みなさん、こんにちは!

「大切なもの」は手元に置いておきたい。でも年々増えると保管場所がなくなる。やむなく捨てるしかない・・・特に「古い本や雑誌」はそうなってしまいますよね。書籍や雑誌が青少年の夢を運ぶ媒体だった20世紀。そんな時代の書物は失われていく一方です。

今回ご紹介する「夢の図書館」は、「大切なものを次の世代に残そう」と「月刊アスキー」「月刊ログイン」の初代編集長だった吉崎武さんが始められたもの。「天体望遠鏡博物館のマイコン版」ともいえる「マイコン博物館・模型とラジオの博物館」も併設されています。



今回、東京・青梅の「夢の図書館」を訪ねてきました。そのレポートをお届けします!

夢の図書館公式サイト・「100年分の技術雑誌を未来に伝える」
https://www.gijyutu-shounen.co.jp/Library/index.html

「夢の図書館」訪問記

「夢の図書館」代表の吉崎武さん。長軀痩身のダンディなおじさまです。実は1960〜70年代ごろ、屈折式の天体望遠鏡を自作して天体観測をされていたそうです。

ロケーション

JR青梅線東青梅駅まで、新宿から「青梅特快」で約57分。

2023年2月某日、JR青梅線の東青梅駅に降りたちました。ここから「夢の図書館」までは徒歩3分です。遠いといえば遠いですが、交通網の発達した東京ならでは、新宿から1時間弱です。

目的地の「賀根井ビル」までのルートはわかりやすく迷う要素はありません。入り口にはこのような案内板が。

2階の「夢の図書館」入り口。寄贈された図書・機器の段ボール箱が多数。全国から日々寄贈品が送られてくるそうです。この入り口の扉を開けると、、、

古今東西のパソコンたち

このショットは撮り漏らしてしまい。HPより引用させていただきました。今はもっと数が増えています。https://www.gijyutu-shounen.co.jp/Library/museum/images/P1070933-1.jpg

入り口を開けるとまず目に飛び込んでくるのが、黎明期からの各時代を代表する「マイコン」たち。どこかで見たことのあるような風景。そうです、「天体望遠鏡博物館」のマイコン版!「夢の図書館」には、マイコン博物館・模型とラジオの博物館が併設されているのです。

個人的に刺さったのはDECの「VT100端末」。Tera TermやPuTTYのような「VT100エミュレーター」は古めの?多くの方にはお馴染みでしょうが、その元になったこの物理端末を見たのは初めて。

1990年代。筆者のMacデビュー機「カラークラシックII」に再会。同じ年代であっても、材質によって黄変度合が大きくことなるそうです。

もうひとつ感慨深いのは2000年の「iMac」。もう23年にもなるのですね。iMacがはや「博物館入り」しているとは。時の流れの速さを感じます。

記事末の「フォトギャラリー」に画像を掲載しましたが、機械式の計算機から21世紀のMac まで、各時代の「マイコン」「パソコン」が所狭しと並んでいます。これらを眺めるだけでも、好きな人には丸一日は楽しめることでしょう。

100年分3万冊の技術雑誌

「子供の科學」昭和18年。この時代、雑誌の表紙に戦争に向かう日本の姿が現れています。バックナンバー約900冊を収蔵。昭和時代の「子供の科学」には意欲的でレベルの高い天文関係の記事が多く、複写サービスの注文が多いそうです。気になる記事がある方はお問い合わせください、とのこと。

過去の雑誌を開くと発行当時の圧倒的な現実感が迫ってきます。雑誌はその時代の空気感までを凝縮したタイムカプセルだということを強く感じます。私はこの雑誌により色々な時代を体験することを「時間旅行」と呼んでいます。このような当時の一次情報に接する「時間旅行」を行うと歴史として伝えられている内容と異なる部分が多々あることにも気が付きます。

夢の図書館へようこそ・https://www.gijyutu-shounen.co.jp/Library/about/index.html

本題です。「夢の図書館」には、90年以上前の「子供の科學」創刊号をはじめ、最近のものに至るまで100年にわたる様々な技術雑誌が3万冊以上も収蔵(*)されています。

(*)HPには「2万冊」の表記がありますが取材時点(2023.2)で3万冊を超えたとのこと。

実は「雑誌」は、一般の図書館では収蔵スペースの関係で一定期間経過すると破棄されてしまうそうです。「国会図書館」でも「献本制度」はじまったのは戦後の昭和23年から。戦中戦前、大正明治の雑誌は網羅されておらず、これほどのコレクションは「夢の図書館」にしか存在しない、と言っても過言ではありません。

左:月刊アスキーも創刊号から多数収蔵。雑誌は「横積み」にするほうが傷みが少ないそうです。右:マイコン関係の書棚(開架書庫)。開架書庫に収蔵された雑誌・書籍は、自由に取り出して館内で閲覧可能。これとは別に貴重本を収蔵する「閉架書庫」が別のフロアにあります。

「夢の図書館」の蔵書ジャンルは以下の14ジャンルです。蔵書内容は蔵書一覧表で公開しています。「科学・技術」「ラジオ・無線」「エレクトロニクス」「コンピュータ」「模型・工作」「船舶」「鉄道」「航空・宇宙」「漫画・アニメ」「SF・映画」「デザイン・アート」「教育・学習」「一般・その他」「軍事」

「夢の図書館」に収蔵されている雑誌は、前出の「子供の科學」「アスキー」をはじめ「科学画報」「初歩のラジオ」「I/O」「ラジコン技術」「世界の艦船」「鉄道ジャーナル」など多岐に及んでいます。

UFO系の雑誌。今読むとなんとも深い味わいが^^

天文系専門誌の蔵書はこれまでなかったそうなのですが、最近「天文ガイド」が別冊・増刊を含め多数(約660冊)寄贈されたそうです。「天文系の雑誌や書籍を所有されている方からの寄贈を受け付けますので是非、呼びかけてください」とのこと。「天文と気象」「星の手帖」「月刊天文」「スカイウオッチャー」「星ナビ」などのメジャーどころはぜひ全巻揃えたいものですね!「寄贈したい」という方は、下のリンク先の問い合わせフォームからどうぞ!

「夢の図書館」問い合わせ先はこちら。

親子で体験する模型工作&電子工作クラブ

天文ファンが「観望会」や「天体望遠鏡工作教室」を開催するように、「夢の図書館」では模型工作や電子工作教室が開催されています。ここ数年のコロナがようやく収束に向かっていることもあり、今後は活発に開催されていくことでしょう。

「科学技術分野」としての根っこは同じ。「電子工作教室」のあとは「星空観察会」なんてことができると面白いかもしれませんね。

「夢の図書館」を利用するには

「夢の図書館」は会員制です。利用するには「会員登録」してから、ホームページで利用予約をします。読書室の利用時間は11時〜21時。利用には「一日利用券1,100円(初回のみ550円)」が必要。会員証と1日利用券1枚がセットになった「スターターキット(3,000円)」がお得です。

*)価格はいずれも税込。

そのほか詳細は以下のリンクからご参照ください。

夢の図書館の利用方法
https://www.gijyutu-shounen.co.jp/Library/usage/index.html

「夢の図書館」の運営・現在と今後

2015年にクラウドファンディング「夢の図書館プロジェクト」が成立。138名、302.6万円の支援が集まりました。

運営会社

本稿執筆時点では「夢の図書館」「マイコン博物館」「模型とラジオの博物館」の運営母体は「株式会社 技術少年出版」でしたが、この取材直後の2023年2月27日付で「非営利型 一般財団法人 科学技術継承財団(理事長・吉崎武)」の運営となりました。財団法人化することで、一般の図書館と同じように全ての所蔵本の複写サービスを合法で提供できるようになるとのこと(*)。

(*)株式会社形態の場合は「子供の科学」など一部の雑誌についてのみ出版社との契約によって合法的に複写サービスが提供可能でしたが、財団法人化により全ての蔵書に対して雑誌、書籍のコピーサービスを合法的に行うことが可能になります。現在その手続き中だそうです。

株式会社 技術少年出版
https://www.gijyutu-shounen.co.jp/Library/company/index.html

これだけの「事業」を民間のビジネスとして運営されてきたわけですが、資金的にも労力的にも大変なご苦労があったものと推察します。しかし、吉崎さんの「夢」に多くの方が賛同した多くの人たちの、さまざまな支援が大きな支えとなりました。その理由は、吉崎さんの夢が、多くの人に共感されるものであったからではないでしょうか。

夢の図書館・ご支援のお願い
https://www.gijyutu-shounen.co.jp/Library/support/index.html

移転と増床・「天体観望会」も可能

さらに、これまでよりはるかに広い青梅市内の場所に移転されるとのこと。筆者が見た限りでは、もう読書スペースも蔵書スペースも目一杯な感じでしたが、増床されればより多くの蔵書と利用者を受け入れられることでしょう。

青梅市周辺のlightpollutionmap.infoによる光害状況。SQM値は19.6と比較的好条件です。

実は現在のビルも移転後のビルも広い屋上があります。青梅市は、東京圏でありながら山に囲まれ、比較的都市光が少ないエリアでもあります。「天体観望会」の開催や、子供向けの「天体望遠鏡自作教室」の開催をお考えの方は、夢の図書館として協力開催が可能だそうです。ご興味のある方は、下の問い合わせフォームからどうぞ!

「夢の図書館」問い合わせ先はこちら。

寄付のよびかけ「夢の図書館」の天文関係書籍・雑誌を充実させよう!

筆者が最近入手した「天文ガイド[インタラクティブ]」全巻。この本が「夢の図書館」に筆者を導きました。いずれ寄贈する予定。
「夢の図書館」には、日々書籍や機器類の寄付が寄せられています。これまで天文関係の専門雑誌・専門書の蔵書はほとんどなかったそうなのですが、天文系の記事閲覧や複写サービスのリクエストは多く、最近では「天文ガイド」誌が多数寄贈されるなど、動きが出始めているそうです。

そこで、天リフ読者の皆様にぜひお願いしたいのですが、お手元の天文書籍・雑誌を「処分」するのであれば、「夢の図書館」への寄贈をご検討されてはいかがでしょうか(*)。「夢の図書館に行けばほぼ全ての天文雑誌・天文書が見られる」ようになれば、それは素晴らしいことではないでしょうか。たぶん吉崎さんの「夢」と、天文ファンの「夢」には多くの共通部分があるものと思います。

(*)「同じような本がたくさん寄贈されてしまうと、逆に管理や保存に困ることはありませんか?」とお尋ねしたところ、「ほとんどの方がそう仰るのですが、自由閲覧できる開架書庫と永久保存用の閉架書庫の両方に複数所蔵することもあり、重複は気にしないで寄贈の問い合わせをぜひお願いします」とのことでした。

筆者(天リフ編集長)の実家にも古い天文ガイド・天文と気象・月刊天文などがあります。こちらも寄贈することを考えたいと思っています。お問い合わせは下のリンクからどうぞ!

「夢の図書館」問い合わせ先はこちら。

まとめ

丸い小さなコンデンサ、抵抗の帯に詰まった夢。ジャンルは違えど、天文少年とラジオ少年・マイコン少年の根っこは同じ。

いかがでしたか?

ネット以前の時代、雑誌は「別の世界への窓」でした。表紙から奥付まで、一字一句逃すまいと読み尽くす熱い読者は当たり前の存在でした。そんな経験を持つ人にとって「古い雑誌」は「古い夢」そのものなのです。夢に出会うことによって、当時の自分の熱い思いと記憶がよみがえる。この感覚はどんなジャンルであっても、多くの人に共感いただけるものではないでしょうか。

筆者(天リフ編集長)は常々、この感覚がどこまで普遍的なものなのか、ただの老人のノスタルジーなのか、若い世代にはたして共感されるものなのかを自問自答していました。しかし今回「夢の図書館」を訪問することで一つの確信が生まれました。価値があると信じる人がいる限り、その価値は不変であり普遍である。「そこには確かに何かがある」のだと。



実は代表の吉崎さんに、なぜこのような活動を始められたのか、この活動を継続することの意義やねらいをうかがおうと思っていたのですが、館内を拝見した瞬間にそれは不要なことだと感じました。価値あると確信するものを次の世代に伝えること。そのためにやるべきことを着実に実行していくこと。やろうとする人の存在と、そこにあるもの全てが答えなのです。

日刊ゲンダイDEGITAL・技術少年出版 吉崎武社長(1)「夢の図書館」の由来は子供の頃に読んだ雑誌に再会できるから
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/304905
技術少年出版 吉崎武社長(2)親の言う通りの子供をやってたらその後の人生は楽しくなかった
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/304971
技術少年出版 吉崎武社長(3)高校生の時にアマチュア無線を自作、親よりも稼いでいました
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/305040
技術少年出版 吉崎武社長(4)エエエッ!! 西和彦さんから月刊アスキー編集長のスカウト
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/305087
技術少年出版社長 吉崎武さん(5)小中学生を対象に1000億円稼ぐ人材の育成を
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/305247 

吉崎武さんの経歴と人物像についてはこの連載記事でノンフィクション作家の滝田誠一郎さんがたっぷり語られています。

繰り返しになりますが、「夢の図書館」の趣旨に賛同いただける方で、天文関係の書籍・雑誌を「処分」予定の方は、ぜひ「夢の図書館」への寄贈をご検討ください。分野は少し違いますが同じありようの「夢」のひとつです。天文クラスタからも「夢の図書館」への支援を送ろうではありませんか。

「夢の図書館」問い合わせ先はこちら。

フォトギャラリー

「マイコン」

「アナログ式」の計算機。

1964年。初期の「電卓」。

「マイコン」時代と「パソコン」時代の境界線に立つ「アップルII」。

シャープのMZシリーズの祖、MZ-40K。ROM起動。フロッピー起動のマイコンは古くなると動作しなくなるものが大半だそうですが、ROM起動・テープ読み込み起動の製品が現在でも動作するそうです。もちろん「MZ-80C」も収蔵。

黎明期の日本のパソコンの代表的モデル、PC-8001。

商業的には成功しなかった「アップルIII」。筆者は初めて実機を見ました。

1980年代、PC98シリーズの全盛期。アラカン世代にとっては「大学の研究室にあったパソコン」の記憶。数少ないながらもDOS/V以前のIBM機もありました。5550シリーズG型がなかったのが残念。

1980年代末の「異端児たち」X68000とNeXT。現在のMac OSの直系の先祖が「NEXTSTEP 」であるのは有名な話。実は筆者の実家にはなぜか「NeXTチュートリアルビデオ(VHS)」があるのですが、ニーズがあれば寄贈します^^;;

おー、FM-7だ!筆者のパソコンデビュー機でもあります。

デザインは今でも(今だからこそ?)通用しそうなPower Mac G4 Cube。

蔵書

「火の鳥」「男おいどん」「戦場まんがシリーズ」「AKIRA」「海のトリトン」など、通好みのマンガ本も。

ビルゲイツからイーロンマスクまで。コンピューター業界本。

キャビネットに収容された開架書庫の雑誌蔵書。

UFO系雑誌の表2には「裏御三家」のパノップ光学の広告が。

 

一番充実しているのはもちろんコンピューター・電子工作関係の雑誌。(日経)サイエンスも。

閉架書庫収蔵の「機械化」。筆者は初めて見ました。


こちらも閉架書庫収蔵の「科学知識」。次回訪問する際はじっくり読んでみたい。

「GUN」も揃っています。

そのほか

さり気なく壁には「HAL9000」のレプリカが。

MIDIといえばローランド。音響系の機器群と模型飛行機。

子供達のあこがれの的、フタバのラジコン飛行機。 https://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2023/03/fc6927a4cd7fc6f068de9eb5d3ae4aff-1-1024x538.jpghttps://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2023/03/fc6927a4cd7fc6f068de9eb5d3ae4aff-1-150x150.jpg編集部編集長突撃レポート施設・企業みなさん、こんにちは! 「大切なもの」は手元に置いておきたい。でも年々増えると保管場所がなくなる。やむなく捨てるしかない・・・特に「古い本や雑誌」はそうなってしまいますよね。書籍や雑誌が青少年の夢を運ぶ媒体だった20世紀。そんな時代の書物は失われていく一方です。 今回ご紹介する「夢の図書館」は、「大切なものを次の世代に残そう」と「月刊アスキー」「月刊ログイン」の初代編集長だった吉崎武さんが始められたもの。「天体望遠鏡博物館のマイコン版」ともいえる「マイコン博物館・模型とラジオの博物館」も併設されています。 今回、東京・青梅の「夢の図書館」を訪ねてきました。そのレポートをお届けします! 夢の図書館公式サイト・「100年分の技術雑誌を未来に伝える」 https://www.gijyutu-shounen.co.jp/Library/index.html 「夢の図書館」訪問記 ロケーション 2023年2月某日、JR青梅線の東青梅駅に降りたちました。ここから「夢の図書館」までは徒歩3分です。遠いといえば遠いですが、交通網の発達した東京ならでは、新宿から1時間弱です。 目的地の「賀根井ビル」までのルートはわかりやすく迷う要素はありません。入り口にはこのような案内板が。 2階の「夢の図書館」入り口。寄贈された図書・機器の段ボール箱が多数。全国から日々寄贈品が送られてくるそうです。この入り口の扉を開けると、、、 古今東西のパソコンたち 入り口を開けるとまず目に飛び込んでくるのが、黎明期からの各時代を代表する「マイコン」たち。どこかで見たことのあるような風景。そうです、「天体望遠鏡博物館」のマイコン版!「夢の図書館」には、マイコン博物館・模型とラジオの博物館が併設されているのです。 個人的に刺さったのはDECの「VT100端末」。Tera TermやPuTTYのような「VT100エミュレーター」は古めの?多くの方にはお馴染みでしょうが、その元になったこの物理端末を見たのは初めて。 もうひとつ感慨深いのは2000年の「iMac」。もう23年にもなるのですね。iMacがはや「博物館入り」しているとは。時の流れの速さを感じます。 記事末の「フォトギャラリー」に画像を掲載しましたが、機械式の計算機から21世紀のMac まで、各時代の「マイコン」「パソコン」が所狭しと並んでいます。これらを眺めるだけでも、好きな人には丸一日は楽しめることでしょう。 100年分3万冊の技術雑誌 過去の雑誌を開くと発行当時の圧倒的な現実感が迫ってきます。雑誌はその時代の空気感までを凝縮したタイムカプセルだということを強く感じます。私はこの雑誌により色々な時代を体験することを「時間旅行」と呼んでいます。このような当時の一次情報に接する「時間旅行」を行うと歴史として伝えられている内容と異なる部分が多々あることにも気が付きます。 夢の図書館へようこそ・https://www.gijyutu-shounen.co.jp/Library/about/index.html 本題です。「夢の図書館」には、90年以上前の「子供の科學」創刊号をはじめ、最近のものに至るまで100年にわたる様々な技術雑誌が3万冊以上も収蔵(*)されています。 (*)HPには「2万冊」の表記がありますが取材時点(2023.2)で3万冊を超えたとのこと。 実は「雑誌」は、一般の図書館では収蔵スペースの関係で一定期間経過すると破棄されてしまうそうです。「国会図書館」でも「献本制度」はじまったのは戦後の昭和23年から。戦中戦前、大正明治の雑誌は網羅されておらず、これほどのコレクションは「夢の図書館」にしか存在しない、と言っても過言ではありません。 「夢の図書館」の蔵書ジャンルは以下の14ジャンルです。蔵書内容は蔵書一覧表で公開しています。「科学・技術」「ラジオ・無線」「エレクトロニクス」「コンピュータ」「模型・工作」「船舶」「鉄道」「航空・宇宙」「漫画・アニメ」「SF・映画」「デザイン・アート」「教育・学習」「一般・その他」「軍事」 「夢の図書館」に収蔵されている雑誌は、前出の「子供の科學」「アスキー」をはじめ「科学画報」「初歩のラジオ」「I/O」「ラジコン技術」「世界の艦船」「鉄道ジャーナル」など多岐に及んでいます。 天文系専門誌の蔵書はこれまでなかったそうなのですが、最近「天文ガイド」が別冊・増刊を含め多数(約660冊)寄贈されたそうです。「天文系の雑誌や書籍を所有されている方からの寄贈を受け付けますので是非、呼びかけてください」とのこと。「天文と気象」「星の手帖」「月刊天文」「スカイウオッチャー」「星ナビ」などのメジャーどころはぜひ全巻揃えたいものですね!「寄贈したい」という方は、下のリンク先の問い合わせフォームからどうぞ! 「夢の図書館」問い合わせ先はこちら。 親子で体験する模型工作&電子工作クラブ ある日の「夢の図書館」 FMラジオ製作セミナーを開催しました ゲルマラジオ、2石、4石、6石 中波ラジオに引き続いて、今回はFMラジオを製作しました 製作に先立ち、講師から、電子工学、電波工学、電子デバイス理論について解説が有ります 講師が真空管、トランジスタ、シリコンウェハーの現物で解説中 pic.twitter.com/qzAWsVyIRl — 夢の図書館+マイコン博物館+模ラ博物館(公式) Microcomputer Museum Japan (@Dream_Library_) March 6, 2023 天文ファンが「観望会」や「天体望遠鏡工作教室」を開催するように、「夢の図書館」では模型工作や電子工作教室が開催されています。ここ数年のコロナがようやく収束に向かっていることもあり、今後は活発に開催されていくことでしょう。 「科学技術分野」としての根っこは同じ。「電子工作教室」のあとは「星空観察会」なんてことができると面白いかもしれませんね。 「夢の図書館」を利用するには 「夢の図書館」は会員制です。利用するには「会員登録」してから、ホームページで利用予約をします。読書室の利用時間は11時〜21時。利用には「一日利用券1,100円(初回のみ550円)」が必要。会員証と1日利用券1枚がセットになった「スターターキット(3,000円)」がお得です。 *)価格はいずれも税込。 そのほか詳細は以下のリンクからご参照ください。 夢の図書館の利用方法 https://www.gijyutu-shounen.co.jp/Library/usage/index.html 「夢の図書館」の運営・現在と今後 運営会社 本稿執筆時点では「夢の図書館」「マイコン博物館」「模型とラジオの博物館」の運営母体は「株式会社 技術少年出版」でしたが、この取材直後の2023年2月27日付で「非営利型 一般財団法人 科学技術継承財団(理事長・吉崎武)」の運営となりました。財団法人化することで、一般の図書館と同じように全ての所蔵本の複写サービスを合法で提供できるようになるとのこと(*)。 (*)株式会社形態の場合は「子供の科学」など一部の雑誌についてのみ出版社との契約によって合法的に複写サービスが提供可能でしたが、財団法人化により全ての蔵書に対して雑誌、書籍のコピーサービスを合法的に行うことが可能になります。現在その手続き中だそうです。 株式会社 技術少年出版 https://www.gijyutu-shounen.co.jp/Library/company/index.html これだけの「事業」を民間のビジネスとして運営されてきたわけですが、資金的にも労力的にも大変なご苦労があったものと推察します。しかし、吉崎さんの「夢」に多くの方が賛同した多くの人たちの、さまざまな支援が大きな支えとなりました。その理由は、吉崎さんの夢が、多くの人に共感されるものであったからではないでしょうか。 夢の図書館・ご支援のお願い https://www.gijyutu-shounen.co.jp/Library/support/index.html 移転と増床・「天体観望会」も可能 さらに、これまでよりはるかに広い青梅市内の場所に移転されるとのこと。筆者が見た限りでは、もう読書スペースも蔵書スペースも目一杯な感じでしたが、増床されればより多くの蔵書と利用者を受け入れられることでしょう。 実は現在のビルも移転後のビルも広い屋上があります。青梅市は、東京圏でありながら山に囲まれ、比較的都市光が少ないエリアでもあります。「天体観望会」の開催や、子供向けの「天体望遠鏡自作教室」の開催をお考えの方は、夢の図書館として協力開催が可能だそうです。ご興味のある方は、下の問い合わせフォームからどうぞ! 「夢の図書館」問い合わせ先はこちら。 寄付のよびかけ「夢の図書館」の天文関係書籍・雑誌を充実させよう! 「夢の図書館」には、日々書籍や機器類の寄付が寄せられています。これまで天文関係の専門雑誌・専門書の蔵書はほとんどなかったそうなのですが、天文系の記事閲覧や複写サービスのリクエストは多く、最近では「天文ガイド」誌が多数寄贈されるなど、動きが出始めているそうです。 そこで、天リフ読者の皆様にぜひお願いしたいのですが、お手元の天文書籍・雑誌を「処分」するのであれば、「夢の図書館」への寄贈をご検討されてはいかがでしょうか(*)。「夢の図書館に行けばほぼ全ての天文雑誌・天文書が見られる」ようになれば、それは素晴らしいことではないでしょうか。たぶん吉崎さんの「夢」と、天文ファンの「夢」には多くの共通部分があるものと思います。 (*)「同じような本がたくさん寄贈されてしまうと、逆に管理や保存に困ることはありませんか?」とお尋ねしたところ、「ほとんどの方がそう仰るのですが、自由閲覧できる開架書庫と永久保存用の閉架書庫の両方に複数所蔵することもあり、重複は気にしないで寄贈の問い合わせをぜひお願いします」とのことでした。 筆者(天リフ編集長)の実家にも古い天文ガイド・天文と気象・月刊天文などがあります。こちらも寄贈することを考えたいと思っています。お問い合わせは下のリンクからどうぞ! 「夢の図書館」問い合わせ先はこちら。 まとめ いかがでしたか? ネット以前の時代、雑誌は「別の世界への窓」でした。表紙から奥付まで、一字一句逃すまいと読み尽くす熱い読者は当たり前の存在でした。そんな経験を持つ人にとって「古い雑誌」は「古い夢」そのものなのです。夢に出会うことによって、当時の自分の熱い思いと記憶がよみがえる。この感覚はどんなジャンルであっても、多くの人に共感いただけるものではないでしょうか。 筆者(天リフ編集長)は常々、この感覚がどこまで普遍的なものなのか、ただの老人のノスタルジーなのか、若い世代にはたして共感されるものなのかを自問自答していました。しかし今回「夢の図書館」を訪問することで一つの確信が生まれました。価値があると信じる人がいる限り、その価値は不変であり普遍である。「そこには確かに何かがある」のだと。 実は代表の吉崎さんに、なぜこのような活動を始められたのか、この活動を継続することの意義やねらいをうかがおうと思っていたのですが、館内を拝見した瞬間にそれは不要なことだと感じました。価値あると確信するものを次の世代に伝えること。そのためにやるべきことを着実に実行していくこと。やろうとする人の存在と、そこにあるもの全てが答えなのです。 日刊ゲンダイDEGITAL・技術少年出版 吉崎武社長(1)「夢の図書館」の由来は子供の頃に読んだ雑誌に再会できるから https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/304905 技術少年出版 吉崎武社長(2)親の言う通りの子供をやってたらその後の人生は楽しくなかった https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/304971 技術少年出版 吉崎武社長(3)高校生の時にアマチュア無線を自作、親よりも稼いでいました https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/305040 技術少年出版 吉崎武社長(4)エエエッ!! 西和彦さんから月刊アスキー編集長のスカウト https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/305087 技術少年出版社長 吉崎武さん(5)小中学生を対象に1000億円稼ぐ人材の育成を https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/305247  吉崎武さんの経歴と人物像についてはこの連載記事でノンフィクション作家の滝田誠一郎さんがたっぷり語られています。 繰り返しになりますが、「夢の図書館」の趣旨に賛同いただける方で、天文関係の書籍・雑誌を「処分」予定の方は、ぜひ「夢の図書館」への寄贈をご検討ください。分野は少し違いますが同じありようの「夢」のひとつです。天文クラスタからも「夢の図書館」への支援を送ろうではありませんか。 「夢の図書館」問い合わせ先はこちら。 フォトギャラリー 「マイコン」 「アナログ式」の計算機。 1964年。初期の「電卓」。 「マイコン」時代と「パソコン」時代の境界線に立つ「アップルII」。 シャープのMZシリーズの祖、MZ-40K。ROM起動。フロッピー起動のマイコンは古くなると動作しなくなるものが大半だそうですが、ROM起動・テープ読み込み起動の製品が現在でも動作するそうです。もちろん「MZ-80C」も収蔵。 黎明期の日本のパソコンの代表的モデル、PC-8001。 商業的には成功しなかった「アップルIII」。筆者は初めて実機を見ました。 1980年代、PC98シリーズの全盛期。アラカン世代にとっては「大学の研究室にあったパソコン」の記憶。数少ないながらもDOS/V以前のIBM機もありました。5550シリーズG型がなかったのが残念。 1980年代末の「異端児たち」X68000とNeXT。現在のMac OSの直系の先祖が「NEXTSTEP 」であるのは有名な話。実は筆者の実家にはなぜか「NeXTチュートリアルビデオ(VHS)」があるのですが、ニーズがあれば寄贈します^^;; おー、FM-7だ!筆者のパソコンデビュー機でもあります。 デザインは今でも(今だからこそ?)通用しそうなPower Mac G4 Cube。 蔵書 「火の鳥」「男おいどん」「戦場まんがシリーズ」「AKIRA」「海のトリトン」など、通好みのマンガ本も。 ビルゲイツからイーロンマスクまで。コンピューター業界本。 キャビネットに収容された開架書庫の雑誌蔵書。 UFO系雑誌の表2には「裏御三家」のパノップ光学の広告が。   一番充実しているのはもちろんコンピューター・電子工作関係の雑誌。(日経)サイエンスも。 閉架書庫収蔵の「機械化」。筆者は初めて見ました。 こちらも閉架書庫収蔵の「科学知識」。次回訪問する際はじっくり読んでみたい。 「GUN」も揃っています。 そのほか さり気なく壁には「HAL9000」のレプリカが。 MIDIといえばローランド。音響系の機器群と模型飛行機。 子供達のあこがれの的、フタバのラジコン飛行機。編集部発信のオリジナルコンテンツ