笠井トレーディングから「純カセグレン式」の鏡筒、「GS-150CC」「GS-200CC」の発売がアナウンスされています。製造は同社が販売する「GS-200RC」などと同じGS社です。型番の「CC」は「Classical Cassegrain(クラシカル・カセグレン)」の略と思われます(*)。

(*)以下本稿では「GS-CCシリーズ」と呼称します。

GS-200CC http://www.kasai-trading.jp/gs200cc.html
笠井トレーディング・GS-150CC
http://www.kasai-trading.jp/gs150cc.html
笠井トレーディング・GS-200CC
http://www.kasai-trading.jp/gs200cc.html

純カセグレン式の特徴

他の反射式との比較

「純カセグレン式」とは、主鏡に放物面・副鏡に双曲面を使用した光学系です。ニュートン・ドールカーカム・リッチークレチアンなどの他の反射面だけで構成される天体望遠鏡同様に、軸上では理論上無収差です。



訂正2019/1/24 17:35)読者の方よりご指摘をいただきました。軸上無収差なのは純カセグレンのみで、ドールカーカム・リッチークレチアンともに高次の球面収差が残存するようです。

参考)タカハシWebサイト・BRC-250 開発コンセプト
http://www.takahashijapan.com/ct-products/products/brc-250concept.html

 

「純カセグレン式」についての詳細は商品ページに書かれている通りですが、特徴を一言でいうと「ドールカーカムよりも周辺像が良好」であることです(*)。

(*)ただし、理論通りに製造・調整できれば、という前提がつきます。

純カセグレン式の復権?

上の表で比較した他の4つの形式には、それぞれ長所・短所があります。



  • 補正板の存在ゆえにわずかに軸上でも収差が残るシュミットカセグレン
  • 主鏡・副鏡ともに高次の非球面であるために高価になるリッチークレチアン
  • 副鏡が球面であるため副鏡の製造と調整が楽な反面、周辺コマ収差の大きなドールカーカム
  • 光学性能に優れ、主鏡は量産実績のある放物面だが、副鏡が難しい純カセグレン

純カセグレン式は、これらと比較して光学性能に優れた点があるものの、「凸双曲面の副鏡」の製造と光学系の調整が難しかったため、アマチュア向けの小口径の製品はほとんどありませんでした。逆に、この課題を解決すれば「純カセグレン」のメリットを生かした製品が比較的安価に提供できることになります。今回の「GS-CC」シリーズの製品価格は口径15cmのGS-150CCが税抜5.8万、口径20cmのGS-200CCが税抜11.8万。同クラスのシュミットカセグレンより若干安い設定になっています(*)。

(*)GS-CCシリーズにはアイピース・天頂プリズムは付属しません。

主なスペック

前述のように、製造はリッチー・クレチアンGS-RCシリーズと同じGS社です。GS-200RCとの比較表を作成してみました。

この比較からも、GS-CCの特徴が浮かび上がってきます。F12という長焦点。33〜38%と低く抑えられた中央遮蔽(*)。若干重いもののコンパクトな筐体。温度順応に有利な解放鏡筒。そして手頃な価格。設計どおりに性能が出ていれば、惑星などの眼視・写真用途として、これまでにないポジションを獲得する可能性を感じます。

(*)同クラスのシュミカセと同程度です。

ディープスカイの撮影用途としては、補正レンズ次第ではありますが(*)、GS-200RCの方が向いているというべきでしょう。

(*)たまたま見つけた公共天文台向け製品ですが、F10純カセグレン用に0.5倍レデューサ・コレクタがあるようです。http://gototelesco.co.jp/product_for_obs_pdf/rc_for_cass.pdf こういうのが出てくればF6ですか・・・^^

まとめ

「純カセグレン」。非球面の製造技術の進歩と、高い工作精度の量産技術で復権なるか。ロシア製のマクストフの販売は終了してしまいましたが、笠井トレーディングの新たな挑戦に注目したいと思います。 https://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2019/01/gs200cc-12111.jpghttps://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2019/01/gs200cc-12111-150x150.jpg編集部望遠鏡笠井トレーディングから「純カセグレン式」の鏡筒、「GS-150CC」「GS-200CC」の発売がアナウンスされています。製造は同社が販売する「GS-200RC」などと同じGS社です。型番の「CC」は「Classical Cassegrain(クラシカル・カセグレン)」の略と思われます(*)。 (*)以下本稿では「GS-CCシリーズ」と呼称します。 笠井トレーディング・GS-150CC http://www.kasai-trading.jp/gs150cc.html 笠井トレーディング・GS-200CC http://www.kasai-trading.jp/gs200cc.html 純カセグレン式の特徴 他の反射式との比較 「純カセグレン式」とは、主鏡に放物面・副鏡に双曲面を使用した光学系です。ニュートン・ドールカーカム・リッチークレチアンなどの他の反射面だけで構成される天体望遠鏡同様に、軸上では理論上無収差です。 訂正2019/1/24 17:35)読者の方よりご指摘をいただきました。軸上無収差なのは純カセグレンのみで、ドールカーカム・リッチークレチアンともに高次の球面収差が残存するようです。 参考)タカハシWebサイト・BRC-250 開発コンセプト http://www.takahashijapan.com/ct-products/products/brc-250concept.html   「純カセグレン式」についての詳細は商品ページに書かれている通りですが、特徴を一言でいうと「ドールカーカムよりも周辺像が良好」であることです(*)。 (*)ただし、理論通りに製造・調整できれば、という前提がつきます。 純カセグレン式の復権? 上の表で比較した他の4つの形式には、それぞれ長所・短所があります。 補正板の存在ゆえにわずかに軸上でも収差が残るシュミットカセグレン 主鏡・副鏡ともに高次の非球面であるために高価になるリッチークレチアン 副鏡が球面であるため副鏡の製造と調整が楽な反面、周辺コマ収差の大きなドールカーカム 光学性能に優れ、主鏡は量産実績のある放物面だが、副鏡が難しい純カセグレン 純カセグレン式は、これらと比較して光学性能に優れた点があるものの、「凸双曲面の副鏡」の製造と光学系の調整が難しかったため、アマチュア向けの小口径の製品はほとんどありませんでした。逆に、この課題を解決すれば「純カセグレン」のメリットを生かした製品が比較的安価に提供できることになります。今回の「GS-CC」シリーズの製品価格は口径15cmのGS-150CCが税抜5.8万、口径20cmのGS-200CCが税抜11.8万。同クラスのシュミットカセグレンより若干安い設定になっています(*)。 (*)GS-CCシリーズにはアイピース・天頂プリズムは付属しません。 主なスペック 前述のように、製造はリッチー・クレチアンGS-RCシリーズと同じGS社です。GS-200RCとの比較表を作成してみました。 この比較からも、GS-CCの特徴が浮かび上がってきます。F12という長焦点。33〜38%と低く抑えられた中央遮蔽(*)。若干重いもののコンパクトな筐体。温度順応に有利な解放鏡筒。そして手頃な価格。設計どおりに性能が出ていれば、惑星などの眼視・写真用途として、これまでにないポジションを獲得する可能性を感じます。 (*)同クラスのシュミカセと同程度です。 ディープスカイの撮影用途としては、補正レンズ次第ではありますが(*)、GS-200RCの方が向いているというべきでしょう。 (*)たまたま見つけた公共天文台向け製品ですが、F10純カセグレン用に0.5倍レデューサ・コレクタがあるようです。http://gototelesco.co.jp/product_for_obs_pdf/rc_for_cass.pdf こういうのが出てくればF6ですか・・・^^ まとめ 「純カセグレン」。非球面の製造技術の進歩と、高い工作精度の量産技術で復権なるか。ロシア製のマクストフの販売は終了してしまいましたが、笠井トレーディングの新たな挑戦に注目したいと思います。編集部発信のオリジナルコンテンツ