【星喰い】SONYにはニッチマーケットの声を聞く耳があるだろうか?
αシリーズの星喰い問題ですが、進展が2つありました。
前回の記事はこちら。
【SONY A7】怒りの星喰い現象・4秒から発現との情報
http://reflexions.jp/blog/ed_tenmon/archives/453
1,α7RIIの実写画像で検証できました。
読者の方より実写画像をご提供いただきました。α7RIIのファームバージョンは問題が出るとされる3.3です。
→おがわ けんたろう様、ありがとうございました。
画像1. α7RIIの星像比較。
FE24-70mmF2.8GM F8 ISO640 ノイズ低減なし
Camera raw現像(+2EV露出補正)
画像2.α7RII、EOS5Dsの夜景比較。
FE24-70mmF2.8GM F8 ISO640 ノイズ低減なし
Camera raw現像
読者の皆様には画像を見てご判断いただきたいところですが、編集部では以下の認識です。
・4秒露出では星喰いが出る。3.2秒では出ない
(画像1)
→極めて明るい木星では顕著な差がない
→明るいα Vir星(スピカ)は星喰いのためドーナツ化
→やや暗いδ Vir星、ηVir星は星喰いのため低輝度化
→暗い13 Vir星は星喰いのため消失(緑丸部)
・夜景においては差異の検出は困難だが、一部兆候が見られる
(画像2)
→周囲が暗く、径の小さい点像で発現。(緑丸部)
(5/19追記)
前回の記事の再掲ですが、「星喰い」現象の明らかな発現例を貼っておきます。
PetaPixel.com The Star Eater Issue: Why I No Longer Recommend Sony Cameras for Astrophotography( MAY 04, 2017) 星喰い問題:ソニーのカメラはもう天体用には全くお奨めできない |
(写真;星喰い現象の例) |
(追記終わり)
2.「SONYアルファ相談窓口」より回答がありました。
サポート窓口的には回答をそのまま公開できないポリシーとのことで、ごく短い要約ですが、
- そのような問題の存在は認識していない
- ネット上の掲示板などの情報については
ソニーとしては回答する立場にない
とのことです。
門前払いです。極めて残念な結果です。
2015年に同じく問い合わせを行った際は、この事象を開発部門にしっかり伝えます、との回答だったのですが。
やってほしいことはただ一つです。
星喰い現象の原因となる
「ノイズ低減処理」を
OFFにする設定を追加してほしい。
それだけなんです。
今回の問題は、ソニーが、もっといえばカメラ業界全体が、
ニッチなマーケットのニーズをどこまで汲み取る気があるのかどうかを示すものだと考えます。
スマートフォンがまだ普及していなかった10年前なら、「天体写真」というマーケットを意識する必要はなかったでしょう。
でも、カジュアルな写真の大半がスマートフォンに奪われた今、カメラメーカーはマーケットの維持・拡大のためには、ニッチな嗜好とニーズの集合体としての写真文化に正面から向き合う必要があるのではないでしょうか。
要するに、「天体写真のようなニッチユーザも相手にしていかないと、そのうちユーザは誰もいなくなるよ」ということです。
(プロは・・たぶん残るでしょうが・・・)
一眼デジタルマーケットに独自の技術と切り口で参入したソニーに対しては、一抹の淡い期待を持っていたのですが、それは裏切られてしまうのでしょうか。
「星喰い現象」はぶっちゃけ
夜景を含めても一般撮影には目に見えるような影響はありません。
でも、
天体写真においては明白で致命的な問題
なんです。
写す対象のほとんど全部が、周囲が暗く、径の小さい点像なんですから。
ソニーがこの問題を無視し続けるのであれば、ソニーはカメラ市場の革新者になることはできず、C社とN社との間で減っていくパイを奪い合うだけで終わることでしょう。
補足)
おがわ様よりファームの動作に関する興味深い情報を教えていただきました。長秒時にあるフィルター処理がかかっているのではないかという記事です。リンクを貼っておきます。
http://blog.kasson.com/…/sony-a7rii-long-exposure-spatial…/
https://reflexions.jp/tenref/orig/2017/05/19/514/デジタルカメラαシリーズの星喰い問題ですが、進展が2つありました。 前回の記事はこちら。 【SONY A7】怒りの星喰い現象・4秒から発現との情報 http://reflexions.jp/blog/ed_tenmon/archives/453 1,α7RIIの実写画像で検証できました。 読者の方より実写画像をご提供いただきました。α7RIIのファームバージョンは問題が出るとされる3.3です。 →おがわ けんたろう様、ありがとうございました。 画像1. α7RIIの星像比較。 FE24-70mmF2.8GM F8 ISO640 ノイズ低減なし Camera raw現像(+2EV露出補正) 画像2.α7RII、EOS5Dsの夜景比較。 FE24-70mmF2.8GM F8 ISO640 ノイズ低減なし Camera raw現像 読者の皆様には画像を見てご判断いただきたいところですが、編集部では以下の認識です。 ・4秒露出では星喰いが出る。3.2秒では出ない (画像1) →極めて明るい木星では顕著な差がない →明るいα Vir星(スピカ)は星喰いのためドーナツ化 →やや暗いδ Vir星、ηVir星は星喰いのため低輝度化 →暗い13 Vir星は星喰いのため消失(緑丸部) ・夜景においては差異の検出は困難だが、一部兆候が見られる (画像2) →周囲が暗く、径の小さい点像で発現。(緑丸部) (5/19追記) 前回の記事の再掲ですが、「星喰い」現象の明らかな発現例を貼っておきます。 PetaPixel.com The Star Eater Issue: Why I No Longer Recommend Sony Cameras for Astrophotography( MAY 04, 2017) 星喰い問題:ソニーのカメラはもう天体用には全くお奨めできない (写真;星喰い現象の例) (追記終わり) 2.「SONYアルファ相談窓口」より回答がありました。 サポート窓口的には回答をそのまま公開できないポリシーとのことで、ごく短い要約ですが、 そのような問題の存在は認識していない ネット上の掲示板などの情報については ソニーとしては回答する立場にない とのことです。 門前払いです。極めて残念な結果です。 2015年に同じく問い合わせを行った際は、この事象を開発部門にしっかり伝えます、との回答だったのですが。 やってほしいことはただ一つです。 星喰い現象の原因となる 「ノイズ低減処理」を OFFにする設定を追加してほしい。 それだけなんです。 今回の問題は、ソニーが、もっといえばカメラ業界全体が、 ニッチなマーケットのニーズをどこまで汲み取る気があるのかどうかを示すものだと考えます。 スマートフォンがまだ普及していなかった10年前なら、「天体写真」というマーケットを意識する必要はなかったでしょう。 でも、カジュアルな写真の大半がスマートフォンに奪われた今、カメラメーカーはマーケットの維持・拡大のためには、ニッチな嗜好とニーズの集合体としての写真文化に正面から向き合う必要があるのではないでしょうか。 要するに、「天体写真のようなニッチユーザも相手にしていかないと、そのうちユーザは誰もいなくなるよ」ということです。 (プロは・・たぶん残るでしょうが・・・) 一眼デジタルマーケットに独自の技術と切り口で参入したソニーに対しては、一抹の淡い期待を持っていたのですが、それは裏切られてしまうのでしょうか。 「星喰い現象」はぶっちゃけ 夜景を含めても一般撮影には目に見えるような影響はありません。 でも、 天体写真においては明白で致命的な問題 なんです。 写す対象のほとんど全部が、周囲が暗く、径の小さい点像なんですから。 ソニーがこの問題を無視し続けるのであれば、ソニーはカメラ市場の革新者になることはできず、C社とN社との間で減っていくパイを奪い合うだけで終わることでしょう。 補足) おがわ様よりファームの動作に関する興味深い情報を教えていただきました。長秒時にあるフィルター処理がかかっているのではないかという記事です。リンクを貼っておきます。 http://blog.kasson.com/.../sony-a7rii-long-exposure-spatial.../ 編集部山口 千宗kojiro7inukai@gmail.comAdministrator天文リフレクションズ編集長です。天リフOriginal
もう少し分かりやすい星の比較例あれば追加で貼った方が伝わりやすいかもですね。
ご指摘ありがとうございます。
前回の再掲ですが、before/afterのアニメgifを追加しました。
記事のまとめありがとうございました。この案件NRなのかエッジ強調なのか分かりませんが、RAWで取り戻せないと言うのが問題ですよね。夜景やソフトフィルタを用いた星景写真ではおそらく明確に比較できる写真を撮らない限り気がつかないレベルなので、底を攻め口に擦るにはそれなりの人数で膨大な作例の提示が必要と思います。ただしおそらくここからは攻めないと言う人は多いと思うので、多分修正するに至らないと思われます。残念ながらそういう機材であると割り切るしかないようです。
私も作例付けて修理対応で送付し、ほぼ門前払いをされたので、心が折れてしまいました。魅力的なレンズが出てきていて非常に心苦しいのですが、α7RIIと諸々の機材は全部処分して、レンズ購入資金に変換しようと思います。とても悔しいです。
すみません、なぜかスパム認定されていたみたいで気がつきませんでした。
今回の記事の後、αを所有されている方からの「実用上そんな問題でもないことを」的なご意見もあったり、たぶん影響の出方が違うであろうα7Sと7R、天文改造機と非改造機の比較ができていなかったり、いまだ歯切れの悪い状態ですが、ウォッチを続けたいと思います。
こんにちは、星の撮影にソニーのカメラはどうかな?と思い、ネットを検索してこの記事にあたりました。これは、遥か昔から良く知られた、「メジアンフィルター問題」です。ソニーもニコンと同じ小細工をやっていた。というのは、知りませんでした。このフィルターをかけると星がドーナツ状になります。また、偽色も出ます。ソニーのセンサーは昔からキャノンよりノイズ性能が悪かったので、RAWデータを改ざんして見かけのS/Nを良くしていました。それで海外の星のユーザーから総スカンを食っていたものです。最新のニコンカメラの事は知りませんが、DxOのデータを見ると相変わらずやっているようには感じます。メジアンフィルターはピーク性のデータをノイズと判断して平均値に置き換えるフィルターで、これを使ってホットピクセルを潰しています。これを使うと微光星のピークがカットされて星がドーナツ状になります。望遠鏡の性能が良いほど星のピーク値は高くなるので、解像度の低いニコンのD3などでは盛大に生じたものです。同時に本来はあるべきところの星の情報が消えるので、ベイヤー変換の際にRGBの値に偏りが出来、偽色が発生します。キャノンではRAWデータにはオフセットを設けて、バイアスフレームとダークフレームがきちんと減算できるようにしていますが、ニコンではオフセットゼロとしてマイナスのノイズはカットしています。そのためニコンのカメラはダーク減算がなかなか上手く行かなかったものです。なぜかというとマイナスのノイズの逆補正が出来ないからです。しかし、一般写真だと見かけ上のノイズ特性は良くなるので、ニコンはDxOの数値は良くなります。キャノンはオフセットシフトにより14ビットしかない貴重なダイナミックレンジ幅をいくらか消費しているので見かけのDxOの数値は悪くなります。ニコンでは「RAWデータにメジアンフィルターをかけている」とは絶対に認めませんが、海外の現像ソフトを制作している人たちには常識となっています。ソニーも同様なのでしようが、敷居値はニコンとは違っているかもしれませんね。この処理をしないとDxOの数値が下がるので、永久に彼らはポリシーを変えないと思います。
n2068dd様、はじめまして。コメントありがとうございます。
なるほど。DxO対策としてそういう処理を入れているのだとしたら、Rawデータの段階で処理されてしまっているのも、「設定で切り替え可能にしてほしい」という要望が無視されているのにも合点がいきます。
我々一般消費者がDxOのデータを過剰に気にするが故に、結局得られる画質が悪化してしまっているのだとしたら、なんとも皮肉の極みですね。
下記のサイトにこのあたりの事情が詳しく記載されています。
フランスのクリスチャン・ブイール氏は、天体画像ソフトのIRISの作者です。
http://www.astrosurf.com/buil/nikon_test/test.htm
http://www.astrosurf.com/buil/d70v10d/eval.htm
画素数が上がり画素ピッチが細かくなると、星像をオーバーサンプリングすることになるので、メジアンフィルターの弊害は目立たなくなります。そのため、ニコンのレンズの解像度はセンサーとの兼ね合いで高くしすぎないように設定しています。具体的にはレンズのPSFを約18ピクセルくらいでオーバーサンプリングするようにしています。このあたりの話は、ニコンの鶴田さんの著作に記述されています。(「光の鉛筆」)
理想光学系ではPSFの広がりは、10ミクロン以下になりますが、仮にピクセル間隔3ミクロンとすると4×4=16ミクロンに広がることをカメラレンズは許容していることになります。ただし、ベイヤーフィルターアレイは、色間隔が更に広いですから、ノーフィルターで偽色が発生しないということは、ニコンレンズのPSFは更に広がっているということになります。ニコンの特許の記述を見ると、「3ミクロン程度の画素間隔があれば、ローバスフィルターは不要である」とありますから、おそらくこのあたりをレンズ製造の基準としているのでしょう。実際画面の周辺では概して星はコマ収差により広がっていますから、全く問題ないのでしょう。
ソニーのカメラの場合は、また違うチューニングにしていると思われますが、興味が無かったので私は詳しくは知りません。
ご指摘の通り、αシリーズの場合高画素の7Rでは星喰いの悪影響は少なく、低画素の7Sでは影響が顕著です。7Sは画素ピッチが8.3μmですが、実写の最小星像は1ピクセル角程度になることもあり、多数枚撮影すると偽色で星の色がコマ毎に変わっていくのがわかります。
8000万画素、画素ピッチ3μmになればメジアンフィルターがかかっても天体に悪影響はほとんどなくなるのかもしれませんが、現実に7Sを使用している身としては切実な問題です。