みなさんこんにちは!「口径10cm」の屈折鏡筒は、今や天文ファンのスタンダード。さまざまな特徴を持った製品が発売されています。

そんな中、以前ご紹介した「分離式3枚玉」のアポクロマート屈折鏡筒「FOT85」の「口径104mmバージョン」、FOT104が本格発売されます。今回、スタークラウド合同会社様のご厚意で実機をお借りすることができましたので、詳細のレビューをお届けしたいと思います。

スタークラウド Founder Optics FOT104
https://www.starcloud.jp/SHOP/FOT104.html

FOT104の概要

今回ご紹介するFOT104の姉妹機種である「FOT85」については、以下のレビュー記事で詳しくお伝えしています。

最高の小型屈折望遠鏡はコレか!?【連載第1回】Founder Optics FOT85レビュー

光学設計から鏡筒の仕様まで、FOT104とFOT85には多くの共通部分があり、ぜひこの記事も併せてお読みいただければと思います。今回初めてごらんになる方のために、以下に簡単にFOTシリーズの特徴をまとめておきます。

最高の性能を目指した分離式3枚玉アポクロマート

FOA104の球面収差図

FOTシリーズは、収差補正に優れた異常分散ED硝材(PFL-53とPFL-51)を2枚使用した、トリプレット式の分離式3枚玉のアポクロマート鏡筒です。球面収差図を見ると収差補正は非常に優秀で、高橋製作所の「TOAシリーズ」にはわずかに及ばないものの、色収差・球面収差ともクラス最高レベルといってよいほど非常によく補正されています。

編集部で実視した感想としても、FOT85/104ともに、色収差はほぼ皆無といってよいレベルで、コントラストの高いシャープで気持ちよい像を結ぶ、素晴らしい望遠鏡です。

ビジュアル寄りのフォトビジュアル

この画像からは中央と周辺の差をほとんど認識できません。FOT104+タカハシマルチフラットナーx1.04  EOS 6D(SEO-SP4)  ISO3200 2分×9枚 ダメージ系処理一切なし ダークなし SXPオートガイド 福岡県小石原
別のFOT104ユーザー様による作例。スタークラウド社のHPに掲載されたものと同じものです。NIKON D810(無改造)+QBPフィルター 1.0xフラットナー 10分x3枚 こちらも周辺まで良好な星像です。

FOT104のF値は6.25(口径104mm、焦点距離650mm)。これは同クラスのアポ鏡筒と比較すると、ビジュアル(眼視)重視のFC-100DZのF8(口径100mm、焦点距離800mm)よりはやや短く、FSQ106EDのF5(口径106mm、焦点距離530mm)よりはやや長いものとなっています。

眼視性能を重視するならF値は大きい(暗い)ほうがもちろん有利なのですが、焦点距離の長い鏡筒は運搬や取り回しでは若干不利になります。FOT104の「F6.25」という設定は、3枚玉の収差補正のポテンシャルを生かして最高レベルの眼視性能を維持しつつ、「明るめのビジュアル」「ビジュアル寄りのフォトビジュアル」に振ったものと考えてよいでしょう。

しかし「ビジュアル寄り」の仕様とはいえ、FOT104は短波長側の色収差が非常に少ないことと、明るめのF6.25というF値から、「フォト鏡筒」としてのポテンシャルにも高いものがあります。上の画像は試写中のものですが、汎用のフラットナーとの組み合わせでも非常に高い写真性能を示しています。

写真鏡筒としての評価については、別途続篇の記事でレポートしたいと考えています。

日本側輸入代理店による全品受け入れ検査の実施

レンズ群の間を長くとった分離式3枚玉構成は、収差補正の自由度が高くなる反面、製造・組立に非常に高い精度が要求されます。このため、組み上がった製品が想定した品質基準をクリアしているかどうかの検査工程が非常に重要となります。

FOTシリーズの場合、日本の販売代理店側で全品検査(ダブルパス式ロンキーテスターによる内外像検査)が実施されています。このような品質管理体制がとられていることは、安心して製品を購入できる大きな要素になるものと思います。

(*)私見ですが、本来はそのようなコストを掛けずに当初の性能が全ての製品で発揮されることが理想だと考えます。しかし、限界レベルの性能を追求した天体望遠鏡の場合、現時点でもそのレベルをクリアできている企業はなかなかないと感じています。

外観レビュー

では、FOT104の各部の詳細を見ていきましょう。

大きさと重量

FOT104は、焦点距離650mmのF6.25ということもあり、長さは実測570mm(フードを縮めた状態)とコンパクトです。伸縮式のフードはストロークが90mm強ほどあり、あまり深くはありませんが実用上は十分でしょう。

3枚玉なので前後の重量バランスはややフロントヘビーです。総重量は鏡筒バンド込みで6.8kg。口径10cmクラスとしてはやや重量級です。

 

上からタカハシFSQ106ED、FOT104、FOT85。長さ、重量ともにFSQ106EDとほぼ同じです。重量4.4kg(鏡筒バンド込み)(*)のFOT85と比べるとかなりの重量差があります。

(*)初出時に「重量3.6kg」とありましたが、これは鏡筒バンドを含まない重量でした。訂正してお詫び申し上げます。

さらに上の口径12〜13cmクラスよりはずっと軽量ですが、このあたり軽量で取り回しの良いFOT85とは大きな差があります。中・小型の架台でも運用は可能ですが、しっかりとした架台に載せる必要があるでしょう。

AP赤道儀に搭載してみました。3.7kgのウェイトでぎりぎりバランスが取れましたが、このクラスの架台が搭載の限界といえるでしょう。

鏡筒バンド

FOT85と同様、鏡筒バンドが付属します。グリップ部も同じピカティーニ・レール規格(MIL-STD-1913)です。台座にはM6のネジ穴が5つ開けられていて、アリガタなどを装着することが可能です。

アリガタ・鏡筒バンド込みの重量は実測1.2kg。重すぎず軽すぎず、適度なバランスの鏡筒バンドです。

対物レンズ

対物レンズを鏡筒先端から覗いたところ。「Approved by KITAKARU」の刻印が見えます。この「KIRAKARU」は、輸入販売・受け入れ検査を行う「北軽井沢観測所」を意味しています。

レンズキャップは鏡筒・鏡筒バンドと同色の金属製のものです。この「F」をあしらったロゴがFounder Opticsのシンボルです。

接眼部

接眼部もFOT85と同様のCNC加工による精密なものです。デュアルスピードフォーカサーとフォーカスのクランプ、接眼部の回転機構がついています。接眼部のストロークは約95mm。FOT85同様、目盛が刻まれています。

ファインダーの台座はFOT85と同じ取り付け規格ですが、鏡筒側ではなく接眼部側に付いています。この画像とは異なり、最終製品ではビクセン互換の台座が付属するそうです。

ドロチューブのネジ規格はFOT85よりも太いM74 P1.0です。この部分にねじ込む2インチスリーブアダプター(右)が付属しています。

内面反射

眼視の中心像だけに徹すればドロチューブ内にも遮光環を入れればより良いとは思いますが、写真用に広いイメージサークルを確保するためにはこの仕様であるべきでしょう。

ドロチューブ末端から対物レンズを覗いたところ。ドロチューブ内面には細かいスジが入った加工がされており、内面反射防止・遮光処理は上質なものです。

収納ケース

アルミ製の収納ケースが付属します。ケースの横幅は角の突起を含め実測72cmです。国産の天体望遠鏡は収納ケースが付属しない製品が多いのですが、やはりケースがあるのは大きいですね。これだけでも手間暇込みで1万円分くらいの価値はあると思います。

実視レビュー

アポ屈折は「眼視番長」

ビクセンAPマウント経緯台バージョンに搭載。APは経緯台モードの方が荷重の方向的に安定し、重量鏡筒が搭載できます。

反射望遠鏡と屈折望遠鏡はどっちが高性能なのか。古くからいろいろな議論(論争?)を経てきた2つの形式ですが、現代においてはその結論はほぼ出ていると考えています。

PFL-53やフローライトのような硝材が広く用いられるようになり、屈折望遠鏡の宿命だった「色収差」を反射式とほぼ遜色のないレベルにまで補正できるようになった今、同一口径であれば屈折式の優位はもはや揺らぎのないものでしょう。特に、FOT104のような3枚玉アポクロマートの中心像は「ほぼ無収差」といってよいくらいのレベルです。

さらに屈折式の場合、副鏡による「中央遮蔽」がありません。この中央遮蔽の問題は、光量の損失よりもむしろ回折によるコントラストの悪化に大きく関係します。中央遮蔽が全くない屈折望遠鏡は、中央遮蔽が33%〜40%にも達する反射望遠鏡と比較すると「すっきりした像(コントラスト)」においては、越えられないレベルの差があります。

木星を見てみた

上:150mm純カセグレン、下左:奥が203mmシュミカセ、下中:FOT104、下右:130mmニュートン反射

実際に、木星をいくつかの望遠鏡で実視して比較してみました。口径20cmのシュミットカセグレン、口径15cmの純カセグレン、口径13cmのニュートン、そしてFOT104の4台です。シーイングは中程度の条件でした。

縞模様の鮮やかさでは、FOT104の圧勝です。これはもう誰が見てもすぐそう感じることでしょう。模様の微妙な色の差、浮き上がるような濃淡、屈折機と反射機の差は歴然でした。

その一方で、シーイングの落ち着いた瞬間の細部の見え方は、ほぼ口径の順番でした。ちょうど木星の衛星の影が落ちていたのですが、口径20cmのシュミカセでは、鋭いエッジと真っ黒な影が瞬間的にはっきりと確認できるのに対して、口径の一番小さなFOT104は、一番良く見える瞬間でも、影のエッジがややぼんやりした感じになります。

光学系の設計が一定レベルを満たしていれば「解像力は口径で決まる」「明るいのは大口径」というのは当たり前の結論ですが、現代の最高レベルのアポクロマート鏡筒に限っていえば、「コントラストなら屈折」というのもまた「当たり前の結論」といってよいでしょう。

もちろん、その「当たり前」が成り立つのは「収差補正が特に優秀なアポクロマート屈折」という但し書きがつきます。

木星でバーサス、FSQ106ED。接眼レンズはビクセンHR2.4mmです。

別のタイミングでFSQ106EDとFOT104を比較してみましたが、エクステンダーなしの「F5」のFSQ106EDは、わずかにFOT104に負ける感じでした(*)。

(*)F15程度の長いアクロマート、F10程度の2枚玉アポクロマートも、非常に優秀な眼視性能を示す製品が存在します。眼視性能においてもF値は性能を左右する大きな要素です。FOT104の凄さの一つは、F6.25という明るさで非常に高い眼視性能を発揮することだといえます。

ディープスカイ観望

オリオン大星雲を観望中。架台はEQ5GOTO赤道儀。

FOT104はディープスカイの観望にも威力を発揮します。といっても、低倍率の観望では、FOT104の「3枚玉アポ」の高性能さの恩恵をひしひしと感じるタイミングは決して多くありません。視野内の輝星にまったく色ハロがなく鋭く輝いているさまは「さすがアポクロマート」とは感じますが。

むしろ、焦点距離650mmという短焦点の恩恵で、低倍率側の倍率選択に余裕があることが大きなメリットでしょうか。XW-20mmで32倍、NAV-12.5HW(EiC装着で10mm)で65倍、イーソス6mmで109倍。短い鏡筒は、写真用の背の低い赤道儀でも運用しやすいのもメリットです。

どんな用途に向いているか

脳内ユーザーの声。年齢、コメントは編集部が創作したもので、登場する人物とは全く関係ありません。フリー素材「PAKUTASO」を使用しています。https://www.pakutaso.com

屈折・口径10cmクラスのファイナルアンサー

口径10cmクラスの屈折望遠鏡は、各社からさまざまな製品が出ている激戦クラスです。FOT104は、その中でもハイエンド中のハイエンドの一つといえるでしょう。妥協のない高性能が欲しい。うっとりするほど良く見えないと満足できない。FOT104はあなたの天体望遠鏡遍歴に終止符を打つインパクトを持った製品です。

一生使える最高レベルの天体望遠鏡

口径10cmクラスの屈折望遠鏡は、大きすぎず小さすぎず、フル稼働が見込めるバランスの良い選択です。ひとつの望遠鏡を末永く使い込んで楽しみたい。クラス最高レベルの性能のFOT104なら、そんな貴方の生涯の伴侶となることでしょう。

ビジュアル寄りのフォトビジュアル

眼視だけでなく撮影も楽しみたい。少し長めの焦点距離650mmは、気楽さの中にも本格的なディープスカイが楽しめる焦点距離です。まだじゅうぶんな作例が撮れていないのですが、FOT104は写真性能も当たり前に凄い。今後のレポートをお楽しみに!

気になる価格は・・?

FOT104は11月より「スタークラウド」より販売予定だそうです。価格は税抜36万円です。

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この36万という価格設定が妥当かどうかは市場が判断することですが、最高クラスの10cm屈折望遠鏡がこの価格で入手できるのは素晴らしいことだと筆者は考えています。もちろん、もしこの製品が25万で買えるなら神ですが。

天体望遠鏡、特に屈折望遠鏡は一生ものの製品です。しっかりとした判断基準で自分の用途に適したものを選ぶことが重要だと思います。

まとめ

いかがでしたか?

小型・中型の赤道儀に搭載でき、車のトランクや後部座席に無理なく収納できる口径10cmのアポ鏡筒は、手軽に運用でき高い稼働率が期待できる「天体望遠鏡のスタンダード」だといえます。

大口径を求めるなら反射望遠鏡ですが、コントラストなら屈折望遠鏡です。10cmのアポ屈折の眼視性能は、反射望遠鏡とはちょっと世界が違う見え味」を楽しめます。ますます各社の製品が充実してきた「口径10cmクラス」のハイエンド製品として、多くのユーザーの検討の俎上に上がるものだと感じました。

また眼視だけでなく、FOT85同様に、写真性能も非常に優秀であるとの感触を得ています。ある程度試用結果がまとまり次第、こちらについても詳細をレビュー予定です。お楽しみに!


  • 本記事はスタークラウド合同会社様より機材の貸与を受け、天文リフレクションズ編集部が独自の費用と判断で作成したものです。文責は全て天文リフレクションズ編集部にあります。
  • 記事に関するご質問・お問い合わせなどは天文リフレクションズ編集部宛にお願いいたします。
  • 製品の購入およびお問い合わせはメーカー様・販売店様にお願いいたします。
  • 本記事によって読者様に発生した事象については、その一切について編集部では責任を取りかねますことをご了承下さい。
  • 特に注記のない画像は編集部で撮影したものです。
  • 記事中の製品仕様および価格は執筆時(2019年8月)のものです。
  • 記事中の社名、商品名等は各社の商標または登録商標です。

 

http://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2019/08/fc6927a4cd7fc6f068de9eb5d3ae4aff-1-1024x538.jpghttp://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2019/08/fc6927a4cd7fc6f068de9eb5d3ae4aff-1-150x150.jpg編集部新着望遠鏡みなさんこんにちは!「口径10cm」の屈折鏡筒は、今や天文ファンのスタンダード。さまざまな特徴を持った製品が発売されています。 そんな中、以前ご紹介した「分離式3枚玉」のアポクロマート屈折鏡筒「FOT85」の「口径104mmバージョン」、FOT104が本格発売されます。今回、スタークラウド合同会社様のご厚意で実機をお借りすることができましたので、詳細のレビューをお届けしたいと思います。 スタークラウド Founder Optics FOT104 https://www.starcloud.jp/SHOP/FOT104.html FOT104の概要 今回ご紹介するFOT104の姉妹機種である「FOT85」については、以下のレビュー記事で詳しくお伝えしています。 http://reflexions.jp/tenref/orig/2018/02/03/3494/ 光学設計から鏡筒の仕様まで、FOT104とFOT85には多くの共通部分があり、ぜひこの記事も併せてお読みいただければと思います。今回初めてごらんになる方のために、以下に簡単にFOTシリーズの特徴をまとめておきます。 最高の性能を目指した分離式3枚玉アポクロマート FOTシリーズは、収差補正に優れた異常分散ED硝材(PFL-53とPFL-51)を2枚使用した、トリプレット式の分離式3枚玉のアポクロマート鏡筒です。球面収差図を見ると収差補正は非常に優秀で、高橋製作所の「TOAシリーズ」にはわずかに及ばないものの、色収差・球面収差ともクラス最高レベルといってよいほど非常によく補正されています。 編集部で実視した感想としても、FOT85/104ともに、色収差はほぼ皆無といってよいレベルで、コントラストの高いシャープで気持ちよい像を結ぶ、素晴らしい望遠鏡です。 ビジュアル寄りのフォトビジュアル FOT104のF値は6.25(口径104mm、焦点距離650mm)。これは同クラスのアポ鏡筒と比較すると、ビジュアル(眼視)重視のFC-100DZのF8(口径100mm、焦点距離800mm)よりはやや短く、FSQ106EDのF5(口径106mm、焦点距離530mm)よりはやや長いものとなっています。 眼視性能を重視するならF値は大きい(暗い)ほうがもちろん有利なのですが、焦点距離の長い鏡筒は運搬や取り回しでは若干不利になります。FOT104の「F6.25」という設定は、3枚玉の収差補正のポテンシャルを生かして最高レベルの眼視性能を維持しつつ、「明るめのビジュアル」「ビジュアル寄りのフォトビジュアル」に振ったものと考えてよいでしょう。 しかし「ビジュアル寄り」の仕様とはいえ、FOT104は短波長側の色収差が非常に少ないことと、明るめのF6.25というF値から、「フォト鏡筒」としてのポテンシャルにも高いものがあります。上の画像は試写中のものですが、汎用のフラットナーとの組み合わせでも非常に高い写真性能を示しています。 写真鏡筒としての評価については、別途続篇の記事でレポートしたいと考えています。 日本側輸入代理店による全品受け入れ検査の実施 レンズ群の間を長くとった分離式3枚玉構成は、収差補正の自由度が高くなる反面、製造・組立に非常に高い精度が要求されます。このため、組み上がった製品が想定した品質基準をクリアしているかどうかの検査工程が非常に重要となります。 FOTシリーズの場合、日本の販売代理店側で全品検査(ダブルパス式ロンキーテスターによる内外像検査)が実施されています。このような品質管理体制がとられていることは、安心して製品を購入できる大きな要素になるものと思います。 (*)私見ですが、本来はそのようなコストを掛けずに当初の性能が全ての製品で発揮されることが理想だと考えます。しかし、限界レベルの性能を追求した天体望遠鏡の場合、現時点でもそのレベルをクリアできている企業はなかなかないと感じています。 外観レビュー では、FOT104の各部の詳細を見ていきましょう。 大きさと重量 FOT104は、焦点距離650mmのF6.25ということもあり、長さは実測570mm(フードを縮めた状態)とコンパクトです。伸縮式のフードはストロークが90mm強ほどあり、あまり深くはありませんが実用上は十分でしょう。 3枚玉なので前後の重量バランスはややフロントヘビーです。総重量は鏡筒バンド込みで6.8kg。口径10cmクラスとしてはやや重量級です。   上からタカハシFSQ106ED、FOT104、FOT85。長さ、重量ともにFSQ106EDとほぼ同じです。重量4.4kg(鏡筒バンド込み)(*)のFOT85と比べるとかなりの重量差があります。 (*)初出時に「重量3.6kg」とありましたが、これは鏡筒バンドを含まない重量でした。訂正してお詫び申し上げます。 さらに上の口径12〜13cmクラスよりはずっと軽量ですが、このあたり軽量で取り回しの良いFOT85とは大きな差があります。中・小型の架台でも運用は可能ですが、しっかりとした架台に載せる必要があるでしょう。 AP赤道儀に搭載してみました。3.7kgのウェイトでぎりぎりバランスが取れましたが、このクラスの架台が搭載の限界といえるでしょう。 鏡筒バンド FOT85と同様、鏡筒バンドが付属します。グリップ部も同じピカティーニ・レール規格(MIL-STD-1913)です。台座にはM6のネジ穴が5つ開けられていて、アリガタなどを装着することが可能です。 アリガタ・鏡筒バンド込みの重量は実測1.2kg。重すぎず軽すぎず、適度なバランスの鏡筒バンドです。 対物レンズ 対物レンズを鏡筒先端から覗いたところ。「Approved by KITAKARU」の刻印が見えます。この「KIRAKARU」は、輸入販売・受け入れ検査を行う「北軽井沢観測所」を意味しています。 レンズキャップは鏡筒・鏡筒バンドと同色の金属製のものです。この「F」をあしらったロゴがFounder Opticsのシンボルです。 接眼部 接眼部もFOT85と同様のCNC加工による精密なものです。デュアルスピードフォーカサーとフォーカスのクランプ、接眼部の回転機構がついています。接眼部のストロークは約95mm。FOT85同様、目盛が刻まれています。 ファインダーの台座はFOT85と同じ取り付け規格ですが、鏡筒側ではなく接眼部側に付いています。この画像とは異なり、最終製品ではビクセン互換の台座が付属するそうです。 ドロチューブのネジ規格はFOT85よりも太いM74 P1.0です。この部分にねじ込む2インチスリーブアダプター(右)が付属しています。 内面反射 ドロチューブ末端から対物レンズを覗いたところ。ドロチューブ内面には細かいスジが入った加工がされており、内面反射防止・遮光処理は上質なものです。 収納ケース アルミ製の収納ケースが付属します。ケースの横幅は角の突起を含め実測72cmです。国産の天体望遠鏡は収納ケースが付属しない製品が多いのですが、やはりケースがあるのは大きいですね。これだけでも手間暇込みで1万円分くらいの価値はあると思います。 実視レビュー アポ屈折は「眼視番長」 反射望遠鏡と屈折望遠鏡はどっちが高性能なのか。古くからいろいろな議論(論争?)を経てきた2つの形式ですが、現代においてはその結論はほぼ出ていると考えています。 PFL-53やフローライトのような硝材が広く用いられるようになり、屈折望遠鏡の宿命だった「色収差」を反射式とほぼ遜色のないレベルにまで補正できるようになった今、同一口径であれば屈折式の優位はもはや揺らぎのないものでしょう。特に、FOT104のような3枚玉アポクロマートの中心像は「ほぼ無収差」といってよいくらいのレベルです。 さらに屈折式の場合、副鏡による「中央遮蔽」がありません。この中央遮蔽の問題は、光量の損失よりもむしろ回折によるコントラストの悪化に大きく関係します。中央遮蔽が全くない屈折望遠鏡は、中央遮蔽が33%〜40%にも達する反射望遠鏡と比較すると「すっきりした像(コントラスト)」においては、越えられないレベルの差があります。 木星を見てみた 実際に、木星をいくつかの望遠鏡で実視して比較してみました。口径20cmのシュミットカセグレン、口径15cmの純カセグレン、口径13cmのニュートン、そしてFOT104の4台です。シーイングは中程度の条件でした。 縞模様の鮮やかさでは、FOT104の圧勝です。これはもう誰が見てもすぐそう感じることでしょう。模様の微妙な色の差、浮き上がるような濃淡、屈折機と反射機の差は歴然でした。 その一方で、シーイングの落ち着いた瞬間の細部の見え方は、ほぼ口径の順番でした。ちょうど木星の衛星の影が落ちていたのですが、口径20cmのシュミカセでは、鋭いエッジと真っ黒な影が瞬間的にはっきりと確認できるのに対して、口径の一番小さなFOT104は、一番良く見える瞬間でも、影のエッジがややぼんやりした感じになります。 光学系の設計が一定レベルを満たしていれば「解像力は口径で決まる」「明るいのは大口径」というのは当たり前の結論ですが、現代の最高レベルのアポクロマート鏡筒に限っていえば、「コントラストなら屈折」というのもまた「当たり前の結論」といってよいでしょう。 もちろん、その「当たり前」が成り立つのは「収差補正が特に優秀なアポクロマート屈折」という但し書きがつきます。 別のタイミングでFSQ106EDとFOT104を比較してみましたが、エクステンダーなしの「F5」のFSQ106EDは、わずかにFOT104に負ける感じでした(*)。 (*)F15程度の長いアクロマート、F10程度の2枚玉アポクロマートも、非常に優秀な眼視性能を示す製品が存在します。眼視性能においてもF値は性能を左右する大きな要素です。FOT104の凄さの一つは、F6.25という明るさで非常に高い眼視性能を発揮することだといえます。 ディープスカイ観望 FOT104はディープスカイの観望にも威力を発揮します。といっても、低倍率の観望では、FOT104の「3枚玉アポ」の高性能さの恩恵をひしひしと感じるタイミングは決して多くありません。視野内の輝星にまったく色ハロがなく鋭く輝いているさまは「さすがアポクロマート」とは感じますが。 むしろ、焦点距離650mmという短焦点の恩恵で、低倍率側の倍率選択に余裕があることが大きなメリットでしょうか。XW-20mmで32倍、NAV-12.5HW(EiC装着で10mm)で65倍、イーソス6mmで109倍。短い鏡筒は、写真用の背の低い赤道儀でも運用しやすいのもメリットです。 どんな用途に向いているか 屈折・口径10cmクラスのファイナルアンサー 口径10cmクラスの屈折望遠鏡は、各社からさまざまな製品が出ている激戦クラスです。FOT104は、その中でもハイエンド中のハイエンドの一つといえるでしょう。妥協のない高性能が欲しい。うっとりするほど良く見えないと満足できない。FOT104はあなたの天体望遠鏡遍歴に終止符を打つインパクトを持った製品です。 一生使える最高レベルの天体望遠鏡 口径10cmクラスの屈折望遠鏡は、大きすぎず小さすぎず、フル稼働が見込めるバランスの良い選択です。ひとつの望遠鏡を末永く使い込んで楽しみたい。クラス最高レベルの性能のFOT104なら、そんな貴方の生涯の伴侶となることでしょう。 ビジュアル寄りのフォトビジュアル 眼視だけでなく撮影も楽しみたい。少し長めの焦点距離650mmは、気楽さの中にも本格的なディープスカイが楽しめる焦点距離です。まだじゅうぶんな作例が撮れていないのですが、FOT104は写真性能も当たり前に凄い。今後のレポートをお楽しみに! 気になる価格は・・? FOT104は11月より「スタークラウド」より販売予定だそうです。価格は税抜36万円です。 スタークラウド Founder Optics FOT104 https://www.starcloud.jp/SHOP/FOT104.html この36万という価格設定が妥当かどうかは市場が判断することですが、最高クラスの10cm屈折望遠鏡がこの価格で入手できるのは素晴らしいことだと筆者は考えています。もちろん、もしこの製品が25万で買えるなら神ですが。 天体望遠鏡、特に屈折望遠鏡は一生ものの製品です。しっかりとした判断基準で自分の用途に適したものを選ぶことが重要だと思います。 まとめ いかがでしたか? 小型・中型の赤道儀に搭載でき、車のトランクや後部座席に無理なく収納できる口径10cmのアポ鏡筒は、手軽に運用でき高い稼働率が期待できる「天体望遠鏡のスタンダード」だといえます。 大口径を求めるなら反射望遠鏡ですが、コントラストなら屈折望遠鏡です。10cmのアポ屈折の眼視性能は、反射望遠鏡とはちょっと世界が違う見え味」を楽しめます。ますます各社の製品が充実してきた「口径10cmクラス」のハイエンド製品として、多くのユーザーの検討の俎上に上がるものだと感じました。 また眼視だけでなく、FOT85同様に、写真性能も非常に優秀であるとの感触を得ています。ある程度試用結果がまとまり次第、こちらについても詳細をレビュー予定です。お楽しみに! 本記事はスタークラウド合同会社様より機材の貸与を受け、天文リフレクションズ編集部が独自の費用と判断で作成したものです。文責は全て天文リフレクションズ編集部にあります。 記事に関するご質問・お問い合わせなどは天文リフレクションズ編集部宛にお願いいたします。 製品の購入およびお問い合わせはメーカー様・販売店様にお願いいたします。 本記事によって読者様に発生した事象については、その一切について編集部では責任を取りかねますことをご了承下さい。 特に注記のない画像は編集部で撮影したものです。 記事中の製品仕様および価格は執筆時(2019年8月)のものです。 記事中の社名、商品名等は各社の商標または登録商標です。  編集部発信のオリジナルコンテンツ