「マイルドな」光害カットフィルター・STC Astro Nightscapeフィルター
みなさんこんにちは!最近、天体撮影や星景写真全般で欠かせなくなってきたのがフィルターです。クラシック?な「ソフトフィルター」や「光害カットフィルター」から、ガチ撮りの「ナローバンドフィルター」など、さまざまなフィルターが販売されています。
そんな中、2019年のトレンドは「マイルドな」光害カットフィルター。センサーに到達する光を極力減らすことなく、有害な光害光だけを「マイルドに」吸収(反射)するフィルターです(*)。
(*)この対極にあるのは・・・そうです、特定の波長の「輝線」以外はざっくりカットしてしまう「ナローバンドフィルター」です。こちらも2019年のトレンド。いわゆる「光害カットフィルター」が、より強い効果を求める方向と、よりマイルドな効果の方向の2つのバリエーションに広がっているのです。
この記事ではその「マイルドな」光害カットフィルターのひとつである「STC Astro Nightscapeフィルター」をご紹介したいと思います。
よしみカメラ・STC Clip Astro Nightscape Filter (クリップアストロナイトスケープフィルター)
http://yoshimi.ocnk.net/product/206
目次
STC Astro Nightscapeフィルターの概要
波長特性
このフィルターのコンセプトを理解するには、波長透過グラフを見るのが一番でしょう。可視光域ではどの波長も最低でも30%程度までは光を通します。このため、光量の損失が少なく、露出時間に制限のある「追尾なしの固定撮影」でも露出不足になりにくいのが大きな特長です。
その反面、ナトリウムと水銀の輝線は大きく減光し、光害カット効果も期待できます。後述する色ガラスフィルター系のケンコー「Starry Nightフィルター」と違って、水銀輝線もナトリウム輝線と同じくらいカットする(*)のが大きな違いといえるでしょう。
(*)Starry Nightフィルターは水銀輝線をカットすることは潔くあきらめて、Gバンド全体の透過率を下げることで緑かぶりを抑制する意図だと推測します。昨今水銀灯・蛍光灯の比率は減っていますから、世の中の流れにもマッチしているとはいえます。
また、ナトリウム輝線よりも長いR(赤)の光はHαの手前までは透過率30%。「Rバンドを絞る」ことにより、Hα輝線で光る赤い星雲の強調効果も期待できます。このRの透過幅が狭いことも「Starry Nightフィルター」との違いです。
ケンコー・Starry Nightフィルターとの比較
ケンコー・スターリーナイトフィルター
https://www.kenko-tokina.co.jp/lp/starry_night/
こちらはその「Starry Nightフィルター」の波長特性。ナトリウム輝線のカット効果はこちらの方が高く、一方で青と緑の水銀輝線のカット効果が低いこと、Rバンドの透過域が広いことが読み取れます。
私見ですが、この2つのフィルターの波長特性をつぶさに見ると両者に「優劣」はなく、使い分ける性格のものだろうと感じています。次項の実写レビューで詳しく作例を見ていきますが、光害カット効果と星雲強調効果はSTC Astro Nightscapeフィルターがより高い(*)一方、光量損失がより少なく、撮って出しのカラーバランスがより自然なのはStarry Nightフィルターです。
(*)今回は天体改造機でしか実写できませんでしたが、非改造機の場合、STC Astro Nightscapeフィルターはより赤い星雲の強調効果が期待できると推測します。
実写レビュー
光害光に対する特性
まず典型的な光害地で低空の空を撮影して比較してみました。今回の比較では「露出倍数」を補正せず、全く同じ露出条件で比較しています(*)。現像条件も同等です。
(*)低照度での天体撮影では、ノイズを少なくするために可能な限り長く露出をかけ、輝度は絞りやISO感度、後処理で調整することが通常だと考えられるため。
当然ですがフィルターなしが一番明るく写りますが、「STC Astro Nightscape」も「Starry Night」も、さほど暗くなっていないことがわかります。
使用カメラは改造機ですが、カメラのカスタム設定でノーマル機相当にホワイトバランスを合わせています。これと比較すると「STC Astro Nightscape」はGに若干傾いていますが、これはRバンドが狭い波長特性通りの結果。これを補正するためにRを持ち上げると、その分だけ赤い星雲が相対的に強調される仕組みです。
一方「Starry Night」のカラーバランスは若干青寄り。これも波長特性通りですが、後処理で積極的にカラーバランスをいじらないのであれば、このくらいの色合いが一番好まれる加減かもしれません。
この3つの画像を、できるだけ色と輝度が一致するように調整してみました。地平線のすぐ上の強い①光害光に対する効果は「STC Astro Nightscape」も「Starry Night」も一目瞭然です。決して強烈な効果ではありませんが2つのフィルターはいずれもはっきり体感できる光害カット効果があります。
②露出倍数は「STC Astro Nightscape」が0.9段、「Starry Night」が0.75段でした。この程度であればノイズをさほど増加させずに星空を強調する効果が期待できるでしょう。「マイルドな効果の光害カットフィルター」のねらいはまさにそこにあります。
(*) ここでの「露出倍数」は特定の被写体での実測値です。光源にどんな波長の光が含まれるかによって変わってくるため、この数字は一般的な露出倍数ではないことに注意が必要です。
赤い星雲の強調効果
次に中程度の光害地での星野写真を比較してみましょう。はくちょう座の夏の大三角です。肉眼ではうっすら天の川が見えている条件です。
上の画像は撮って出し状態の比較。光害地での例と同様に「STC Astro Nightscape」では緑に、「Starry Night」では青にカラーバランスが偏ります。この状態では星野写真としての違いはあまりわからないので、カラーバランスを合わせて同じパラメーターで強調してみます。
条件を揃えてみると差は歴然です。北アメリカ星雲で比較すると、「STC Astro Nightscape」が一番赤い星雲が明瞭に出ていることがわかります。これはRバンドを狭くした効果です。
一方で「Starry Night」フィルターも明らかに赤い星雲の強調効果があります。撮って出しでもそれなりに満足できるカラーバランスが得られることと露出倍数がより小さいことを考慮すると、こちらは画像処理に手間をかけなくてもそれなりのメリットが得られるのが特徴といえるでしょう。
STC Astro Nightscapeフィルター作例
「STC Astro Nightscape」フィルターが一番生きるのは「赤い星雲を強調した星景写真」でしょう。この作例では、地上風景と星空を別撮りし、星空は赤道儀を使って追尾しました。ごらんのように低空の光害の影響が強い条件下でしたが、このような条件こそ本領を発揮します。F4という決して明るくないレンズでも天の川と赤い星雲をしっかり描出することができました。
こちらも同じ日、同じ場所から。タムロンの「出目金レンズ」15-30mmF2.8ズームでの撮影です。ボディ装着型のクリップフィルターのメリットは、基本的にレンズを選ばないこと。魚眼レンズや出目金型の超広角レンズでも使用できるのが特長です(*)。
(*)干渉フィルターの場合、超広角レンズの場合は斜入射光のカラーシフトが問題になることがありますが、今回撮影した範囲ではその影響はほとんど感じられませんでした。
使用上の注意点
露出倍数
多くの光をカットしてしまう「濃い」光害カットフィルターと違って、「STC Astro Nightscape」フィルターの露出倍数はせいぜい1段分程度です。中程度の光害地までなら、追尾なしでも特に露光不足を感じることはないでしょう。
しかし、空の暗い条件の良い場所では、固定撮影では露出不足を感じることがあるかもしれません。
そんな場合は、小型の赤道儀を使用して追尾撮影すれば、フィルターの露出倍数分を簡単に取り返すことができます。上の作例はビクセンの小型赤道儀「ポラリエ」を使用して恒星時追尾で撮影しました。60秒程度の露出であれば、上の作例のような「特徴のない」前景なら、あまり日周運動の流れによる画質劣化を気にしないで撮影ができます(*)。
(*)地上風景の画質を重視したい場合は「1/2恒星時追尾」で撮影するとよいでしょう。
フィルターの付け外しとレンズとの相性
「クリップタイプ」のフィルターの最大の難関は脱着。上の画像のように、レンズを外した状態でボディのミラーボックスの前に「そっと」かぶせる形になります。
上の画像はキヤノンの「EOS Kissシリーズ(実機はX5)」の場合ですが、こちらの場合はフルサイズよりも簡単で、ミラーアップも不要です。ただし、フィールドで脱着するのはうっかり落としてしまう危険もあり「自己責任」の世界になってしまうことにはじゅうぶん注意が必要です。
また、フルサイズのカメラの場合は、ミラーアップした状態でフィルター枠をミラーボックスに差し込む形になり、ライブビューで使用することが前提となります。フィルター枠のために若干ですがケラレも発生します。レンズによってはフィルターと干渉する場合もあり得ます。適合レンズとボディは、販売店のホームページ等でじゅうぶん確認する必要があります。
(追記)販売店のHPより、対応サイズのバリエーション。ニコン・キヤノン・ソニー・PENTAXのフルサイズ・APS-C、フジとオリンパス(M4/3)など、対応マウントは豊富。
干渉フィルターの弱点「ゴースト」
「クリップタイプ」の「干渉フィルター」は、ゴーストが出やすいことに注意が必要です。上の作例は写野内に強い街灯がある場合の比較ですが、「STC Astro Nightscape」フィルターではけっこう派手なゴーストが出てしまいます。
その理由は2つあります。レンズ前面に装着するフィルターの場合、フィルターの被写体側の面の反射は外部に逃げてくれます(*)。
(*)カメラ側の面はゴーストの原因になります。
しかし、クリップタイプの場合は被写体側に反射した光もレンズで反射されセンサーに戻ってきてしまいます。
もう一つの理由は、通過させない光を「吸収」してしまう色ガラスフィルターと違って、干渉フィルターは「反射」してしまうからです。露出倍数が1/3段のフィルターなら25%の光(*)を反射してしまうのです。
(*)2の1/3乗≒1.26
このため、あまり強い灯りを写野に入れないようにしない注意が必要です。上の作例は最初の作例ほど強い灯りではない場合です。感覚値ですが、木星くらいなら大丈夫で、金星くらい明るいと影響が出はじめる感じでしょうか。
傾斜入射光のカラーシフト
干渉フィルターはその機構上、斜めから入射した光に対して波長透過特性が変動します(*)。
(*)干渉フィルターの場合、蒸着された薄膜を光が透過する際の光路長(厚み)によって波長特性が変化します。色ガラスフィルターの場合も光路長によって実質的な「濃さ」が変わる分、透過光量が若干変化しますが、波長特性に変化はありません。
このため、レンズによっては周辺のカラーバランスがずれてしまい、色むらとなって現れることがあります。
「STC Astro Nightscape」フィルターを使用して撮影した画像(左)を極端に彩度強調してみました(右)。「STC Astro Nightscape」は干渉フィルターではあるものの、元々の効果がマイルドなので、カラーシフトもマイルドなのでしょうか、色むらはほとんど感じられませんでした(*)。
(*)「APS-C」フォーマットのEOS Kiss X5だったせいもあるかもしれません。フルサイズの場合は今回検証できなかったのが残念です。
ちなみに、干渉フィルターをレンズの先に装着する場合はより影響が大きくなります(*)。
(*)ボディ側に装着するクリップタイプのフィルターの場合は、「テレセントリック」なレンズの場合は影響は少なくなりますが、F値の明るいレンズの場合は傾斜して入射する光の量が多くなるため影響がより大きくなります。
バックフォーカスへの影響と周辺像
最近のF値の明るい広角レンズは、バックフォーカスにかなりシビアです。マウント面とセンサー面の距離が正確に保たれていないと、像面湾曲などの収差補正が設計どおりになされなくなってしまうのです。
ボディ側にフィルターを挿入すると、このバックフォーカスが若干変化します(*)。STCのクリップタイプのフィルターは非常に薄い(0.5mm前後)ガラス板が使用されているので影響は大きくはないのですが、それでもレンズによっては周辺像が悪化する可能性があります。
(*)ガラスの屈折率が1.5のとき、厚みの約1/3ほどピント位置が後にずれます。
実写比較。今回はAPS-Cフォーマットのカメラにフルサイズ用のレンズを使用したため、明らかな差は出ませんでしたが、フルサイズのカメラの場合やレンズによっては、影響が大きくなるる可能性もあるでしょう。
フィルター二枚重ねとケラレ
レンズ前面に装着するケンコーの「Starry Nightフィルター」の場合の注意点です。広角レンズの場合、フィルター枠によって周辺がケラレる場合があります。最近のフィルターは皆「薄枠」なので、フィルター1枚ならほぼ問題ないのですが、2枚重ねしたときに問題が出始めます。
そう、実戦的には「2枚重ね」するのはソフトフィルターと併用する場合です。上の作例はソフトフィルター「プロソフトンA」とStarry Nightフィルターを併用した場合のケラレの比較。最周辺がほんのわずかケラレているのがわかります。
まあこの程度なら周辺減光と比べれば大した問題ではないと思いますが、2枚重ねするとケラレの影響が出はじめることがあることには、留意しておくべきでしょう(*)。
(*)もちろんレンズによってもケラレの有無・多寡には違いがあります。
まとめ
いかがでしたか?
「がっつり長時間露出」するディープスカイ撮影とは違って、星景写真ではできるだけ機動的な機材とスタイルで撮りたいもの。そのためには「光量損失が少ない」フィルターは大いなる正義です。
その点、これまでの「光害カットフィルター」は主にディープスカイ用途を想定した製品が多く、追尾なしの固定撮影では露出が不足してしまうことが多かったと思います。露出倍数が1段以下の「マイルドな」光害カットフィルターは特に星景写真で使いやすいものといえるでしょう。
「STC Astro Nightscapeフィルター」なら、カメラに付けっぱなしにして常用フィルターとしても十分使用可能。レンズを選ばないクリップタイプの長所と干渉フィルターならではの赤い星雲の強調効果を生かして、さまざまな条件で活用できると感じました! https://reflexions.jp/tenref/orig/2019/11/12/9796/https://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2019/11/fc6927a4cd7fc6f068de9eb5d3ae4aff-1024x576.jpghttps://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2019/11/fc6927a4cd7fc6f068de9eb5d3ae4aff-150x150.jpgレビューフィルターフィルターみなさんこんにちは!最近、天体撮影や星景写真全般で欠かせなくなってきたのがフィルターです。クラシック?な「ソフトフィルター」や「光害カットフィルター」から、ガチ撮りの「ナローバンドフィルター」など、さまざまなフィルターが販売されています。 そんな中、2019年のトレンドは「マイルドな」光害カットフィルター。センサーに到達する光を極力減らすことなく、有害な光害光だけを「マイルドに」吸収(反射)するフィルターです(*)。 (*)この対極にあるのは・・・そうです、特定の波長の「輝線」以外はざっくりカットしてしまう「ナローバンドフィルター」です。こちらも2019年のトレンド。いわゆる「光害カットフィルター」が、より強い効果を求める方向と、よりマイルドな効果の方向の2つのバリエーションに広がっているのです。 この記事ではその「マイルドな」光害カットフィルターのひとつである「STC Astro Nightscapeフィルター」をご紹介したいと思います。 よしみカメラ・STC Clip Astro Nightscape Filter (クリップアストロナイトスケープフィルター) http://yoshimi.ocnk.net/product/206 STC Astro Nightscapeフィルターの概要 波長特性 このフィルターのコンセプトを理解するには、波長透過グラフを見るのが一番でしょう。可視光域ではどの波長も最低でも30%程度までは光を通します。このため、光量の損失が少なく、露出時間に制限のある「追尾なしの固定撮影」でも露出不足になりにくいのが大きな特長です。 その反面、ナトリウムと水銀の輝線は大きく減光し、光害カット効果も期待できます。後述する色ガラスフィルター系のケンコー「Starry Nightフィルター」と違って、水銀輝線もナトリウム輝線と同じくらいカットする(*)のが大きな違いといえるでしょう。 (*)Starry Nightフィルターは水銀輝線をカットすることは潔くあきらめて、Gバンド全体の透過率を下げることで緑かぶりを抑制する意図だと推測します。昨今水銀灯・蛍光灯の比率は減っていますから、世の中の流れにもマッチしているとはいえます。 また、ナトリウム輝線よりも長いR(赤)の光はHαの手前までは透過率30%。「Rバンドを絞る」ことにより、Hα輝線で光る赤い星雲の強調効果も期待できます。このRの透過幅が狭いことも「Starry Nightフィルター」との違いです。 ケンコー・Starry Nightフィルターとの比較 ケンコー・スターリーナイトフィルター https://www.kenko-tokina.co.jp/lp/starry_night/ こちらはその「Starry Nightフィルター」の波長特性。ナトリウム輝線のカット効果はこちらの方が高く、一方で青と緑の水銀輝線のカット効果が低いこと、Rバンドの透過域が広いことが読み取れます。 私見ですが、この2つのフィルターの波長特性をつぶさに見ると両者に「優劣」はなく、使い分ける性格のものだろうと感じています。次項の実写レビューで詳しく作例を見ていきますが、光害カット効果と星雲強調効果はSTC Astro Nightscapeフィルターがより高い(*)一方、光量損失がより少なく、撮って出しのカラーバランスがより自然なのはStarry Nightフィルターです。 (*)今回は天体改造機でしか実写できませんでしたが、非改造機の場合、STC Astro Nightscapeフィルターはより赤い星雲の強調効果が期待できると推測します。 実写レビュー 光害光に対する特性 まず典型的な光害地で低空の空を撮影して比較してみました。今回の比較では「露出倍数」を補正せず、全く同じ露出条件で比較しています(*)。現像条件も同等です。 (*)低照度での天体撮影では、ノイズを少なくするために可能な限り長く露出をかけ、輝度は絞りやISO感度、後処理で調整することが通常だと考えられるため。 当然ですがフィルターなしが一番明るく写りますが、「STC Astro Nightscape」も「Starry Night」も、さほど暗くなっていないことがわかります。 使用カメラは改造機ですが、カメラのカスタム設定でノーマル機相当にホワイトバランスを合わせています。これと比較すると「STC Astro Nightscape」はGに若干傾いていますが、これはRバンドが狭い波長特性通りの結果。これを補正するためにRを持ち上げると、その分だけ赤い星雲が相対的に強調される仕組みです。 一方「Starry Night」のカラーバランスは若干青寄り。これも波長特性通りですが、後処理で積極的にカラーバランスをいじらないのであれば、このくらいの色合いが一番好まれる加減かもしれません。 この3つの画像を、できるだけ色と輝度が一致するように調整してみました。地平線のすぐ上の強い①光害光に対する効果は「STC Astro Nightscape」も「Starry Night」も一目瞭然です。決して強烈な効果ではありませんが2つのフィルターはいずれもはっきり体感できる光害カット効果があります。 ②露出倍数は「STC Astro Nightscape」が0.9段、「Starry Night」が0.75段でした。この程度であればノイズをさほど増加させずに星空を強調する効果が期待できるでしょう。「マイルドな効果の光害カットフィルター」のねらいはまさにそこにあります。 (*) ここでの「露出倍数」は特定の被写体での実測値です。光源にどんな波長の光が含まれるかによって変わってくるため、この数字は一般的な露出倍数ではないことに注意が必要です。 赤い星雲の強調効果 次に中程度の光害地での星野写真を比較してみましょう。はくちょう座の夏の大三角です。肉眼ではうっすら天の川が見えている条件です。 上の画像は撮って出し状態の比較。光害地での例と同様に「STC Astro Nightscape」では緑に、「Starry Night」では青にカラーバランスが偏ります。この状態では星野写真としての違いはあまりわからないので、カラーバランスを合わせて同じパラメーターで強調してみます。 条件を揃えてみると差は歴然です。北アメリカ星雲で比較すると、「STC Astro Nightscape」が一番赤い星雲が明瞭に出ていることがわかります。これはRバンドを狭くした効果です。 一方で「Starry Night」フィルターも明らかに赤い星雲の強調効果があります。撮って出しでもそれなりに満足できるカラーバランスが得られることと露出倍数がより小さいことを考慮すると、こちらは画像処理に手間をかけなくてもそれなりのメリットが得られるのが特徴といえるでしょう。 STC Astro Nightscapeフィルター作例 「STC Astro Nightscape」フィルターが一番生きるのは「赤い星雲を強調した星景写真」でしょう。この作例では、地上風景と星空を別撮りし、星空は赤道儀を使って追尾しました。ごらんのように低空の光害の影響が強い条件下でしたが、このような条件こそ本領を発揮します。F4という決して明るくないレンズでも天の川と赤い星雲をしっかり描出することができました。 こちらも同じ日、同じ場所から。タムロンの「出目金レンズ」15-30mmF2.8ズームでの撮影です。ボディ装着型のクリップフィルターのメリットは、基本的にレンズを選ばないこと。魚眼レンズや出目金型の超広角レンズでも使用できるのが特長です(*)。 (*)干渉フィルターの場合、超広角レンズの場合は斜入射光のカラーシフトが問題になることがありますが、今回撮影した範囲ではその影響はほとんど感じられませんでした。 使用上の注意点 露出倍数 多くの光をカットしてしまう「濃い」光害カットフィルターと違って、「STC Astro Nightscape」フィルターの露出倍数はせいぜい1段分程度です。中程度の光害地までなら、追尾なしでも特に露光不足を感じることはないでしょう。 しかし、空の暗い条件の良い場所では、固定撮影では露出不足を感じることがあるかもしれません。 そんな場合は、小型の赤道儀を使用して追尾撮影すれば、フィルターの露出倍数分を簡単に取り返すことができます。上の作例はビクセンの小型赤道儀「ポラリエ」を使用して恒星時追尾で撮影しました。60秒程度の露出であれば、上の作例のような「特徴のない」前景なら、あまり日周運動の流れによる画質劣化を気にしないで撮影ができます(*)。 (*)地上風景の画質を重視したい場合は「1/2恒星時追尾」で撮影するとよいでしょう。 フィルターの付け外しとレンズとの相性 「クリップタイプ」のフィルターの最大の難関は脱着。上の画像のように、レンズを外した状態でボディのミラーボックスの前に「そっと」かぶせる形になります。 上の画像はキヤノンの「EOS Kissシリーズ(実機はX5)」の場合ですが、こちらの場合はフルサイズよりも簡単で、ミラーアップも不要です。ただし、フィールドで脱着するのはうっかり落としてしまう危険もあり「自己責任」の世界になってしまうことにはじゅうぶん注意が必要です。 また、フルサイズのカメラの場合は、ミラーアップした状態でフィルター枠をミラーボックスに差し込む形になり、ライブビューで使用することが前提となります。フィルター枠のために若干ですがケラレも発生します。レンズによってはフィルターと干渉する場合もあり得ます。適合レンズとボディは、販売店のホームページ等でじゅうぶん確認する必要があります。 (追記)販売店のHPより、対応サイズのバリエーション。ニコン・キヤノン・ソニー・PENTAXのフルサイズ・APS-C、フジとオリンパス(M4/3)など、対応マウントは豊富。 干渉フィルターの弱点「ゴースト」 「クリップタイプ」の「干渉フィルター」は、ゴーストが出やすいことに注意が必要です。上の作例は写野内に強い街灯がある場合の比較ですが、「STC Astro Nightscape」フィルターではけっこう派手なゴーストが出てしまいます。 その理由は2つあります。レンズ前面に装着するフィルターの場合、フィルターの被写体側の面の反射は外部に逃げてくれます(*)。 (*)カメラ側の面はゴーストの原因になります。 しかし、クリップタイプの場合は被写体側に反射した光もレンズで反射されセンサーに戻ってきてしまいます。 もう一つの理由は、通過させない光を「吸収」してしまう色ガラスフィルターと違って、干渉フィルターは「反射」してしまうからです。露出倍数が1/3段のフィルターなら25%の光(*)を反射してしまうのです。 (*)2の1/3乗≒1.26 このため、あまり強い灯りを写野に入れないようにしない注意が必要です。上の作例は最初の作例ほど強い灯りではない場合です。感覚値ですが、木星くらいなら大丈夫で、金星くらい明るいと影響が出はじめる感じでしょうか。 傾斜入射光のカラーシフト 干渉フィルターはその機構上、斜めから入射した光に対して波長透過特性が変動します(*)。 (*)干渉フィルターの場合、蒸着された薄膜を光が透過する際の光路長(厚み)によって波長特性が変化します。色ガラスフィルターの場合も光路長によって実質的な「濃さ」が変わる分、透過光量が若干変化しますが、波長特性に変化はありません。 このため、レンズによっては周辺のカラーバランスがずれてしまい、色むらとなって現れることがあります。 「STC Astro...編集部山口 千宗kojiro7inukai@gmail.comAdministrator天文リフレクションズ編集長です。天リフOriginal
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