ブログ「ざなっくの星旅&ベランダ天文台&観望会」に、クリエーター(撮影者)目線で「KAGAYAさんに近づくための要素とは何か」という記事が掲載されています。

ざなっくの星旅&ベランダ天文台&観望会
【星景写真】2回目のKAGAYA星空の世界展@そごう横浜で考える、KAGAYAさんに近づく要素
https://zanac.cocolog-nifty.com/blog/2022/08/post-13228a.html
そごう横浜・KAGAYA 星空の世界展
https://www.sogo-seibu.jp/yokohama/topics/page/sogo-museum-kagaya.html

当該の「KAGAYA星空の世界展」は8月31日まで開催中です。土日があと2回ありますので、まだご覧になっていない方には全力でオススメです。

KAGAYAさんに近づくための要素

「KAGAYA星空の世界展」は大変な人気を博しているようで(特に女性比率が高く過半数を超えている印象)多くの来場者を迎えています。広い範囲の多くの層の心に響く内容です。

一方で、自ら星空を撮影する方に対しても大きなインパクトがあったようです。今回ご紹介した記事を書かれた方もそのようなお一人。着眼点は「どうすればKAGAYAさんの世界に近づけるのか」。

1.輝度差が激しい(=つまり絵になる)構図にも関わらず、ハイライトもシャドウも飛ばず、キッチリと諧調が整っている
(画面内に月が入る逆光条件でも破綻しない。月の周囲にも星が見えている。地上のシャドウも黒つぶれしていない。)

編集長も感じたのですが、階調表現がほんとうに素晴らしい。プリント作品の印象は環境光に大きく左右されますが「プリントに対するライティング」も含めて作品が仕上げられていて、輝いたハイライトから漆黒のシャドウまで、液晶モニタや印刷そして普通のプリントとは次元の違うものを感じました。

一枚に天の川と灯台とが両立しています。灯台はその柔らかな明かりの内部構造まで見えています。私が撮ったら、絶対に灯台は白飛びして、オレンジの色すら出ないでしょう。

この世界に「近づく」には、まずプリント技術をマスターした上で、プリントをより美しく見せるための照明の選択や照射範囲、距離などを何度も試行錯誤する必要がありそうです。プリント展示はWeb上に流れる画像コンテンツと比べて圧倒的に少ないので、そういったノウハウの多くは自分で試して学ぶしかないのではないでしょうか。でもそれはたぶん「やった分だけ結果に返ってくる」はず。特にリアル写真展に関わる方にとっては、大きな刺激と発見が得られると感じました。

2.写真毎に訴えたいテーマが明確であり、その実現のための撮影日時&場所が緻密に計算されている
(行き当たりばったりの風景写真ではなく、これ以上は無いようなシャッターチャンスと構図になっている。)

KAGAYAさんの作品のスタイルは、編集長の勝手な表現ですが「そこにあるはずのものを受け取ってくる」ような感じではないでしょうか。「そこにあるはずのもの」をキャッチする知識と経験、そこにある映像のイメージを頭に描く想像力、より確実にキャッチするための緻密な計算。「そこにあるはずのもの」は、シャッターを押す瞬間には「そこにあるべきもの」なのです。

そして「受け取ったもの」を、一人でも多くの人が「追体験」できるような形で表現する。自分が受け取ったものを、できるだけ自分が体験したままに感じてもらえること(*)。

(*)KAGAYAさんの作品は「ノイズ」の処理が非常に巧みです。「ノイズは本来そこにはなかったはずのもの。プリントされた作品を見た時にそれがノイズなのか天体の本来の姿なのかの区別がつかないことは、良くないと思います」と仰っていました。さらに「ノイズは完全に消してしまうとだめなのです。逆にリアルな雰囲気を壊してしまいます」とも。


三日月を「かご」に見立てて観覧車と共に撮る、それは明確ですが、精密な撮影日時検討とロケハン無しではあり得ない写真です。そして、動いている観覧車がブレずに写っていること、ピントが観覧車に合っていること、月と重なっている籠には人の姿が見えることなど、かなり奥の深い作品と感じました。ただパチリとやっても、こうはなりません。

もちろん自然が対象となる場合、運の要素にも大きく左右されます。そこで必要になるのは何としても撮りきるのだというモチベーション。この観覧車の作品では、撮影中に観覧車が6周したとこのこと。

数少ないですが、偶然にもたらされた作品もあります。キツネが月をじっと眺めているかのようなこの作品はその一つ。イマジネーションを緻密な準備と計算で作品に仕上げるプロセスを重ねているからこそ、こういった一瞬のチャンスも切り取れるのでしょう。

やはり私との違いは「一枚の作品を作り上げるための情熱」かなと感じました。前回も書きましたが、撮影中だけでなく、撮影前の緻密さや、撮影後の処理など、それらの情熱を作品から感じました。素晴らしいです。私は今後どうしていけばいいのかなぁ~。



「私は今後どうしていけばいいのか」。冗談でなく、星空写真愛好家の一人として、編集長も抱いた感想でした。このことをKAGAYAさんに質問できなかったのは痛恨ですが(*)、「自分の撮りたいものを、撮ればよいのですよ」と仰るのではないでしょうか。

(*)「KAGAYAさんの作品をKAGAYAさんの隣で見ることができる」という千載一遇の機会を、はたして自分は十全に生かすことができたのだろうか、ということを後で考えずにはいられませんでした。

フォト&エッセイ 一瞬の宇宙

「自分で星空を撮る」人には、こちらの本も強くオススメ。KAGAYAさんが撮影された代表作(その多くは今回の「KAGAYA星空の世界展」にも展示されています)のメイキングストーリーを中心に、KAGAYAさんが何を求めてなぜ撮るのかが語られています。

ひとつひとつのエピソードに、情熱と宇宙に対する思い、そしてやさしさが満ちています。一気に読むのがもったいなさすぎて、少しづつ読んでいるところですが、読了したときには「感想文」を書きたいと思っています。

「KAGAYA星空の世界展」でも販売されています。ぜひお手に取って一章だけでもお読みになってください。

まとめ

いかがでしたか?

なんと編集長はKAGAYAさんにご案内いただきながら見るというプライスレスな体験をすることができたのですが、何度もおっしゃっていたのが「こうでなければならない、というものは何もないのです」。映像表現は自由であり、自分が感じたこと、自分が伝えたいことをどう表現するのかは、すべて表現者の手に委ねられているのだということなのでしょう。

KAGAYAさんのひとつひとつのお話の中には「先駆者・第一人者としての気負い」のようなものは全く感じられませんでした。ただ純粋にひたむきに「世界のどこかにある宝物」を見つけること。世界にはそんな宝物があふれていることを一人でも多くの人に伝えること。そして、一人でも多くの人が「自分にとっての宝物」を見つけられること。そんな強いエネルギーが、KAGAYAさんを今ある場所に導いたのだと感じました。

なお、元記事には「ネタバレ注意」とありますが、編集長の感想は「ネタバレしても何らその場で得られる体験は下がらないし、むしろ予習しておく方がより楽しめる(*)」です。

(*)実は2日連続で2回行きました^^

「KAGAYA星空の世界展」では、上記書籍掲載の作品が数多く展示されています。こちらにはすべて撮影データも記載されていますので、図録としても大いに参照・参考になります。ほとんど全ての作品で、印刷をはるかに越える迫力と完成度を展示では感じることができると思います。

横浜のプラネタリム「満天」の割引券がもらえるようです。KAGAYAフルコース!

なお、編集長の感想については以下の一連のツイートをごらんください。

https://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2022/08/img_3175ts-1024x683.jpghttps://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2022/08/img_3175ts-150x150.jpg編集部特選ピックアップ写真展ブログ「ざなっくの星旅&ベランダ天文台&観望会」に、クリエーター(撮影者)目線で「KAGAYAさんに近づくための要素とは何か」という記事が掲載されています。 ざなっくの星旅&ベランダ天文台&観望会 【星景写真】2回目のKAGAYA星空の世界展@そごう横浜で考える、KAGAYAさんに近づく要素 https://zanac.cocolog-nifty.com/blog/2022/08/post-13228a.html そごう横浜・KAGAYA 星空の世界展 https://www.sogo-seibu.jp/yokohama/topics/page/sogo-museum-kagaya.html 当該の「KAGAYA星空の世界展」は8月31日まで開催中です。土日があと2回ありますので、まだご覧になっていない方には全力でオススメです。 2回目のKAGAYA星空の世界展@そごう横浜。「KAGAYAさんの星景写真に近づくために」「3時間くらい会場で考え続けた」「大変良い刺激」「キッチリと諧調が整って」「訴えたいテーマが明確」「緻密に計算」 ざなっくの星旅&ベランダ天文台&観望会よりピックアップ。 https://t.co/e4x5D4FAcu — 天リフ編集部 (@tenmonReflexion) August 19, 2022 KAGAYAさんに近づくための要素 「KAGAYA 星空の世界展」あと2週間となりました。 会期の始まりから集めている皆様のご感想も700件になりました。 この宝物を眺めては毎日感謝しております。https://t.co/FqP6S6AmhWhttps://t.co/mT9QLZfPyHhttps://t.co/26V45o8HDghttps://t.co/Xn1txaNQDPhttps://t.co/8N1ZF0mfAm — KAGAYA (@KAGAYA_11949) August 16, 2022 「KAGAYA星空の世界展」は大変な人気を博しているようで(特に女性比率が高く過半数を超えている印象)多くの来場者を迎えています。広い範囲の多くの層の心に響く内容です。 一方で、自ら星空を撮影する方に対しても大きなインパクトがあったようです。今回ご紹介した記事を書かれた方もそのようなお一人。着眼点は「どうすればKAGAYAさんの世界に近づけるのか」。 1.輝度差が激しい(=つまり絵になる)構図にも関わらず、ハイライトもシャドウも飛ばず、キッチリと諧調が整っている (画面内に月が入る逆光条件でも破綻しない。月の周囲にも星が見えている。地上のシャドウも黒つぶれしていない。) 編集長も感じたのですが、階調表現がほんとうに素晴らしい。プリント作品の印象は環境光に大きく左右されますが「プリントに対するライティング」も含めて作品が仕上げられていて、輝いたハイライトから漆黒のシャドウまで、液晶モニタや印刷そして普通のプリントとは次元の違うものを感じました。 一枚に天の川と灯台とが両立しています。灯台はその柔らかな明かりの内部構造まで見えています。私が撮ったら、絶対に灯台は白飛びして、オレンジの色すら出ないでしょう。 この世界に「近づく」には、まずプリント技術をマスターした上で、プリントをより美しく見せるための照明の選択や照射範囲、距離などを何度も試行錯誤する必要がありそうです。プリント展示はWeb上に流れる画像コンテンツと比べて圧倒的に少ないので、そういったノウハウの多くは自分で試して学ぶしかないのではないでしょうか。でもそれはたぶん「やった分だけ結果に返ってくる」はず。特にリアル写真展に関わる方にとっては、大きな刺激と発見が得られると感じました。 2.写真毎に訴えたいテーマが明確であり、その実現のための撮影日時&場所が緻密に計算されている (行き当たりばったりの風景写真ではなく、これ以上は無いようなシャッターチャンスと構図になっている。) KAGAYAさんの作品のスタイルは、編集長の勝手な表現ですが「そこにあるはずのものを受け取ってくる」ような感じではないでしょうか。「そこにあるはずのもの」をキャッチする知識と経験、そこにある映像のイメージを頭に描く想像力、より確実にキャッチするための緻密な計算。「そこにあるはずのもの」は、シャッターを押す瞬間には「そこにあるべきもの」なのです。 そして「受け取ったもの」を、一人でも多くの人が「追体験」できるような形で表現する。自分が受け取ったものを、できるだけ自分が体験したままに感じてもらえること(*)。 (*)KAGAYAさんの作品は「ノイズ」の処理が非常に巧みです。「ノイズは本来そこにはなかったはずのもの。プリントされた作品を見た時にそれがノイズなのか天体の本来の姿なのかの区別がつかないことは、良くないと思います」と仰っていました。さらに「ノイズは完全に消してしまうとだめなのです。逆にリアルな雰囲気を壊してしまいます」とも。 三日月を「かご」に見立てて観覧車と共に撮る、それは明確ですが、精密な撮影日時検討とロケハン無しではあり得ない写真です。そして、動いている観覧車がブレずに写っていること、ピントが観覧車に合っていること、月と重なっている籠には人の姿が見えることなど、かなり奥の深い作品と感じました。ただパチリとやっても、こうはなりません。 もちろん自然が対象となる場合、運の要素にも大きく左右されます。そこで必要になるのは何としても撮りきるのだというモチベーション。この観覧車の作品では、撮影中に観覧車が6周したとこのこと。 数少ないですが、偶然にもたらされた作品もあります。キツネが月をじっと眺めているかのようなこの作品はその一つ。イマジネーションを緻密な準備と計算で作品に仕上げるプロセスを重ねているからこそ、こういった一瞬のチャンスも切り取れるのでしょう。 やはり私との違いは「一枚の作品を作り上げるための情熱」かなと感じました。前回も書きましたが、撮影中だけでなく、撮影前の緻密さや、撮影後の処理など、それらの情熱を作品から感じました。素晴らしいです。私は今後どうしていけばいいのかなぁ~。 「私は今後どうしていけばいいのか」。冗談でなく、星空写真愛好家の一人として、編集長も抱いた感想でした。このことをKAGAYAさんに質問できなかったのは痛恨ですが(*)、「自分の撮りたいものを、撮ればよいのですよ」と仰るのではないでしょうか。 (*)「KAGAYAさんの作品をKAGAYAさんの隣で見ることができる」という千載一遇の機会を、はたして自分は十全に生かすことができたのだろうか、ということを後で考えずにはいられませんでした。 フォト&エッセイ 一瞬の宇宙 「自分で星空を撮る」人には、こちらの本も強くオススメ。KAGAYAさんが撮影された代表作(その多くは今回の「KAGAYA星空の世界展」にも展示されています)のメイキングストーリーを中心に、KAGAYAさんが何を求めてなぜ撮るのかが語られています。 ひとつひとつのエピソードに、情熱と宇宙に対する思い、そしてやさしさが満ちています。一気に読むのがもったいなさすぎて、少しづつ読んでいるところですが、読了したときには「感想文」を書きたいと思っています。 「KAGAYA星空の世界展」でも販売されています。ぜひお手に取って一章だけでもお読みになってください。 まとめ いかがでしたか? なんと編集長はKAGAYAさんにご案内いただきながら見るというプライスレスな体験をすることができたのですが、何度もおっしゃっていたのが「こうでなければならない、というものは何もないのです」。映像表現は自由であり、自分が感じたこと、自分が伝えたいことをどう表現するのかは、すべて表現者の手に委ねられているのだということなのでしょう。 これだけの体験が1200円です。天文ファンでもそうでなくても、間違いなくそれ以上の体験ができるでしょう。8/31まで横浜そごう美術館で開催中です。https://t.co/n26UqsJy9d pic.twitter.com/lQ0lS5zqFd — 黒・天リフ (@black_tenref) August 12, 2022 KAGAYAさんのひとつひとつのお話の中には「先駆者・第一人者としての気負い」のようなものは全く感じられませんでした。ただ純粋にひたむきに「世界のどこかにある宝物」を見つけること。世界にはそんな宝物があふれていることを一人でも多くの人に伝えること。そして、一人でも多くの人が「自分にとっての宝物」を見つけられること。そんな強いエネルギーが、KAGAYAさんを今ある場所に導いたのだと感じました。 なお、元記事には「ネタバレ注意」とありますが、編集長の感想は「ネタバレしても何らその場で得られる体験は下がらないし、むしろ予習しておく方がより楽しめる(*)」です。 (*)実は2日連続で2回行きました^^ 「KAGAYA星空の世界展」では、上記書籍掲載の作品が数多く展示されています。こちらにはすべて撮影データも記載されていますので、図録としても大いに参照・参考になります。ほとんど全ての作品で、印刷をはるかに越える迫力と完成度を展示では感じることができると思います。 KAGAYA作品共通割引券配布決定‼ 映像クリエイターKAGAYAさんの新作「星の旅 -世界編-」を愉しんだ後は、姉妹館の“満天”で名作「銀河鉄道の夜」はいかがですか❓ KAGAYAさんの作品をご覧になった方へ、平日に使える割引券を配布します💖 夏のプラネタリウムめぐりをぜひ💫 https://t.co/IS3SJI0nXe pic.twitter.com/fu6fbOx8uL — コニカミノルタプラネタリウム天空(押上) (@konicaminoltatk) June 28, 2018 横浜のプラネタリム「満天」の割引券がもらえるようです。KAGAYAフルコース! なお、編集長の感想については以下の一連のツイートをごらんください。 KAGAYAさんの展覧会at横浜そごう美術館。お盆休みにぜひご鑑賞ください!天文ファン向けの見どころを以下黒垢リプで連投。 https://t.co/UrxNayivey — 天リフ編集部 (@tenmonReflexion) August 12, 2022 横浜そごう美術館で開催中のKAGAYAさんの展覧会。展示作の多くは昨年出版された「Starry nights the best オフthe best」に収録されたものですが、別物に感じられるほどの美しさです。プリントに合わせて再調整し、会場の照明も作品単位で照度・色温度をチューニングされているそうです。 pic.twitter.com/zEpiAiBLPY — 天リフ編集部 (@tenmonReflexion) August 5, 2022編集部発信のオリジナルコンテンツ