星見屋.com PresentsED硝材を2枚使用した口径85mmの「分離式3枚玉」小型望遠鏡、Founder Optics FOT85。FOT85の実写作例はこれまで天リフでも断続的にレポートしてきましたが、フォト用途の鏡筒としてFOT85はどんな位置づけになるのか?どんな用途に適しているのか?どんな周辺像と中心像が得られるのか?について詳しくレビューしていきます!
スタークラウド・Founder optics FOT85 ファウンダーオプティクスFOT85天体望遠鏡
https://www.starcloud.jp/SHOP/FOT85-LG.html

フォト鏡筒としてのFOT85

「少し長め」の写真鏡筒FOT85

まず、FOT85の写真鏡筒としての位置づけを明らかにしていきましょう。

代表的なフォト用途鏡筒について、F値と焦点距離をグラフ化してみました。この図を見ると、FOT85の他とは少し違った位置づけが浮き彫りになってきます。

FOT85はフラットナーを装着すると560mmF6.6(*)。0.8xのレデューサを装着すると448mmF5.3。これは同一口径レンジのFSQ85EDやBORG90FL(+RD)のような明るさを追求したフォト重視の鏡筒よりは少し長め。SD81Sや、口径は違いますがタカハシFC100系などの眼視重視の鏡筒よりは短め

(*)フラットナーの倍率が公開されていないため1.0で計算しています。

明るさはもはや絶対的な正義ではない

フォト鏡筒としては少し長めのFOT85。それは同時に「少し暗め」であることを意味します。「少し長い・少し暗い」というのは、悪いことなのでしょうか?それとも良いことなのでしょうか?

フィルム時代、屈折フォト鏡筒は「いかに明るいか」がその価値の第一基準でした。そもそもフィルムの場合は「明るい鏡筒でないと満足に写らなかった」からです。

その後デジタル時代になり、より尖鋭な像・色収差の少ない像に対する要求レベルが上がりましたが、ユーザは引き続き「明るい鏡筒」を求め続け、「暗い鏡筒」はどちらかといえば敬遠されてきました。しかし、デジタル写真の技術が成熟し、多数枚・長時間のコンポジットが主流になった現在「明るさは正義」という価値観には若干の見直しが必要なのではないでしょうか。

焦点距離で使い分けよう・暗さは露出時間でカバーする

Founder Optics FOT85 純正可変バックフォーカスフラットナー(BF=63mm) F6.6 fl=560mm ASI294MC 8sec*340 LPS-V4 DSSで加算平均、ダーク*100、フラット50、フラットダーク50 ゲイン400 トリミング 輝度マスク使用 福岡市内自宅ベランダ

この作例はF6.6のFOT85で撮影したものです。デジタルの時代になって、少々Fが暗くてもコンポジットと様々な画像処理でじゅうぶん遜色のない結果を得ることが可能になりました。F値の暗さは露出時間でカバーできるのです。

同じ焦点距離のF4とF5.6の光学系があるとき、どちらが写真用途に向いているかは明白です。F4はF5.6の1/2の露出時間で済みます。口径が違うので光量に差があるのは当然ですね。その意味では「明るさ」は相変わらず「正義」です。

しかし、口径が同じ100mmの「400mmF4の光学系」と「560mmF5.6の光学系」に、はたして「優劣」というものは存在するのでしょうか?

F値の暗い光学系であっても、露出が不足するという問題は今や多数枚・長時間撮影のコンポジットによって解決することができます。400mmF4と560mmF5.6の差は「優劣」ではなく対象をどのくらいの大きさ(広さ)で切り取るかという「使い分け」なのではないでしょうか。

他にない使いやすさの「長めの鏡筒」FOT85

その観点でFOT85を見ると、使いこなしのキーになるのは焦点距離です。

フラットナーを使用して560mm、x0.8のレデューサを使用して448mm。同口径のF4クラスの光学系と比較して長め。分子雲やHII領域のような広い対象を撮るには向きませんが、M42やM31などのいわゆる「メジャー天体」を大きく撮るにはちょうど良い長さです。

写真鏡筒としてのFOT85の最大のライバル?はFSQ106ED?焦点距離は少しだけ長く、重量と価格は半分以下。口径が小さい分、光量とイメージサークルは太刀打ちできませんが、あとは「作品で勝負だ!^^;;;」

前出のグラフを見ると、この450mm〜560mmのレンジをカバーする小型の屈折鏡筒は実は少ないことがわかります(*)。焦点距離が一番近いのは反射系のε130、180、そしてより口径の大きなFSQ106EDです。

口径85mmのFOT85は、光量的にはこれらの鏡筒にはかなわないのですが、取り回しの良い重量3.5kgの屈折鏡筒でこの焦点距離レンジがカバーできることがFOT85の最大の特徴といえます。

次項以降、これまで撮影した実写作例をいくつかご紹介します。FOT85の結像性能は十分に満足がいくものでした。「同一焦点域のより大口径の屈折鏡筒・反射鏡筒をじゅうぶん”ライバル視”できるくらいのポテンシャル」があると感じています(*)。

(*)たとえばタカハシのFSQ106EDと比較すると口径差ぶんの光量差や豊富な周辺光量の点では負けますが、ディテールの描写ではまったく引けを取りません。しかも重量と価格は半分です。

実写作例(1)4/3センサー+フラットナー

長焦点側での中心部の解像度を見ていただく意味で、4/3センサー+フラットナーによる作例をいくつかごらん頂きましょう。

4/3サイズセンサーとFOT85の相性は抜群。FOT85+フラットナーでは、「焦点距離560mm」を生かしたディテールの描出が可能。小さな天体を大きく撮るには楽しい組み合わせです。センサーサイズが小さい場合は周辺減光の影響が少なくフラットなしでもじゅうぶん運用可能。PSの周辺減光補正だけでほぼOKです。「アンプグロー」を避けて構図を決めればダークも省略可能でかなりお手軽に撮影ができました。

とはいえ、560mmはガイドエラーやシーイングによる星像悪化が気になり始めるレベルでもあります。お手軽とはいえども、要所要所は締めて撮影する必要があります。

以下、作例はいずれもクリックで拡大表示できます。

ASI294MCによるM81/82

FOT85(fl560mm、F6.6) 純正可変バックフォーカスフラットナー(BF=63mm)  ASI294MC gain=400 60sec*97 、gain300 8sec*27 フラット・ダークなし FlatAidProで飽和復元合成  トリミング SXP+GT40 福岡県小石原 福岡県東峰村小石原

いかがでしょうか。かなりイケている解像度といえるではないでしょうか。M81の腕、M82の赤いジェットが口径85mmでここまで写ればかなり満足といえるでしょう。

左:FOT85 総露出97分 右:某社製10cmクラス屈折アポ 総露出44分
左:FOT85 総露出97分 右:某社製10cmクラス屈折アポ 総露出44分

別の機材による画像と比較してみました。左がFLT85、右は口径10cmクラスのアポ鏡筒によるものです。超控えめに言っても負けていません。というか勝ってしまっています^^;;露出時間も光学系も撮影日も皆違うのでネタレベルの比較ですが(*)。

(*)500mmクラスの長焦点では、ピント・シーイング・ガイド精度・撮影者の技量(右の画像は筆者が天体写真をはじめて間もないころの撮影です^^;;)によって大きく結果が異なります。上記作例は風とピントの差と推測しています。

ASI294MCによるしし座トリオ星雲

FOT85(fl560mm、F6.6) 純正可変バックフォーカスフラットナー(BF=63mm) ASI294MC gain=400 60sec*65、ダーク*20  SXP+GT40 福岡県小石原 福岡県東峰村小石原

もう一つ。こちらはしし座のトリオ星雲。少しトリミングしています。
NGC3628から吹き出しているジェットが写るはずだったのですがさすがに総露出時間65分では描出できませんでした。3時間、5時間を重ねれば描出できると思うのですが、短時間露出ではやはり口径85mmの限界が感じられます。

ASI294MCによるトールの兜星雲

FOT85(fl560mm、F6.6) 純正可変バックフォーカスフラットナー(BF=63mm) ASI294MC gain=400 60sec*95 、ダーク*20  SXP+GT40 福岡県小石原 福岡県東峰村小石原

さらにもう一つ。おおいぬ座のトールのかぶと星雲。銀河の星の中に埋もれてしまうためなかなか仕上げるのが難しい対象です。

思いのほか細部の構造がよく出てきました。本来なら4時間くらい露出したいところですが、このような「小さめの天体」でも、焦点距離560mmあれば小口径でも手が届く、という一つの例です。

他にも、あれい状星雲M27やらせん星雲NGC7293など、あまり淡くない小さな星雲はFOT85のよいターゲットになるでしょう。

ASI294MCによるM42・光害地

冒頭でご紹介した画像、ASI294MC・ベランダ撮影によるM42。
こちらはASI294MCの紹介記事でも既出の画像です。FOT85の中心部の高性能ぶりはベランダ撮影でもいかんなく発揮されます。星像は最小で2*2ピクセル。

上はトリミング前の四隅中央の等倍画像。4/3センサーなら4隅も中央もほとんど変わらない星像です。
小センサーの場合、四隅の星像の悪化の心配が減るのも大きなメリット。

実写作例(2)フルサイズセンサー+フラットナー

6D(SEO-SP4)によるM8

FOT85(fl560mm、F6.6) 純正可変バックフォーカスフラットナー(BF=63mm)  EOS6D(SEO-SP4) IS3200 30sec*38 フラット・ダークなし 福岡県東峰村小石原

では、フルサイズではどうでしょうか。上の画像はEOS6DによるM8、M20です。右の大きな赤い星は火星。ほぼトリミングなしの画像です。フラットとダークはともになし。

総露出時間が20分弱と短い上に、薄雲が時折通過する条件下で星像がいまひとつぼってりしていますが、中心像と周辺像に大きな差がないところに注目していただければと思います。

等倍による四隅と中央の周辺像の比較。
フルサイズでこの周辺星像ならなかなかの写りといえるでしょう。

フルサイズのフラット画像

EOS6D(SEO-SP4) FOT85+純正可変BFフラットナー(BF=63mm) camera rawでカラーバランスのみ補正、強調なし

フルサイズでのフラット。四隅は少し陰っていますが、この程度なら容易にフラット補正できる範囲でしょう。周辺像的にも、周辺光量的にも、フルサイズでもじゅうぶんイケている感じです(*)。

(*)不思議なことに「ミラーボックスケラレ」がほとんど出ていません。全く納得がいかず何度も撮り直したのですが・・なんでなんでしょうか。

フルサイズの560mmの活用

FOT85+フラットナー+フルサイズの560mmでは、北アメリカ星雲やオリオン大星雲周辺のような広がった天体を画面いっぱいにとらえることができ、直焦点の醍醐味が味わえる焦点距離と画角といえます。より口径の大きなε180やFSQ106EDと比べると、同じクオリティを得るには露出時間は余計に必要になりますが、逆に必要なのはそれだけ

明るい対象なら、口径の小ささもあまり不利にはなりません。軽い鏡筒・軽い赤道儀で手軽に運用できるのも魅力。露出時間を短くしたラッキーイメージング的な手法なら、ポタ赤でも運用可能です。3枚玉アポというある意味マニアな鏡筒で、ポタ赤でライトに天体写真を楽しむというスタイルも渋いかもしれませんね。

【連載8】実践・天体写真撮影記・月明上等!で「近征」、SWAT-310(V-spec)ほか

上の記事は高精度のポータブル赤道儀SWAT-310を使用してFOT85を運用した撮影記と作例です。

 

今回使用したフラットナーとシステム構成

最後に、今回使用したフラットナーをご紹介しておきます。

純正可変バックフォーカスフラットナー

鏡筒の製造元と同じメーカーによるフラットナーです。ヘリコイドでバックフォーカスを調整することができます。

この製品は現在販売準備中で、近日中に詳細がアナウンスされる見込みです。

追記)商品ページが更新されました。税込19,800円です。

スタークラウド・調整式等倍フラットナー
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純正バックフォーカス可変フラットナー。最小で55mm、最大で80mmまでバックフォーカスを調整できます。右のネジはヘリコイドを固定するクランプ。今回は「63mm」で使用しています。

使用した製品は、鏡筒側は2インチスリーブ、カメラ側はT2マウント(42mm径)です。

バックフォーカス可変タイプの補正レンズの場合、バックフォーカスを調整すると周辺光量も変化することに注意しなければなりません。当然ですが、フラットを撮像する場合はピント位置を含め全ての光学系を同一の状態にする必要があります。

 バックフォーカスの追い込み

FOT85(fl560mm、F6.6)、EOS6D(SEO-SP4) 純正可変バックフォーカスフラットナーを使用。ISO3200,15秒1枚撮り、ノータッチガイド。BFは実測値ではなく、フラットナー上の目盛の値であり、アダプタや個体差によって結果が異なることがあります。

この製品の場合、撮影時点ではバックフォーカスの最適値が公開されていなかったため、実際に試写することで得た最適値「63mm」で使用しています。上の画像はその中の試写画像。67mmは今回使用した「63mm」より4mm伸ばした状態、77mmはさらに10mm伸ばした状態です。周辺像が大きく変わることが分かります。

現在メーカーからは「最適値は67mm〜68mm」という情報を得ています。バックフォーカスを厳密に追い込むには、使用するアダプタリングやIR改造によるピント位置ずれ、フィルターを使用する場合はそれによる光路長のずれの影響などの要素もあるため、ご使用になるときは「67mm〜68mm」の前後で何段階か試写されることをオススメします。

カメラの取付方法

補正レンズとカメラは、EOSオス・T2メスのアダプタを介して接続します。今回はビクセン製のアダプタを使用したのですが、サードパーティのマウントには微妙な勘合の問題があり注意が必要です(*)。

(*)このT2マウントの場合かなりユルユルで、相手側のメスマウントによってはガタツキが発生する場合があります。純正の6Dボディの場合はかなり緩めですがなんとかガタは出ませんでした。

補正レンズとカメラの接続例。上がASI294MC、下がEOS6Dです。右端の2インチスリーブをドロチューブに差し込んで固定します。

 

まとめ

FOT85で「トールのかぶと」の作例画像を撮影中。福岡県小石原で。

 

スタークラウド・Founder optics FOT85 ファウンダーオプティクスFOT85天体望遠鏡
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いかがでしたか。

軽量コンパクトで「少し長め」の写真鏡筒FOT85。超弩級の機材でドップリ撮影するのももちろん楽しいことですが、時には眼視・時には撮影、軽くて取り回しが良くしかも高性能。小口径でも高性能。じっくり腰を落ち着けて長時間露出すれば淡い対象もターゲットに。そんなFOT85は、天文趣味の幅を広げてくれる素晴らしいアイテムだと感じました!

以下のこれまでのFOT85レビュー記事もぜひごらんください!

最高の小型屈折望遠鏡はコレか!?【連載第1回】Founder Optics FOT85レビュー

外観インプレッション【連載第2回】Founder Optics FOT85レビュー

最高の眼視体験とは?【連載第3回】Founder Optics FOT85レビュー

 


  • 本記事は星見屋様にご協力いただき、天文リフレクションズ編集部が独自の判断で作成したものです。文責は全て天文リフレクションズ編集部にあります。記事に関するご質問・お問い合わせなどは天文リフレクションズ編集部宛にお願いいたします。
  • 記事中のFOT85実機は初回ロットのため、現在の製品と塗装色などが異なります。
  • 記事中の社名、商品名等は各社の商標または登録商標です。

http://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2018/05/acb38aca5233e7fb2665e48fd0aec64c-1024x538.jpghttp://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2018/05/acb38aca5233e7fb2665e48fd0aec64c-150x150.jpg編集部新着望遠鏡FOT85星見屋.com PresentsED硝材を2枚使用した口径85mmの「分離式3枚玉」小型望遠鏡、Founder Optics FOT85。FOT85の実写作例はこれまで天リフでも断続的にレポートしてきましたが、フォト用途の鏡筒としてFOT85はどんな位置づけになるのか?どんな用途に適しているのか?どんな周辺像と中心像が得られるのか?について詳しくレビューしていきます! スタークラウド・Founder optics FOT85 ファウンダーオプティクスFOT85天体望遠鏡 https://www.starcloud.jp/SHOP/FOT85-LG.html フォト鏡筒としてのFOT85 「少し長め」の写真鏡筒FOT85 まず、FOT85の写真鏡筒としての位置づけを明らかにしていきましょう。 代表的なフォト用途鏡筒について、F値と焦点距離をグラフ化してみました。この図を見ると、FOT85の他とは少し違った位置づけが浮き彫りになってきます。 FOT85はフラットナーを装着すると560mmF6.6(*)。0.8xのレデューサを装着すると448mmF5.3。これは同一口径レンジのFSQ85EDやBORG90FL(+RD)のような明るさを追求したフォト重視の鏡筒よりは少し長め。SD81Sや、口径は違いますがタカハシFC100系などの眼視重視の鏡筒よりは短め。 (*)フラットナーの倍率が公開されていないため1.0で計算しています。 明るさはもはや絶対的な正義ではない フォト鏡筒としては少し長めのFOT85。それは同時に「少し暗め」であることを意味します。「少し長い・少し暗い」というのは、悪いことなのでしょうか?それとも良いことなのでしょうか? フィルム時代、屈折フォト鏡筒は「いかに明るいか」がその価値の第一基準でした。そもそもフィルムの場合は「明るい鏡筒でないと満足に写らなかった」からです。 その後デジタル時代になり、より尖鋭な像・色収差の少ない像に対する要求レベルが上がりましたが、ユーザは引き続き「明るい鏡筒」を求め続け、「暗い鏡筒」はどちらかといえば敬遠されてきました。しかし、デジタル写真の技術が成熟し、多数枚・長時間のコンポジットが主流になった現在「明るさは正義」という価値観には若干の見直しが必要なのではないでしょうか。 焦点距離で使い分けよう・暗さは露出時間でカバーする この作例はF6.6のFOT85で撮影したものです。デジタルの時代になって、少々Fが暗くてもコンポジットと様々な画像処理でじゅうぶん遜色のない結果を得ることが可能になりました。F値の暗さは露出時間でカバーできるのです。 同じ焦点距離のF4とF5.6の光学系があるとき、どちらが写真用途に向いているかは明白です。F4はF5.6の1/2の露出時間で済みます。口径が違うので光量に差があるのは当然ですね。その意味では「明るさ」は相変わらず「正義」です。 しかし、口径が同じ100mmの「400mmF4の光学系」と「560mmF5.6の光学系」に、はたして「優劣」というものは存在するのでしょうか? F値の暗い光学系であっても、露出が不足するという問題は今や多数枚・長時間撮影のコンポジットによって解決することができます。400mmF4と560mmF5.6の差は「優劣」ではなく対象をどのくらいの大きさ(広さ)で切り取るかという「使い分け」なのではないでしょうか。 他にない使いやすさの「長めの鏡筒」FOT85 その観点でFOT85を見ると、使いこなしのキーになるのは焦点距離です。 フラットナーを使用して560mm、x0.8のレデューサを使用して448mm。同口径のF4クラスの光学系と比較して長め。分子雲やHII領域のような広い対象を撮るには向きませんが、M42やM31などのいわゆる「メジャー天体」を大きく撮るにはちょうど良い長さです。 前出のグラフを見ると、この450mm〜560mmのレンジをカバーする小型の屈折鏡筒は実は少ないことがわかります(*)。焦点距離が一番近いのは反射系のε130、180、そしてより口径の大きなFSQ106EDです。 口径85mmのFOT85は、光量的にはこれらの鏡筒にはかなわないのですが、取り回しの良い重量3.5kgの屈折鏡筒でこの焦点距離レンジがカバーできることがFOT85の最大の特徴といえます。 次項以降、これまで撮影した実写作例をいくつかご紹介します。FOT85の結像性能は十分に満足がいくものでした。「同一焦点域のより大口径の屈折鏡筒・反射鏡筒をじゅうぶん'ライバル視'できるくらいのポテンシャル」があると感じています(*)。 (*)たとえばタカハシのFSQ106EDと比較すると口径差ぶんの光量差や豊富な周辺光量の点では負けますが、ディテールの描写ではまったく引けを取りません。しかも重量と価格は半分です。 実写作例(1)4/3センサー+フラットナー 長焦点側での中心部の解像度を見ていただく意味で、4/3センサー+フラットナーによる作例をいくつかごらん頂きましょう。 4/3サイズセンサーとFOT85の相性は抜群。FOT85+フラットナーでは、「焦点距離560mm」を生かしたディテールの描出が可能。小さな天体を大きく撮るには楽しい組み合わせです。センサーサイズが小さい場合は周辺減光の影響が少なくフラットなしでもじゅうぶん運用可能。PSの周辺減光補正だけでほぼOKです。「アンプグロー」を避けて構図を決めればダークも省略可能でかなりお手軽に撮影ができました。 とはいえ、560mmはガイドエラーやシーイングによる星像悪化が気になり始めるレベルでもあります。お手軽とはいえども、要所要所は締めて撮影する必要があります。 以下、作例はいずれもクリックで拡大表示できます。 ASI294MCによるM81/82 いかがでしょうか。かなりイケている解像度といえるではないでしょうか。M81の腕、M82の赤いジェットが口径85mmでここまで写ればかなり満足といえるでしょう。 別の機材による画像と比較してみました。左がFLT85、右は口径10cmクラスのアポ鏡筒によるものです。超控えめに言っても負けていません。というか勝ってしまっています^^;;露出時間も光学系も撮影日も皆違うのでネタレベルの比較ですが(*)。 (*)500mmクラスの長焦点では、ピント・シーイング・ガイド精度・撮影者の技量(右の画像は筆者が天体写真をはじめて間もないころの撮影です^^;;)によって大きく結果が異なります。上記作例は風とピントの差と推測しています。 ASI294MCによるしし座トリオ星雲 もう一つ。こちらはしし座のトリオ星雲。少しトリミングしています。 NGC3628から吹き出しているジェットが写るはずだったのですがさすがに総露出時間65分では描出できませんでした。3時間、5時間を重ねれば描出できると思うのですが、短時間露出ではやはり口径85mmの限界が感じられます。 ASI294MCによるトールの兜星雲 さらにもう一つ。おおいぬ座のトールのかぶと星雲。銀河の星の中に埋もれてしまうためなかなか仕上げるのが難しい対象です。 思いのほか細部の構造がよく出てきました。本来なら4時間くらい露出したいところですが、このような「小さめの天体」でも、焦点距離560mmあれば小口径でも手が届く、という一つの例です。 他にも、あれい状星雲M27やらせん星雲NGC7293など、あまり淡くない小さな星雲はFOT85のよいターゲットになるでしょう。 ASI294MCによるM42・光害地 冒頭でご紹介した画像、ASI294MC・ベランダ撮影によるM42。 こちらはASI294MCの紹介記事でも既出の画像です。FOT85の中心部の高性能ぶりはベランダ撮影でもいかんなく発揮されます。星像は最小で2*2ピクセル。 上はトリミング前の四隅中央の等倍画像。4/3センサーなら4隅も中央もほとんど変わらない星像です。 小センサーの場合、四隅の星像の悪化の心配が減るのも大きなメリット。 実写作例(2)フルサイズセンサー+フラットナー 6D(SEO-SP4)によるM8 では、フルサイズではどうでしょうか。上の画像はEOS6DによるM8、M20です。右の大きな赤い星は火星。ほぼトリミングなしの画像です。フラットとダークはともになし。 総露出時間が20分弱と短い上に、薄雲が時折通過する条件下で星像がいまひとつぼってりしていますが、中心像と周辺像に大きな差がないところに注目していただければと思います。 等倍による四隅と中央の周辺像の比較。 フルサイズでこの周辺星像ならなかなかの写りといえるでしょう。 フルサイズのフラット画像 フルサイズでのフラット。四隅は少し陰っていますが、この程度なら容易にフラット補正できる範囲でしょう。周辺像的にも、周辺光量的にも、フルサイズでもじゅうぶんイケている感じです(*)。 (*)不思議なことに「ミラーボックスケラレ」がほとんど出ていません。全く納得がいかず何度も撮り直したのですが・・なんでなんでしょうか。 フルサイズの560mmの活用 FOT85+フラットナー+フルサイズの560mmでは、北アメリカ星雲やオリオン大星雲周辺のような広がった天体を画面いっぱいにとらえることができ、直焦点の醍醐味が味わえる焦点距離と画角といえます。より口径の大きなε180やFSQ106EDと比べると、同じクオリティを得るには露出時間は余計に必要になりますが、逆に必要なのはそれだけ。 明るい対象なら、口径の小ささもあまり不利にはなりません。軽い鏡筒・軽い赤道儀で手軽に運用できるのも魅力。露出時間を短くしたラッキーイメージング的な手法なら、ポタ赤でも運用可能です。3枚玉アポというある意味マニアな鏡筒で、ポタ赤でライトに天体写真を楽しむというスタイルも渋いかもしれませんね。 http://reflexions.jp/tenref/orig/2019/01/23/7746/ 上の記事は高精度のポータブル赤道儀SWAT-310を使用してFOT85を運用した撮影記と作例です。   今回使用したフラットナーとシステム構成 最後に、今回使用したフラットナーをご紹介しておきます。 純正可変バックフォーカスフラットナー 鏡筒の製造元と同じメーカーによるフラットナーです。ヘリコイドでバックフォーカスを調整することができます。 この製品は現在販売準備中で、近日中に詳細がアナウンスされる見込みです。 追記)商品ページが更新されました。税込19,800円です。 スタークラウド・調整式等倍フラットナー https://www.starcloud.jp/SHOP/AFF10.html 使用した製品は、鏡筒側は2インチスリーブ、カメラ側はT2マウント(42mm径)です。 バックフォーカス可変タイプの補正レンズの場合、バックフォーカスを調整すると周辺光量も変化することに注意しなければなりません。当然ですが、フラットを撮像する場合はピント位置を含め全ての光学系を同一の状態にする必要があります。  バックフォーカスの追い込み この製品の場合、撮影時点ではバックフォーカスの最適値が公開されていなかったため、実際に試写することで得た最適値「63mm」で使用しています。上の画像はその中の試写画像。67mmは今回使用した「63mm」より4mm伸ばした状態、77mmはさらに10mm伸ばした状態です。周辺像が大きく変わることが分かります。 現在メーカーからは「最適値は67mm〜68mm」という情報を得ています。バックフォーカスを厳密に追い込むには、使用するアダプタリングやIR改造によるピント位置ずれ、フィルターを使用する場合はそれによる光路長のずれの影響などの要素もあるため、ご使用になるときは「67mm〜68mm」の前後で何段階か試写されることをオススメします。 カメラの取付方法 補正レンズとカメラは、EOSオス・T2メスのアダプタを介して接続します。今回はビクセン製のアダプタを使用したのですが、サードパーティのマウントには微妙な勘合の問題があり注意が必要です(*)。 (*)このT2マウントの場合かなりユルユルで、相手側のメスマウントによってはガタツキが発生する場合があります。純正の6Dボディの場合はかなり緩めですがなんとかガタは出ませんでした。 補正レンズとカメラの接続例。上がASI294MC、下がEOS6Dです。右端の2インチスリーブをドロチューブに差し込んで固定します。   まとめ   スタークラウド・Founder optics FOT85 ファウンダーオプティクスFOT85天体望遠鏡 https://www.starcloud.jp/SHOP/FOT85-LG.html いかがでしたか。 軽量コンパクトで「少し長め」の写真鏡筒FOT85。超弩級の機材でドップリ撮影するのももちろん楽しいことですが、時には眼視・時には撮影、軽くて取り回しが良くしかも高性能。小口径でも高性能。じっくり腰を落ち着けて長時間露出すれば淡い対象もターゲットに。そんなFOT85は、天文趣味の幅を広げてくれる素晴らしいアイテムだと感じました! 以下のこれまでのFOT85レビュー記事もぜひごらんください! http://reflexions.jp/tenref/orig/2018/02/03/3494/ http://reflexions.jp/tenref/orig/2018/04/02/4380/ http://reflexions.jp/tenref/orig/2018/05/30/5111/   本記事は星見屋様にご協力いただき、天文リフレクションズ編集部が独自の判断で作成したものです。文責は全て天文リフレクションズ編集部にあります。記事に関するご質問・お問い合わせなどは天文リフレクションズ編集部宛にお願いいたします。 記事中のFOT85実機は初回ロットのため、現在の製品と塗装色などが異なります。 記事中の社名、商品名等は各社の商標または登録商標です。編集部発信のオリジナルコンテンツ