Image credit: NASA, ESA, CSA, and STScI

ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の初のカラー画像が公開されています。ネットでも多数拡散しているので、上記画像はみなさん目にされていることでしょう。以下、各画像の簡単な解説とともにピックアップしていきましょう。

銀河団SMACS0723 これまでで最も「深い宇宙」の赤外線画像

Image credit: NASA, ESA, CSA, and STScI https://www.nasa.gov/image-feature/goddard/2022/nasa-s-webb-delivers-deepest-infrared-image-of-universe-yet

バイデン大統領自らが、YouTubeライブ配信で発表した最初の画像です。背景の銀河団が、手前の銀河(画像内で最も明るく白く見えるぼんやりとした光)の「重力レンズ効果」によって、ねじまげられて写っています。

「宇宙の果て」にある銀河は、宇宙の膨張によるドップラー効果で光の波長が10倍以上にも大きく引き延ばされます。このため、その光は可視光線(波長0.38〜0.7μ程度)ではなく「近赤外線」が主になります。このような超遠方の銀河の観測は、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の大きな目的の一つです。



ハッブル宇宙望遠鏡の画像との比較。ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡で「はるかに視力が良くなった」気がしますね。

ステファンの五つ子・銀河の進化とブラックホール

Image credit: NASA, ESA, CSA, and STScI https://www.nasa.gov/image-feature/goddard/2022/nasa-s-webb-sheds-light-on-galaxy-evolution-black-holes

2.9億光年の先にある、相互作用銀河群です。近接した銀河は相互の重力によって攪乱し合い、活発な星形成やガスの流出など激しい活動を引き起こします。ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は、それらをより鮮明に写し出し、銀河の相互作用と起源に迫ると期待されています。

アストロピクス・ウェッブ望遠鏡がとらえた「ステファンの五つ子」
https://astropics.bookbright.co.jp/webb-sheds-light-on-galaxy-evolution-black-holes

こちらの記事では中間赤外線画像も解説されています。

NGC 3132 サザンリング惑星状星雲

Image credit: NASA, ESA, CSA, and STScI https://www.nasa.gov/image-feature/goddard/2022/nasa-s-webb-captures-dying-star-s-final-performance-in-fine-detail

星の一生の最後の姿、惑星状星雲。死にゆく星が放出したガスと塵。左がジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の「近赤外線カメラ(NIRCam)」の画像、右は中赤外線機器(MIRI)による画像ですが、より波長の長い右の画像では、中心の星が2つになっています。これは、濃い塵に囲まれた誕生間近の新しい星と考えられているそうです。

ηカリーナ星雲の星形成領域

Image credit: NASA, ESA, CSA, and STScI https://www.nasa.gov/image-feature/goddard/2022/nasa-s-webb-reveals-cosmic-cliffs-glittering-landscape-of-star-birth

星形成領域。可視光線では主に「暗黒星雲」として見えますが、近・中赤外線のジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡では、低温のガスと塵の姿と、それらに隠されて見なかった「若い星(原始星)」を直接とらえることができます。



この時点まで、科学者は、若くてよりエネルギッシュな低質量星の多数の影響についてのデータをほとんど持っていませんでした。Webbを使用すると、星雲全体の数と影響の完全な調査を取得できるようになります。

こちらもハッブル宇宙望遠鏡との比較画像がありました。圧倒的に解像感が違うだけでなく、可視光とは「見えているものも違う」のです。

系外惑星 WASP-96 b の大気のスペクトル・水の存在を検出

Image credit: NASA, ESA, CSA, and STScI https://www.nasa.gov/image-feature/goddard/2022/nasa-s-webb-reveals-steamy-atmosphere-of-distant-planet-in-detail

系外惑星WASP-96bのトランジットの観測により得られた赤外線スペクトルから、惑星大気中の水の存在が観測されました。1.6ミクロンより長い波長でこのような観測が可能なのはジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡だけ。このような観測成果も、期待されていたものの一つです。

まとめ

いかがでしたか?

1兆円という膨大な予算が投入されたジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡ですが、今回公開された画像と成果は、多くの天文学者を唸らせただけでなく、私たちのような天文ファン、さらには一般の人々にも大きなインパクトを与えました。ハッブル宇宙望遠鏡が持たなかった、より「強力な眼」によって、この先に得られる新しい発見を思うと、ワクワク感が止まりません!

今後の発表にも大いに期待です。

  https://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2022/07/fc6927a4cd7fc6f068de9eb5d3ae4aff-1-1024x538.jpghttps://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2022/07/fc6927a4cd7fc6f068de9eb5d3ae4aff-1-150x150.jpg編集部特選ピックアップ天文学  ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の初のカラー画像が公開されています。ネットでも多数拡散しているので、上記画像はみなさん目にされていることでしょう。以下、各画像の簡単な解説とともにピックアップしていきましょう。 銀河団SMACS0723 これまでで最も「深い宇宙」の赤外線画像 バイデン大統領自らが、YouTubeライブ配信で発表した最初の画像です。背景の銀河団が、手前の銀河(画像内で最も明るく白く見えるぼんやりとした光)の「重力レンズ効果」によって、ねじまげられて写っています。 「宇宙の果て」にある銀河は、宇宙の膨張によるドップラー効果で光の波長が10倍以上にも大きく引き延ばされます。このため、その光は可視光線(波長0.38〜0.7μ程度)ではなく「近赤外線」が主になります。このような超遠方の銀河の観測は、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の大きな目的の一つです。 可視光(0.4〜0.7μ?)のHSTと赤外(波長0.9-4.4μ)JWSTの画像比較。赤方偏移(z)のため近赤外でしか捉えられないような遠方の銀河が多数。 https://t.co/LkRZwOJ8cD — 天リフ編集部 (@tenmonReflexion) July 12, 2022 ハッブル宇宙望遠鏡の画像との比較。ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡で「はるかに視力が良くなった」気がしますね。 ステファンの五つ子・銀河の進化とブラックホール 2.9億光年の先にある、相互作用銀河群です。近接した銀河は相互の重力によって攪乱し合い、活発な星形成やガスの流出など激しい活動を引き起こします。ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は、それらをより鮮明に写し出し、銀河の相互作用と起源に迫ると期待されています。 アストロピクス・ウェッブ望遠鏡がとらえた「ステファンの五つ子」 https://astropics.bookbright.co.jp/webb-sheds-light-on-galaxy-evolution-black-holes こちらの記事では中間赤外線画像も解説されています。 NGC 3132 サザンリング惑星状星雲 星の一生の最後の姿、惑星状星雲。死にゆく星が放出したガスと塵。左がジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の「近赤外線カメラ(NIRCam)」の画像、右は中赤外線機器(MIRI)による画像ですが、より波長の長い右の画像では、中心の星が2つになっています。これは、濃い塵に囲まれた誕生間近の新しい星と考えられているそうです。 ηカリーナ星雲の星形成領域 星形成領域。可視光線では主に「暗黒星雲」として見えますが、近・中赤外線のジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡では、低温のガスと塵の姿と、それらに隠されて見なかった「若い星(原始星)」を直接とらえることができます。 この時点まで、科学者は、若くてよりエネルギッシュな低質量星の多数の影響についてのデータをほとんど持っていませんでした。Webbを使用すると、星雲全体の数と影響の完全な調査を取得できるようになります。 一昨日に引き続き発表になったジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の初期撮影画像。どのくらい凄いかは是非100%スケールで見てください。縮小すると本当の凄さがわかりません。以下の画像は100%の解像度です。撮影、処理方法が違うので一概に比較はできませんが、明らかな低ノイズ、そして高解像度ですね pic.twitter.com/rp4JCLI9Sk — 上坂浩光 (@kawauso_twi) July 13, 2022 こちらもハッブル宇宙望遠鏡との比較画像がありました。圧倒的に解像感が違うだけでなく、可視光とは「見えているものも違う」のです。 系外惑星 WASP-96 b の大気のスペクトル・水の存在を検出 系外惑星WASP-96bのトランジットの観測により得られた赤外線スペクトルから、惑星大気中の水の存在が観測されました。1.6ミクロンより長い波長でこのような観測が可能なのはジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡だけ。このような観測成果も、期待されていたものの一つです。 JWSTによるWASP-96bのスペクトルを、これまで最高峰のクオリティだったHubble+VLTのスペクトルと比較したもの(露光時間などの差はあるかもしれないけど) 縦軸のエラーバーの違いを見て!すごい https://t.co/nB6Dt02JzJ — マユコ / Mayuko (アスナロサイエンス) (@asnaronomer) July 13, 2022 まとめ いかがでしたか? 1兆円という膨大な予算が投入されたジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡ですが、今回公開された画像と成果は、多くの天文学者を唸らせただけでなく、私たちのような天文ファン、さらには一般の人々にも大きなインパクトを与えました。ハッブル宇宙望遠鏡が持たなかった、より「強力な眼」によって、この先に得られる新しい発見を思うと、ワクワク感が止まりません! 今後の発表にも大いに期待です。  編集部発信のオリジナルコンテンツ