性懲りもなく?また新連載を始めます。その名も「最強!赤道儀伝説」。古今東西?の「最強の赤道儀」をレビューしていく企画です。

ご紹介する赤道儀は、どれも編集部で使い込んだものばかり。どこがどう「最強」なのか?その赤道儀の良いところ・他の製品と比較して「尖った」ところを、詳しく作例・使用例を交えながら、ご紹介していきます。

第1回はビクセンの「APマウント(AP赤道儀)」です。では早速始めましょう。


2/27追記)モーターモジュールと手動モジュールではギアの径が異なりモーターモジュールの方がより精度が高いそうです。初出時は「同じ」としていました。訂正してお詫びいたします。

目次

AP最強!伝説

最強!ガチ撮りスモールシステム with FL55SS

この画像は機材撮り用に月夜に撮影したものです^^

APマウントにはライトな機材が似合います。上の組み合わせはAPマウントとビクセンFL55SS。焦点距離200〜300mmでガチ撮りするにはベストのペアの一つ。バランス的には若干赤道儀が勝っていますが^^; その意味ではガイドエラーはほぼ心配ないといえます。

FL55SS SDレデューサHDキット α7S(改) 30sec*90 ISO6400 AP赤道儀ノーガイド 最周辺のみトリミング ダーク、フラットなし

定番中の定番、北アメリカ星雲。30秒で90枚。「ガチ」にしては少ないですが^^;;; SONYのカメラを使用したので1コマあたりの露出を30秒にとどめましたが、APマウントの精度的には4分くらいの露出時間でも無問題です。

AP+短焦点小型鏡筒の組み合わせの良いところは、ほぼオートガイドなしの運用でこと足りるところ(*)。お気楽に対象に鏡筒を向けて、ひたすら撮るべし。後は帰宅後の画像処理をがんばるだけ^^

(*)ナローバンドで長時間露出をかけたい場合や、地平線低く大気差の影響が問題になるような場合などでは、オートガイドがあったほうがよいかもしれません。

ことのき、メインシステムは初のツイン構成で四苦八苦^^そんな中でもAP+FL55SSは淡々と北アメリカ星雲を撮影中。

さらに、セカンドシステムとしてもAPマウント+FL55SSのセットは強力。パソコン不要で手のかからない放置撮影可能なシステムならば、メインシステムの脇でいい仕事をしてくれることでしょう。

最強!重量級カメラレンズ用システム

昨年12月14日の晩、ウィルタネン彗星を撮影中。APマウントをドイツ式構成で、アルカスイスクランプを赤緯架頭に装着して、カメラレンズ「ヨンニッパ(400mmF2.8)」を搭載。

APマウントの実力的には、FL55SSよりもさらに一回り大きな機材でもノーガイド運用が可能。写真はカメラ込みで5キロ近くになる400mmF2.8望遠レンズでの使用例。このときは機材総動員で電源不足が予測されたため、潔くノーガイドで撮影しました。APマウントは中型のUSBモバイルバッテリなら余裕で一晩駆動可能です。予備に単三乾電池4本(*)も搭載しておいたので心配なく撮影ができました。自動導入に非対応のAPマウントですが、自動導入にせよオートガイドにせよそれなりに電力を消費します。PCを使えばなおさら。少ない電力で長時間の運用が可能なことはAPマウントの大いなるメリットです。

(*)乾電池でも駆動しましたが、4時間ほど使用することができました。気温は-3度程度でした。

EOS5D3(ノーマル) EF400mmF2.8LIS II 15sec*310 ISO6400 AP赤道儀ノーガイド DSSで加算平均、σ=2.0 彗星基準コンポジット 熊本県ヒゴタイ公園

上記システムでのリザルト。15秒という短時間露出だったのでガイドの歩留まりはほぼ100%でした。APマウントは400mm程度の焦点域までなら、露出時間を適切な「短さ」にとどめることで、オートガイドなしで運用可能だと感じました。

最強!庭撮りシステム

自宅の庭やベランダでAPマウントを使う場合、惑星や月の撮影・観望も想定すると、一番汎用性があって使いやすいのはノーマルの二軸駆動のドイツ式赤道儀構成でしょう。なにも考えずに鏡筒やカメラを載せるだけです。焦点距離が短ければ、オートガイドも必要ありません。恒星時追尾で放置撮影です。

帰省した際にAPマウント2セット総動員で撮影をしてみました。それなりの光害地なので、STCのAstro Duoフィルターと、サイトロンジャパンのQBPフィルターを使用してみました。

FL55SS+レデューサ・フラットナー α7S(改) QBPフィルター ダーク、フラットなし ISO6400 30sec*30 AP赤道儀

FL55SS鏡筒でIC2177。この鏡筒はAPマウントにベストマッチ(*)。短い小型の鏡筒なので、架台・三脚との干渉も最小。

(*)バランスとしては鏡筒がもう少し大きくても大丈夫なのですが。「FL77SS」あたりがもし出れば、真のベストマッチかもしれませんね^^

シグマ105mmF1.4Art F2.0 EOS6D(SEO-SP4) STC AstroDuoフィルター  ISO6400 120sec*16 AP赤道儀 ダーク、フラットなし

こちらはシグマの105mmF1.4Artでバラ星雲。中心部が飽和してしまうほど良く写ります。さすがナローバンドのAstro Duoです。

APマウントは軽量なので、三脚を縮めればこの構成まるごと、庭から部屋に簡単に出し入れできます(*)。帰省中はこの構成でずっとスタンバイしていました^^

(*)さすがに2セットを同時に運ぶのは無理ですけど^^

 

APマウントの特徴

ネイチャーショップKYOEI https://www.kyoei-osaka.jp/SHOP/vixen-ap-photoguider.html より 価格は希望小売価格です。

APマウントが発売されて(2014年12月)、はや4年あまりが経過しました。今さら「特徴のインプレッション」という時期でもないのですが、APマウントの「システム性」については、良いところ・悪いところ含めて、実はあまり理解されていないのではないかと感じています。

そこで本節では、あらためてAPマウントの特徴を詳細に見ていきたいと思います。

シンプルでケーブルの少ない構成

上の画像は赤緯赤経の2軸モーター構成の場合。すっきりしたデザインとケーブルの少ない構成はAPマウントの長所の一つ。最低限必要なケーブルは、コントローラ(スターブックワン)用のシリアルケーブル1本。電源を外部のUSBから供給する場合は、さらにUSB Micro-Bのケーブルが一つ。この2つは、上の図のように赤経モーターの黒いハウジングに差し込みます。

赤緯体のカバーを開くと単三が4本収納できる電池ボックスがあり、こちらを使用する場合はUSBケーブルも不要になります。赤緯体カバーには極軸望遠鏡用の窓があって、スライドして開閉できるようになっています。

赤緯体

左が「AP赤緯体ユニット(直販価格税込13,824円)」。可動部を持たないシンプルな筐体に、電池ボックスと赤経・赤緯のモーターモジュールの電子接点を加えたものです。単体での重量は500gほどで軽量。

赤緯軸の架頭部。ビクセン規格のアリミゾになっています。これまで小型の天体望遠鏡のほとんどはビクセンアリガタでしたが、最近はアルカスイス互換の製品も増えてきています。また、カメラレンズの場合はビクセン規格は皆無で、APシステムのコンセプトによりマッチしたアルカスイス互換のプレートが使いたくなります。クランプを2階建てにすれば対応できるのですが、この部分にはもう一段の汎用性を持たせたかったところ(*)。

(*)架頭部を平らにして35mm間隔のネジ穴を開けておけば、プレートホルダーSXなど汎用のビクセンアリミゾだけでなく様々なクランプが装着でき汎用性が上がるように思いますが、逆にこの部分が二階建てになって薄く仕上がらないのかもしれません。いろいろなトレードオフがあるかと推察しますが、よい解決法を考えてほしいものです。

微動機構と粗動機構の分離

右が「APクランプ筒受けユニットH」、左が「APクランプ筒受けユニット」。違いは極軸望遠鏡用の穴があいているかどうかです。※左の黒いクランプは別売です。穴あきバージョンの「H」は「AP星空雲台」の構成でしか使用されないのですが、穴あきバージョンのみにして流用できるようになった方がユーザー的にはありがたい気がします。

この架頭部のパーツは、単純なアリミゾではなく、ボールベアリングを内蔵した粗動機構を備えています。APマウントの優れた点は、赤緯・赤経ともに粗動機構と微動機構が物理的に分離されていること。これはクランプの締め付けがウォームギア・ホイルのかみ合わせに影響を与えないという点で、架台の精度を上げるためにとても重要なことです。その点で、ビクセンの過去モデルGP赤道儀やその設計を継承?した多くの派生モデルよりも高いポテンシャルを実現しています。

極軸部と極軸望遠鏡

写真左の極軸支持体(「AP極軸体ユニット(直販価格税込27,540円)」はビクセン得意のダイキャスト成形を生かしたモジュール。極軸の水平・垂直の微動機構と、赤経の粗動機構を含んでいます(*)。

(*)これが「底面にアルカプレートを備えた赤経部」と「上部にアルカクランプを備えた上下微動部」の2つに分離できるとこれまた汎用性が上がるのですが・・

極軸水平微動はSXシリーズと同様、三脚側に付けた「ツノ」を左右のネジで押すタイプ。垂直側は、架台の自重で一方向に押されている前提で、片側のネジ一つで押し引きするタイプです(*)。

(*)どちらも特に問題なく操作できましたが、上下微動は押す方向と引く方向で若干動きが非対称になります。赤緯体側が軽い場合など、引く側の動きへの反応が鈍いことがあります。押す側で最後追い込むような使い方をするのが吉です。

極軸体ユニットの後端はプラ製のカバーになっていて、外すと「極軸望遠鏡PF-L(II)(直販価格税込25,650円)」を取り付けることができます。極軸望遠鏡は暗視野照明内蔵。昨年12月に新型の「II」モデルが発売されましたが、旧型でも同じように使用できます。詳細は以下の天リフ記事をご参照ください。

使いやすい極軸望遠鏡とは/ビクセンPF-L極望生産終了

高緯度・低緯度地域にも対応

AP赤道儀はそのシンプルさ・コンパクトさから、「海外遠征用に最強」との評価をマニア筋からよく耳にします。高緯度・低緯度にどのくらい対応するのかを試してみました。

AP極軸体ユニットの公称の対応緯度は0度(赤道)〜65度です。

まず低緯度側。ユニット自体は水平(緯度0度相当)まで可動しますが、ウェイトが三脚に干渉しない前提をつけると緯度10度くらいまででしょうか。地平線付近以外では干渉しないので、東西反転の際にぶつけないようにさえ注意すれば実用的にはOKでしょう。また、上の画像のように三脚で調整する方法もなくはありません。

高緯度側は限界付近では極軸望遠鏡のカバーと調整ネジが干渉しますが、緯度65度までならOKそうです。カナダのイエローナイフが北緯62度、アイスランドでも北緯65度程度なので、極地に行かない限りはほぼ世界のどこでも使えるといえそうです。対応緯度の広さはAP赤道儀の大きな長所の一つだと感じました。

高品位なモーターモジュールと微動モジュール

手動モジュールの微動ハンドルは別売です。

左から「赤経モーターモジュール(スターブックワン込みで直販価格税込59,940円)、「赤緯モーターモジュール(直販価格税込32,130円)」、「手動モジュール(直販価格税込18,230円)」。手動モジュールは赤緯用・赤経用の区別はなく共通です。

ウォームホイルの歯数はいずれも144枚。ガタもなく非常にスムーズに回転します。このパーツを実際に手にとって見ると、APマウントの構成パーツの高品位さを感じます。

スターブックワン

シンプル・コンパクトで使いやすいのはよいのですが、太くて硬くて長いケーブルとはミスマッチ。SXシリーズもそうなのですが、このケーブルなんとかならないものでしょうか。

赤経モーターモジュールには、「スターブックワン」がセットになっています。このコントローラは追尾速度の切替と、十字キーによる制御(最大60倍速)が可能です。また、ST4オートガイド端子が付いて、2軸または1軸のオートガイドが可能です。ただし、自動導入の機能は持っていません。(裏技あり:後述)。

赤経モーターモジュールはスターブックワンを接続しなくても、電源投入すれば恒星時追尾になります。広角のカメラレンズで1軸ノーガイド撮影するような場合は、必ずしも必須ではありません。こちらは別売にしてエントリ価格を下げられないものでしょうか。

ウェイト軸と付属ウェイト

写真の構成は赤緯軸にもモーターモジュールを使用していますが、セット商品であるAP-SMマウントでは赤経軸のみがモーターモジュールです。

APマウントの赤道儀構成のパッケージ「AP-SMマウント(直販価格税込119,340円)」などに付属するウェイトは公称1.0kgの小型のものです。上の画像は重量実測2622gの機材(FL55SS+レデューサ・フラットナー、EOS6D)を搭載したところですが、この位置でバランスが取れています。軽量機材ならこのウェイト1個で十分でしょう。標準ウェイトをこのサイズにしたのはよい判断だと感じました(*)。

(*)もちろん公称搭載重量6kgを載せる場合は不足するので、その場合はオプションのウェイトの買い足しが必要です。

使用しているウェイトは左から3.7kg,3.7kg,1.9kg,1.9kg,1.0kg。

いろいろな鏡筒を載せてみました。いずれもバランスをとった状態です。左からセレストロンC8Sky-Watcher BKP130Founder Optics FOT85ビクセンFL55SSです。C8の重量は公称5.6kg、APマウントの搭載重量のほぼ上限になります。

これらの構成ですべて実際に使用してみましたが、使用感としてはどれも問題なく普通に使える印象です。さすがにC8直焦点での撮影はやっていませんが、BKP130(焦点距離650mm)での撮影は問題ありませんでした。

ただし全体のバランスとしては、機材が重くなる・重心が高くなるほど、三脚の強度がネックになると感じました。その場合は、若干重くなるのを我慢してSXG-HAL130にする、お値段がやや張るものの同じくらいの重量でより強度の高い、後述するカーボン脚ASG-CB90を使うという選択肢があります。

ウェイト軸、ウェイト軸のカバー、公称1.0kgのウェイト。意外とシャフトに重量があることがわかります。シャフト径はSXシリーズと互換の20mm径です。

APマウントの分解と組立

APマウントの売りの一つが「システム化」。マウントがさまざまなパーツ群で構成されていて、目的に合わせた柔軟な構成が可能というものです。

モジュール群の分解と組立は、若干慣れを必要とします。ここではサンプルとして、手動微動仕様の赤道儀構成を、モーターモジュール仕様に換装してみましょう。

最小限のネジの露出

左が手動微動仕様のAPマウント。右は赤経と赤緯のモーターモジュールとコントローラ「スターブックワン」

上の写真左が「手動微動」仕様の赤道儀構成ですが、ネジの露出がほぼ皆無です(*)。このため、組み上がった姿は極めてスッキリしていて、武骨感のない親しみやすいデザインになっています(**)。

(*)極軸対ユニットの三脚取付用のM10ネジ、赤緯体のウェイト軸のM10ネジはいずれも最終的には隠れます。どんな構成にした場合でも、露出するのはごく一部のイモネジのみになります。

(**)善悪とも好みとも別の問題ですが、往年の名機「Mark-X」が、パーツ間の接合を外部に露出したネジで行っていたのとは対照的です。

赤緯体の分離

逆に、組み上げ状態をぱっと見ただけでは、いったいどこから分解すればいいのかわかりません^^; でも安心してください。まずは、赤緯体のカバー(極軸望遠鏡用の窓が開いた部分)を外します。

カバーを外すと赤緯体と赤経体を接続する2本のM5ネジが現れます(上画像矢印)。これをヘックスキーで外すと、赤緯体が分離できます。

この2本のM5ネジで接合されるパーツ面は高品位の仕上げになっていて、ゆるみなくぴったりと合わさります。また、3本の突起と合わせる形になっていて、合わせ間違いを防止しています。

赤経駆動部の換装

次に、極軸体ユニットに装着された手動微動モジュールを、3本のM4ネジを外して赤経モーターユニットに換装します。このM4ネジ3本による勘合部は、平面ではなく高品位に仕上げられた円筒部がスポッとはまるようになっています。なかなかに凝ってますねえ、という印象。

赤緯駆動部分の分離

同じように赤緯体ユニットから赤緯微動部を取り外します。ここの固定もM5ネジ2本。ネジの角度的にヘックスキーでは回しにくく、指を当てて要領よく回すか、根気よく少しづつ回しましょう。

赤緯駆動部分の換装

手動微動ユニットは「APクランプ筒受ユニット(アリミゾの付いた架頭部)」に3本のM4ネジで固定されています。これを取り外して、赤緯モーターモジュールに換装します(*)。

(*)「APクランプ筒受ユニット」は一見ただのアリミゾに見えるのですが、ベアリングを内蔵したクランプ機構を備えたかなり精巧なユニットです。

APマウントのモーターモジュールはケーブルレス。赤緯体から電子接点経由で電源の供給とコントロールを受ける形になっています。

モーター化すると手動微動が余る

できあがり。無事APマウントが2軸モーター仕様になりました。しかし、ここでひとつユーザー的には問題があります。換装した手動微動モジュールが余るのです。

手動微動モジュールは直販価格税込18,230円。モーターモジュールは赤緯側が同32,130円、赤経側が同59,940円です。手動構成をモーター化すると、差額ではなくまるごと買い換えになり、しかも手動モジュールが余っていまいます。これではあまり納得感がありません。

モーターモジュール(左)と手動モジュール。(2/27)訂正とお詫び)モーターモジュールのギアの方が大径で寄り精度が高いそうです。この2つはギア的には同じものを使用していて、精度も同じであるとのことです。モーターのハウジングを収容するためなのか、筐体の「厚み」が違うだけ。ここは共通化して、モーターだけを外付けする形にならないものでしょうか。

APマウントの三脚

APマウントと同時に発売された「AP三脚(APP-TL130 直販価格税込19,980円)」は、一見カメラ三脚っぽく(弱そうに^^;;)見えるのですが、実は軽量化と強度のバランスが取れた、ガチ系にも評価の高い三脚です。さらに昨年末に、上位バージョンのカーボン・アルミハイブリッドの三脚「ASG-CB90」が発売され、それと同時にAP三脚の三脚架頭部も共通化されました。これによってビクセン製品の三脚ラインナップは大きく充実しています。

ここでは、APマウントで使用可能なこれらの三脚をご紹介しましょう。

AP三脚(APP-TL130)

AP三脚(APP-TL130)の組立方法。先にM10のネジがついた中央のポールを回して架台を固定します。この部分の物理仕様はSXシリーズ用の三脚と共通です。

AP三脚は重量3kgと比較的軽量で、3段伸縮で縮めるととてもコンパクトになり、コスパも良好。さすがに「ビクともしない」ような堅牢性・重量感はありませんが、APマウントとベストマッチのバランスだと感じました。

架頭部の裏側。M8のネジ6本でガッチリと固められています。どうでもいい話ですが「カブト」のお腹のように感じますね^^;;;

同クラスの重量のカメラ用三脚と比較して、圧倒的に違うのが架頭部の強度。架頭部だけで見れば、AXJ級でも十分運用可能な強度です(*)。

(*)AP三脚(APP-TL130)の上位モデルASG-CB90は「AXJ用」としてもビクセンが推奨する三脚ですが、架頭部の仕様は同じになっています。

AP三脚はレバーロック式。リング式よりも強度は下がりますが、簡単に伸縮できる利便性は捨てがたく(*)、APマウントの用途としては適切な選択かもしれません。ベランダに出し入れするときや寒冷期では特にレバー式のありがたみを痛感します。三脚には開き止めステーがあってトラス形状で安定性を増すようになっています。

石突はスパイクとゴムの両用になっています。ゴムリングを回すとスパイクが出てくる仕組み。スパイクの径は16mmもあって、ジッツォなどのカメラ用三脚の標準である3/8インチ規格よりも二回り大きな径になっています。

AP三脚は2018年末にマイナーチェンジし、SXシリーズ用三脚と架頭部が共通化されました。左が改良版で、ネジ穴が2個ついています。右は改良前、AP専用になっています。色も若干変更されていて、APマウントの色とよりマッチするようになりました。

APマウントの隠れたメリットが三脚の選択肢が広いこと。他にもSXシリーズ用のSXG-HAL130などが使用できます。ビクセン三脚については以下の天リフ記事もご参照ください。

ビクセンAP三脚にSX赤道儀は搭載可能か・ビクセン三脚仕様まとめ

ASG-CB90三脚

上がASG-CB90三脚。1段目の脚がスポンジで覆われているのは寒冷地では嬉しい配慮。外形はほとんど同じなのですが、APP-TL130よりは若干脚部が太め。三脚ケースを使用する場合はこの差で収納できないこともあるので注意。

昨年末に発売されたカーボン・アルミのハイブリッド(*)の上位モデルが「ASG-CB90(直販価格税込70,800円)、重量3.4kg、写真上」。ビクセンの推し的には主にAXJやSXP2がターゲットのようですが、こちらもAPマウントで使用することができます。

(*)ASG-CB90三脚は、一番太いところのパイプ径が36mmとやや細身になっていますが、2段目の細いパイプの中をアルミ素材で強化する形になっています。体感的には、他社の40mm径のカーボン三脚と遜色ない強度と感じました。

ASG-CB90は、強度を重視して伸縮方式がレバーロック式から回転式に変更され、さらに三脚開き止めステーがAPP-TL130と比べて強化されています(画像右)。上の画像のステーの強化は一見小さな変更に見えますが、APP-TL130よりもずっと安定して固定できるようになっています。この改良はAPP-TL130にもぜひフィードバックしてほしいもの。

カーボン三脚ASG-CB90+AP赤道儀にC8を搭載。やや過積載です。

ごらんのような構成で、鏡筒やカメラを手で軽く叩いてみて、振動の量と減衰時間をAPP-TL130とASG-CB90で比較してみました。主観的・定性的な比較ですが、両者は「かなり」違いました(*)。APシステムに「もう少し投資できる」余力があって、長焦点・高倍率で使用するのであれば、断然ASG-CB90がオススメです(**)。

(*)振動の減衰時間の差が大きいと感じました。比較動画を撮影したのですが、客観的・定量的な計測になっていないため掲載を見送っています。風などの外部要因による「ゆれ耐性」を評価するよい方法がないものか検討中です。

(**)目一杯伸ばしてもこの高さなので写真用途向けといえます。ハーフピラーで高くすることもできますが、その場合振動はやや大きくなります。

雲台アダプター

AP専用のオプションではなく、ビクセンのAP/SX/GP三脚共通のパーツですが、けっこう使えるアイテムを一つご紹介しておきます。「雲台アダプター(直販価格税込5,184円)」です。

このアダプタは、ビクセンの三脚にカメラ雲台(1/4インチネジ)を装着するものです。底部は45mm径・60mm径両対応の段差が刻まれていて、ツノつきの状態で三脚にM10ネジで固定することができます。1/4インチネジが若干短めでやや心もとないところはありますが、小型機材の搭載であれば大きな問題はないように感じました。

このアダプタを使用すれば、ビクセン三脚だけでなく、他社のGP互換三脚にも1/4インチ・3/8インチ仕様のパーツを装着することができます(*)。上の画像は、アルカスイスクランプ経由でSWAT赤道儀を装着したところ。右の三脚は、60mm径の旧GP規格のSky-Watcher EQ5三脚です。

(*)このパーツにも35mm間隔のネジ穴が付いていると、しっかり2点止めができるようになるのですが。

同様のアダプタは他社からも販売されていて、ユニテックの製品は45mm径仕様専用ですが、3/8太ネジ仕様でより安定感があります(*)。笠井トレーディングの製品は、やや重いですが3/8太ネジ仕様で45/60mm両用です。

これらのアダプタを使用すれば、カメラ三脚よりもはるかに天体向けのビクセン三脚を、様々な用途で使用できるようになります。

AP最強!伝説・その2

最強!軽量2軸オートガイドシステム

APシステムは小型軽量な赤道儀ですが、オートガイドで運用すれば600mm程度までなら特に問題なくガイドすることができました(*)。上の画像はSky-WatcherのBKP130(コマコレクタを装着し焦点距離630mm程度)とCMOSカメラASI294MCで撮影しているところ。改造品(「後述の」参照)の2軸駆動システムで、ASI AIRでオートガイドしています(**)。

(*)このくらいの焦点距離では2軸オートガイド構成を組んだ方が無難でしょう。露出時間を30秒、15秒と短くするような「ラッキーイメージング」的な手法であれば、1軸ノーガイドでも十分実用になるでしょう。ただし、風による揺れ耐性はより重量級の赤道儀が有利になることでしょう。

(**)APマウントの純正モーターモジュールはASI AIRには非対応です。オートガイドする場合はST4ガイドケーブルをスターブックワンに接続して行います。

さんかく座M33 Sky-Watcher BKP130 F5コマコレクター ASI294MC LPS-V4 5min*30 Ha 7nm 5min*21 計255min AP赤道儀(自動導入改造) ASI120mm mini ASIAIRで撮像 福岡県小石原

上記構成例でのリザルト。1コマ5分露光ですが、特に流れもなくガイドは良好。淡い対象やナローバンドのように光量が少なく長めの露光時間を確保したい場合には、オートガイドは強力なツールです。

撮像中の画面とガイドグラフ。重量級の架台ではないので風には強くありませんが、ガイド精度・ガイド信号への反応ともに良好。これまで使用してきた中では、ノーガイド・オートガイドのいずれでも、安定した歩留まりを得ています。トータルのRMSエラーは1秒角程度でした(*)。

(*)赤経方向のピリオディックモーションを正確には測定していないのですが、最大でも±8秒角程度に感じました。しかし特に小型の赤道儀の場合は、ギア固有のピリオディックモーションよりも、ガイド信号への追従性の方がはるかに重要だと感じています。これは鏡筒の方角やバランス、モーターの伝達機構によっても大きく変わってきます。筆者はSXP赤道儀も使用していますが、耐風性・耐荷重を除けば、精度についてはどちらかが明確に良いという実感は特にありません。

最強!「近征」システム

APマウントの機動性は「ご近所撮影」でも大いに発揮されます。自宅から数キロ、北極星が見えて南中したオリオン座が見える場所まで移動してお手軽撮影中。架台はウェイト軸だけ外して、三脚を縮めて畳んだ状態で車の後部座席に収容して運搬。脚を広げるだけですぐ設置が可能。スモールシステムならではのメリットです。

BKP130+F5コマコレ ASI AIR ZWO120mmF4ガイドスコープ ASI120MM mini LPS-V4 120sec*30 Gain120 ,Gain 0 10sec*60 dark*10 フラットなし ASI294MC AP赤道儀(自動導入改造)  トリミング

満月の市街地なので淡い部分は全く出てきませんが、それは織り込み済み。トラペジウムが4つ分離したのでまあ満足^^ 近場にサクッと出かけて撮れることがわかったのは大きな収穫で、軽量機材のありがたみを実感しました。

ASI AIRの画面。改造品の駆動装置を使用しています。純正のAPマウントモーターモジュールはASI AIRには非対応です。

ガイドグラフはこんな感じ。やや風があったためか、全体的にギザギザしていてRMSは1.48秒角と少し良くないですが、顕著な暴れはなく、ボツにしたコマはありませんでした。

満月の青空に映える勇姿^^ 機材ポートレートにもよい対象です^^v

 

最強!ライト構成・AP星空雲台

極軸微動装置は使用せず、三脚座の回転と三脚アジャスタで調整しました。若干お辞儀しているようにみえるのは撮影地が九州だからです^^;

時と場合に応じて柔軟にシステムを組み替えられるのもAPマウントのメリット。最軽量構成「AP星空雲台(*)」を「片持ちフォーク構成」で。片持ちフォーク構成はポータブル赤道儀において非常に有効な構成です。重心が北に偏るデメリットがあるものの、ウェイト不要で極軸にかかる総荷重を少なくできるメリットで相殺、全天死角なし・子午線越え反転無用というメリットだけが残ります。

(*)構成の組み替えの簡単さとパーツ構成のシンプルさ的には、極軸体ユニットをそのまま使用する「APフォトガイダー」構成の方が使いやすいかもしれません。

AP星空雲台構成は極軸体を支えるアームが一見細身で強度が心配に見えますが、全くそんなことはありませんでした(**)。この構成はおそらく200mmでも問題ないでしょう。

(**)例えばツァイスの赤道儀も、同じように一見細身の支柱で極軸体を受けるようになっていて強度不足に見えるのですが、実際は全く逆で素晴らしい安定性を持っています。

ぎょしゃ座からやまねこ座の散光星雲 EOS6D SIGMA105mmF1.4 F2.0 RGB 1min*50 短秒(-5EV)*15 Astro Duo 4min*36 短秒(-5EV)*15 AP赤道儀

上記構成のリザルト。STCの「Astro Duoナローバンドフィルター」を使用しています。狭帯域フィルターなので4分と長めの露出をかけています。レンズは重量級のシグマ105mmF1.4Art。この重量と焦点距離の場合、ノーマル構成のポラリエのようなポタ赤ではさすがに荷が重く高い歩留まりは期待できませんが、APマウントの場合ガイドの歩留まりは100%でした。

最強!ベランダシステム

夜明け前の月と金星、木星。早朝に目が覚めた朝、シーズン初の惑星たちに出会うことができました。鏡筒は3枚玉アポFOT104。

使用頻度の高い機材が一番よい機材である」巷でよく聞かれるフレーズです。どんなに高精度で安定度が高くても、気軽に使うのを躊躇するようなサイズ・重さだったり、構成が複雑で使うまでに手間がかかるようだと、自然と出撃頻度が減ってしまいます。それは「自宅庭」や「ベランダ」であっても同じ。

三脚を縮めれば、廊下も窓もすんなり通過できます。

その点、APマウントはとても簡便。組み立てた状態で三脚を縮めておけば、部屋の隅に置いていても邪魔になりません。さっと持ち出して脚を伸ばし、モバイルバッテリを接続すればすぐに使用開始。自動導入がないのでアライメントも不要(*)。だいたい北に向けるだけ。

(*)自動導入のSXPをチョイ見でベランダ出動させたとき、アライメントをするのかしないのか、結構悩みます^^;;

普通に鏡筒を付けて普通に天体望遠鏡として使えるのがAPマウントの良いところ。「ベランダ最強!」の称号を贈ります^^

1軸駆動赤道儀構成(APフォトガイダー)

ネイチャーショップKYOEI http://www.kyoei-tokyo.jp/shopdetail/000000005988/ より 価格は希望小売価格です。

APマウントの「システム性」が生きるのがこの構成。セット商品としては「APフォトガイダー(直販価格税込144,720円)」という形になります(*)。赤緯軸を取り去って、自由に赤経架頭にパーツを装着し、さまざまなニーズに対応できるのですが、それを具体的に見ていきましょう。

(*)以下、この標準セットに含まれないパーツもありますので、購入時には具体的なパーツ構成の確認をお願いします。

基本構成

「一軸仕様」といいつつ、右の構成のように微動ユニットを付けてドイツ式風に組むことも可能。ただし、この場合赤緯軸はモーター駆動ではなく手動のみとなります。

赤緯軸を持たない、主に写真撮影用途を想定した1軸駆動仕様の赤道儀構成です。カメラレンズで星野撮影をする場合には、フル構成よりもシンプル・コンパクトに運用できるでしょう。

この構成では、赤経モーターモジュールにビクセン規格のアリミゾが装着された形になります。

PG筒受セット

APフォトガイダー化のためのパーツ3種。この3点をセットにした商品が「PG筒受セット(直販価格税込11,890円)」。

右の黒い円盤が「プレートホルダーベース(直販価格税込3,348円)」、これを2本のM5ネジで赤経モーターユニットに装着します。中央のアリミゾが「AP筒受ユニット(直販価格税込3,349円)」。プレートホルダーベースには3個のイモネジで装着します。左のアリガタが「スライド雲台プレート(直販価格税込7,430円)」(*)。

(*)「AP筒受ユニット(H)」に相当するアルカスイス対応版のパーツがぜひ欲しいところです。

スライド雲台プレートDDとクイックリリースパノラマクランプ

ネイチャーショップKYOEI https://www.kyoei-osaka.jp/SHOP/vixen-polarie-quickrereacepanoramacramp.html より

今回は使用しなかったのですが、ポラリエを強化する「ステップアップキット」用のパーツを使用して、簡易的に1軸駆動のドイツ式構成に組むことも可能です。上の画像は「スライド雲台プレートDD(直販価格税込9,590円)」「クイックリリースパノラマクランプ(直販価格税込10,530円)」を組み合わせたものですが、プレートはビクセンアリガタなのでAPマウントでも同様に使用が可能。AP用の手動モジュールとモジュールベースの組み合わせよりはコンパクトな構成です。

片持ちフォーク化

ビクセンアリガタをアルカクランプで継いで、パノラマ雲台とL型アームを組み合わせてフォーク構成にしてみました。ありあわせのパーツの組み合わせですが、フォーク構成は短い鏡筒やカメラレンズを使用する場合、死角なく東西反転も不要な便利な構成です。

ビクセンアリガタ以降のフォーク式構成パーツの重量は約1.1kg。無駄を省けばもうすこし軽量化できそうです。

実は使える?!「モジュールベース」

PG筒受けセットを使わない、1軸赤道儀仕様も実は可能。製品サイトではあまり具体的な構成例が紹介されていないのですが、1軸構成で使用する際に使えるアイテムが「モジュールベース(直販価格税込4,590円)」です。このパーツを赤経モーターモジュールに装着すれば架頭が平坦になり、汎用パーツを接続することが可能です。

モジュールベースは赤経モーターユニットにM5ネジ2本で装着します。こうすれば架頭部がすっきりしますね。ただし残念なのはネジ穴がすべてバカ穴で、2つの穴の間隔も35mmではありません(*)。右のようにアルカクランプを装着する場合、1/4インチネジをプレートの後から回して装着する必要があります(**)。

(*)このネジ穴の間隔は前出のプレートホルダーベースDDクイックリリースパノラマクランプと同一なのかもしれません(未確認)。ただし、モジュールベースにはネジ穴はないので、クイックリリースパノラマクランプが装着可能かどうかは不明です。せめてパーツの仕様はHPなどで明確に記述してほしいものです。

(**)ちなみに、モジュールベースをこの形で使用できるのは赤経モーターモジュールに対してのみです。赤緯モーターモジュールや後述する「AP星空雲台」の構成では、勘合部の仕様が異なり装着できません。

架頭部の比較。左はモジュールベースを使用した場合、右がPG筒受けセットを使用した場合。アルカクランプのサイズはまるで違いますが^^;;ずっとシンプルで軽量になることがわかります。

ユニテック社のポータブル赤道儀SWATシリーズの場合は、架頭部にM6とM8のネジ穴が35mm間隔で切られています。

しかし、上の構成ではアルカクランプは1/4ネジの1点止め。軽量機材ならこれでもいいのかもしれませんが、ここはぜひ1/4インチかM6の35mm間隔のネジ穴が欲しかったところ。そうすればアルカクランプをしっかり2点止めできるようになります。物理的なスペースは十分あるので、すぐにでも対応してほしいところ(*)。

(*)自作ができる人なら自分で穴を開けてネジを切ってもいいかもしれませんし、シンプルなパーツなのでサードベンダーからパーツが販売されても良いのですが。

フォーク構成再び^^。鏡筒側のアリガタもアルカスイスに換装して、さらに軽量化されスマートになりました。

何かとシステムの組み替えに手間のかかるAPマウントなのですが、赤緯軸を取り外してモジュールベースに換装するのはM5ネジ2本だけの取り外しで可能。1軸フォーク構成は2軸オートガイドはできないものの、軽量で死角のない点で、ドイツ式2軸構成にはないメリットがあります。1軸・2軸をうまく使い分ければ、APマウントの柔軟性がさらに生きることでしょう。

ちなみに、アルカスイス化すれば鏡筒側も軽量化が可能です。上左はビクセンFL55SSの付属アリガタですが、これをアルカスイスに換装すれば150gほど軽くなります。1軸フォーク構成は極軸から先が大きくアウトバランスになるため、少しでも軽量化したいものです。

ポータブル赤道儀構成(AP星空雲台)

律儀にスターブックワンを接続していますが、恒星時追尾オンリーであれば接続しなくても大丈夫です。電源投入した時点で恒星時追尾になります。

APマウントはもうひとつ、極軸体ユニットを使用しない構成を組むことができます。それが「AP星空雲台(直販価格税込117,450円)」構成(*)です。

(*)「赤経モーターモジュールSBOセット(直販価格税込59,940円)」のプレートを「DDタイプ」に換装し、「APポータブルセット(直販価格税込27,540円)」「極軸望遠鏡PF-L(直販価格税込25,650円)」を組み合わせたものに相当します。三脚と極軸上下微動は別売です。

ネイチャーショップKYOEI http://www.kyoei-tokyo.jp/shopdetail/000000007620/ より 価格は希望小売価格です。

 

左からAPクランプ筒受けユニットH、赤経モーターモジュール、プレートホルダーベース、AP極軸ホルダー。

この構成では、赤経モーターモジュールを「逆向き(*)」にして「APクランプ筒受けユニットH(直販価格税込10,152円)」を接続し、プレートホルダーベースを介して「AP極軸ホルダー(直販価格税込8,424円)で受ける形になります。AP極軸ホルダーには1/4インチネジが切ってあり、カメラ用三脚に搭載する想定です。

(*)逆向きにすると回転方向が逆になるのでは?という疑問が出ますが、三脚に固定される部分も逆になるので問題ないのです。最初は理解できなかったのですが、触ってみてようやく納得^^;

右のパーツが「AP極軸ホルダー」

システムの総重量は上の構成で約1.5kg。極軸体ユニットがない分軽量になります。一見AP極軸ホルダーの底面が小さく不安定に見えますが、実際に使用した感触ではこの部分の強度は十分だと感じました。

ちなみに、AP星空雲台構成をAPフォトガイダー構成にシステムアップする際に、APクランプ筒受けユニット(H)は赤経モーターモジュールに装着できないことに注意が必要です(*)。

(*)クランプ機構を持たない「PG筒受セット」または「モジュールベース」が必要になります。APクランプ筒受けユニットHは赤緯軸の筒受けユニットに流用が可能です。

経緯台構成(APZマウント)

APマウントは経緯台として使用することも可能。耐荷重の大きな本格的な経緯台マウントの国産品が少ない中、APマウントは貴重な位置づけ。その実力やいかに?

搭載荷重最大8kg

左がAPZ三脚ベース、実測重量565g。シールドされたボールベアリングを使用し、粗動とクランプ機構を備えています。クランプは別売です。

経緯台構成の基本はシンプル。上の写真の、別売の「AP三脚ベース(直販価格税込9120円)(*)」を追加し、経緯台構成に組み替えます。

(*)何かと「高い」と批判を受けるAPマウントですが、このAP三脚ベースははっきりいってバーゲンプライスだと思います。

APマウントの赤道儀構成は公称搭載重量6kgですが、この経緯台構成の場合は公称搭載重量8kg。搭載している鏡筒は7kgありますが、全く問題なくスムーズに動作します。

APZカウンターウェイト

経緯台構成の場合、長いウェイトシャフトを延ばすのはあまりクールではありません。水平軸のバランスの崩れは赤道儀ほど問題にならないため(*)、経緯台専用で使うのなら上の「APZカウンターウェイト(直販価格税込3888円)」を使用する方がクールでしょう。左の画像の経緯台用のセット構成「APZマウント(直販価格税込59,670円)(**)」では、標準付属になっています。

(*)水平に設置した場合は、バランスが崩れていてもクランプフリー時に動き出さないため。

(**)この価格もなかなかのコスパではないかと個人的には思います。

「気持ちのいい」クランプフリー動作

APマウントの経緯台構成のクランプフリー動作の「気持ちよさ」は特筆もの。ベアリングが採用された粗動部分や、精度の高い微動装置など、APマウントの良いところがすべて生きる構成(*)。これはぜひ一度体験して欲しいところです。

(*)最近の優れた自動導入経緯台と比較すると若干「時代遅れ」と感じられてしまうかもしれませんが、「特に当てもなく天の川などを流して見る」ことは手動経緯台ならではの楽しみでもあります。

三脚の高さに注意

経緯台構成で使用する場合、三脚の高さに注意が必要です。鏡筒にもよりますが、AP三脚(APP-TL130)の2段伸ばし状態ではやや短く、姿勢が窮屈になります(*)。三段に伸ばした方が良いでしょう。上位モデルのカーボン三脚ASG-CB90では、目一杯伸ばしても短いことになります。重量機材で使用する場合は、SX用のSXG-HAL130も検討の余地があるかもしれません。

(*)上記画像の人物は身長168cmです。

やや面倒な赤道儀構成からのシステムチェンジ

「赤道儀としても経緯台としても使える」APマウントですが、構成を組み替えるにはそれなりに手間が必要です。直感的には上の図の点線の部分を切り離して、APZ三脚ベースに換装すればよいのですが・・・

実際には、①まず赤緯体と赤経微動部をまず分離し、②次に極軸体ユニットと赤経微動部を分離、③赤経微動部をAPZ三脚ベースに装着、④赤経微動部に赤緯体を装着、という手順になります。

パーツ間を堅固・高精度に組立可能にするために、現在のような設計になっていることは理解できるのですが、面倒と言えば面倒です。逆にこの手順を楽しめる方ならむしろ苦にならない「儀式」ともいえるでしょう^^;

モーターユニット付きの場合

左の画像では微動ハンドルの向きが反対側になっていますが、これは簡単にスポッっと取り外して付け替えられます。右のモーターモジュール構成の場合、コントローラを赤緯ユニットにぶら下げるようにしておけば、水平回転したときに一緒に回ってくるので、コードが絡みつくことはありません。

APマウントの経緯台構成は、モーターユニット・手動微動ユニットのどちらを使用していても可能です。経緯台専用として使用するなら手動微動の方が操作もしやすく簡便だと感じましたが、ふだん赤道儀使いをしていて、時と場合によって経緯台に組み替える場合は、モーターユニットでも問題なく使えます。

 

使いこなし(Tips)

APマウントをより活用するために。細かい点・弱点とその補完を含めて、これまで使用した中で気づいた点をまとめてみました。

クランプの装着

AP赤道は、ビクセンの人気商品「ポルタシリーズ」と同様の「フリーストップ」が製品コンセプトの一つになっています。フリーストップは「クランプ操作」という「ある意味面倒」な操作が不要となり、思った方向に自由に振り回せるメリットがあります。

しかし、写真用途で使用する場合は、望遠鏡をしっかり固定することができず不用意に動かしてしまったり、逆に不便なものとなります。このため、結局上の写真のように六角レンチを撮影現場に持ち出して都度締めることになってしまいます。

APマウントをより便利に使用するためには、別売(*)の「APクランプ(直販価格税込920円)」を合わせて購入されることをオススメします。

(*)「APフォトガイダー」および「AP極軸体ユニット」では標準装備となっています。経緯台仕様も含めて、すべて標準付属とすべきだと筆者は感じるのですが。

別売のクランプを装着する場合、クランプネジを六角レンチで外して差し替えるのですが、この際に橙色の「スペーサ」に注意する必要があります。ネジを外した際に架台側に残る場合もあれば、ネジと一緒に外れてくる場合もあり、この場合はクランプネジの先端に付け替える必要があります。

クランプの角度は、プラスドライバーでネジを緩めることで変更ができます。細かく調整が可能なので、本番仕様の前にきちんと調節しておくのがオススメ。

赤経側のクランプ(写真右)の位置決めは比較的容易。この位置にしておけば架台と干渉することはほぼありません。一方で赤緯側のクランプ(写真左、中)はモーターのハウジングやプレート・鏡筒と干渉しやすいので、注意深く微調整するようにしましょう(*)。

(*)こういう細かな気配りを初心者にやらせるべきでない、という設計思想でクランプが標準付属していないのかもしれませんが、そうであればむしろクランプの角度調整をワンタッチでできるようにするとか、工夫の余地があったのではないでしょうか。

スターブックテンによる自動導入

APマウントの赤道儀構成は、公式?には自動導入非対応です。そもそも、「フリーストップ」と(エンコーダなしの)自動導入は両立しません。しかし、裏技?で、AP赤道儀は「スターブックテン(SB10)(直販価格税込97,200円)(*)」があれば自動導入可能になります。

(*)現在ビクセン直販では在庫切れとなっていますが、4月入荷という情報もあるようです。

APマウントにSB10を接続したところ。APは5Vを給電し、SB10には12Vを給電する必要があります。SB10の「架台情報」には「AP」と表示され、認識されていることがわかります(*)。

(*)APの電源をONにしてからSB10を起動することで認識されました。逆にすると認識されず、架台は「disconnet」状態のままになります。電源オフの際は、AP側の電源を先にOFFにします。逆にするとSB10の画面が真っ白になって「暴走?」風の画面になります。

SB10を接続すると「100倍速」で自動導入されるようです。決して速い速度ではなく、頻繁に対象を切り替えるのは正直ストレスですが、「一晩で数対象」のようなじっくり腰を落ち着けた撮影では、じゅうぶん実用になるでしょう。

いずれにしても、公式にはAPマウントでSB10はサポートしていないようですので(*)使用の際は自己責任でお願いいたします。

(*)いろいろな事情があるかと思うのですが、公式にサポートしてほしいものですね・・・

収納ケース

重量実測800g。ウェイト軸とSB1コントローラ用の専用保持材付き。ウェイト軸が若干通しにくいのですが。

別売の専用ケース「APマウントケース(直販価格税込13,770円)」。赤道儀本体を一式収納することができます。ケース本体の重量は800gと軽量。アルミ製のトランクケースのように荒っぽくは使えませんが、とてもコンパクトでいろいろな意味でAPマウントのコンセプトによくマッチした使いやすいケースです。

バランスウェイト・ウェイト軸カバーを収納できるソフトポーチも付いています。

収納する際は赤緯体を反転したり、アリガタのクランプ・極軸体の上下微動が干渉しないように注意がいりますが、少し慣れればサッサと取りだしてサッサと収納できます。

ウェイト軸の脱着

組立手順。③はひたすらカラカラ回せばいいのですが、④がけっこうしんどいです^^;;; 他の部分が簡単なだけに・・・

ウェイトシャフトの取り外しが若干面倒なのがAPマウントの悲しいところ。シャフトのねじ込み部分がけっこう長くて、めいっぱいねじ込むにはクルクルクルクルと何度も回さなくてはならず、ちょっとストレス。

この部分をアルカスイスクランプでワンタッチ着脱にならないものでしょうか。そうなると赤緯軸の両端に機材を装着する構成も可能になり、より柔軟性が増すと思うのですが。

上の構成は、筆者が別の赤道儀で使用している、あり合わせのパーツを組み合わせた赤緯軸ですが、ウェイト軸をアルカクランプに固定し、赤緯軸となる大型のプレートにカメラ用のL字アングルを装着して使用しています。着脱がワンタッチでそれなりに便利です^^

ウェイトシャフトのネジ部分は、赤緯体との勘合が必要な長さよりも、若干長めになっています。めいっぱいねじ込むとネジ部が少し余ります(上画像左)が、ここまでねじ込まなくてもしっかり勘合されます。みかけは若干気持ち悪いですが、ネジ部が少々見えているすこし余した状態(上画像右)でも問題ないでしょう。

自作・改造のベースとしてのAPマウント

APマウントの手動モジュールは非常に高品位・高精度です。これを生かして「手動モジュールにモーターを装着し、2軸自動導入に改造する」ことが可能です。ただし「自作」ベースになりますが・・・

実は編集部では手動バージョンの「APマウント(直販価格税込72,900円)」を別途購入し、知人にお願いして2軸自動導入に改造していただきました。オープンソースの駆動ソフトウェアと高性能な駆動チップを使用していて、なんと800倍速(*)で自動導入が可能になりました。

(*)駆動ソフトウェアの設定、駆動回路、モーターの仕様によって最大速は異なります。ちなみに800倍速でも駆動音は気がつかないほど静かです。

物理的には、微動モジュールを接続する部分に鋼板で成形した金具をはさみ、小型のステッピングモーターからベルトで駆動します。コントローラにはWiFiを搭載し、外部からはLX200互換赤道儀として認識されます。このため、SkySafariやASI AIRを使用して自動導入・オートガイドが可能。最高の小型赤道儀に仕上がっています。APマウントの「素性の良さ」がおおいに生きる展開になりました。

この改造は商業ベースではなく、個人間の「頒布」に近い実験的なものでしたが(*)、このような形態でのサードベンダーによるカスタマイズが広がってくると、大いに選択肢が広がりますね!

(*)この改造機の詳細は、いずれ天リフでご紹介したいと思います。

APシステムに望むこと

大は小を兼ねない・アルカスイス互換仕様の重要性

カメラ三脚の世界では、俗に「大は小を兼ねない」ということがよく言われています。大型の三脚、中型の三脚、小型の三脚は皆それぞれ適材適所があって、大きな三脚が1個だけあれば済むというわけではない、という意味です。

このことは、天体用のマウントについても、そのまま当てはまります。20kgを越えるような重量機材を搭載するものから、小さなカメラ一台を搭載するものまで、目的に応じたサイズのマウントが存在します。

「アリミゾ・アリガタシステム」についても、全く同じことが言えるのではないでしょうか。カメラ三脚の世界では、カメラ本体から4kg級の望遠レンズまで、アルカスイス互換が実質の標準になりつつあります。プレート・クランプ・パノラマ雲台など、実に多種多様な製品が、激安品から高級品まで流通しています。

左・SWAT赤道儀のオプションパーツの「アルカスイスキャッチャー」。架頭に35mm間隔ネジで2点止めでき、干渉を防ぐためにクランプレバーがカメラ用のものより長めになっています。右は筆者のポラリエ。市販のアルカスイス対応パノラマ雲台がジャストサイズで、この状態でつけっぱなしにしています。もちろん片持ちフォーク構成も可能。

これを天文機材に生かさない手はありません。BORGやSWATをはじめ、最近では天文機材でもアルカスイスの採用が広く進み、天文機材のニーズを反映した改良が取り入れられています。

左・William Optics社の鏡筒「RedCat51」に採用されているアルカスイス・ビクセン両対応のアリガタプレート。右・ADM社のアルカスイスロングクランプ。タカハシ規格の架頭に装着できます。画像はSXPに装着したところ。

例えば、ポラリエであれば、強度・サイズ的にはアルカスイスだけで十分。既存資産の活用の意味ではビクセン規格も存在意義はありますが、新規に揃えるならアルカスイス一択でしょう。APマウントについても、初心者用の鏡筒(*)や他社鏡筒への対応を除けば、むしろアルカスイスを基本に据えてもよいくらいではないでしょうか(**)。

(*)脱落事故の危険を考えると、アルカスイスよりも大きく厚みのあるビクセン規格の方が安全かもしれません。

(**)同じ長さの場合、強度的には「ビクセン規格>アルカスイス」であることは厳然たる事実です。特に小型の(長さ50mm以下の)アルカクランプや、薄手の長いプレートの場合は、長時間の撮影の場合たわみやクランプの固定不足が問題になることがあります。

自動導入とシステムの拡張性

初心者に優しいのは、フリーストップなのか、自動導入なのか。マニアが求めるのは、フリーストップなのか自動導入なのか。この問いに対する「正解」はたぶんないでしょう。

ただ一ついえることは、多くのユーザーが自動導入の便利さを知っていて、それを求めている、より便利な自動導入の実現のために今もどこかで製品開発が行われている、ということでしょう。ビクセン社が「総合天体望遠鏡メーカー」である限り、この事実から目をそらすわけにはいかないはずです。

スターブックワン。見やすいキーイルミネーション、操作しやすいボタンはスターブックテン譲りですが、これ以上の拡張性がないのが残念なところ。

何度も繰り返し書いていますが、残念ながらAPマウントは自動導入に非対応です。「スターブックテン」を接続すれば自動導入が「非公式」には可能ですが、100倍速が上限。「スターブックワン」は構造的に自動導入に対応する余地はありません(*)。

(*)外部インターフェースはST4端子のみです。

この状況を打破してほしいものです。

まとめ

いかがでしたか?

約半年間ほどAPマウントを使用してきましたが、とても優秀で使いやすいシステムだと感じました。反面、細かい点?では本稿に書いたような弱点もあり、ユーザー目線で見ると?な仕様もあります。それらを差し引いても、この製品を世に送り出したビクセン社には大いなる賛辞をおくるとともに、今後の製品の改良と革新が継続されることを強く望むものです。

また、APマウントに対する評価には、誤解や認知不足もあると感じました。例えば「APは高い」という声を多く聞きますが、海外製品・国産製品の間にある一般的な価格差を抜きにすれば(これが深刻な課題であることは厳然たる事実なのですが)品質レベルも高く、決して法外に高価というわけではありません(*)。また、自分の目的をしっかり考えた上で必要なものをリストアップして積み上げてみると、APマウントが実現するソリューションの総額が、実は他社製品とさほど変わらない、むしろ安いこともあるかもしれません。

(*)細かく指摘はしませんが「確かにこれは高いよね」というところもあります。

ちょっと抽象的なことをつらつらと書きましたが、まとめていうと「APは良いもの」です。最初のボタンをかけ間違わないようにさえすれば、きっと貴方の天文ライフをより豊かにしてくれることでしょう。APマウントの「最強ぶり」が多くの方に実感されることを願って止みません^^

「最強の赤道儀」が天文ファンを熱くする!それではまた次回お会いしましょう。

APシステムを評価中のオフショット。開発者のスピリットと苦労、そして事情を鑑みながらときおり沈思黙考^^

  • 本記事は株式会社ビクセン様より機材の貸与を受け、天文リフレクションズ編集部が独自の費用と判断で作成したものです。文責は全て天文リフレクションズ編集部にあります。
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さらに、セカンドシステムとしてもAPマウント+FL55SSのセットは強力。パソコン不要で手のかからない放置撮影可能なシステムならば、メインシステムの脇でいい仕事をしてくれることでしょう。 最強!重量級カメラレンズ用システム APマウントの実力的には、FL55SSよりもさらに一回り大きな機材でもノーガイド運用が可能。写真はカメラ込みで5キロ近くになる400mmF2.8望遠レンズでの使用例。このときは機材総動員で電源不足が予測されたため、潔くノーガイドで撮影しました。APマウントは中型のUSBモバイルバッテリなら余裕で一晩駆動可能です。予備に単三乾電池4本(*)も搭載しておいたので心配なく撮影ができました。自動導入に非対応のAPマウントですが、自動導入にせよオートガイドにせよそれなりに電力を消費します。PCを使えばなおさら。少ない電力で長時間の運用が可能なことはAPマウントの大いなるメリットです。 (*)乾電池でも駆動しましたが、4時間ほど使用することができました。気温は-3度程度でした。 上記システムでのリザルト。15秒という短時間露出だったのでガイドの歩留まりはほぼ100%でした。APマウントは400mm程度の焦点域までなら、露出時間を適切な「短さ」にとどめることで、オートガイドなしで運用可能だと感じました。 最強!庭撮りシステム 自宅の庭やベランダでAPマウントを使う場合、惑星や月の撮影・観望も想定すると、一番汎用性があって使いやすいのはノーマルの二軸駆動のドイツ式赤道儀構成でしょう。なにも考えずに鏡筒やカメラを載せるだけです。焦点距離が短ければ、オートガイドも必要ありません。恒星時追尾で放置撮影です。 帰省した際にAPマウント2セット総動員で撮影をしてみました。それなりの光害地なので、STCのAstro Duoフィルターと、サイトロンジャパンのQBPフィルターを使用してみました。 FL55SS鏡筒でIC2177。この鏡筒はAPマウントにベストマッチ(*)。短い小型の鏡筒なので、架台・三脚との干渉も最小。 (*)バランスとしては鏡筒がもう少し大きくても大丈夫なのですが。「FL77SS」あたりがもし出れば、真のベストマッチかもしれませんね^^ こちらはシグマの105mmF1.4Artでバラ星雲。中心部が飽和してしまうほど良く写ります。さすがナローバンドのAstro Duoです。 APマウントは軽量なので、三脚を縮めればこの構成まるごと、庭から部屋に簡単に出し入れできます(*)。帰省中はこの構成でずっとスタンバイしていました^^ (*)さすがに2セットを同時に運ぶのは無理ですけど^^   APマウントの特徴 APマウントが発売されて(2014年12月)、はや4年あまりが経過しました。今さら「特徴のインプレッション」という時期でもないのですが、APマウントの「システム性」については、良いところ・悪いところ含めて、実はあまり理解されていないのではないかと感じています。 そこで本節では、あらためてAPマウントの特徴を詳細に見ていきたいと思います。 シンプルでケーブルの少ない構成 上の画像は赤緯赤経の2軸モーター構成の場合。すっきりしたデザインとケーブルの少ない構成はAPマウントの長所の一つ。最低限必要なケーブルは、コントローラ(スターブックワン)用のシリアルケーブル1本。電源を外部のUSBから供給する場合は、さらにUSB Micro-Bのケーブルが一つ。この2つは、上の図のように赤経モーターの黒いハウジングに差し込みます。 赤緯体のカバーを開くと単三が4本収納できる電池ボックスがあり、こちらを使用する場合はUSBケーブルも不要になります。赤緯体カバーには極軸望遠鏡用の窓があって、スライドして開閉できるようになっています。 赤緯体 左が「AP赤緯体ユニット(直販価格税込13,824円)」。可動部を持たないシンプルな筐体に、電池ボックスと赤経・赤緯のモーターモジュールの電子接点を加えたものです。単体での重量は500gほどで軽量。 赤緯軸の架頭部。ビクセン規格のアリミゾになっています。これまで小型の天体望遠鏡のほとんどはビクセンアリガタでしたが、最近はアルカスイス互換の製品も増えてきています。また、カメラレンズの場合はビクセン規格は皆無で、APシステムのコンセプトによりマッチしたアルカスイス互換のプレートが使いたくなります。クランプを2階建てにすれば対応できるのですが、この部分にはもう一段の汎用性を持たせたかったところ(*)。 (*)架頭部を平らにして35mm間隔のネジ穴を開けておけば、プレートホルダーSXなど汎用のビクセンアリミゾだけでなく様々なクランプが装着でき汎用性が上がるように思いますが、逆にこの部分が二階建てになって薄く仕上がらないのかもしれません。いろいろなトレードオフがあるかと推察しますが、よい解決法を考えてほしいものです。 微動機構と粗動機構の分離 この架頭部のパーツは、単純なアリミゾではなく、ボールベアリングを内蔵した粗動機構を備えています。APマウントの優れた点は、赤緯・赤経ともに粗動機構と微動機構が物理的に分離されていること。これはクランプの締め付けがウォームギア・ホイルのかみ合わせに影響を与えないという点で、架台の精度を上げるためにとても重要なことです。その点で、ビクセンの過去モデルGP赤道儀やその設計を継承?した多くの派生モデルよりも高いポテンシャルを実現しています。 極軸部と極軸望遠鏡 写真左の極軸支持体(「AP極軸体ユニット(直販価格税込27,540円)」はビクセン得意のダイキャスト成形を生かしたモジュール。極軸の水平・垂直の微動機構と、赤経の粗動機構を含んでいます(*)。 (*)これが「底面にアルカプレートを備えた赤経部」と「上部にアルカクランプを備えた上下微動部」の2つに分離できるとこれまた汎用性が上がるのですが・・ 極軸水平微動はSXシリーズと同様、三脚側に付けた「ツノ」を左右のネジで押すタイプ。垂直側は、架台の自重で一方向に押されている前提で、片側のネジ一つで押し引きするタイプです(*)。 (*)どちらも特に問題なく操作できましたが、上下微動は押す方向と引く方向で若干動きが非対称になります。赤緯体側が軽い場合など、引く側の動きへの反応が鈍いことがあります。押す側で最後追い込むような使い方をするのが吉です。 極軸体ユニットの後端はプラ製のカバーになっていて、外すと「極軸望遠鏡PF-L(II)(直販価格税込25,650円)」を取り付けることができます。極軸望遠鏡は暗視野照明内蔵。昨年12月に新型の「II」モデルが発売されましたが、旧型でも同じように使用できます。詳細は以下の天リフ記事をご参照ください。 http://reflexions.jp/tenref/orig/2018/10/15/6666/ 高緯度・低緯度地域にも対応 AP赤道儀はそのシンプルさ・コンパクトさから、「海外遠征用に最強」との評価をマニア筋からよく耳にします。高緯度・低緯度にどのくらい対応するのかを試してみました。 まず低緯度側。ユニット自体は水平(緯度0度相当)まで可動しますが、ウェイトが三脚に干渉しない前提をつけると緯度10度くらいまででしょうか。地平線付近以外では干渉しないので、東西反転の際にぶつけないようにさえ注意すれば実用的にはOKでしょう。また、上の画像のように三脚で調整する方法もなくはありません。 高緯度側は限界付近では極軸望遠鏡のカバーと調整ネジが干渉しますが、緯度65度までならOKそうです。カナダのイエローナイフが北緯62度、アイスランドでも北緯65度程度なので、極地に行かない限りはほぼ世界のどこでも使えるといえそうです。対応緯度の広さはAP赤道儀の大きな長所の一つだと感じました。 高品位なモーターモジュールと微動モジュール 左から「赤経モーターモジュール(スターブックワン込みで直販価格税込59,940円)、「赤緯モーターモジュール(直販価格税込32,130円)」、「手動モジュール(直販価格税込18,230円)」。手動モジュールは赤緯用・赤経用の区別はなく共通です。 ウォームホイルの歯数はいずれも144枚。ガタもなく非常にスムーズに回転します。このパーツを実際に手にとって見ると、APマウントの構成パーツの高品位さを感じます。 スターブックワン 赤経モーターモジュールには、「スターブックワン」がセットになっています。このコントローラは追尾速度の切替と、十字キーによる制御(最大60倍速)が可能です。また、ST4オートガイド端子が付いて、2軸または1軸のオートガイドが可能です。ただし、自動導入の機能は持っていません。(裏技あり:後述)。 赤経モーターモジュールはスターブックワンを接続しなくても、電源投入すれば恒星時追尾になります。広角のカメラレンズで1軸ノーガイド撮影するような場合は、必ずしも必須ではありません。こちらは別売にしてエントリ価格を下げられないものでしょうか。 ウェイト軸と付属ウェイト APマウントの赤道儀構成のパッケージ「AP-SMマウント(直販価格税込119,340円)」などに付属するウェイトは公称1.0kgの小型のものです。上の画像は重量実測2622gの機材(FL55SS+レデューサ・フラットナー、EOS6D)を搭載したところですが、この位置でバランスが取れています。軽量機材ならこのウェイト1個で十分でしょう。標準ウェイトをこのサイズにしたのはよい判断だと感じました(*)。 (*)もちろん公称搭載重量6kgを載せる場合は不足するので、その場合はオプションのウェイトの買い足しが必要です。 いろいろな鏡筒を載せてみました。いずれもバランスをとった状態です。左からセレストロンC8、Sky-Watcher BKP130、Founder Optics FOT85、ビクセンFL55SSです。C8の重量は公称5.6kg、APマウントの搭載重量のほぼ上限になります。 これらの構成ですべて実際に使用してみましたが、使用感としてはどれも問題なく普通に使える印象です。さすがにC8直焦点での撮影はやっていませんが、BKP130(焦点距離650mm)での撮影は問題ありませんでした。 ただし全体のバランスとしては、機材が重くなる・重心が高くなるほど、三脚の強度がネックになると感じました。その場合は、若干重くなるのを我慢してSXG-HAL130にする、お値段がやや張るものの同じくらいの重量でより強度の高い、後述するカーボン脚ASG-CB90を使うという選択肢があります。 APマウントの分解と組立 APマウントの売りの一つが「システム化」。マウントがさまざまなパーツ群で構成されていて、目的に合わせた柔軟な構成が可能というものです。 モジュール群の分解と組立は、若干慣れを必要とします。ここではサンプルとして、手動微動仕様の赤道儀構成を、モーターモジュール仕様に換装してみましょう。 最小限のネジの露出 上の写真左が「手動微動」仕様の赤道儀構成ですが、ネジの露出がほぼ皆無です(*)。このため、組み上がった姿は極めてスッキリしていて、武骨感のない親しみやすいデザインになっています(**)。 (*)極軸対ユニットの三脚取付用のM10ネジ、赤緯体のウェイト軸のM10ネジはいずれも最終的には隠れます。どんな構成にした場合でも、露出するのはごく一部のイモネジのみになります。 (**)善悪とも好みとも別の問題ですが、往年の名機「Mark-X」が、パーツ間の接合を外部に露出したネジで行っていたのとは対照的です。 赤緯体の分離 逆に、組み上げ状態をぱっと見ただけでは、いったいどこから分解すればいいのかわかりません^^; でも安心してください。まずは、赤緯体のカバー(極軸望遠鏡用の窓が開いた部分)を外します。 カバーを外すと赤緯体と赤経体を接続する2本のM5ネジが現れます(上画像矢印)。これをヘックスキーで外すと、赤緯体が分離できます。 この2本のM5ネジで接合されるパーツ面は高品位の仕上げになっていて、ゆるみなくぴったりと合わさります。また、3本の突起と合わせる形になっていて、合わせ間違いを防止しています。 赤経駆動部の換装 次に、極軸体ユニットに装着された手動微動モジュールを、3本のM4ネジを外して赤経モーターユニットに換装します。このM4ネジ3本による勘合部は、平面ではなく高品位に仕上げられた円筒部がスポッとはまるようになっています。なかなかに凝ってますねえ、という印象。 赤緯駆動部分の分離 同じように赤緯体ユニットから赤緯微動部を取り外します。ここの固定もM5ネジ2本。ネジの角度的にヘックスキーでは回しにくく、指を当てて要領よく回すか、根気よく少しづつ回しましょう。 赤緯駆動部分の換装 手動微動ユニットは「APクランプ筒受ユニット(アリミゾの付いた架頭部)」に3本のM4ネジで固定されています。これを取り外して、赤緯モーターモジュールに換装します(*)。 (*)「APクランプ筒受ユニット」は一見ただのアリミゾに見えるのですが、ベアリングを内蔵したクランプ機構を備えたかなり精巧なユニットです。 APマウントのモーターモジュールはケーブルレス。赤緯体から電子接点経由で電源の供給とコントロールを受ける形になっています。 モーター化すると手動微動が余る できあがり。無事APマウントが2軸モーター仕様になりました。しかし、ここでひとつユーザー的には問題があります。換装した手動微動モジュールが余るのです。 手動微動モジュールは直販価格税込18,230円。モーターモジュールは赤緯側が同32,130円、赤経側が同59,940円です。手動構成をモーター化すると、差額ではなくまるごと買い換えになり、しかも手動モジュールが余っていまいます。これではあまり納得感がありません。 モーターモジュール(左)と手動モジュール。(2/27)訂正とお詫び)モーターモジュールのギアの方が大径で寄り精度が高いそうです。この2つはギア的には同じものを使用していて、精度も同じであるとのことです。モーターのハウジングを収容するためなのか、筐体の「厚み」が違うだけ。ここは共通化して、モーターだけを外付けする形にならないものでしょうか。 APマウントの三脚 APマウントと同時に発売された「AP三脚(APP-TL130 直販価格税込19,980円)」は、一見カメラ三脚っぽく(弱そうに^^;;)見えるのですが、実は軽量化と強度のバランスが取れた、ガチ系にも評価の高い三脚です。さらに昨年末に、上位バージョンのカーボン・アルミハイブリッドの三脚「ASG-CB90」が発売され、それと同時にAP三脚の三脚架頭部も共通化されました。これによってビクセン製品の三脚ラインナップは大きく充実しています。 ここでは、APマウントで使用可能なこれらの三脚をご紹介しましょう。 AP三脚(APP-TL130) AP三脚は重量3kgと比較的軽量で、3段伸縮で縮めるととてもコンパクトになり、コスパも良好。さすがに「ビクともしない」ような堅牢性・重量感はありませんが、APマウントとベストマッチのバランスだと感じました。 同クラスの重量のカメラ用三脚と比較して、圧倒的に違うのが架頭部の強度。架頭部だけで見れば、AXJ級でも十分運用可能な強度です(*)。 (*)AP三脚(APP-TL130)の上位モデルASG-CB90は「AXJ用」としてもビクセンが推奨する三脚ですが、架頭部の仕様は同じになっています。 AP三脚はレバーロック式。リング式よりも強度は下がりますが、簡単に伸縮できる利便性は捨てがたく(*)、APマウントの用途としては適切な選択かもしれません。ベランダに出し入れするときや寒冷期では特にレバー式のありがたみを痛感します。三脚には開き止めステーがあってトラス形状で安定性を増すようになっています。 石突はスパイクとゴムの両用になっています。ゴムリングを回すとスパイクが出てくる仕組み。スパイクの径は16mmもあって、ジッツォなどのカメラ用三脚の標準である3/8インチ規格よりも二回り大きな径になっています。 AP三脚は2018年末にマイナーチェンジし、SXシリーズ用三脚と架頭部が共通化されました。左が改良版で、ネジ穴が2個ついています。右は改良前、AP専用になっています。色も若干変更されていて、APマウントの色とよりマッチするようになりました。 APマウントの隠れたメリットが三脚の選択肢が広いこと。他にもSXシリーズ用のSXG-HAL130などが使用できます。ビクセン三脚については以下の天リフ記事もご参照ください。 http://reflexions.jp/tenref/orig/2019/01/18/7710/ ASG-CB90三脚 昨年末に発売されたカーボン・アルミのハイブリッド(*)の上位モデルが「ASG-CB90(直販価格税込70,800円)、重量3.4kg、写真上」。ビクセンの推し的には主にAXJやSXP2がターゲットのようですが、こちらもAPマウントで使用することができます。 (*)ASG-CB90三脚は、一番太いところのパイプ径が36mmとやや細身になっていますが、2段目の細いパイプの中をアルミ素材で強化する形になっています。体感的には、他社の40mm径のカーボン三脚と遜色ない強度と感じました。 ASG-CB90は、強度を重視して伸縮方式がレバーロック式から回転式に変更され、さらに三脚開き止めステーがAPP-TL130と比べて強化されています(画像右)。上の画像のステーの強化は一見小さな変更に見えますが、APP-TL130よりもずっと安定して固定できるようになっています。この改良はAPP-TL130にもぜひフィードバックしてほしいもの。 ごらんのような構成で、鏡筒やカメラを手で軽く叩いてみて、振動の量と減衰時間をAPP-TL130とASG-CB90で比較してみました。主観的・定性的な比較ですが、両者は「かなり」違いました(*)。APシステムに「もう少し投資できる」余力があって、長焦点・高倍率で使用するのであれば、断然ASG-CB90がオススメです(**)。 (*)振動の減衰時間の差が大きいと感じました。比較動画を撮影したのですが、客観的・定量的な計測になっていないため掲載を見送っています。風などの外部要因による「ゆれ耐性」を評価するよい方法がないものか検討中です。 (**)目一杯伸ばしてもこの高さなので写真用途向けといえます。ハーフピラーで高くすることもできますが、その場合振動はやや大きくなります。 雲台アダプター AP専用のオプションではなく、ビクセンのAP/SX/GP三脚共通のパーツですが、けっこう使えるアイテムを一つご紹介しておきます。「雲台アダプター(直販価格税込5,184円)」です。 このアダプタは、ビクセンの三脚にカメラ雲台(1/4インチネジ)を装着するものです。底部は45mm径・60mm径両対応の段差が刻まれていて、ツノつきの状態で三脚にM10ネジで固定することができます。1/4インチネジが若干短めでやや心もとないところはありますが、小型機材の搭載であれば大きな問題はないように感じました。 このアダプタを使用すれば、ビクセン三脚だけでなく、他社のGP互換三脚にも1/4インチ・3/8インチ仕様のパーツを装着することができます(*)。上の画像は、アルカスイスクランプ経由でSWAT赤道儀を装着したところ。右の三脚は、60mm径の旧GP規格のSky-Watcher EQ5三脚です。 (*)このパーツにも35mm間隔のネジ穴が付いていると、しっかり2点止めができるようになるのですが。 同様のアダプタは他社からも販売されていて、ユニテックの製品は45mm径仕様専用ですが、3/8太ネジ仕様でより安定感があります(*)。笠井トレーディングの製品は、やや重いですが3/8太ネジ仕様で45/60mm両用です。 これらのアダプタを使用すれば、カメラ三脚よりもはるかに天体向けのビクセン三脚を、様々な用途で使用できるようになります。 AP最強!伝説・その2 最強!軽量2軸オートガイドシステム APシステムは小型軽量な赤道儀ですが、オートガイドで運用すれば600mm程度までなら特に問題なくガイドすることができました(*)。上の画像はSky-WatcherのBKP130(コマコレクタを装着し焦点距離630mm程度)とCMOSカメラASI294MCで撮影しているところ。改造品(「後述の」参照)の2軸駆動システムで、ASI AIRでオートガイドしています(**)。 (*)このくらいの焦点距離では2軸オートガイド構成を組んだ方が無難でしょう。露出時間を30秒、15秒と短くするような「ラッキーイメージング」的な手法であれば、1軸ノーガイドでも十分実用になるでしょう。ただし、風による揺れ耐性はより重量級の赤道儀が有利になることでしょう。 (**)APマウントの純正モーターモジュールはASI AIRには非対応です。オートガイドする場合はST4ガイドケーブルをスターブックワンに接続して行います。 上記構成例でのリザルト。1コマ5分露光ですが、特に流れもなくガイドは良好。淡い対象やナローバンドのように光量が少なく長めの露光時間を確保したい場合には、オートガイドは強力なツールです。 撮像中の画面とガイドグラフ。重量級の架台ではないので風には強くありませんが、ガイド精度・ガイド信号への反応ともに良好。これまで使用してきた中では、ノーガイド・オートガイドのいずれでも、安定した歩留まりを得ています。トータルのRMSエラーは1秒角程度でした(*)。 (*)赤経方向のピリオディックモーションを正確には測定していないのですが、最大でも±8秒角程度に感じました。しかし特に小型の赤道儀の場合は、ギア固有のピリオディックモーションよりも、ガイド信号への追従性の方がはるかに重要だと感じています。これは鏡筒の方角やバランス、モーターの伝達機構によっても大きく変わってきます。筆者はSXP赤道儀も使用していますが、耐風性・耐荷重を除けば、精度についてはどちらかが明確に良いという実感は特にありません。 最強!「近征」システム APマウントの機動性は「ご近所撮影」でも大いに発揮されます。自宅から数キロ、北極星が見えて南中したオリオン座が見える場所まで移動してお手軽撮影中。架台はウェイト軸だけ外して、三脚を縮めて畳んだ状態で車の後部座席に収容して運搬。脚を広げるだけですぐ設置が可能。スモールシステムならではのメリットです。 満月の市街地なので淡い部分は全く出てきませんが、それは織り込み済み。トラペジウムが4つ分離したのでまあ満足^^ 近場にサクッと出かけて撮れることがわかったのは大きな収穫で、軽量機材のありがたみを実感しました。 ガイドグラフはこんな感じ。やや風があったためか、全体的にギザギザしていてRMSは1.48秒角と少し良くないですが、顕著な暴れはなく、ボツにしたコマはありませんでした。   最強!ライト構成・AP星空雲台 時と場合に応じて柔軟にシステムを組み替えられるのもAPマウントのメリット。最軽量構成「AP星空雲台(*)」を「片持ちフォーク構成」で。片持ちフォーク構成はポータブル赤道儀において非常に有効な構成です。重心が北に偏るデメリットがあるものの、ウェイト不要で極軸にかかる総荷重を少なくできるメリットで相殺、全天死角なし・子午線越え反転無用というメリットだけが残ります。 (*)構成の組み替えの簡単さとパーツ構成のシンプルさ的には、極軸体ユニットをそのまま使用する「APフォトガイダー」構成の方が使いやすいかもしれません。 AP星空雲台構成は極軸体を支えるアームが一見細身で強度が心配に見えますが、全くそんなことはありませんでした(**)。この構成はおそらく200mmでも問題ないでしょう。 (**)例えばツァイスの赤道儀も、同じように一見細身の支柱で極軸体を受けるようになっていて強度不足に見えるのですが、実際は全く逆で素晴らしい安定性を持っています。 上記構成のリザルト。STCの「Astro Duoナローバンドフィルター」を使用しています。狭帯域フィルターなので4分と長めの露出をかけています。レンズは重量級のシグマ105mmF1.4Art。この重量と焦点距離の場合、ノーマル構成のポラリエのようなポタ赤ではさすがに荷が重く高い歩留まりは期待できませんが、APマウントの場合ガイドの歩留まりは100%でした。 最強!ベランダシステム 「使用頻度の高い機材が一番よい機材である」巷でよく聞かれるフレーズです。どんなに高精度で安定度が高くても、気軽に使うのを躊躇するようなサイズ・重さだったり、構成が複雑で使うまでに手間がかかるようだと、自然と出撃頻度が減ってしまいます。それは「自宅庭」や「ベランダ」であっても同じ。 その点、APマウントはとても簡便。組み立てた状態で三脚を縮めておけば、部屋の隅に置いていても邪魔になりません。さっと持ち出して脚を伸ばし、モバイルバッテリを接続すればすぐに使用開始。自動導入がないのでアライメントも不要(*)。だいたい北に向けるだけ。 (*)自動導入のSXPをチョイ見でベランダ出動させたとき、アライメントをするのかしないのか、結構悩みます^^;; 普通に鏡筒を付けて普通に天体望遠鏡として使えるのがAPマウントの良いところ。「ベランダ最強!」の称号を贈ります^^ 1軸駆動赤道儀構成(APフォトガイダー) APマウントの「システム性」が生きるのがこの構成。セット商品としては「APフォトガイダー(直販価格税込144,720円)」という形になります(*)。赤緯軸を取り去って、自由に赤経架頭にパーツを装着し、さまざまなニーズに対応できるのですが、それを具体的に見ていきましょう。 (*)以下、この標準セットに含まれないパーツもありますので、購入時には具体的なパーツ構成の確認をお願いします。 基本構成 赤緯軸を持たない、主に写真撮影用途を想定した1軸駆動仕様の赤道儀構成です。カメラレンズで星野撮影をする場合には、フル構成よりもシンプル・コンパクトに運用できるでしょう。 この構成では、赤経モーターモジュールにビクセン規格のアリミゾが装着された形になります。 PG筒受セット APフォトガイダー化のためのパーツ3種。この3点をセットにした商品が「PG筒受セット(直販価格税込11,890円)」。 右の黒い円盤が「プレートホルダーベース(直販価格税込3,348円)」、これを2本のM5ネジで赤経モーターユニットに装着します。中央のアリミゾが「AP筒受ユニット(直販価格税込3,349円)」。プレートホルダーベースには3個のイモネジで装着します。左のアリガタが「スライド雲台プレート(直販価格税込7,430円)」(*)。 (*)「AP筒受ユニット(H)」に相当するアルカスイス対応版のパーツがぜひ欲しいところです。 スライド雲台プレートDDとクイックリリースパノラマクランプ 今回は使用しなかったのですが、ポラリエを強化する「ステップアップキット」用のパーツを使用して、簡易的に1軸駆動のドイツ式構成に組むことも可能です。上の画像は「スライド雲台プレートDD(直販価格税込9,590円)」「クイックリリースパノラマクランプ(直販価格税込10,530円)」を組み合わせたものですが、プレートはビクセンアリガタなのでAPマウントでも同様に使用が可能。AP用の手動モジュールとモジュールベースの組み合わせよりはコンパクトな構成です。 片持ちフォーク化 ビクセンアリガタをアルカクランプで継いで、パノラマ雲台とL型アームを組み合わせてフォーク構成にしてみました。ありあわせのパーツの組み合わせですが、フォーク構成は短い鏡筒やカメラレンズを使用する場合、死角なく東西反転も不要な便利な構成です。 ビクセンアリガタ以降のフォーク式構成パーツの重量は約1.1kg。無駄を省けばもうすこし軽量化できそうです。 実は使える?!「モジュールベース」 PG筒受けセットを使わない、1軸赤道儀仕様も実は可能。製品サイトではあまり具体的な構成例が紹介されていないのですが、1軸構成で使用する際に使えるアイテムが「モジュールベース(直販価格税込4,590円)」です。このパーツを赤経モーターモジュールに装着すれば架頭が平坦になり、汎用パーツを接続することが可能です。 モジュールベースは赤経モーターユニットにM5ネジ2本で装着します。こうすれば架頭部がすっきりしますね。ただし残念なのはネジ穴がすべてバカ穴で、2つの穴の間隔も35mmではありません(*)。右のようにアルカクランプを装着する場合、1/4インチネジをプレートの後から回して装着する必要があります(**)。 (*)このネジ穴の間隔は前出のプレートホルダーベースDDとクイックリリースパノラマクランプと同一なのかもしれません(未確認)。ただし、モジュールベースにはネジ穴はないので、クイックリリースパノラマクランプが装着可能かどうかは不明です。せめてパーツの仕様はHPなどで明確に記述してほしいものです。 (**)ちなみに、モジュールベースをこの形で使用できるのは赤経モーターモジュールに対してのみです。赤緯モーターモジュールや後述する「AP星空雲台」の構成では、勘合部の仕様が異なり装着できません。 架頭部の比較。左はモジュールベースを使用した場合、右がPG筒受けセットを使用した場合。アルカクランプのサイズはまるで違いますが^^;;ずっとシンプルで軽量になることがわかります。 しかし、上の構成ではアルカクランプは1/4ネジの1点止め。軽量機材ならこれでもいいのかもしれませんが、ここはぜひ1/4インチかM6の35mm間隔のネジ穴が欲しかったところ。そうすればアルカクランプをしっかり2点止めできるようになります。物理的なスペースは十分あるので、すぐにでも対応してほしいところ(*)。 (*)自作ができる人なら自分で穴を開けてネジを切ってもいいかもしれませんし、シンプルなパーツなのでサードベンダーからパーツが販売されても良いのですが。 フォーク構成再び^^。鏡筒側のアリガタもアルカスイスに換装して、さらに軽量化されスマートになりました。 何かとシステムの組み替えに手間のかかるAPマウントなのですが、赤緯軸を取り外してモジュールベースに換装するのはM5ネジ2本だけの取り外しで可能。1軸フォーク構成は2軸オートガイドはできないものの、軽量で死角のない点で、ドイツ式2軸構成にはないメリットがあります。1軸・2軸をうまく使い分ければ、APマウントの柔軟性がさらに生きることでしょう。 ちなみに、アルカスイス化すれば鏡筒側も軽量化が可能です。上左はビクセンFL55SSの付属アリガタですが、これをアルカスイスに換装すれば150gほど軽くなります。1軸フォーク構成は極軸から先が大きくアウトバランスになるため、少しでも軽量化したいものです。 ポータブル赤道儀構成(AP星空雲台) APマウントはもうひとつ、極軸体ユニットを使用しない構成を組むことができます。それが「AP星空雲台(直販価格税込117,450円)」構成(*)です。 (*)「赤経モーターモジュールSBOセット(直販価格税込59,940円)」のプレートを「DDタイプ」に換装し、「APポータブルセット(直販価格税込27,540円)」「極軸望遠鏡PF-L(直販価格税込25,650円)」を組み合わせたものに相当します。三脚と極軸上下微動は別売です。   この構成では、赤経モーターモジュールを「逆向き(*)」にして「APクランプ筒受けユニットH(直販価格税込10,152円)」を接続し、プレートホルダーベースを介して「AP極軸ホルダー(直販価格税込8,424円)で受ける形になります。AP極軸ホルダーには1/4インチネジが切ってあり、カメラ用三脚に搭載する想定です。 (*)逆向きにすると回転方向が逆になるのでは?という疑問が出ますが、三脚に固定される部分も逆になるので問題ないのです。最初は理解できなかったのですが、触ってみてようやく納得^^; システムの総重量は上の構成で約1.5kg。極軸体ユニットがない分軽量になります。一見AP極軸ホルダーの底面が小さく不安定に見えますが、実際に使用した感触ではこの部分の強度は十分だと感じました。 ちなみに、AP星空雲台構成をAPフォトガイダー構成にシステムアップする際に、APクランプ筒受けユニット(H)は赤経モーターモジュールに装着できないことに注意が必要です(*)。 (*)クランプ機構を持たない「PG筒受セット」または「モジュールベース」が必要になります。APクランプ筒受けユニットHは赤緯軸の筒受けユニットに流用が可能です。 経緯台構成(APZマウント) APマウントは経緯台として使用することも可能。耐荷重の大きな本格的な経緯台マウントの国産品が少ない中、APマウントは貴重な位置づけ。その実力やいかに? 搭載荷重最大8kg 経緯台構成の基本はシンプル。上の写真の、別売の「AP三脚ベース(直販価格税込9120円)(*)」を追加し、経緯台構成に組み替えます。 (*)何かと「高い」と批判を受けるAPマウントですが、このAP三脚ベースははっきりいってバーゲンプライスだと思います。 APマウントの赤道儀構成は公称搭載重量6kgですが、この経緯台構成の場合は公称搭載重量8kg。搭載している鏡筒は7kgありますが、全く問題なくスムーズに動作します。 APZカウンターウェイト 経緯台構成の場合、長いウェイトシャフトを延ばすのはあまりクールではありません。水平軸のバランスの崩れは赤道儀ほど問題にならないため(*)、経緯台専用で使うのなら上の「APZカウンターウェイト(直販価格税込3888円)」を使用する方がクールでしょう。左の画像の経緯台用のセット構成「APZマウント(直販価格税込59,670円)(**)」では、標準付属になっています。 (*)水平に設置した場合は、バランスが崩れていてもクランプフリー時に動き出さないため。 (**)この価格もなかなかのコスパではないかと個人的には思います。 「気持ちのいい」クランプフリー動作 https://youtu.be/34y6g4d4JUA APマウントの経緯台構成のクランプフリー動作の「気持ちよさ」は特筆もの。ベアリングが採用された粗動部分や、精度の高い微動装置など、APマウントの良いところがすべて生きる構成(*)。これはぜひ一度体験して欲しいところです。 (*)最近の優れた自動導入経緯台と比較すると若干「時代遅れ」と感じられてしまうかもしれませんが、「特に当てもなく天の川などを流して見る」ことは手動経緯台ならではの楽しみでもあります。 三脚の高さに注意 経緯台構成で使用する場合、三脚の高さに注意が必要です。鏡筒にもよりますが、AP三脚(APP-TL130)の2段伸ばし状態ではやや短く、姿勢が窮屈になります(*)。三段に伸ばした方が良いでしょう。上位モデルのカーボン三脚ASG-CB90では、目一杯伸ばしても短いことになります。重量機材で使用する場合は、SX用のSXG-HAL130も検討の余地があるかもしれません。 (*)上記画像の人物は身長168cmです。 やや面倒な赤道儀構成からのシステムチェンジ 「赤道儀としても経緯台としても使える」APマウントですが、構成を組み替えるにはそれなりに手間が必要です。直感的には上の図の点線の部分を切り離して、APZ三脚ベースに換装すればよいのですが・・・ 実際には、①まず赤緯体と赤経微動部をまず分離し、②次に極軸体ユニットと赤経微動部を分離、③赤経微動部をAPZ三脚ベースに装着、④赤経微動部に赤緯体を装着、という手順になります。 パーツ間を堅固・高精度に組立可能にするために、現在のような設計になっていることは理解できるのですが、面倒と言えば面倒です。逆にこの手順を楽しめる方ならむしろ苦にならない「儀式」ともいえるでしょう^^; モーターユニット付きの場合 APマウントの経緯台構成は、モーターユニット・手動微動ユニットのどちらを使用していても可能です。経緯台専用として使用するなら手動微動の方が操作もしやすく簡便だと感じましたが、ふだん赤道儀使いをしていて、時と場合によって経緯台に組み替える場合は、モーターユニットでも問題なく使えます。   使いこなし(Tips) APマウントをより活用するために。細かい点・弱点とその補完を含めて、これまで使用した中で気づいた点をまとめてみました。 クランプの装着 AP赤道は、ビクセンの人気商品「ポルタシリーズ」と同様の「フリーストップ」が製品コンセプトの一つになっています。フリーストップは「クランプ操作」という「ある意味面倒」な操作が不要となり、思った方向に自由に振り回せるメリットがあります。 しかし、写真用途で使用する場合は、望遠鏡をしっかり固定することができず不用意に動かしてしまったり、逆に不便なものとなります。このため、結局上の写真のように六角レンチを撮影現場に持ち出して都度締めることになってしまいます。 APマウントをより便利に使用するためには、別売(*)の「APクランプ(直販価格税込920円)」を合わせて購入されることをオススメします。 (*)「APフォトガイダー」および「AP極軸体ユニット」では標準装備となっています。経緯台仕様も含めて、すべて標準付属とすべきだと筆者は感じるのですが。 別売のクランプを装着する場合、クランプネジを六角レンチで外して差し替えるのですが、この際に橙色の「スペーサ」に注意する必要があります。ネジを外した際に架台側に残る場合もあれば、ネジと一緒に外れてくる場合もあり、この場合はクランプネジの先端に付け替える必要があります。 クランプの角度は、プラスドライバーでネジを緩めることで変更ができます。細かく調整が可能なので、本番仕様の前にきちんと調節しておくのがオススメ。 赤経側のクランプ(写真右)の位置決めは比較的容易。この位置にしておけば架台と干渉することはほぼありません。一方で赤緯側のクランプ(写真左、中)はモーターのハウジングやプレート・鏡筒と干渉しやすいので、注意深く微調整するようにしましょう(*)。 (*)こういう細かな気配りを初心者にやらせるべきでない、という設計思想でクランプが標準付属していないのかもしれませんが、そうであればむしろクランプの角度調整をワンタッチでできるようにするとか、工夫の余地があったのではないでしょうか。 スターブックテンによる自動導入 APマウントの赤道儀構成は、公式?には自動導入非対応です。そもそも、「フリーストップ」と(エンコーダなしの)自動導入は両立しません。しかし、裏技?で、AP赤道儀は「スターブックテン(SB10)(直販価格税込97,200円)(*)」があれば自動導入可能になります。 (*)現在ビクセン直販では在庫切れとなっていますが、4月入荷という情報もあるようです。 APマウントにSB10を接続したところ。APは5Vを給電し、SB10には12Vを給電する必要があります。SB10の「架台情報」には「AP」と表示され、認識されていることがわかります(*)。 (*)APの電源をONにしてからSB10を起動することで認識されました。逆にすると認識されず、架台は「disconnet」状態のままになります。電源オフの際は、AP側の電源を先にOFFにします。逆にするとSB10の画面が真っ白になって「暴走?」風の画面になります。 SB10を接続すると「100倍速」で自動導入されるようです。決して速い速度ではなく、頻繁に対象を切り替えるのは正直ストレスですが、「一晩で数対象」のようなじっくり腰を落ち着けた撮影では、じゅうぶん実用になるでしょう。 いずれにしても、公式にはAPマウントでSB10はサポートしていないようですので(*)使用の際は自己責任でお願いいたします。 (*)いろいろな事情があるかと思うのですが、公式にサポートしてほしいものですね・・・ 収納ケース 別売の専用ケース「APマウントケース(直販価格税込13,770円)」。赤道儀本体を一式収納することができます。ケース本体の重量は800gと軽量。アルミ製のトランクケースのように荒っぽくは使えませんが、とてもコンパクトでいろいろな意味でAPマウントのコンセプトによくマッチした使いやすいケースです。 収納する際は赤緯体を反転したり、アリガタのクランプ・極軸体の上下微動が干渉しないように注意がいりますが、少し慣れればサッサと取りだしてサッサと収納できます。 ウェイト軸の脱着 ウェイトシャフトの取り外しが若干面倒なのがAPマウントの悲しいところ。シャフトのねじ込み部分がけっこう長くて、めいっぱいねじ込むにはクルクルクルクルと何度も回さなくてはならず、ちょっとストレス。 この部分をアルカスイスクランプでワンタッチ着脱にならないものでしょうか。そうなると赤緯軸の両端に機材を装着する構成も可能になり、より柔軟性が増すと思うのですが。 上の構成は、筆者が別の赤道儀で使用している、あり合わせのパーツを組み合わせた赤緯軸ですが、ウェイト軸をアルカクランプに固定し、赤緯軸となる大型のプレートにカメラ用のL字アングルを装着して使用しています。着脱がワンタッチでそれなりに便利です^^ ウェイトシャフトのネジ部分は、赤緯体との勘合が必要な長さよりも、若干長めになっています。めいっぱいねじ込むとネジ部が少し余ります(上画像左)が、ここまでねじ込まなくてもしっかり勘合されます。みかけは若干気持ち悪いですが、ネジ部が少々見えているすこし余した状態(上画像右)でも問題ないでしょう。 自作・改造のベースとしてのAPマウント APマウントの手動モジュールは非常に高品位・高精度です。これを生かして「手動モジュールにモーターを装着し、2軸自動導入に改造する」ことが可能です。ただし「自作」ベースになりますが・・・ 実は編集部では手動バージョンの「APマウント(直販価格税込72,900円)」を別途購入し、知人にお願いして2軸自動導入に改造していただきました。オープンソースの駆動ソフトウェアと高性能な駆動チップを使用していて、なんと800倍速(*)で自動導入が可能になりました。 (*)駆動ソフトウェアの設定、駆動回路、モーターの仕様によって最大速は異なります。ちなみに800倍速でも駆動音は気がつかないほど静かです。 物理的には、微動モジュールを接続する部分に鋼板で成形した金具をはさみ、小型のステッピングモーターからベルトで駆動します。コントローラにはWiFiを搭載し、外部からはLX200互換赤道儀として認識されます。このため、SkySafariやASI AIRを使用して自動導入・オートガイドが可能。最高の小型赤道儀に仕上がっています。APマウントの「素性の良さ」がおおいに生きる展開になりました。 この改造は商業ベースではなく、個人間の「頒布」に近い実験的なものでしたが(*)、このような形態でのサードベンダーによるカスタマイズが広がってくると、大いに選択肢が広がりますね! (*)この改造機の詳細は、いずれ天リフでご紹介したいと思います。 APシステムに望むこと 大は小を兼ねない・アルカスイス互換仕様の重要性 カメラ三脚の世界では、俗に「大は小を兼ねない」ということがよく言われています。大型の三脚、中型の三脚、小型の三脚は皆それぞれ適材適所があって、大きな三脚が1個だけあれば済むというわけではない、という意味です。 このことは、天体用のマウントについても、そのまま当てはまります。20kgを越えるような重量機材を搭載するものから、小さなカメラ一台を搭載するものまで、目的に応じたサイズのマウントが存在します。 「アリミゾ・アリガタシステム」についても、全く同じことが言えるのではないでしょうか。カメラ三脚の世界では、カメラ本体から4kg級の望遠レンズまで、アルカスイス互換が実質の標準になりつつあります。プレート・クランプ・パノラマ雲台など、実に多種多様な製品が、激安品から高級品まで流通しています。 これを天文機材に生かさない手はありません。BORGやSWATをはじめ、最近では天文機材でもアルカスイスの採用が広く進み、天文機材のニーズを反映した改良が取り入れられています。 例えば、ポラリエであれば、強度・サイズ的にはアルカスイスだけで十分。既存資産の活用の意味ではビクセン規格も存在意義はありますが、新規に揃えるならアルカスイス一択でしょう。APマウントについても、初心者用の鏡筒(*)や他社鏡筒への対応を除けば、むしろアルカスイスを基本に据えてもよいくらいではないでしょうか(**)。 (*)脱落事故の危険を考えると、アルカスイスよりも大きく厚みのあるビクセン規格の方が安全かもしれません。 (**)同じ長さの場合、強度的には「ビクセン規格>アルカスイス」であることは厳然たる事実です。特に小型の(長さ50mm以下の)アルカクランプや、薄手の長いプレートの場合は、長時間の撮影の場合たわみやクランプの固定不足が問題になることがあります。 自動導入とシステムの拡張性 初心者に優しいのは、フリーストップなのか、自動導入なのか。マニアが求めるのは、フリーストップなのか自動導入なのか。この問いに対する「正解」はたぶんないでしょう。 ただ一ついえることは、多くのユーザーが自動導入の便利さを知っていて、それを求めている、より便利な自動導入の実現のために今もどこかで製品開発が行われている、ということでしょう。ビクセン社が「総合天体望遠鏡メーカー」である限り、この事実から目をそらすわけにはいかないはずです。 何度も繰り返し書いていますが、残念ながらAPマウントは自動導入に非対応です。「スターブックテン」を接続すれば自動導入が「非公式」には可能ですが、100倍速が上限。「スターブックワン」は構造的に自動導入に対応する余地はありません(*)。 (*)外部インターフェースはST4端子のみです。 この状況を打破してほしいものです。 まとめ いかがでしたか? 約半年間ほどAPマウントを使用してきましたが、とても優秀で使いやすいシステムだと感じました。反面、細かい点?では本稿に書いたような弱点もあり、ユーザー目線で見ると?な仕様もあります。それらを差し引いても、この製品を世に送り出したビクセン社には大いなる賛辞をおくるとともに、今後の製品の改良と革新が継続されることを強く望むものです。 また、APマウントに対する評価には、誤解や認知不足もあると感じました。例えば「APは高い」という声を多く聞きますが、海外製品・国産製品の間にある一般的な価格差を抜きにすれば(これが深刻な課題であることは厳然たる事実なのですが)品質レベルも高く、決して法外に高価というわけではありません(*)。また、自分の目的をしっかり考えた上で必要なものをリストアップして積み上げてみると、APマウントが実現するソリューションの総額が、実は他社製品とさほど変わらない、むしろ安いこともあるかもしれません。 (*)細かく指摘はしませんが「確かにこれは高いよね」というところもあります。 ちょっと抽象的なことをつらつらと書きましたが、まとめていうと「APは良いもの」です。最初のボタンをかけ間違わないようにさえすれば、きっと貴方の天文ライフをより豊かにしてくれることでしょう。APマウントの「最強ぶり」が多くの方に実感されることを願って止みません^^ 「最強の赤道儀」が天文ファンを熱くする!それではまた次回お会いしましょう。 本記事は株式会社ビクセン様より機材の貸与を受け、天文リフレクションズ編集部が独自の費用と判断で作成したものです。文責は全て天文リフレクションズ編集部にあります。 記事に関するご質問・お問い合わせなどは天文リフレクションズ編集部宛にお願いいたします。 製品の購入およびお問い合わせはメーカー様・販売店様にお願いいたします。 本記事によって読者様に発生した事象については、その一切について編集部では責任を取りかねますことをご了承下さい。 特に注記のない画像は編集部で撮影したものです。 記事中の製品仕様および価格は執筆時(2019年2月)のものです。 記事中の社名、商品名等は各社の商標または登録商標です。編集部発信のオリジナルコンテンツ