【平成最後の肉眼彗星?】ウィルタネン彗星46P・直前徹底ガイド
皆さんこんにちは!いよいよ「平成最後の?肉眼彗星」ウィルタネン彗星46Pの地球最接近(12月16日)が迫ってきました!予想どおりに順調に明るくなってきていて、11月30日時点で5等級。空の暗い場所では既に肉眼で見えたという報告もあり、12月中旬には4等級〜3等級まで明るくなることが期待されています。
本記事では、このウィルタネン彗星46Pの撮影や観察の仕方について、徹底ガイドします!
ウィルタネン彗星のココがスゴイ!!
ウィルタネン彗星?何それ?おいしいの? そんなあなたに、ウィルタネン彗星の何が凄いのかをお話ししましょう!
史上10番目の「近さ」
ウィルタネン彗星の地球最接近時の対地距離は約0.08天文単位。太陽と地球の間の距離のわずか8%にまで近づきます。この「近さ」は観測史上でなんと十番目の近さになるそうです(*)
(*)星が好きな人のための新着情報 https://news.local-group.jp/20181018.html
百武彗星・Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/百武彗星_(C/1996_B2)
ちなみに1996年に地球に大きく接近し、尾の長さが最大80度にもなった百武彗星の最接近時の距離は0.1天文単位。ウィルタネン彗星はそれよりもさらに近い距離まで近づくことになります。
予想どおりに明るくなってきている
彗星にも「マーフィーの法則」が成り立ちます。前評判が大きな彗星ほど、空振りする。大して注目されていなかった彗星なのに、突然明るく長い尾を引いた。彗星は水物。天文界では「前評判が上がるとハズレるので(マスコミは煽らず)そっとしておいてほしい」という説もあるくらいです。
吉田誠一HP・ウィルタネン彗星 46P/Wirtanen (2018)
http://www.aerith.net/comet/catalog/0046P/2018-j.html
しかし、ウィルタネン彗星はこれまでのところ予測光度どおりに順調に明るくなってきています。上のグラフは彗星の研究家である吉田誠一さんのHPに掲載されているウィルタネン彗星の予想光度と実際の観測データ。12月中旬の「3等台」に向けて、順調に明るくなってきています。
ほとんど一晩中見ることができる
ウィルタネン彗星が地球に近づく12月中旬ごろ、彗星は「おうし座」付近にいます。12月のおうし座は日暮れと共に東の空から昇り、夜中には頭の上で輝き、明け方に西の空に沈みます。つまり一晩中見えているのです。彗星は往々にして、明るくなっても「太陽の向こう側」に隠れてしまって見ることができないのですが、ウィルタネン彗星は違います。最も明るくなる近日点通過時点で、一晩中見えているような彗星はなかなかありません。
デカい
当たり前のことですが、地球に近づく=大きく見える。最接近時の距離「0.08 天文単位」という近さは予想から狂うことはありません。(天体力学の勝利ですのよ!^^)
仮に「予想どおりにしか」明るくならなかった場合でも、彗星の大きな姿を見ることができるでしょう。
近日点通過後に地球に最接近する
だんだん煽っていることがバレてきましたが、これで最後。ウィルタネン彗星は12月13日ごろに「近日点」を通過します。近日点とは、彗星が最も太陽に近づく場所。彗星は太陽に近づくほど、太陽の光に「焼かれて」塵やガスを吹き出し、それが明るく輝きます。一般に彗星がより明るく活発に見えるのは「近日点」を通過した後。彗星が太陽に「こんがり焼かれた後」がチャンス(*)。
(*)太陽に焼かれすぎると逆効果になることも。前述の百武彗星は、水星よりも太陽に近づいたのですが、その後はすっかり暗くなってしまいました。2013年のアイソン彗星の場合は、太陽のごく近くまで接近し、バラバラに砕け散ってしまいました。その点、ウィルタネン彗星は太陽に最接近してもその距離は「1.06天文単位(地球と太陽の平均距離の1.06倍)」と遠いので、その心は(たぶん)ありません!
ウィルタネン彗星の場合、近日点通過のわずか3日後、12月16日に地球に最接近します。これをチャンスといわずして何というか!というくらいのチャンスです(煽ってます^^)。
ウィルタネン彗星はどこに見えるか
さて。ではこのウィルタネン彗星はどこに見えるのでしょうか。
アストロアーツ・2018年12月 ウィルタネン彗星が4等台
https://www.astroarts.co.jp/article/hl/a/10292_ph181200
12月1日時点でウィルタネン彗星はオリオン座の東、「エリダヌス座」にいます。そこから図のように動いていきます・・・よくわからない!という方は、スマホのアプリをインストールしましょう!アプリがあれば、空にかざして見るだけでどの方角に見えるかがわかります。
ビクセン・Commet Book(コメットブック)
https://www.vixen.co.jp/app/comet-book/
天体望遠鏡の国内最大手、ビクセン社の無料アプリ。初心者向け。起動したらすぐウィルタネン彗星がどこに見えるかの画面になります。
SkyGuide(スカイガイド)
https://dotapps.jp/products/com-fifthstarlabs-skyguide
380円の有料アプリですが、天文マニアにオススメ。Hαやマイクロ波での分子雲の様子もリアルに見ることができます。本記事でも画面図を多数使用しています。
追記2018/12/7)
ちなみに軌道上の動きを見るにはビクセンのアプリ「Commet Book」がオススメ。今回の接近がいかにレアな好条件であるかがよくわかる。地球からの距離が近いため、日々の彗星と尾の位置関係の変化が大きい。毎日撮影できれば面白そう。
ビクセンHPよりピックアップ。https://t.co/SVdQh247UF pic.twitter.com/0jvlaajvsY— 天リフ編集部 (@tenmonReflexion) December 7, 2018
Commet bookでは、軌道上の地球と彗星の動きを追うこともできます。今回の地球との接近では、位置関係的にに彗星の尾が彗星の向こう側になってしまうため、長い尾を見るにはあまり適さないのですが、地球との距離が小さいため本当に悪い条件の期間は短い間と推測されます。尾の形状だけはなく、方向と長さにも注目です。
ウィルタネン彗星をこの眼で見よう
平成最後の?肉眼彗星、ウィルタネン彗星。ぜひ「この眼で」で見たいものです。その前に・・ひとつだけ、悪いニュースがあります。
ウィルタネン彗星のここがダメ
でかいけど、淡い。
さんざん煽ったウィルタネン彗星ですが、一応白状しておきます。彗星が近いのはいいのですが、近すぎて逆に大きく広がってしまい、市街地からは肉眼で見るのは難しいかもしれません!
できるだけ空の暗い場所に行く
でも、空の暗い場所に行けば、肉眼でもぼんやりと広がった姿が見えるはずです。11/30時点で、既に肉眼で見えたという報告があります。
ウィルタネン彗星は深夜にはほぼ頭の上にあるので、街灯りや空気中の塵やもやの影響を受けにくいため、肉眼で見るならその時がチャンスです!
どこに行けば星がよく見えるの?そんな疑問を持った方は、こちらの記事をご参照くださいね!
双眼鏡があればなおグッド!
双眼鏡があれば、さらにはっきりと見ることができるでしょう。双眼鏡を既にお持ちの方は、何であれそれを持って出かけましょう。
双眼鏡をお持ちでない方は、この機会にひとつ入手しておくのも一手です。上のリンクでご紹介した双眼鏡は、同等品を天リフでも使用していますが、ウィルタネン彗星をしっかり見ることができました!8倍と10倍がありますが、この製品に限っては10倍をオススメします(*)。
(*)星見用には一般には口径42mmの場合8倍がよいのですが、この製品の場合は10倍の方が見かけ視野が広く、また星専用でないなら10倍の方が多目的に使えます。
ウィルタネン彗星撮影ガイド
平成最後の?肉眼彗星、ウィルタネン彗星。デジタル一眼カメラをお持ちの方は、ぜひその姿を撮影してみましょう!
11月29日のウィルタネン彗星
今現在のウィルタネン彗星の姿。600mm相当の焦点距離で撮ったものですが、非常に大きく広がった青緑色の姿をしています。
一般に、彗星は太陽に一番近づくタイミング(近日点通過)の「前」は、太陽の光でまだ十分「焼かれて」いないので、あまり派手な状態にはなりません。それが現時点。
この後どんな風に見えるのか?妄想全開!
ところが、彗星が太陽に接近すると「こんがり焼かれて」彗星から細かな塵(ダスト)や様々な分子のガス(イオン)が吹き出しやすくなります。特に突発的な噴出(バースト)が起きると、様々な複雑な流線を描いた尾となります。
期待値最大MAXの妄想画像がこちらになります。妄想MAXの割には地味ですけど^^;; こんなふうにならず、今のように「地味目なまま」の可能性も大なのですが・・・
ウィルタネン彗星のある星空を撮ろう
今回のウィルタネン彗星は、かなり大きく明るくなることが予測されるため、短い焦点距離のカメラレンズでも姿をとらえることができます。
【保存版】星空を綺麗に撮る方法、撮影完全マニュアル!初級編
https://photo-studio9.com/starrysky-master/
星の写真にチャレンジしたことのない方でも、基本を押さえて撮影に臨めば、青緑色の姿を捉えられるはず!そんな方には上記の記事が参考になります。
星三昧・星景写真(ウィルタネン彗星)
https://05401218.at.webry.info/201811/article_15.html
また「星景写真」の対象としても、これからがますますチャンスです。この作品は、ブログ「星三昧」ブログ主様が、11月30日に焦点距離58mmのカメラレンズで撮影されたもの。冠雪した浅間山の上に青緑色の彗星が。素晴らしいショットです。
星景写真の場合、彗星の地平高度が高くなりすぎると、風景と一緒に収まってくれません。夕方以降の早めの時刻で、オリオン座やおうし座、すばるなどと一緒に撮ると面白いでしょう。普通の星景写真と同じように、10秒〜30秒くらいの露出時間でOKです。
ただし、よほどの何かがない限り、ウィルタネン彗星はかなり淡めです。市街地で撮るのはかなり厳しいはず。できるだけ空の暗い場所に行ってみるのが吉です。
「ふたご座流星群」の晩は特にチャンス!
12月中旬はウィルタネン彗星は一晩中見えています。明け方の西の空に沈む姿を撮ることも可能。この場合は月が沈むのを待てば、暗夜で撮影することが可能です。
特に、13日と14日の晩はふたご座流星群。最も多くの流星が流れる「極大時刻」の予想は14日の21時ですが、13日・14日の両日が大きなチャンスです。たくさんの流れ星を眺めながら、彗星をねらってみましょう。この場合のオススメは夕方より明け方です。上の図は朝3時過ぎの西の空。明るい流星は低い高度で流れることが多いため、ふたご座流星群の晩は「夜明け前は西の空に注目」です!
冬の天の川と分子雲を横切る姿(マニア向け)
ここから先はマニア向け。
現時点では比較的「何もない」寂しいエリアにいるウィルタネン彗星ですが、12月中旬におうし座の「分子雲銀座」を通過していきます。50mmから135mmくらいまで、焦点距離それぞれによって工夫した構図で狙えるでしょう。
チャンスは16日の晩にすばると接近してから、19日の晩のカリフォルニア星雲との接近まででしょう。しかし、月の存在が問題。16日の晩でも月が沈むのを待つとかなり西に低くなってしまいます。
月明上等で撮るのか、沈むのを待つか。晴れるかどうかもわからないので、編集部ではとにかく晴れたらGOで、チャンスのある限り撮り続けようと思います。
12月5日発売の天文ガイド2019年1月号には、分子雲の大家の三本松尚雄さんの特集記事「46P/ウィルタネン周期彗星をとらえよう」が掲載されています。こちらもぜひ読んでおきたいですね!
ますます動きが速くなることに注意(マニア向け)
上の作例画像の11/29時点で、ウィルタネン彗星の移動速度は1時間当たり4分角、1分間で6秒角ほど。厳密にみれば1分露出でも焦点距離400mmならわずかに流れるくらいです(*)。これが、地球最接近の頃には、この倍近くにもなります。
(*)とはいえ、彗星のはっきりした構造は「核」と呼ばれる中心で輝く部分だけであとはぼんやりしているため、鑑賞距離であればもっと基準はゆるくなります。今回の作例も10分間露出で等倍で見るとかなり流れています。
このため長い焦点距離で長時間露出すると、間違いなく流れてしまいます。「メトカーフ法」と呼ばれる、(*)彗星も恒星も流さない技もあるのですが、副作用も多くなかなか難しいようです。チャレンジする価値はあるでしょう。
(*)2019/12/3 「メトカーフ法」とは「彗星自身の固有運動量を事前に計算し、 その移動量の分だけ赤道儀の赤経・赤緯モーターを追加で動かして撮影する」方法でした。訂正してお詫びいたします。
ややこしいことをしたくない向きには、長焦点の場合は彗星基準に割り切るか、流れるのは上等として長時間露出するのもありでしょう。
総合的に判断して、編集部では今回と同じく1コマ当たり「30秒」で多数枚撮影し、後から画像処理で核基準・恒星基準を使い分けようと考えています。
ロングランのタイムラプス動画を撮る(マニア向け)
昨夜の46Pウィルタネン彗星のタイムラプス動画。換算600mmくらいの焦点距離です。口径42mmの双眼鏡でもぼんやり広がる大きな姿が視認できました。これからさらに明るく大きく動きが速くなってきます。12月中旬のふたご座流星群との競演が楽しみです。 pic.twitter.com/0csj0X3hge
— 天リフ編集部 (@tenmonReflexion) November 30, 2018
編集部では、最接近の前後では彗星が見えている間ありったけの時間をかけて、タイムラプス動画を撮ろうと考えています。途中でバーストするようなことがあれば、かなりの「レアもの」です!
上の動画は、11/29日にそのためのテストとして撮影したもの。約30分間の彗星の姿です。オートガイドを行っていないノーガイド撮影のため、ピリオディックモーションで星がふらついてしまいました。最接近時の本番ではオートガイドで撮ることにします。彗星の核が現在同様に明るければ、核をガイド星にすることが可能かも。
バーストしなかったとしても、彗星が星々の間を速く移動してゆくさまを、もっともっと長時間でとらえることができれば、面白い動画になるかも?と期待しています。
まとめ
いかがでしたか?
くどいですが^^;;、ウィルタネン彗星46Pは(たぶん)平成最後の肉眼彗星。いろいろあった平成の世と、あなた自身の2018年を振り返りながら、この年末はウィルタネン彗星を追いかけてみませんか!? https://reflexions.jp/tenref/orig/2018/12/01/7085/【平成最後の肉眼彗星?】ウィルタネン彗星46P・直前徹底ガイドhttps://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2018/12/fc6927a4cd7fc6f068de9eb5d3ae4aff-1024x538.jpghttps://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2018/12/fc6927a4cd7fc6f068de9eb5d3ae4aff-150x150.jpg天文現象皆さんこんにちは!いよいよ「平成最後の?肉眼彗星」ウィルタネン彗星46Pの地球最接近(12月16日)が迫ってきました!予想どおりに順調に明るくなってきていて、11月30日時点で5等級。空の暗い場所では既に肉眼で見えたという報告もあり、12月中旬には4等級〜3等級まで明るくなることが期待されています。 本記事では、このウィルタネン彗星46Pの撮影や観察の仕方について、徹底ガイドします! ウィルタネン彗星のココがスゴイ!! ウィルタネン彗星?何それ?おいしいの? そんなあなたに、ウィルタネン彗星の何が凄いのかをお話ししましょう! 史上10番目の「近さ」 ウィルタネン彗星の地球最接近時の対地距離は約0.08天文単位。太陽と地球の間の距離のわずか8%にまで近づきます。この「近さ」は観測史上でなんと十番目の近さになるそうです(*) (*)星が好きな人のための新着情報 https://news.local-group.jp/20181018.html 百武彗星・Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/百武彗星_(C/1996_B2) ちなみに1996年に地球に大きく接近し、尾の長さが最大80度にもなった百武彗星の最接近時の距離は0.1天文単位。ウィルタネン彗星はそれよりもさらに近い距離まで近づくことになります。 予想どおりに明るくなってきている 彗星にも「マーフィーの法則」が成り立ちます。前評判が大きな彗星ほど、空振りする。大して注目されていなかった彗星なのに、突然明るく長い尾を引いた。彗星は水物。天文界では「前評判が上がるとハズレるので(マスコミは煽らず)そっとしておいてほしい」という説もあるくらいです。 吉田誠一HP・ウィルタネン彗星 46P/Wirtanen (2018) http://www.aerith.net/comet/catalog/0046P/2018-j.html しかし、ウィルタネン彗星はこれまでのところ予測光度どおりに順調に明るくなってきています。上のグラフは彗星の研究家である吉田誠一さんのHPに掲載されているウィルタネン彗星の予想光度と実際の観測データ。12月中旬の「3等台」に向けて、順調に明るくなってきています。 ほとんど一晩中見ることができる ウィルタネン彗星が地球に近づく12月中旬ごろ、彗星は「おうし座」付近にいます。12月のおうし座は日暮れと共に東の空から昇り、夜中には頭の上で輝き、明け方に西の空に沈みます。つまり一晩中見えているのです。彗星は往々にして、明るくなっても「太陽の向こう側」に隠れてしまって見ることができないのですが、ウィルタネン彗星は違います。最も明るくなる近日点通過時点で、一晩中見えているような彗星はなかなかありません。 デカい 当たり前のことですが、地球に近づく=大きく見える。最接近時の距離「0.08 天文単位」という近さは予想から狂うことはありません。(天体力学の勝利ですのよ!^^) 仮に「予想どおりにしか」明るくならなかった場合でも、彗星の大きな姿を見ることができるでしょう。 近日点通過後に地球に最接近する だんだん煽っていることがバレてきましたが、これで最後。ウィルタネン彗星は12月13日ごろに「近日点」を通過します。近日点とは、彗星が最も太陽に近づく場所。彗星は太陽に近づくほど、太陽の光に「焼かれて」塵やガスを吹き出し、それが明るく輝きます。一般に彗星がより明るく活発に見えるのは「近日点」を通過した後。彗星が太陽に「こんがり焼かれた後」がチャンス(*)。 (*)太陽に焼かれすぎると逆効果になることも。前述の百武彗星は、水星よりも太陽に近づいたのですが、その後はすっかり暗くなってしまいました。2013年のアイソン彗星の場合は、太陽のごく近くまで接近し、バラバラに砕け散ってしまいました。その点、ウィルタネン彗星は太陽に最接近してもその距離は「1.06天文単位(地球と太陽の平均距離の1.06倍)」と遠いので、その心は(たぶん)ありません! ウィルタネン彗星の場合、近日点通過のわずか3日後、12月16日に地球に最接近します。これをチャンスといわずして何というか!というくらいのチャンスです(煽ってます^^)。 ウィルタネン彗星はどこに見えるか さて。ではこのウィルタネン彗星はどこに見えるのでしょうか。 アストロアーツ・2018年12月 ウィルタネン彗星が4等台 https://www.astroarts.co.jp/article/hl/a/10292_ph181200 12月1日時点でウィルタネン彗星はオリオン座の東、「エリダヌス座」にいます。そこから図のように動いていきます・・・よくわからない!という方は、スマホのアプリをインストールしましょう!アプリがあれば、空にかざして見るだけでどの方角に見えるかがわかります。 ビクセン・Commet Book(コメットブック) https://www.vixen.co.jp/app/comet-book/ 天体望遠鏡の国内最大手、ビクセン社の無料アプリ。初心者向け。起動したらすぐウィルタネン彗星がどこに見えるかの画面になります。 SkyGuide(スカイガイド) https://dotapps.jp/products/com-fifthstarlabs-skyguide 380円の有料アプリですが、天文マニアにオススメ。Hαやマイクロ波での分子雲の様子もリアルに見ることができます。本記事でも画面図を多数使用しています。 追記2018/12/7) https://twitter.com/tenmonReflexion/status/1070932997065457667 Commet bookでは、軌道上の地球と彗星の動きを追うこともできます。今回の地球との接近では、位置関係的にに彗星の尾が彗星の向こう側になってしまうため、長い尾を見るにはあまり適さないのですが、地球との距離が小さいため本当に悪い条件の期間は短い間と推測されます。尾の形状だけはなく、方向と長さにも注目です。 ウィルタネン彗星をこの眼で見よう 平成最後の?肉眼彗星、ウィルタネン彗星。ぜひ「この眼で」で見たいものです。その前に・・ひとつだけ、悪いニュースがあります。 ウィルタネン彗星のここがダメ でかいけど、淡い。 さんざん煽ったウィルタネン彗星ですが、一応白状しておきます。彗星が近いのはいいのですが、近すぎて逆に大きく広がってしまい、市街地からは肉眼で見るのは難しいかもしれません! できるだけ空の暗い場所に行く でも、空の暗い場所に行けば、肉眼でもぼんやりと広がった姿が見えるはずです。11/30時点で、既に肉眼で見えたという報告があります。 ウィルタネン彗星は深夜にはほぼ頭の上にあるので、街灯りや空気中の塵やもやの影響を受けにくいため、肉眼で見るならその時がチャンスです! https://reflexions.jp/tenref/orig/2017/07/03/1202/ どこに行けば星がよく見えるの?そんな疑問を持った方は、こちらの記事をご参照くださいね! 双眼鏡があればなおグッド! 双眼鏡があれば、さらにはっきりと見ることができるでしょう。双眼鏡を既にお持ちの方は、何であれそれを持って出かけましょう。 双眼鏡をお持ちでない方は、この機会にひとつ入手しておくのも一手です。上のリンクでご紹介した双眼鏡は、同等品を天リフでも使用していますが、ウィルタネン彗星をしっかり見ることができました!8倍と10倍がありますが、この製品に限っては10倍をオススメします(*)。 (*)星見用には一般には口径42mmの場合8倍がよいのですが、この製品の場合は10倍の方が見かけ視野が広く、また星専用でないなら10倍の方が多目的に使えます。 ウィルタネン彗星撮影ガイド 平成最後の?肉眼彗星、ウィルタネン彗星。デジタル一眼カメラをお持ちの方は、ぜひその姿を撮影してみましょう! 11月29日のウィルタネン彗星 今現在のウィルタネン彗星の姿。600mm相当の焦点距離で撮ったものですが、非常に大きく広がった青緑色の姿をしています。 一般に、彗星は太陽に一番近づくタイミング(近日点通過)の「前」は、太陽の光でまだ十分「焼かれて」いないので、あまり派手な状態にはなりません。それが現時点。 この後どんな風に見えるのか?妄想全開! ところが、彗星が太陽に接近すると「こんがり焼かれて」彗星から細かな塵(ダスト)や様々な分子のガス(イオン)が吹き出しやすくなります。特に突発的な噴出(バースト)が起きると、様々な複雑な流線を描いた尾となります。 期待値最大MAXの妄想画像がこちらになります。妄想MAXの割には地味ですけど^^;; こんなふうにならず、今のように「地味目なまま」の可能性も大なのですが・・・ ウィルタネン彗星のある星空を撮ろう 今回のウィルタネン彗星は、かなり大きく明るくなることが予測されるため、短い焦点距離のカメラレンズでも姿をとらえることができます。 【保存版】星空を綺麗に撮る方法、撮影完全マニュアル!初級編 https://photo-studio9.com/starrysky-master/ 星の写真にチャレンジしたことのない方でも、基本を押さえて撮影に臨めば、青緑色の姿を捉えられるはず!そんな方には上記の記事が参考になります。 星三昧・星景写真(ウィルタネン彗星) https://05401218.at.webry.info/201811/article_15.html また「星景写真」の対象としても、これからがますますチャンスです。この作品は、ブログ「星三昧」ブログ主様が、11月30日に焦点距離58mmのカメラレンズで撮影されたもの。冠雪した浅間山の上に青緑色の彗星が。素晴らしいショットです。 星景写真の場合、彗星の地平高度が高くなりすぎると、風景と一緒に収まってくれません。夕方以降の早めの時刻で、オリオン座やおうし座、すばるなどと一緒に撮ると面白いでしょう。普通の星景写真と同じように、10秒〜30秒くらいの露出時間でOKです。 ただし、よほどの何かがない限り、ウィルタネン彗星はかなり淡めです。市街地で撮るのはかなり厳しいはず。できるだけ空の暗い場所に行ってみるのが吉です。 「ふたご座流星群」の晩は特にチャンス! 12月中旬はウィルタネン彗星は一晩中見えています。明け方の西の空に沈む姿を撮ることも可能。この場合は月が沈むのを待てば、暗夜で撮影することが可能です。 特に、13日と14日の晩はふたご座流星群。最も多くの流星が流れる「極大時刻」の予想は14日の21時ですが、13日・14日の両日が大きなチャンスです。たくさんの流れ星を眺めながら、彗星をねらってみましょう。この場合のオススメは夕方より明け方です。上の図は朝3時過ぎの西の空。明るい流星は低い高度で流れることが多いため、ふたご座流星群の晩は「夜明け前は西の空に注目」です! 冬の天の川と分子雲を横切る姿(マニア向け) ここから先はマニア向け。 現時点では比較的「何もない」寂しいエリアにいるウィルタネン彗星ですが、12月中旬におうし座の「分子雲銀座」を通過していきます。50mmから135mmくらいまで、焦点距離それぞれによって工夫した構図で狙えるでしょう。 チャンスは16日の晩にすばると接近してから、19日の晩のカリフォルニア星雲との接近まででしょう。しかし、月の存在が問題。16日の晩でも月が沈むのを待つとかなり西に低くなってしまいます。 月明上等で撮るのか、沈むのを待つか。晴れるかどうかもわからないので、編集部ではとにかく晴れたらGOで、チャンスのある限り撮り続けようと思います。 12月5日発売の天文ガイド2019年1月号には、分子雲の大家の三本松尚雄さんの特集記事「46P/ウィルタネン周期彗星をとらえよう」が掲載されています。こちらもぜひ読んでおきたいですね! ますます動きが速くなることに注意(マニア向け) 上の作例画像の11/29時点で、ウィルタネン彗星の移動速度は1時間当たり4分角、1分間で6秒角ほど。厳密にみれば1分露出でも焦点距離400mmならわずかに流れるくらいです(*)。これが、地球最接近の頃には、この倍近くにもなります。 (*)とはいえ、彗星のはっきりした構造は「核」と呼ばれる中心で輝く部分だけであとはぼんやりしているため、鑑賞距離であればもっと基準はゆるくなります。今回の作例も10分間露出で等倍で見るとかなり流れています。 このため長い焦点距離で長時間露出すると、間違いなく流れてしまいます。「メトカーフ法」と呼ばれる、(*)彗星も恒星も流さない技もあるのですが、副作用も多くなかなか難しいようです。チャレンジする価値はあるでしょう。 (*)2019/12/3 「メトカーフ法」とは「彗星自身の固有運動量を事前に計算し、 その移動量の分だけ赤道儀の赤経・赤緯モーターを追加で動かして撮影する」方法でした。訂正してお詫びいたします。 ややこしいことをしたくない向きには、長焦点の場合は彗星基準に割り切るか、流れるのは上等として長時間露出するのもありでしょう。 総合的に判断して、編集部では今回と同じく1コマ当たり「30秒」で多数枚撮影し、後から画像処理で核基準・恒星基準を使い分けようと考えています。 ロングランのタイムラプス動画を撮る(マニア向け) https://twitter.com/tenmonReflexion/status/1068295683927552000 編集部では、最接近の前後では彗星が見えている間ありったけの時間をかけて、タイムラプス動画を撮ろうと考えています。途中でバーストするようなことがあれば、かなりの「レアもの」です! 上の動画は、11/29日にそのためのテストとして撮影したもの。約30分間の彗星の姿です。オートガイドを行っていないノーガイド撮影のため、ピリオディックモーションで星がふらついてしまいました。最接近時の本番ではオートガイドで撮ることにします。彗星の核が現在同様に明るければ、核をガイド星にすることが可能かも。 バーストしなかったとしても、彗星が星々の間を速く移動してゆくさまを、もっともっと長時間でとらえることができれば、面白い動画になるかも?と期待しています。 まとめ いかがでしたか? くどいですが^^;;、ウィルタネン彗星46Pは(たぶん)平成最後の肉眼彗星。いろいろあった平成の世と、あなた自身の2018年を振り返りながら、この年末はウィルタネン彗星を追いかけてみませんか!?編集部山口 千宗kojiro7inukai@gmail.comAdministrator天文リフレクションズ編集長です。天リフOriginal
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