シグマがオンラインイベントで「20mm F1.4 DG DN | Art」と「24mm F1.4 DG DN | Art」を発表しました。「星景写真向け」を全面に押し出し、小型軽量化や周辺での点像性能だけでなく、マニュアルフォーカスロックや露よけヒーター装着への配慮など、圧倒的な「神レンズ」の存在感を示しています。なお、対応マウントはソニーEと、シグマ・パナ・ライカなどのLです。

 

圧倒的光学性能

20mm F1.4 DG DN | Art

https://youtu.be/MW8UH3iSkTs

一眼レフ用の前モデル「20mmF1.4 DG HSM | Art」とのMTFチャート比較。これはMTFを見慣れた人にとっては「びっくり仰天の圧倒的性能向上」といってよいと思います(*)。



(*)2015年にシグマがこのArtシリーズの広角レンズを発売したとき、このチャートでも「おお、、広角レンズの開放がここまで良くなったのか」と感激したものですが。

MTFチャートは基本的に線が上側にあるほど高性能であることを示します。また、実線と点線(サジタル方向の性能とメリジオナル方向の性能)が一致しているほど、点像性能が高いことを示します(*)。

(*)あまり正確な表現ではありませんが、ざっくりそんな感じです。

F1.4解放で、こんなに真っ直ぐで、SとMがずれない広角レンズを手にすることができる時代が来たのかと感無量。

https://youtu.be/MW8UH3iSkTs

しかも、前モデルから大幅に小型軽量化されています。先代は1kg越えで全長も長く、星空を求めてフィールドに出るにはやや負担となるデカさでしたが(*)、新モデルではそこそこマイルドな重さと大きさになっています。

(*)個人的な話ですが、筆者はこの点を避けて先代は24mmF1.4を購入してこれまで使用しています。

とはいっても635gは充分重いデカイレンズなのですが、「20mmF1.4」というスペックはそれだけでも他社にないオンリーワン。これがさらに軽量化し光学性能的にも大幅に進化しました。今後、ミラーレス時代の星景用のスタンダードレンズとして、圧倒的な存在感を示すことになるのではないでしょうか。

24mm F1.4 DG DN | Art

https://youtu.be/MW8UH3iSkTs

一方で、24mmの方は大いに性能(特に周辺部)が向上したものの、20mmF1.4ほど圧倒的ではありません。推測するに24mmは重量や価格とのバランスを「普通に」振っているのではないでしょうか(*)。

(*)多くの購入者が比較検討対象に挙げるであろうソニーのSEL24F14GMとのMTFの比較では、若干S/Mの安定性が劣るように見えます。重量も100gほど重いのですが、逆に実売価格は40%ほど安く、十二分に購入意欲をかきたてるものになっています。

https://youtu.be/MW8UH3iSkTs

バックフォーカスの短いミラーレスの特長が生きたのか、重量も全長も小型化。レフ機用のArtレンズはとにかく高性能で重いのが特徴でしたが^^;; 大幅に「普通」になっています(*)。

(*)有名な?笑い話ですが、「ウチが作ったら、同じスペックでもっと重くできますよ!」とシグマのエンジニアが言ったとか言わないとか^^;

星景写真を想定したスペック

MFロック・AFロックボタン

https://youtu.be/MW8UH3iSkTs

「星景写真用レンズ」を謳うだけあって、痒いところに手が届く配慮がいくつもあります。その一つが「AFL(AFロック)」と「MFL(MFロック)」の二つのボタン。AFLボタンは特定のピント位置を記憶するもので、近年は望遠レンズでなくても割と普通の仕様になってきました。

一方でMFLを備えたレンズはまだ少なく、シグマでは初の採用。これは「MFモードでピントリングの操作を無効にする」もので、一度合わせたピント位置が外的操作で変わってしまわないようにするもの。星景写真では非常に有用な機能です(*)。

(*)折角苦労してMFでピントを追い込んだのに、うっかりピントリングに触れてズレてしまうのは「あるある」な失敗の一つ。

レンズヒーターリテーナー

https://youtu.be/MW8UH3iSkTs

星景写真ではレンズが夜露で曇らないようにヒーターを巻くことが多いのですが、特にフードの短い広角レンズではヒーターの装着に微妙な「アンフィット感」がありました。

今回のレンズでは、ベルト式のレンズヒーターを装着した際にフードをはみだしてしまわないよう、先端に段差が設けられて安定して装着できるようになっています。また、ワイヤー式のヒーターを巻き付けるための少し細くなった場所がレンズ先端に設けられています(*)。

(*)PENTAXのレンズ「HD PENTAX-DA★11-18mmF2.8ED DC AW」が先鞭。

防塵防滴

https://youtu.be/MW8UH3iSkTs

このクラスのレンズでは普通のスペックですが、防塵防滴も星景写真撮影では重要。夜露や霜でびっしり覆われるような環境でもたぶん安心!

レビューリンク・作例など

成澤広幸さんの動画

我らが成澤広幸さんのレビュー動画。20mmF1.4の解放の星像や、F値の違いによる周辺減光の比較など、非常に参考になるテストレポートが満載。なお、物欲を抑えたいのなら見ない方がいいです^^;;

「F1.4解放で使える」ことで、星を完全に止める短い露出時間でも、露出不足になることなく撮れる」。動画中に「不可能だったことが可能になる」という表現で述べられている、ユースケース上で非常に重要なポイント。

明るさは、画質だけでなく「時間分解能」を上げる

https://youtu.be/MW8UH3iSkTs

解放F1.4で撮ることで、露出時間をF2.8の時の1/4にすることができます。上の画像は製品発表会動画で示された作例ですが「ワンコが30秒間じっとしていてくれるのか」を考えてみてください。短い露出時間にすることで、人物や雲のブレも最小にすることができるのです。星景写真でも「時間分解能」が重要になるような、そんな「一瞬」が切り取れるレンズ。それがシグマの「DG DN|Art」なのです。

テストチャートの罠

レビューサイトにも評価記事が出てきました。だいたいはスペックから想像できる範囲ではあるのですが、ひとつ注意しておくべきことがあります。

レビューサイトが実写テストをする際「テストチャート」を撮影して評価することが多いのですが、この場合「無限遠での結像性能」とイコールになりません。広角レンズほど、無限遠と近距離で結像性能の乖離が多くなってくるため(*1)、「星を撮った時の性能」を必ずしも表していないことに注意が必要です(*2)。

(*)この影響を低減するために、ピント移動と連動してレンズ群を複雑に前後に動かし近距離時の性能低下を防ぐことも、レンズの「高性能化」のひとつのアプローチです。

(*2)テストチャートによる性能評価に意味がない、という意味ではありません。一定の同じ条件での性能比較にはちゃんと意味があります。

まとめ

https://youtu.be/MW8UH3iSkTs

いかがでしたか?

星空を撮るなら、シグマ。「開発スタッフに星好きが多い」とささやかれるだけあって、さすがのど真ん中ストライク。グッドジョブです。絶賛します。ああ欲しい^^;

皆様が、物欲と写欲に従順になった上で、冷静な行動を取られることを願ってやみません。


蛇足

今回の製品発表で「星空の写真」が写真愛好家の中で確固たるシェアを持っていることを再確認しました。スマホと一眼カメラの間に以前とある性能の差。それが如実に現れる分野の一つが「星空の写真」なのです。

くどいですが、何度も言います。ソニーさん、ぜひとも「星喰い(Star Eater)」問題を解消いただき、レンズ開発者の努力がストレートに映像に現れるような画像処理エンジンとしていただくことをお願いします。

 

https://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2022/08/bc0e5e47e5a2a7eddee0b67a10cae41b-1024x575.jpghttps://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2022/08/bc0e5e47e5a2a7eddee0b67a10cae41b-150x150.jpg編集部特選ピックアップカメラレンズシグマシグマがオンラインイベントで「20mm F1.4 DG DN | Art」と「24mm F1.4 DG DN | Art」を発表しました。「星景写真向け」を全面に押し出し、小型軽量化や周辺での点像性能だけでなく、マニュアルフォーカスロックや露よけヒーター装着への配慮など、圧倒的な「神レンズ」の存在感を示しています。なお、対応マウントはソニーEと、シグマ・パナ・ライカなどのLです。   圧倒的光学性能 20mm F1.4 DG DN | Art 一眼レフ用の前モデル「20mmF1.4 DG HSM | Art」とのMTFチャート比較。これはMTFを見慣れた人にとっては「びっくり仰天の圧倒的性能向上」といってよいと思います(*)。 (*)2015年にシグマがこのArtシリーズの広角レンズを発売したとき、このチャートでも「おお、、広角レンズの開放がここまで良くなったのか」と感激したものですが。 MTFチャートは基本的に線が上側にあるほど高性能であることを示します。また、実線と点線(サジタル方向の性能とメリジオナル方向の性能)が一致しているほど、点像性能が高いことを示します(*)。 (*)あまり正確な表現ではありませんが、ざっくりそんな感じです。 F1.4解放で、こんなに真っ直ぐで、SとMがずれない広角レンズを手にすることができる時代が来たのかと感無量。 しかも、前モデルから大幅に小型軽量化されています。先代は1kg越えで全長も長く、星空を求めてフィールドに出るにはやや負担となるデカさでしたが(*)、新モデルではそこそこマイルドな重さと大きさになっています。 (*)個人的な話ですが、筆者はこの点を避けて先代は24mmF1.4を購入してこれまで使用しています。 とはいっても635gは充分重いデカイレンズなのですが、「20mmF1.4」というスペックはそれだけでも他社にないオンリーワン。これがさらに軽量化し光学性能的にも大幅に進化しました。今後、ミラーレス時代の星景用のスタンダードレンズとして、圧倒的な存在感を示すことになるのではないでしょうか。 24mm F1.4 DG DN | Art 一方で、24mmの方は大いに性能(特に周辺部)が向上したものの、20mmF1.4ほど圧倒的ではありません。推測するに24mmは重量や価格とのバランスを「普通に」振っているのではないでしょうか(*)。 (*)多くの購入者が比較検討対象に挙げるであろうソニーのSEL24F14GMとのMTFの比較では、若干S/Mの安定性が劣るように見えます。重量も100gほど重いのですが、逆に実売価格は40%ほど安く、十二分に購入意欲をかきたてるものになっています。 バックフォーカスの短いミラーレスの特長が生きたのか、重量も全長も小型化。レフ機用のArtレンズはとにかく高性能で重いのが特徴でしたが^^;; 大幅に「普通」になっています(*)。 (*)有名な?笑い話ですが、「ウチが作ったら、同じスペックでもっと重くできますよ!」とシグマのエンジニアが言ったとか言わないとか^^; 星景写真を想定したスペック MFロック・AFロックボタン 「星景写真用レンズ」を謳うだけあって、痒いところに手が届く配慮がいくつもあります。その一つが「AFL(AFロック)」と「MFL(MFロック)」の二つのボタン。AFLボタンは特定のピント位置を記憶するもので、近年は望遠レンズでなくても割と普通の仕様になってきました。 一方でMFLを備えたレンズはまだ少なく、シグマでは初の採用。これは「MFモードでピントリングの操作を無効にする」もので、一度合わせたピント位置が外的操作で変わってしまわないようにするもの。星景写真では非常に有用な機能です(*)。 (*)折角苦労してMFでピントを追い込んだのに、うっかりピントリングに触れてズレてしまうのは「あるある」な失敗の一つ。 レンズヒーターリテーナー 星景写真ではレンズが夜露で曇らないようにヒーターを巻くことが多いのですが、特にフードの短い広角レンズではヒーターの装着に微妙な「アンフィット感」がありました。 今回のレンズでは、ベルト式のレンズヒーターを装着した際にフードをはみだしてしまわないよう、先端に段差が設けられて安定して装着できるようになっています。また、ワイヤー式のヒーターを巻き付けるための少し細くなった場所がレンズ先端に設けられています(*)。 (*)PENTAXのレンズ「HD PENTAX-DA★11-18mmF2.8ED DC AW」が先鞭。 防塵防滴 このクラスのレンズでは普通のスペックですが、防塵防滴も星景写真撮影では重要。夜露や霜でびっしり覆われるような環境でもたぶん安心! レビューリンク・作例など 成澤広幸さんの動画 「フッ。マジか。これF1.4ですよ」シグマの20mm F1.4 DG DN | Artの点像性能。成澤広幸さんの動画で200%拡大画像が公開されています。https://t.co/GVYUddP9Hx pic.twitter.com/LdWEACbuZq — 天リフ編集部 (@tenmonReflexion) August 9, 2022 我らが成澤広幸さんのレビュー動画。20mmF1.4の解放の星像や、F値の違いによる周辺減光の比較など、非常に参考になるテストレポートが満載。なお、物欲を抑えたいのなら見ない方がいいです^^;; 「F1.4解放で使える」ことで、星を完全に止める短い露出時間でも、露出不足になることなく撮れる」。動画中に「不可能だったことが可能になる」という表現で述べられている、ユースケース上で非常に重要なポイント。 明るさは、画質だけでなく「時間分解能」を上げる 解放F1.4で撮ることで、露出時間をF2.8の時の1/4にすることができます。上の画像は製品発表会動画で示された作例ですが「ワンコが30秒間じっとしていてくれるのか」を考えてみてください。短い露出時間にすることで、人物や雲のブレも最小にすることができるのです。星景写真でも「時間分解能」が重要になるような、そんな「一瞬」が切り取れるレンズ。それがシグマの「DG DN|Art」なのです。 テストチャートの罠 特に超広角レンズは、テストチャートによる解像力テストと無限遠性能に乖離が生じることがある。主に近距離で増える像面湾曲の影響か。星用レンズは星の実写が一番信用できるので要注意。 デジカメinfoよりピックアップ。https://t.co/966hVAIWlh — 天リフ編集部 (@tenmonReflexion) August 9, 2022 レビューサイトにも評価記事が出てきました。だいたいはスペックから想像できる範囲ではあるのですが、ひとつ注意しておくべきことがあります。 レビューサイトが実写テストをする際「テストチャート」を撮影して評価することが多いのですが、この場合「無限遠での結像性能」とイコールになりません。広角レンズほど、無限遠と近距離で結像性能の乖離が多くなってくるため(*1)、「星を撮った時の性能」を必ずしも表していないことに注意が必要です(*2)。 (*)この影響を低減するために、ピント移動と連動してレンズ群を複雑に前後に動かし近距離時の性能低下を防ぐことも、レンズの「高性能化」のひとつのアプローチです。 (*2)テストチャートによる性能評価に意味がない、という意味ではありません。一定の同じ条件での性能比較にはちゃんと意味があります。 まとめ いかがでしたか? 星空を撮るなら、シグマ。「開発スタッフに星好きが多い」とささやかれるだけあって、さすがのど真ん中ストライク。グッドジョブです。絶賛します。ああ欲しい^^; 皆様が、物欲と写欲に従順になった上で、冷静な行動を取られることを願ってやみません。 蛇足 今回の製品発表で「星空の写真」が写真愛好家の中で確固たるシェアを持っていることを再確認しました。スマホと一眼カメラの間に以前とある性能の差。それが如実に現れる分野の一つが「星空の写真」なのです。 SIGMA様がここまで言うんだ、SONYくんもそろそろ星喰いを解消し、星景マニアを取り込んで然るべきでは(外野の戯言) — Ramb (@haya_astronomy) August...編集部発信のオリジナルコンテンツ