みなさんこんにちは!ご愛用の赤道儀は何ですか?無線コントロール、使ってますか?

今回はビクセン社より「ワイヤレスユニット」と「SX2赤道儀(SX赤道儀ケース入り)」をお借りすることができました。早速レビューしていきましょう!



概要についてはこちらの動画をぜひごらんください。8分強の短い動画ですが、実際の操作感がわかるようにしてみました。

ワイヤレスユニットとは?

ワイヤレスユニット。手前側のジャックがST4ガイド端子、奥側がD-Sub9ピン端子になっていて、赤道儀にそのまま突き刺す形になります。量販店価格は26,400円(2022/5調べ)。
Vixen 天体望遠鏡 ワイヤレスユニット
https://www.vixen.co.jp/product/25029_5/

ビクセンの現行品の赤道儀は、基本的に「赤道儀本体」と「コントローラ」をケーブル(RS232Cシリアルケーブルと同じ形状のD-Sub9ピン端子)で接続する形になっています。コントローラには、上下左右のキーとST4ガイドポートを備えた廉価版の「スターブックワン」と、大型の液晶モニタと専用キー群が配置された自動導入対応の上位版「スターブックテン」の2種類があります。

左が「スターブックワン」、右が「スターブックテン」。

自動導入に対応しない「スターブックワン」はともかくとして、「スターブックテン」は操作が容易で使いやすく、21世紀以降の自動導入対応赤道儀の中では、随一の操作性ではないか(*1)と個人的には評価しています。しかし、スマートフォンや無線通信(WiFi)が高機能化・高速化し広く普及した現在においては、いささか「古さ」が否めなくなっていました(*2)。

(*1)大型の液晶パネル、イルミネーション付きのボタン、分かりやすい日本語表示など。

(*2)今となっては精細度がもう一歩の画面表示、太くて硬いケーブル接続、単体販売価格8.8万円(2022/5調べ)というお値段、ディスコンになったままの「アドバンスユニット」など。

そこで登場したのがこの「ワイヤレスユニット」です。ケーブルの代わりに小さな無線通信ユニットを赤道儀本体に装着し、コントローラはスマホ(タブレット)を使用します。行動範囲をケーブルに縛られることなく、軽快なタッチ操作で赤道儀がコントール可能になりました。

アプリ・スターブックワイヤレス

スターブックワイヤレスの画面(iPad版)。タブレットにも最適化されていて、大きな画面で広々と操作することも可能。赤道儀に接続しなくても起動や星図表示ができるので、アプリだけをダウンロードして試すことも可能です。

ワイヤレスユニットは本体のみでは用をなさず、必ずスマートフォン(タブレット)のアプリとセットで使用しますが、そのアプリが「スターブックワイヤレス」。iOS/iPadOS/Androidに対応し、無料でダウンロード・使用が可能です。

スターブックワイヤレスの機能や操作性は、基本的に「スターブックテン」を継承しているので、スターブックテンを使用したことのある方なら、マニュアルなしでもすんなり使い始めることが可能でしょう。

クリックでレビュー動画の該当箇所にジャンプします。

スマートフォンやタブレットの「タッチパネル」を生かしたユーザーインターフェースも工夫されています。特筆すべきは架台の微動操作。画面に表示された「十字キー」をタップするのではなく、画面のどの場所であっても、タッチ+スライドでスライドした方向に微動します。

この操作はなかなかに使いやすく、少し慣れれば画面を見ない「ブラインド」での微動が可能。暗い天体を見る際に、スマホの画面を見なくても操作できるのはとても便利です(*)。

(*)赤道儀コントローラ全般にいえることですが、スマホ画面の向きと視野内の天体の向きは通常は一致しないので「どの方向に指を動かせば架台がどちらの方向に動くか」は意識する必要があります。また、スターブックテンでは上下・左右キーの同時押しでナナメに動かすことができましたが、スターブックワイヤレスは「赤緯または赤経方向」のどちらかに動作が限定されているようです。

星図の表示モジュールはビクセン社の「ネビュラブック」と同じものを使用しているようです。画像はネビュラブックでいて座中心部を表示したとき。拡大表示したときに背景が粗くなってしまうのが残念なところ。

一つ気になったのが、星図を拡大表示したときの表示品質。上の画像のように、写真画像がオーバーレイされ、天の川や著名な天体の形状が「ある程度」わかるのはいいのですが、拡大率を上げるとこのように粗い画像になってしまい、星図上の星や天体の表示が埋もれがちになってしまうのが残念なところ。

その他、使用した「バージョン1.01」では「ASCOM」「indi」に未対応(*)なため、スターブックテンで可能だった「ステラナビゲータ」や「ASIAIR」などの外部ツールとの連動がまだできません。

(*)ASCOMはステラナビゲータなどで使用されているシリアル通信ベースの汎用天体望遠鏡制御インターフェース、indiはASIAIRなどで使用されているネットワーク通信ベースの汎用天体望遠鏡制御インターフェースです。いずれも将来バージョンで対応予定だそうです。

専用コントローラ組み込み型の製品とは異なり、ストア経由で簡単にアップデートが可能なアプリ版コントローラでは、いかにユーザーのニーズを素早く汲み上げて製品に反映させるかの「進化のスピード」が製品の価値を決めると言っても過言ではありません。その意味では、ワイヤレスアプリ時代の製品間の競争は、リリースされてからが勝負になります。今後のビクセン社の動向に注目・期待したいところです。



ビクセンSX2赤道儀とSXP赤道儀

左が筆者の旗艦赤道儀「SXP(現在は生産終了)」、右が今回お借りした「SX2」赤道儀。筐体のサイズはほぼ同じですが、内部のシャフトやギアの材質、ベアリングの使用数など内部構造は大きく異なります。重量もSXPは11kgであるのに対してSX2は7kgと軽量です。

今回、ワイヤレスユニットとセットで「SX2赤道儀」をお借りしました。筆者は同社の「SXP赤道儀」を8年ほど使用していることもあり、簡単に比較をしてみました。

赤緯架頭部と、赤経赤経の粗動・クランプの構造は大きく異なっています。SXP赤道儀はベアリングが多用されているため粗動が「スルスル」と動きますが、SX2赤道儀はもったりとした感じ。とはいっても、使用中はクランプを締めたママで使用するので、違いを感じるのはバランス合わせの時だけですが。なお、クランプの操作感は明らかにSXPが上で、スッと締まるSXPに対して、SX2は「ネジを回して締めてるぞ」感があります。

SXP赤道儀はM8/35mm間隔のネジ穴が8個あり、さまざまな規格のアリガタやパーツを装着可能ですが、SX2赤道儀はビクセン規格アリガタ専用品となっています(社外品パーツに換装することでM8/35mm間隔ネジ仕様に変更可能)。

極軸望遠鏡の先端部の造りは、明らかにSXPの方に高級感が。ただし、SX2赤道儀は極軸望遠鏡別売。赤緯赤経のシャフトの材質もSXPが炭素鋼であるのに対して、SX2はアルミ合金製です。

実用的には充分ではあるのですが、細かな部分でSX2は「廉価モデル」だと感じるところがいくつかあります。上の極軸望遠鏡用のキャップもその一つ。

極軸の上下水平微動機構、架台ハウジングとケーブル・スイッチ回り、ウェイト軸などは同じ。ちなみにウォームギアの歯数と径は同じですが、材質はSX2のみがアルミ合金でSXD2/SXPは真鍮製です。持ってみると明らかにSX2の方が軽く、好感が持てました^^これまで軽んじられていた?「この子」がワイヤレスユニットで生まれ変わるかと思うと、思わずホロリ。

とはいえ、全体的には外形もほぼ同じであり、知らない人に外見だけで「どちらが上位機種か」と訊いてもたぶん分からないでしょう。SX2は実は「できる子」だったのかもしれません^^

ビクセンの代表的赤道儀。右上ほど上位機種になります。今回のワイヤレスユニットの登場で、「スターブックワン」付属のSX2赤道儀は販売終了になり、ワイヤレスユニット付属の「SX2赤道儀WL」が新発売になりました。なお、AP赤道儀はワイヤレスユニットに対応しません。

ビクセンの赤道儀は、「2軸駆動ポータブル赤道儀」ともいえる「AP赤道儀」から、中級機の位置づけとなる、SX2/SXD2/SXPなどの「SXシリーズ」、そして上位モデルの「SXP2/AXJ/AXD2(*)」まで、数多くの機種があります。

(*)SXP2赤道儀は系列的にはSXシリーズなのですが、赤経軸支持体の形状はAXJシリーズに近く、価格的にも「上位モデル」と位置づけても間違いではないでしょう。

この中で「SX2赤道儀」は「自動導入が(理論的には)可能なエントリモデル(最下位機種)」の位置づけでした。しかし、スターブックテン・極軸望遠鏡・ウェイトなどの別売パーツを追加しSXD2相当にグレードアップすると、逆にSXD2よりも高くなってしまうなど、製品の「微妙な立ち位置」に疑問の声があったことも事実です(*)。

(*)「ビクセン SX2 SXD2 比較」で検索するといろいろ出てきます。

ところが、今回「ワイヤレスユニット」の登場によって、SX2赤道儀の位置づけは大幅に変わることになります。ワイヤレスユニットとセットの「SX2赤道儀 WL」の量販店価格は17.8万円。この価格で自動導入が実現するのです。 ビクセンの自動導入赤道儀の大幅な低価格化を実現したのが、ワイヤレスユニットであるともいえるでしょう。

今回は追尾精度などの実戦的な品質まで比較することはできませんでしたが、実際のところ剛性感はあまり変わらないように感じました。少なくとも、お手軽な眼視観望であればSX2赤道儀+ワイヤレスユニットがあれば充分(*)ではないでしょうか。

(*)逆に、眼視観望用途なら極軸望遠鏡も欲しいところですが・・(写真用途ならステラショットやASIAIRが使えるようになれば極軸支援機能が使えるので)

ビクセン・SX赤道儀ケース

ビクセン・SX赤道儀ケース
https://www.vixen.co.jp/product/89226_6/
なんとビクセン社からこの状態ママで送られてきました!キズが付かないかと心配になるのですが、段ボール等で中身が見えなくなるよりも、むしろ運送時に丁寧に扱われるのだとか。現に配達してくれた〇マトのお兄さんは「これ、めっちゃ重いんですけど何入ってるんですかっ」「〇ーチンの核のケースもこんなんなんっすかねっ!」と激しい食いつきぶりでした^^;

今回お借りしたSX2赤道儀が収納されていたケースです。「プラパール」という軽量素材が使用されており、ケースのみの重量は3kg強。空の状態で持つと、思わず「軽っ!」と感じます。

筆者はSX2赤道儀の収納・運搬用に、↑のカメラ照明機材収納用のケース「COMET(コメット) 布ケース CB用」を使用しているですが、それと比較して重量も軽い上に堅牢性も高く「マジ欲しい」レベルの良い製品と感じました。

SX2/SXD2/SXP2赤道儀とケーブル・ウェイト・コントローラがピッタリ入ります。ただしハーフピラーは収納できません。

しかし難点は価格。量販店価格46,500円と倍以上。18万円弱のSX2赤道儀には・・あまりに大きすぎる出費。しかし、もし今自分が新たに赤道儀とケースを購入するなら、3万円なら間違いなくこちらにしますし、長く使うことを考えると(*)・・・相当に悩むと思います。

(*)「COMET(コメット) 布ケース」を車のトランクに収納した場合、どうしても局所的な衝撃がかかることがあるのか、極軸上下微動軸の飾りカバーを割ってしまいました。SXシリーズは赤緯・赤経軸は頑丈な筐体に守られているため衝撃による狂いの心配は比較的少ないとはいえ、しっかりしたハードケースには大きなメリットがあるのではと感じました。

まとめ

バランスウェイトの右下の出っ張りがワイヤレスユニット。SX2赤道儀にセレストロンC8を搭載し眼視観望中。

いかがでしたか?

スマートフォンの普及によって、天体望遠鏡のコントローラーが専用品からスマホによる操作に置き換わってきました。「ワイヤレスユニット」の登場で、ビクセンユーザーもその恩恵を得られるようになったといえるでしょう。

国内で多くのユーザーに使用されているビクセン製品が、その方向に舵を切ったことはユーザーにとっても大いに歓迎ではないかと思います。その意味では、ビクセンの赤道儀は新たなスタートラインに立ったのだと言えます。今後、アプリがより使いやすく進化することと、周辺機器を含めた統合的な操作環境の提供に期待したいところです。


  • 本記事は 株式会社ビクセン様より機材の貸与を受け、天文リフレクションズ編集部が独自の費用と判断で作成したものです。文責は全て天文リフレクションズ編集部にあります。
  • 記事に関するご質問・お問い合わせなどは天文リフレクションズ編集部宛にお願いいたします。
  • 製品の購入およびお問い合わせは製品を取り扱う販売店様にお願いします。
  • 使用した「スターブックワイヤレス」はiOS用バージョン1.01です。
  • 記事中の製品仕様および価格は執筆時(2022年5月)のものです。
  • 本記事によって読者様に発生した事象については、その一切について編集部では責任を取りかねますことをご了承下さい。
  • 特に注記のない画像は編集部で撮影したものです。
  • 記事中の社名、商品名等は各社の商標または登録商標です。
https://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2022/05/fc6927a4cd7fc6f068de9eb5d3ae4aff-2-1024x577.jpghttps://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2022/05/fc6927a4cd7fc6f068de9eb5d3ae4aff-2-150x150.jpg編集部マウントマウントみなさんこんにちは!ご愛用の赤道儀は何ですか?無線コントロール、使ってますか? 今回はビクセン社より「ワイヤレスユニット」と「SX2赤道儀(SX赤道儀ケース入り)」をお借りすることができました。早速レビューしていきましょう! https://youtu.be/AM0RgObpRPY 概要についてはこちらの動画をぜひごらんください。8分強の短い動画ですが、実際の操作感がわかるようにしてみました。 ワイヤレスユニットとは? Vixen 天体望遠鏡 ワイヤレスユニット https://www.vixen.co.jp/product/25029_5/ ビクセンの現行品の赤道儀は、基本的に「赤道儀本体」と「コントローラ」をケーブル(RS232Cシリアルケーブルと同じ形状のD-Sub9ピン端子)で接続する形になっています。コントローラには、上下左右のキーとST4ガイドポートを備えた廉価版の「スターブックワン」と、大型の液晶モニタと専用キー群が配置された自動導入対応の上位版「スターブックテン」の2種類があります。 自動導入に対応しない「スターブックワン」はともかくとして、「スターブックテン」は操作が容易で使いやすく、21世紀以降の自動導入対応赤道儀の中では、随一の操作性ではないか(*1)と個人的には評価しています。しかし、スマートフォンや無線通信(WiFi)が高機能化・高速化し広く普及した現在においては、いささか「古さ」が否めなくなっていました(*2)。 (*1)大型の液晶パネル、イルミネーション付きのボタン、分かりやすい日本語表示など。 (*2)今となっては精細度がもう一歩の画面表示、太くて硬いケーブル接続、単体販売価格8.8万円(2022/5調べ)というお値段、ディスコンになったままの「アドバンスユニット」など。 そこで登場したのがこの「ワイヤレスユニット」です。ケーブルの代わりに小さな無線通信ユニットを赤道儀本体に装着し、コントローラはスマホ(タブレット)を使用します。行動範囲をケーブルに縛られることなく、軽快なタッチ操作で赤道儀がコントール可能になりました。 アプリ・スターブックワイヤレス ワイヤレスユニットは本体のみでは用をなさず、必ずスマートフォン(タブレット)のアプリとセットで使用しますが、そのアプリが「スターブックワイヤレス」。iOS/iPadOS/Androidに対応し、無料でダウンロード・使用が可能です。 スターブックワイヤレスの機能や操作性は、基本的に「スターブックテン」を継承しているので、スターブックテンを使用したことのある方なら、マニュアルなしでもすんなり使い始めることが可能でしょう。 スマートフォンやタブレットの「タッチパネル」を生かしたユーザーインターフェースも工夫されています。特筆すべきは架台の微動操作。画面に表示された「十字キー」をタップするのではなく、画面のどの場所であっても、タッチ+スライドでスライドした方向に微動します。 この操作はなかなかに使いやすく、少し慣れれば画面を見ない「ブラインド」での微動が可能。暗い天体を見る際に、スマホの画面を見なくても操作できるのはとても便利です(*)。 (*)赤道儀コントローラ全般にいえることですが、スマホ画面の向きと視野内の天体の向きは通常は一致しないので「どの方向に指を動かせば架台がどちらの方向に動くか」は意識する必要があります。また、スターブックテンでは上下・左右キーの同時押しでナナメに動かすことができましたが、スターブックワイヤレスは「赤緯または赤経方向」のどちらかに動作が限定されているようです。 一つ気になったのが、星図を拡大表示したときの表示品質。上の画像のように、写真画像がオーバーレイされ、天の川や著名な天体の形状が「ある程度」わかるのはいいのですが、拡大率を上げるとこのように粗い画像になってしまい、星図上の星や天体の表示が埋もれがちになってしまうのが残念なところ。 その他、使用した「バージョン1.01」では「ASCOM」「indi」に未対応(*)なため、スターブックテンで可能だった「ステラナビゲータ」や「ASIAIR」などの外部ツールとの連動がまだできません。 (*)ASCOMはステラナビゲータなどで使用されているシリアル通信ベースの汎用天体望遠鏡制御インターフェース、indiはASIAIRなどで使用されているネットワーク通信ベースの汎用天体望遠鏡制御インターフェースです。いずれも将来バージョンで対応予定だそうです。 専用コントローラ組み込み型の製品とは異なり、ストア経由で簡単にアップデートが可能なアプリ版コントローラでは、いかにユーザーのニーズを素早く汲み上げて製品に反映させるかの「進化のスピード」が製品の価値を決めると言っても過言ではありません。その意味では、ワイヤレスアプリ時代の製品間の競争は、リリースされてからが勝負になります。今後のビクセン社の動向に注目・期待したいところです。 ビクセンSX2赤道儀とSXP赤道儀 今回、ワイヤレスユニットとセットで「SX2赤道儀」をお借りしました。筆者は同社の「SXP赤道儀」を8年ほど使用していることもあり、簡単に比較をしてみました。 SXP赤道儀はM8/35mm間隔のネジ穴が8個あり、さまざまな規格のアリガタやパーツを装着可能ですが、SX2赤道儀はビクセン規格アリガタ専用品となっています(社外品パーツに換装することでM8/35mm間隔ネジ仕様に変更可能)。 実用的には充分ではあるのですが、細かな部分でSX2は「廉価モデル」だと感じるところがいくつかあります。上の極軸望遠鏡用のキャップもその一つ。 とはいえ、全体的には外形もほぼ同じであり、知らない人に外見だけで「どちらが上位機種か」と訊いてもたぶん分からないでしょう。SX2は実は「できる子」だったのかもしれません^^ ビクセンの赤道儀は、「2軸駆動ポータブル赤道儀」ともいえる「AP赤道儀」から、中級機の位置づけとなる、SX2/SXD2/SXPなどの「SXシリーズ」、そして上位モデルの「SXP2/AXJ/AXD2(*)」まで、数多くの機種があります。 (*)SXP2赤道儀は系列的にはSXシリーズなのですが、赤経軸支持体の形状はAXJシリーズに近く、価格的にも「上位モデル」と位置づけても間違いではないでしょう。 この中で「SX2赤道儀」は「自動導入が(理論的には)可能なエントリモデル(最下位機種)」の位置づけでした。しかし、スターブックテン・極軸望遠鏡・ウェイトなどの別売パーツを追加しSXD2相当にグレードアップすると、逆にSXD2よりも高くなってしまうなど、製品の「微妙な立ち位置」に疑問の声があったことも事実です(*)。 (*)「ビクセン SX2 SXD2 比較」で検索するといろいろ出てきます。 ところが、今回「ワイヤレスユニット」の登場によって、SX2赤道儀の位置づけは大幅に変わることになります。ワイヤレスユニットとセットの「SX2赤道儀 WL」の量販店価格は17.8万円。この価格で自動導入が実現するのです。 ビクセンの自動導入赤道儀の大幅な低価格化を実現したのが、ワイヤレスユニットであるともいえるでしょう。 今回は追尾精度などの実戦的な品質まで比較することはできませんでしたが、実際のところ剛性感はあまり変わらないように感じました。少なくとも、お手軽な眼視観望であればSX2赤道儀+ワイヤレスユニットがあれば充分(*)ではないでしょうか。 (*)逆に、眼視観望用途なら極軸望遠鏡も欲しいところですが・・(写真用途ならステラショットやASIAIRが使えるようになれば極軸支援機能が使えるので) ビクセン・SX赤道儀ケース ビクセン・SX赤道儀ケース https://www.vixen.co.jp/product/89226_6/ 今回お借りしたSX2赤道儀が収納されていたケースです。「プラパール」という軽量素材が使用されており、ケースのみの重量は3kg強。空の状態で持つと、思わず「軽っ!」と感じます。 筆者はSX2赤道儀の収納・運搬用に、↑のカメラ照明機材収納用のケース「COMET(コメット) 布ケース CB用」を使用しているですが、それと比較して重量も軽い上に堅牢性も高く「マジ欲しい」レベルの良い製品と感じました。 しかし難点は価格。量販店価格46,500円と倍以上。18万円弱のSX2赤道儀には・・あまりに大きすぎる出費。しかし、もし今自分が新たに赤道儀とケースを購入するなら、3万円なら間違いなくこちらにしますし、長く使うことを考えると(*)・・・相当に悩むと思います。 (*)「COMET(コメット) 布ケース」を車のトランクに収納した場合、どうしても局所的な衝撃がかかることがあるのか、極軸上下微動軸の飾りカバーを割ってしまいました。SXシリーズは赤緯・赤経軸は頑丈な筐体に守られているため衝撃による狂いの心配は比較的少ないとはいえ、しっかりしたハードケースには大きなメリットがあるのではと感じました。 まとめ いかがでしたか? スマートフォンの普及によって、天体望遠鏡のコントローラーが専用品からスマホによる操作に置き換わってきました。「ワイヤレスユニット」の登場で、ビクセンユーザーもその恩恵を得られるようになったといえるでしょう。 国内で多くのユーザーに使用されているビクセン製品が、その方向に舵を切ったことはユーザーにとっても大いに歓迎ではないかと思います。その意味では、ビクセンの赤道儀は新たなスタートラインに立ったのだと言えます。今後、アプリがより使いやすく進化することと、周辺機器を含めた統合的な操作環境の提供に期待したいところです。 本記事は 株式会社ビクセン様より機材の貸与を受け、天文リフレクションズ編集部が独自の費用と判断で作成したものです。文責は全て天文リフレクションズ編集部にあります。 記事に関するご質問・お問い合わせなどは天文リフレクションズ編集部宛にお願いいたします。 製品の購入およびお問い合わせは製品を取り扱う販売店様にお願いします。 使用した「スターブックワイヤレス」はiOS用バージョン1.01です。 記事中の製品仕様および価格は執筆時(2022年5月)のものです。 本記事によって読者様に発生した事象については、その一切について編集部では責任を取りかねますことをご了承下さい。 特に注記のない画像は編集部で撮影したものです。 記事中の社名、商品名等は各社の商標または登録商標です。編集部発信のオリジナルコンテンツ