野辺山電波観測所の今後
野辺山宇宙電波観測所の「共同利用研究」が、財政難のために来年6月以降中止される可能性が高いとの報道が出ています。
じくじたる思いです。閉鎖せず、国の科学研究費などで継続できるように努力したいと思っています。応援お願いします!
財政難で共同利用中止へ 来年6月、野辺山観測所 – サッと見ニュース – 産経フォト https://t.co/cq0T0PP8B8
— Ken Tatematsu 立松 健一 (@kentatematsu) August 2, 2018
観測所所長の立松健一さんのツイート。
ここでいう「共同利用」というものは、大学の枠を越えた施設の利用や共同研究の推進のために設けられた制度で、採択された「共同利用」に参加する研究者は原則として利用料や旅費などの負担なしに、研究施設・設備を利用することができます。
文部科学省・全国共同利用について
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/20/05/08060201/1334375.htm
まず明確にしておくべきことは、共同利用が中止(*)になるが「野辺山の閉鎖が決まったわけではない」ということでしょう。ただ、上記ツイートからは状況は楽観的ではないとの雰囲気を感じます。
(*)文科省のHPを見る限り、「共同利用の経費は国立大学法人運営費交付金の中で国として措置」とあるのですが、これは「大学毎に付ける交付金に色つけるのでその中で運営してね」という意味でしょうか。だとすると、野辺山の共同研究を中止せざるを得なくなったのは交付金の枠が不足したのが原因で、その中で野辺山の中止を決めたのは大学ということになります。総額の予算が削られているのは厳然たる事実ですが、今回の事象に至るプロセスの詳細は不明です。
このニュース、素人にとっては「いよいよ日本の科学の終わりの始まりだ」感があるのだが、今の野辺山の位置づけは天文業界の皆さんにとってはどんなものなのだろう。/野辺山観測所、共同利用中止へ 来年6月、財政難で | 2018/8/2 – 共同通信 https://t.co/KyTj0iXFGW
— Mikihito Tanaka @Regorillating (@J_Steman) August 2, 2018
ネット上では、歴史ある野辺山の苦境を悲しむ声、左右からの「政権ガー」「象牙の塔ガー」的なものを含め多くの声が上がっていますが、上記ツイートには注目。
野辺山は関係者の努力により今でも一線級の観測が行われてはいますが、決して観測所としての条件が良いわけではありません。当初から水蒸気の多い夏場は観測を休止しているなど気象条件も、アルマのような高地にはかないません。また、設備も古く、維持管理は今後ますます大変になってゆくことでしょう。
実際に、野辺山に六基ある10mアンテナによる干渉計は1台を除き平成 20 年度に運用が停止されています。昭和期に建造された日本の研究目的の天文台は、人工の電磁波の増加などの事情により、その多くは閉鎖ないしは天文学教育・普及的な位置づけに変わってきています。
専門家から見たときの野辺山の観測施設としての存在意義は門外漢からは不明です。それに基づく取捨選択は、天文学の研究クラスタ全体で、しっかり未来を見据えて判断していくべきでしょう。その結果最終的に閉鎖になるのであれば、それは歴史の流れとしかいいようがありません。
その一方で、実際に野辺山の開所期と昨年に訪れた編集子の眼から見ると、野辺山の歴史遺産・科学遺産としての存在意義はやはり大きなものと感じました。ただ、これも筆者がそれに近い立ち位置であるから感じるだけのことで、一般向けに単独で収支が取れるような性質のものではないのかもしれません。
以下編集子の戯れ言です。
子供の頃に読んだ本に、ある高名な天文学者が「天文学に貢献したいという気持ちがあるのなら、天文学者になるのもいいが事業を興して財をなし、天文学に寄付するという形で貢献する道もある」という話をアメリカのヤーキス天文台の例を挙げて書かれた一節を読んだことがありました。
日本という国はまぎれもなく衰退期にあります。その中で天文学のような巨大科学を維持するのは今後ますます困難になることでしょう。そんな中で「それではいけない」と思う若い方がいらっしゃれば、ぜひ有能で志のある政治家・官僚・企業家などになっていただき、この状況を少しでも良くしていただけることを期待します。
また、今の日本は老い先短い高齢者が一番お金を持っています。そういった方々からの寄付を集めて有効に活用できるような仕組みを、ぜひ学問関係者が率先して作っていただきたいものです。 https://reflexions.jp/tenref/orig/2018/08/04/5966/https://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2018/08/IMG_2530_m-1024x683.jpghttps://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2018/08/IMG_2530_m-150x150.jpg天文コラム野辺山宇宙電波観測所の「共同利用研究」が、財政難のために来年6月以降中止される可能性が高いとの報道が出ています。 https://twitter.com/kentatematsu/status/1025157893530705920 観測所所長の立松健一さんのツイート。 ここでいう「共同利用」というものは、大学の枠を越えた施設の利用や共同研究の推進のために設けられた制度で、採択された「共同利用」に参加する研究者は原則として利用料や旅費などの負担なしに、研究施設・設備を利用することができます。 文部科学省・全国共同利用について http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/20/05/08060201/1334375.htm まず明確にしておくべきことは、共同利用が中止(*)になるが「野辺山の閉鎖が決まったわけではない」ということでしょう。ただ、上記ツイートからは状況は楽観的ではないとの雰囲気を感じます。 (*)文科省のHPを見る限り、「共同利用の経費は国立大学法人運営費交付金の中で国として措置」とあるのですが、これは「大学毎に付ける交付金に色つけるのでその中で運営してね」という意味でしょうか。だとすると、野辺山の共同研究を中止せざるを得なくなったのは交付金の枠が不足したのが原因で、その中で野辺山の中止を決めたのは大学ということになります。総額の予算が削られているのは厳然たる事実ですが、今回の事象に至るプロセスの詳細は不明です。 https://twitter.com/J_Steman/status/1025019062697390080 ネット上では、歴史ある野辺山の苦境を悲しむ声、左右からの「政権ガー」「象牙の塔ガー」的なものを含め多くの声が上がっていますが、上記ツイートには注目。 野辺山は関係者の努力により今でも一線級の観測が行われてはいますが、決して観測所としての条件が良いわけではありません。当初から水蒸気の多い夏場は観測を休止しているなど気象条件も、アルマのような高地にはかないません。また、設備も古く、維持管理は今後ますます大変になってゆくことでしょう。 実際に、野辺山に六基ある10mアンテナによる干渉計は1台を除き平成 20 年度に運用が停止されています。昭和期に建造された日本の研究目的の天文台は、人工の電磁波の増加などの事情により、その多くは閉鎖ないしは天文学教育・普及的な位置づけに変わってきています。 https://reflexions.jp/tenref/orig/2017/11/06/2590/ 専門家から見たときの野辺山の観測施設としての存在意義は門外漢からは不明です。それに基づく取捨選択は、天文学の研究クラスタ全体で、しっかり未来を見据えて判断していくべきでしょう。その結果最終的に閉鎖になるのであれば、それは歴史の流れとしかいいようがありません。 その一方で、実際に野辺山の開所期と昨年に訪れた編集子の眼から見ると、野辺山の歴史遺産・科学遺産としての存在意義はやはり大きなものと感じました。ただ、これも筆者がそれに近い立ち位置であるから感じるだけのことで、一般向けに単独で収支が取れるような性質のものではないのかもしれません。 以下編集子の戯れ言です。 子供の頃に読んだ本に、ある高名な天文学者が「天文学に貢献したいという気持ちがあるのなら、天文学者になるのもいいが事業を興して財をなし、天文学に寄付するという形で貢献する道もある」という話をアメリカのヤーキス天文台の例を挙げて書かれた一節を読んだことがありました。 日本という国はまぎれもなく衰退期にあります。その中で天文学のような巨大科学を維持するのは今後ますます困難になることでしょう。そんな中で「それではいけない」と思う若い方がいらっしゃれば、ぜひ有能で志のある政治家・官僚・企業家などになっていただき、この状況を少しでも良くしていただけることを期待します。 また、今の日本は老い先短い高齢者が一番お金を持っています。そういった方々からの寄付を集めて有効に活用できるような仕組みを、ぜひ学問関係者が率先して作っていただきたいものです。編集部山口 千宗kojiro7inukai@gmail.comAdministrator天文リフレクションズ編集長です。天リフOriginal
役所組織だから、クラウドファンディングのような柔軟な寄付とか考えにくいのかな。
アメリカは歴史的に個人資産家に寄付してもらって天体観測所を作ってきているし、日本も役所の縛りを外してそういう方向に進んだ方がいいと思う。
文科省は完全廃止しよう!
少数の大口の寄付を集めるには篤志家が見つからないと話になりませんが、小口で多数の寄付をであれば今でも制度があります。
H28年度で3.5億円ほどになります。https://www.nao.ac.jp/bokin/report_H_19.html
問題はこれらの制度がどのくらい浸透し集まるかですね。先の「一人一台天体望遠鏡」の場合は180万ですが、やり方は修正していく必要はあるにせよ、そういう活動の支援・盛り上げは可能です。役所に動いてもたいたいところはふるさと納税のような減税措置ですね。税金の使途を納税者がある程度限定できるような仕組みです。個人的にはふるさと納税の制度は失敗だと評価していますが(一部の自治体と業者、高額納税者は潤ったかもしれませんが)。
文部科学省のガバナンスが一部機能不全にあることは感じていますが、だからといって廃止したところで別の名前の違う役所ができるだけで根本解決にはならないのではないでしょうか。天文学との関わりにおいて文科省のどの部分を具体的にどう変えれば良くなるのかは当方はアイデアは持っていませんが。
先進国のOECD諸国で国家官庁が教育を中央統制しているのは日本だけ。あげくに前川のように有害無益なことばかりしている。
世界的に見てもえげつない利権だけ振り回す文科省の廃止は当然の方向です。
TMTでも細々と個人寄付を募っていますが、申込書がないとだめだし、手続きも煩雑すぎて小口の寄付とかはしにくい。これなどお役所仕事の最たるものでガチガチのルールしきたりがあって自由にやれないのでしょう。
今ではクラウドファンディングのような資金調達の方法もあるし、他にもネットを活用して世界中から寄付を募る方法があるはずです。しかし、役所という制約の中ではそれが著しく困難なのでしょう。
上記の寄付精度もネットで申込みできずダウンロードした書面を郵送とか、なんとも残念な仕組みでした。寄付させたくないのかといいたくもなりますね。