天文ハウスTOMITAのブログに、口径51mmの4枚玉アポ「RedCat51」の予約を開始したという記事が掲載されています。

天文ハウスTOMITAのブログ・RedCat51の先行予約を受付開始しました!
https://y-tomita.blog.so-net.ne.jp/2018-11-25

この製品はWilliam Optics社製の鏡筒で、F値は4.9、焦点距離は250mm。髙橋FSQシリーズと同じ「ペッツバール型」の4枚玉。フルサイズ対応のイメージサークルを持ち、価格は税込85,320円。初回30本限定で税込75,384円となっています。

K-ASTEC BLOG・RED CAT 51F4.9 の評価-1
http://k-astec.cocolog-nifty.com/main/2018/11/post-3.html

K-ASTEC BLOGにも評価レポートが掲載されています。この記事の周辺像の試写結果を見る限り、かなり高性能なように見えます。



2018/11/27追記)

K-ASTEC BLOG・REDCAT 51で撮影したNGC7000
http://k-astec.cocolog-nifty.com/main/2018/11/post-7.html

D810Aで撮影した等倍無加工画像がアップされています。これは素晴らしい画質です。

2018/11/27追記おわり)

本記事の立ち位置

まず最初に、天リフと天文ハウスTOMITA様、K-ASTEC様との関係を明確にしておきます。両社は天リフに広告を出稿頂いているスポンサー様です。この記事はできるだけ中立な立場で書いているつもりですが、この事実は明確にしておきます。また、天リフではこの鏡筒をすでに予約済みで、自費購入しレビュー記事を書く予定でいます。この鏡筒の広告掲載以外のプロモーションを対価を得て行ったり、販売に関するアフィリエイト的行為を行う予定はありません。

実際に実機を見ているわけではないので、本記事は発表された仕様等に対する「感想」となります。購入のご判断は読者様の責任でお願いいたします。

オールインワン天体用鏡筒としての評価

この鏡筒は、主に写真用途に対して、必要な機能がオールインワンでまとめられたものになっています。この鏡筒1本とカメラマウントアダプタ、そして露よけヒーターさえあれば、赤道儀に搭載して写真撮影が可能です。4枚玉で像面はフラットなので、フラットナーなど補正レンズは不要。焦点距離は250mmなので、ポラリエやスカイメモS/Tのような小型のポータブル赤道儀でも露出時間に注意すれば十分使用可能でしょう。

以下、特徴的な仕様を見てゆきます。

ヘリコイド式ピント合わせ

https://y-tomita.blog.so-net.ne.jp/2018-11-25(写真はプロトタイプのもの)

ピント合わせはヘリコイドで行うようになっています。メリットは、カメラと鏡筒の取付部に可動部分が存在しなくなるため、カメラの重量によるたわみの影響が少なくなること。ヘリコイドのストロークがどのくらいなのか不明なため推測ですが、眼視用途には光路長の制限が出る可能性があるでしょう(*)。

(*)天頂プリズム・ミラーなどを使用した際にピントが出ない可能性があります。

ペッツバール型4枚玉

4枚のレンズのうち、前群の2枚は近接した凸凹ですが、3枚目と4枚目が大きく離れています。これはタカハシのFSQ106EDと同じレイアウト。FSQの場合は1枚目と3枚目の凸レンズが「スーパーEDガラス」です。が、この鏡筒の場合は3枚目と4枚目がそれぞれFPL53とFPL51なのでしょうか。

2018/11/27追記・修正)

「SYNTHETIC FLUORITE」とあるのは「蛍石と同等の収差補正性能を持つFPL53」のことで、前玉の(たぶん)凸レンズに使用されているようです。3枚目の凸レンズがFPL51であると思われます。

この図を見ると、前群の2枚のレンズは通常のガラス材なのでしょうか、それとも「synthetic fluorite(合成蛍石)」とあるので蛍石を使用しているのでしょうか。

とにかく、レンズ構成的にはタカハシFSQシリーズ同様に、高い性能が期待できそうな設計です。イメージサークルはΦ45mmでフルサイズをカバーするようなので、製品版の画質に大いに期待・注目です。

ピント合わせの際に4枚のレンズ全体がスライドするのか、一部のレンズだけがスライドするのかは判然としませんがピント合わせの際に4枚のレンズ群の全体がスライドするのであればカメラのバックフォーカスによる画質の最適化の問題はなくなるはず。4枚のレンズの重量を支え、正確にスライドさせるヘリコイド機構が求められます。カメラを鏡筒に固定した分、このヘリコイドの品質がかなり重要なものとなるでしょう。



透明バーティノフマスク内蔵

https://y-tomita.blog.so-net.ne.jp/2018-11-25

これも斬新なアイディア。レンズキャップの中にピント合わせのためのバーティノフマスクが内蔵されています。これはかなり便利そう。また、標準付属なのでお得感もあります。

フードを縮めると全長210mm。これは非常にコンパクトです。ピントリングの出っ張りもなく、収納性は非常に良さそうです。

ビクセン・アルカスイス互換のリバーシブルアリガタ

https://y-tomita.blog.so-net.ne.jp/2018-11-25

「父さん!これだよ!僕が欲しかったのはこれなんだよ!」と思わず叫びたくなる工夫。上下をひっくり返せばビクセン規格にもアルカスイス互換にもなるアリガタ。これは素晴らしい。他社もこのような「両用」に対応してほしいものです。

スケール入りのカメラ回転装置

https://y-tomita.blog.so-net.ne.jp/2018-11-25

カメラマウントは48mmタイプで十分な太さ。カメラ回転装置も付いていて、なんと角度目盛まで付いています。これもこれまでありそうでなかった工夫。実際には0°と90°しか使わないでしょうか、縦横の切替をする際に正確に角度が再現できるのは多いに有用。

スケアリング調整が可能だそうですが、できれば調整なしで決まってほしいものですね。中途半端に調整してしまうと逆に回転角によってスケアリングが狂うことにもなりかねません。

専用ケースが付属

https://y-tomita.blog.so-net.ne.jp/2018-11-25

専用のソフトケースが付属。天文機材は、ケースまで考慮して製品が開発されているものがほとんどないのが現状。編集子もこれまで収納の問題には頭を悩ませているのですが、ケースが付属というのは大歓迎です(*)。

(*)これまで使用した製品の中では、AP赤道儀の専用収納ケース(別売)は軽量コンパクトで良い感じです。Sky-WatcherのEQ5赤道儀もアルミ製の専用ケース(別売)が販売されています。ビクセンのSXシリーズも専用のアルミケースが販売されています。

(*)これまで使用した製品の中では、唯一AP赤道儀だけがよくマッチした専用ケースがあります(別売)。逆にそれ以外の鏡筒・赤道儀のケースは全て別途調達でした。これ、なんとかしてほしいと常々思います・・

追記11/27)Sky-WatcherのEQ5赤道儀は専用ケースが販売されているという指摘を頂戴しました。表現を訂正しています。

4枚玉で安定した品質を発揮できるかどうか

これだけの「かゆいところに手が届く」スペックを持ちながら、価格は何と税込85,320円。追加で必要なものは48mmのカメラアダプターだけ。回転装置も補正レンズも鏡筒バンドも買い足す必要がありません。もうびっくり仰天の価格です。

しかし、最大の課題は、高い組み立て精度が要求される、レンズ間の距離が大きく離れた4枚玉を安定した品質で提供できるかどうか、使用する中での狂いが発生しないかどうかです(*)。

(*)K-ASTEC BLOGの中でも、過去発売された「口径71mm5枚玉」で起きた件について言及されています。

販売に際して天文ハウスTOMITA様が全品検査とアフターサービスを行うことでそのへんを担保されるとのことです。こればかりは実際の製品が一定数量出回った上でしか評価できませんが、販売店様に期待したいと思います。

まとめ

非常に魅力的な仕様と価格の小型屈折鏡筒「RedCat 51」。発売は来年2月。仕様通りの性能が発揮されれば、小型機材でのディープスカイ撮影が、これまで以上に身近に手軽に始められるようになるでしょう(*)。

(*)気の早いマニア筋からは「ツイン・・・」「トリプル・・・」「クワッド・・・」という声(妄想?)も出てきているようです^^

前にも書いたとおり、天リフではヒトバシラーになってレビュー予定です。ぜひお楽しみに!仕様詳細についても、確認が取れたものは追記していきます。

2018/11/27追記)限定30台の予約は終了とのことです。早かったですね^^

↓限定30台の予約は好調で残り10台になっているそうです。

William Optics社製4枚玉鏡筒「RedCat 51」https://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2018/11/46507785_298289720790841_950275356919595008_n-1024x674.jpghttps://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2018/11/46507785_298289720790841_950275356919595008_n-150x150.jpg編集部望遠鏡天文ハウスTOMITAのブログに、口径51mmの4枚玉アポ「RedCat51」の予約を開始したという記事が掲載されています。 天文ハウスTOMITAのブログ・RedCat51の先行予約を受付開始しました! https://y-tomita.blog.so-net.ne.jp/2018-11-25 この製品はWilliam Optics社製の鏡筒で、F値は4.9、焦点距離は250mm。髙橋FSQシリーズと同じ「ペッツバール型」の4枚玉。フルサイズ対応のイメージサークルを持ち、価格は税込85,320円。初回30本限定で税込75,384円となっています。 K-ASTEC BLOG・RED CAT 51F4.9 の評価-1 http://k-astec.cocolog-nifty.com/main/2018/11/post-3.html K-ASTEC BLOGにも評価レポートが掲載されています。この記事の周辺像の試写結果を見る限り、かなり高性能なように見えます。 2018/11/27追記) K-ASTEC BLOG・REDCAT 51で撮影したNGC7000 http://k-astec.cocolog-nifty.com/main/2018/11/post-7.html D810Aで撮影した等倍無加工画像がアップされています。これは素晴らしい画質です。 2018/11/27追記おわり) 本記事の立ち位置 まず最初に、天リフと天文ハウスTOMITA様、K-ASTEC様との関係を明確にしておきます。両社は天リフに広告を出稿頂いているスポンサー様です。この記事はできるだけ中立な立場で書いているつもりですが、この事実は明確にしておきます。また、天リフではこの鏡筒をすでに予約済みで、自費購入しレビュー記事を書く予定でいます。この鏡筒の広告掲載以外のプロモーションを対価を得て行ったり、販売に関するアフィリエイト的行為を行う予定はありません。 実際に実機を見ているわけではないので、本記事は発表された仕様等に対する「感想」となります。購入のご判断は読者様の責任でお願いいたします。 オールインワン天体用鏡筒としての評価 この鏡筒は、主に写真用途に対して、必要な機能がオールインワンでまとめられたものになっています。この鏡筒1本とカメラマウントアダプタ、そして露よけヒーターさえあれば、赤道儀に搭載して写真撮影が可能です。4枚玉で像面はフラットなので、フラットナーなど補正レンズは不要。焦点距離は250mmなので、ポラリエやスカイメモS/Tのような小型のポータブル赤道儀でも露出時間に注意すれば十分使用可能でしょう。 以下、特徴的な仕様を見てゆきます。 ヘリコイド式ピント合わせ ピント合わせはヘリコイドで行うようになっています。メリットは、カメラと鏡筒の取付部に可動部分が存在しなくなるため、カメラの重量によるたわみの影響が少なくなること。ヘリコイドのストロークがどのくらいなのか不明なため推測ですが、眼視用途には光路長の制限が出る可能性があるでしょう(*)。 (*)天頂プリズム・ミラーなどを使用した際にピントが出ない可能性があります。 ペッツバール型4枚玉 4枚のレンズのうち、前群の2枚は近接した凸凹ですが、3枚目と4枚目が大きく離れています。これはタカハシのFSQ106EDと同じレイアウト。FSQの場合は1枚目と3枚目の凸レンズが「スーパーEDガラス」です。が、この鏡筒の場合は3枚目と4枚目がそれぞれFPL53とFPL51なのでしょうか。 2018/11/27追記・修正) 「SYNTHETIC FLUORITE」とあるのは「蛍石と同等の収差補正性能を持つFPL53」のことで、前玉の(たぶん)凸レンズに使用されているようです。3枚目の凸レンズがFPL51であると思われます。 この図を見ると、前群の2枚のレンズは通常のガラス材なのでしょうか、それとも「synthetic fluorite(合成蛍石)」とあるので蛍石を使用しているのでしょうか。 とにかく、レンズ構成的にはタカハシFSQシリーズ同様に、高い性能が期待できそうな設計です。イメージサークルはΦ45mmでフルサイズをカバーするようなので、製品版の画質に大いに期待・注目です。 ピント合わせの際に4枚のレンズ全体がスライドするのか、一部のレンズだけがスライドするのかは判然としませんが、ピント合わせの際に4枚のレンズ群の全体がスライドするのであればカメラのバックフォーカスによる画質の最適化の問題はなくなるはず。4枚のレンズの重量を支え、正確にスライドさせるヘリコイド機構が求められます。カメラを鏡筒に固定した分、このヘリコイドの品質がかなり重要なものとなるでしょう。 透明バーティノフマスク内蔵 これも斬新なアイディア。レンズキャップの中にピント合わせのためのバーティノフマスクが内蔵されています。これはかなり便利そう。また、標準付属なのでお得感もあります。 フードを縮めると全長210mm。これは非常にコンパクトです。ピントリングの出っ張りもなく、収納性は非常に良さそうです。 ビクセン・アルカスイス互換のリバーシブルアリガタ 「父さん!これだよ!僕が欲しかったのはこれなんだよ!」と思わず叫びたくなる工夫。上下をひっくり返せばビクセン規格にもアルカスイス互換にもなるアリガタ。これは素晴らしい。他社もこのような「両用」に対応してほしいものです。 スケール入りのカメラ回転装置 カメラマウントは48mmタイプで十分な太さ。カメラ回転装置も付いていて、なんと角度目盛まで付いています。これもこれまでありそうでなかった工夫。実際には0°と90°しか使わないでしょうか、縦横の切替をする際に正確に角度が再現できるのは多いに有用。 スケアリング調整が可能だそうですが、できれば調整なしで決まってほしいものですね。中途半端に調整してしまうと逆に回転角によってスケアリングが狂うことにもなりかねません。 専用ケースが付属 専用のソフトケースが付属。天文機材は、ケースまで考慮して製品が開発されているものがほとんどないのが現状。編集子もこれまで収納の問題には頭を悩ませているのですが、ケースが付属というのは大歓迎です(*)。 (*)これまで使用した製品の中では、AP赤道儀の専用収納ケース(別売)は軽量コンパクトで良い感じです。Sky-WatcherのEQ5赤道儀もアルミ製の専用ケース(別売)が販売されています。ビクセンのSXシリーズも専用のアルミケースが販売されています。 (*)これまで使用した製品の中では、唯一AP赤道儀だけがよくマッチした専用ケースがあります(別売)。逆にそれ以外の鏡筒・赤道儀のケースは全て別途調達でした。これ、なんとかしてほしいと常々思います・・ 追記11/27)Sky-WatcherのEQ5赤道儀は専用ケースが販売されているという指摘を頂戴しました。表現を訂正しています。 4枚玉で安定した品質を発揮できるかどうか これだけの「かゆいところに手が届く」スペックを持ちながら、価格は何と税込85,320円。追加で必要なものは48mmのカメラアダプターだけ。回転装置も補正レンズも鏡筒バンドも買い足す必要がありません。もうびっくり仰天の価格です。 しかし、最大の課題は、高い組み立て精度が要求される、レンズ間の距離が大きく離れた4枚玉を安定した品質で提供できるかどうか、使用する中での狂いが発生しないかどうかです(*)。 (*)K-ASTEC BLOGの中でも、過去発売された「口径71mm5枚玉」で起きた件について言及されています。 販売に際して天文ハウスTOMITA様が全品検査とアフターサービスを行うことでそのへんを担保されるとのことです。こればかりは実際の製品が一定数量出回った上でしか評価できませんが、販売店様に期待したいと思います。 まとめ 非常に魅力的な仕様と価格の小型屈折鏡筒「RedCat 51」。発売は来年2月。仕様通りの性能が発揮されれば、小型機材でのディープスカイ撮影が、これまで以上に身近に手軽に始められるようになるでしょう(*)。 (*)気の早いマニア筋からは「ツイン・・・」「トリプル・・・」「クワッド・・・」という声(妄想?)も出てきているようです^^ 前にも書いたとおり、天リフではヒトバシラーになってレビュー予定です。ぜひお楽しみに!仕様詳細についても、確認が取れたものは追記していきます。 2018/11/27追記)限定30台の予約は終了とのことです。早かったですね^^ ↓限定30台の予約は好調で残り10台になっているそうです。編集部発信のオリジナルコンテンツ