ASI1600MMのクールピクセル問題について
概要
現在、ZWO社の天体用CMOSカメラ「ASI1600MM」シリーズの特定の個体において「クールピクセルが異常に多い」という問題が報告されています。
本問題については、編集部では「特定製品ロットにおける問題で販売店様経由での交換対応を行う」との情報をZWO社より得ており、解決に向かった動きが進むと認識しています。
一方で「問題個体かどうかの判断基準」が明確でなく、具体的な交換オペレーションがどのような形で行われ、いつまでに全て解決するかはまだ見えていません。
本記事は、現在編集部で得ている情報を整理し、ユーザ様・販売店様、ZWO社様それぞれの間でより解決がスムーズに進むことを目的とするものです。
最新情報
最新情報を随時この項目に追記していきます。
(*ご注意)
中国では「春節(2018年は2月15日~2月21日)」となるため、ZWO社においてもこの期間は問い合わせ対応などが休止するものと思われます。
(2018/2/10追記)
ZWO社正式代理店のひとつであるエレクトリックシープ様のHPが更新されています。
Electric Sheep Co. Ltd. ASI1600MM Cool/Pro
http://www.electricsheep.co.jp/astroshop/?itemcode=asimmc03#cp
Q. クールピクセル(※)に関して
A. 問題はセンサーではなく、基板です。一部の個体の抵抗値の問題でセンサーに供給される電圧が不足気味になり、クールピクセルが発生します。
クールピクセルのある個体のフラットは下に示したような左右非対称のヒストグラムになりますが、どのフラットからでも判断できるとは限りません。確実な判断方法としてZWO社が推奨するのは、Gainを300に設定し、動画を見ることです。まったく動かない黒いドットがあればクールピクセルです。
問題の原因は基板であること、ヒストグラムの形状および動画での確認方法について記されています。該当製品をお持ちの方は、上記リンク先ページにある問い合わせフォームでご連絡下さい、とのことです。
2018/2/7追記)
本問題に関して、ZWO社正式代理店のひとつである星見屋.com様が自社の検品内容と今後のサポートについての情報を公開されています。これまでの検品内容では問題のある個体は確認できてないそうですが、実機で問題があった場合は問い合わせてほしい、とのことです。(下線部、2/10に追記)
星見屋の出荷前検品について星見屋では、ZWO社製CMOSカメラについて、以下のような出荷前検品を行っております。・非冷却カメラ0)CDが付属している場合(付属していない場合もあります) ウィルス対策ソフトでスキャン1)フラット…
星見屋さんの投稿 2018年2月7日(水)
読者様より提供いただいた実撮像データ
本問題が最も顕著に表れるのは、均一な光源を撮像した「フラットデータ」の場合です。
上記のデータは、読者様からご提供いただいた異なる6個体のものです。同じ条件で撮影した数多くのフラット画像を相互に比較することで異常個体は判別可能であると考えられます。
上記画像の共通の撮像条件を以下に記します。
ゲイン200、オフセット21、冷却温度-30°、バイアス・ダークなし
50フレームを加算平均後fits出力。
編集部にてMakariで16bit tiff化。中央部100ピクセル四方を切り出し。画像処理なし。
以下に、各画像のPS画面画像と、100ピクセル角切り出し(*)のtifへのリンクをすべて列挙します。(ファイル名のクリックでtifファイルが表示されます)
(*)編集部で入手した6個体のフラット画像においては、センサー上に表れるクールピクセルなどのノイズには、センサーの隅・端・中央などの場所による依存性は確認できませんでした。このため、中央部のみの切り出し画像を掲載しています。
001.tif
ASI1600MM-PRO
一目、クールピクセルが非常に多い個体です。これは交換対象となるべきでしょう。
002.tif
ASI1600MM-Cool
この個体もクールピクセルが多めです。横並びで比べると、ぜひ交換してもらいたいと感じるレベル。こちらは「Pro」ではなく一つ前の「Cool」です。
003.tif
ASI1600MM-Pro
斜め45度に傾いた十字のパターンが見られますが、これはカラーセンサーの回路をそのまま使用しているASI1600MMの仕様で、後処理で補正可能なものです。クールピクセルはぽつぽつありますが、正常個体といえるでしょう。
004.tif
ASI1600MM-Cool
格子パターンもすくなく、ヒストグラムが鋭く立っています。こちらも正常個体と判断できるでしょう。
005.tif
ASI1600MM-Cool
こちらは格子パターンは明瞭ですが、クールピクセルは少なく、正常個体と判断できるでしょう。
006.tif
ASI1600MM-Pro
格子パターンもクールピクセルも少なく、正常個体と判断できるでしょう。
今後、ZWO社から「どの程度までのバラツキが個体差として許容されるのか」「どこからが異常個体であるのか」についての情報が得られれば、問題の切り分けはよりスムーズになるでしょう。
わたしのASI1600MMは大丈夫なの?
ユーザ様にとって一番の心配はこれでしょう。
せっかく遠征して長い時間をかけて撮影したのに、本来あってはならないノイズで結果が今一つになってしまっては泣くに泣けません。
お手持ちのカメラで撮ったフラット画像を見て、クールピクセルがどの程度出ているのかをご確認いただき、本記事の画像群と比較して「あまりにもひどい」と感じるようなら販売店様にお問い合わせされることをお奨めします。
また、本記事と同等の条件で撮影されたフラット画像を編集部宛にお送りいただければ、同じ形式で記事内に追加していきたいと思います。fitsファイルは大変大きいので、画像処理を何もせず16bit tifに変換し、中央部を100px角で切り出してお送りいただくのもOKです。問い合わせフォームでご連絡いただければ、折り返しメールアドレスをお送りいたします。
撮像条件:
ゲイン200、オフセット21、冷却温度-30°、バイアス・ダークなし
50フレームを加算平均後fits出力。
また、動画でフラットを撮像し拡大して確認する方法もあるようです。これについては情報が得られ次第追記したいと思います。
参考リンク
本記事の作成にご協力いただきましたまーちゃる様、あぷらなーと様のブログ記事へのリンクです。厚く御礼申し上げます。
まーちゃる雑記帳・あなたのASIカメラ(ASI1600MM-PRO)大丈夫? その2
https://blogs.yahoo.co.jp/ma_charu3/35173467.html
クールピクセルの比較。上記記事に掲載されている6個体は、本記事に掲載したものと同一です。その1、その3もあります。
あぷらなーと・クールピクセルにお悩みの方に朗報♪
http://apranat.exblog.jp/29092772/
あぷらなーと・クールピクセルを軽減するアイディア
http://apranat.exblog.jp/28135658/
CMOSカメラのクールピクセルは、減算でも除算でも対処できない問題があり、それに関しての考察と解決方法。ここで考案された方法は荒井俊也様の開発されたFlatAidProに実装されています。
おことわり
・本記事における「正常個体」または「交換対象」という評価は、天文リフレクションズ編集部の見解であり、販売店様・ZWO社様の見解と異なる可能性があります。
・「ASI1600MM-Cool」が交換対象となるかどうかについては現状把握できていません。また、保証期間内・保証期間外で対応が異なる可能性もあります。詳細は販売店にお問い合わせください。
・天体用CMOSカメラはその特性上、ダーク・バイアス・フラットを処理しない段階の画像では、デジタルカメラと比較してノイズが多く感じられる場合があります。本記事の画像はあくまでASI1600MM相互の比較であり、デジタルカメラや異なるCMOSカメラとの比較材料となるものではありません。
https://reflexions.jp/tenref/orig/2018/02/07/3775/https://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2018/02/8960ed5a5a0f0a02ab2ca13273d5c75a-1024x683.jpghttps://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2018/02/8960ed5a5a0f0a02ab2ca13273d5c75a-150x150.jpg天体用カメラ概要 現在、ZWO社の天体用CMOSカメラ「ASI1600MM」シリーズの特定の個体において「クールピクセルが異常に多い」という問題が報告されています。 本問題については、編集部では「特定製品ロットにおける問題で販売店様経由での交換対応を行う」との情報をZWO社より得ており、解決に向かった動きが進むと認識しています。 一方で「問題個体かどうかの判断基準」が明確でなく、具体的な交換オペレーションがどのような形で行われ、いつまでに全て解決するかはまだ見えていません。 本記事は、現在編集部で得ている情報を整理し、ユーザ様・販売店様、ZWO社様それぞれの間でより解決がスムーズに進むことを目的とするものです。 最新情報 最新情報を随時この項目に追記していきます。 (*ご注意) 中国では「春節(2018年は2月15日~2月21日)」となるため、ZWO社においてもこの期間は問い合わせ対応などが休止するものと思われます。 (2018/2/10追記) ZWO社正式代理店のひとつであるエレクトリックシープ様のHPが更新されています。 Electric Sheep Co. Ltd. ASI1600MM Cool/Pro http://www.electricsheep.co.jp/astroshop/?itemcode=asimmc03#cp Q. クールピクセル(※)に関して A. 問題はセンサーではなく、基板です。一部の個体の抵抗値の問題でセンサーに供給される電圧が不足気味になり、クールピクセルが発生します。 クールピクセルのある個体のフラットは下に示したような左右非対称のヒストグラムになりますが、どのフラットからでも判断できるとは限りません。確実な判断方法としてZWO社が推奨するのは、Gainを300に設定し、動画を見ることです。まったく動かない黒いドットがあればクールピクセルです。 問題の原因は基板であること、ヒストグラムの形状および動画での確認方法について記されています。該当製品をお持ちの方は、上記リンク先ページにある問い合わせフォームでご連絡下さい、とのことです。 2018/2/7追記) 本問題に関して、ZWO社正式代理店のひとつである星見屋.com様が自社の検品内容と今後のサポートについての情報を公開されています。これまでの検品内容では問題のある個体は確認できてないそうですが、実機で問題があった場合は問い合わせてほしい、とのことです。(下線部、2/10に追記) https://www.facebook.com/HoshimiyaMaster/posts/874042106109341 読者様より提供いただいた実撮像データ 本問題が最も顕著に表れるのは、均一な光源を撮像した「フラットデータ」の場合です。 上記のデータは、読者様からご提供いただいた異なる6個体のものです。同じ条件で撮影した数多くのフラット画像を相互に比較することで異常個体は判別可能であると考えられます。 上記画像の共通の撮像条件を以下に記します。 ゲイン200、オフセット21、冷却温度-30°、バイアス・ダークなし 50フレームを加算平均後fits出力。 編集部にてMakariで16bit tiff化。中央部100ピクセル四方を切り出し。画像処理なし。 以下に、各画像のPS画面画像と、100ピクセル角切り出し(*)のtifへのリンクをすべて列挙します。(ファイル名のクリックでtifファイルが表示されます) (*)編集部で入手した6個体のフラット画像においては、センサー上に表れるクールピクセルなどのノイズには、センサーの隅・端・中央などの場所による依存性は確認できませんでした。このため、中央部のみの切り出し画像を掲載しています。 001.tif ASI1600MM-PRO 一目、クールピクセルが非常に多い個体です。これは交換対象となるべきでしょう。 002.tif ASI1600MM-Cool この個体もクールピクセルが多めです。横並びで比べると、ぜひ交換してもらいたいと感じるレベル。こちらは「Pro」ではなく一つ前の「Cool」です。 003.tif ASI1600MM-Pro 斜め45度に傾いた十字のパターンが見られますが、これはカラーセンサーの回路をそのまま使用しているASI1600MMの仕様で、後処理で補正可能なものです。クールピクセルはぽつぽつありますが、正常個体といえるでしょう。 004.tif ASI1600MM-Cool 格子パターンもすくなく、ヒストグラムが鋭く立っています。こちらも正常個体と判断できるでしょう。 005.tif ASI1600MM-Cool こちらは格子パターンは明瞭ですが、クールピクセルは少なく、正常個体と判断できるでしょう。 006.tif ASI1600MM-Pro 格子パターンもクールピクセルも少なく、正常個体と判断できるでしょう。 今後、ZWO社から「どの程度までのバラツキが個体差として許容されるのか」「どこからが異常個体であるのか」についての情報が得られれば、問題の切り分けはよりスムーズになるでしょう。 わたしのASI1600MMは大丈夫なの? ユーザ様にとって一番の心配はこれでしょう。 せっかく遠征して長い時間をかけて撮影したのに、本来あってはならないノイズで結果が今一つになってしまっては泣くに泣けません。 お手持ちのカメラで撮ったフラット画像を見て、クールピクセルがどの程度出ているのかをご確認いただき、本記事の画像群と比較して「あまりにもひどい」と感じるようなら販売店様にお問い合わせされることをお奨めします。 また、本記事と同等の条件で撮影されたフラット画像を編集部宛にお送りいただければ、同じ形式で記事内に追加していきたいと思います。fitsファイルは大変大きいので、画像処理を何もせず16bit tifに変換し、中央部を100px角で切り出してお送りいただくのもOKです。問い合わせフォームでご連絡いただければ、折り返しメールアドレスをお送りいたします。 撮像条件: ゲイン200、オフセット21、冷却温度-30°、バイアス・ダークなし 50フレームを加算平均後fits出力。 また、動画でフラットを撮像し拡大して確認する方法もあるようです。これについては情報が得られ次第追記したいと思います。 参考リンク 本記事の作成にご協力いただきましたまーちゃる様、あぷらなーと様のブログ記事へのリンクです。厚く御礼申し上げます。 まーちゃる雑記帳・あなたのASIカメラ(ASI1600MM-PRO)大丈夫? その2 https://blogs.yahoo.co.jp/ma_charu3/35173467.html クールピクセルの比較。上記記事に掲載されている6個体は、本記事に掲載したものと同一です。その1、その3もあります。 あぷらなーと・クールピクセルにお悩みの方に朗報♪ http://apranat.exblog.jp/29092772/ あぷらなーと・クールピクセルを軽減するアイディア http://apranat.exblog.jp/28135658/ CMOSカメラのクールピクセルは、減算でも除算でも対処できない問題があり、それに関しての考察と解決方法。ここで考案された方法は荒井俊也様の開発されたFlatAidProに実装されています。 おことわり ・本記事における「正常個体」または「交換対象」という評価は、天文リフレクションズ編集部の見解であり、販売店様・ZWO社様の見解と異なる可能性があります。 ・「ASI1600MM-Cool」が交換対象となるかどうかについては現状把握できていません。また、保証期間内・保証期間外で対応が異なる可能性もあります。詳細は販売店にお問い合わせください。 ・天体用CMOSカメラはその特性上、ダーク・バイアス・フラットを処理しない段階の画像では、デジタルカメラと比較してノイズが多く感じられる場合があります。本記事の画像はあくまでASI1600MM相互の比較であり、デジタルカメラや異なるCMOSカメラとの比較材料となるものではありません。 編集部山口 千宗kojiro7inukai@gmail.comAdministrator天文リフレクションズ編集長です。天リフOriginal
とても有意義な検証、そして情報量!これぞ天文リフレクション!またまたファンが増えそうですね!
いえいえ、本記事は、地道に検証しその結果をわかりやすくまとめてブログに発信されたあぷらなーとさん、まーちゃるさんの労作を単にまとめただけですから。
有益な情報を多くの方に届けること、天文ファンのコミュニティを活発に盛り上げることが使命と考えております。
この記事によって広く問題が認識され、代理店さんからも情報が出るようになってとてもよかったと思います。
やっぱりメディアの力って凄いですね(^-^)
ZWO社さんの方では現在生産している製品は解決しているとの情報ですが、この手の問題が発覚していたのならば速やかに情報を開示して回収して欲しかったですね(ノД`)
結局あとから発覚すれば逆に信用を落とすことになるので。
お返事遅くなってすみません。おほめいただき恐縮です。
>問題が発覚していたのならば速やかに情報を開示して回収して欲しかったですね(ノД`)
悪い情報ほどきちんと公開した方がダメージが少ないということは昨今広く認識されていると思いますが、実際にそれを早く的確にやれるかどうかで企業のレベルが問われるのだと思います。
本件については注視していきたいと思います。