高画素は正義・EOS5Ds+高性能レンズの威力
デジタルカメラの出現以来、高画素vs低画素の論争は何度となく繰り返されてきました。
その議論に現時点でのファイナルアンサーを出したともいえる作例をご紹介します。
星の牧場2 久々の更新(さそり座頭部付近) |
いやー久々のブログ更新です。 昨年暮れにキヤノン5Dsというカメラを購入し、さらにそれを瀬尾さんにIR改造して頂き、それからずっと使えてなかったのですが、最近になって天文復活であれこれ撮るようになってきました。いくつかこちらで未公開の画像があるのですが、まずはこちらから。レンズはシグマ85mmF1.4 ARTで、赤道儀はGP2を使っています。 5060万画素の画像はプリントで見ても圧巻です! |
いわずと知れた、よっちゃんの星の牧場2から。
5060万画素のEOS5Ds。おそらく日本最初の5Ds改造機です。
レンズは非常に高性能なシグマの85mmF1.4Art。
どうですか、縮小画像でもこの精細感。
別対象(銀河中心部)ですが、大きな画像はこちらにあります。ぜひご覧になってください。
右:5060万画素(オリジナル)
中:2200万画素(EOS6D相当)
左:1220万画素(α7S相当)
上の画像は、よっちゃんさんより提供いただいたコンポジット前の素材画像と、それをPSでリサイズしたものの比較。
ディテールの描写の違いは歴然です。
当然といえば当然のことなのですが、これまではレンズの性能が高画素に追いついていなかっただけ。
5000万画素をフルに生かせる高性能レンズが多く出てきた現在、天体写真では高画素は正義と言い切ってよいのではないでしょうか。
ニコンのD810Aの高性能っぷりの秘密も、半分以上は「高画素(3600万画素)」にあったのではないかと編集部ではにらんでいます。
もちろん、暗視スコープ的に極端に暗いものを対象とする場合、大きなセンサーサイズもまた正義です。天体のリアルタイム動画を品質良く撮るには依然として低画素機の方が有利でしょう。
ただ、天文屋が狙う対象の多くは、センサーの限界性能と比べればもはや十分に明るい対象である、時代は変わった、というべきでしょうか。
でも、3000万画素、5000万画素といった高画素機はまだまだ高価。おいそれと手に入るものではありません。
2000万画素以下の「低画素機」しか持たない人はどうすればいいのか?
モザイクですよ、モザイク!
天体写真における銀塩時代から変わらぬ正義は、「暗い星は小さければ小さいほど良い」です。
4枚モザイクすれば最小星像直径は確実に1/2になります。
5000万画素の1枚撮りvs2500万画素の4枚モザイク。
最先端の「勝負」のフィールドはここです^^
いかがでしたか?
デジタル技術の進歩は天体写真のクオリティをどんどん押し上げてきました。そして時代は5000万画素へ。
今回は触れることができませんでしたが、高画素化・高精細化は、天体写真の表現手法にも変化をもたらすのではないかと編集部では予測しています。
より淡いもの、より微細な構造をあの手この手の強調によって「炙り出す」ことに主眼が置かれがちだったこれまでの流れが、よりセンサーが捉えたままの自然な姿のもつ美しさを追求する方向へ。輝度の高い天体からこの流れは始まるような気がします。 https://reflexions.jp/tenref/orig/2017/05/04/297/https://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2017/05/b0118b21f62cd6f74e4d57368b19d561-1024x682.jpghttps://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2017/05/b0118b21f62cd6f74e4d57368b19d561-150x150.jpg天体写真デジタルカメラの出現以来、高画素vs低画素の論争は何度となく繰り返されてきました。 その議論に現時点でのファイナルアンサーを出したともいえる作例をご紹介します。 星の牧場2 久々の更新(さそり座頭部付近) いやー久々のブログ更新です。 昨年暮れにキヤノン5Dsというカメラを購入し、さらにそれを瀬尾さんにIR改造して頂き、それからずっと使えてなかったのですが、最近になって天文復活であれこれ撮るようになってきました。いくつかこちらで未公開の画像があるのですが、まずはこちらから。レンズはシグマ85mmF1.4 ARTで、赤道儀はGP2を使っています。 5060万画素の画像はプリントで見ても圧巻です! いわずと知れた、よっちゃんの星の牧場2から。 5060万画素のEOS5Ds。おそらく日本最初の5Ds改造機です。 レンズは非常に高性能なシグマの85mmF1.4Art。 どうですか、縮小画像でもこの精細感。 別対象(銀河中心部)ですが、大きな画像はこちらにあります。ぜひご覧になってください。 右:5060万画素(オリジナル) 中:2200万画素(EOS6D相当) 左:1220万画素(α7S相当) 上の画像は、よっちゃんさんより提供いただいたコンポジット前の素材画像と、それをPSでリサイズしたものの比較。 ディテールの描写の違いは歴然です。 当然といえば当然のことなのですが、これまではレンズの性能が高画素に追いついていなかっただけ。 5000万画素をフルに生かせる高性能レンズが多く出てきた現在、天体写真では高画素は正義と言い切ってよいのではないでしょうか。 ニコンのD810Aの高性能っぷりの秘密も、半分以上は「高画素(3600万画素)」にあったのではないかと編集部ではにらんでいます。 もちろん、暗視スコープ的に極端に暗いものを対象とする場合、大きなセンサーサイズもまた正義です。天体のリアルタイム動画を品質良く撮るには依然として低画素機の方が有利でしょう。 ただ、天文屋が狙う対象の多くは、センサーの限界性能と比べればもはや十分に明るい対象である、時代は変わった、というべきでしょうか。 でも、3000万画素、5000万画素といった高画素機はまだまだ高価。おいそれと手に入るものではありません。 2000万画素以下の「低画素機」しか持たない人はどうすればいいのか? モザイクですよ、モザイク! 天体写真における銀塩時代から変わらぬ正義は、「暗い星は小さければ小さいほど良い」です。 4枚モザイクすれば最小星像直径は確実に1/2になります。 5000万画素の1枚撮りvs2500万画素の4枚モザイク。 最先端の「勝負」のフィールドはここです^^ いかがでしたか? デジタル技術の進歩は天体写真のクオリティをどんどん押し上げてきました。そして時代は5000万画素へ。 今回は触れることができませんでしたが、高画素化・高精細化は、天体写真の表現手法にも変化をもたらすのではないかと編集部では予測しています。 より淡いもの、より微細な構造をあの手この手の強調によって「炙り出す」ことに主眼が置かれがちだったこれまでの流れが、よりセンサーが捉えたままの自然な姿のもつ美しさを追求する方向へ。輝度の高い天体からこの流れは始まるような気がします。編集部山口 千宗kojiro7inukai@gmail.comAdministrator天文リフレクションズ編集長です。天リフOriginal
相反則不規を無視すれば同じ露出時間なら「焦点距離が長いほど暗い星が写る」、同様な理由から粒子(今なら撮像素子の画素)が「細かいほど暗い星が写る」というのは、昔々、銀塩写真が登場した天体写真の黎明期から理屈があって、計算式も確かアメリカで発表されています。「天体写真では高画素は正義」は当然の結論と思います。
しかし、その計算式はなぜかインチとセンチが混在したのを日本の天文学者が全部センチで計算して発表して、日本ではそれが孫引きされたのでわけがわからなくなっています。私がシュミットカメラの記事を天ガに書いた(40年近く前)に訂正したのですが、ほとんど興味を持ってもらえなかったようで残念に思いました。
一方で銀塩粒子は大きいほど、撮像素子なら画素が大きいほど高感度または高諧調(縦軸)にできるので(横軸のギャザーで高諧調に見せるのとは理屈が異なる)、結論として望遠鏡が大きいほど良い写真が撮れ、広角にしたい場合には、そのまた結論としてモザイクにするしか手はないと思っています。
高槻様 一人編集長を勝手に名乗っている私ですが、元編集長様よりコメントを頂戴すると身が引き締まります。
写野全体が受け取る光子数は画素ピッチに無関係なこと(画素の実受光面積の問題を除くと)、回折限界オーダーの星像直径は実践的な焦点域では画素ピッチよりもはるかに小さいことから、直感的には仰ることは理解できる気がします。
ところが実際は、星像直径が収差の関係ではるかに画素より大きかったために、高画素のメリットはほとんど生きず、逆に「画素が大きいほど高感度」という別の真実にスポットを当ててしまっていたのでしょう。
今高画素化のネックは後処理で、5000万画素でもファイルサイズやコンポジット処理の負担がまだまだ大きく、よほどのマニアでないと面度見きれないかもしれませんね(実際には「よほどのマニア」が大半だったりするわけですが^^)
話はそれますが、その意味では、D820Aが4600万画素で出るよりも、5万〜15万の「入門ないしは中級機」のAモデルが出る方が、天文人口の拡大(=売上拡大)に貢献できるのかもしれません。
(本作品の作者であるよっちゃんさんとのYoutubeトークで出た話題です)
「編集長」を名乗る以上、天文ファンの全ての層の立場に立ってみて、多様な考え方を吸収し汲み上げていかねばならないなとの思いを新たにした次第です。
対物レンズのレンズの分解能(角度)は口径に比例するので、撮像素子上の実寸の分解能は口径比Fに比例しますから、可視光d線を基準にすると口径比Fの1.22倍(μm)となります。
F2.8なら2.8×1.22=3.4μmで、F4なら4.9μmでF8なら9.8μmでF12なら14.6μmです。これは回折の理論値なので実際はもっとずっと悪いです。もし理論値通りなら、カメラレンズに高倍率アイピースを付けて惑星がシャープに見えることになってしまいます。
F2.8などと明るいと理論値は良くても実際は収差が多くボケて分解能は下がります。絞ってFを暗くすると収差が取れてシャープになるけれども回折の理論値が下がってボケてきます。いわゆる絞りボケですね。
残存収差と絞りボケのバランスが良いのは、非常に優秀なレンズでF4くらいではないでしょうか? すると無収差でピントその他が完璧な状態でも「星像は5μmより」は小さくなりません。
このことを基準に考察するのが良いと思います。したがって、回折限界理論値オーダーの星像直径は実践的な画素ピッチよりもずっと大きいことになります。まぁ、現実的にはどんなにシャープでも撮像素子上の星像は10μm近いでしょう。それもあって、高詳細のカメラは撮像素子直前のボカシフィルターを省略しています。本当にシャープだったら、ボカシフィルター無しでは、RGB単色の星像がワッと写るはずです。
なるほど、最小星像径の「理論値」は焦点距離によらずF値のみで決まるのですね。簡単な算数なのにその認識が抜けておりお恥ずかしい限りです。
非常に優秀な光学系の最小星像径を5μmと仮定すると、3600万画素のD810Aの画素ピッチが4.88μmですから、だいたい画素1個分ということになりますね。
という前提を踏まえて、さらに小さい画素ピッチがどの程度画質に寄与しうるのかが興味深いです。たとえローパスなしのモノクロセンサーであっても、星像が1画素分だとすると「星らしい」像にはならないでしょうし、1μmとかあまりに細かい画素は無駄かも知れません。
単なる憶測ですが、最小星像が4*4ピクセルとか8*8ピクセルくらいまでなら、後処理での加工まで考えると画質向上に寄与できそうな気がします。
5000万画素、画素ピッチ4.14μmのカメラによるこの作品を見ると、このくらいが現時点で最もバランスのいい形なのかもしれません。多数枚コンポジットならベイヤー配列による色ずれの問題もある程度平均化できるでしょうし。
ある要素とある要素の合成で解像力が決まる場合、光学設計の球面収差と色収差の関係も同じですが、双方が同じくらいだと「ちょうど良い」と思いがちなのは物理の法則だと間違いです。
たとえば、星像が5μmで画素も5μmの場合は、5の2乗+5の2乗の平方根になるので両方の悪いところどりになって像は7μm程度ですよね? 片方が1/3の大きさ–例えば星像が画素の3倍大きいと、ほとんど星像の大きさが支配します。
ということと、1星像に1画素では像ではなく信号にすぎないということもあるので、1星像に3×3=9画素くらいは最低でも必要と思います。何の論文か忘れましたが、像を形成するには14.7画素以上必要と書いてあるのを見たことがあります。変な数値ですけれど…。
今現在の高詳細カメラと特別にシャープなレンズ(実際は5~10ミクロンくらいの星像として)の組み合わせは、なんとなくベストマッチかもう少し詳細画素でも良いような気がしています。しかし、これは単純な星像の場合なので、諧調が必要な星雲などは縦軸の深さで諧調を表すなら大きな画素が必要だし、ギャザー的にドットの大きさで諧調を表すなら詳細画素が必要と思います。
インクジェットプリンターはこれらのことを全てやっています。インクの量とか、複数回噴射とか、濃さの異なるインクとか、ドットの大きさとか…。天体写真にも応用のヒントがあると思います。
高槻様、千本ノックありがとうございます^^
適当に5000万画素、画素ピッチ4.14μmぐらいが最適か?と書きましたが、仰るとおりもう少し画素があったほうがよいかもしれません。
ただ1億画素になってくるとソフト処理的にかなり負担が増えてくるので、5000万画素は現時点でのおとしどころラインのような気もします。
複数フレームのパノラマの場合、2億画素くらいになることは普通で、今の最新PCなら極端なストレスはないのですが、処理前のrawで2億画素もあったらさすがに寒気がしますし。
プリンタ、モニタの出力デバイスも重要ですね。1億画素をフルに生かすには現在のモニタ、プリンタでは若干力不足。
とはいえ、到底手の届かない値段とはいえ1億画素のカメラが入手できるようになった今、あと何年?かすればいろんな要素が1億画素級に耐えられるようになってきて、天体写真のレベルも今より1ランクアップすることでしょう。
そんな時代を、ぜひ高槻様と見届けたいと思います。