皆さんこんにちは!昨年の年末に、晴れ間と暗い空を求めて南紀に行ってきました!幸いにも好天に恵まれ、素晴らしい星空に出会うことができました。以下、その撮影行のレポートです。

撮影のねらい

晴れ間と暗い空を求めて

https://www.windy.com

2018年の年末は、寒波の襲来で日本海側だけでなく、太平洋側も天気予報はあまり良いものではありませんでした。

そこで目を付けたのが南紀。南紀は冬型気圧配置の際に好天が多いことは良く知られていますが、今回は特に串本と新宮の間が好天の予報。季節風がちょうどこのエリアを回り込むように吹いているようです。南紀は以前すさみ町に行ったことがあり、暗い空と冬でも暖かい気候は確認済み。



ねらいは結果的に大成功。昼間少し雲が出ていても夕方以降はほとんど快晴。ラッキー!

ガチらない星景の旅

2019.12.28 22:32 ソフトフィルターを付けて20秒露出の1枚撮り。ディープスカイは「腰で撮れ」、星景は「足で撮れ」。EOS6D(SEO-SP4) シグマ24mmF1.4Art F2.8 20秒 ISO3200 プロソフトンA

帰省の寄り道でもあり、あまりでかいガチ機材は積み込めません。月齢的にも下弦ごろで、一晩ディープスカイを追いかけるタイミングではありません。そこで、「追尾しない星景撮影」をメインに想定しました。

ウィルタネン彗星も!

でもウィルタネン彗星も追いかけたい・・・実は赤道儀も2セット車に積んでありました^^ 状況によってはウィルタネン彗星もじっくり狙おうかと・・・

ロケーション

まずは机上ロケハン

Googleマップとストリートビューは超強力なロケハンツール。根気さえあれば、車で行ける場所や絶景スポットのほとんどが、ネットだけで下調べが可能です。南紀に行くことを決めたのは直前だったのであまり綿密には絞り込めなかったのですが、ほぼ事前調査どおりの成果が得られました。

https://www.google.com/maps/@33.5015669,135.8418428,16113m/data=!3m1!1e3

まず、GoogleMapの航空写真でざっくりエリアを絞り込みます。街から離れていて、見晴らしが良さそうなエリアを探します。(A)のエリアは天気も安定してそうな場所で、国道・集落から離れている上、海岸沿いの道には街灯がなさそう。

次はストリートビュー。視界が開けているかどうか、駐車スペースがあるかどうか、街灯の有無など、イケてるポイントがあるかを物色。このエリア、視界は今一つかもしれませんが、少なくとも南はOK。これが第一候補。

(B)のエリアは串本から8キロほど、ちょっと街灯りの影響が心配ですが、なかなか見晴らしのいい展望台がある感じ。アプローチは一部徒歩にはなりますが、星景オンリーなら大した距離ではなさそう。

ストリートビューでは一般ユーザが投稿した全天写真が充実していて、この場所のような眺めの良いポイントでは、かなりリアルにロケーションを把握できます。ほかにも(C)地点や潮岬近辺などを候補としました。

リアルロケハンも大事

この反対側にトイレがありました。トイレの確認はストリートビューでは限界があります。

ネットだけのロケハンでいきなり夜間に突撃することもあるのですが、現地ロケハンも重要です。特に徒歩の移動が入る場合は、昼間歩いているかどうかで行動のスピーディさも安全面も大きな差が出ます。B地点では、この駐車場からの遊歩道がほんとうに真っ暗。リアルロケハンなしではくじけていたかも。

2018.12.28 20:13 α7S(フィルターレス改造) シグマ24mmF1.4Art F1.4 20秒 ISO3200 プロソフトンA

B地点のアプローチの遊歩道で撮影。街灯皆無で真っ暗。木々の間からこぼれる星空が感動的で、期待がMAXに膨らみます。でも、空の暗い場所はこの手の林の中が鬼門。事前ロケハンなしでは道に迷う危険もあります。

南側が見晴らせる絶好の場所。ストリートビューでは、こういったスポットの存在はわかるのですが、真っ暗な現地では下見なしにはたどり着けなかったでしょう。やはりリアルロケハンは重要です。

ストリートビューでチェックしていた場所。リアルロケハン時にはスマホが一番便利。パノラマで撮影しておけば旅のいい記念にもなります^^

串本そのほか

潮岬の本州最南端の碑。残念ながら夜に立ち寄ることができなかったのですが、見晴らし・ロケーションは最高。近くに観光タワーがあってけっこう夜は明るいのかもしれませんが、南天の星景狙いならアリでしょう。

超有名絶景スポット橋杭岩。夜間は照明でびっくりするほど明るく、撮影はパスして素通り^^;;

撮影記とリザルト

今回は2晩南紀に滞在しました。星撮り旅行では宿の確保と活用に難しいところがあります。夜間の外出が主になるので単泊だと何のために泊まっているのかわからなくなってしまいます。野宿(車中泊)も頭をよぎりましたが、お安い宿を連泊で確保しました。

月明かりの星景

今回の最大の期待は「月明かりの星景」。月の出の時刻は12月27日が22:04、28日が23:10です。

12.27 21:53 α7S Tamron15-30mmF2.8 絞り開放 10秒 ISO8000

月の出10分前。低空の靄が月に照らされ赤く染まってきました。

12.27 22:12 α7S Tamron15-30mmF2.8 絞り開放 30秒 ISO6400

月の出8分後。東の空は暁のように真っ赤に染まりました。このカメラ(α7S)は電子接点非連動のマウントアダプタを使用しているので、絞り値もレンズ情報もEXIFに記録されないのが難点。

12.27 22:39 α7S Tamron15-30mmF2.8 絞り開放 8秒 ISO2000

月が顔を出してきました。このくらいになると空の背景は写真ではほぼ青空になります。日の出前の空の色の変化は眺めていて飽きないものですが、月の出前の空の色の変化は肉眼ではなかなか判別できません。でも写真に撮ると、微妙な色の変化がわかるのが面白いところ。

ここでひとつ声を大にして叫びたいことがあります。薄明の空の美しさも、月に照らされた空の美しさも、人工光のない場所ほど美しい。漆黒の星空の美しさは、いってみれば「新鮮な魚を刺身で食す」ようなもの。通は「新鮮な魚こそ火を通して食す」のです。人工光のない場所でこそ、美しい薄明や美しい月夜を楽しんでほしいと思うものです。

2018.12.28 23:03 EOS6D(SEO-SP4) タムロン15-30mmF2.8 F2.8 ISO400 10分

こちらは次の日。月の出直前に、1枚撮りで東の空が赤く染まってくるところを狙いました。

2018.12.28 23:12α7S EF8-15mmF4L 15mm 30秒 ISO5000

一つ上の1枚撮りをまさに撮影中の風景。半月くらいであれば空の条件が良ければ普通に天の川が写ります。夏の天の川もこの場所から撮ってみたくなりますね^^

ローアングルでセルフィー

今回の2つ目のテーマは「記念写真」。星ナビ2月号に新宿健さんが「私的星空写真・星と友だち」という素晴らしい記事を書かれています。天リフも絶賛記念写真推し。「友だちがいなくても」記念写真は楽しく撮れます^^

2018.12.28 23:09 α7S EF8-15mmF4L 15mm 30秒 ISO8000

月の出待ちのセルフィー。赤く染まる東の空、昇ってきたしし座と北斗七星。星空愛、三脚愛が伝わるでしょうか^^

2018.12.28 21:12 α7S EF8-15mmF4L 15秒 ISO16000

昼間にロケハンして狙っていたポイント。思い切ったローアングルから。天の川がちょうどいい角度になりました。人物撮りをする場合、被写体ブレを押さえる意味でも、モデルの負担の意味でも^^;;露出時間は短めが吉です。α7Sの威力でISOを思い切って16000に上げました。このような高感度域ではやはりα7Sがベストカメラですね。

カメラを高い位置にすれば海も入ったのですが・・・背の高い三脚が1本だけだったので断念、残念。「自撮り記念写真」は、カメラも三脚ももう1セット必要なのが悩みの種。

α7S サムヤン35mmF1.4 10秒 ISO25600

昼間のロケハンの結果、三脚は大小の2本を用意しました。その一つがこれ。スリックのミニ三脚です。これまで実戦稼働がなかった死蔵品だったのですが、使ってみるとなかなか具合がよろしい。自撮りで星を撮る際にはローアングルで寄って撮るのが有効だと感じました。ただしバリアングルでないカメラでは使いづらいことこの上なし。

使用したのはHPにはもう掲載もされていない古い安物で、かなりフニャフニャなのですが、意外とぶれません。嵩張るものでもないので、これからは常時携帯予定です。

逆に、今回のように胸くらいの高さの手すりがあるロケーションでは、普通に星景を撮るには地上高の高い三脚が便利です。筆者が使用しているのは「スリックカーボンマスター913PRO」という旧モデルですが、地上高が自分の身長くらいまで延びるものが1本あると用途が広がります。

国産品の場合はお値段もけっこうしますし、必要になる頻度はそれほど高くないのですが、このクラスの三脚は安定性も高くポータブル赤道儀用にも使えます。

2018.12.28 21:12 α7S サムヤン35mmF1.4 15mm 8秒 ISO6400

星見で一服。計算通りの光の軌跡^^

円周魚眼レンズで全天撮影

ほとんど全ての撮影で携行しているこのレンズ。円周と対角の魚眼が両方で使えるのがポイント。

2018.12.28 22:25 α7S EF8-15mmF4L 30秒 ISO8000

円周魚眼を天頂に向けて全天撮影。2日目の紀伊大島(B地点)で。撮影地の天気や光害の様子が一目瞭然。だいぶ撮影地のコレクションが溜まってきました。未公開のものを含め、どこかでまとめ直してみたいと思っています。

2018.12.28 21:08 EOS6D(SEO-SP4)  EF8-15mmF4L 30秒 ISO6400

F値が4と決して明るくはないので、30秒一枚撮りだと星の写りは正直今一つなのですが、記録写真と見れば十二分の画質。THETAもありなんですが、やっぱり画質は雲泥の差です。いつかEマウントのM4/3用の8mmF1.8が欲しいという野望はあるのですが。

2018.12.27 20:40 α7S  EF8-15mmF4L 30秒 ISO12800

記念写真用にも最適。円周魚眼のいいところは構図が適当でもそれなりに写るところ^^;;とにかくサッと向けて30秒。できるだけまめに撮るようにしています。

パノラマ撮影

2018.12.28 20:33 EOS6D(SEO-SP4) シグマ24mmF1.4Art F2.2 25秒 2*8パノラマ合成 プロソフトンA

パノラマ合成も撮ってみました。冬から夏の天の川アーチです。パノラマ合成は赤道儀なしの固定撮影でもかなり強力に、高画質で天の川を撮ることができます。

この作例は24mm広角レンズで横8コマ、縦2コマの画像を合成(ステッチ:つなぎ合わせること)しています。処理の詳細は後の項で触れるとして、ここでは撮影方法を。

筆者が使用しているパノラマ撮影システム。ありあわせのアルカスイス互換プレートとローテーターを組み合わせたもの。買いそろえても2万円くらい。三脚のすぐ上には「レベラー」という水平出しをするための機材が付いていますが、現在はほとんど使っていません。ソフトでステッチする場合、水平は後から修正できるためです。

パノラマ撮影では「パノラマ雲台(まんまですけど)」という専用の機材を使用します。この機材は、水平方向と垂直方向にそれぞれ目盛がついた回転軸があって、一定の間隔(この作例では水平30°間隔、垂直45°間隔)でずらしながら撮影していきます。

水平の一回転360°を、いくつに分割するかを選んで、赤いつまみをその位置にねじ込むことでクリックストップの角度を変えられるようになっています。

パノラマ撮影機材で一番肝になるのはこの「ローテーター」。水平方向に回転させるパーツです。パノラマ撮影では「正確に・素早く」「一定角度刻みでカメラを水平・ないしは上下に回転させる」ことが重要です。そのためローテーターには「クリックストップ」が付いていて、目盛を見なくても正確な位置で止まるようになっています。

筆者が使用しているのは上の製品の前のモデル「DH-55」です。まあ激安品なのですが^^^;; 気温が高いときはまあなんとか使えます。でもクリックストップはあまり正確ではありません。気温が低くなるとグリスが堅くなってクリック感がほぼ消失します。今回の気温は2度ほど。目盛を目視して角度を合わせました^^;;;

これからパノラマ撮影を始めてみたい方には、お金がかかっても「面倒のない良いものを使いたい」のであれば、NodalNinjaのような専用のシステムをオススメします。筆者のようにあり合わせで安いもので済ますことも可能なのですが、その場合は「ローテーター」だけはケチらないほうが良いでしょう。

ノーダルポイントがあっていないのはご愛敬^^近景が含まれなければ、あまり神経質になる必要はないようです。

パノラマを撮影中。8*2=16枚の撮影時間は約10分弱。この程度までならあまりガチな感じはしませんが、全天パノラマとかになるとかなり変態性を帯びてきます。

筆者のパノラマ撮影の鉄板レンズはシグマ24mmF1.4Art。

パノラマ撮影用のシステムは、普通に星景を撮影するにもとても便利。バランスをきっちり合わせておけば、「フリーストップ」で向けたい方向に向けることができます。1枚撮りで使うもよし、横2枚、3枚といった少枚数のパノラマを撮るのもよし。パノラマ合成を前提にすれば、明るい単焦点レンズ1本でほとんどの星景写真がカバーできます。

お手軽星景・シグマ24mmF1.4Artとタムロン15-30mmF2.8

2018.12.28 20:21 α7S(フィルターレス改造) シグマ24mmF1.4Art F1.4 20秒 ISO3200 プロソフトンA

筆者の一番のお気に入り星景レンズはシグマの24mmF1.4Art。ソフトフィルターを付けたお手軽星景の場合は、この作例のように解放F1.4でも使えます。ソフトフィルターなしでF2.8まで絞れば、シャープで繊細な天の川を撮ることも可能。

2018.12.28 21:27 EOS6D(SEO-SP4)) シグマ24mmF1.4Art F2.5 25秒 ISO6400 プロソフトンA

空の暗い場所での星景写真の基本は「F2.8 ISO3200 30秒」と言われますが、地上の風景は露出不足になりがち。そんな場合でも「解放F1.4」の明るさがあれば自由度が大いに上がります。

2018.12.28 20:58 α7S タムロン15-30mmF2.8 15mm F2.8 20秒 ISO16000

しかし「焦点距離24mm」では狭いと感じるケースも星景写真では多くあります。水平線を入れて地上の風景もそれなりに取り込むと、低い星空しか撮ることができません。

この作例はタムロンの15-30mmF2.8ズームの広角端で撮影したもの。15mmあれば、もっと広く星空を写し込むことができます。

2018.12.28 22:49 EOS6D(SEO-SP4) タムロン15-30mmF2.8 15mm F2.8 30秒 ISO3200

縦位置にすれば、南中前後の冬の大三角も、地平線も入れて余裕で撮影可能。一般的には24mm単焦点のF1.4よりも、ズームの15-30mmF2.8の方が汎用性は高いでしょう(*)。

(*)出目金レンズの場合前玉が曇りやすいとか、タムロンの15-30ズームは重さが1kg以上もあって巨大だ、など欠点もありますが。



赤道儀なしの固定撮影はお手軽ですが、限界もあります。広角15mmであっても、30秒露出では、等倍ではしっかり流れてしまいます。

糠星がびっしりのサラサラの天の川を表現したい場合は、やはり赤道儀で追尾してコンポジットする(そして風景はマスクや専用ソフトなどで合成)という方向しか現状はありません。また、最近の明るい広角レンズはスケアリング(センサー面の傾き)やフランジバック(レンズマウントからセンサーの距離)の誤差に敏感で、大なり小なり片ボケや片流れが出ることが多く、機材のコンディションも重要になります。

「ガチの広角星景(星野)」は、実は一番難しい分野ではないかと最近感じています。

ウィルタネン彗星

まだまだ明るいウィルタネン彗星も撮りました。

2018.12.27 20:01〜 EOS6D(SEO-SP4) SIGMA105mmF1.4Art F2.0 60sec*102
恒星基準コンポジット画像に彗星基準コンポジットの彗星を比較明合成
AP赤道儀

シグマ105mmF1.4Artで100分。ガチです。色むらを取り切れなくて、分子雲の彩度を下げてしまった敵前逃亡画像処理ですが・・・右上の輝星はカペラ、左が北の構図です。

彗星基準

彗星基準画像をさらにさらに強調したもの。なんとなく、3時前の方向の細いイオンテイルと、1時半から2時半くらいの扇形のダストテイルが見えるような?いずれにしても、かなり楽しめました。

2018.12.27 21:41 α7S サムヤン35mmF1.4 F5.6 2.5秒ISO40000

SVBONYのSV-21双眼鏡でウィルタネン彗星観望中。まだまだ大きく明るく見えていました。

この画像を得るまでの20分間の苦闘の記録w。寄りの自撮りは難しい・・・ピントと構図が合うまで根気よく繰り返し・・おそらくこういう状況では、スマホのWiFiコントロールアプリ(キヤノンのCamera Connectなど)が使えそうなのですが、次回に試してみようと思います。

ウィルタネン彗星を撮影中のAP赤道儀とシグマ105mmF1.4Art。

円周魚眼で。ウィルタネン彗星も小さく写っていました。

画像処理ピックアップ

今回撮影した画像の処理の中で、読者の参考になりそうなトピックをごく簡単にご紹介しておきます。

ICEによるパノラマ合成

パノラマ合成には主にICE(Image Composite Editor) を使用しています。ICEはMicroSoft社の製品で、Windows専用ですが無料でダウンロードして使用できます。

NJ-CRUCKER・複数画像を合成してパノラマ写真を作る Image Composite Editor
https://nj-clucker.com/microsoft-image-composite-editor/

撮影した18枚の元画像(rawファイル)。この状態で合成することもできるのですが、いったんCamera RawでTIFFに変換します。

目的はレンズのプロファイル補正(周辺減光と歪曲収差)。厳密に比較したことはないのですが、この方が画像がキレイに繋がるであろうという意図です。

ICEを起動して、18枚の元画像をアプリにドロップすると、まず「1.IMPORT」の画面が開きます。この画面には2つのモードがあって「Simple Panorama」ではソフトが全て自動でつなぎ合わせを判断して処理します(*)。

(*)枚数が少ない場合はこれでもたいていうまくいきます。

今回のように一定角度でずらしながら多数枚撮影した画像の場合は「Structured panorama」を使用します。このモードでは、画像の縦横の枚数と重ね合わせの「のりしろ(Overlap)」の設定をします。「Auto Overlap」でうまくいく場合も多いのですが、ときどきハズします。そのときは「Preview Overlap」のチェックをonにして、なんとなくうまくいきそうな値を指定しましょう。カメラの画角とずらし角がわかれば、計算で指定することもできます(*)。

(*)やったことがないのですがそのはずです^^;;;

次に「2.STITCH」をクリックします。すると、画像が読み込まれて様々な「投射方法(Projection)」を選ぶことが可能になります。上の画像では「魚眼(Fisheye)」を選んでいます。

自分の仕上がりイメージに合わせたProjectionをどう選択するのかが、ICEの最大のポイントです。筆者はFisheye、Mercator、Spherical、Perspectiveをよく使用しますが、正直なところあんまりよくわかっていません^^;; あれこれ試してみてください。

この先の「3.CROP」はトリミングの指定、「4.EXPORT」は完成画像のファイル書き出しです。これは使ってみればわかります。ただし、EXPORTのファイル形式は星景写真の場合後処理がほぼ前提になるので、jpegではなく16bitTIFFにするのが吉です。

もう少しICEの操作イメージがわかるようなキャプチャ動画です。雑な作りですみません。

「FishEye」でProjectionした作例。実はFishEyeが一番使える投射法かもしれません。水平線を自在に補正して真っ直ぐにできるのがいいところ。ただし、この作例のように天頂付近を手抜きすると「穴」が空きますorz。水平、45°に加えて90度を撮っておけばふさがったんですが。


「Mercator」でProjectionした作例。そう、地図の「メルカトル法」と同じです。このため、天頂に近づくほど激しく拡大されます。カリフォルニア星雲がノヴァヤゼムリャみたいですね^^;;

いわゆる「天の川アーチ」的な使い方はICEの活用のほんの一部。Projection指定の画面は、いってみれば撮影時の星空をVRで眺めるようなもの。家に帰ってPCの前で、自由に構図を切り出すことができます。この画像は冬のダイヤモンドを広く切り出したもの。15mm広角レンズよりはるかに広い範囲が写っていて、長辺1万ピクセル越えの高精細度。まだまだトリミングする余裕があります。

ちなみに、今回アップしている一連の星景写真では、傾斜マスクによるかぶり(光害)補正は一切行っていません。凄いぜ、南紀の星空。低空では街灯りが少しあるものの、ほぼ漆黒の空。冬場は南紀だ。そうだ、南紀に行こう。でも遠いです(*)^^;;

(*)大阪、奈良、京都、名古屋のどこから行っても250km4時間は見込んでおく必要があります。

今回はざっくりの雑な解説でしたが、ICEを使用したパノラマ合成については「画像処理ワンポイント」でいずれ詳しく解説したいと思います。

シャドーの持ち上げ

ディープスカイの場合、一晩で多くても数対象くらいしか撮れないので、画像処理でとことん追い込む時間がとれるのですが、星景写真の場合はコマ数が多くなるので、ある程度パターンにはめ込んで処理しないと、未処理のraw画像が溜まる一方になってしまいます^^;;

そこで今回は、できるだけPhotoshopのCamera raw現像の時点で仕上がりレベルに近づけられるように留意して処理しました。これはデフォルトパラメータの状態。

 

表示されていないタブで輝度ノイズを15、色ノイズを20補正しています。

パラメータ調整後。やることといえば、カラーバランスを調整する・露出を補正する・シャドウを持ち上げる・明瞭度を上げる・彩度を上げる、だけなんですが。

大事な一点。シャドーが黒くつぶれがちな暗黒の空の条件では、シャドウの持ち上げが効果的です。これと明瞭度の調整で、だいたいなんとかなりました。

【画像処理ワンポイント(2)】星景・シャドーを持ち上げる【初級向け】

この作例の場合は、水平を補正して少しトリミングし(*)、もう少し彩度とカラーバランスを補正して仕上がりとしました。

(*)水平出しや構図の追い込みについては「撮って出し派」の熱い?意見も耳にしますが、要するにどこかで解決すればいいわけです。筆者はこれまで後補正でやればいいや派でしたが、最近は画像処理を少しでも効率化したいという意味で、撮影時にできることは撮影時にできるだけ追い込んでおきたいと考えるようになりました。

カメラ内HDR処理

2018.12.27 22:55 EOS5Dmk3 サムヤン35mmF1.4 1/5秒,1.6秒,13秒  ISo1600 カメラ内HDR合成

すっかり月が昇ったところ。普段はあまり使わないカメラ内HDRですが、こういうシーンでは役に立ちます。月の形が完全に潰れることなく、シャドーもそこそこ出てきました。

EOS5Dmk3のカメラ内HDR合成の使い方は簡単。HDRの露出幅(この作例では3段)を設定するだけ。元のRaw画像も残るので、後でDPP(EOS付属のraw現像ソフト)を使用して別のパラメータで合成することもできます。

まとめ

ペガサスの四辺形と火星。夏はあんなに明るかった火星も、すっかり普通の星になりました。それにしても動きが速い惑星です。12.28 21:57 EOS6D(SEO-SP4) シグマ24mmF1.4Art F2.5 20秒 ISO3200 プロソフトンA

いかがでしたか?

今回も盛り沢山の内容で、最後まで見ていただいてありがとうございます。いろいろ充実しまくった撮影行でしたが、もっと根性を出して月が昇った後の星景もいろいろ撮ればよかったかなとも思うのですが、まあこのくらいの分量が限界ですかね^^;

このノリで続けていいのやら、自問自答するところもあるのですが「こんなことを書いてほしい」「こんな風にしてほしい」という要望があれば、ぜひコメントくださいね!

最後に一言。星空遊びは、仲間とワイワイやっても楽しいし、少人数でしっぽりやっても楽しい。そしてボッチでも楽しい。星空セルフィーがもっと広がることを願うものです^^

それでは、皆様のご武運をお祈り申し上げます。また次回お会いしましょう!


・注記のない写真は編集部で撮影したものです。

・機材協力:

  • (株)ビクセン[AP赤道儀(ノーマル仕様)]

  https://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2019/01/fc6927a4cd7fc6f068de9eb5d3ae4aff-3-1024x538.jpghttps://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2019/01/fc6927a4cd7fc6f068de9eb5d3ae4aff-3-150x150.jpg編集部星景写真実践・天体写真撮影記皆さんこんにちは!昨年の年末に、晴れ間と暗い空を求めて南紀に行ってきました!幸いにも好天に恵まれ、素晴らしい星空に出会うことができました。以下、その撮影行のレポートです。 撮影のねらい 晴れ間と暗い空を求めて 2018年の年末は、寒波の襲来で日本海側だけでなく、太平洋側も天気予報はあまり良いものではありませんでした。 そこで目を付けたのが南紀。南紀は冬型気圧配置の際に好天が多いことは良く知られていますが、今回は特に串本と新宮の間が好天の予報。季節風がちょうどこのエリアを回り込むように吹いているようです。南紀は以前すさみ町に行ったことがあり、暗い空と冬でも暖かい気候は確認済み。 ねらいは結果的に大成功。昼間少し雲が出ていても夕方以降はほとんど快晴。ラッキー! ガチらない星景の旅 帰省の寄り道でもあり、あまりでかいガチ機材は積み込めません。月齢的にも下弦ごろで、一晩ディープスカイを追いかけるタイミングではありません。そこで、「追尾しない星景撮影」をメインに想定しました。 ウィルタネン彗星も! でもウィルタネン彗星も追いかけたい・・・実は赤道儀も2セット車に積んでありました^^ 状況によってはウィルタネン彗星もじっくり狙おうかと・・・ ロケーション まずは机上ロケハン Googleマップとストリートビューは超強力なロケハンツール。根気さえあれば、車で行ける場所や絶景スポットのほとんどが、ネットだけで下調べが可能です。南紀に行くことを決めたのは直前だったのであまり綿密には絞り込めなかったのですが、ほぼ事前調査どおりの成果が得られました。 まず、GoogleMapの航空写真でざっくりエリアを絞り込みます。街から離れていて、見晴らしが良さそうなエリアを探します。(A)のエリアは天気も安定してそうな場所で、国道・集落から離れている上、海岸沿いの道には街灯がなさそう。 次はストリートビュー。視界が開けているかどうか、駐車スペースがあるかどうか、街灯の有無など、イケてるポイントがあるかを物色。このエリア、視界は今一つかもしれませんが、少なくとも南はOK。これが第一候補。 (B)のエリアは串本から8キロほど、ちょっと街灯りの影響が心配ですが、なかなか見晴らしのいい展望台がある感じ。アプローチは一部徒歩にはなりますが、星景オンリーなら大した距離ではなさそう。 ストリートビューでは一般ユーザが投稿した全天写真が充実していて、この場所のような眺めの良いポイントでは、かなりリアルにロケーションを把握できます。ほかにも(C)地点や潮岬近辺などを候補としました。 リアルロケハンも大事 ネットだけのロケハンでいきなり夜間に突撃することもあるのですが、現地ロケハンも重要です。特に徒歩の移動が入る場合は、昼間歩いているかどうかで行動のスピーディさも安全面も大きな差が出ます。B地点では、この駐車場からの遊歩道がほんとうに真っ暗。リアルロケハンなしではくじけていたかも。 B地点のアプローチの遊歩道で撮影。街灯皆無で真っ暗。木々の間からこぼれる星空が感動的で、期待がMAXに膨らみます。でも、空の暗い場所はこの手の林の中が鬼門。事前ロケハンなしでは道に迷う危険もあります。 南側が見晴らせる絶好の場所。ストリートビューでは、こういったスポットの存在はわかるのですが、真っ暗な現地では下見なしにはたどり着けなかったでしょう。やはりリアルロケハンは重要です。 ストリートビューでチェックしていた場所。リアルロケハン時にはスマホが一番便利。パノラマで撮影しておけば旅のいい記念にもなります^^ 串本そのほか 潮岬の本州最南端の碑。残念ながら夜に立ち寄ることができなかったのですが、見晴らし・ロケーションは最高。近くに観光タワーがあってけっこう夜は明るいのかもしれませんが、南天の星景狙いならアリでしょう。 超有名絶景スポット橋杭岩。夜間は照明でびっくりするほど明るく、撮影はパスして素通り^^;; 撮影記とリザルト 今回は2晩南紀に滞在しました。星撮り旅行では宿の確保と活用に難しいところがあります。夜間の外出が主になるので単泊だと何のために泊まっているのかわからなくなってしまいます。野宿(車中泊)も頭をよぎりましたが、お安い宿を連泊で確保しました。 月明かりの星景 今回の最大の期待は「月明かりの星景」。月の出の時刻は12月27日が22:04、28日が23:10です。 月の出10分前。低空の靄が月に照らされ赤く染まってきました。 月の出8分後。東の空は暁のように真っ赤に染まりました。このカメラ(α7S)は電子接点非連動のマウントアダプタを使用しているので、絞り値もレンズ情報もEXIFに記録されないのが難点。 月が顔を出してきました。このくらいになると空の背景は写真ではほぼ青空になります。日の出前の空の色の変化は眺めていて飽きないものですが、月の出前の空の色の変化は肉眼ではなかなか判別できません。でも写真に撮ると、微妙な色の変化がわかるのが面白いところ。 ここでひとつ声を大にして叫びたいことがあります。薄明の空の美しさも、月に照らされた空の美しさも、人工光のない場所ほど美しい。漆黒の星空の美しさは、いってみれば「新鮮な魚を刺身で食す」ようなもの。通は「新鮮な魚こそ火を通して食す」のです。人工光のない場所でこそ、美しい薄明や美しい月夜を楽しんでほしいと思うものです。 こちらは次の日。月の出直前に、1枚撮りで東の空が赤く染まってくるところを狙いました。 一つ上の1枚撮りをまさに撮影中の風景。半月くらいであれば空の条件が良ければ普通に天の川が写ります。夏の天の川もこの場所から撮ってみたくなりますね^^ ローアングルでセルフィー 今回の2つ目のテーマは「記念写真」。星ナビ2月号に新宿健さんが「私的星空写真・星と友だち」という素晴らしい記事を書かれています。天リフも絶賛記念写真推し。「友だちがいなくても」記念写真は楽しく撮れます^^ 月の出待ちのセルフィー。赤く染まる東の空、昇ってきたしし座と北斗七星。星空愛、三脚愛が伝わるでしょうか^^ 昼間にロケハンして狙っていたポイント。思い切ったローアングルから。天の川がちょうどいい角度になりました。人物撮りをする場合、被写体ブレを押さえる意味でも、モデルの負担の意味でも^^;;露出時間は短めが吉です。α7Sの威力でISOを思い切って16000に上げました。このような高感度域ではやはりα7Sがベストカメラですね。 カメラを高い位置にすれば海も入ったのですが・・・背の高い三脚が1本だけだったので断念、残念。「自撮り記念写真」は、カメラも三脚ももう1セット必要なのが悩みの種。 昼間のロケハンの結果、三脚は大小の2本を用意しました。その一つがこれ。スリックのミニ三脚です。これまで実戦稼働がなかった死蔵品だったのですが、使ってみるとなかなか具合がよろしい。自撮りで星を撮る際にはローアングルで寄って撮るのが有効だと感じました。ただしバリアングルでないカメラでは使いづらいことこの上なし。 使用したのはHPにはもう掲載もされていない古い安物で、かなりフニャフニャなのですが、意外とぶれません。嵩張るものでもないので、これからは常時携帯予定です。 逆に、今回のように胸くらいの高さの手すりがあるロケーションでは、普通に星景を撮るには地上高の高い三脚が便利です。筆者が使用しているのは「スリックカーボンマスター913PRO」という旧モデルですが、地上高が自分の身長くらいまで延びるものが1本あると用途が広がります。 国産品の場合はお値段もけっこうしますし、必要になる頻度はそれほど高くないのですが、このクラスの三脚は安定性も高くポータブル赤道儀用にも使えます。 星見で一服。計算通りの光の軌跡^^ 円周魚眼レンズで全天撮影 ほとんど全ての撮影で携行しているこのレンズ。円周と対角の魚眼が両方で使えるのがポイント。 円周魚眼を天頂に向けて全天撮影。2日目の紀伊大島(B地点)で。撮影地の天気や光害の様子が一目瞭然。だいぶ撮影地のコレクションが溜まってきました。未公開のものを含め、どこかでまとめ直してみたいと思っています。 F値が4と決して明るくはないので、30秒一枚撮りだと星の写りは正直今一つなのですが、記録写真と見れば十二分の画質。THETAもありなんですが、やっぱり画質は雲泥の差です。いつかEマウントのM4/3用の8mmF1.8が欲しいという野望はあるのですが。 記念写真用にも最適。円周魚眼のいいところは構図が適当でもそれなりに写るところ^^;;とにかくサッと向けて30秒。できるだけまめに撮るようにしています。 パノラマ撮影 パノラマ合成も撮ってみました。冬から夏の天の川アーチです。パノラマ合成は赤道儀なしの固定撮影でもかなり強力に、高画質で天の川を撮ることができます。 この作例は24mm広角レンズで横8コマ、縦2コマの画像を合成(ステッチ:つなぎ合わせること)しています。処理の詳細は後の項で触れるとして、ここでは撮影方法を。 パノラマ撮影では「パノラマ雲台(まんまですけど)」という専用の機材を使用します。この機材は、水平方向と垂直方向にそれぞれ目盛がついた回転軸があって、一定の間隔(この作例では水平30°間隔、垂直45°間隔)でずらしながら撮影していきます。 パノラマ撮影機材で一番肝になるのはこの「ローテーター」。水平方向に回転させるパーツです。パノラマ撮影では「正確に・素早く」「一定角度刻みでカメラを水平・ないしは上下に回転させる」ことが重要です。そのためローテーターには「クリックストップ」が付いていて、目盛を見なくても正確な位置で止まるようになっています。 筆者が使用しているのは上の製品の前のモデル「DH-55」です。まあ激安品なのですが^^^;; 気温が高いときはまあなんとか使えます。でもクリックストップはあまり正確ではありません。気温が低くなるとグリスが堅くなってクリック感がほぼ消失します。今回の気温は2度ほど。目盛を目視して角度を合わせました^^;;; これからパノラマ撮影を始めてみたい方には、お金がかかっても「面倒のない良いものを使いたい」のであれば、NodalNinjaのような専用のシステムをオススメします。筆者のようにあり合わせで安いもので済ますことも可能なのですが、その場合は「ローテーター」だけはケチらないほうが良いでしょう。 パノラマを撮影中。8*2=16枚の撮影時間は約10分弱。この程度までならあまりガチな感じはしませんが、全天パノラマとかになるとかなり変態性を帯びてきます。 パノラマ撮影用のシステムは、普通に星景を撮影するにもとても便利。バランスをきっちり合わせておけば、「フリーストップ」で向けたい方向に向けることができます。1枚撮りで使うもよし、横2枚、3枚といった少枚数のパノラマを撮るのもよし。パノラマ合成を前提にすれば、明るい単焦点レンズ1本でほとんどの星景写真がカバーできます。 お手軽星景・シグマ24mmF1.4Artとタムロン15-30mmF2.8 筆者の一番のお気に入り星景レンズはシグマの24mmF1.4Art。ソフトフィルターを付けたお手軽星景の場合は、この作例のように解放F1.4でも使えます。ソフトフィルターなしでF2.8まで絞れば、シャープで繊細な天の川を撮ることも可能。 空の暗い場所での星景写真の基本は「F2.8 ISO3200 30秒」と言われますが、地上の風景は露出不足になりがち。そんな場合でも「解放F1.4」の明るさがあれば自由度が大いに上がります。 しかし「焦点距離24mm」では狭いと感じるケースも星景写真では多くあります。水平線を入れて地上の風景もそれなりに取り込むと、低い星空しか撮ることができません。 この作例はタムロンの15-30mmF2.8ズームの広角端で撮影したもの。15mmあれば、もっと広く星空を写し込むことができます。 縦位置にすれば、南中前後の冬の大三角も、地平線も入れて余裕で撮影可能。一般的には24mm単焦点のF1.4よりも、ズームの15-30mmF2.8の方が汎用性は高いでしょう(*)。 (*)出目金レンズの場合前玉が曇りやすいとか、タムロンの15-30ズームは重さが1kg以上もあって巨大だ、など欠点もありますが。 赤道儀なしの固定撮影はお手軽ですが、限界もあります。広角15mmであっても、30秒露出では、等倍ではしっかり流れてしまいます。 糠星がびっしりのサラサラの天の川を表現したい場合は、やはり赤道儀で追尾してコンポジットする(そして風景はマスクや専用ソフトなどで合成)という方向しか現状はありません。また、最近の明るい広角レンズはスケアリング(センサー面の傾き)やフランジバック(レンズマウントからセンサーの距離)の誤差に敏感で、大なり小なり片ボケや片流れが出ることが多く、機材のコンディションも重要になります。 「ガチの広角星景(星野)」は、実は一番難しい分野ではないかと最近感じています。 ウィルタネン彗星 まだまだ明るいウィルタネン彗星も撮りました。 シグマ105mmF1.4Artで100分。ガチです。色むらを取り切れなくて、分子雲の彩度を下げてしまった敵前逃亡画像処理ですが・・・右上の輝星はカペラ、左が北の構図です。 彗星基準画像をさらにさらに強調したもの。なんとなく、3時前の方向の細いイオンテイルと、1時半から2時半くらいの扇形のダストテイルが見えるような?いずれにしても、かなり楽しめました。 SVBONYのSV-21双眼鏡でウィルタネン彗星観望中。まだまだ大きく明るく見えていました。 この画像を得るまでの20分間の苦闘の記録w。寄りの自撮りは難しい・・・ピントと構図が合うまで根気よく繰り返し・・おそらくこういう状況では、スマホのWiFiコントロールアプリ(キヤノンのCamera Connectなど)が使えそうなのですが、次回に試してみようと思います。 ウィルタネン彗星を撮影中のAP赤道儀とシグマ105mmF1.4Art。 円周魚眼で。ウィルタネン彗星も小さく写っていました。 画像処理ピックアップ 今回撮影した画像の処理の中で、読者の参考になりそうなトピックをごく簡単にご紹介しておきます。 ICEによるパノラマ合成 パノラマ合成には主にICE(Image Composite Editor) を使用しています。ICEはMicroSoft社の製品で、Windows専用ですが無料でダウンロードして使用できます。 NJ-CRUCKER・複数画像を合成してパノラマ写真を作る Image Composite Editor https://nj-clucker.com/microsoft-image-composite-editor/ 撮影した18枚の元画像(rawファイル)。この状態で合成することもできるのですが、いったんCamera RawでTIFFに変換します。 目的はレンズのプロファイル補正(周辺減光と歪曲収差)。厳密に比較したことはないのですが、この方が画像がキレイに繋がるであろうという意図です。 ICEを起動して、18枚の元画像をアプリにドロップすると、まず「1.IMPORT」の画面が開きます。この画面には2つのモードがあって「Simple Panorama」ではソフトが全て自動でつなぎ合わせを判断して処理します(*)。 (*)枚数が少ない場合はこれでもたいていうまくいきます。 今回のように一定角度でずらしながら多数枚撮影した画像の場合は「Structured panorama」を使用します。このモードでは、画像の縦横の枚数と重ね合わせの「のりしろ(Overlap)」の設定をします。「Auto Overlap」でうまくいく場合も多いのですが、ときどきハズします。そのときは「Preview Overlap」のチェックをonにして、なんとなくうまくいきそうな値を指定しましょう。カメラの画角とずらし角がわかれば、計算で指定することもできます(*)。 (*)やったことがないのですがそのはずです^^;;; 次に「2.STITCH」をクリックします。すると、画像が読み込まれて様々な「投射方法(Projection)」を選ぶことが可能になります。上の画像では「魚眼(Fisheye)」を選んでいます。 自分の仕上がりイメージに合わせたProjectionをどう選択するのかが、ICEの最大のポイントです。筆者はFisheye、Mercator、Spherical、Perspectiveをよく使用しますが、正直なところあんまりよくわかっていません^^;; あれこれ試してみてください。 この先の「3.CROP」はトリミングの指定、「4.EXPORT」は完成画像のファイル書き出しです。これは使ってみればわかります。ただし、EXPORTのファイル形式は星景写真の場合後処理がほぼ前提になるので、jpegではなく16bitTIFFにするのが吉です。 https://youtu.be/e2vbQPXXH6U もう少しICEの操作イメージがわかるようなキャプチャ動画です。雑な作りですみません。 「FishEye」でProjectionした作例。実はFishEyeが一番使える投射法かもしれません。水平線を自在に補正して真っ直ぐにできるのがいいところ。ただし、この作例のように天頂付近を手抜きすると「穴」が空きますorz。水平、45°に加えて90度を撮っておけばふさがったんですが。 「Mercator」でProjectionした作例。そう、地図の「メルカトル法」と同じです。このため、天頂に近づくほど激しく拡大されます。カリフォルニア星雲がノヴァヤゼムリャみたいですね^^;; いわゆる「天の川アーチ」的な使い方はICEの活用のほんの一部。Projection指定の画面は、いってみれば撮影時の星空をVRで眺めるようなもの。家に帰ってPCの前で、自由に構図を切り出すことができます。この画像は冬のダイヤモンドを広く切り出したもの。15mm広角レンズよりはるかに広い範囲が写っていて、長辺1万ピクセル越えの高精細度。まだまだトリミングする余裕があります。 ちなみに、今回アップしている一連の星景写真では、傾斜マスクによるかぶり(光害)補正は一切行っていません。凄いぜ、南紀の星空。低空では街灯りが少しあるものの、ほぼ漆黒の空。冬場は南紀だ。そうだ、南紀に行こう。でも遠いです(*)^^;; (*)大阪、奈良、京都、名古屋のどこから行っても250km4時間は見込んでおく必要があります。 今回はざっくりの雑な解説でしたが、ICEを使用したパノラマ合成については「画像処理ワンポイント」でいずれ詳しく解説したいと思います。 シャドーの持ち上げ ディープスカイの場合、一晩で多くても数対象くらいしか撮れないので、画像処理でとことん追い込む時間がとれるのですが、星景写真の場合はコマ数が多くなるので、ある程度パターンにはめ込んで処理しないと、未処理のraw画像が溜まる一方になってしまいます^^;; そこで今回は、できるだけPhotoshopのCamera raw現像の時点で仕上がりレベルに近づけられるように留意して処理しました。これはデフォルトパラメータの状態。   パラメータ調整後。やることといえば、カラーバランスを調整する・露出を補正する・シャドウを持ち上げる・明瞭度を上げる・彩度を上げる、だけなんですが。 大事な一点。シャドーが黒くつぶれがちな暗黒の空の条件では、シャドウの持ち上げが効果的です。これと明瞭度の調整で、だいたいなんとかなりました。 https://reflexions.jp/tenref/orig/2018/11/26/6983/ この作例の場合は、水平を補正して少しトリミングし(*)、もう少し彩度とカラーバランスを補正して仕上がりとしました。 (*)水平出しや構図の追い込みについては「撮って出し派」の熱い?意見も耳にしますが、要するにどこかで解決すればいいわけです。筆者はこれまで後補正でやればいいや派でしたが、最近は画像処理を少しでも効率化したいという意味で、撮影時にできることは撮影時にできるだけ追い込んでおきたいと考えるようになりました。 カメラ内HDR処理 すっかり月が昇ったところ。普段はあまり使わないカメラ内HDRですが、こういうシーンでは役に立ちます。月の形が完全に潰れることなく、シャドーもそこそこ出てきました。 EOS5Dmk3のカメラ内HDR合成の使い方は簡単。HDRの露出幅(この作例では3段)を設定するだけ。元のRaw画像も残るので、後でDPP(EOS付属のraw現像ソフト)を使用して別のパラメータで合成することもできます。 まとめ いかがでしたか? 今回も盛り沢山の内容で、最後まで見ていただいてありがとうございます。いろいろ充実しまくった撮影行でしたが、もっと根性を出して月が昇った後の星景もいろいろ撮ればよかったかなとも思うのですが、まあこのくらいの分量が限界ですかね^^; このノリで続けていいのやら、自問自答するところもあるのですが「こんなことを書いてほしい」「こんな風にしてほしい」という要望があれば、ぜひコメントくださいね! 最後に一言。星空遊びは、仲間とワイワイやっても楽しいし、少人数でしっぽりやっても楽しい。そしてボッチでも楽しい。星空セルフィーがもっと広がることを願うものです^^ それでは、皆様のご武運をお祈り申し上げます。また次回お会いしましょう! ・注記のない写真は編集部で撮影したものです。 ・機材協力: (株)ビクセン  編集部発信のオリジナルコンテンツ