日本天文学会が発行する月刊誌「天文月報」に、「シリーズ:安全保障と天文学」という連載が掲載されています。「天文月報オンライン」から読むことができます。

それぞれの寄稿文はボリュームもあり、過去の様々な経緯をたどらないと読み解くことは簡単ではありません。現状の編集子の理解とバックグランドでは、個別の論評は不可能です。以下にいくつかの記事と短い感想、そして連載の全ての記事のリンクを添えることとします。

日本学術会議の2017/3の声明について

日本学術会議・軍事的安全保障研究に関する声明
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-23-s243.pdf

議論の元になっている声明文がこちらです。本文は1ページ。長くはありません。全ての天文を含む学術分野に関心をもつ一般の人に、これだけはぜひ読んでいただきたいと思います。でも難しい言葉で書かれているので1回読んだくらいでは何を言いたいのかよくわかりません。3度くらい読めば、なんとなくわかってきます。なんといいますが、これが現実です。

戸谷友則さんの寄稿



天文月報2019年1月号・学術会議声明批判
http://www.asj.or.jp/geppou/archive_open/2019_112_01/112-1_47.pdf

学術会議が暴走して何か困ったこと をしでかしても,大学や学会は涼しい顔で無視すれば良いのだ,という共通認識を日本の研究者コ ミュニティがもつことは,本稿で指摘した学術会 議の組織的な問題に対する一つの現実的な対処か もしれません.

「スルーするのが最善かも(超訳)」とまで、学術会議の声明とあり方について手厳しく批判されています。

池内了さんの寄稿

こちらは学術会議声明を支持するものです。「研究予算を特定の官庁に握られること」が現実的には「毒まんじゅう(超訳)」であること、声明文では具体的に触れられていなかった「社会からの負託」「学問の自由」とは何かについて語られています。

天文月報・「シリーズ・安全保障と天文学」

天文月報のこれらの連載記事は、いずれもPDFで公開されています。興味のある方はぜひご一読ください。

2017年11月号・日本天文学会の皆さんへ―安全保障と天文学シリーズの開始にあたって―(柴田一成)
2017年11月号・安全保障に関する日本学術会議声明―若手天文学研究者に向けて―(須藤靖)
2017年12月号・軍事と科学―ナチスドイツとJASON(池内了)
2018年 1月号・科学者・軍事研究・ヒューマニティ(小沼通二)
2018年 2月号・軍事研究に対する企業倫理と人の心のあり方~企業人の視点から~(安井猛)
2018年 3月号・軍事的研究と基礎科学的研究の区分け(釜谷秀幸)
2018年 3月号・戦時下日本で,科学者はどのように軍事研究にかかわったか(河村豊)
2018年 8月号・特別セッション「安全保障と天文学」報告(主催:公益社団法人日本天文学会・共催:日本学術会議)
2018年 9月号・日本の天文学者と戦時研究動員(高橋慶太郎・海部宣男)

まとめ

編集子は日本天文学会会員でもなく、また特定の政治信条や思想をこの場で論じる意図もありませんが、この一連の連載では様々な考え方と立場の方が、それぞれの問題意識と意見を真摯に表明されています。それは、アカデミズムが政治や行政、そして一般大衆とますます無縁ではなくなった現在の状況を映す鏡であり、映さない鏡でもあります。天文界を越えて広く読まれ議論されるべきテーマであると感じました。

編集子の感想ですが、これらの文章は「軍事」「安全保障」という政治的テーマをいったん切り離して読む方が有益ではないかと感じました。「誰が金を出し」「誰がそれを分配し」それぞれの研究者が「それをどう使うのか」。そのどのプロセスにおいても課題があるように感じます。特に、将来を担うであろう若手の研究者や学生にとっては、その問題を感じても主体的に解決できる立場や地位にはありません。「学術会議」のような既に何かを成し遂げ終えた研究者のコミュニティには、それらを俯瞰した上での問題認識と解決への行動を望むものです。

https://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2018/12/901338ce72b79a54f578e8d431289d7b-1024x743.jpghttps://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2018/12/901338ce72b79a54f578e8d431289d7b-150x150.jpg編集部天文コラム日本天文学会が発行する月刊誌「天文月報」に、「シリーズ:安全保障と天文学」という連載が掲載されています。「天文月報オンライン」から読むことができます。 https://twitter.com/tsuka_ken/status/1076624876172042240 それぞれの寄稿文はボリュームもあり、過去の様々な経緯をたどらないと読み解くことは簡単ではありません。現状の編集子の理解とバックグランドでは、個別の論評は不可能です。以下にいくつかの記事と短い感想、そして連載の全ての記事のリンクを添えることとします。 日本学術会議の2017/3の声明について 日本学術会議・軍事的安全保障研究に関する声明 http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-23-s243.pdf 議論の元になっている声明文がこちらです。本文は1ページ。長くはありません。全ての天文を含む学術分野に関心をもつ一般の人に、これだけはぜひ読んでいただきたいと思います。でも難しい言葉で書かれているので1回読んだくらいでは何を言いたいのかよくわかりません。3度くらい読めば、なんとなくわかってきます。なんといいますが、これが現実です。 戸谷友則さんの寄稿 https://twitter.com/tenmonReflexion/status/1076647375869947904 天文月報2019年1月号・学術会議声明批判 http://www.asj.or.jp/geppou/archive_open/2019_112_01/112-1_47.pdf 学術会議が暴走して何か困ったこと をしでかしても,大学や学会は涼しい顔で無視すれば良いのだ,という共通認識を日本の研究者コ ミュニティがもつことは,本稿で指摘した学術会 議の組織的な問題に対する一つの現実的な対処か もしれません. 「スルーするのが最善かも(超訳)」とまで、学術会議の声明とあり方について手厳しく批判されています。 池内了さんの寄稿 https://twitter.com/tenmonReflexion/status/1076648738116915200 天文月報2019年1月号・軍事研究と学問の自由について―日本学術会議の声明を支持する立場から― http://www.asj.or.jp/geppou/archive_open/2019_112_01/112-1_55.pdf こちらは学術会議声明を支持するものです。「研究予算を特定の官庁に握られること」が現実的には「毒まんじゅう(超訳)」であること、声明文では具体的に触れられていなかった「社会からの負託」「学問の自由」とは何かについて語られています。 天文月報・「シリーズ・安全保障と天文学」 天文月報のこれらの連載記事は、いずれもPDFで公開されています。興味のある方はぜひご一読ください。 2017年11月号・日本天文学会の皆さんへ―安全保障と天文学シリーズの開始にあたって―(柴田一成) 2017年11月号・安全保障に関する日本学術会議声明―若手天文学研究者に向けて―(須藤靖) 2017年12月号・軍事と科学―ナチスドイツとJASON(池内了) 2018年 1月号・科学者・軍事研究・ヒューマニティ(小沼通二) 2018年 2月号・軍事研究に対する企業倫理と人の心のあり方~企業人の視点から~(安井猛) 2018年 3月号・軍事的研究と基礎科学的研究の区分け(釜谷秀幸) 2018年 3月号・戦時下日本で,科学者はどのように軍事研究にかかわったか(河村豊) 2018年 8月号・特別セッション「安全保障と天文学」報告(主催:公益社団法人日本天文学会・共催:日本学術会議) 2018年 9月号・日本の天文学者と戦時研究動員(高橋慶太郎・海部宣男) まとめ 編集子は日本天文学会会員でもなく、また特定の政治信条や思想をこの場で論じる意図もありませんが、この一連の連載では様々な考え方と立場の方が、それぞれの問題意識と意見を真摯に表明されています。それは、アカデミズムが政治や行政、そして一般大衆とますます無縁ではなくなった現在の状況を映す鏡であり、映さない鏡でもあります。天文界を越えて広く読まれ議論されるべきテーマであると感じました。 編集子の感想ですが、これらの文章は「軍事」「安全保障」という政治的テーマをいったん切り離して読む方が有益ではないかと感じました。「誰が金を出し」「誰がそれを分配し」それぞれの研究者が「それをどう使うのか」。そのどのプロセスにおいても課題があるように感じます。特に、将来を担うであろう若手の研究者や学生にとっては、その問題を感じても主体的に解決できる立場や地位にはありません。「学術会議」のような既に何かを成し遂げ終えた研究者のコミュニティには、それらを俯瞰した上での問題認識と解決への行動を望むものです。編集部発信のオリジナルコンテンツ