【夢のリモート】南米・チリのリモート観測所の利用者募集が開始
ブログ「たのしい天体観測」で、南米・チリのリモート観測所の利用者募集が告知されています。チリでアマチュア天文家向けのリモート観測所設備を運営しているObstech社が、日本市場向けに中規模の機材を想定して設計された中規模の環境を提供を開始し、利用料は年間500万チリペソ(2022/7の為替レートで約72万円)だそうです。
「もっと多くの人に経験して欲しい」という思い
お知らせです。
1年以上かけて準備してきたチリのリモート設備の準備が整ってきました。みなさんの機材を現地に送って利用できる施設です。ご興味のある方は、下記の記事をご覧ください。
チリのリモート観測所の利用者募集について https://t.co/Ae9KROjMLt
— Masahiko Niwa / 丹羽雅彦 (@masahiko_niwa) July 10, 2022
詳細は丹羽さんのブログ記事に詳しく書かれていますが、丹羽さんは同地ですでに1年以上リモート観測所を運営されています。
日本と13時間の時差のあるチリの夜は日本の昼。リモート撮影は体の負担も少なく、とても楽しい活動です。この環境を独り占めしているのは、どうにも落ち着かない。もっと多くの人に経験して欲しい。そんな気持ちが募ってきました。
「天の川が昇ってくると、空が明るくなる」。月がない夜の平均的なSQMは21.97という最高の空と安定した天候、時差13時間で昼間に活動できる、しかも日本では実現できない好条件の南天の空。
個人でチリのリモート観測所を設立するには莫大な費用がかかります。また現地のノウハウも少ないので困難が伴います。手に届くコストで、自分の望遠鏡をチリのアンデス山中に設置し、日本から遠隔操作で操作することができたら。そんな天文ファンの夢を叶えることができないか、考え続けてきました。
そんなリモート観測所を実現された丹羽さんですが、より多くの日本の天文ファンに「手の届く」サービスとして実現したい、という強い思いがあったそうです。
ありがとうございます。
かなり詰めたつもりですが、なにぶんにも初めてのことばかりで、問題がたくさんあると思います。
最初は一緒に育ててくれる方がいらっしゃると嬉しいです。こなれてきたら、より広く、楽しさを共有したいですり— Masahiko Niwa / 丹羽雅彦 (@masahiko_niwa) July 11, 2022
架台・望遠鏡・カメラ・管理用のPCなどは利用者が自前で準備が必要ですが、「月額6万円」というコストは決して「手が届かない」金額ではないでしょう。すでに国内でリモート観測所の運用を実践されている方なら、ますます敷居が低くなります。これは夢が広がりますね!
グループでの「共同利用」も
当地は乾燥した砂漠地帯にあり晴天率が日本では考えられないほど高く、昨年の実績では年間3000時間観測可能だったそうです。1年は24時間×365日で8760時間。1ヶ月250時間もある「晴れタイム」、これって凄くないですか?むしろリモートといえども、使う側の体力が不安になるレベル^^;
丹羽さんのお話によると「共同利用」を検討している方もいらっしゃるそうです。仮に5人で利用するとすると、月額運用費は1.2万にまで下がります。観測可能時間は一人当たり、250/5=50時間/月。月明で半分になるとしても25時間/月。機材は共同で購入することになるでしょうが、一人50万円負担すれば250万円の機材が導入できます。この金額なら、もう遠征撮影と変わらないかもしれません。
2022/7/14追記)リモート観測所利用を決意された「だいこもん」様のブログ。3名の仲間と共同利用されるそうです。
リモート観測所と長時間露光の未来
リモート界隈がますます活況を呈することを期待。10時間、100時間といった長時間露光勢が増え尖鋭化が進むと、ライト勢のモチベーションを削ぐという危惧の声もあるが、個人的にはそんな心配は杞憂だと思っている。
— 黒・天リフ (@black_tenref) July 11, 2022
丹羽さんをはじめ、この数年でリモート観測所を始める方が増えてきました。同時に「ガチな天体写真」では、10時間を越えるような長時間露出に取り組まれる方が増えてきています。
「長時間露出が大正義(露出時間を長くするほどS/Nがほぼ理論値通りに向上する)」であることは、すでに広く認知されてきました。長時間露出によって、天文雑誌に掲載される読者の天体写真のレベル向上もめざましいものがあります。逆に、10時間、100時間という露出時間をジプシー遠征撮影で実現するのは、並大抵の労力ではやりきれない現実的困難が伴います。
その意味では「長時間露出」と「リモート観測所」は、相補的な傾向なのかも知れません。この傾向は「ライト勢のモチベーションを削ぐ」という意見もありますが、筆者の考えはむしろ逆です。露出時間が長かろうが短かかろうが、天体写真の面白さに変わりはない。長時間露出で見えてくる新しい世界が広がることは、短時間露出での天体写真の立ち位置と楽しみ方を、逆に明確化するのではないでしょうか。
まとめ
いかがでしたか?
「夢のリモート観測所」が現実に近づいて来たことを感じました。「共同利用」は特に魅力的ですね。年間3000時間なんて筆者では持てあましそうですが、共同利用ならその心配も大幅に減りますね!うーん、自分もやってみたくなったぞ・・・
今後、リモート観測所の広がりが、どんな変化を天体写真界にもたらしていくかを楽しみにしています!
※一時期やっていた「特選ピックアップ」を再開しました。天リフの「ピックアップ」から厳選して、週に数件程度更新予定です。 https://reflexions.jp/tenref/orig/2022/07/12/13973/https://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2022/07/IMG_6285-e1526786406524-1-1024x684.jpghttps://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2022/07/IMG_6285-e1526786406524-1-150x150.jpg特選ピックアップリモート観測所ブログ「たのしい天体観測」で、南米・チリのリモート観測所の利用者募集が告知されています。チリでアマチュア天文家向けのリモート観測所設備を運営しているObstech社が、日本市場向けに中規模の機材を想定して設計された中規模の環境を提供を開始し、利用料は年間500万チリペソ(2022/7の為替レートで約72万円)だそうです。 「もっと多くの人に経験して欲しい」という思い https://twitter.com/masahiko_niwa/status/1546008745138098177 詳細は丹羽さんのブログ記事に詳しく書かれていますが、丹羽さんは同地ですでに1年以上リモート観測所を運営されています。 日本と13時間の時差のあるチリの夜は日本の昼。リモート撮影は体の負担も少なく、とても楽しい活動です。この環境を独り占めしているのは、どうにも落ち着かない。もっと多くの人に経験して欲しい。そんな気持ちが募ってきました。 「天の川が昇ってくると、空が明るくなる」。月がない夜の平均的なSQMは21.97という最高の空と安定した天候、時差13時間で昼間に活動できる、しかも日本では実現できない好条件の南天の空。 個人でチリのリモート観測所を設立するには莫大な費用がかかります。また現地のノウハウも少ないので困難が伴います。手に届くコストで、自分の望遠鏡をチリのアンデス山中に設置し、日本から遠隔操作で操作することができたら。そんな天文ファンの夢を叶えることができないか、考え続けてきました。 そんなリモート観測所を実現された丹羽さんですが、より多くの日本の天文ファンに「手の届く」サービスとして実現したい、という強い思いがあったそうです。 https://twitter.com/masahiko_niwa/status/1546463352519503873 架台・望遠鏡・カメラ・管理用のPCなどは利用者が自前で準備が必要ですが、「月額6万円」というコストは決して「手が届かない」金額ではないでしょう。すでに国内でリモート観測所の運用を実践されている方なら、ますます敷居が低くなります。これは夢が広がりますね! グループでの「共同利用」も 当地は乾燥した砂漠地帯にあり晴天率が日本では考えられないほど高く、昨年の実績では年間3000時間観測可能だったそうです。1年は24時間×365日で8760時間。1ヶ月250時間もある「晴れタイム」、これって凄くないですか?むしろリモートといえども、使う側の体力が不安になるレベル^^; 丹羽さんのお話によると「共同利用」を検討している方もいらっしゃるそうです。仮に5人で利用するとすると、月額運用費は1.2万にまで下がります。観測可能時間は一人当たり、250/5=50時間/月。月明で半分になるとしても25時間/月。機材は共同で購入することになるでしょうが、一人50万円負担すれば250万円の機材が導入できます。この金額なら、もう遠征撮影と変わらないかもしれません。 https://snct-astro.hatenadiary.jp/entry/2022/07/13/203416 2022/7/14追記)リモート観測所利用を決意された「だいこもん」様のブログ。3名の仲間と共同利用されるそうです。 リモート観測所と長時間露光の未来 https://twitter.com/black_tenref/status/1546301284260904961 丹羽さんをはじめ、この数年でリモート観測所を始める方が増えてきました。同時に「ガチな天体写真」では、10時間を越えるような長時間露出に取り組まれる方が増えてきています。 「長時間露出が大正義(露出時間を長くするほどS/Nがほぼ理論値通りに向上する)」であることは、すでに広く認知されてきました。長時間露出によって、天文雑誌に掲載される読者の天体写真のレベル向上もめざましいものがあります。逆に、10時間、100時間という露出時間をジプシー遠征撮影で実現するのは、並大抵の労力ではやりきれない現実的困難が伴います。 その意味では「長時間露出」と「リモート観測所」は、相補的な傾向なのかも知れません。この傾向は「ライト勢のモチベーションを削ぐ」という意見もありますが、筆者の考えはむしろ逆です。露出時間が長かろうが短かかろうが、天体写真の面白さに変わりはない。長時間露出で見えてくる新しい世界が広がることは、短時間露出での天体写真の立ち位置と楽しみ方を、逆に明確化するのではないでしょうか。 まとめ いかがでしたか? 「夢のリモート観測所」が現実に近づいて来たことを感じました。「共同利用」は特に魅力的ですね。年間3000時間なんて筆者では持てあましそうですが、共同利用ならその心配も大幅に減りますね!うーん、自分もやってみたくなったぞ・・・ 今後、リモート観測所の広がりが、どんな変化を天体写真界にもたらしていくかを楽しみにしています! ※一時期やっていた「特選ピックアップ」を再開しました。天リフの「ピックアップ」から厳選して、週に数件程度更新予定です。編集部山口 千宗kojiro7inukai@gmail.comAdministrator天文リフレクションズ編集長です。天リフOriginal
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