二年前に100台限定で発売されたタカハシのFC-100DLが、6月より限定で再販売されるようです。 タカハシWebサイト上の定価表示は税抜236,000円。

FC-100DLの製品コンセプト

タカハシWebサイト
FC-100DL 再販売のご案内
二年前に限定発売し、ご好評のうちに完売となりましたFC-100DLは、その後再販のご要望を多くいただきましたので、限定ですが6月より再度販売することにいたしました。
10cm f/9 の対物レンズや50.8スリーブの接眼体仕様ながら軽量に仕上げた鏡筒は2015年モデルと同じですが、接眼体とファインダー脚の塗装は現行のライトブルー色になっています。
前回入手できなかった方は是非この機会にお求めください。 2017年モデルは年内のご注文分に対応する予定でおりますが、状況により早期終了する場合もありますことをご承知ください。

FC-100DLは焦点距離900mm。
同社で販売中のFC-100DF/DS(焦点距離740mm)の姉妹機に相当します。

焦点距離が22%長くなっただけと言ってしまえばそれまでなのですが、眼視・写真の両方で高性能を追求したいわゆる「フォトビジュアル」系アポクロマート製品が「より短焦点でより明るく」を向いていたのと反対の方向性です。

FC-100DLの眼視性能

タカハシWebサイト
FC-100DL 再販売のご案内
近年の屈折望遠鏡は、フォト・ビジュアル系短焦点アポクロマートが主流になっていますが、これらとは性格を異にする長焦点二枚玉フローライトアポクロマート望遠鏡がFC-100DLです。
FC-100DLはその名の通りフローライトレンズを後ろに配したFCタイプで、f/9.0の長焦点屈折にふさわしく、色収差、球面収差の少ないコントラストの高い像が得られます。具体的には、f/7.3のFC-100Dに対してg線(紫)のハローが約4割減少、高倍率性能を示すストレール比で約4%増加の97.5%を実現しています。(データは計算値)
この収差データは、三枚玉アポクロマートとほぼ同等の数字であり、コマ収差がゼロの安定した像面と相まって、高い眼視性能を持った望遠鏡であることを理解していただけると思います。

タカハシのWebサイトによると、FC-100Dと比較して、紫のハロが4割減少、ストレール比が4%上昇の97.5%。



昔、屈折望遠鏡では「Fが暗いは七難隠す」とも言われていました。収差理論的にはFが暗いことはストレートに収差減に寄与します

従来は写真用途向けに「明るい」ことが最重要視され、それによる収差増を埋め合わせるために様々な新技術が投入されてきたともいえます。

FC-100DLの発売は、そんな中で逆に「明るいことを最優先するのをやめて、暗くなっても眼視性能を優先した」という「チャレンジ」だったのかもしれません。

このチャレンジが天文ファンに受け入れられたのか、FC-100DLは限定の100台が、4ヶ月ほどで完売になったという情報もあります。
ただ、再販売まで2年を要したこと、今回も限定であることから推測して、「売れ筋メイン商品ではない」という認識なのでしょうか。

FC-100DLの写真性能

タカハシWebサイト
FC-100DL 再販売のご案内
FC-100DLの光学性能は、高倍率眼視性能もさることながら、写真性能も優れています。
FC-35レデューサー0.66×を使用すると、35mmフルサイズ周辺でのRMS-SPOT値で7ミクロン以内というFSQ並みの性能を発揮します。f/5.9と最近のアストロカメラとしてはやや暗いですが、フラットフィールドならではのイメージサークルいっぱいまで青ハローが無いコントラストの高い星像を結びます。FC-100DL+FC-35レデューサー0.66×の性能は、銀塩時代の製品で同スペックの旧型FC-100+FC-100レデューサーと比較すると、中心の色収差補正および周辺部の像面湾曲補正がはるかに進化して、デジタル時代にふさわしいシャープな星像が得られます。

では、FC-100DLの写真性能はどうでしょうか。
発売後二年、編集子の周辺からは写真性能も極めて優秀であるとの評判を聞きます。

2枚玉なので、そのままでは像面湾曲のため星野写真には不向きですが、0.66xのレデューサを使用するとフルサイズ周辺でもSPOT値は7ミクロン以内。定評あるフォトビジュアル機FSQ106EDと同程度。

F5.9は「やや暗い」ですが、最近のデジタル機材の高感度特性と考えれば、十分に実戦範囲といえましょう。
むしろ光害地のベランダ撮影などでは、明るい短焦点機と十二分に張り合えるのではないでしょうか。

FC-100DL 3.8kg 236,000円
FC-100DF 3.6kg 218,000円
FSQ106ED 7kg 498,000円

カタハシWebサイトより

もうひとつ、2枚玉のFC-100DLの特徴は比較的安価で軽量なこと。超弩級の4枚玉FSQ106EDと比べるのは若干無理がありますが、重量・価格とも半分程度です。

3.8kgであれば、短秒露出ならSWATのようなポタ赤での運用も不可能ではなく、ポルタのような軽量な経緯台での眼視観望も無理なく行えます。

まとめ:今FC-100DLを再評価する

いかがでしたか?

このFC-100DL、本体色以外のスペックは、2年前に発売されたのと同じもの。今さら個別のスペックをあれこれ評価しても仕方ありません。



むしろ今問われているのは、このスペックが一番生きる使い方、このスペックを一番生かせるユーザ像は何なのか、ということではないでしょうか。

空の暗い場所に遠征して極限まで淡い対象を狙うなら、明るさはまさに正義。でも、光害地のベランダでメジャー天体を狙うには、暗くても長焦点で大きく撮る方が楽しめます。

また、遠征地でFSQ106EDで眼視をしている人はほとんど見かけません。スペックは「フォトビジュアル」でも、使われ方は「フォトオンリー」。確かに高性能なのですが、気軽に眼視に使うにはいかにも大げさすぎます。

ユーザ個別の様々な嗜好や制約条件の中で自分のスタイルに合った機材を選ぶ中では、FC-100DLのような「決して明るくはないが、コンパクトでオールラウンドに使える高性能機」はもっと評価されてよいのではないでしょうか。

編集子も、老後は?重い機材は全部処分して、カメラ1台、レンズ1本、ポタ赤1台、三脚1本。そして眼視用の筒ひとつで気軽で気ままな天文ライフを・・と考えているのですが、この候補には「FL-100DL」がランクインしたのでした^^


FC-100DL参考リンク)

追記6/6)

星空備忘録・FC100DL。再販。
タカハシフリークである「こもロハス」さんのブログより。
FC-100DLの情報、眼視むけ海外サイトの情報が記載されています。

追記6/6終わり)

Bosque Rico
高橋製作所の天体望遠鏡【FC-100DL】スペックレビュー

天文Youtuberのぼすけさんによる紹介動画。
スペックがわかりやすく解説されています。

星爺から若人へ
●アポクロマートという用語

FC-100DLの発売直後に書かれた、オールド天文ファンならみんな知ってる元編集長のブログ記事。
長焦点アクロマートの時代から天文界の裏側にいらしただけあって、2枚玉アポ、3枚玉アポ、フォトビジュアル化といったこれまでの歴史的流れとその意義が語られています。

きゃいんばぶ日記
タカハシ FC100DL インプレッション (1)
タカハシ FC100DL インプレッション (2)
タカハシ FC100DL インプレッション (3)

FC-100DLをはじめ、五藤のGTM100、GTL125、TOA130など数々の眼視機を保有されている方によるFC-100DLのインプレッション。たいへん濃い成分が大量に含まれています^^ https://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2017/05/FC-100DL_top2.jpghttps://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2017/05/FC-100DL_top2-150x150.jpg編集部望遠鏡二年前に100台限定で発売されたタカハシのFC-100DLが、6月より限定で再販売されるようです。 タカハシWebサイト上の定価表示は税抜236,000円。 FC-100DLの製品コンセプト タカハシWebサイト FC-100DL 再販売のご案内 二年前に限定発売し、ご好評のうちに完売となりましたFC-100DLは、その後再販のご要望を多くいただきましたので、限定ですが6月より再度販売することにいたしました。 10cm f/9 の対物レンズや50.8スリーブの接眼体仕様ながら軽量に仕上げた鏡筒は2015年モデルと同じですが、接眼体とファインダー脚の塗装は現行のライトブルー色になっています。 前回入手できなかった方は是非この機会にお求めください。 2017年モデルは年内のご注文分に対応する予定でおりますが、状況により早期終了する場合もありますことをご承知ください。 FC-100DLは焦点距離900mm。 同社で販売中のFC-100DF/DS(焦点距離740mm)の姉妹機に相当します。 焦点距離が22%長くなっただけと言ってしまえばそれまでなのですが、眼視・写真の両方で高性能を追求したいわゆる「フォトビジュアル」系アポクロマート製品が「より短焦点でより明るく」を向いていたのと反対の方向性です。 FC-100DLの眼視性能 タカハシWebサイト FC-100DL 再販売のご案内 近年の屈折望遠鏡は、フォト・ビジュアル系短焦点アポクロマートが主流になっていますが、これらとは性格を異にする長焦点二枚玉フローライトアポクロマート望遠鏡がFC-100DLです。 FC-100DLはその名の通りフローライトレンズを後ろに配したFCタイプで、f/9.0の長焦点屈折にふさわしく、色収差、球面収差の少ないコントラストの高い像が得られます。具体的には、f/7.3のFC-100Dに対してg線(紫)のハローが約4割減少、高倍率性能を示すストレール比で約4%増加の97.5%を実現しています。(データは計算値) この収差データは、三枚玉アポクロマートとほぼ同等の数字であり、コマ収差がゼロの安定した像面と相まって、高い眼視性能を持った望遠鏡であることを理解していただけると思います。 タカハシのWebサイトによると、FC-100Dと比較して、紫のハロが4割減少、ストレール比が4%上昇の97.5%。 昔、屈折望遠鏡では「Fが暗いは七難隠す」とも言われていました。収差理論的にはFが暗いことはストレートに収差減に寄与します。 従来は写真用途向けに「明るい」ことが最重要視され、それによる収差増を埋め合わせるために様々な新技術が投入されてきたともいえます。 FC-100DLの発売は、そんな中で逆に「明るいことを最優先するのをやめて、暗くなっても眼視性能を優先した」という「チャレンジ」だったのかもしれません。 このチャレンジが天文ファンに受け入れられたのか、FC-100DLは限定の100台が、4ヶ月ほどで完売になったという情報もあります。 ただ、再販売まで2年を要したこと、今回も限定であることから推測して、「売れ筋メイン商品ではない」という認識なのでしょうか。 FC-100DLの写真性能 タカハシWebサイト FC-100DL 再販売のご案内 FC-100DLの光学性能は、高倍率眼視性能もさることながら、写真性能も優れています。 FC-35レデューサー0.66×を使用すると、35mmフルサイズ周辺でのRMS-SPOT値で7ミクロン以内というFSQ並みの性能を発揮します。f/5.9と最近のアストロカメラとしてはやや暗いですが、フラットフィールドならではのイメージサークルいっぱいまで青ハローが無いコントラストの高い星像を結びます。FC-100DL+FC-35レデューサー0.66×の性能は、銀塩時代の製品で同スペックの旧型FC-100+FC-100レデューサーと比較すると、中心の色収差補正および周辺部の像面湾曲補正がはるかに進化して、デジタル時代にふさわしいシャープな星像が得られます。 では、FC-100DLの写真性能はどうでしょうか。 発売後二年、編集子の周辺からは写真性能も極めて優秀であるとの評判を聞きます。 2枚玉なので、そのままでは像面湾曲のため星野写真には不向きですが、0.66xのレデューサを使用するとフルサイズ周辺でもSPOT値は7ミクロン以内。定評あるフォトビジュアル機FSQ106EDと同程度。 F5.9は「やや暗い」ですが、最近のデジタル機材の高感度特性と考えれば、十分に実戦範囲といえましょう。 むしろ光害地のベランダ撮影などでは、明るい短焦点機と十二分に張り合えるのではないでしょうか。 FC-100DL 3.8kg 236,000円 FC-100DF 3.6kg 218,000円 FSQ106ED 7kg 498,000円 カタハシWebサイトより もうひとつ、2枚玉のFC-100DLの特徴は比較的安価で軽量なこと。超弩級の4枚玉FSQ106EDと比べるのは若干無理がありますが、重量・価格とも半分程度です。 3.8kgであれば、短秒露出ならSWATのようなポタ赤での運用も不可能ではなく、ポルタのような軽量な経緯台での眼視観望も無理なく行えます。 まとめ:今FC-100DLを再評価する いかがでしたか? このFC-100DL、本体色以外のスペックは、2年前に発売されたのと同じもの。今さら個別のスペックをあれこれ評価しても仕方ありません。 むしろ今問われているのは、このスペックが一番生きる使い方、このスペックを一番生かせるユーザ像は何なのか、ということではないでしょうか。 空の暗い場所に遠征して極限まで淡い対象を狙うなら、明るさはまさに正義。でも、光害地のベランダでメジャー天体を狙うには、暗くても長焦点で大きく撮る方が楽しめます。 また、遠征地でFSQ106EDで眼視をしている人はほとんど見かけません。スペックは「フォトビジュアル」でも、使われ方は「フォトオンリー」。確かに高性能なのですが、気軽に眼視に使うにはいかにも大げさすぎます。 ユーザ個別の様々な嗜好や制約条件の中で、自分のスタイルに合った機材を選ぶ中では、FC-100DLのような「決して明るくはないが、コンパクトでオールラウンドに使える高性能機」はもっと評価されてよいのではないでしょうか。 編集子も、老後は?重い機材は全部処分して、カメラ1台、レンズ1本、ポタ赤1台、三脚1本。そして眼視用の筒ひとつで気軽で気ままな天文ライフを・・と考えているのですが、この候補には「FL-100DL」がランクインしたのでした^^ FC-100DL参考リンク) 追記6/6) 星空備忘録・FC100DL。再販。 タカハシフリークである「こもロハス」さんのブログより。 FC-100DLの情報、眼視むけ海外サイトの情報が記載されています。 追記6/6終わり) Bosque Rico 高橋製作所の天体望遠鏡【FC-100DL】スペックレビュー https://youtu.be/CvW_RJI6faI 天文Youtuberのぼすけさんによる紹介動画。 スペックがわかりやすく解説されています。 星爺から若人へ ●アポクロマートという用語 FC-100DLの発売直後に書かれた、オールド天文ファンならみんな知ってる元編集長のブログ記事。 長焦点アクロマートの時代から天文界の裏側にいらしただけあって、2枚玉アポ、3枚玉アポ、フォトビジュアル化といったこれまでの歴史的流れとその意義が語られています。 きゃいんばぶ日記 タカハシ FC100DL インプレッション (1) タカハシ FC100DL インプレッション (2) タカハシ FC100DL インプレッション (3) FC-100DLをはじめ、五藤のGTM100、GTL125、TOA130など数々の眼視機を保有されている方によるFC-100DLのインプレッション。たいへん濃い成分が大量に含まれています^^編集部発信のオリジナルコンテンツ