ブログ「yuhasoの天体写真日記」に、月面から実際に「地球の出」を見ることは可能なのかという考察がアップされています。

月は地球にいつも同じ面を見せています。このため「地球の出」という現象は「月面上からは」見られないのではないか、という指摘です。

追記2019/1/16)



複数の読者の方より、既存のソフトでシミュレーション可能であるとの情報を頂戴しました。

celestia
https://celestia.space

(中谷様よりの情報・コメントよりの引用)

まずウィンドウを少し大きめにして、とりあえず
天体名:月
緯度:0゜  経度:88゜
距離:1737.6km (← 平均半径が1737.5kmだから)
あたりに移動します。画面が真っ暗だったりするのは月面に真正面に向いてるからです。
ウィンドウの中をマウスで右(左)にドラッグしていくと左(右)から星空が見えてきます。
適当な所でカーソルキー ← → で月平線を水平にします。
あとはLキーで時間の進み方を100000倍ぐらいにするとバックの星が流れ、地球も自転しながら出たり入ったりします。時々日食も起こります。
緯度、経度や距離を変えて楽しんでください。

https://drive.google.com/file/d/1xHBMSW2S_iaj-nN8Ecy2Rl-UE-4XSrVF/view?usp=sharing

(makochan様よりの情報・ステラナビゲータによるシミュレーション動画)

https://drive.google.com/file/d/1xHBMSW2S_iaj-nN8Ecy2Rl-UE-4XSrVF/view?usp=sharing

月から見た地球の出ですが、ステラナビゲーターで観測地を月にすれば簡単に見る事ができます。
月の北極から見た、今年の1月6日から21日までの地球の動きを1時間毎の動画にしてみました。
地球がクルクル回ってまるでコマのようです。16日は太陽と重なり、皆既月食でしたね。

中谷様、makochan様、ありがとうございました!

追記2019/1/16終わり)

「地球の出」とは

Wikipedia 地球の出
https://ja.wikipedia.org/wiki/地球の出
1968年12月24日に撮影された「地球の出」 https://ja.wikipedia.org/wiki/地球の出

「地球の出」とは、元記事にも言及がありますが、1968年に月の周回飛行を行ったアポロ8号の船内から、宇宙飛行士ウィリアム・アンダースが撮影した写真が元祖です。

この写真は「史上最も影響力のあった環境写真」としても知られており、「宇宙の中の孤独な惑星、地球」というイメージから、さまざまな環境運動のシンボルとなったそうです。

この「地球の出」の画像を見た人は、これまで自分が経験してきた「月の出」「日の出」の記憶とオーバーラップさせることにより、「自分が月の上に立てば、地球がこのように大地から昇ってくるのだ」という想像力が自然と働きます。そして、「地球」という存在をさらに上位の視点からイメージすることで、「自分の発想を拘束していた何か」に気がつきます。勝手な造語ですが「宇宙感覚」とでもいいましょうか。

この感覚の転換のインパクトが「史上最も影響力のあった」ゆえんでしょう。

「月面では」地球の出は見られない

元記事では、この「地球の出」という画像とそのキャプションから想起される「現象」は、実際には月を周回している宇宙船でしか見られない現象であると考察されています。

理由は簡単。月は潮汐力によって束縛されていて常に地球に同じ側を向けています。月の裏側が地球から見えないのはそのせい。月から見た地球はいつも同じ角度。地球が地平線をまたいで昇ったり沈んだりはしない、という結論です。

そう、「地球の出」の画像を見た人は、暗黙のうちに「自分が月面に立った」かのように勘違いしちゃうんですよね。いやいや。凄いスピードで月を周回する宇宙船に乗ってるから、地球が月の縁から昇ってくるんですよ(*)。

(*)Wikipediaには、「地球の出」の画像が「月周回軌道の船内で撮影された」ことが明記されていて、「月面からの地球の出」についての言及はありません。

月面から「地球の出」をみることはできますか?

ここで気をつけたいのは、月面にいるときには、「地球の出」をみることができない、ということです。上でも述べたように、月面では地球は常にほぼ同じ位置にみえます。従って、上空を飛行する宇宙船から撮影する場合でのみ、「地球の出」がみえるということになります。

同様の指摘は別のサイトにもありました。しかし、定番の「知恵袋」からは類似の質問は見つけられませんでした。意外と誰も気にしないんでしょうか?

実は月面でも見られる「地球の出」

ここから先の話は、ネット上では言及が見られなかった、筆者の推測です。たぶん間違っていないとは思うのですが・・・



結論から言って、場所が限定されるものの、月面からも「地球の出」は見られます。キーワードは「秤動(ひょうどう)」です。

「秤動」とは何か。このツイートのGIFアニメーションを再生すれば、すぐ直感的に理解できるでしょう。月は地球に常に同じ面を向けているのですが、実は微妙にぶれているのです(*)。

(*)このブレの要因は4つあって、そのうちの3つが「地球の出」に影響してきますが、主たる要因は「緯度秤動」と「経度秤動」の2つです。

Wikipedia 秤動
https://ja.wikipedia.org/wiki/秤動

このため、月の「縁」の地形は、条件によって地球から見えたり見えなかったりします。脚に、この月面上のこの「縁」の上に立てば、地球は現れたり消えたりするはずです。

「月面では地球の出は見られない」は80%ほどは正しい。でも、地球から見え隠れすることのある20%弱の場所からは(*)「地球の出」は見ることができそうです!

(*)秤動を考慮すると、地球から見ることができる月面は、総面積の59%だそうです。

月面で「地球の出」はどんなふうに見えるか

誠文堂新光社刊「天文年鑑1998」P104より

上の画像はある年の秤動の日変化を図示したものですが、斜めに行き来したり、楕円に回転したり、いろいろな動きをしているようです。

月の秤動の大きさは、ざっくり最大7°ほど。月から見た地球の見かけの大きさは2°ほどなので、これだけ動けば十分「地球の出入り」を楽しめそうですね。

ただし、秤動の周期は月の満ち欠けと同じくらいで1ヶ月ほどもあります。顔を出した地球が全部昇るまで1日〜2日くらいかかるでしょう。

月面から見た地球の出入りの想像図^^;;

地球時間で約2週間ほどかけて、地球がゆっくり昇ってゆっくり沈んでゆきます。実際にはこの間に地球は満ち欠けしますし、地球の自転によって見える地形も変われば、雲の様子も変わってきます。この光景、眺めて見たいものですね!!!

秤動の状況によっては、こんな風な出没も見られるかもしれません。

まとめ

あっ!「地球の出」だ(感動)![1968年]

世界を変えた100枚の写真」選出

地球の出ってなんて感動的!

「地球の出」が見られるのは宇宙船の中だけだよ?!

「月の縁」なら「地球の出(入)」が見られるはず![イマココ]

新しい夢(妄想?)ができました。月面から地球の出没の一部始終をタイムラプス映像にすること。前景を工夫すれば(笑)いろいろすごいバリエーションが撮れるような気がします。

いつかどこかの国の探査機で、撮ってみてほしいものですね!

 

 

 

  https://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2019/01/ecee033cfe946d288c01f4186d9a173e-1024x701.jpghttps://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2019/01/ecee033cfe946d288c01f4186d9a173e-150x150.jpg編集部サイエンスブログ「yuhasoの天体写真日記」に、月面から実際に「地球の出」を見ることは可能なのかという考察がアップされています。 https://yuhaso.hatenablog.com/entry/2019/01/10/173101 月は地球にいつも同じ面を見せています。このため「地球の出」という現象は「月面上からは」見られないのではないか、という指摘です。 追記2019/1/16) 複数の読者の方より、既存のソフトでシミュレーション可能であるとの情報を頂戴しました。 celestia https://celestia.space (中谷様よりの情報・コメントよりの引用) まずウィンドウを少し大きめにして、とりあえず 天体名:月 緯度:0゜  経度:88゜ 距離:1737.6km (← 平均半径が1737.5kmだから) あたりに移動します。画面が真っ暗だったりするのは月面に真正面に向いてるからです。 ウィンドウの中をマウスで右(左)にドラッグしていくと左(右)から星空が見えてきます。 適当な所でカーソルキー ← → で月平線を水平にします。 あとはLキーで時間の進み方を100000倍ぐらいにするとバックの星が流れ、地球も自転しながら出たり入ったりします。時々日食も起こります。 緯度、経度や距離を変えて楽しんでください。 https://drive.google.com/file/d/1xHBMSW2S_iaj-nN8Ecy2Rl-UE-4XSrVF/view?usp=sharing (makochan様よりの情報・ステラナビゲータによるシミュレーション動画) 月から見た地球の出ですが、ステラナビゲーターで観測地を月にすれば簡単に見る事ができます。 月の北極から見た、今年の1月6日から21日までの地球の動きを1時間毎の動画にしてみました。 地球がクルクル回ってまるでコマのようです。16日は太陽と重なり、皆既月食でしたね。 中谷様、makochan様、ありがとうございました! 追記2019/1/16終わり) 「地球の出」とは Wikipedia 地球の出 https://ja.wikipedia.org/wiki/地球の出 「地球の出」とは、元記事にも言及がありますが、1968年に月の周回飛行を行ったアポロ8号の船内から、宇宙飛行士ウィリアム・アンダースが撮影した写真が元祖です。 この写真は「史上最も影響力のあった環境写真」としても知られており、「宇宙の中の孤独な惑星、地球」というイメージから、さまざまな環境運動のシンボルとなったそうです。 この「地球の出」の画像を見た人は、これまで自分が経験してきた「月の出」「日の出」の記憶とオーバーラップさせることにより、「自分が月の上に立てば、地球がこのように大地から昇ってくるのだ」という想像力が自然と働きます。そして、「地球」という存在をさらに上位の視点からイメージすることで、「自分の発想を拘束していた何か」に気がつきます。勝手な造語ですが「宇宙感覚」とでもいいましょうか。 この感覚の転換のインパクトが「史上最も影響力のあった」ゆえんでしょう。 「月面では」地球の出は見られない 元記事では、この「地球の出」という画像とそのキャプションから想起される「現象」は、実際には月を周回している宇宙船でしか見られない現象であると考察されています。 理由は簡単。月は潮汐力によって束縛されていて常に地球に同じ側を向けています。月の裏側が地球から見えないのはそのせい。月から見た地球はいつも同じ角度。地球が地平線をまたいで昇ったり沈んだりはしない、という結論です。 そう、「地球の出」の画像を見た人は、暗黙のうちに「自分が月面に立った」かのように勘違いしちゃうんですよね。いやいや。凄いスピードで月を周回する宇宙船に乗ってるから、地球が月の縁から昇ってくるんですよ(*)。 (*)Wikipediaには、「地球の出」の画像が「月周回軌道の船内で撮影された」ことが明記されていて、「月面からの地球の出」についての言及はありません。 https://moonstation.jp/faq-items/f619 ここで気をつけたいのは、月面にいるときには、「地球の出」をみることができない、ということです。上でも述べたように、月面では地球は常にほぼ同じ位置にみえます。従って、上空を飛行する宇宙船から撮影する場合でのみ、「地球の出」がみえるということになります。 同様の指摘は別のサイトにもありました。しかし、定番の「知恵袋」からは類似の質問は見つけられませんでした。意外と誰も気にしないんでしょうか? 実は月面でも見られる「地球の出」 ここから先の話は、ネット上では言及が見られなかった、筆者の推測です。たぶん間違っていないとは思うのですが・・・ 結論から言って、場所が限定されるものの、月面からも「地球の出」は見られます。キーワードは「秤動(ひょうどう)」です。 https://twitter.com/t2pix/status/1076642959355895809 「秤動」とは何か。このツイートのGIFアニメーションを再生すれば、すぐ直感的に理解できるでしょう。月は地球に常に同じ面を向けているのですが、実は微妙にぶれているのです(*)。 (*)このブレの要因は4つあって、そのうちの3つが「地球の出」に影響してきますが、主たる要因は「緯度秤動」と「経度秤動」の2つです。 Wikipedia 秤動 https://ja.wikipedia.org/wiki/秤動 このため、月の「縁」の地形は、条件によって地球から見えたり見えなかったりします。脚に、この月面上のこの「縁」の上に立てば、地球は現れたり消えたりするはずです。 「月面では地球の出は見られない」は80%ほどは正しい。でも、地球から見え隠れすることのある20%弱の場所からは(*)「地球の出」は見ることができそうです! (*)秤動を考慮すると、地球から見ることができる月面は、総面積の59%だそうです。 月面で「地球の出」はどんなふうに見えるか 上の画像はある年の秤動の日変化を図示したものですが、斜めに行き来したり、楕円に回転したり、いろいろな動きをしているようです。 月の秤動の大きさは、ざっくり最大7°ほど。月から見た地球の見かけの大きさは2°ほどなので、これだけ動けば十分「地球の出入り」を楽しめそうですね。 ただし、秤動の周期は月の満ち欠けと同じくらいで1ヶ月ほどもあります。顔を出した地球が全部昇るまで1日〜2日くらいかかるでしょう。 月面から見た地球の出入りの想像図^^;; 地球時間で約2週間ほどかけて、地球がゆっくり昇ってゆっくり沈んでゆきます。実際にはこの間に地球は満ち欠けしますし、地球の自転によって見える地形も変われば、雲の様子も変わってきます。この光景、眺めて見たいものですね!!! 秤動の状況によっては、こんな風な出没も見られるかもしれません。 まとめ あっ!「地球の出」だ(感動)! ↓ 世界を変えた100枚の写真」選出 ↓ 地球の出ってなんて感動的! ↓ 「地球の出」が見られるのは宇宙船の中だけだよ?! ↓ 「月の縁」なら「地球の出(入)」が見られるはず! 新しい夢(妄想?)ができました。月面から地球の出没の一部始終をタイムラプス映像にすること。前景を工夫すれば(笑)いろいろすごいバリエーションが撮れるような気がします。 いつかどこかの国の探査機で、撮ってみてほしいものですね!        編集部発信のオリジナルコンテンツ