【連載11】実践・天体写真撮影記「Baaderウルトラナローバンド」でベランダ撮影・ 3.5nmは違うのだよ!
みなさんこんにちは!ようやく長い梅雨が明けた今日この頃、いかがお過ごしですか?最近大流行のナローバンドですが、ちょっと面白いアイテムを試してみたのでレポートします。
これです。国際光器様よりお借りした、独Baader社の「Ultra-Narrowbandフィルター」三点セットです。
目次
何がウルトラなの?狭い半値幅
Baader社の従来製品との比較
これまで日本で販売されていたBaader社のナローバンドフィルターは、半値幅が7nm〜9nmのものでしたが、今回使用した製品は半値幅がその約半分。バックグランドに対して天体の輝線スペクトルを約2倍強調することができます。
比較的お値頃なBaader社製品
ナローバンドフィルターでも半値幅の特に狭い(<=5nm)の製品はこれまでAstrodon社の独壇場でした。Astrodonはハイアマチュアに絶大な信頼のあるブランドですが、お値段もその分なかなかのもの。Baader社の製品はその中にあって比較的手頃なお値段です(*)。
(*)まだ日本では公式に販売されていないようですが、Baaderの海外サイトを見ると1.25インチ枠付きタイプのHα3.5nmで257ユーロでした。
この製品が日本でも販売されるようになれば、これまで非常に敷居の高かった「ウルトラな狭帯域」のナローバンドがより一般化することでしょう。
早速試写!ベランダ撮影のリザルト
M8を撮ってみた
早速リザルトをごらんください。上の画像はHαの撮って出し(rawをカメラ設定ママで現像)1枚画像です。撮影場所は福岡市内の自宅のベランダ。一級の光害地です^^;
1段分の露出補正をして背景の輝度を揃えてみました。一目でわかる違いですね!Hαは輝度が高く光害の影響も受けにくいので、7nmでも実はすごく良く写るのですが、3.5nmだとさらにすごい!これだけ写るのなら、明るい天体ならもうベランダだけでもOKかも。
こちらはOIII。こちらも違いは歴然です。OIIIはHαと比較してなかなかS/Nが出ないのが悩みで、特に光害地ではHαと比べてかなり写りが甘くなってしまうのですが、ほぼスペック通りに光害の影響が減っているようです。
残念ながら今回はSIIは雲の来襲で比較画像を撮れませんでした。基本的にはSIIは、HαやOIIIのようには写りません。M8のような明るい対象であってもこんな程度です。光害地でSAOを撮ると(光害地でなくても?)、OIIIでがっかりしてSIIで打ちのめされるのですが、こちらも2倍分の強調効果があればこれまでよりはずっと対象の色を出しやすくなることでしょう。
総露出時間たった12分ですが、AOO合成してみました。ノイズが酷いのですが^^;; がんばって2時間くらい露出すれば、じゅうぶんに見られる作品になるものと思います。
らせん星雲は大失敗^^;;;
もう一つ、らせん星雲も撮ってみたのですが、こちらは大失敗。バーティノフマスクを付けっぱなしでHαを撮ってしましましたwwww
なので圧倒的参考画像、失敗画像です。でも、普通に1時間露出すれば、これよりもずっとよい仕上がりになることでしょう。
特に光害地と低空で鬼門になるのOIIIが、予想以上によく写ってくれました。これは秋以降の「ダイオウイカ」や「ミルクポット星雲」に期待が膨らみます。
今回使用した機材
FSQ106ED+SXP赤道儀
左が今回の撮影システム。編集部の主砲、FSQ106EDです。後述しますが、ウルトラナローの場合はあまりF値の明るい光学系は不向きなので、レデューサなしのF5での運用。赤道儀はSXPです。
右は撮影中の画像。光害はこんな感じ、福岡市中心部から西に約3キロ、隣のマンションが眩しく見える環境です^^
36mm径フィルターの装着方法
在庫の関係で、お借りしたフィルターは「36mm径枠なし」タイプのものでした。このため、48-46のステップダウンリングに46-37mmのステップダウンリングを重ねて、さらに37mm径の枠付きUVフィルターを分解してフィルターを換装して(*)使用しました。まあ普通はあんまり参考にならないでしょうが^^;;;
(*)フィルターを外しやすい、押さえリングをねじ込みで止めているタイプの「低価格品」を使用しましたが実にぴったりサイズでした。激安の海外品ならほとんどがこのタイプです。1枚400円でした。
フィルターの径が小さいので当然ながら周辺はけられます。フルサイズであれば本来は48mm径のものを使うべきですが、APS-Cまでなら実用になりそうです。小センサーのCMOSカメラの場合は、1.25インチのねじ込みタイプを使うのがよいでしょう。
「ウルトラ」なナローバンドフィルターを活用する
ベランダ撮影・満月期でもAOO、SAO合成
単純にいえば、2倍光害(月明)に強くなります。都市部や満月期の天体撮影の幅を大きく広げてくれるでしょう。Hαは他の波長よりも圧倒的に良く写るので、OIIIやSIIだけをウルトラナローバンドにする手もあると思います。
小センサーのCMOS カメラ
ガイドカメラ用の小さなセンサーのモノクロカメラをナローバンドで活用してみるのはいかがでしょうか。センサーが小さければフィルターサイズも小さく済み、価格もお値頃になります(*)。輝線スペクトルが強く輝度の高い惑星状星雲や、M8、M16/17、オリオン大星雲などの明るい散光星雲がオススメです。
(*)バーダー社のサイトによるとHα3.5nmの場合、1.25インチは257ユーロ、2インチは457ユーロです。
天リフ推し!モノクロHαナローバンド
天リフOriginal モノクロナローバンドで星雲を撮る
https://reflexions.jp/tenref/orig/category/連載/モノクロナローバンドで星雲を撮る/
ナローバンドフィルターをSAO一式揃えるとけっこうなお値段になるだけでなく、カラー合成の工程も増え、お手軽撮影からはかなり遠くなってしまいます。そこで天リフのイチオシは、まずHαのモノクロナローバンドから始めてみること。総露出時間も1/3で済む、フィルター交換やフィルターホイールが不要、画像処理も楽など、初級者・中級者にはよいことずくめ。しかもHα輝線を発する天体は全天にとてもたくさんあります。
まずは1枚、Hαナローバンドフィルター。そんな場合は光害地にさらに強くなる、Ultra-Narrowbandフィルターをいかがでしょうか!?
露出時間はたっぷりと
ナローバンド全てにいえることですが、星雲の輝線はフィルターなしと比較して輝度の減衰はほとんどない反面、背景の空や星の光は圧倒的に少なくなります。このため、星雲の写りは良くても、総露出を十分にかけないと作品全体のノイズレベルが上がってしまうことになります。
ナローバンドを使う秘訣は、1に露出時間、2にも露出時間です。ブロードバンドの撮影以上に、総露出時間を長くかけるようにしましょう。
元画像が極端な露出不足になる場合は、ダーク減算がより有効になります(*)。特に、枚数が少ない・ディザリングしていない場合は、ダーク減算が推奨です。
(*)ヒストグラムが真ん中になるくらいまで露出をかけていれば実質的にダーク減算の効果はかなり薄くなりますが、このような露出不足画像の場合はダーク減算は有効だと感じています。
Baader Ultra-Narrowbandの「狭い半値幅」の弱点
半値幅が狭い(*)場合、光学系との相性がよりシビアになることに注意が必要です。
(*)この点、カラーセンサー向けの「ワンショットナローバンド」フィルターよりもずっとシビアです。QBPフィルターの半値幅は40〜50nm程度、STC AstroDuoフィルターの場合は12nm〜15nm程度です。
一般に、ガラス面に光の波長程度の薄膜を蒸着する干渉フィルターでは、フィルターに対して斜めに入射した光に対しての波長特性のズレが問題になってきます。BaaderのUltra-Narrowbandフィルターの場合「F3.5〜F10の光学系が推奨」と製品説明にも書かれています。この範囲を超えるF値の光学系の場合は、性能をフルに発揮できない可能性があることに注意が必要です(*)
(*)詳しい計算は省略しますが、F3.5の光学系の場合、レンズ中心と周辺部でフィルターが透過するピークの波長は1%ほど(Hα線の場合6.6nmほど)ずれることになります(周辺部のほうがピークが長波長側にずれる)。推測ですが、垂直に入射した波長のピークは輝線の波長よりも少し長め(3nm程度?)に設定してあるのでしょう(例えばIDAS社のフィルターでは製品仕様にその旨明記されています)。このため、F値が極端に大きな光学系の場合は逆に透過率が低くなってしまうものと推測します。
同じ理由で画角の広いレンズの場合、視野周辺では輝線の透過率が下がってしまうことが推測されます。視野角12度(35mmフルサイズセンサーで焦点距離200mm相当)の場合、最周辺から入射した光の透過波長ピークのズレは3.3nm程度(656nmのHα線の場合)となります。
筆者の経験上、半値幅7nmのフィルターを105mmF2.0で使用しても一応実用になっていると感じてはいますが、この理屈だとそれなりに損をしているのかもしれません。少なくともUltra-Narrowbandの場合は推奨の範囲をかなり逸脱していることになります。F値を変えた場合の写り方の違いをいずれ検証したいと考えています。
まとめ
いかがでしたか?
ナローバンドの魅力は、なんといっても光害地や月明かりがあって天体写真が撮影できること。長い露出時間が必要になるなどの注意点はありますが、自宅や「近征」なら、日をまたがってこつこつ撮り溜めることで、遠征地に負けないクオリティでの撮影も可能です。
手軽さではデジカメでのワンショットナローバンドに分がありますが、比較的安価な小センサーのモノクロCMOSカメラを使えば、あまり費用をかけなくてもシステムを組むことができます。
そのナローバンドのメリットをさらに増強するのがBaader Ultra-Narrowbandです。光学系とのマッチングに注意が必要ですが、天体撮影の自由度をさらに広げてくれることでしょう。
日本の代理店である国際光器様のサイトには現時点では商品情報は掲示されていないようですが、本製品については「お気軽に問い合わせください!」とのことです。以下のアドレスにどうぞ!
今回のリザルトはデジカメでのお手軽試写だけでしたが、引き続いていろいろと変態チックな撮影や「ナローの王道」の作例も撮ってみる予定です。お楽しみに!
- 特に注記のない画像は編集部で撮影・作成したものです。
- 文中の企業名・製品名は、各社の商標または登録商標です。
- 機材協力:国際光器 [Baader Ultra-NarrowbandフィルターHα3.5nm、OIII4.5nm、SII4.5nm]
https://reflexions.jp/tenref/orig/2019/08/05/9173/https://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2019/08/fc6927a4cd7fc6f068de9eb5d3ae4aff-1024x576.jpghttps://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2019/08/fc6927a4cd7fc6f068de9eb5d3ae4aff-150x150.jpg天体写真実践・天体写真撮影記フィルターみなさんこんにちは!ようやく長い梅雨が明けた今日この頃、いかがお過ごしですか?最近大流行のナローバンドですが、ちょっと面白いアイテムを試してみたのでレポートします。 これです。国際光器様よりお借りした、独Baader社の「Ultra-Narrowbandフィルター」三点セットです。 何がウルトラなの?狭い半値幅 Baader社の従来製品との比較 これまで日本で販売されていたBaader社のナローバンドフィルターは、半値幅が7nm〜9nmのものでしたが、今回使用した製品は半値幅がその約半分。バックグランドに対して天体の輝線スペクトルを約2倍強調することができます。 比較的お値頃なBaader社製品 ナローバンドフィルターでも半値幅の特に狭い(<=5nm)の製品はこれまでAstrodon社の独壇場でした。Astrodonはハイアマチュアに絶大な信頼のあるブランドですが、お値段もその分なかなかのもの。Baader社の製品はその中にあって比較的手頃なお値段です(*)。 (*)まだ日本では公式に販売されていないようですが、Baaderの海外サイトを見ると1.25インチ枠付きタイプのHα3.5nmで257ユーロでした。 この製品が日本でも販売されるようになれば、これまで非常に敷居の高かった「ウルトラな狭帯域」のナローバンドがより一般化することでしょう。 早速試写!ベランダ撮影のリザルト M8を撮ってみた 早速リザルトをごらんください。上の画像はHαの撮って出し(rawをカメラ設定ママで現像)1枚画像です。撮影場所は福岡市内の自宅のベランダ。一級の光害地です^^; 1段分の露出補正をして背景の輝度を揃えてみました。一目でわかる違いですね!Hαは輝度が高く光害の影響も受けにくいので、7nmでも実はすごく良く写るのですが、3.5nmだとさらにすごい!これだけ写るのなら、明るい天体ならもうベランダだけでもOKかも。 こちらはOIII。こちらも違いは歴然です。OIIIはHαと比較してなかなかS/Nが出ないのが悩みで、特に光害地ではHαと比べてかなり写りが甘くなってしまうのですが、ほぼスペック通りに光害の影響が減っているようです。 残念ながら今回はSIIは雲の来襲で比較画像を撮れませんでした。基本的にはSIIは、HαやOIIIのようには写りません。M8のような明るい対象であってもこんな程度です。光害地でSAOを撮ると(光害地でなくても?)、OIIIでがっかりしてSIIで打ちのめされるのですが、こちらも2倍分の強調効果があればこれまでよりはずっと対象の色を出しやすくなることでしょう。 総露出時間たった12分ですが、AOO合成してみました。ノイズが酷いのですが^^;; がんばって2時間くらい露出すれば、じゅうぶんに見られる作品になるものと思います。 らせん星雲は大失敗^^;;; もう一つ、らせん星雲も撮ってみたのですが、こちらは大失敗。バーティノフマスクを付けっぱなしでHαを撮ってしましましたwwww なので圧倒的参考画像、失敗画像です。でも、普通に1時間露出すれば、これよりもずっとよい仕上がりになることでしょう。 特に光害地と低空で鬼門になるのOIIIが、予想以上によく写ってくれました。これは秋以降の「ダイオウイカ」や「ミルクポット星雲」に期待が膨らみます。 今回使用した機材 FSQ106ED+SXP赤道儀 左が今回の撮影システム。編集部の主砲、FSQ106EDです。後述しますが、ウルトラナローの場合はあまりF値の明るい光学系は不向きなので、レデューサなしのF5での運用。赤道儀はSXPです。 右は撮影中の画像。光害はこんな感じ、福岡市中心部から西に約3キロ、隣のマンションが眩しく見える環境です^^ 36mm径フィルターの装着方法 在庫の関係で、お借りしたフィルターは「36mm径枠なし」タイプのものでした。このため、48-46のステップダウンリングに46-37mmのステップダウンリングを重ねて、さらに37mm径の枠付きUVフィルターを分解してフィルターを換装して(*)使用しました。まあ普通はあんまり参考にならないでしょうが^^;;; (*)フィルターを外しやすい、押さえリングをねじ込みで止めているタイプの「低価格品」を使用しましたが実にぴったりサイズでした。激安の海外品ならほとんどがこのタイプです。1枚400円でした。 フィルターの径が小さいので当然ながら周辺はけられます。フルサイズであれば本来は48mm径のものを使うべきですが、APS-Cまでなら実用になりそうです。小センサーのCMOSカメラの場合は、1.25インチのねじ込みタイプを使うのがよいでしょう。 「ウルトラ」なナローバンドフィルターを活用する ベランダ撮影・満月期でもAOO、SAO合成 単純にいえば、2倍光害(月明)に強くなります。都市部や満月期の天体撮影の幅を大きく広げてくれるでしょう。Hαは他の波長よりも圧倒的に良く写るので、OIIIやSIIだけをウルトラナローバンドにする手もあると思います。 小センサーのCMOS カメラ ガイドカメラ用の小さなセンサーのモノクロカメラをナローバンドで活用してみるのはいかがでしょうか。センサーが小さければフィルターサイズも小さく済み、価格もお値頃になります(*)。輝線スペクトルが強く輝度の高い惑星状星雲や、M8、M16/17、オリオン大星雲などの明るい散光星雲がオススメです。 (*)バーダー社のサイトによるとHα3.5nmの場合、1.25インチは257ユーロ、2インチは457ユーロです。 天リフ推し!モノクロHαナローバンド 天リフOriginal モノクロナローバンドで星雲を撮る https://reflexions.jp/tenref/orig/category/連載/モノクロナローバンドで星雲を撮る/ ナローバンドフィルターをSAO一式揃えるとけっこうなお値段になるだけでなく、カラー合成の工程も増え、お手軽撮影からはかなり遠くなってしまいます。そこで天リフのイチオシは、まずHαのモノクロナローバンドから始めてみること。総露出時間も1/3で済む、フィルター交換やフィルターホイールが不要、画像処理も楽など、初級者・中級者にはよいことずくめ。しかもHα輝線を発する天体は全天にとてもたくさんあります。 まずは1枚、Hαナローバンドフィルター。そんな場合は光害地にさらに強くなる、Ultra-Narrowbandフィルターをいかがでしょうか!? 露出時間はたっぷりと ナローバンド全てにいえることですが、星雲の輝線はフィルターなしと比較して輝度の減衰はほとんどない反面、背景の空や星の光は圧倒的に少なくなります。このため、星雲の写りは良くても、総露出を十分にかけないと作品全体のノイズレベルが上がってしまうことになります。 ナローバンドを使う秘訣は、1に露出時間、2にも露出時間です。ブロードバンドの撮影以上に、総露出時間を長くかけるようにしましょう。 元画像が極端な露出不足になる場合は、ダーク減算がより有効になります(*)。特に、枚数が少ない・ディザリングしていない場合は、ダーク減算が推奨です。 (*)ヒストグラムが真ん中になるくらいまで露出をかけていれば実質的にダーク減算の効果はかなり薄くなりますが、このような露出不足画像の場合はダーク減算は有効だと感じています。 Baader Ultra-Narrowbandの「狭い半値幅」の弱点 半値幅が狭い(*)場合、光学系との相性がよりシビアになることに注意が必要です。 (*)この点、カラーセンサー向けの「ワンショットナローバンド」フィルターよりもずっとシビアです。QBPフィルターの半値幅は40〜50nm程度、STC AstroDuoフィルターの場合は12nm〜15nm程度です。 一般に、ガラス面に光の波長程度の薄膜を蒸着する干渉フィルターでは、フィルターに対して斜めに入射した光に対しての波長特性のズレが問題になってきます。BaaderのUltra-Narrowbandフィルターの場合「F3.5〜F10の光学系が推奨」と製品説明にも書かれています。この範囲を超えるF値の光学系の場合は、性能をフルに発揮できない可能性があることに注意が必要です(*) (*)詳しい計算は省略しますが、F3.5の光学系の場合、レンズ中心と周辺部でフィルターが透過するピークの波長は1%ほど(Hα線の場合6.6nmほど)ずれることになります(周辺部のほうがピークが長波長側にずれる)。推測ですが、垂直に入射した波長のピークは輝線の波長よりも少し長め(3nm程度?)に設定してあるのでしょう(例えばIDAS社のフィルターでは製品仕様にその旨明記されています)。このため、F値が極端に大きな光学系の場合は逆に透過率が低くなってしまうものと推測します。 同じ理由で画角の広いレンズの場合、視野周辺では輝線の透過率が下がってしまうことが推測されます。視野角12度(35mmフルサイズセンサーで焦点距離200mm相当)の場合、最周辺から入射した光の透過波長ピークのズレは3.3nm程度(656nmのHα線の場合)となります。 筆者の経験上、半値幅7nmのフィルターを105mmF2.0で使用しても一応実用になっていると感じてはいますが、この理屈だとそれなりに損をしているのかもしれません。少なくともUltra-Narrowbandの場合は推奨の範囲をかなり逸脱していることになります。F値を変えた場合の写り方の違いをいずれ検証したいと考えています。 まとめ いかがでしたか? ナローバンドの魅力は、なんといっても光害地や月明かりがあって天体写真が撮影できること。長い露出時間が必要になるなどの注意点はありますが、自宅や「近征」なら、日をまたがってこつこつ撮り溜めることで、遠征地に負けないクオリティでの撮影も可能です。 手軽さではデジカメでのワンショットナローバンドに分がありますが、比較的安価な小センサーのモノクロCMOSカメラを使えば、あまり費用をかけなくてもシステムを組むことができます。 そのナローバンドのメリットをさらに増強するのがBaader Ultra-Narrowbandです。光学系とのマッチングに注意が必要ですが、天体撮影の自由度をさらに広げてくれることでしょう。 日本の代理店である国際光器様のサイトには現時点では商品情報は掲示されていないようですが、本製品については「お気軽に問い合わせください!」とのことです。以下のアドレスにどうぞ! kkohki@kkohki.com 今回のリザルトはデジカメでのお手軽試写だけでしたが、引き続いていろいろと変態チックな撮影や「ナローの王道」の作例も撮ってみる予定です。お楽しみに! 特に注記のない画像は編集部で撮影・作成したものです。 文中の企業名・製品名は、各社の商標または登録商標です。 機材協力:国際光器編集部山口 千宗kojiro7inukai@gmail.comAdministrator天文リフレクションズ編集長です。天リフOriginal
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