「天体写真のトリセツ」第二章、第6回は「保存版・星空撮影マナーガイド

今回はまだ記憶に生々しい新潟の棚田で起きた事故を教訓に、「星空撮影のマナー」について書かせていただきました。

記事の内容

https://torisetsu.biz/news/2019/0528_w008_tentai2_07.html

クリックで「トリセツ」連載記事にジャンプします。

具体的な安全対策マニュアル

今回の記事は、できるだけ具体的な「マニュアル」であることを目指しました。星空撮影の現場での安全と事故防止。これがまず第一のテーマです。



人間は、生物学的には夜行生物の流れを汲んではいるもの、すっかり文明に染まってしまっているので、暗い所では明かりが必要です。そんな人間が、好きこのんでわざわざ、星空を見に明かりのない暗い場所に行く。そもそもの出発点に矛盾があるのです。ある程度の考え方とライトの使用法を整理して「使うべき時」と「使うべきでない時(=不用意に使うことによる周辺への影響)」を、できるだけ誰にでも理解できる形で書いてみたつもりです。

電球色問題と理想のライトとは

記事中で「赤色よりも電球色」という主張をしています(*)。これは今後、多くの方の体験と検証によって、より一般化しいずれ主流になるだろうと信じています。一方で「世の中の携帯用ライトは明るすぎる(**)」という問題があり、この問題が解決されなくてはならないと感じています。

(*)こういうことを書くと「天リフは写真に寄りすぎ!」という批判も頂戴するのですが、天リフは世の中の写真派比率の実態ほどには写真傾倒ではないつもりです。

(**)「首からぶら下げられる」「カールコードのように手に持っていっぱいに延ばしても使える」「指向性の高いごくごく弱い手元照明が可能」「足元までを最小限に照らすやや広い範囲の照明が可能」「電球色」この5条件が満たされるものがあると良い気がします。歩行用の照明は兼ねない前提です。

マナーの本質・皆が一歩踏み込んで考えること

鉄道や蛍の件を含めて、一部の「身勝手な写真愛好家」の存在が社会に浮き彫りになってきているのは多くの人の知るとおりです。しかし「まともであることを自認する人」がいくら声を大にしても「まともでない残念な人たち」にはその声は届きません。これについては筆者はほぼ諦めていますし、これについての怒りを表明してもそれは自己満足に過ぎないと感じています。

むしろ、本当に問題なのは「まともであるはずの人が、単なる無知や何かの勘違いによって、まともでないように振る舞ったり、まともでないように見えてしまう」ことではないでしょうか。

「やっちゃだめリスト」を作って「マナー警察で監視する」ような形は、本来あるべき姿ではないはずです。そのことをより多くの人に考えて欲しい、というのが筆者の願いです。

今回書かなかったこと

あまりいろんなことを詰め込むと趣旨が不明確になり、誰も読まないものになってしまいますので、いくつかのトピックは(重要であるけれども)除外しました。例えば「恒久的な夜間の明かりを減らす、少なくすること(ダークスカイ運動など)」「星空イベント・観望会などでの最適な照明の強さや安全対策について」「撮影地の公開と秘匿、有名地への集中の問題」「星空の下で意図的に被写体を照明する行為(*)」「山岳星景などの本質的に危険をはらむ行為」などです。

(*)星空ビームの件は価値観の相反という切り口で取り上げました。こちらは近いうちに「画像処理ワンポイント」で画像処理による星空ビームの作り方の解説記事を書く予定です^^

どれも、本気で取り組むとかなりのリサーチ・勉強・体験が必要なので、どこまで書けるかはわかりませんが、天リフのテーマとして今後も取り組んでいきたいと考えています。



若干の裏話

マナー・モラルに関する件は、これまでも散発的に書いてきたことがありましたが、最近はある理由から、ちょっと書く気が失せてきたところでした。

そもそも、人にはいろいろな考え方・価値観があります。特定の考え方の立場に立てば、ある程度矛盾しないロジックが組み立てられるのですが、それは別の立場からすれば「異論」になり、それが極端になると「許せん」となってしまいます。特定の立場に立って論を張ることで反感を買って読者を失いたくはないし、かといって多様な立場に立った論点の整理は難易度が高い。そんな理由で避けてきたのでした。

しかし、星峠の事件の報せを聞いて「これはやる気を出さねばならない」と思いました。そこで書いたのがこちらです。

ルールを勘違いするな。星峠の死亡事故・星空の撮影ルールまたはマナーについて

この記事は明確に「星空愛好家」の立場を代弁することを意図しています。いろいろ毒も混ぜたつもりだったのですが、好感をもって受け止めていただいた方には毒はスルーされてしまったようです。この記事を書くことによって「やっちゃだめマニュアル」には自己満足以外の意味は乏しいことがよくわかりました。いろいろ不満の残る内容ですが、書いたものは仕方ないので当分はこのままです。

実は事故の直後、某キー局から電話取材の依頼があったのですが、その際に仲介いただいたのがトリセツのエマーク編集長でした(*)。

(*)局のリサーチャーのが記事をググって、トリセツさんの過去記事を見つけて連絡されたようです。

今回のトリセツさんへの記事は、まさに星峠の縁でした。それで、しばらくお休みしていたトリセツさんへの連載も、復活することになりました。次回からは3〜5回くらいで、中型?テーマの連載がスタートします。こちらもお楽しみに!

ハッシュタグ#天体撮影のトリセツ

Twitterに投稿されたハッシュタグ「#天体撮影のトリセツ」で記事に対するご質問・ご感想をお待ちしています!もれなくリプライさせていただきます。
また、画像を添えていただければアドバイスもさせていただきます!

 

  https://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2019/06/0528_w008_tentai2_07_ogp-1024x538.jpghttps://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2019/06/0528_w008_tentai2_07_ogp-150x150.jpg編集部天体撮影のトリセツ星空入門「天体写真のトリセツ」第二章、第6回は「保存版・星空撮影マナーガイド」 今回はまだ記憶に生々しい新潟の棚田で起きた事故を教訓に、「星空撮影のマナー」について書かせていただきました。 記事の内容 クリックで「トリセツ」連載記事にジャンプします。 具体的な安全対策マニュアル 今回の記事は、できるだけ具体的な「マニュアル」であることを目指しました。星空撮影の現場での安全と事故防止。これがまず第一のテーマです。 人間は、生物学的には夜行生物の流れを汲んではいるもの、すっかり文明に染まってしまっているので、暗い所では明かりが必要です。そんな人間が、好きこのんでわざわざ、星空を見に明かりのない暗い場所に行く。そもそもの出発点に矛盾があるのです。ある程度の考え方とライトの使用法を整理して「使うべき時」と「使うべきでない時(=不用意に使うことによる周辺への影響)」を、できるだけ誰にでも理解できる形で書いてみたつもりです。 電球色問題と理想のライトとは 記事中で「赤色よりも電球色」という主張をしています(*)。これは今後、多くの方の体験と検証によって、より一般化しいずれ主流になるだろうと信じています。一方で「世の中の携帯用ライトは明るすぎる(**)」という問題があり、この問題が解決されなくてはならないと感じています。 (*)こういうことを書くと「天リフは写真に寄りすぎ!」という批判も頂戴するのですが、天リフは世の中の写真派比率の実態ほどには写真傾倒ではないつもりです。 (**)「首からぶら下げられる」「カールコードのように手に持っていっぱいに延ばしても使える」「指向性の高いごくごく弱い手元照明が可能」「足元までを最小限に照らすやや広い範囲の照明が可能」「電球色」この5条件が満たされるものがあると良い気がします。歩行用の照明は兼ねない前提です。 マナーの本質・皆が一歩踏み込んで考えること 鉄道や蛍の件を含めて、一部の「身勝手な写真愛好家」の存在が社会に浮き彫りになってきているのは多くの人の知るとおりです。しかし「まともであることを自認する人」がいくら声を大にしても「まともでない残念な人たち」にはその声は届きません。これについては筆者はほぼ諦めていますし、これについての怒りを表明してもそれは自己満足に過ぎないと感じています。 むしろ、本当に問題なのは「まともであるはずの人が、単なる無知や何かの勘違いによって、まともでないように振る舞ったり、まともでないように見えてしまう」ことではないでしょうか。 「やっちゃだめリスト」を作って「マナー警察で監視する」ような形は、本来あるべき姿ではないはずです。そのことをより多くの人に考えて欲しい、というのが筆者の願いです。 今回書かなかったこと あまりいろんなことを詰め込むと趣旨が不明確になり、誰も読まないものになってしまいますので、いくつかのトピックは(重要であるけれども)除外しました。例えば「恒久的な夜間の明かりを減らす、少なくすること(ダークスカイ運動など)」「星空イベント・観望会などでの最適な照明の強さや安全対策について」「撮影地の公開と秘匿、有名地への集中の問題」「星空の下で意図的に被写体を照明する行為(*)」「山岳星景などの本質的に危険をはらむ行為」などです。 どれも、本気で取り組むとかなりのリサーチ・勉強・体験が必要なので、どこまで書けるかはわかりませんが、天リフのテーマとして今後も取り組んでいきたいと考えています。 若干の裏話 マナー・モラルに関する件は、これまでも散発的に書いてきたことがありましたが、最近はある理由から、ちょっと書く気が失せてきたところでした。 そもそも、人にはいろいろな考え方・価値観があります。特定の考え方の立場に立てば、ある程度矛盾しないロジックが組み立てられるのですが、それは別の立場からすれば「異論」になり、それが極端になると「許せん」となってしまいます。特定の立場に立って論を張ることで反感を買って読者を失いたくはないし、かといって多様な立場に立った論点の整理は難易度が高い。そんな理由で避けてきたのでした。 しかし、星峠の事件の報せを聞いて「これはやる気を出さねばならない」と思いました。そこで書いたのがこちらです。 https://reflexions.jp/tenref/orig/2019/05/07/8588/ この記事は明確に「星空愛好家」の立場を代弁することを意図しています。いろいろ毒も混ぜたつもりだったのですが、好感をもって受け止めていただいた方には毒はスルーされてしまったようです。この記事を書くことによって「やっちゃだめマニュアル」には自己満足以外の意味は乏しいことがよくわかりました。いろいろ不満の残る内容ですが、書いたものは仕方ないので当分はこのままです。 実は事故の直後、某キー局から電話取材の依頼があったのですが、その際に仲介いただいたのがトリセツのエマーク編集長でした(*)。 (*)局のリサーチャーのが記事をググって、トリセツさんの過去記事を見つけて連絡されたようです。 今回のトリセツさんへの記事は、まさに星峠の縁でした。それで、しばらくお休みしていたトリセツさんへの連載も、復活することになりました。次回からは3〜5回くらいで、中型?テーマの連載がスタートします。こちらもお楽しみに! ハッシュタグ#天体撮影のトリセツ Twitterに投稿されたハッシュタグ「#天体撮影のトリセツ」で記事に対するご質問・ご感想をお待ちしています!もれなくリプライさせていただきます。 また、画像を添えていただければアドバイスもさせていただきます!    編集部発信のオリジナルコンテンツ