ブログ「天体写真はじめるよ(ブログ主様は「にゃあ」さん)」で、「電視寄りの眼視」をやってみたいという記事が投稿されています。

従来は「眼視」と「写真」の境界は明確でまったくの別物と認識されていましたが、「電視」の登場でその境界線がかなりゆるいものになりつつあります。「にゃあ」さんのトライアルは、①1つのシステムで「眼視」と「電視」を(簡単に)切り替えられ②観望した記録が映像で残せる、の2点がコンセプトになっています。

何をしたいか?

https://tentaip.space/eaa/
天体写真はじめるよ・「眼視寄りの電視」あるいは「電視寄りの眼視」
https://tentaip.space/eaa/
天体写真はじめるよ・電視と眼視の一本化、Netflixを見ずに星を見よう
https://tentaip.space/flip-mirror/

やっぱり眼視はいいな。東京の空なので、もちろん限界はある。でも意外にたくさんの星が見えるんだよ。写真で撮った東京の空の星々は、しおれた花のようにいつも元気がないんだが、眼視だと針で突いたような、赤や白や青の光がキラキラと輝いているんだ。

東京の空であっても、望遠鏡で見る星はキラキラと輝いて見える。これは多くの人が認めていることではないでしょうか。



天体写真を撮りたいと思って始めたこの趣味だけれど、星空のライブ感を味わおうとした場合、電視や天体写真は眼視にかなわないと思っている。そこにある星空をこの目で見るというのは、生々しい体験で、目に見えない天体を写真に撮るというのとまた違う感動があるような気がする。

そして「ライブ感」。天体写真も電視も、リアルタイム動画も、眼視のライブ感にはかないません。

だから、たまに眼視をしたくなるわけなんだが、なぜだかすぐに飽きてしまう。

しかし、特に市街地での眼視観望では「飽きやすい」問題があります。元記事に寄せられたのコメントでは「”見えない、探せない、見えたとしてもそこまで楽しくない”みたいな所にあるのでは」と指摘されています。

そこで生まれた着想がこれ。

でも、記録に残せるんだったら、眼視体験も違ってくるんじゃないか。

自分の目で星を見るという体験は電視に代えがたい。でも、実際はアイピースを覗き続けるのがつらいというのがあるし、記憶に残せても記録に残すことができない。このあたりは電視に軍配があがる。

眼視の体験を記録に残したい。眼視と電視を(ほぼ)同時にできるようなシステムを組むことができれば、ブレークスルーするかも?

システム構成の工夫

https://tentaip.space/flip-mirror/

というわけで、眼視と電視を簡単に切り替えられるシステムの模索が始まりました。小型の天体カメラNANO1をファインダーにする方法、上の画像のフリップミラーと防犯カメラを使用する方法など。

詳細のシステム構成やその他の様々な可能性については、元記事に詳しく分析・考察されています。ぜひご参照ください。

自分の眼視記録を人に見せても面白がってくれなさそうな気はしている。そして何よりも、眼視体験を記録に残す楽しみは、Netflix動画の誘惑に勝てるのだろうか。というのが最大の懸念点だな。

「眼視体験の記録は、自分自身以外にもニーズがあるのだろうか」「自分自身にとっても、眼視体験の記録はNetflix動画の誘惑に勝つことができるのか」という本質的すぎる自問自答で締めくくられていますが、 やってみれば明らかになるはずです!結果のレポートを楽しみにしています!

2022/8/2追記)早速レポートが更新されています!

天体写真はじめるよ・眼視体験を防犯カメラで記録してきた
https://tentaip.space/galaxy-express/

記録に残すことを目的に眼視をしてみたんだけれど、それよりも、その過程が楽しかったよ。眼視で見る散開星団は、きれいだった。M13も見てくればよかった。まぁ、この望遠鏡なら、淡い光でしかなかっただろうけれどさ。

実は天リフ編集部も感化され・・



実は「にゃあ」さんの一つめの記事に感化され、天リフ編集部も「眼視体験の記録」にチャレンジしてきました!

高感度ミラーレスカメラ(α7S)を2インチスリーブ接続とし、15秒一枚撮り(*)の画像を撮影し、接眼レンズを取り替える感覚で眼視用の正立ミラー(プリズム)のセットと交換するのがお手軽でした。

(*)デジカメの15秒1枚撮りは、ライブスタック15秒と本質的に違いはないので「電視みたいなもの」という認識で間違っていない気がします。

さらに、記録した画像を「眼視風味」に加工してみました。左がほぼ撮って出しに近い強調なし仕上げ、右が眼視の印象に極力近づけたものです。

単に同じ画像を並べただけですが、両眼で立体視すれば双眼望遠鏡の疑似体験も。

SQM=21.3(推定)の遠征地でしたが、口径10cmクラスでは星雲よりも散開星団の美しさが印象に残りました。ガチな天体写真の場合でも、星団(散開星団、球状星団)を美しく仕上げるのはかなり難度が高いですが、「眼視の印象」に近づけるのも同じように(それ以上に?)難しいと感じました。

でも、第1の目的は「眼視体験の記録」なので、まあよしとしましょう。画像処理技術は、いろいろな方が取り組むようになれば、きっと大きく進歩するはずです(*)。

(*)画像処理のコンセプトは、肉眼の特性「高輝度部以外はほとんどモノクロ」「淡い星雲や微光星の解像度は一桁低く赤はほとんど感度がない」のエミュレーションです。
・StarExterminatorで星消し画像を生成、減算処理で星だけ画像を生成。
・星消し画像はRチャンネルをGチャンネルで置き換えた後モノクロ化、ガウスぼかし5px〜20pxをブレンド
・星だけ画像は輝度選択で明るい星を選択した画像を明るさの最大値で輝星を強調、彩度強調
・星だけ画像、輝星画像、星消し画像をそれぞれレベル補正などで調整し比較明合成

まとめ

いかがでしたか?

星空を自分自身の眼で見る「眼視観望」は素晴らしい体験ですが、画像が形として残る「天体写真」と違って、その体験を直接的に記録する手段がスケッチなどにごく限られていました。形として記録できない行為を共有するには、文章や口伝やリアルな場での同時体験しかありません。筆者が推測するに、眼視観望が写真ほどに多くの人に広がっていない、ないしは「広がっていないかのように見える」のは、それが原因ではないでしょうか。

デジタル画像技術の進歩で、天体写真のクオリティがこの10年で大幅に向上し、リアルタイム要素を加えた「電視観望」も大きな広がりを見せています。これらの技術は「眼視体験の映像記録・表現」にも新たな可能性を拓くに違いありません。

天リフ編集部でも、力を入れて取り組んで行きたいと考えています。 https://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2022/08/flip-mirror-1024x683.jpghttps://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2022/08/flip-mirror-150x150.jpg編集部特選ピックアップ電視寄りの眼視ブログ「天体写真はじめるよ(ブログ主様は「にゃあ」さん)」で、「電視寄りの眼視」をやってみたいという記事が投稿されています。 従来は「眼視」と「写真」の境界は明確でまったくの別物と認識されていましたが、「電視」の登場でその境界線がかなりゆるいものになりつつあります。「にゃあ」さんのトライアルは、①1つのシステムで「眼視」と「電視」を(簡単に)切り替えられ②観望した記録が映像で残せる、の2点がコンセプトになっています。 何をしたいか? 天体写真はじめるよ・「眼視寄りの電視」あるいは「電視寄りの眼視」 https://tentaip.space/eaa/ 天体写真はじめるよ・電視と眼視の一本化、Netflixを見ずに星を見よう https://tentaip.space/flip-mirror/ やっぱり眼視はいいな。東京の空なので、もちろん限界はある。でも意外にたくさんの星が見えるんだよ。写真で撮った東京の空の星々は、しおれた花のようにいつも元気がないんだが、眼視だと針で突いたような、赤や白や青の光がキラキラと輝いているんだ。 東京の空であっても、望遠鏡で見る星はキラキラと輝いて見える。これは多くの人が認めていることではないでしょうか。 天体写真を撮りたいと思って始めたこの趣味だけれど、星空のライブ感を味わおうとした場合、電視や天体写真は眼視にかなわないと思っている。そこにある星空をこの目で見るというのは、生々しい体験で、目に見えない天体を写真に撮るというのとまた違う感動があるような気がする。 そして「ライブ感」。天体写真も電視も、リアルタイム動画も、眼視のライブ感にはかないません。 だから、たまに眼視をしたくなるわけなんだが、なぜだかすぐに飽きてしまう。 しかし、特に市街地での眼視観望では「飽きやすい」問題があります。元記事に寄せられたのコメントでは「”見えない、探せない、見えたとしてもそこまで楽しくない”みたいな所にあるのでは」と指摘されています。 そこで生まれた着想がこれ。 でも、記録に残せるんだったら、眼視体験も違ってくるんじゃないか。 自分の目で星を見るという体験は電視に代えがたい。でも、実際はアイピースを覗き続けるのがつらいというのがあるし、記憶に残せても記録に残すことができない。このあたりは電視に軍配があがる。 眼視の体験を記録に残したい。眼視と電視を(ほぼ)同時にできるようなシステムを組むことができれば、ブレークスルーするかも? システム構成の工夫 というわけで、眼視と電視を簡単に切り替えられるシステムの模索が始まりました。小型の天体カメラNANO1をファインダーにする方法、上の画像のフリップミラーと防犯カメラを使用する方法など。 詳細のシステム構成やその他の様々な可能性については、元記事に詳しく分析・考察されています。ぜひご参照ください。 自分の眼視記録を人に見せても面白がってくれなさそうな気はしている。そして何よりも、眼視体験を記録に残す楽しみは、Netflix動画の誘惑に勝てるのだろうか。というのが最大の懸念点だな。 「眼視体験の記録は、自分自身以外にもニーズがあるのだろうか」「自分自身にとっても、眼視体験の記録はNetflix動画の誘惑に勝つことができるのか」という本質的すぎる自問自答で締めくくられていますが、 やってみれば明らかになるはずです!結果のレポートを楽しみにしています! 2022/8/2追記)早速レポートが更新されています! 天体写真はじめるよ・眼視体験を防犯カメラで記録してきた https://tentaip.space/galaxy-express/ 記録に残すことを目的に眼視をしてみたんだけれど、それよりも、その過程が楽しかったよ。眼視で見る散開星団は、きれいだった。M13も見てくればよかった。まぁ、この望遠鏡なら、淡い光でしかなかっただろうけれどさ。 実は天リフ編集部も感化され・・ にゃあさんの記事に刺激されて先日試してみました。スマホは感度不足で今一つ(iPhone11)。2インチスリーブを差し替えてα7Sの15秒露出と1/4秒露出の動画で眼視で見た天体を記録しました。少なくとも写真で記録を残しておくだけでも、当日の記憶が蘇って楽しいです。 https://t.co/q75vH4JDG2 pic.twitter.com/d5XiN0aiOU — 天リフ編集部 (@tenmonReflexion) August 1, 2022 実は「にゃあ」さんの一つめの記事に感化され、天リフ編集部も「眼視体験の記録」にチャレンジしてきました! 高感度ミラーレスカメラ(α7S)を2インチスリーブ接続とし、15秒一枚撮り(*)の画像を撮影し、接眼レンズを取り替える感覚で眼視用の正立ミラー(プリズム)のセットと交換するのがお手軽でした。 (*)デジカメの15秒1枚撮りは、ライブスタック15秒と本質的に違いはないので「電視みたいなもの」という認識で間違っていない気がします。 三裂星雲M20の眼視イメージ(右)、口径106mm、53倍。「三裂」は無理でしたが、暗黒帯がモニョッと横切っている感じです。口径10cmクラスは小さな星雲にはやや力不足ですが、逆に広がった散開星団の美しさは格別です。M39、二重星団、M24の画像を後ほど公開予定。 pic.twitter.com/iHy2Y4zDw1 — 天リフ編集部 (@tenmonReflexion) July 31, 2022 さらに、記録した画像を「眼視風味」に加工してみました。左がほぼ撮って出しに近い強調なし仕上げ、右が眼視の印象に極力近づけたものです。 M8、双眼視バージョン。同じ画像を並べただけですが、両眼視すると迫力倍増!交差法でも平行法でもどちらでもOK! pic.twitter.com/KTMIPrfvrE — 天リフ編集部 (@tenmonReflexion) July 31, 2022 単に同じ画像を並べただけですが、両眼で立体視すれば双眼望遠鏡の疑似体験も。 バンビの横顔の眼視イメージ(右)。口径106mm、賞月観星XWA20mmの26.5倍の印象を再現。バンビの目玉もバンビの顔も、この画像ほどは明瞭でなくなんとなくそんな感じかな、という印象でした。 pic.twitter.com/5Uh1y9DPko — 天リフ編集部 (@tenmonReflexion) August 1, 2022 SQM=21.3(推定)の遠征地でしたが、口径10cmクラスでは星雲よりも散開星団の美しさが印象に残りました。ガチな天体写真の場合でも、星団(散開星団、球状星団)を美しく仕上げるのはかなり難度が高いですが、「眼視の印象」に近づけるのも同じように(それ以上に?)難しいと感じました。 でも、第1の目的は「眼視体験の記録」なので、まあよしとしましょう。画像処理技術は、いろいろな方が取り組むようになれば、きっと大きく進歩するはずです(*)。 (*)画像処理のコンセプトは、肉眼の特性「高輝度部以外はほとんどモノクロ」「淡い星雲や微光星の解像度は一桁低く赤はほとんど感度がない」のエミュレーションです。 ・StarExterminatorで星消し画像を生成、減算処理で星だけ画像を生成。 ・星消し画像はRチャンネルをGチャンネルで置き換えた後モノクロ化、ガウスぼかし5px〜20pxをブレンド ・星だけ画像は輝度選択で明るい星を選択した画像を明るさの最大値で輝星を強調、彩度強調 ・星だけ画像、輝星画像、星消し画像をそれぞれレベル補正などで調整し比較明合成 まとめ いかがでしたか? 星空を自分自身の眼で見る「眼視観望」は素晴らしい体験ですが、画像が形として残る「天体写真」と違って、その体験を直接的に記録する手段がスケッチなどにごく限られていました。形として記録できない行為を共有するには、文章や口伝やリアルな場での同時体験しかありません。筆者が推測するに、眼視観望が写真ほどに多くの人に広がっていない、ないしは「広がっていないかのように見える」のは、それが原因ではないでしょうか。 デジタル画像技術の進歩で、天体写真のクオリティがこの10年で大幅に向上し、リアルタイム要素を加えた「電視観望」も大きな広がりを見せています。これらの技術は「眼視体験の映像記録・表現」にも新たな可能性を拓くに違いありません。 天リフ編集部でも、力を入れて取り組んで行きたいと考えています。編集部発信のオリジナルコンテンツ