出すのは10回に1回あるかないかなのですが・・ でも、この楽しさをどうやったら自分以外の人に伝えられるのだろう? 天体写真と違って、肉眼で見た記憶を記録することは簡単ではありません。絵心があれば「スケッチ」という手もあるのですが、そんなものは持ち合わせない私。「星がキラキラと輝き、ぼんやりと浮かぶ星雲の姿に宇宙の神秘を感じた」とか、わかったようなわからないような「ポエム」を書くのも・・・限界がありますよね。 そこで!肉眼で見た天体の印象を、画像処理で再現してみよう!と思い立ちました。本記事はその記録と考察です。 とはいえ、写真と肉眼視には臨場感という根本的な違いがあります。キラキラとまたたく星の輝きは静止画では再現できません。夜の暗闇の中、天体望遠鏡と空気の向こうに見える満天の星、その先にある「宇宙」という大きな存在を常に感じながら星を見るという総合的な体験が、肉眼視による「天体観賞」。でもそれは本記事とは別の文脈なのでまた別の機会に。今回は「なんとか写真で眼視の体験を記録できないか」がテーマです。 注)本記事では「天体望遠鏡を使って肉眼で天体を観察すること」を「肉眼視」または「天体観賞」と呼称しています。天文界隈では普通「眼視(観望)」と呼ばれているものと同じです。 まずはリザルト いて座M8干潟星雲 一つめはいて座の干潟星雲M8です。左が普通に撮影してカラーバランスだけ整えた「天体写真」ですが、それをあれこれ「肉眼視風」に加工したのが右。視野円の範囲は見かけ視界100°の53倍(口径は106mm)の範囲に合わせています。 全天有数の明るさの星雲(+星団)であるM8は、肉眼視でも大変美しく楽しめる対象ですが、この画像のような印象で見るためには、それなりに暗い空が必要でしょう。この日は実測でSQM21.2(機器の個体差を加味すると21.4程度)でした。 もう少し大きく。そこそこ空の暗い場所(SQM=21.5程度)で口径10cmクラスの天体望遠鏡で見た印象にだいぶ近づいたように思いますが、いかがでしょう? 実際のところは、肉眼視の印象に及ばないところがいくつかあります。一つは輝星の輝き。もっと小さく鋭く輝いていて、ごく淡い光芒に取り囲まれた印象です(*)。星雲も微光星もほとんど色がないのはこの画像の通りですが、オレンジと青の輝星は派手な原色ではないものの、明瞭に色づいています。 (*)筆者の白内障のせい? 背景の空の明るさは、この画像よりももっと暗い印象。ただ、ある程度背景を上げないと星も星雲も力弱くなってしまいます。このへんのさじ加減が難しい(*) (*)部屋を暗くするとより肉眼の印象に近づきます。 星雲は中央の暗黒帯は明瞭に認識できるのですが、この画像よりはぼんやりした感じ。小さな星団と重なった部分はもっと「もやっ」として透明な感じ。この「透明感」も写真では表現が難しいところ。 さらに、今回は見かけ視界100°の接眼レンズを使用したため、この画像のようには視野円を「一望」することはできません。視野円が視野の隅にくるくらいに眼を思いっきり近づけると、その印象により近くなります。 M24バンビの横顔 バンビの横顔は望遠鏡なしの肉眼でも、ぼんやりと確認できる天の川の「濃い部分」です。この画像では「バンビの頭」も「眼」も明瞭にわかるのですが、実際に見た印象では「大きすぎて」横顔全部を見渡すことができず、同定するまでけっこう時間がかかりました(*)。 (*)見かけ視界の「広すぎる」100°接眼レンズでは、視野内に対象全部が入っていたとしても、全体の形の認識が困難な場合があるようです。 無数の星々が視野いっぱいに広がって素晴らしい光景ではあるのですが、54倍では「バンビ全体を眺める」という感覚とはちょっと違う感じ。より低倍率で全体を見渡せるようにした方が楽しめるかもしれません(*)。 (*)瞳径の限界を無視して13倍!でも見てみましたが、背景が明るくなりすぎてちょっと残念な感じでした。適切な倍率を選ぶのは、対象の大きさに応じてという意味もありますが、背景の明るさのコントロールの意味も大きいと感じました。 はくちょう座M39 まばらながらも明るい星20個ばかりが三角形に集まった、はくちょう座の散開星団です。地味ながら、小口径の望遠鏡でこそ美しく眺められる星団の一つ。特に、青い星とオレンジの星の色の対比がチャームポイント。 上の画像では輝星の色を強めに強調しているのでやや不自然感がありますが、肉眼の印象ということで許してください^^; とはいえ、画像にしてしまうとやっぱり地味(*)ですね^^;;; (*)肉眼で実際に眺めると、星団の星々がキラキラと輝いて本当に美しい。これはデジタルプラネタリウムと光学式プラネタリウムの違いにも似ています。 天体写真風仕上げ。天の川の最も星が多いエリアでもあり、微光星がびっしりと写ります。星の多さが逆に背景輝度を上げてしまい、肉眼での「漆黒の空に輝く星々」の印象から遠くなってしまうのが「写真」の弱み。散開星団こそ、肉眼で一番楽しめる対象といえるのではないでしょうか(*)。 (*)実際、天体写真の対象としては散開星団は人気がありません。 アンドロメダ座M31 肉眼がっかり天体の代表格、M31。筆者も小学生のときに初めて口径77mmの望遠鏡で見てがっかりしました。M31を見て「美しい」と思えるようになるには、ある程度の天体観賞の経験と、バイアスのかかった?マニア心が必要になります(*) (*)こういう書き方をするとその筋のエキスパートに怒られそうですが、残念な対象の「残念さ」は冷静に自己認識しておかないと、一般ピープルと会話が成り立たなくなります^^;;  経験を積んで様々な銀河を一通り見た後M31を見ると、若干見方が変わってきます。「なんてデカイ!(他の銀河は圧倒的に小さい)」「腕の暗黒帯がはっきりわかる!(口径10cmで腕がわかる銀河はごくわずか)」などなど。 2つの伴銀河の存在もチャームポイント。250万光年先の隣人、そしてはるか先の未来に我が天の川銀河(銀河系)と衝突して合体する日を夢想すると、宇宙の広さと永遠の時間を感じずにはいられません。 こちらは写真風仕上げ。たった20秒の1枚なので天体写真としては「超Lo-Fi(低画質・低再現度)」ですが、それでも肉眼視の姿とは全くといっていいほど違います。人間の眼では、輝度の低い渦巻は「ぼやっ」としか見えないし、中心部の黄色と腕の青色の差は全く認識できないのです。 しかし、このような写真での天体の姿が頭に入っていると、より肉眼視を楽しむ助けにもなります。知識と先入観は紙一重ではありますが、知っているからこそ見える・感じることもあるのが天体観賞の面白いところ。 まだリザルトはいくつかあるのですが、前半はまずはこのくらいにしておきましょう。 「肉眼視」と「天体写真」の違いを意識した画像処理 それでは、どのように画像を処理すれば「肉眼で見たような天体の姿」に近づけることができるのでしょうか。 ポイントは人間の眼の特性にあります。視細胞は高解像で色も感じ取れる「錐体細胞」と、高感度だが解像力が低く色も感じない「桿体細胞」の2種類があります。 明るい星では錐体細胞が働き、星の鋭い「芯」や色を感じることができます。反面、星雲や銀河のような暗い対象の場合は錐体細胞は無力化してしまい、低解像でモノクロの世界になってしまいます。 さらに、極限に暗い状態では、桿体細胞は天体写真でいう「ビニング」のような作用によって解像度を犠牲にして高感度化するようで(*)、暗い天体ほどぼんやりとしか見えないようです。 (*)参考:https://tenkyo.net/kaiho/pdf/2007_03/2007-03-11.pdf 以上のような視細胞の特性を再現するような画像処理を行っていくことになります。 星と星雲を分離する 単位面積当たりの輝度が低い星雲においては、色を感じる錐体細胞の出番はほとんどありません。そこで、まず星と淡い星雲を分離します。 ガチ天体写真でよく使われている「StarNet++」や「StarXTerminator」を使えば一発で「星消し画像」を作ることができます。上の画像は星消し後の画像。今回はPhotoshopのプラグインStarXTerminatorを試用しました。処理は一発です。 元画像から星消し画像を減算すれば「星だけ画像」ができます。この2つに対して別々に処理を行っていきます。 星消し画像の処理・Gチャンネルでモノクロ化 星消し画像の情報を知覚できるのは主に色を感じない桿体細胞。そこでばっさりとモノクロ化します。桿体細胞は緑〜青の光にしか感度がないため、Rチャンネルは潔く破棄。作例ではGチャンネルのみでモノクロ化しました(*)。 (*)暗順応が進んだ状態では「プルキンエ現象」でむしろBの感度が高くなるのですが、今回の処理コンセプトでは誤差の範囲とみなしました。 星消し画像の処理・ガウスぼかしで解像度を下げる 桿体細胞で見る暗い対象は低解像なので、これにガウスぼかしをかけました。長辺4240ピクセルのα7Sの場合、半径5〜20ピクセルのあたりが肉眼で見た感じになりました。 ぼかし量は対象に応じて、もっと言えば輝度毎に調整した方がよさそうでした。20ピクセルでぼかすとM17の白鳥などの明るい領域ではぼかしすぎになり、逆にごく淡い周辺部では20ピクセルでもぼかし足りない感じもありました。 今回の作例では、5,10,20ピクセルのぼかし画像を作成しておき、ブレンド比を調整して肉眼の印象に近づけるようにしました(*)。 (*)輝度マスクを併用すればさらに再現度が上がることでしょう。 星のみ画像の処理 星のみ画像に対しては輝度に応じた処理を行います。考え方は①輝星以外はモノクロ化する②微光星は消す③星の光度差を誇張する、の3点です。 「輝度に応じた処理」にはいろいろなやり方があるかと思いますが、今回は輝度選択で星を選択した後、範囲縮小して微光星を消し、範囲拡大で選択範囲の大きさを元に戻す方法で行いました。縮小/拡大のピクセル数を変えることで「輝星だけ画像」「微光星消し画像」を作ることができます。 さらに輝星画像は若干ぼかした画像を比較明合成することで「滲み感」を加えるようにしました(*)。 (*)白内障のない若い人は違った見え方をしているかも・・・ 後は肉眼の印象に近づくように「輝星だけ画像」「微光星消し画像」「星のみ画像」の彩度を適宜調整した上で(*)ブレンド比を調整します。 (*)「輝星だけ画像」以外は彩度ゼロにしています。 最終画像の調整 最後に、調整した星消し画像と星のみ画像それぞれを比較明合成(*)し、最後にトーンカーブ等で背景の明るさを調整、彩度を調整しています。 (*)当初比較明合成でやっていたのですが「覆い焼き(リニア)-加算」で処理する方法もあります。「覆い焼き(リニア)-加算」では、より星が明るくなるようです。 さらに再現度を上げるには 今回の処理はあくまで試作レベルです。ガチ天界隈の諸氏の画像処理技術をもってすれば、他にもいろいろなやり方や工夫による改善が可能だと思います(*)。 (*)さしあたっては、輝星をもっと小さくした上で滲みの大きさによって光度差を表現できれば、よりリアリティが出るのではないかと感じています。 やってみると意外と面白いです。ぜひチャレンジしてみてください! 今回使用した機材とそのほかの構成例 フォトビジュアル鏡筒FSQ106ED+フルサイズミラーレスカメラ 今回の撮影は「ガチな(Hi-Fi指向の)天体写真とは全く逆。肉眼視の印象を再現するのが目的なので、全対象15〜20秒の1枚撮りという、ほとんど電視に近いスタイルです。 撮影と肉眼視の切替は2インチスリーブへの機材抜き差しで行いました。使用した鏡筒FSQ106EDは、フラットナーやレデューサを装着しなくても天体写真が撮影できるフォトビジュアル型なので、今回のような使い方にはまさにうってつけです(*)。 (*)ねじ込み装着型のフラットナー・レデューサを使用する場合は、けっこう換装が面倒になると思われます。 小型鏡筒ないしはファインダーで親子亀 今回は撮影にフルサイズのミラーレス一眼を使用したので、肉眼視の視野範囲を撮影でもカバーできましたが、小センサーのCMOSカメラ(*)だと拡大率が大きくなりすぎてしまいます。 (*)CMOSカメラを使用する場合は、SharpCapのようなソフトでライブスタックして「電視」するか、ASIAIRのような撮像デバイスを使うことになります。その点、デジカメは撮影が簡便なのがメリットです。 上の画像の構成例はAskarのFMA180にPlayerOneのNeptuneCIIを親子亀で装着したもの。換算焦点距離は725mmと少し長いものの、実視界1.7°の視野円(倍率35倍・見かけ視界60°接眼レンズに相当)をカバーするので、今回のような用途にも使えそうです。 ただし、注意が必要なのは主光学系とサブ光学系の光軸を合わせること。 上の画像の鏡筒バンドは「固定」のみで調整機能がありません。別途、ファインダー脚として使える調整可能な台座を使用するのが吉でしょう。 【アウトレット品追加!】PlayerOneのお買い得アウトレット品を追加しました!100ガイドスコープセットは電子ファインダーとしても便利です!https://t.co/i4vfkiVjxshttps://t.co/HiDkYnKJSs pic.twitter.com/FRguSh7Tsj — シュミパンちゃん (@SIGHTRON_JAPAN) August 20, 2022 上記のようなCマウントレンズ+1/3 or 1/2センサーの構成もありだと思います。 高感度スマホによるコリメート撮影 高感度に強いスマホをお持ちなら、上の画像のようなコリメート撮影が一番簡単かもしれません。この際注意が必要なのは接眼レンズとスマホの固定方法。市販のスマホアダプタは光軸とアイポイントを調整しづらいものが多いため、接眼レンズを1個スマホ専用に(*)用意して、接眼レンズとスマホをセットで交換するのが便利です。 (*)スマホカメラの視野はそんなに広くないので、見かけ視界45°程度のアイポイントに寛容なクラシック接眼レンズが良いと感じました。 残念ながら筆者のスマホ(iPhone11)では若干感度不足で冴えませんでしたが、コリメート方式は合成F値をかなり小さく(明るく)することができ、最新の製品では天体写真と遜色がないほどのリザルトが得られるようです。   「撮影(電視)+肉眼による天体観賞」のスタイルがどのくらい天文ファンに受け入れられるかは不明ですが^^;; 機材的には何の問題もなく実現可能になっていることは確かです。さまざまな工夫の余地もありそうなので、ぜひチャレンジしてみてください! リザルト(その2) M20 三裂星雲 M20三裂星雲も、天体写真の美しい映像を期待すると「がっかり」する対象の一つですが、口径10cmあればだいぶ面白くなってきます。さすがに「三裂」までは識別できませんでしたが、折れ曲がった暗黒帯で上半分と下半分に割れているのがなんとかわかりました。 この手の小さな淡い天体では、使用する望遠鏡の「口径」が大きく見え方に効いてきます。口径20cmなら「三裂」までわかりますし、50cmクラスのドブソニアンならだいぶ写真に近いイメージになってきます。口径別にこんな「眼視風画像」を作って「大口径病」を煽ってみたい機材による見え方の違いも可視化してみたいものです。 M8 ナローバンド版 ナローバンドフィルター(*)も使ってみました。星雲の発する輝線だけを鋭く通すフィルターです。 (*)OIIIとHαを通すOptolongの製品を使用しました。Hαは肉眼ではほとんど感じないので星雲がより見えるわけではありませんが、明るい恒星はOIIIのみの単色ネビュラフィルターよりも自然な色に見えるように感じました。 このフィルターを装着すると、星雲の明るさはほとんど変わらないのに対して、背景は1/10以下にまで暗くなります。接眼レンズを覗いた瞬間はほぼ真っ暗で何もみえないほどなのですが、じっくり眺めていると(*)星雲の姿が暗黒の背景に浮かび上がってきます。 (*)最低でも15秒、できれば3分。10分粘れば相当に淡いところまで見えてきます。 人間の眼はSQM=28相当まで光の存在を感じることができるそうです(*1)。これはSQM=21.5の理想的な空の、さらに1000分の1の暗さ。極限に暗い中で視覚を最大限に発揮するのも、天体観賞の楽しみの一つかもしれません(*2)。 (*1)沖田博文さんのツイート参照。 (*2)こういった「極限の闇とその中に見えるかすかな光」を感じる体験は、光に満ちた昼間の風景を眺めるのとは全く違います。私見ですが、文明を手に入れ「本当の夜」から離れてしまった人間の視覚が本来持っていた能力を発揮するとき、哺乳類としての「原初」の体験が甦ってくるように感じます。 球状星団 M22 少し倍率を上げて、75倍での印象の再現。倍率を上げることで背景がより引き締まり、微光星の輝きが増してきます。 球状星団も肉眼視と写真で大きく印象が違います。大口径で大型の球状星団(M13やω星団など)を見ると本当に「びっしり」と星が見えるのですが、口径10cmでのM22はそこまでには見えません。 それでも、丸いぼんやりとした光芒の中に多数の微光星が集まっていて「球状星団らしさ」が出てきたな、という印象です。 こちらは写真仕上げ。写真では微光星も高解像で捉えられるため「周辺までびっしり」な球状星団になります。 網状星雲(西)NGC 6992 「網状星雲は肉眼視でもちゃんと見える」これは声を大にして言いたいところです。暗い空なら双眼鏡でも見えるそうですが、やはり口径が大きいほど「網状」らしく見えてきます。上の画像は口径106mm、フィルターなしの印象。見えるけどやっぱり淡いです^^; ところが!ナローバンドフィルター(ネビュラフィルター)を使うと「おお、網状!」と声が出るほど網状らしく見えてきます。超新星の残骸が、こんなふうに自分の眼で見える!これってかなりの感動です^^ こちらはオマケ。以前口径60cmのドブで網状を見せてもらったときの記憶の再現、網状の先っぽ。このクラスの大口径では、網状のフィラメント構造も見えてきます。倍率200倍では網状の全体は視野に入らず、全体を辿っていくのがこれまた楽しい。 3年ほど前のことなので記憶バイアスがどのくらい入っているか微妙なのですが、、皆様のご意見をコメントいただけると嬉しいです。 M27 亜鈴状星雲 単位面積当たりの輝度の高い惑星状星雲では、より細かな構造が見えてきます。上の画像では、5ピクセルのガウスぼかし画像にぼかしなしの画像をほんの少しブレンドしています。口径10cmでは色はよくわかりませんが、若干青緑に見えないこともない?くらいの感じでした。大口径ならはっきりと認識できるでしょう。 今回は時間がなくて高倍率でちゃんと見ることができませんでしたが、倍率53倍は低すぎでしょう。200倍くらいにしてナローバンドフィルターを付ければ、もっと微細構造がみえてくるかもしれません。惑星状星雲の面白さはそういった「微細構造チャレンジ」にもあります。 M17 ナローバンドフィルターを使用した印象。フィルターなしでは見えるのは「逆さ白鳥」のあたりまでですが、フィルターを使うと外周の大きなループが見えてきます。「逆さ白鳥」の胴体も、なんだか「ごつごつした構造」があるような雰囲気です。この感じはM82やNGC253と似ています。 北アメリカ星雲 北アメリカ星雲もちゃんと肉眼視で見える天体です。ただし、フィルターなしでは天の川の明るい星々の光に幻惑されてしまうのか、メキシコ半島とメキシコ湾の切れ込みくらいしかわかりませんでした。 もうひとつ、北アメリカ星雲が視野内ぎりぎりだと、ナローバンドフィルターを付けても全体の形がいまひとつよくわかりませんでした。40mmの接眼レンズを使用した倍率13倍(実視野5°程度)で見ると「おー、北アメリカ!」という感じに明瞭に確認できました。バラ星雲もそうなのですが「淡い対象が視野一杯」の状態になると、全体像の確認が難しいのかもしれません。 こちらは肉眼視の「印象以上」に盛った画像。筆者の眼ではここまでは見えませんでしたが「記憶」というのは個人差もあれば時間とともに変わってもいきます。眼視初心者にアピールするには若干盛ってもいい気もする一方で「がっかり」されても困ります^^;; どのあたりを落とし所にするのかは、長い時間をかけて多くの人の印象を平均化していく必要があるのかもしれませんね。   まだ幾つか素材はあるのですが、今回はこのくらいにしておきます。「肉眼の印象の再現」はなかなか面白く、もっといろいろな天体・機材での情報をまとめていけば、現代版の星雲星団ガイドブックが作れるかもしれません。多くの方のトライアルをお待ちしています! まとめ いかがでしたか? 肉眼で見る星空、天体望遠鏡で見る星空は本当に美しい。しかし、天文趣味クラスタ全体の中で「眼視(肉眼視)」は「少数派(マイナー)」と思われている(*)のはなぜなのか。 (*)これも眼視派の方に怒られそうですが・・・^^;; 筆者が考える最大の理由は、眼視は未体験者から見て「映える」要素がないからです。記憶には鮮やかに残っているのに、記録に残らないが故に第三者にその素晴らしさを伝えにくい。ならば、記録に残して伝えてみようぞ。 筆者は「肉眼視(眼視観望ないしは天体観賞)」は、天文趣味の原点としての価値があると確信しています。どうやったら、肉眼視をもっと楽しめるのか、より多くの人にその楽しさを伝えられるのか。 まだまだ、いろいろやってみるつもりです。お楽しみに!編集部発信のオリジナルコンテンツ