最近人気急上昇のナローバンド撮影。HαやOIIIなど、星雲を構成するガスの発する「輝線スペクトル」だけをシャープにとらえ、「眼に見えないものをとらえる」という天体写真の醍醐味を凝縮した楽しみ方。

はくちょう座の北アメリカ星雲とペリカン星雲。EF400mmF2.8L IS II F2.8 ISO3200 4min*10 STC Astro Duoフィルター ダーク、フラットなし 福岡県小石原

しかし本格的なナローバンド撮影では、複数のフィルターを切り替えたカラー合成が必要。また「ベイヤーセンサー」のデジタルカメラでは力不足(*)でモノクロセンサーの天体専用カメラが必要という認識が一般的でした。

(*)ベイヤーセンサーはRとB画素が全体の1/4、G画素が1/2しかないため、その分だけモノクロセンサーよりも不利になります。でもその前提であればデジタルカメラでも撮ることはできます。特にHαは明るいので写しやすく、最近はデジカメ使用者も増えています。

みずがめ座らせん星雲。光害地のベランダ撮影でもここまで写ります。リング部分は主にHα、リング内部はOIIIで輝いているナローバンドの好対象。
EOS6D EF400mmF2.8L IS II 60sec*90 ISO1600 ダークあり・フラットなし
STC Astro Duoナローバンドフィルター使用 福岡市内にてベランダ撮影

そんなナローバンドの世界に画期的な製品が登場しました。それが今回ご紹介する「STC Astro Duoナローバンドフィルター(以下、STC Astro Duoと略します)」です。

STC Astro Duoナローバンドフィルターとは

よしみカメラ・STC Astro Duo ナローバンドフィルター
http://yoshimi.ocnk.net/product/182


STC Astro Duo ナローバンドフィルターは、都市の人工照明の干渉や月明かりを低減し、HαとOIIIの波長を強調することができます。

STC Astro Duoフィルターの波長特性のグラフがこちら。従来ナローバンド撮影で使用されていたフィルタは「Hαだけ」「OIIIだけ」のように一つの波長域だけを透過するフィルターでした。

一方、STC Astro Duoフィルターは水素のHα輝線(656nm)と酸素のOIII輝線(496nm と 500nm)の2つの波長域をシャープに透過し、それ以外を全てカットします。

大事なことなのでもう一度いいます。STC Astro Duoは、OIIIの2つの波長域だけを通します。これが最大の特徴なのです。

ナローバンドで何が撮れるのか

この記事をお読みになる方には「ナローバンド?何それ?」という方もいらっしゃると思いますので、それについて簡単に補足しておきます。

赤い星雲(Hα)

いろいろややこしい話を抜きにして結論だけ。宇宙には水素ガスが満ちています。水素ガスは星の光を受けて特定の色(波長)だけで輝きます。その中で一番目立つのは、波長656nmの赤い光(Hα線)。この光は、天の川を中心に銀河のあちこちに広く分布しています。

右:天体改造し赤の感度を上げたカメラで「普通に(フィルターなし)」撮影したオリオン座。富士やペンタックスの一部のメーカーを除き、ノーマルではこんな風には写らず、赤外カットフィルターを換装する「改造」が必要になります。左:Hα線付近のみを通す「ナローバンドフィルター」で撮影。Hαで光る星雲が強調されています。

オリオン座の例。右の写真の赤い色の星雲が、水素ガスの発するHα線の光。天体写真マニアがカメラを夜空に向ける理由の1/3くらいは、この光を撮るためであるといっても過言ではありません。

このHα線の光だけを「じゃまな」普通の星の光や街灯りに埋もれないように写しとるのが「ナローバンドフィルター」。ナローバンドフィルターを使用することで、ノーマルの撮影と比較して星雲を20倍(*)くらいにまで強調できるのです。

(*)感光域を400nm〜680nmの280nmとし、半値幅7nmの場合の概算。280/(7×2)=20

青い星雲(OIII)

OIIIの星雲の代表格、おおいぬ座のミルクポット星雲。OIIIフィルター(8.5nm)を使用しデジタルカメラで撮影。

水素の赤いHα線の次に多いのは、酸素の原子が出すOIII(496nm と 500nm)輝線(*)。Hαのように天の川全体に広がっているわけではないのですが、明るい星雲の中心部や高温の星の近傍に特徴的な星雲が存在します。

(*)「青い」と書きましたが、正確には青と緑の間、やや緑色寄りになります。

被写体の美しさの意味からも、赤い星雲一遍倒では単調になってしまうものが、青のOIIIを加えると色表現がより豊かになります。

疑似カラー合成

これまで、天体写真マニアは特定の「1つだけ」の波長を通すナローバンドフィルターを使用して、上の例のようにそれぞれ別々に撮影した画像を「カラー合成(*)」してきました。

(*)HαをRチャンネル、OIIIをGとBチャンネルに割り当てる方法がAOO合成。このほかにも、硫黄のSII(672.4nm)を使用して3色に割り当てるSAO合成をはじめ、いくつものバリエーションがあります。

Astro Duoフィルターを使用すると、HαとOIIIを一発で撮ることができます。面倒な「別撮り」「合成」のプロセスが不要になります。これが一番画期的なことなのです。

ナローバンドの作例

光害に強いナローバンド

EOS6D(改) EF400mmF2.8L II IS ISO3200 60sec*80 ダーク・フラットなし STC Astro Duoナローバンドフィルター 満月の夜に福岡県小石原で撮影

ナローバンドフィルターは、ごく狭い波長域の光だけを透過するため、街灯りの多くをカットしてくれます。その効果はいわゆる「光害カットフィルター」よりもずっと大きくなります。

raw画像の撮って出し。月夜の空は青空と同じ。B(G)成分が多くなります。

上の作例は遠征地ではありますが、満月の夜に撮影したもの。1コマ当たりの露出時間は60秒。かなり苦労してあぶりだしていますが、「満月でも市街地でも天体写真が撮れる」のは、撮影機会が増える意味でも大いに福音。

ごく淡い星雲をあぶり出す

はくちょう座網状星雲。HαとOIIIの領域が入り交じるナローバンド撮影の好対象。EOS6D(SEO-SP4) EF400mmF2.8L IS II F2.8 ISO3200 4min*16 STC Astro Duoフィルター ダーク、フラットなし 福岡県小石原

さらに、街灯りの少ない場所で暗夜に撮影すれば、ほとんどバックグラウンドの明かりを気にすることなく露出時間を伸ばすことができます。上の作例は、網状星雲のごく淡い部分をターゲットにしてみました。

raw画像の撮って出し。暗夜ではバックグラウンドは低く、被りにはほぼ無縁な状態です。

1コマ当たりの露出時間は4分。この露出時間でも背景のかぶりはこの程度。明るい光学系でも好きなだけ露出時間をかけられる感じです(*)

(*)とはいえ、露出時間を伸ばした分、コマ当たりのノイズは乗ってきます。上の作例では、もう2,3倍くらい総露出時間を稼ぎたいところ。

カメラレンズでも楽しいナローバンド

EOS6D(SEO-SP4) SAMYANG35mmF1.4 絞りF2.8 ISO3200 4min*5 STC Astro Duoフィルター ダーク、フラットなし 福岡県小石原

ナローバンド、実はカメラレンズでもかなり楽しめます。上の作例は、35mmの広角レンズでぎょしゃ座・おうし座付近を撮影したもの。総露出時間20分とこの手の対象としては短めですが、かなり淡い部分まで出てきています。

総露出を2時間くらいかけて丁寧に画像処理するとどうなるか楽しみですね^^

ちなみに、カメラレンズで使用するためには、フィルターは「クリップタイプ」でなくてはなりません(詳細は後述)。「クリップタイプ」とは、デジタル一眼カメラのボディ側に装着するタイプ。望遠レンズでは若干ケラレの影響がありますが、短い焦点距離ならほとんど問題になりません。

EOS6D(SEO-SP4) SIGMA 105mmF1.4Art  絞りF2.0 ISO3200 2min*10 STC Astro Duoフィルター ダーク、フラットなし 福岡県小石原

こちらは105mmの中望遠レンズ、シグマの105mmF1.4Artで。露出時間20分で赤い星雲がモリモリ出てくると楽しくなります。

変態チックにも楽しめるナローバンド

EOS6D(SEO-SP4) SAMYANG35mmF1.4 絞りF2.8 ISO3200 4min*6 STC Astro Duoフィルター 、フィルターなし ISO1600 30sec*17 ダーク、フラットなし 福岡県小石原

STC Astro Duoのような「2つの色」だけでカラー画像とする場合、RGBの三色で色を表現するよりも「色の豊かさ」が若干劣ります。画像処理をする場合も、シアンっぽくなったり、マゼンタっぽく(赤黒く)なったり、背景の色と星の色のバランスが難しくなります。

上の作例はそれを避けるべく、通常のRGBカラーで撮影した画像(総露出8.5分)に、STC Astro Duoの画像(総露出24分)を合成したもの。星と背景の色はRGB画像を優先し、赤と青の星雲はSTC Astro Duoの画像を優先するように、両者を比較明でブレンドしています。

こうなってくると、「別撮り」「合成」が不要なSTC Astro Duoのメリットはなくなってしまい、とっても「変態」な撮影になってしまうのですが、これはこれで、突きつめると面白そうです。

EOS6D(SEO-SP4) SAMYANG35mmF1.4 絞りF2.8 ISO1600 フィルターなし30sec*17 ダーク、フラットなし 福岡県小石原

こちらはRGBのみの画像。総露出は8.5分。この手法の場合、RGB画像はナローバンド画像よりも露出時間をかけなくても良いような気がします。極端な話、星の色がしっかり出てさえすればいいのですから・・・でも、このあたりのノウハウは、今後このフィルターを使い込む人たちが切り拓いていくことでしょう。編集子の意見は単なる推測だとご理解ください。

ナローバンドの細かな注意点

クリップタイプ vs 48mmタイプ

STC Astro Duoフィルターですが「クリップタイプ」と「48mmタイプ」の2種類があります。

今回レビューした製品はクリップタイプ。EOS用・ニコン用の場合は、クリップタイプはミラーアップした状態で装着し、ライブビュー専用となります。クリップタイプなら、広角も含めてカメラレンズで撮影することができます。

EOS6D EF400mmF2.8L IS II 60sec ISO1600 ダーク・フラットなし STC Astro Duoナローバンドフィルター使用 福岡市内にてベランダ撮影

ただし、望遠レンズ・天体望遠鏡で使用する場合は、フィルター枠によって周辺部がケラレます(*)。上の画像は400mm望遠レンズでの撮って出し画像を少し強調したもの。上下がミラーボックスけられのように暗くなっていることがわかります。

これはSTC Astro Duoに限らず、クリップタイプの宿命(*)。きちんとフラット処理をして少しトリミングすれば致命的な問題にはならないでしょう。また、枠に若干すき間があることから、最上部はフィルターを通過しない光が少し漏れるようです。レンズ毎のケラレの詳細は記事の最後にまとめていますのでご参考に。

(*)ミラーレスのSONY用、センサーの小さいAPS-C用の場合にどの程度ケラレるのか(ケラレないのか)は不明です。

48mmタイプ。フィルターボックスなどのスペースに制約のある場合は、フィルター枠の厚みが問題になることもありますので注意が必要です。 http://yoshimi.ocnk.net/product/182

一方で、カメラレンズは使わない・天体望遠鏡の直焦点だけでガチ撮りする人には、48mmタイプをオススメします。これならば周辺部のケラレは問題になりません。ただし、フィルターワークの一般的注意として、フィルターの装着位置とバックフォーカスの問題には注意が必要です(*)。

(*)レデューサ・フラットナーなどの補正レンズを使用する場合、フィルターを間に入れると本来あるべき光路長でなくなり性能が十分に発揮できない場合があります。

キヤノンのフルサイズミラーレス「EOS R」が登場すれば、専用のフィルターボックス付きマウントアダプタがありますから、そこに装着できるタイプが登場すれば、それがベストチョイスになるかもしれませんね(*)。

(*)何ら正式な情報は持ち合わせていないので、単なる推測です。

ピント・構図合わせ

ナローバンド撮影では、光量が露出4段分以上少なくなるため、ピント合わせもより難しくなります。ピント合わせの限界がRGBで3等星だったとすると、単純計算でナローバンドでは0等星以上が必要になってきます。目視でもバーティノフマスク使用でも、明るい写野外の星を使わざるを得ません。

デネブでピント合わせ。ライブビュー画面でもこのくらいの輝度で視認できます。EOS6D EF400mmF2.8L IS II 5sec ISO3200 STC Astro Duoナローバンドフィルター使用 WO透明バーティノフマスク使用。

しかし、バーティノフマスクの光条は、途切れ途切れになるだけで、Hα・OIIIの位置の輝度はそれほど下がるわけではなく、目的の星が導入できてさえいれば、意外とピント合わせは容易でした。

また、屈折光学系の場合は、OIIIとHαのピント位置が必ずしも一致しないことに注意しなければなりません(上の画像でも、微妙にHαとOIIIの光条の位置が違っていることがわかります)。

軸上色収差の多いレンズでのイクラ現象の例。この例では赤にピントが合っているのに青と緑がピンボケ。この画像は通常のRGB撮影です。EOS Kiss5 EF135mmF2L F2.8 60sec*46

片側だけがバチピンだと、星像が色違いの二重になる「イクラ現象」が起きてしまうかもしれません。これは別々にピント合わせができないAstro Duoの弱点。軸上色収差の多い古い設計のレンズや、ピントの浅いレンズを使用する場合は、注意が必要です。

こちらは今回の撮影で使用したWilium Opticsの透明タイプのバーティノフマスク。「世の中のバーティノフマスクは光条が暗すぎて見えなーーいっ!!(渡辺謙風)」とお嘆きの方におすすめ。

透明なアクリル板に細かいスジが数多く刻んであり、光条が長く明るくピント合わせがしやすいのが特徴。HαとOIIIのピントのズレを確認しながら、中庸なポイントを追い込むことができました。

透明バーティノフマスク・William Optics社

画像処理のポイント

「お手軽ナローバンド」とはいっても、天体写真としての画像処理が簡単になるわけではありません。このフィルターを使いこなすには、カラーバランスの調整や輝度むらの補正(フラット処理)、画像の強調などの画像処理の基本は押さえておく必要があります。

その前提で、注意すべきことを簡単にまとめてみました。

カラーバランス(暗夜の場合)

EOS6D(SEO-SP4) SIGMA 105mmF1.4Art  絞りF2.0 ISO3200 2min STC Astro Duoフィルター ダーク、フラットなし 福岡県小石原 周辺減光はプロファイル補正(100%)のみ。

遠征地の暗い空の場合の1枚撮りのraw現像画面。色温度2100K、色被り-88でRGBのヒストグラムが揃いました。光害カットフィルターと同様にSTC Astro Duoフィルターは極端に色が転ぶのでかなり強烈な色補正が必要です。周辺減光がRGBチャンネルによって微妙に違っていますが、raw現像時点でこの程度の色むらなら良好ともいえるでしょう。

カラーバランス(満月の夜の場合)

EOS6D(SEO-SP4) SIGMA 105mmF1.4Art  絞りF2.8 ISO3200 30sec STC Astro Duoフィルター ダーク、フラットなし 福岡県小石原 周辺減光はプロファイル補正(100%)のみ。

一方、光害地や月明かりがあるような背景輝度の高い場合は、それなりに苦労します。上の例は満月の夜の北アメリカ星雲周辺。月からの離角は60度ほど。相当強烈な月明かりです。

焦点距離105mmと画角が広いこともあり、色むらも輝度むらも大きく出ています。光害地では普通といえば普通なのですが・・・。 STC Astro Duoフィルターは「光害に強い」のは事実ですが「光害があると苦労する」のも事実です。これも通常のRGBカラー撮影と同じだと思った方が良いでしょう。

一般に、光害カットフィルター・単色のナローバンドフィルター、STC Astro Duoフィルターなどの「干渉フィルター」は、斜めに入射する光に対しては特性が変わってしまいます。このため、焦点距離の短いレンズほど(*)中心と周辺のカラーバランスが変わってしまいます。これはなかなか難しい問題で、良いフラットを撮像することが通常の撮影よりも難しくなるかもしれません。こちらも記事末尾の項をご参照ください。

(*)より正確には、テレセントリック性が高い場合は焦点距離が短くても問題は少なくなります。

B・GとRのS/Nが大きく違う

EF400mmF2.8L IS II F2.8 ISO3200 4min*10 STC Astro Duoフィルター ダーク、フラットなし raw現像後コンポジット、無強調 福岡県小石原

ナローバンド撮影では、一般的にHαは良く写るのに対してOIIIはS/Nが上がらず苦労します。そもそもの星雲の輝度が低いことや、光害による背景の明るさが赤色の方が影響を受けにくいことが主な原因です。このため、別撮りのナローバンド撮影ではOIIIのコマ当たりの露出時間や総露出時間を長くすることが多いのですが、HαとOIIIを同時に撮影するAstro Duoの場合はそうはいきません。

上の画像は、北アメリカ星雲の作例をRGBチャンネル別にしたもの。Bチャンネルが明らかにノイジーであることがわかるでしょう。特にデジタルカメラの場合、B画素はG画素の半分しか画素数がないことも影響しています。

この現象に対処するには総露出時間を長くするか、Bチャンネルのみに強めのノイズ処理をかけるなどしか対処がないかもしれません。今後の工夫を待ちたいところです。

Rが強い場所のGが凹む

ところで上の画像・・Gチャンネルが何か変?だと思われませんか?北アメリカ星雲の「シグナスウォール」の付近が黒っぽく凹んでいますね。

この理由は、現像時にカラーバランスを強く補正したから。輝度の高いRに引きずられて、その場所のGが暗くなってしまうのです。この輝度分布は、明らかに本来の姿ではありません(Bチャンネルのようになるのがより正しい)。そもそも、本来ならGチャンネルとBチャンネルの輝度分布は同じはず(どちらも狭いOIIIバンドの光を受けているだけなので)。

EF400mmF2.8L IS II F2.8 ISO3200 4min STC Astro Duoフィルター raw2fitsでGチャンネルを抜き出し、レベル切り詰め。福岡県小石原

raw2fits.exeでGチャンネルのみを単独で抜き出してみました。このソフトウェアは、ベイヤー配列の画像からRGBの各チャンネルの画素だけを抜き出すものです。補間は行わないので画素数は1/4になりますが、これが本来のGチャンネルの輝度分布。

厳密に画像処理するなら、このようにして各チャンネルの画像を別々に処理してからカラー化すべきかもしれませんが、それをやるくらいなら潔くHαとOIIIを別のフィルターで撮像して合成する方が話が早いでしょう。

「Gが凹む」現象は、結果としてそうなってしまうというだけで、とりあえずは神経質になる必要はないかもしれません。このあたりの画像処理のノウハウも、今後の洗練を期待したいところです。

ゴースト

一般にナローバンドフィルターは、ごく狭い波長域のみを通す反面、通さない光は反射します。ぱっと見では鏡のよう。このため、上の画像のように明るい星にゴーストが出てしまいます。

これはある意味ナローバンドフィルターの宿命(*)。目立つ場合はレタッチで処理するしかないでしょう。ただし、フィルターがセンサー面に近いクリップタイプの場合、ゴーストの径が比較的小さく、目立ちにくいとはいえます。

(*)2つある反射面(透過面)の波長特性をそれぞれ最適化し、センサー面に返ってくる反射光を減らすような工夫は可能なようです。この場合、フィルターの向きに表裏が存在し、逆にするとゴーストが増えるといわれています。STC Astro Duoで「表裏」があるのかどうかは不明です。

販売元と価格

このフィルターを製造しているSTC社は台湾の会社。CP+2018でもブースを出展されていたので、ご覧になった方もいらっしゃることでしょう。

よしみカメラ・STC Astro Duo ナローバンドフィルター
http://yoshimi.ocnk.net/product/182
http://yoshimi.ocnk.net/product/182

この製品の日本の輸入総代理店は宮崎県のよしみカメラ。STC Astro Duo フィルターは上記のリンク先で購入することができます。48mm径タイプが税別54,800円、Canon/Nikon/SONYのデジタル一眼カメラ用のクリップタイプが税別49,800円です。

RECORD BOOK 宮崎のエジソン
http://good-humor.wixsite.com/recordbook/hitotsuki1

よしみカメラ様はガチ天文関係では直接はあまり知られていないのですが、パノラマ撮影をする方には「Nodal Ninja」シリーズでおなじみ。また、忍者レフも知名度の高い製品です。

社長の一木(ひとつき)さんは、「宮崎のエジソン」の異名を持つアイデアマン。編集子は何度かお会いしたことがありますが、その度にアイデア溢れる新製品をいろいろ紹介してくださいます。

よしみカメラさんの「忍者レフ」「アカリーナ」についても近日レビュー予定です。お楽しみに!

どんな人に向いているか

登場人物とそのプロフィール、感想は全て編集部の創作です。フリー素材「pakutaso」を使用しています。https://www.pakutaso.com

天リフレビュー記事のお約束になってきたこのテンプレート^^ STC Astro Duoフィルターを使用したユーザーの声を「脳内で」集めてみました!

STC Astro Duoフィルターの特徴は「お手軽」「デジカメOK(*)」「光害に強い」「ベランダでも撮れる」の四つ。お手持ちの(天体改造)デジカメがあれば、フィルター一つでナローバンドカラー撮影が可能になるのです。このお手軽さを生かすことが、活用の秘訣となるでしょう。

(*)逆にモノクロセンサーで撮影すると、OIIIとHαを分離できないためカラー合成することができません。「カラーセンサー専用」主にカラーセンサー用途の製品になります。(**)

(**)2018/11/30追記。読者からの指摘があり表現を修正しました。「専用」とは誰も言っていませんね^^;; モノクロで撮るとHαがかなり優位になってしまうと推定されますが、実際に試していないのに断定するのはよくありませんでした。

まとめ

いかがでしたか?

STC Astro Duoナローバンドフィルターは、「別撮り」「カラー合成」というナローバンドの難しさを減らし、カラーセンサーのデジタルカメラでより手軽にディープスカイを楽しむことが可能になります。また、高い光害カット性能を生かして、市街地でもそれなりに天体写真を楽しむことができます。

このフィルターをきっかけに「ナローバンド」というディープなスカイ撮影にハマる方が増えることを願って止みません^^


実写テスト詳細

より詳細な試写結果のまとめを以下に記載します。編集子の短い期間の試用結果ではありますが、参考になれば幸いです。

レンズ別フラット比較

主にクリップフィルターのケラレを検証する目的で、編集部所有の様々な光学系でフィルターの有無によるフラット画像を比較してみたのですが、今回は時間不足で検証を十分に行うことができませんでした。もう少し時間をかけて検証したいと思います。ここでは、特徴的な傾向だけをいくつか抜粋してご紹介します。

注)本検証は編集部の環境と機材によるものです。個別の環境では異なった結果になることがあることをご承知おきください。また、周辺減光は光学系そのものによるもので、クリップフィルターに起因するものではありません。

「山の揃った」フラットフレームの撮像は難しい

SIGMA 105mmF1.4Art F2.0でのフラット画像。レンズの前にiPadを置いて撮影。ホワイトバランス白熱電球、カラーバランス補正なし。

レンズの前にiPadを置いて撮像したフラット。レンズはシグマ105mm。ごらんの通り、この状態では極端にカラーバランスがずれています。Astro Duoでは「山の揃ったフラット」の撮像はかなり難しいものと考えられます。理論的にはリニアな画像であれば山が揃っていなくても除算結果は同じはずなのですが、経験的に「山を揃えた方が良い」という意見もあります。ここでは結論は出せません。

ちなみに、このレンズではクリップフィルターによるケラレはほとんど感じられません。

焦点距離が短いからといってケラレないとは限らない

SIGMA 24mmF1.4Art F2.8でのフラット画像。レンズの前にiPadを置いて撮影。ホワイトバランス白熱電球、カラーバランス補正なし。レベル切り詰めで強調

クリップフィルターによるケラレの発生は、焦点距離の短いカメラレンズの場合、焦点距離が短くても発生することがあるようです。こちらはシグマ24mmF1.4ArtのF2.8でのフラット。上辺・下辺がクリップフィルターで蹴られているのがわかります。

サムヤン 35mmF1.4 F2.8でのフラット画像。レンズの前にiPadを置いて撮影。ホワイトバランス白熱電球、カラーバランス補正なし。レベル切り詰めで強調

こちらはサムヤン35mmF1.4のF2.8でのフラット。シグマ24mmと比べて、ケラレはほとんど感じられません。ただし、色むらが大きく出ている上にセンターもずれています。この原因がどこにあるのかは不明です。

EF70-200mmF4L IS解放 70mmのフラット画像。レンズの前にiPadを置いて撮影。ホワイトバランス白熱電球、カラーバランス補正なし。レベル切り詰めで強調

小三元ズーム70-200mmF4、広角端解放でのフラット。ケラレが若干出ています。

EF70-200mmF4L IS解放 70mmのフラット画像。レンズの前にiPadを置いて撮影。ホワイトバランス白熱電球、カラーバランス補正なし。レベル切り詰めで強調

こちらは望遠端200mm。70mmより少しケラレが大きくなります。また、中央部が若干輝度が高いのがわかるでしょうか。単色のナローバンドでも感じることがあるのですが、干渉フィルターでは中心部にこのような輝度の山が出ることがあります。これは円形のグラデーションマスクでも比較的簡単に補正できます。

天体望遠鏡、超望遠カメラレンズではケラレの影響は「ミラーボックスケラレ」よりも大きい

EF300mmF2.8L IS F2.8でのフラット画像。レンズの前にiPadを置いて撮影。ホワイトバランス白熱電球、カラーバランス補正なし。強調なし。

キヤノンの328レンズでのフラット。焦点距離が長くなり、入射する光束が平行になるほど、クリップフィルター枠の蹴られは大きくなってきます。強調しなくても目立ち始めます。

FSQ106ED 530mmF5のフラット画像。レンズの前にiPadを置いて撮影。ホワイトバランス白熱電球、カラーバランス補正なし。強調なし。

天体望遠鏡FSQ106ED(F5)でのフラット。左右の枠での蹴られも見え始めました。一方で、光束が平行度を増すほど、画面の色むらは少なくなってきます。

FSQ106ED 530mmF5のフラット画像。レンズの前にiPadを置いて撮影。ホワイトバランス白熱電球、カラーバランス補正なし。レベル切り詰めで強調。

FSQ106ED(F5)でのフラットをレベル切り詰めで強調。ケラレはAPS-Cでトリミングすれば、補正しなくても気にならないでしょう。左右でGBの輝度が違っていますが、この程度であればグラデーションマスクで容易に補正できそうですが、長焦点でイメージサークルをフルに生かしたい場合は、Φ48mm枠バージョンを使用する方がよいでしょう。

 

半値幅と単体ナローバンドフィルターとの比較

STC Astro Duoフィルターのパッケージ構成。実測値と思われる波長特性のグラフが添付されていました。このグラフを見ると半値幅は12nm〜10nmくらいに見えます。

ナローバンドフィルターが、どのくらいシャープに特定の波長だけを通すかは「半値幅」という数字で表します。STC Astro Duoの場合、添付されていたグラフから読み取ると10nm〜12nm程度。海外の通販サイトでは「10nm」という記述もあるようですが、STC社からの情報では「12nm」だそうです。

一方で、編集部で使用しているBaadar社のナローバンドフィルターの半値幅はHαが7nm、OIIIが8.5nm。実際にどのくらい違うのか?試写して比較してみました。

EOS6D EF400mmF2.8LII IS ISO3200、4分1コマ raw2fits.exeでHαはRチャンネル、OIIIはGチャンネルのみ切り出し。FlatAidProでレベル切り詰め(MAX2000)

比較結果。Raw画像から純粋に各チャンネルの情報を抜き出したので、バイアスを除けばほぼ実際の光量差が反映されている状態です。

背景輝度に若干差はありますが、ぱっと見ではあまり遜色のない感じですね。背景輝度を合わせると半値幅の小さいBaadarの方が星雲は良く出ていますが、半値幅10〜12nmというスペックは十分に出ていると見ていいでしょう。

 


・本記事はSTC社日本総代理店である(株)よしみカメラ様より機材の貸与を受け、天文リフレクションズ編集部が独自の費用と判断で作成したものです。文責は全て天文リフレクションズ編集部にあります。

・本記事の作成においては、日本のナローバンド天体写真の第一人者である荒井俊也さんにご監修いただきました。深く御礼申し上げます。

・記事に関するご質問・お問い合わせなどは天文リフレクションズ編集部宛にお願いいたします。

・製品の購入およびお問い合わせは(株)よしみカメラ宛にお願いいたします。

・本記事によって読者様に発生した事象については、その一切について編集部では責任を取りかねますことをご了承下さい。

・特に注記のない画像は編集部で撮影したものです。

・記事中の製品仕様および価格は執筆時(2018年9月)のものです。

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【デジカメで】STC Astro Duoナローバンドフィルター【ナローバンド一発撮り】http://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2018/09/fc6927a4cd7fc6f068de9eb5d3ae4aff-1024x538.jpghttp://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2018/09/fc6927a4cd7fc6f068de9eb5d3ae4aff-150x150.jpg編集部HOT!レビュー天文機材・動画最近人気急上昇のナローバンド撮影。HαやOIIIなど、星雲を構成するガスの発する「輝線スペクトル」だけをシャープにとらえ、「眼に見えないものをとらえる」という天体写真の醍醐味を凝縮した楽しみ方。 しかし本格的なナローバンド撮影では、複数のフィルターを切り替えたカラー合成が必要。また「ベイヤーセンサー」のデジタルカメラでは力不足(*)でモノクロセンサーの天体専用カメラが必要という認識が一般的でした。 (*)ベイヤーセンサーはRとB画素が全体の1/4、G画素が1/2しかないため、その分だけモノクロセンサーよりも不利になります。でもその前提であればデジタルカメラでも撮ることはできます。特にHαは明るいので写しやすく、最近はデジカメ使用者も増えています。 そんなナローバンドの世界に画期的な製品が登場しました。それが今回ご紹介する「STC Astro Duoナローバンドフィルター(以下、STC Astro Duoと略します)」です。 STC Astro Duoナローバンドフィルターとは よしみカメラ・STC Astro Duo ナローバンドフィルター http://yoshimi.ocnk.net/product/182 STC Astro Duo ナローバンドフィルターは、都市の人工照明の干渉や月明かりを低減し、HαとOIIIの波長を強調することができます。 STC Astro Duoフィルターの波長特性のグラフがこちら。従来ナローバンド撮影で使用されていたフィルタは「Hαだけ」「OIIIだけ」のように一つの波長域だけを透過するフィルターでした。 一方、STC Astro Duoフィルターは水素のHα輝線(656nm)と酸素のOIII輝線(496nm と 500nm)の2つの波長域をシャープに透過し、それ以外を全てカットします。 大事なことなのでもう一度いいます。STC Astro Duoは、HαとOIIIの2つの波長域だけを通します。これが最大の特徴なのです。 ナローバンドで何が撮れるのか この記事をお読みになる方には「ナローバンド?何それ?」という方もいらっしゃると思いますので、それについて簡単に補足しておきます。 赤い星雲(Hα) いろいろややこしい話を抜きにして結論だけ。宇宙には水素ガスが満ちています。水素ガスは星の光を受けて特定の色(波長)だけで輝きます。その中で一番目立つのは、波長656nmの赤い光(Hα線)。この光は、天の川を中心に銀河のあちこちに広く分布しています。 オリオン座の例。右の写真の赤い色の星雲が、水素ガスの発するHα線の光。天体写真マニアがカメラを夜空に向ける理由の1/3くらいは、この光を撮るためであるといっても過言ではありません。 このHα線の光だけを「じゃまな」普通の星の光や街灯りに埋もれないように写しとるのが「ナローバンドフィルター」。ナローバンドフィルターを使用することで、ノーマルの撮影と比較して星雲を20倍(*)くらいにまで強調できるのです。 (*)感光域を400nm〜680nmの280nmとし、半値幅7nmの場合の概算。280/(7×2)=20 青い星雲(OIII) 水素の赤いHα線の次に多いのは、酸素の原子が出すOIII(496nm と 500nm)輝線(*)。Hαのように天の川全体に広がっているわけではないのですが、明るい星雲の中心部や高温の星の近傍に特徴的な星雲が存在します。 (*)「青い」と書きましたが、正確には青と緑の間、やや緑色寄りになります。 被写体の美しさの意味からも、赤い星雲一遍倒では単調になってしまうものが、青のOIIIを加えると色表現がより豊かになります。 疑似カラー合成 これまで、天体写真マニアは特定の「1つだけ」の波長を通すナローバンドフィルターを使用して、上の例のようにそれぞれ別々に撮影した画像を「カラー合成(*)」してきました。 (*)HαをRチャンネル、OIIIをGとBチャンネルに割り当てる方法がAOO合成。このほかにも、硫黄のSII(672.4nm)を使用して3色に割り当てるSAO合成をはじめ、いくつものバリエーションがあります。 Astro Duoフィルターを使用すると、HαとOIIIを一発で撮ることができます。面倒な「別撮り」「合成」のプロセスが不要になります。これが一番画期的なことなのです。 ナローバンドの作例 光害に強いナローバンド ナローバンドフィルターは、ごく狭い波長域の光だけを透過するため、街灯りの多くをカットしてくれます。その効果はいわゆる「光害カットフィルター」よりもずっと大きくなります。 上の作例は遠征地ではありますが、満月の夜に撮影したもの。1コマ当たりの露出時間は60秒。かなり苦労してあぶりだしていますが、「満月でも市街地でも天体写真が撮れる」のは、撮影機会が増える意味でも大いに福音。 ごく淡い星雲をあぶり出す さらに、街灯りの少ない場所で暗夜に撮影すれば、ほとんどバックグラウンドの明かりを気にすることなく露出時間を伸ばすことができます。上の作例は、網状星雲のごく淡い部分をターゲットにしてみました。 1コマ当たりの露出時間は4分。この露出時間でも背景のかぶりはこの程度。明るい光学系でも好きなだけ露出時間をかけられる感じです(*) (*)とはいえ、露出時間を伸ばした分、コマ当たりのノイズは乗ってきます。上の作例では、もう2,3倍くらい総露出時間を稼ぎたいところ。 カメラレンズでも楽しいナローバンド ナローバンド、実はカメラレンズでもかなり楽しめます。上の作例は、35mmの広角レンズでぎょしゃ座・おうし座付近を撮影したもの。総露出時間20分とこの手の対象としては短めですが、かなり淡い部分まで出てきています。 総露出を2時間くらいかけて丁寧に画像処理するとどうなるか楽しみですね^^ ちなみに、カメラレンズで使用するためには、フィルターは「クリップタイプ」でなくてはなりません(詳細は後述)。「クリップタイプ」とは、デジタル一眼カメラのボディ側に装着するタイプ。望遠レンズでは若干ケラレの影響がありますが、短い焦点距離ならほとんど問題になりません。 こちらは105mmの中望遠レンズ、シグマの105mmF1.4Artで。露出時間20分で赤い星雲がモリモリ出てくると楽しくなります。 変態チックにも楽しめるナローバンド STC Astro Duoのような「2つの色」だけでカラー画像とする場合、RGBの三色で色を表現するよりも「色の豊かさ」が若干劣ります。画像処理をする場合も、シアンっぽくなったり、マゼンタっぽく(赤黒く)なったり、背景の色と星の色のバランスが難しくなります。 上の作例はそれを避けるべく、通常のRGBカラーで撮影した画像(総露出8.5分)に、STC Astro Duoの画像(総露出24分)を合成したもの。星と背景の色はRGB画像を優先し、赤と青の星雲はSTC Astro Duoの画像を優先するように、両者を比較明でブレンドしています。 こうなってくると、「別撮り」「合成」が不要なSTC Astro Duoのメリットはなくなってしまい、とっても「変態」な撮影になってしまうのですが、これはこれで、突きつめると面白そうです。 こちらはRGBのみの画像。総露出は8.5分。この手法の場合、RGB画像はナローバンド画像よりも露出時間をかけなくても良いような気がします。極端な話、星の色がしっかり出てさえすればいいのですから・・・でも、このあたりのノウハウは、今後このフィルターを使い込む人たちが切り拓いていくことでしょう。編集子の意見は単なる推測だとご理解ください。 ナローバンドの細かな注意点 クリップタイプ vs 48mmタイプ STC Astro Duoフィルターですが「クリップタイプ」と「48mmタイプ」の2種類があります。 今回レビューした製品はクリップタイプ。EOS用・ニコン用の場合は、クリップタイプはミラーアップした状態で装着し、ライブビュー専用となります。クリップタイプなら、広角も含めてカメラレンズで撮影することができます。 ただし、望遠レンズ・天体望遠鏡で使用する場合は、フィルター枠によって周辺部がケラレます(*)。上の画像は400mm望遠レンズでの撮って出し画像を少し強調したもの。上下がミラーボックスけられのように暗くなっていることがわかります。 これはSTC Astro Duoに限らず、クリップタイプの宿命(*)。きちんとフラット処理をして少しトリミングすれば致命的な問題にはならないでしょう。また、枠に若干すき間があることから、最上部はフィルターを通過しない光が少し漏れるようです。レンズ毎のケラレの詳細は記事の最後にまとめていますのでご参考に。 (*)ミラーレスのSONY用、センサーの小さいAPS-C用の場合にどの程度ケラレるのか(ケラレないのか)は不明です。 一方で、カメラレンズは使わない・天体望遠鏡の直焦点だけでガチ撮りする人には、48mmタイプをオススメします。これならば周辺部のケラレは問題になりません。ただし、フィルターワークの一般的注意として、フィルターの装着位置とバックフォーカスの問題には注意が必要です(*)。 (*)レデューサ・フラットナーなどの補正レンズを使用する場合、フィルターを間に入れると本来あるべき光路長でなくなり性能が十分に発揮できない場合があります。 キヤノンのフルサイズミラーレス「EOS R」が登場すれば、専用のフィルターボックス付きマウントアダプタがありますから、そこに装着できるタイプが登場すれば、それがベストチョイスになるかもしれませんね(*)。 (*)何ら正式な情報は持ち合わせていないので、単なる推測です。 ピント・構図合わせ ナローバンド撮影では、光量が露出4段分以上少なくなるため、ピント合わせもより難しくなります。ピント合わせの限界がRGBで3等星だったとすると、単純計算でナローバンドでは0等星以上が必要になってきます。目視でもバーティノフマスク使用でも、明るい写野外の星を使わざるを得ません。 しかし、バーティノフマスクの光条は、途切れ途切れになるだけで、Hα・OIIIの位置の輝度はそれほど下がるわけではなく、目的の星が導入できてさえいれば、意外とピント合わせは容易でした。 また、屈折光学系の場合は、OIIIとHαのピント位置が必ずしも一致しないことに注意しなければなりません(上の画像でも、微妙にHαとOIIIの光条の位置が違っていることがわかります)。 片側だけがバチピンだと、星像が色違いの二重になる「イクラ現象」が起きてしまうかもしれません。これは別々にピント合わせができないAstro Duoの弱点。軸上色収差の多い古い設計のレンズや、ピントの浅いレンズを使用する場合は、注意が必要です。 こちらは今回の撮影で使用したWilium Opticsの透明タイプのバーティノフマスク。「世の中のバーティノフマスクは光条が暗すぎて見えなーーいっ!!(渡辺謙風)」とお嘆きの方におすすめ。 透明なアクリル板に細かいスジが数多く刻んであり、光条が長く明るくピント合わせがしやすいのが特徴。HαとOIIIのピントのズレを確認しながら、中庸なポイントを追い込むことができました。 http://reflexions.jp/tenref/orig/2018/07/03/5670/ 画像処理のポイント 「お手軽ナローバンド」とはいっても、天体写真としての画像処理が簡単になるわけではありません。このフィルターを使いこなすには、カラーバランスの調整や輝度むらの補正(フラット処理)、画像の強調などの画像処理の基本は押さえておく必要があります。 その前提で、注意すべきことを簡単にまとめてみました。 カラーバランス(暗夜の場合) 遠征地の暗い空の場合の1枚撮りのraw現像画面。色温度2100K、色被り-88でRGBのヒストグラムが揃いました。光害カットフィルターと同様にSTC Astro Duoフィルターは極端に色が転ぶのでかなり強烈な色補正が必要です。周辺減光がRGBチャンネルによって微妙に違っていますが、raw現像時点でこの程度の色むらなら良好ともいえるでしょう。 カラーバランス(満月の夜の場合) 一方、光害地や月明かりがあるような背景輝度の高い場合は、それなりに苦労します。上の例は満月の夜の北アメリカ星雲周辺。月からの離角は60度ほど。相当強烈な月明かりです。 焦点距離105mmと画角が広いこともあり、色むらも輝度むらも大きく出ています。光害地では普通といえば普通なのですが・・・。 STC Astro Duoフィルターは「光害に強い」のは事実ですが「光害があると苦労する」のも事実です。これも通常のRGBカラー撮影と同じだと思った方が良いでしょう。 一般に、光害カットフィルター・単色のナローバンドフィルター、STC Astro Duoフィルターなどの「干渉フィルター」は、斜めに入射する光に対しては特性が変わってしまいます。このため、焦点距離の短いレンズほど(*)中心と周辺のカラーバランスが変わってしまいます。これはなかなか難しい問題で、良いフラットを撮像することが通常の撮影よりも難しくなるかもしれません。こちらも記事末尾の項をご参照ください。 (*)より正確には、テレセントリック性が高い場合は焦点距離が短くても問題は少なくなります。 B・GとRのS/Nが大きく違う ナローバンド撮影では、一般的にHαは良く写るのに対してOIIIはS/Nが上がらず苦労します。そもそもの星雲の輝度が低いことや、光害による背景の明るさが赤色の方が影響を受けにくいことが主な原因です。このため、別撮りのナローバンド撮影ではOIIIのコマ当たりの露出時間や総露出時間を長くすることが多いのですが、HαとOIIIを同時に撮影するAstro Duoの場合はそうはいきません。 上の画像は、北アメリカ星雲の作例をRGBチャンネル別にしたもの。Bチャンネルが明らかにノイジーであることがわかるでしょう。特にデジタルカメラの場合、B画素はG画素の半分しか画素数がないことも影響しています。 この現象に対処するには総露出時間を長くするか、Bチャンネルのみに強めのノイズ処理をかけるなどしか対処がないかもしれません。今後の工夫を待ちたいところです。 Rが強い場所のGが凹む ところで上の画像・・Gチャンネルが何か変?だと思われませんか?北アメリカ星雲の「シグナスウォール」の付近が黒っぽく凹んでいますね。 この理由は、現像時にカラーバランスを強く補正したから。輝度の高いRに引きずられて、その場所のGが暗くなってしまうのです。この輝度分布は、明らかに本来の姿ではありません(Bチャンネルのようになるのがより正しい)。そもそも、本来ならGチャンネルとBチャンネルの輝度分布は同じはず(どちらも狭いOIIIバンドの光を受けているだけなので)。 raw2fits.exeでGチャンネルのみを単独で抜き出してみました。このソフトウェアは、ベイヤー配列の画像からRGBの各チャンネルの画素だけを抜き出すものです。補間は行わないので画素数は1/4になりますが、これが本来のGチャンネルの輝度分布。 厳密に画像処理するなら、このようにして各チャンネルの画像を別々に処理してからカラー化すべきかもしれませんが、それをやるくらいなら潔くHαとOIIIを別のフィルターで撮像して合成する方が話が早いでしょう。 「Gが凹む」現象は、結果としてそうなってしまうというだけで、とりあえずは神経質になる必要はないかもしれません。このあたりの画像処理のノウハウも、今後の洗練を期待したいところです。 ゴースト 一般にナローバンドフィルターは、ごく狭い波長域のみを通す反面、通さない光は反射します。ぱっと見では鏡のよう。このため、上の画像のように明るい星にゴーストが出てしまいます。 これはある意味ナローバンドフィルターの宿命(*)。目立つ場合はレタッチで処理するしかないでしょう。ただし、フィルターがセンサー面に近いクリップタイプの場合、ゴーストの径が比較的小さく、目立ちにくいとはいえます。 (*)2つある反射面(透過面)の波長特性をそれぞれ最適化し、センサー面に返ってくる反射光を減らすような工夫は可能なようです。この場合、フィルターの向きに表裏が存在し、逆にするとゴーストが増えるといわれています。STC Astro...編集部発信のオリジナルコンテンツ