みなさんこんにちは!

星は撮りたし、でも「流れる」。それは地球が回っているから。では、どうやって地球の回転を止めていますか?今回は星撮り追尾革命とも言うべき、BENRO社の「Polaris」をご紹介します!

まず最初にお断り

https://camp-fire.jp/projects/view/526865
CAMPFIRE Polaris : カメラと三脚をリモート制御可能なスマート電動三脚ヘッド
https://camp-fire.jp/projects/view/526865

今回ご紹介する製品「BENRO Polaris」は、クラウドファンディングによる「先行予約販売」の製品です(*)。正直いってまだ完成していません(2022年5月時点)。SNSの評判を見ると「バグだらけ」「動いてない」「俺のところにはまだ届いてすらいない」などの悪評がプンプンです。



(*)今回、本製品を入手された匿名の天リフファンの方より製品貸与の申し出を頂戴し、レビューさせていただくことになりました。

しかし。短い試用期間ではありましたが、「BENRO Polaris」は非常に意欲的で斬新な製品です。改良されるべきところは多数ありますが、この製品の良いところは正しく理解されるべきだと確信しています。本記事では、主にそのあたりをお伝えできればと思います。

しかし、クラウドファンディングあるある、と言ってしまうとミもフタもないのですが、繰り返しますがこの製品は「未完成(*)」です。ユーザーの使用目的によっては「使い物にならない」と評価されてしまうかもしれません。そのへんの判断は、賢明なる読者のみなさまにお任せしたいと思います。

(*)「未実装」の機能がある(2022年5月時点)というのも問題ですが、「天体写真」のニーズを充分にくみ取って機能に落とし込めていないのではないかという点もあります。

製品概要

製品構成

別売の「アストロキット」も収納できます(右画像の上の間仕切り内)。逆にアストロキットを使用しない場合は若干スカスカするかもしれません。

「BENRO Polaris」は20cm角ほどの大きさの専用ソフトケースに収納されています。画像には写っていませんが、肩掛け式のベルトも付属。

上の画像は別売の「アストロキット」を含めたパッケージのほとんど全て。この画像には写っていませんが、六角レンチと太ネジ(UNC3/8)細ネジ(UNC1/4)の変換アダプタがこのほかにも付属します。小さな冊子が付属しますが、これはパッキングリストと保証書、そしてオンラインマニュアルのQRコードが印字されています。マニュアルは英文と中文のみで、日本語版は提供されていませんでした(*)。

(*)将来は提供されるのでしょうか・・・?

ケーブルは、アストロキットと本体を接続する専用ケーブルと、カメラと本体を接続するケーブルが3本(USB-C、Micro USB、Mini USB)。本体側の端子は全てUSB-Cです。

Polaris本体

左)本体上面。SIMカードスロット、Micro SDカードスロット、シャッターとフラッシュのミニジャック、アストロキットと接続するためのUSB-C端子。右)本体下面。カメラと接続するためのUSB-C端子、mini HDMI端子、電源・4G通信・WiFi通信のインジケータ。

非常に高い剛性感で、可動部分のガタツキは皆無。ガンメタリック色の高級感のある美しい仕上げ、現代風のスマートなデザインとともに、手に取った第一印象は最高レベルです。昨今の中国の機械設計・加工技術は超一流の域に達しているといってもいいでしょう。

本体には多くのスロット・端子があります。SIMカードを挿すと4G回線経由でPolarisを制御できるようになるそうですが、SIM対応モデルの購入が必要なようです。(SIM対応モデルでなくてもスロットは存在する模様)。

シャッターやフラッシュ、HDMI端子を何の目的でどうやって使うのかは不明(*)ですが、とにかく考えられる端子は全て用意した、という感じです。

(*)レビュー記事を書くなら調べろよ、、とお叱りを受けそうですが。。どの機能が本来どこまで実現されるべきなのか、どこまで実装されているのか不明なところが多いため、今回は「アストロモード」にほぼ限定したレビューとなっております(大汗

ちなみに、Polarisは内蔵の充電池で駆動します。動作中の給電も可能なので、モバイルバッテリを用意すれば長時間の使用も可能です。給電端子はUSB-Cで、三脚取付部のすぐ上にあります。

画像右の赤いボタンが電源ボタン。

本体の重量は実測で1463g。これに528gのアストロキットを加えると約2kg。決して軽くはありませんが、ポータブル赤道儀では本体以外に極軸微動装置・極軸望遠鏡・自由雲台などさまざまなパーツを必要とすることを考えれば、重量面での不利はさほどないのではないかと感じました。

垂直・水平の回転軸には大きな2つのノブが取り付けられており、手動で回転して動かすことも可能です(*)。

(*)Polarisの回転軸が駆動しているときは、ノブも回転しています。このときは手動で動かすことはできません。

一つ問題なのが、この大きなノブ(上下軸)が三脚部と普通に干渉してしまうこと。収納状態ではPolarisの底面よりも2cmほど下までノブがはみ出てしまうのです(*)。若干重量増になるかもしれませんが、底面はもう少し背を高くしてほしいものです。

(*)後述しますが、干渉しないように設置したからといって安心してはいけません。電源切断時に収納状態に戻る際に干渉することがあります。

アストロキット

こちらは別売のアストロキット。アストロキットを使用することで、アストロモードで天体の「追尾(Tracking)」が可能になります(*1)。上下・水平の2軸に加えて、水平軸から45度傾いた「第3の回転軸」を追加することで、経緯台追尾における「視野の回転」をキャンセルすることができるのです(*2)。

(*1)「アストロモード」は「アストロキット」がなくても使用でき自動導入などが可能になりますが「追尾」ができるのはアストロキットを接続した場合のみです。

(*2)スリック社の「フリーターン雲台」で構図の傾きの補正をしたことのある方なら、この動作をイメージすることができると思います。

上の動画は、Polarisで天の北極付近を約20分間追尾したときの動作を5秒間で再生したものです。水平軸とアストロキットの回転軸(以下、便宜的に「アストロ軸」と呼ぶことにします)が、反対方向に回転していることと、その結果カメラが光軸に対して回転方向に動いていることがわかります。

このプレートの取り付けネジは、溝の中をスライドするようになっているはずなのですが、ネジを切っていない部分の長さが若干短いのか、スムーズにスライドしてくれませんでした。長めのプレートであれば(バランスを最適化するため)付属のものでなくてもかまわないでしょう。

初めて製品を手にした方にとって、アストロキットのセットアップは、ほぼ間違いなく戸惑うものになることでしょう(*)。

(*)Polarisは「マニュアルを見ないと、ほぼ分からない」操作がいくつかあって、アストロキットのセットアップもその一つです。

まず、あらかじめカメラにPolaris付属のアルカプレートを装着します。装着の方向は上の画像の通り、アリガタと光軸を平行にしなくてはなりません(*)。

(*)装着時の角度が大きくズレていると、Polarisの追尾精度に影響を与えるものと推測します。

左)アストロキットと本体の接続 右)アストロキットで北極星を導入した状態

アストロキットとPolaris本体は、付属の専用ケーブルで接続します。このケーブルは両端がUSB-Cのケーブルで「SS」と彫られているので「USB 3.1 Gen 1対応(SuperSpeed)」だと推測しますが、他の同等ケーブルが流用できるかどうかは不明です(*)。

(*)USB 2.0対応品では×、ThunderBolt43ケーブルも×でした。非対応ケーブルで接続すると「Start Tracking」のボタンが表示されません。なお、アストロキットには「Extra」と書かれたUSB-C端子とは別に、もう一つのUSB-C端子がありますが、こちらに接続すると「Start Tracking」のボタンが表示されません。

電源導入前の初期状態は、カメラが「おじぎ」したような状態にセットアップします(上画像の左)。なんとなく直感的にはこの反対向きに設定したくなるのですが、必ずこの向きに設定しましょう。電源を投入すると、Polarisが「起き上がって」上画像の右のような状態になります。

電源のON/OFF

電源のON/OFFも、マニュアルを見ないと多分無理です^^;;

まず、電源のONですが、「1回押し」の後「長押し」します。「2回押し」ではなく、一回目は短い押し、二回目長押しです。この操作は筆者はこれまで経験したことのないもので、自力で発見することができず、マニュアルを開くことになりました^^;;

電源のOFFは、一回目の長押しで電源OFF、もう一度長押しすると「ホームポジション」に戻ります。この「ホームポジション」が曲者で、垂直方向は電源ONの前の状態に復帰するのですが、水平方向はその時の状態ママです。このため、使用中に水平方向の移動が発生すると(普通は発生しますよね^^;)、ホームポジションは三脚に対して不定になります。

つまり、三脚に装着する際にアルカクランプのノブなどに干渉しないようにしてあっても、ホームポジションに復帰する際に干渉してしまうことが起きえます。これは要注意!です(*)。

(*)筆者は当然このことに気がつかず、ぶつからないように大慌てでクランプを緩めることになりました。水平方向も電源投入時と同じ位置に戻してほしいと思います。

アストロモードの使い方

上の動画でPolarisのアストロモードを使用しています。この動画に沿って簡単に使い方を見ていきましょう。

設置・三脚を水平に

この画像のように水平に整地された場所なら、普通に三脚を立てるだけで水平と見なしてよいでしょう。

Polarisは専門的には「1スターアライメント」と呼ばれる方法で星空の向きを認識します。このためPolarisの設置の際には「水平出し」をきっちりと行う必要があります(*)。

(*)水平出しの精度がPolarisが認識する天の北極の向きの精度に直結します。

Polarisには水準器が付属していないので、三脚やアルカクランプの水準器を頼りに設置します。

2022/7/9追記)

真偽は不明ですが、水平はPolaris側のセンサーで自動補正される、という情報があるようです。もしそれが正しく実装されているのであれば、水平出しは問題ではなくなるはずですが、今回はそこまで検証できませんでした。

アプリを「アストロモード」にする

Polarisのアプリには「Photo」「PANO」「SUN」などさまざまな機能がありますが、この中から「ASTRO」を選択します。

キャリブレーション

スマホをどこに当てればいいのか、最初は戸惑うかもしれません。画面に表示された絵を良く見て合わせてください。

アストロモードを選ぶと、「キャリブレーション」を求められます。スマホの側面をPolarisの本体側面にピッタリと当てた状態で「Calibrate」ボタンをタップします。これはスマホの「方位センサー」を使用して、Polarisに方角(天の北極の「方位」)を教えるための操作です(*)。

(*)天の北極の「高度」はスマホのGPSの緯度情報から計算できるので、Polarisが水平に設置されている前提なら、キャリブレーションで方位がわかれば天の北極の向きが決定できることになります。

アライメント

アストロモードの「Tracking(追尾)」機能を有効にするためには、もう一段階「アライメント」の操作が必要です。アライメントは星を一つ導入して、その星を画面上の中心に正確に合わせることで行います。

アライメントはどの星で行ってもかまいません。できれば明るい一等星が合わせやすいのですが、全く星の知識がないと、英字表記の星の名前から一等星を選び出すのは難しいかもしれません。無難なのは「北極星(Polaris)」です(*)。

(*)候補のリストには基本的に明るい星しか含まれていないので、何も考えず適当な星を選んでも、大丈夫と言えば大丈夫です。

スマホの方位センサーが大きく狂ってさえいなければ(*)、画面の中心付近に星があるはずです。その星を、スマホ画面上の「ジョイスティック(左右の丸)」を操作して、中心になるように動かします。この操作が最終的に設置精度を左右するので、慎重に合わせましょう。

(*)スマホの方位(地磁気)センサーは近傍の磁性体(鉄骨など)で大きく狂う場合があります。

アライメントが終了すると、画面の右下に「Tracking」のボタンが表示され、追尾をONにすることができるようになります。トラッキングが開始するとPolarisの3つの微動ノブがゆっくりと回転を始めます。

自動導入

Ursa Majar はおおぐま座のこと。

あとは撮影したい対象を選んでその方向にカメラを向けます。現在のPolarisアプリで導入が可能な対象は「惑星・月」「明るい星」「星座」「銀河中心」「赤緯赤経直接指定」です。現実的には「星座」を選択することになるでしょうが、星座の英語表記は日本人にはあまりなじみのないものですし、星並びから認識できる星座もさほど多くないかもしれません。導入対象をアプリから選ぶのが(日本人にとっては)難しい。これは実はかなり大きなハードルになりそうです。

星図表示とAR Live

導入対象を選んでGOTOすれば、あとはなんとか直感的に操作することは可能です。上の画像は「いて座(Sagittarius)」にGOTOした状態ですが、このように画面上に星図が表示され、カメラのライブビュー映像と重ね合わせて表示することができます(*)。

(*)ただし、星図とライブビュー画像の拡大率を合わせる機能がないのが悲しすぎる問題です(後述)。

この状態でジョイスティックを操作して構図を微調整することが可能なのですが、水平方向のジョイスティックは水平軸ではなくアストロ軸の回転となるため、大きく動かす(例えば反対側に向ける)ことはできません。

このあたりの動作仕様は最初はけっこう混乱させられるかもしれません。知っていても若干「意味不明」に感じてしまうところがあります(*)。

(*)例えば、ビクセンの「スターブックテン」の「チャートモード」のような、星図を自由に動かしてGOTO先を指定できる機能が必要なのではないでしょうか。現状では「対象名を正確に知っていないと導入できない」ことになります。

さらに。詳細は後述しますが、星図表示とAR Liveは縦位置に対応していません。星図の表示は常に水平線に平行のランドスケープ(横長)表示。回転式三脚座などでカメラの角度を変えるとAR Liveと星図の表示はその角度分ずれてしまいます。現状のPolarisは「水平線に平行のランドスケープ(横長)構図」しか考慮されていないようです。

作例

広角レンズで天の川

昇る天の川。SONY α7SIII(ノーマル)14mmF1.8GM F1.8 ISO1600 30秒5枚コンポジット 地上は固定撮影別撮り合成 Polarisで追尾 奈良県大塔村

まずはシンプルに、超広角14mmレンズで天の川。焦点距離14mmであっても、追尾なしの30秒露出では少し星は流れます。天の川の精細感を重視するなら追尾して星を止めたい対象です。

この作例では30秒露出を5枚コンポジットしていますが、よりお手軽に・後処理の手間をかけたくない方は、1コマ2分〜4分くらい露出するとよいでしょう。きちんと設置されてさえいれば、その程度の露出で流れることはないはずです。

なお、Polarisには撮像画像を加算平均などでコンポジットする機能はありません。自分で撮像データを専用ソフトを使用して処理する必要があります。

このような撮影だけをするのであれば、Polarisでなくてもポラリエやナノトラッカーのような小型赤道儀でも可能ですが(*)、Polarisの真価が発揮されるのはまだこの先です。

(*)30秒露出程度なら、極軸合わせもあまり神経質になる必要はなく「だいたい北に向ける」程度でも充分です。数分〜4分露出になってくると、雑な設置では流れてしまう場合もあります。露出時間が長くなるほど、Polarisは初心者でも扱いやすいといえるでしょう。

天の川を長めの焦点距離のカメラレンズで精細に描写する

さそり座からいて座。EOS6D(天体改造) シグマ50mmF1.4Art F2.8 ISO1600 60秒5枚コンポジット Polarisで追尾 奈良県大塔村。外部リモコンを使用してインターバル撮影。

三脚にカメラに固定するだけの固定撮影でも星は写ります。しかし、露出時間が30秒を超えると焦点距離の短い超広角レンズであっても、流れが目立ってしまいます。Polarisとアストロキットを使って星を追尾すれば、精細な天の川の星々を写しだすことが可能になります。

上の作例は、星空の撮影としては長めの焦点距離の50mmレンズで、1コマ60秒とたっぷり露出をかけて撮影したもの。焦点距離50mmでは、Polarisの追尾精度は全く心配無用なレベルです。さそり座からいて座にかけての天の川と星雲の微細構造がバッチリ写っています。

追尾ありなしの画像を比較してみました。追尾なしの30秒では、完全に星が流れてしまっています。この焦点距離では8秒くらいまで露出を切り詰めれば流れは目立たなくなり、4秒なら「ほぼ点」になりますが、その分ISO感度を上げなくてはならず、今度はノイズが目立ってしまいます。

固定撮影・4秒露出・多数枚で撮影し、コンポジットなど後処理で頑張るというのもひとつの方法ですが、シンプルに1コマの露出をたっぷりかけるのが正しい「Polarisお手軽撮影法」でしょう。

ここで重要なのは「流れない程度の最長の露出時間を見極める」ことです。4分露出で全コマ流れてしまってはシャレになりません。まめに撮像画像をチェックして「少し流れてるかな?」と感じたら露出時間を1/2段ほど(4分なら3分、2分なら90秒、とか)短くしてみてください。



望遠レンズでディープスカイ撮影

銀河中心部付近。EOS6D(天体改造) EF70-200mmF4L IS F4 200mm  ISO6400 30秒8枚コンポジット Polarisで追尾 奈良県大塔村。外部リモコンを使用してインターバル撮影。

「星空の撮影=超広角レンズ」という風潮?がありますが^^;; あまり長くないカメラレンズ(焦点距離85〜200mm)で撮る星空(特に天の川とその周辺)の面白さをもっと多くの方に経験してほしいと筆者は考えています。

Polarisはそんな撮影にまさにうってつけです。200mmレンズなら30秒前後、100mmレンズなら60秒前後を目安に、天の川にカメラを向けてしっかりピントを合わせて撮影してみましょう。無数の星、点在する星雲と星団、入り組んだ天の川の構造を写し撮ることができます。

「詳しいことはよくわからないけど、天の川を撮りたい!」場合、Polarisアプリの対象リスト(Object List)の「Galactic Center(銀河中心)」にGOTOしてみてください。「いて座」の付近が空に見えている必要がありますが、どこかに見えてさえいればその方向に導入してくれます(*)。

(*)後述しますが、この対象リストをもう少し充実させて、写しやすい天体(オリオン大星雲、北アメリカ星雲、すばる、バラ星雲、など)も自動導入できるようにしてほしいところです。

パノラマ撮影で天の川アーチ

英彦山にかかる天の川。α7S(天体改造) サムヤン35mmF11.4 F2.8  ISO6400 20秒 Polarisで横8コマ・縦2コマパノラマ撮影 ICEでステッチ プロソフトンクリア+スターリーナイト 福岡県添田村

個人的に一番期待している機能がパノラマ撮影。夢の「追尾ありのパノラマ自動撮影」が可能になるからです。多数枚のパノラマ撮影で1コマ毎にコンポジットするのは死ぬほど面倒なので、追尾撮影で一コマの露出時間を長くできるPolarisの機能は非常に有効になるはずです。

しかし、残念ながら使用した時点(2022年5月)ではまだアストロモードでのパノラマが動いておらず(*)、上の作例は通常のパノラマ撮影(追尾なし)で撮影しています。空の条件も悪かったのであまり冴えたリザルトではありませんが、Polarisの実力を発揮したいテーマです。

このパノラマ撮影の様子は動画にしています。他にもPolarisの操作や作例も収録しています。ぜひごらんください!

本稿作成中(2022年6月下旬)にリリースされたアプリ1.2.5では、アストロモードのパノラマ設定画面が動作可能になっていました。Polarisのアストロモードでないパノラマ撮影(PANO)とは指定の方法が全く異なり、回転角と枚数を指定します(*)。

(*)こちらの方がパノラマ撮影的には自然な指定方法です。PANOモードでは、レンズの焦点距離と開始地点、終了地点、オーバーラップ率を指定し、撮影枚数はPolarisが自動設定します。

実戦では使用できていないのですが、室内で試してみたところ若干怪しい挙動が見られました(*)。アプリの不安定さは各所で指摘されていますが、迅速な改修とリリースを期待したいものです。

(*)若干というレベルでもなかったのですが、再現確認できていないので詳述は避けておきます。

魚眼レンズで撮影する

昇る天の川。EOS6D(天体改造) EF8-15mmF4L F4  ISO3200 60秒5枚コンポジット Polarisで追尾 奈良県大塔村。外部リモコンを使用してインターバル撮影。地上は固定撮影3枚を合成。

魚眼レンズを使用すれば、1枚撮りでも天の川アーチが撮影できます。この作例はキヤノンの魚眼ズームレンズを使用し、対角魚眼の15mmで撮影しました。F4とやや暗いレンズなので、天の川をしっかり写すために追尾撮影で1コマ60秒を5枚コンポジットしました。

魚眼レンズを含めた超広角レンズでは、固定撮影や経緯台による追尾撮影、PENTAXのアストロトレーサーなどでは、レンズの歪みのために周辺の星が流れてしまいますが(*)、赤道儀と同様に追尾してくれるPolarisなら問題なしです。

(*)1枚画像で周辺が流れる(回転する)問題と、多数枚コンポジットする際に周辺の星が正しく位置合わせできなくなる2つの問題があります。

重量級レンズを搭載してみる

自宅ベランダでPolarisで撮影中。カメラ込みで約3.5kgの重量機材(EF300mmF2.8レンズ)でも搭載可能でした。長時間の露出は無理ですが、うまく使えば望遠レンズを使用したディープスカイ撮影を、これまでのポータブル赤道儀よりもはるかに簡単に楽しむことが可能です。

Polarisではどのくらいの重さの機材が使えるのか?試しにレンズのみで重量が2.5kgのキヤノンの300mmF2.8レンズで撮影してみました。

上の画像は撮影時の様子ですが、地平高度30度〜45度であれば重心のずれも少なく、非常に安定した体勢で撮影できました。このあたりは経緯台マウントの大きなメリットといえるでしょう。

M8干潟星雲とM20三裂星雲。EOS6D(天体改造) EF300mmF2.8L IS ISO800 20秒25枚コンポジット Comet BPフィルター 福岡市中央区  Polarisで追尾

いて座の干潟星雲M8と三裂星雲M20です。都市部のベランダでここまで撮れれば、じゅうぶん遊べますね^^

追尾精度ですが、1コマ20秒なら、うるさく言わなければ全部使ってもいいくらいです。赤道儀よりも設置が簡単なPolarisなら、望遠レンズによるディープスカイ撮影もそこそこ楽しめると思います。

EOS6D EF300mmF2.8L IS 20秒 Polarisで追尾 等倍画像を2倍拡大

25枚のうち、後半15枚の等倍画像。3枚〜5枚くらいはうるさく言えば捨てた方がいい流れ方ですが、これはなかなかの高精度といえるでしょう(*)。繰り返しますが、300mm望遠レンズでのリザルトです。この精度がご自分にとって充分なのか不足なのかは、画像を見てご判断ください。

(*)もちろん、上にはキリがありません。筆者の個人的経験に照らせば、SWAT赤道儀には負けていますが、初代ポラリエ+強化パーツのドイツ式構成とはいい勝負でしょう。標準構成のポン置きでここまで追尾できるのはむしろ「なかなかやるヤン」と感じました。

ただし、視界の狭いベランダで使用する際、Polarisのアライメントの際の基準星が見つけにくいという問題があります。上の画像のように、Polarisは明るい星のリストを表示してアライメント対象(導入対象)を選択できるのですが、このように星は英語表記で赤経順に並んでいます。この中から「いま見えている名前を知っている星」を見つけ出すのは、初心者ではかなり難度が高いように感じました(*)。

(*)北極星が見える場所であれば、アライメント星にはオールシーズン見えている「Polaris(北極星)」がオススメです。

困った問題

常にライブビューモードで動作する・EOS6D改造機での問題

EOS6D改造機におけるダーク画像の比較。ISO6400の+3段補正。たっぷり光量がある条件では大きな問題にはなりませんが、強く強調をかける天体写真、特に露出倍数の大きな光害カット・ナローバンドフィルター使用時には大きな問題になります。ダーク減算で軽減することはできますが、カブリに不定なゆらぎがあるため、完全な補正は困難です。

Polarisとカメラを接続すると、カメラ側は常に「ライブビューモード」となります。カメラの映像をスマホに転送し、スマホ側でその映像を見ながら操作をするという製品コンセプト上は当然のことなのですが、ここで一つ問題があります。天文界隈で最も多く使われているといっても過言ではない「EOS 6D改造機」で「赤外線カブリ」が回避できないのです(*)。

(*)EOS 6Dのボディ内部には、何らかの目的のために赤外線センサーが設置されているようで、ライブビューモードで高感度・長時間露光をすると、その赤外線によってカブリが発生してしまいます。このため、シャッターを切る前にライブビューモードをOFFにして撮影するというのがお約束になっています。

カメラとPolarisを接続するケーブルを引き抜いてしまい、別のリモコンでカメラのシャッターを制御すればこの問題は回避できるのですが、それはPolarisを「ただの追尾架台」としてのみ使用することになり、本来のPolarisのメリットであるはずのシャッターコントロールやパノラマ撮影ができなくなってしまいます。

この問題は、Polarisの制御ソフトウェアで対応できるはずです(*)。早期の対応が望まれます。

(*)ASIAIRやステラショットなどの他の天体撮影ツールではこの問題は考慮・回避されています。

プレビュー画像が粗すぎる

ポラリスアプリでの画像プレビュー。本体にはフル解像度の画像が保存されているにもかかわらず、プレビュー画像はリサイズされてしまっているのか、とても粗くてピントや追尾のチェックには使えません。画面右の「ダウンロード」ボタンを押して画像を取り込めばスマホ側の機能でフル解像度で表示できますが、いかにも面倒。

Polarisで撮影された画像は、基本的にはPolaris本体のSDカードに、rawとjpegの両方が保存されます(*)。

(*)逆に、カメラ側の設定は「raw+jpeg」でなくてはなりません。EOS 6Dではカメラ側のメモリカードにも保存されますが、ソニーαの一部機種では保存されないという情報もあります。ソニーの場合はカメラ側の「PCリモート」の設定でカメラ側にも画像を保存する設定にしないとカメラには保存されないようです。

スマホアプリではこの撮影画像をプレビューすることができるのですが、表示画像の解像度が低すぎるため、ピントチェック用にはほぼ使えません(*)。Polaris本体にはフル解像度のファイルが保存されているのですから、スマホ側で操作を完結させるのであれば、高精細の画像を表示できるようにしてほしいと思います。

(*)EOS 6Dの場合(他のカメラも?)Polarisと接続している状態ではカメラ側の画像プレビュー操作ができないため、プレビューのためだけにいったんケーブルを引き抜かなくてはならず、これもとても不便です。

レンズの焦点距離を認識してくれない「AR Live」

AR Liveのイメージ。実際には暗夜では星や風景の見え方はカメラのライブビュー性能に大きく依存します。画像はハメコミ合成です。

Polarisはカメラのライブビュー画像と、Polarisが認識している方位・高度の星図をオーバーレイして表示する「AR Live」という機能があります。いかにも便利そうな機能なのですが、致命的な問題があります。

なんと、レンズの焦点距離を認識して星図のスケールを自動調整してくれるわけではなく、星図の拡大率を自分で調整しなくてはなりません。これでは・・・全く使い物になりません。レンズの焦点距離と画角はフルマニュアルレンズでない限りカメラ側から取得できるはずなので、速やかな対応を希望するものです。

「水平」構図でしか撮れない

赤道儀ではないので当然と言えば当然なのですが、構図は水平線と平行な構図でしか撮ることができません。地上風景を入れた星空の場合はこれでもいいのですが、いわゆる「天体写真」を撮りたい場合はちょっと困ります。カメラ側に回転式の三脚座があれば(ないしはそれに準じる回転装置があれば)自由に回転して構図を調整できますが、カメラボディのプレート直結の場合は調整のしようがありません。

縦・横位置いずれでもアルカスイス互換クランプに装着できるのがカメラリグ(L型プレート)のメリットですが、Polarisで必要な設置方向と90度ずれてしまうため、このままでは使用することができません(上画像左)。手持ちのアルカプレート・クランプを組み合わせて90度変換して装着したところ。USBケーブルとの干渉を防ぐために若干オフセットが必要ですがとりあえずは装着できました(上画像右)。

それよりも困るのが、回転式三脚座のない標準・広角域のレンズでは、マニュアル通りのセットアップでは「縦位置撮影できない」ことです。「カメラリグ(L型プレート)」を使えばいいじゃないか、と思ってしまうのですが、普通のカメラリグはプレートの方向が光軸と垂直。Polarisは光軸と平行にプレートを装着しないと、アライメントもできないことになります。

カメラとPolarisの取付方法を工夫して縦位置に装着したとしても、問題が残ります。上の画像はカメラを縦位置になるようにセットした例ですが、AR Live表示が90度傾いてしまっています。PolarisのAR Live表示は常に「カメラが水平に平行なランドスケープ(横長表示)モード」を前提としているのでしょうが、これはどうなのでしょうか(*)。

(*)カメラ側の電子水準器から縦横や傾き情報を取得して補正することはできないのでしょうか。さらには、Plate Solving(星並びから自動的にカメラが向いている方角を自動判別する機能)でAR Live表示と星図を自動的に一致させてくれれば完璧なのですが。

さらに推測ですが、縦位置にカメラを装着した場合、アライメントの微調整の水平・垂直をPolarisが逆に認識してしまうはず(*)です。アライメント終了までは横位置構図にしておくべきでしょう。

(*)2022/7/1追記「逆に認識」すると、アライメントの際のジョイスティックの上下と左右が逆になりますが、星を正しく中心に導入すればアライメントそのものは正しく完了するものと思われます。

自由雲台を間に入れると重心が高くなりバランスが若干悪くなりますが、Polarisは非常に剛性が高く、少々のオフバランスは大きな問題にならないように感じました。

「自由雲台」を使用すれば構図の調整は自由になります(*)。ただし、構図やカメラの傾きを崩してしまうと、Polarisの星図表示と実際の撮影範囲がずれてしまうので、自動導入は正確に機能しなくなり、Polarisは「ただの追尾雲台」としてのみ使うことになります。

(*)この方法で200mm望遠レンズも使用してみましたが、追尾精度的には目立って悪化したようには感じませんでした。ただし、良くなる要素は何一つありませんので、いくばくかは悪化しているはずです。

カメラリグで縦位置撮影する場合と同様に、アライメント終了まではカメラと本体の装着は正規の装着方法で行う必要があると推測されます。カメラに回転式三脚座が付属している場合も、アライメント終了までは正確に「横位置」にしておくべきでしょう。

(*)2022/7/1 一部正しくない表現があり修正。

自由雲台を使用するとPolarisとカメラの位置関係が不定になります。アライメントが完了するまでは、自由雲台を介さず本来の取付方法でカメラを装着しておくことが必要だと推測します。

三脚とPolarisの干渉

三脚側のアルカスイスクランプのノブと干渉。干渉しないように設置しても(左)、収納時にホームポジションに戻る際に干渉する可能性があります(右)。

Polarisの微動ノブは大型で回しやすいのはいいのですが、大きすぎるため収納モードでは三脚やプレートと干渉する可能性が高くなっています。というか、私の環境では「一定の確率で」必ず干渉します。具体的には、Polarisを干渉しないように三脚に装着しても、収納時(*)に水平方向の位置が不定になるためです。

(*)電源ボタンを1回長押しするとPlarisの動作が停止し、もう一度長押しで「収納状態」まで垂直軸が回転します。

言葉を変えると、Polarisは垂直軸とアストロ軸には「ホームポジション」が決まっているのに、水平軸には「ホームポジション」がないのです。これが問題の根源。起動時の水平軸を記憶し、収納モードでは水平軸もその向きに戻せば、この問題は回避できるはずです。

運用上の回避方法としては、機材撤収時には「電源ボタンを1回押してPolarisの動作を停止」した後、搭載機材を全て外し、Polaris本体も三脚から外した後で、もう一度電源ボタンを押して「収納状態」にすることです(*)。

(*)一度電源ボタンを長押ししてPolarisを停止すると、「必ず」ホームポジションに戻さないと電源ONできないのも、微妙に不便なところです。撮影場所を移動するときやしばらく撮影しないとき、つい電源ボタンをOFFしてしまうと、わざわざホームポジションに戻さないと撮影を再開できないんですよね・・三脚干渉問題があるのでさらにややこしい・・

Deep Sky Objectを指定して自動導入したい

さすがにM42は星図上にそれらしく表示されているのですが・・・直接この天体を中心に移動する手段がなく、画面上の上下左右のジョイスティックで動かす必要があります。ASI AIRのように星図上の長押しでGOTOできるとよいのですが。

Polarisのアストロモードでは、天体の自動導入が可能です。月・惑星・明るい恒星・星座を指定して導入できるのですが、オリオン大星雲(M42)やアンドロメダ銀河(M31)などの深宇宙天体(Deep Sky Object)を指定することができません。

Polarisのアプリ画面上の星図にも記載されていないことから、そもそもカタログ情報が登録されていないのでしょう。せっかく初心者でも簡単に使える形で、200mmや300mmといった望遠レンズでも追尾可能な性能を持っているのですから、せめてメシエ天体カルドウェル天体のような有名な天体が指定できないと魅力が半減してしまいます。

どんな人に向いているのか?

天リフレビュー恒例、脳内ユーザーの声です。年齢、コメントはPolarisの当初想定機能が実現した想定で編集部が創作したもので、登場する人物とは全く関係ありません。フリー素材「PAKUTASO」を使用しています。https://www.pakutaso.com

いろいろと問題はあるものの、Polarisが当初想定機能を実現し、想定できていなかった課題を修正することができれば、非常に魅力的な製品になると感じました。その段階まで到達したという想定で、どんなユーザーに向いているかを考えてみました。

天体には詳しくないけど、キレイな星の写真を撮りたい!

50mmレンズで撮影した天の川。Polarisは標準〜中望遠で精細な天の川を撮るのがなかなか楽しいです。EOS6D(天体改造) シグマ50mmF1.4Art F4   ISO6400 60秒5枚コンポジット Polarisで追尾 奈良県大塔村。外部リモコンを使用してインターバル撮影。

星座のことをよく知らなくても、北極星が見つけられなくても、天体の追尾撮影ができる。これこそがPolarisの「アストロキット」の存在意義です。前述の「天体カタログの充実」が前提となりますが、そんな人にうってつけなのがPolarisです。

「天の川アーチ」を撮りたい!

Polarisで天の川アーチ。35mmレンズで8×2のパノラマ撮影。これを撮影した時点ではまだ「アストロモードでのパノラマ」が実装されていなかったので、追尾なしの通常のパノラマ機能を使用しました。ステッチはICEを使用。

「みんな大好き、天の川アーチ」。天の川アーチを美しく撮るには、パノラマ撮影がほぼ必須なのですが、パノラマ撮影はけっこう地味で面倒な作業です。しかも、追尾しながらのパノラマ撮影となると、かなり大がかりな機材が必要になってきます。

ところがPolarisを使えば、夢の「追尾+パノラマ」の撮影が全自動で可能。もうこの目的だけであってもPolarisが欲しくなるレベルです。広角のパノラマ撮影だけでなく、より長い焦点距離による超精細な星野写真にもチャレンジできると思います。

ただし、現時点ではPolarisのパノラマ撮影は「各コマのrawデータ取得」までと思っていた方がいいでしょう(*)。ICEやPTGui Proのようなソフトウェアでステッチできることが前提になります。

(*)本稿作成中のバージョンアップで、アストロモードのパノラマのステッチに対応したようですが未検証です。

星空写真・天体写真ファンのサブ機として

200mmでいて座の銀河中心部。200mmで30秒なら追尾の歩留まりは80%を越えました。お手軽にあちこち撮るのが楽しい^^ EOS6D EF70-200mmF4L IS 30秒8枚コンポジットPolarisで追尾 外部リモコンを使用してインターバル撮影 奈良県大塔村

Polarisは本体とアストロキットを合わせて重量約2kg。本体だけで比べると、重量575gのビクセンのポラリエUよりずっと重いのですが、200mm級の望遠レンズを追尾する際に必要になってくるオプションパーツ(*)まで含めるとむしろ軽いといえます。

(*)極軸望遠鏡(ステー込230g)、微動雲台(795g)を含めると1.6kg。これに自由雲台を加えればほぼ同じになります。

オートガイドは使えないので、Polarisの追尾精度の範囲内での運用にはなりますが、軽量でシンプルな追尾架台、というだけでもじゅうぶんに使用価値はあるでしょう。全自動のパノラマ撮影も魅力的です。

(*)太陽追尾もできるので、日食撮影の海外遠征にも良さそうです。

風景写真も天体写真も撮る人に

「スマホで制御できる(*)インテリジェントな雲台」には無限の可能性があります。

(*)PolarisにはなんとSIMカードスロットまで搭載されていて(実際に使用するには対応モデルの購入が必要)、セルラー回線を使用したリモート操作も可能になる(予定?)だそうです。

BENRO社のコンセプトと構想が全て実現するまでにはまだ時間がかかるでしょうが、そんな「未来」に賛同し期待するなら、そのためにリスクを負って「応援」してもいいと考えるなら、Polarisはそんな夢へのハシゴとなることでしょう。実際、Polarisのクラファンに参加された方は、そんな思いで未来に賭けたのだと思います。BENRO社にはその思いに応える義務があります。

現在の「Benro Polaris」の状況

アプリ・ファームのアップデート状況

2022年6月26日時点で、アプリ(iOS版)の最新バージョンは1.25。5ヶ月間で10回ほどアップデートされています。ハードウェア側のファームは6.0.0.8が最新となっています。

まだ試せていないのですが「Support Starry sky stack panorama」とあるのでアストロモードでのパノラマ撮影のストレッチが可能になったのでしょうか?本来ならそのあたりの機能毎の完成度をきちんとレポートできるとよいのですが、正直バージョンアップをキャッチアップしきれていないのが現状です。

ユーザーコミュニティ

https://www.facebook.com/groups/326138891873755

FaceBookには「BENRO Polaris」の公式ユーザーグループがあります。英語の書き込みがほとんどですが、Facebookの翻訳機能でそこそこ読めるので、最新の情報を入手できるでしょう(*)。

(*)ただし、執筆時点では半分くらい?は「クレーム」のようなな書き込みで、ちょっと読むのに疲れます^^;; 筆者も何回か書き込みしたのですが「俺のところには届いていないんだが!」的なレスもあったり・・・

星景写真家・タイムラプスクリエーターの成澤広幸さんのライブ配信アーカイブ。Polarisについて、インプレッションや操作感がじっくり解説されています。

まとめ

Polarisで昇る天の川を撮影中。まだまだ荒削りですが未来の撮影スタイルを感じる製品でした。

いかがでしたか?

斬新な機構、高い剛性と質感、極軸合わせ不要の天体追尾機能、なかなかイケてる追尾精度。「BENRO Polaris」が当初の構想を完成させることができれば、素晴らしい製品になることは間違いありません。

特に標準〜望遠域での天体写真を撮影するためのツールとしては、専門知識がなくても簡単に撮影できるという意味で、革命的といってもいいくらいです(*)。

(*)本当に「革命」となるのは、Plate Solving(星空の画像と星図を自動照合する機能)が実装され、アライメントまで完全自動化できた時です。さらにはスマホの「ナイトモード」のような位置合わせ付き加算平均コンポジット機能が加われば完璧です。Polarisにその日が訪れるかどうかはわかりませんが、もうすぐそこまで見えているのは確かです。

しかし、繰り返しになりますが、現状ではいろいろな点で未完成なところがあります。この製品が完成して全てのユーザーが満足できるかどうかは、今後のBENRO社の頑張り次第。大変だと思いますが、とにかく製品を完成させ、その先の壁を越えてほしいと思います。


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製品概要 製品構成 「BENRO Polaris」は20cm角ほどの大きさの専用ソフトケースに収納されています。画像には写っていませんが、肩掛け式のベルトも付属。 上の画像は別売の「アストロキット」を含めたパッケージのほとんど全て。この画像には写っていませんが、六角レンチと太ネジ(UNC3/8)細ネジ(UNC1/4)の変換アダプタがこのほかにも付属します。小さな冊子が付属しますが、これはパッキングリストと保証書、そしてオンラインマニュアルのQRコードが印字されています。マニュアルは英文と中文のみで、日本語版は提供されていませんでした(*)。 (*)将来は提供されるのでしょうか・・・? ケーブルは、アストロキットと本体を接続する専用ケーブルと、カメラと本体を接続するケーブルが3本(USB-C、Micro USB、Mini USB)。本体側の端子は全てUSB-Cです。 Polaris本体 非常に高い剛性感で、可動部分のガタツキは皆無。ガンメタリック色の高級感のある美しい仕上げ、現代風のスマートなデザインとともに、手に取った第一印象は最高レベルです。昨今の中国の機械設計・加工技術は超一流の域に達しているといってもいいでしょう。 本体には多くのスロット・端子があります。SIMカードを挿すと4G回線経由でPolarisを制御できるようになるそうですが、SIM対応モデルの購入が必要なようです。(SIM対応モデルでなくてもスロットは存在する模様)。 シャッターやフラッシュ、HDMI端子を何の目的でどうやって使うのかは不明(*)ですが、とにかく考えられる端子は全て用意した、という感じです。 (*)レビュー記事を書くなら調べろよ、、とお叱りを受けそうですが。。どの機能が本来どこまで実現されるべきなのか、どこまで実装されているのか不明なところが多いため、今回は「アストロモード」にほぼ限定したレビューとなっております(大汗 ちなみに、Polarisは内蔵の充電池で駆動します。動作中の給電も可能なので、モバイルバッテリを用意すれば長時間の使用も可能です。給電端子はUSB-Cで、三脚取付部のすぐ上にあります。 本体の重量は実測で1463g。これに528gのアストロキットを加えると約2kg。決して軽くはありませんが、ポータブル赤道儀では本体以外に極軸微動装置・極軸望遠鏡・自由雲台などさまざまなパーツを必要とすることを考えれば、重量面での不利はさほどないのではないかと感じました。 垂直・水平の回転軸には大きな2つのノブが取り付けられており、手動で回転して動かすことも可能です(*)。 (*)Polarisの回転軸が駆動しているときは、ノブも回転しています。このときは手動で動かすことはできません。 一つ問題なのが、この大きなノブ(上下軸)が三脚部と普通に干渉してしまうこと。収納状態ではPolarisの底面よりも2cmほど下までノブがはみ出てしまうのです(*)。若干重量増になるかもしれませんが、底面はもう少し背を高くしてほしいものです。 (*)後述しますが、干渉しないように設置したからといって安心してはいけません。電源切断時に収納状態に戻る際に干渉することがあります。 アストロキット こちらは別売のアストロキット。アストロキットを使用することで、アストロモードで天体の「追尾(Tracking)」が可能になります(*1)。上下・水平の2軸に加えて、水平軸から45度傾いた「第3の回転軸」を追加することで、経緯台追尾における「視野の回転」をキャンセルすることができるのです(*2)。 (*1)「アストロモード」は「アストロキット」がなくても使用でき自動導入などが可能になりますが「追尾」ができるのはアストロキットを接続した場合のみです。 (*2)スリック社の「フリーターン雲台」で構図の傾きの補正をしたことのある方なら、この動作をイメージすることができると思います。 上の動画は、Polarisで天の北極付近を約20分間追尾したときの動作を5秒間で再生したものです。水平軸とアストロキットの回転軸(以下、便宜的に「アストロ軸」と呼ぶことにします)が、反対方向に回転していることと、その結果カメラが光軸に対して回転方向に動いていることがわかります。 初めて製品を手にした方にとって、アストロキットのセットアップは、ほぼ間違いなく戸惑うものになることでしょう(*)。 (*)Polarisは「マニュアルを見ないと、ほぼ分からない」操作がいくつかあって、アストロキットのセットアップもその一つです。 まず、あらかじめカメラにPolaris付属のアルカプレートを装着します。装着の方向は上の画像の通り、アリガタと光軸を平行にしなくてはなりません(*)。 (*)装着時の角度が大きくズレていると、Polarisの追尾精度に影響を与えるものと推測します。 アストロキットとPolaris本体は、付属の専用ケーブルで接続します。このケーブルは両端がUSB-Cのケーブルで「SS」と彫られているので「USB 3.1 Gen 1対応(SuperSpeed)」だと推測しますが、他の同等ケーブルが流用できるかどうかは不明です(*)。 (*)USB 2.0対応品では×、ThunderBolt43ケーブルも×でした。非対応ケーブルで接続すると「Start Tracking」のボタンが表示されません。なお、アストロキットには「Extra」と書かれたUSB-C端子とは別に、もう一つのUSB-C端子がありますが、こちらに接続すると「Start Tracking」のボタンが表示されません。 電源導入前の初期状態は、カメラが「おじぎ」したような状態にセットアップします(上画像の左)。なんとなく直感的にはこの反対向きに設定したくなるのですが、必ずこの向きに設定しましょう。電源を投入すると、Polarisが「起き上がって」上画像の右のような状態になります。 電源のON/OFF 電源のON/OFFも、マニュアルを見ないと多分無理です^^;; まず、電源のONですが、「1回押し」の後「長押し」します。「2回押し」ではなく、一回目は短い押し、二回目長押しです。この操作は筆者はこれまで経験したことのないもので、自力で発見することができず、マニュアルを開くことになりました^^;; 電源のOFFは、一回目の長押しで電源OFF、もう一度長押しすると「ホームポジション」に戻ります。この「ホームポジション」が曲者で、垂直方向は電源ONの前の状態に復帰するのですが、水平方向はその時の状態ママです。このため、使用中に水平方向の移動が発生すると(普通は発生しますよね^^;)、ホームポジションは三脚に対して不定になります。 つまり、三脚に装着する際にアルカクランプのノブなどに干渉しないようにしてあっても、ホームポジションに復帰する際に干渉してしまうことが起きえます。これは要注意!です(*)。 (*)筆者は当然このことに気がつかず、ぶつからないように大慌てでクランプを緩めることになりました。水平方向も電源投入時と同じ位置に戻してほしいと思います。 アストロモードの使い方 上の動画でPolarisのアストロモードを使用しています。この動画に沿って簡単に使い方を見ていきましょう。 設置・三脚を水平に Polarisは専門的には「1スターアライメント」と呼ばれる方法で星空の向きを認識します。このためPolarisの設置の際には「水平出し」をきっちりと行う必要があります(*)。 (*)水平出しの精度がPolarisが認識する天の北極の向きの精度に直結します。 Polarisには水準器が付属していないので、三脚やアルカクランプの水準器を頼りに設置します。 2022/7/9追記) 真偽は不明ですが、水平はPolaris側のセンサーで自動補正される、という情報があるようです。もしそれが正しく実装されているのであれば、水平出しは問題ではなくなるはずですが、今回はそこまで検証できませんでした。 アプリを「アストロモード」にする Polarisのアプリには「Photo」「PANO」「SUN」などさまざまな機能がありますが、この中から「ASTRO」を選択します。 キャリブレーション アストロモードを選ぶと、「キャリブレーション」を求められます。スマホの側面をPolarisの本体側面にピッタリと当てた状態で「Calibrate」ボタンをタップします。これはスマホの「方位センサー」を使用して、Polarisに方角(天の北極の「方位」)を教えるための操作です(*)。 (*)天の北極の「高度」はスマホのGPSの緯度情報から計算できるので、Polarisが水平に設置されている前提なら、キャリブレーションで方位がわかれば天の北極の向きが決定できることになります。 アライメント アストロモードの「Tracking(追尾)」機能を有効にするためには、もう一段階「アライメント」の操作が必要です。アライメントは星を一つ導入して、その星を画面上の中心に正確に合わせることで行います。 アライメントはどの星で行ってもかまいません。できれば明るい一等星が合わせやすいのですが、全く星の知識がないと、英字表記の星の名前から一等星を選び出すのは難しいかもしれません。無難なのは「北極星(Polaris)」です(*)。 (*)候補のリストには基本的に明るい星しか含まれていないので、何も考えず適当な星を選んでも、大丈夫と言えば大丈夫です。 スマホの方位センサーが大きく狂ってさえいなければ(*)、画面の中心付近に星があるはずです。その星を、スマホ画面上の「ジョイスティック(左右の丸)」を操作して、中心になるように動かします。この操作が最終的に設置精度を左右するので、慎重に合わせましょう。 (*)スマホの方位(地磁気)センサーは近傍の磁性体(鉄骨など)で大きく狂う場合があります。 アライメントが終了すると、画面の右下に「Tracking」のボタンが表示され、追尾をONにすることができるようになります。トラッキングが開始するとPolarisの3つの微動ノブがゆっくりと回転を始めます。 自動導入 あとは撮影したい対象を選んでその方向にカメラを向けます。現在のPolarisアプリで導入が可能な対象は「惑星・月」「明るい星」「星座」「銀河中心」「赤緯赤経直接指定」です。現実的には「星座」を選択することになるでしょうが、星座の英語表記は日本人にはあまりなじみのないものですし、星並びから認識できる星座もさほど多くないかもしれません。導入対象をアプリから選ぶのが(日本人にとっては)難しい。これは実はかなり大きなハードルになりそうです。 星図表示とAR Live 導入対象を選んでGOTOすれば、あとはなんとか直感的に操作することは可能です。上の画像は「いて座(Sagittarius)」にGOTOした状態ですが、このように画面上に星図が表示され、カメラのライブビュー映像と重ね合わせて表示することができます(*)。 (*)ただし、星図とライブビュー画像の拡大率を合わせる機能がないのが悲しすぎる問題です(後述)。 この状態でジョイスティックを操作して構図を微調整することが可能なのですが、水平方向のジョイスティックは水平軸ではなくアストロ軸の回転となるため、大きく動かす(例えば反対側に向ける)ことはできません。 このあたりの動作仕様は最初はけっこう混乱させられるかもしれません。知っていても若干「意味不明」に感じてしまうところがあります(*)。 (*)例えば、ビクセンの「スターブックテン」の「チャートモード」のような、星図を自由に動かしてGOTO先を指定できる機能が必要なのではないでしょうか。現状では「対象名を正確に知っていないと導入できない」ことになります。 さらに。詳細は後述しますが、星図表示とAR Liveは縦位置に対応していません。星図の表示は常に水平線に平行のランドスケープ(横長)表示。回転式三脚座などでカメラの角度を変えるとAR Liveと星図の表示はその角度分ずれてしまいます。現状のPolarisは「水平線に平行のランドスケープ(横長)構図」しか考慮されていないようです。 作例 広角レンズで天の川 まずはシンプルに、超広角14mmレンズで天の川。焦点距離14mmであっても、追尾なしの30秒露出では少し星は流れます。天の川の精細感を重視するなら追尾して星を止めたい対象です。 この作例では30秒露出を5枚コンポジットしていますが、よりお手軽に・後処理の手間をかけたくない方は、1コマ2分〜4分くらい露出するとよいでしょう。きちんと設置されてさえいれば、その程度の露出で流れることはないはずです。 なお、Polarisには撮像画像を加算平均などでコンポジットする機能はありません。自分で撮像データを専用ソフトを使用して処理する必要があります。 このような撮影だけをするのであれば、Polarisでなくてもポラリエやナノトラッカーのような小型赤道儀でも可能ですが(*)、Polarisの真価が発揮されるのはまだこの先です。 (*)30秒露出程度なら、極軸合わせもあまり神経質になる必要はなく「だいたい北に向ける」程度でも充分です。数分〜4分露出になってくると、雑な設置では流れてしまう場合もあります。露出時間が長くなるほど、Polarisは初心者でも扱いやすいといえるでしょう。 天の川を長めの焦点距離のカメラレンズで精細に描写する 三脚にカメラに固定するだけの固定撮影でも星は写ります。しかし、露出時間が30秒を超えると焦点距離の短い超広角レンズであっても、流れが目立ってしまいます。Polarisとアストロキットを使って星を追尾すれば、精細な天の川の星々を写しだすことが可能になります。 上の作例は、星空の撮影としては長めの焦点距離の50mmレンズで、1コマ60秒とたっぷり露出をかけて撮影したもの。焦点距離50mmでは、Polarisの追尾精度は全く心配無用なレベルです。さそり座からいて座にかけての天の川と星雲の微細構造がバッチリ写っています。 追尾ありなしの画像を比較してみました。追尾なしの30秒では、完全に星が流れてしまっています。この焦点距離では8秒くらいまで露出を切り詰めれば流れは目立たなくなり、4秒なら「ほぼ点」になりますが、その分ISO感度を上げなくてはならず、今度はノイズが目立ってしまいます。 固定撮影・4秒露出・多数枚で撮影し、コンポジットなど後処理で頑張るというのもひとつの方法ですが、シンプルに1コマの露出をたっぷりかけるのが正しい「Polarisお手軽撮影法」でしょう。 ここで重要なのは「流れない程度の最長の露出時間を見極める」ことです。4分露出で全コマ流れてしまってはシャレになりません。まめに撮像画像をチェックして「少し流れてるかな?」と感じたら露出時間を1/2段ほど(4分なら3分、2分なら90秒、とか)短くしてみてください。 望遠レンズでディープスカイ撮影 「星空の撮影=超広角レンズ」という風潮?がありますが^^;; あまり長くないカメラレンズ(焦点距離85〜200mm)で撮る星空(特に天の川とその周辺)の面白さをもっと多くの方に経験してほしいと筆者は考えています。 Polarisはそんな撮影にまさにうってつけです。200mmレンズなら30秒前後、100mmレンズなら60秒前後を目安に、天の川にカメラを向けてしっかりピントを合わせて撮影してみましょう。無数の星、点在する星雲と星団、入り組んだ天の川の構造を写し撮ることができます。 「詳しいことはよくわからないけど、天の川を撮りたい!」場合、Polarisアプリの対象リスト(Object List)の「Galactic Center(銀河中心)」にGOTOしてみてください。「いて座」の付近が空に見えている必要がありますが、どこかに見えてさえいればその方向に導入してくれます(*)。 (*)後述しますが、この対象リストをもう少し充実させて、写しやすい天体(オリオン大星雲、北アメリカ星雲、すばる、バラ星雲、など)も自動導入できるようにしてほしいところです。 パノラマ撮影で天の川アーチ 個人的に一番期待している機能がパノラマ撮影。夢の「追尾ありのパノラマ自動撮影」が可能になるからです。多数枚のパノラマ撮影で1コマ毎にコンポジットするのは死ぬほど面倒なので、追尾撮影で一コマの露出時間を長くできるPolarisの機能は非常に有効になるはずです。 しかし、残念ながら使用した時点(2022年5月)ではまだアストロモードでのパノラマが動いておらず(*)、上の作例は通常のパノラマ撮影(追尾なし)で撮影しています。空の条件も悪かったのであまり冴えたリザルトではありませんが、Polarisの実力を発揮したいテーマです。 このパノラマ撮影の様子は動画にしています。他にもPolarisの操作や作例も収録しています。ぜひごらんください! 本稿作成中(2022年6月下旬)にリリースされたアプリ1.2.5では、アストロモードのパノラマ設定画面が動作可能になっていました。Polarisのアストロモードでないパノラマ撮影(PANO)とは指定の方法が全く異なり、回転角と枚数を指定します(*)。 (*)こちらの方がパノラマ撮影的には自然な指定方法です。PANOモードでは、レンズの焦点距離と開始地点、終了地点、オーバーラップ率を指定し、撮影枚数はPolarisが自動設定します。 実戦では使用できていないのですが、室内で試してみたところ若干怪しい挙動が見られました(*)。アプリの不安定さは各所で指摘されていますが、迅速な改修とリリースを期待したいものです。 (*)若干というレベルでもなかったのですが、再現確認できていないので詳述は避けておきます。 魚眼レンズで撮影する 魚眼レンズを使用すれば、1枚撮りでも天の川アーチが撮影できます。この作例はキヤノンの魚眼ズームレンズを使用し、対角魚眼の15mmで撮影しました。F4とやや暗いレンズなので、天の川をしっかり写すために追尾撮影で1コマ60秒を5枚コンポジットしました。 魚眼レンズを含めた超広角レンズでは、固定撮影や経緯台による追尾撮影、PENTAXのアストロトレーサーなどでは、レンズの歪みのために周辺の星が流れてしまいますが(*)、赤道儀と同様に追尾してくれるPolarisなら問題なしです。 (*)1枚画像で周辺が流れる(回転する)問題と、多数枚コンポジットする際に周辺の星が正しく位置合わせできなくなる2つの問題があります。 重量級レンズを搭載してみる Polarisではどのくらいの重さの機材が使えるのか?試しにレンズのみで重量が2.5kgのキヤノンの300mmF2.8レンズで撮影してみました。 上の画像は撮影時の様子ですが、地平高度30度〜45度であれば重心のずれも少なく、非常に安定した体勢で撮影できました。このあたりは経緯台マウントの大きなメリットといえるでしょう。 いて座の干潟星雲M8と三裂星雲M20です。都市部のベランダでここまで撮れれば、じゅうぶん遊べますね^^ 追尾精度ですが、1コマ20秒なら、うるさく言わなければ全部使ってもいいくらいです。赤道儀よりも設置が簡単なPolarisなら、望遠レンズによるディープスカイ撮影もそこそこ楽しめると思います。 25枚のうち、後半15枚の等倍画像。3枚〜5枚くらいはうるさく言えば捨てた方がいい流れ方ですが、これはなかなかの高精度といえるでしょう(*)。繰り返しますが、300mm望遠レンズでのリザルトです。この精度がご自分にとって充分なのか不足なのかは、画像を見てご判断ください。 (*)もちろん、上にはキリがありません。筆者の個人的経験に照らせば、SWAT赤道儀には負けていますが、初代ポラリエ+強化パーツのドイツ式構成とはいい勝負でしょう。標準構成のポン置きでここまで追尾できるのはむしろ「なかなかやるヤン」と感じました。 ただし、視界の狭いベランダで使用する際、Polarisのアライメントの際の基準星が見つけにくいという問題があります。上の画像のように、Polarisは明るい星のリストを表示してアライメント対象(導入対象)を選択できるのですが、このように星は英語表記で赤経順に並んでいます。この中から「いま見えている名前を知っている星」を見つけ出すのは、初心者ではかなり難度が高いように感じました(*)。 (*)北極星が見える場所であれば、アライメント星にはオールシーズン見えている「Polaris(北極星)」がオススメです。 困った問題 常にライブビューモードで動作する・EOS6D改造機での問題 Polarisとカメラを接続すると、カメラ側は常に「ライブビューモード」となります。カメラの映像をスマホに転送し、スマホ側でその映像を見ながら操作をするという製品コンセプト上は当然のことなのですが、ここで一つ問題があります。天文界隈で最も多く使われているといっても過言ではない「EOS 6D改造機」で「赤外線カブリ」が回避できないのです(*)。 (*)EOS 6Dのボディ内部には、何らかの目的のために赤外線センサーが設置されているようで、ライブビューモードで高感度・長時間露光をすると、その赤外線によってカブリが発生してしまいます。このため、シャッターを切る前にライブビューモードをOFFにして撮影するというのがお約束になっています。 カメラとPolarisを接続するケーブルを引き抜いてしまい、別のリモコンでカメラのシャッターを制御すればこの問題は回避できるのですが、それはPolarisを「ただの追尾架台」としてのみ使用することになり、本来のPolarisのメリットであるはずのシャッターコントロールやパノラマ撮影ができなくなってしまいます。 この問題は、Polarisの制御ソフトウェアで対応できるはずです(*)。早期の対応が望まれます。 (*)ASIAIRやステラショットなどの他の天体撮影ツールではこの問題は考慮・回避されています。 プレビュー画像が粗すぎる Polarisで撮影された画像は、基本的にはPolaris本体のSDカードに、rawとjpegの両方が保存されます(*)。 (*)逆に、カメラ側の設定は「raw+jpeg」でなくてはなりません。EOS 6Dではカメラ側のメモリカードにも保存されますが、ソニーαの一部機種では保存されないという情報もあります。ソニーの場合はカメラ側の「PCリモート」の設定でカメラ側にも画像を保存する設定にしないとカメラには保存されないようです。 スマホアプリではこの撮影画像をプレビューすることができるのですが、表示画像の解像度が低すぎるため、ピントチェック用にはほぼ使えません(*)。Polaris本体にはフル解像度のファイルが保存されているのですから、スマホ側で操作を完結させるのであれば、高精細の画像を表示できるようにしてほしいと思います。 (*)EOS 6Dの場合(他のカメラも?)Polarisと接続している状態ではカメラ側の画像プレビュー操作ができないため、プレビューのためだけにいったんケーブルを引き抜かなくてはならず、これもとても不便です。 レンズの焦点距離を認識してくれない「AR Live」 Polarisはカメラのライブビュー画像と、Polarisが認識している方位・高度の星図をオーバーレイして表示する「AR Live」という機能があります。いかにも便利そうな機能なのですが、致命的な問題があります。 なんと、レンズの焦点距離を認識して星図のスケールを自動調整してくれるわけではなく、星図の拡大率を自分で調整しなくてはなりません。これでは・・・全く使い物になりません。レンズの焦点距離と画角はフルマニュアルレンズでない限りカメラ側から取得できるはずなので、速やかな対応を希望するものです。 「水平」構図でしか撮れない 赤道儀ではないので当然と言えば当然なのですが、構図は水平線と平行な構図でしか撮ることができません。地上風景を入れた星空の場合はこれでもいいのですが、いわゆる「天体写真」を撮りたい場合はちょっと困ります。カメラ側に回転式の三脚座があれば(ないしはそれに準じる回転装置があれば)自由に回転して構図を調整できますが、カメラボディのプレート直結の場合は調整のしようがありません。 それよりも困るのが、回転式三脚座のない標準・広角域のレンズでは、マニュアル通りのセットアップでは「縦位置撮影できない」ことです。「カメラリグ(L型プレート)」を使えばいいじゃないか、と思ってしまうのですが、普通のカメラリグはプレートの方向が光軸と垂直。Polarisは光軸と平行にプレートを装着しないと、アライメントもできないことになります。 カメラとPolarisの取付方法を工夫して縦位置に装着したとしても、問題が残ります。上の画像はカメラを縦位置になるようにセットした例ですが、AR Live表示が90度傾いてしまっています。PolarisのAR Live表示は常に「カメラが水平に平行なランドスケープ(横長表示)モード」を前提としているのでしょうが、これはどうなのでしょうか(*)。 (*)カメラ側の電子水準器から縦横や傾き情報を取得して補正することはできないのでしょうか。さらには、Plate Solving(星並びから自動的にカメラが向いている方角を自動判別する機能)でAR Live表示と星図を自動的に一致させてくれれば完璧なのですが。 さらに推測ですが、縦位置にカメラを装着した場合、アライメントの微調整の水平・垂直をPolarisが逆に認識してしまうはず(*)です。アライメント終了までは横位置構図にしておくべきでしょう。 (*)2022/7/1追記「逆に認識」すると、アライメントの際のジョイスティックの上下と左右が逆になりますが、星を正しく中心に導入すればアライメントそのものは正しく完了するものと思われます。 「自由雲台」を使用すれば構図の調整は自由になります(*)。ただし、構図やカメラの傾きを崩してしまうと、Polarisの星図表示と実際の撮影範囲がずれてしまうので、自動導入は正確に機能しなくなり、Polarisは「ただの追尾雲台」としてのみ使うことになります。 (*)この方法で200mm望遠レンズも使用してみましたが、追尾精度的には目立って悪化したようには感じませんでした。ただし、良くなる要素は何一つありませんので、いくばくかは悪化しているはずです。 カメラリグで縦位置撮影する場合と同様に、アライメント終了まではカメラと本体の装着は正規の装着方法で行う必要があると推測されます。カメラに回転式三脚座が付属している場合も、アライメント終了までは正確に「横位置」にしておくべきでしょう。 (*)2022/7/1 一部正しくない表現があり修正。 自由雲台を使用するとPolarisとカメラの位置関係が不定になります。アライメントが完了するまでは、自由雲台を介さず本来の取付方法でカメラを装着しておくことが必要だと推測します。 三脚とPolarisの干渉 Polarisの微動ノブは大型で回しやすいのはいいのですが、大きすぎるため収納モードでは三脚やプレートと干渉する可能性が高くなっています。というか、私の環境では「一定の確率で」必ず干渉します。具体的には、Polarisを干渉しないように三脚に装着しても、収納時(*)に水平方向の位置が不定になるためです。 (*)電源ボタンを1回長押しするとPlarisの動作が停止し、もう一度長押しで「収納状態」まで垂直軸が回転します。 言葉を変えると、Polarisは垂直軸とアストロ軸には「ホームポジション」が決まっているのに、水平軸には「ホームポジション」がないのです。これが問題の根源。起動時の水平軸を記憶し、収納モードでは水平軸もその向きに戻せば、この問題は回避できるはずです。 運用上の回避方法としては、機材撤収時には「電源ボタンを1回押してPolarisの動作を停止」した後、搭載機材を全て外し、Polaris本体も三脚から外した後で、もう一度電源ボタンを押して「収納状態」にすることです(*)。 (*)一度電源ボタンを長押ししてPolarisを停止すると、「必ず」ホームポジションに戻さないと電源ONできないのも、微妙に不便なところです。撮影場所を移動するときやしばらく撮影しないとき、つい電源ボタンをOFFしてしまうと、わざわざホームポジションに戻さないと撮影を再開できないんですよね・・三脚干渉問題があるのでさらにややこしい・・ Deep Sky Objectを指定して自動導入したい Polarisのアストロモードでは、天体の自動導入が可能です。月・惑星・明るい恒星・星座を指定して導入できるのですが、オリオン大星雲(M42)やアンドロメダ銀河(M31)などの深宇宙天体(Deep Sky Object)を指定することができません。 Polarisのアプリ画面上の星図にも記載されていないことから、そもそもカタログ情報が登録されていないのでしょう。せっかく初心者でも簡単に使える形で、200mmや300mmといった望遠レンズでも追尾可能な性能を持っているのですから、せめてメシエ天体やカルドウェル天体のような有名な天体が指定できないと魅力が半減してしまいます。 どんな人に向いているのか? いろいろと問題はあるものの、Polarisが当初想定機能を実現し、想定できていなかった課題を修正することができれば、非常に魅力的な製品になると感じました。その段階まで到達したという想定で、どんなユーザーに向いているかを考えてみました。 天体には詳しくないけど、キレイな星の写真を撮りたい! 星座のことをよく知らなくても、北極星が見つけられなくても、天体の追尾撮影ができる。これこそがPolarisの「アストロキット」の存在意義です。前述の「天体カタログの充実」が前提となりますが、そんな人にうってつけなのがPolarisです。 「天の川アーチ」を撮りたい! 「みんな大好き、天の川アーチ」。天の川アーチを美しく撮るには、パノラマ撮影がほぼ必須なのですが、パノラマ撮影はけっこう地味で面倒な作業です。しかも、追尾しながらのパノラマ撮影となると、かなり大がかりな機材が必要になってきます。 ところがPolarisを使えば、夢の「追尾+パノラマ」の撮影が全自動で可能。もうこの目的だけであってもPolarisが欲しくなるレベルです。広角のパノラマ撮影だけでなく、より長い焦点距離による超精細な星野写真にもチャレンジできると思います。 ただし、現時点ではPolarisのパノラマ撮影は「各コマのrawデータ取得」までと思っていた方がいいでしょう(*)。ICEやPTGui Proのようなソフトウェアでステッチできることが前提になります。 (*)本稿作成中のバージョンアップで、アストロモードのパノラマのステッチに対応したようですが未検証です。 星空写真・天体写真ファンのサブ機として Polarisは本体とアストロキットを合わせて重量約2kg。本体だけで比べると、重量575gのビクセンのポラリエUよりずっと重いのですが、200mm級の望遠レンズを追尾する際に必要になってくるオプションパーツ(*)まで含めるとむしろ軽いといえます。 (*)極軸望遠鏡(ステー込230g)、微動雲台(795g)を含めると1.6kg。これに自由雲台を加えればほぼ同じになります。 オートガイドは使えないので、Polarisの追尾精度の範囲内での運用にはなりますが、軽量でシンプルな追尾架台、というだけでもじゅうぶんに使用価値はあるでしょう。全自動のパノラマ撮影も魅力的です。 (*)太陽追尾もできるので、日食撮影の海外遠征にも良さそうです。 風景写真も天体写真も撮る人に 「スマホで制御できる(*)インテリジェントな雲台」には無限の可能性があります。 (*)PolarisにはなんとSIMカードスロットまで搭載されていて(実際に使用するには対応モデルの購入が必要)、セルラー回線を使用したリモート操作も可能になる(予定?)だそうです。 BENRO社のコンセプトと構想が全て実現するまでにはまだ時間がかかるでしょうが、そんな「未来」に賛同し期待するなら、そのためにリスクを負って「応援」してもいいと考えるなら、Polarisはそんな夢へのハシゴとなることでしょう。実際、Polarisのクラファンに参加された方は、そんな思いで未来に賭けたのだと思います。BENRO社にはその思いに応える義務があります。 現在の「Benro Polaris」の状況 アプリ・ファームのアップデート状況 2022年6月26日時点で、アプリ(iOS版)の最新バージョンは1.25。5ヶ月間で10回ほどアップデートされています。ハードウェア側のファームは6.0.0.8が最新となっています。 まだ試せていないのですが「Support Starry sky stack panorama」とあるのでアストロモードでのパノラマ撮影のストレッチが可能になったのでしょうか?本来ならそのあたりの機能毎の完成度をきちんとレポートできるとよいのですが、正直バージョンアップをキャッチアップしきれていないのが現状です。 ユーザーコミュニティ FaceBookには「BENRO Polaris」の公式ユーザーグループがあります。英語の書き込みがほとんどですが、Facebookの翻訳機能でそこそこ読めるので、最新の情報を入手できるでしょう(*)。 (*)ただし、執筆時点では半分くらい?は「クレーム」のようなな書き込みで、ちょっと読むのに疲れます^^;; 筆者も何回か書き込みしたのですが「俺のところには届いていないんだが!」的なレスもあったり・・・ 星景写真家・タイムラプスクリエーターの成澤広幸さんのライブ配信アーカイブ。Polarisについて、インプレッションや操作感がじっくり解説されています。 まとめ いかがでしたか? 斬新な機構、高い剛性と質感、極軸合わせ不要の天体追尾機能、なかなかイケてる追尾精度。「BENRO Polaris」が当初の構想を完成させることができれば、素晴らしい製品になることは間違いありません。 特に標準〜望遠域での天体写真を撮影するためのツールとしては、専門知識がなくても簡単に撮影できるという意味で、革命的といってもいいくらいです(*)。 (*)本当に「革命」となるのは、Plate Solving(星空の画像と星図を自動照合する機能)が実装され、アライメントまで完全自動化できた時です。さらにはスマホの「ナイトモード」のような位置合わせ付き加算平均コンポジット機能が加われば完璧です。Polarisにその日が訪れるかどうかはわかりませんが、もうすぐそこまで見えているのは確かです。 しかし、繰り返しになりますが、現状ではいろいろな点で未完成なところがあります。この製品が完成して全てのユーザーが満足できるかどうかは、今後のBENRO社の頑張り次第。大変だと思いますが、とにかく製品を完成させ、その先の壁を越えてほしいと思います。 本記事は、とある匿名の天リフ読者様より製品の貸与を受け、天文リフレクションズ編集部が独自の費用と判断で作成したものです。文責は全て天文リフレクションズ編集部にあります。 記事に関するご質問・お問い合わせなどは天文リフレクションズ編集部宛にお願いいたします。 製品の購入およびお問い合わせは製品を取り扱う販売店様にお願いします。 記事中の製品仕様および価格は執筆時(2022年6月)のものです。 ...編集部発信のオリジナルコンテンツ