双眼鏡はお使いですか?

双眼鏡はお持ちですか?星見に使われていますか?貴方が「眼視派」なら、たぶん何台かの双眼鏡をお持ちのことでしょう。「良く見える双眼鏡」や「冴えない双眼鏡」をひととおり体験し、「コレだ!」というお気に入りの1台(2台、3台かもしれません)がきっとあるに違いありません。

編集部の双眼鏡いろいろ。骨董品からアマゾンの最新(激安)品まで。

貴方が写真派なら・・・1台くらいはお持ちかもしれませんが、たぶん撮影のときは夜空よりもモニター画面を見ている時間の方が長いかもしれませんね。ただでさえお金のかかる天文趣味、「双眼鏡沼は・・・」と敬遠されているのかもしれません。



まだ何も機材をお持ちでない方、最近天文に関心を持って始めたばかりの方は、たぶん「星を見るのに適した双眼鏡」はお持ちでないことでしょう。最初の天文機材への思い切った投資には、高価な双眼鏡よりも小型の天体望遠鏡か一眼デジカメ入門機のほうがいいかもしれません。でも、

ものすごく安くて、そこそこ良く見える双眼鏡

があると、状況がちょっと変わってきます。今回はそんな

ものすごく安くて、そこそこ良く見える双眼鏡

のご紹介です。(大事なことなので二度いいました^^)

SVBONY SV21 42mm10倍双眼鏡

SVBONYがやってきた

今回、中国のSVBONY社(*)より双眼鏡のレビューの依頼をいただきました。

(*)SVBONY社は最近日本でも知名度の上がってきた光学機器・天文機材メーカーです。編集部でも以前「激安アイピース」を購入したことがあります。

ダハ式の口径42mm10倍。お値段はなんと激安の4250円です。このスペックの双眼鏡は、普及品でも1万円以上、高級品なら4万円を越えます(*)。

(*)最近注目の「賞月観星」の製品は27,800円。光学製品の常として、上は天井知らずです。マニアには有名な「スワロフスキー」なら30万円オーバー。

さて、この双眼鏡・・どれだけ見えるのか?早速試してみました。

実視レビュー

星空編

遠征地で撮影の合間に、SV21で木立の上で輝く火星を観望中。ダハ口径42mmは600gを切る重量、手持ちでも軽快に使えるサイズです。

実際の星空で試してみました。星空は光学製品にとっては厳しい性能チェック対象ですが、手持ちで使う場合には限界ぎりぎりの解像度はあまり影響してきません。ある程度の性能を満たしていれば、口径が一番重要な要素です。口径42mmの威力で口径20〜30mmクラスとははっきり星の数が違います。また、解像度(星の鋭さ)も、他の激安双眼鏡と比較すると中心部も周辺も、ずっと上質な見え味でした。

三脚にしっかり固定して見てみると、中心部では良像ですが視野1/2あたりから星像が崩れ始め(*)、最周辺では同心円の線状になりますが、これは超高級品以外では普通のこと。むしろこの低価格でここまで見えることには感心しました。じゅうぶん星見用として使えます。

(*)若干感覚的なものもあり、感じ方には個人差があります。

この夜の白眉は、夜明け前の南中時に見たオリオン大星雲。口径42mm10倍だと、背景の空が黒く締まって、その中で輝く中心部とぼんやり広がった羽根のような周辺部が素晴らしい!もしその場にニコンのWXがあればもっと凄かったのでしょうが、この体験を与えてくれたSV21に感謝です^^

夜露防止のため、活動中は車のシートに置いています。撮影の合間にさっと撮りだして、さっと眺める。これが編集子的には最高の双眼鏡の遊び方。

よく使う機材が良い機材である」という格言?があります。どんなに素晴らしい性能の機材であっても、大きすぎたり重すぎたりで使用頻度が低くなってしまうようでは「良い(活用している)機材とはいえない」という意味です。

編集子はこの双眼鏡のほかに、70mm15倍、50mm7倍の双眼鏡を所有しているのですが、どちらも使用頻度が低いのが実情です。性能と言うよりも、遠征にはわんさか機材を持ち出すので「お留守番」になることが多いのです。

その点SV21双眼鏡の場合は、持ち運びにも遠征地での出し入れも苦になりません。口径42mmは星見には十分な大きさ。これは新たなレギュラーメンバーになりそうです。

野球場編

現代の最大の双眼鏡需要は「コンサート」と「スポーツ観戦」。量販店に行くと、用途別・会場毎の座席別・目的別最適倍率のPOPがあるほどです。「少々手ぶれしても、お目当てのアイドル(選手)を大きく見たい」。これは自然な願望。口径42mm10倍はその点でも満足できるスペック。

今回、日本シリーズ2018第三戦に持ち込んでみました。お目当ては「お立ち台で涙を流すアライサン」です^^

中央がSVBONYの双眼鏡、SV21。

4台の双眼鏡を持ち込んでとっかえひっかえ見比べたのですが、同行した嫁(ど素人)も「これが一番良く見える」とSVBONYを指名。

左・試合開始前のセレモニー。スポットライトの当たった状態は、天体以上にコントラストにシビア。お立ち台はかないませんでしたが、今年で引退の新井さんをしっかり目に焼き付けてきました(阪神時代より一回り大きくなっていました^^;)。右は手持ちスマホコリメートで、チアガールのおねえさんはiPhoneに焼き付けました^^;;

ナイター球場では口径42mmの明るさが大いに生きます。特に、セレモニーのスポットライト照明の際は、口径20〜30mm級の双眼鏡とは大きな差を感じます。

星を見たときは最周辺の像の流れが若干気になったのですが、野球観戦ではほぼ気になりません。バックが暗いときに若干ゴースト・フレアは出るものの、十分合格点で楽しめました。

製品詳細

外観

スゴイ高級感があるわけではありませんが、外観はキレイでデザインもすっきりしています。外観だけ見ると激安品にはまったく見えません。

製品は写真の化粧箱に入っています。前後キャップ、ストラップ、取説、など写真のもの一式が付属します。(写真には写っていませんがソフトケースも付属します)

ポロ式50mm7倍(左)、ダハ式28mm10倍(右)と並べてみました。大きすぎず小さすぎず、口径42mmのダハ式双眼鏡は星見に最適です。

ポケットに入るサイズではありませんが、ダハ式のため口径42mmながらコンパクト。星を見たり薄暗いコンサート会場などでは口径42mmという大きさが生きてきます。

 

レンズは対物・接眼側とも、1面のみマルチコート。他の面は単層コートのようです。高級品ではより反射率の低いマルチコートが全面に施されていることが多いのですが、ここはさすがに仕方ありません。

接眼部を空に向けたところ。対物レンズの白い円だけが見えて他の光が一切ないのが理想的な光学系ですが、そこまでのレベルのものは高級品にもそうそうありません。

この製品の場合は、プリズム部での反射や鏡筒内の反射が見られますが、ここもまあ仕方ないといえるでしょう。他の激安品と比較しても内面反射はずっと少なくなっています。ちなみにプリズムの材質はBK7です。

見かけ視野は62度。口径は実測で41.15mm、瞳径は4.15mm、倍率は約10倍でほぼ仕様通りです。実はamazonで販売されている海外製の製品は、口径や倍率が仕様と違うことが平気であります(*)。当たり前とはいえ、仕様通りで安心です。

(*)「補足.(激安)双眼鏡比較」参照

視野周辺での像の乱れと糸巻き型の歪曲収差がありますが、この程度なら合格点といえるでしょう。

使い勝手

接眼部はアイレリーフ(接眼レンズから眼の位置までの長さ)を微調整できるようになっていて、メガネ着用時でも覗きやすくなっています。この機構がない場合、ゴム見口を折り返して何段階かに切り替える仕様が多いのですが(*)、こちらの方が圧倒的に使いやすくなっています。

(*)他の激安双眼鏡をいくつか購入して比べて見ましたが、廉価品のゴム見口はうまく折りたためないものが多く、かなり使いづらい気がしました。補足.(激安)双眼鏡比較参照。

対物側のキャップはなくさないように支持部が付いています。取り外すことも簡単。

ピント調節の繰り出し部はスムーズ。左右の視度調整を行うリングもほどよい硬さでした。



市販の汎用アダプタを使用し、双眼鏡を三脚に固定することができます。このくらいの重量なら手持ちでもなんとかなりますが、じっくり腰を据えて見たいときに三脚に固定できるのは嬉しいところ。

総合評価

SV21双眼鏡を高級品と比較すると見劣りする部分があるのは仕方ありません。肥えたマニアを「光学性能で」唸らせるためのものではないのです。でも、双眼鏡に必要な部分はきちんと押さえています。実際に使ってみて「これはちょっと・・」という点はありませんでした。むしろ「この値段でよくぞここまでできている」というべきでしょう(*)。

(*)その意味では、双眼鏡マニアもぜひ一度覗いてみて、コスパの高さに唸ってほしいと思います^^

さらに、SVBONY社はサポートにも力を入れていて、光軸のずれなどのトラブルがあった場合、無償で交換に応じているそうです。当たり前と言えば当たり前なのですが、それがきちんとできていることは大きな評価ポイントでしょう(*)。

(*)低価格の双眼鏡の場合、製造レベルでの品質のばらつきも多いようです。本来はきちんと検品されるべきなのですが、トラブル時の対処を迅速・確実にすることでそれをカバーするのも、ひとつの考え方だと思います。

今回レビューした双眼鏡は「口径42mm10倍」です。星見には「瞳径5mm」が良いといわれていて(*1)、その意味では10倍よりも8倍のほうがいいのかもしれませんが、星見以外の用途では10倍の「大きく見える」ことは重宝します。また、低価格の双眼鏡の場合、低倍率では見かけ視野が狭めになることが多く、実際に見える視野の広さは倍率ほどには変わりません(*2)。

(*1)一昔前は「瞳径7mm(50mmなら7倍、40mmなら5.5倍)」が良いとされていましたが、近年の主流は「瞳径5mm」です。

(*2)8倍は実際に使っていませんが、仕様だけを見ると見かけ視界は10倍よりも狭くなっています。

「星見以外」にも使うことも想定すれば「口径42mmのお手軽双眼鏡」の最適倍率は10倍かもしれません。この点は、今後の多くの方の評価を待ちたいと思います。

どんな用途に向いているか

年齢、コメントは編集部が創作したものです。登場する人物とは全く関係ありません。フリー素材「PAKUTASO」を使用しています。https://www.pakutaso.com

天リフレビュー記事お約束の・・・脳内ユーザーの声^^

SVBONY SV21双眼鏡のいいところは第一に低価格。「そんなにお金は出せない」と双眼鏡の世界に縁のなかった人でも、SVBONYなら「ま、一ついっか」と購入できるところ。それでいてコスパは抜群。10倍、口径42mm、本体重量580g(*)は無理なく持ちはこびでき、手持ちでも楽な大きさ。

(*)ストラップ、ケース、フードなしの状態の実測本体重量

「使ってなんぼ」の双眼鏡、ガシガシ使って楽しみましょう^^

まとめ

大事なことなのでもう一度言います。お値段はなんと激安の4250円です。この双眼鏡の最大の特徴はこのお値段(とコスパ)にあります。この値段なら衝動買いしても(あまり^^;)痛くない。双眼鏡をまだ持っていなくて、双眼鏡に高いお金は出せないと思っている方にこそオススメ。双眼鏡がないよりも双眼鏡がある方が楽しい天文ライフを送れます。天文だけではありません。コンサート、スポーツ観戦、バードウォッチング、旅行の友に。わずか4250円で、ほんの少し人生が楽しくなる。これだけは保証できます。

ぜひ貴方の天文ライフ・そのほかライフに、双眼鏡を1台加えてみませんか?

補足.(激安)双眼鏡比較

今回、比較のためにいくつか激安双眼鏡を購入し、編集部所有の他機種含めて、SV21双眼鏡と比べてみました。直接スペックの競合する製品はありませんし、古い製品も含まれています。あくまで参考比較とお考えください。

「スペック通りでない」ことがある激安双眼鏡

今回新規にAmazonで購入した製品は以下の2つです。

「AUTSCA 口径32mm10倍(購入時価格1799円)」「Titan Mall 25mm10倍(購入時価格499円)」この2つの製品ですが、どちらも基本的なスペックが仕様通りではありませんでした。上の画像はAUTSCAですが、口径が32mmのはずなのに、実測すると24mmしかありません!これはひどい。小型の激安ダハの中から、少しでも口径の大きなものが欲しくてこれを選んだのに。

もうひとつ、Titan Mallは、10倍のはずなのに瞳径を実測したところ倍率は7倍しかありませんでした。実際は7倍が欲しかったのでまあいいんですけど。でもこれも困ったことです。あってはならないことです。こんな商売をしていてよいのでしょうか?

日本の工業規格JISに準拠した製品の場合、口径・倍率の仕様の許容誤差は「一般品(*)」で5%以下と定められています。口径42mmの場合は実際には40mmまでなら許されるのですが、それどころの差ではありません。

(*)「高級品」の場合は口径で2%、倍率で4%。http://kikakurui.com/b7/B7121-2013-01.html参照。

クレームを入れれば返品・交換してもらえるとは思いますが(そうでなければ本当に詐欺です)、ネットで海外製の激安品を購入するときには、少しでも信頼できる販売者を選ぶことが必要だと思います。その点、SVBONYは口径は実測41.15mm、瞳径は4.15mm。ちょうど10倍で仕様通りでした。

コリメート画像の比較

双眼鏡の「見え味」はなかなか定量化が難しいものです。昼間の風景を見るのか・星空を見るのかによっても変わりますし、使用者の「眼」にも大きく依存します。そこで、コリメート法で撮像した画像を比較してみました(*)。

(*)コリメート撮像するにはスマホが簡単なのですが、露出条件やピント位置のバラツキを少なくするのが難しいため、今回はミラーレス一眼を使用しました。(もう少し視野が広ければよかったのですが、ご容赦ください)

OLYMPUS EM-5 M.ZUIKO 35mmF2.8でコリメート撮像

まずは全視野の比較。ノートリミング画像。真ん中下がSVBONYのSV21です。若干糸巻型の歪曲収差がありますが、他の製品でも見かけ視野の狭いTitan MallとPENTAXを除けば、大なり小なり同じ傾向です。60度以上の見かけ視界の双眼鏡は、高級品の場合でも、意図して糸巻型の歪曲収差を残した設計が主流になっています。

 

中央部の拡大の比較。ピント位置は慎重に追い込んでいます。この画像を見る限り、SVBONYが一番シャープで軸上色収差も少なくなっています。499円のTitan Mallが健闘していますが、1799円のAUTSCAはかなり残念な感じ。実視でもこの差はあきらかで、しっかり結像してくれない感じです。

 

周辺部の拡大画像の比較。よほどの高級品でない限り、最周辺の像は「非点収差」によって流れたり、「像面湾曲」によってピント位置がずれてしまうものなのですが、ずいぶん違いがあります。New APEXはさすがに高級品だけあって流れが少なく、SVBONYはその中では平均的なところでしょうか。499円のTitan Mallは最周辺の流れが大きく、1799円のAUTSCAは倍率色収差も伴ってかなりボケた感じ。

内面反射の比較

 

双眼鏡を空に向けて、接眼レンズの後から対物レンズを見た画像。露出条件は全て同一です。理想的にはこの画像は、対物レンズだけが真っ白で、その他は真っ暗であるべきなのですが、鏡胴の内面反射・プリズムの反射ロス・レンズ表面の反射などによってこのようにさまざまな「迷光」が出てきます。

PENTAXは30年以上前の製品で、レンズ・プリズムともにカビが発生している状態、SkyMasterもレンズの汚れが大きい状態だったので、本来の性能ではありません。

この中では、ビクセンのNew Apexが一番反射が少なくなっています。SVBONYもプリズムによる反射がみられるものの、迷光対策はまあ良好。これなら十分実用範囲といえるでしょう。

眼も当てられない・・・目当て

Titan MallとAUTSCAは、ゴム製の目当ての品質がよくありませんでした。この目当ては、メガネを着用して使用する場合は折りたたむ必要があるのですが(画像上)、折りたたんでもしばらくすると元に戻ってしまいました(画像下)。気温15度くらいでこれですから、冬場の気温の低いときはゴムが硬化してもっと大変でしょう。その点、SVBONY、ビクセンNEW APEXは、プラの目当てを回転させることで眼の位置を自由に調節できます。


・本記事はSVBONY様より機材の供与を受け、天文リフレクションズ編集部が独自の費用と判断で作成したものです。文責は全て天文リフレクションズ編集部にあります。

・記事に関するご質問・お問い合わせなどは天文リフレクションズ編集部宛にお願いいたします。

・製品の購入およびお問い合わせはAmazon.co.jpの商品ページでお願いいたします。

・本記事によって読者様に発生した事象については、その一切について編集部では責任を取りかねますことをご了承下さい。

・特に注記のない画像は編集部で撮影したものです。

・記事中の製品仕様および価格は執筆時(2018年11月)のものです。

・記事中の社名、商品名等は各社の商標または登録商標です。 https://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2018/11/fc6927a4cd7fc6f068de9eb5d3ae4aff-1024x683.jpghttps://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2018/11/fc6927a4cd7fc6f068de9eb5d3ae4aff-150x150.jpg編集部レビュー双眼鏡双眼鏡双眼鏡はお使いですか? 双眼鏡はお持ちですか?星見に使われていますか?貴方が「眼視派」なら、たぶん何台かの双眼鏡をお持ちのことでしょう。「良く見える双眼鏡」や「冴えない双眼鏡」をひととおり体験し、「コレだ!」というお気に入りの1台(2台、3台かもしれません)がきっとあるに違いありません。 貴方が写真派なら・・・1台くらいはお持ちかもしれませんが、たぶん撮影のときは夜空よりもモニター画面を見ている時間の方が長いかもしれませんね。ただでさえお金のかかる天文趣味、「双眼鏡沼は・・・」と敬遠されているのかもしれません。 まだ何も機材をお持ちでない方、最近天文に関心を持って始めたばかりの方は、たぶん「星を見るのに適した双眼鏡」はお持ちでないことでしょう。最初の天文機材への思い切った投資には、高価な双眼鏡よりも小型の天体望遠鏡か一眼デジカメ入門機のほうがいいかもしれません。でも、 ものすごく安くて、そこそこ良く見える双眼鏡 があると、状況がちょっと変わってきます。今回はそんな ものすごく安くて、そこそこ良く見える双眼鏡 のご紹介です。(大事なことなので二度いいました^^) SVBONY SV21 42mm10倍双眼鏡 SVBONYがやってきた 今回、中国のSVBONY社(*)より双眼鏡のレビューの依頼をいただきました。 (*)SVBONY社は最近日本でも知名度の上がってきた光学機器・天文機材メーカーです。編集部でも以前「激安アイピース」を購入したことがあります。 ダハ式の口径42mm10倍。お値段はなんと激安の4250円です。このスペックの双眼鏡は、普及品でも1万円以上、高級品なら4万円を越えます(*)。 (*)最近注目の「賞月観星」の製品は27,800円。光学製品の常として、上は天井知らずです。マニアには有名な「スワロフスキー」なら30万円オーバー。 さて、この双眼鏡・・どれだけ見えるのか?早速試してみました。 実視レビュー 星空編 実際の星空で試してみました。星空は光学製品にとっては厳しい性能チェック対象ですが、手持ちで使う場合には限界ぎりぎりの解像度はあまり影響してきません。ある程度の性能を満たしていれば、口径が一番重要な要素です。口径42mmの威力で口径20〜30mmクラスとははっきり星の数が違います。また、解像度(星の鋭さ)も、他の激安双眼鏡と比較すると中心部も周辺も、ずっと上質な見え味でした。 三脚にしっかり固定して見てみると、中心部では良像ですが視野1/2あたりから星像が崩れ始め(*)、最周辺では同心円の線状になりますが、これは超高級品以外では普通のこと。むしろこの低価格でここまで見えることには感心しました。じゅうぶん星見用として使えます。 (*)若干感覚的なものもあり、感じ方には個人差があります。 この夜の白眉は、夜明け前の南中時に見たオリオン大星雲。口径42mm10倍だと、背景の空が黒く締まって、その中で輝く中心部とぼんやり広がった羽根のような周辺部が素晴らしい!もしその場にニコンのWXがあればもっと凄かったのでしょうが、この体験を与えてくれたSV21に感謝です^^ 「よく使う機材が良い機材である」という格言?があります。どんなに素晴らしい性能の機材であっても、大きすぎたり重すぎたりで使用頻度が低くなってしまうようでは「良い(活用している)機材とはいえない」という意味です。 編集子はこの双眼鏡のほかに、70mm15倍、50mm7倍の双眼鏡を所有しているのですが、どちらも使用頻度が低いのが実情です。性能と言うよりも、遠征にはわんさか機材を持ち出すので「お留守番」になることが多いのです。 その点SV21双眼鏡の場合は、持ち運びにも遠征地での出し入れも苦になりません。口径42mmは星見には十分な大きさ。これは新たなレギュラーメンバーになりそうです。 野球場編 現代の最大の双眼鏡需要は「コンサート」と「スポーツ観戦」。量販店に行くと、用途別・会場毎の座席別・目的別最適倍率のPOPがあるほどです。「少々手ぶれしても、お目当てのアイドル(選手)を大きく見たい」。これは自然な願望。口径42mm10倍はその点でも満足できるスペック。 今回、日本シリーズ2018第三戦に持ち込んでみました。お目当ては「お立ち台で涙を流すアライサン」です^^ 4台の双眼鏡を持ち込んでとっかえひっかえ見比べたのですが、同行した嫁(ど素人)も「これが一番良く見える」とSVBONYを指名。 ナイター球場では口径42mmの明るさが大いに生きます。特に、セレモニーのスポットライト照明の際は、口径20〜30mm級の双眼鏡とは大きな差を感じます。 星を見たときは最周辺の像の流れが若干気になったのですが、野球観戦ではほぼ気になりません。バックが暗いときに若干ゴースト・フレアは出るものの、十分合格点で楽しめました。 製品詳細 外観 スゴイ高級感があるわけではありませんが、外観はキレイでデザインもすっきりしています。外観だけ見ると激安品にはまったく見えません。 製品は写真の化粧箱に入っています。前後キャップ、ストラップ、取説、など写真のもの一式が付属します。(写真には写っていませんがソフトケースも付属します) ポケットに入るサイズではありませんが、ダハ式のため口径42mmながらコンパクト。星を見たり薄暗いコンサート会場などでは口径42mmという大きさが生きてきます。   レンズは対物・接眼側とも、1面のみマルチコート。他の面は単層コートのようです。高級品ではより反射率の低いマルチコートが全面に施されていることが多いのですが、ここはさすがに仕方ありません。 接眼部を空に向けたところ。対物レンズの白い円だけが見えて他の光が一切ないのが理想的な光学系ですが、そこまでのレベルのものは高級品にもそうそうありません。 この製品の場合は、プリズム部での反射や鏡筒内の反射が見られますが、ここもまあ仕方ないといえるでしょう。他の激安品と比較しても内面反射はずっと少なくなっています。ちなみにプリズムの材質はBK7です。 見かけ視野は62度。口径は実測で41.15mm、瞳径は4.15mm、倍率は約10倍でほぼ仕様通りです。実はamazonで販売されている海外製の製品は、口径や倍率が仕様と違うことが平気であります(*)。当たり前とはいえ、仕様通りで安心です。 (*)「補足.(激安)双眼鏡比較」参照 視野周辺での像の乱れと糸巻き型の歪曲収差がありますが、この程度なら合格点といえるでしょう。 使い勝手 接眼部はアイレリーフ(接眼レンズから眼の位置までの長さ)を微調整できるようになっていて、メガネ着用時でも覗きやすくなっています。この機構がない場合、ゴム見口を折り返して何段階かに切り替える仕様が多いのですが(*)、こちらの方が圧倒的に使いやすくなっています。 (*)他の激安双眼鏡をいくつか購入して比べて見ましたが、廉価品のゴム見口はうまく折りたためないものが多く、かなり使いづらい気がしました。補足.(激安)双眼鏡比較参照。 対物側のキャップはなくさないように支持部が付いています。取り外すことも簡単。 ピント調節の繰り出し部はスムーズ。左右の視度調整を行うリングもほどよい硬さでした。 市販の汎用アダプタを使用し、双眼鏡を三脚に固定することができます。このくらいの重量なら手持ちでもなんとかなりますが、じっくり腰を据えて見たいときに三脚に固定できるのは嬉しいところ。 総合評価 SV21双眼鏡を高級品と比較すると見劣りする部分があるのは仕方ありません。肥えたマニアを「光学性能で」唸らせるためのものではないのです。でも、双眼鏡に必要な部分はきちんと押さえています。実際に使ってみて「これはちょっと・・」という点はありませんでした。むしろ「この値段でよくぞここまでできている」というべきでしょう(*)。 (*)その意味では、双眼鏡マニアもぜひ一度覗いてみて、コスパの高さに唸ってほしいと思います^^ さらに、SVBONY社はサポートにも力を入れていて、光軸のずれなどのトラブルがあった場合、無償で交換に応じているそうです。当たり前と言えば当たり前なのですが、それがきちんとできていることは大きな評価ポイントでしょう(*)。 (*)低価格の双眼鏡の場合、製造レベルでの品質のばらつきも多いようです。本来はきちんと検品されるべきなのですが、トラブル時の対処を迅速・確実にすることでそれをカバーするのも、ひとつの考え方だと思います。 今回レビューした双眼鏡は「口径42mm10倍」です。星見には「瞳径5mm」が良いといわれていて(*1)、その意味では10倍よりも8倍のほうがいいのかもしれませんが、星見以外の用途では10倍の「大きく見える」ことは重宝します。また、低価格の双眼鏡の場合、低倍率では見かけ視野が狭めになることが多く、実際に見える視野の広さは倍率ほどには変わりません(*2)。 (*1)一昔前は「瞳径7mm(50mmなら7倍、40mmなら5.5倍)」が良いとされていましたが、近年の主流は「瞳径5mm」です。 (*2)8倍は実際に使っていませんが、仕様だけを見ると見かけ視界は10倍よりも狭くなっています。 「星見以外」にも使うことも想定すれば「口径42mmのお手軽双眼鏡」の最適倍率は10倍かもしれません。この点は、今後の多くの方の評価を待ちたいと思います。 どんな用途に向いているか 天リフレビュー記事お約束の・・・脳内ユーザーの声^^ SVBONY SV21双眼鏡のいいところは第一に低価格。「そんなにお金は出せない」と双眼鏡の世界に縁のなかった人でも、SVBONYなら「ま、一ついっか」と購入できるところ。それでいてコスパは抜群。10倍、口径42mm、本体重量580g(*)は無理なく持ちはこびでき、手持ちでも楽な大きさ。 (*)ストラップ、ケース、フードなしの状態の実測本体重量 「使ってなんぼ」の双眼鏡、ガシガシ使って楽しみましょう^^ まとめ 大事なことなのでもう一度言います。お値段はなんと激安の4250円です。この双眼鏡の最大の特徴はこのお値段(とコスパ)にあります。この値段なら衝動買いしても(あまり^^;)痛くない。双眼鏡をまだ持っていなくて、双眼鏡に高いお金は出せないと思っている方にこそオススメ。双眼鏡がないよりも双眼鏡がある方が楽しい天文ライフを送れます。天文だけではありません。コンサート、スポーツ観戦、バードウォッチング、旅行の友に。わずか4250円で、ほんの少し人生が楽しくなる。これだけは保証できます。 ぜひ貴方の天文ライフ・そのほかライフに、双眼鏡を1台加えてみませんか? 補足.(激安)双眼鏡比較 今回、比較のためにいくつか激安双眼鏡を購入し、編集部所有の他機種含めて、SV21双眼鏡と比べてみました。直接スペックの競合する製品はありませんし、古い製品も含まれています。あくまで参考比較とお考えください。 「スペック通りでない」ことがある激安双眼鏡 今回新規にAmazonで購入した製品は以下の2つです。 「AUTSCA 口径32mm10倍(購入時価格1799円)」「Titan Mall 25mm10倍(購入時価格499円)」この2つの製品ですが、どちらも基本的なスペックが仕様通りではありませんでした。上の画像はAUTSCAですが、口径が32mmのはずなのに、実測すると24mmしかありません!これはひどい。小型の激安ダハの中から、少しでも口径の大きなものが欲しくてこれを選んだのに。 もうひとつ、Titan Mallは、10倍のはずなのに瞳径を実測したところ倍率は7倍しかありませんでした。実際は7倍が欲しかったのでまあいいんですけど。でもこれも困ったことです。あってはならないことです。こんな商売をしていてよいのでしょうか? 日本の工業規格JISに準拠した製品の場合、口径・倍率の仕様の許容誤差は「一般品(*)」で5%以下と定められています。口径42mmの場合は実際には40mmまでなら許されるのですが、それどころの差ではありません。 (*)「高級品」の場合は口径で2%、倍率で4%。http://kikakurui.com/b7/B7121-2013-01.html参照。 クレームを入れれば返品・交換してもらえるとは思いますが(そうでなければ本当に詐欺です)、ネットで海外製の激安品を購入するときには、少しでも信頼できる販売者を選ぶことが必要だと思います。その点、SVBONYは口径は実測41.15mm、瞳径は4.15mm。ちょうど10倍で仕様通りでした。 コリメート画像の比較 双眼鏡の「見え味」はなかなか定量化が難しいものです。昼間の風景を見るのか・星空を見るのかによっても変わりますし、使用者の「眼」にも大きく依存します。そこで、コリメート法で撮像した画像を比較してみました(*)。 (*)コリメート撮像するにはスマホが簡単なのですが、露出条件やピント位置のバラツキを少なくするのが難しいため、今回はミラーレス一眼を使用しました。(もう少し視野が広ければよかったのですが、ご容赦ください) まずは全視野の比較。ノートリミング画像。真ん中下がSVBONYのSV21です。若干糸巻型の歪曲収差がありますが、他の製品でも見かけ視野の狭いTitan MallとPENTAXを除けば、大なり小なり同じ傾向です。60度以上の見かけ視界の双眼鏡は、高級品の場合でも、意図して糸巻型の歪曲収差を残した設計が主流になっています。   中央部の拡大の比較。ピント位置は慎重に追い込んでいます。この画像を見る限り、SVBONYが一番シャープで軸上色収差も少なくなっています。499円のTitan Mallが健闘していますが、1799円のAUTSCAはかなり残念な感じ。実視でもこの差はあきらかで、しっかり結像してくれない感じです。   周辺部の拡大画像の比較。よほどの高級品でない限り、最周辺の像は「非点収差」によって流れたり、「像面湾曲」によってピント位置がずれてしまうものなのですが、ずいぶん違いがあります。New APEXはさすがに高級品だけあって流れが少なく、SVBONYはその中では平均的なところでしょうか。499円のTitan Mallは最周辺の流れが大きく、1799円のAUTSCAは倍率色収差も伴ってかなりボケた感じ。 内面反射の比較   双眼鏡を空に向けて、接眼レンズの後から対物レンズを見た画像。露出条件は全て同一です。理想的にはこの画像は、対物レンズだけが真っ白で、その他は真っ暗であるべきなのですが、鏡胴の内面反射・プリズムの反射ロス・レンズ表面の反射などによってこのようにさまざまな「迷光」が出てきます。 PENTAXは30年以上前の製品で、レンズ・プリズムともにカビが発生している状態、SkyMasterもレンズの汚れが大きい状態だったので、本来の性能ではありません。 この中では、ビクセンのNew Apexが一番反射が少なくなっています。SVBONYもプリズムによる反射がみられるものの、迷光対策はまあ良好。これなら十分実用範囲といえるでしょう。 眼も当てられない・・・目当て Titan MallとAUTSCAは、ゴム製の目当ての品質がよくありませんでした。この目当ては、メガネを着用して使用する場合は折りたたむ必要があるのですが(画像上)、折りたたんでもしばらくすると元に戻ってしまいました(画像下)。気温15度くらいでこれですから、冬場の気温の低いときはゴムが硬化してもっと大変でしょう。その点、SVBONY、ビクセンNEW APEXは、プラの目当てを回転させることで眼の位置を自由に調節できます。 ・本記事はSVBONY様より機材の供与を受け、天文リフレクションズ編集部が独自の費用と判断で作成したものです。文責は全て天文リフレクションズ編集部にあります。 ・記事に関するご質問・お問い合わせなどは天文リフレクションズ編集部宛にお願いいたします。 ・製品の購入およびお問い合わせはAmazon.co.jpの商品ページでお願いいたします。 ・本記事によって読者様に発生した事象については、その一切について編集部では責任を取りかねますことをご了承下さい。 ・特に注記のない画像は編集部で撮影したものです。 ・記事中の製品仕様および価格は執筆時(2018年11月)のものです。 ・記事中の社名、商品名等は各社の商標または登録商標です。編集部発信のオリジナルコンテンツ