SS-oneの中の人である「ほんまか」さんのブログ「デジタル星野写真撮影記」に、「SS-one星雲・星団撮影セット」の詳細がアップされています。

デジタル星野写真撮影記・「SS-one星雲・星団撮影セット」の開発・販売
http://honmaka.cocolog-nifty.com/blog/2018/10/ss-one-1108.html
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昨日、ちょっとだけ出した望遠鏡セットですが、ここで詳しく説明したいと思います。

その前に、なぜこの望遠鏡セットを開発・販売するに至ったか、それは私の極めて個人的な、ビジネス無視の2つのこだわりがあったからです。

「ほんまか」さんは「極めて個人的」で「ビジネス無視」のこだわりと書かれていますが、書かれている内容には大いに同意できることが含まれています。それを順に見ていきましょう。

小型でスリムな望遠鏡セット

小型でスリムな赤道儀

最近は、小さな赤道儀が減ったなぁと思います。ポタ赤はあるのですが。最近はエントリーモデルでもけっこう大きいというか、ごつごつした感じのが多いです。

現在も製造販売中の代表的な各社の製品を3つにカテゴリ分けしてみました。

1)1軸駆動、自動導入なしのポータブル赤道儀

  • ポラリエ、ナノトラッカー
  • スカイメモ(S,T,R/RS)
  • SWAT、TOAST

2)小型赤道儀

  • Sky-Watcher EQ3,EQ5,EQ35M
  • セレストロン AVX
  • ビクセンAP赤道儀

3)中型赤道儀

  • ビクセンSXシリーズ(SX,SXD,SXPなど)
  • EM-200
  • Sky-Wacther AZ-EQ5GT、EQ6R
  • ケンコー スカイエクスプローラSEII,EQ6PRO

 

https://www.vixen.co.jp/product/39973_4/ ビクセンAP赤道儀。コンパクトで起伏の少ないスマートなデザイン。ただし自動導入に公式に対応していないのが最大の弱点。

「ほんまか」さんの指摘は、具体的には2)「小型赤道儀」のカテゴリが「弱い」ということでしょう。AVXもEQ3/5/35Mシリーズも、自動導入仕様にするとかなり「でこぼこ」して嵩張ります。また三脚が頑丈すぎて重い、バランスウェイトが異様にでかい。また、AP赤道儀はコンパクトでとてもスマートなのですが、標準では自動導入非対応です。

https://www.syumitto.jp/SHOP/SW1240020095.html Sky-Watcher EQ3 GOTO赤道儀。実売9万円を切る価格で自動導入を実現していますが、赤道儀本体以外(三脚、ウェイト、モーターハウジング、コントローラ)が大きく、あまりコンパクト感はありません。

そこで「SS-one星雲・星団撮影セット」では、Sky-Wacher EQ3をベースに「小型でスリム」を目指して、赤道儀に以下の対応が行われています。

  • モーターをSS-oneオリジナルの小型のものに換装
  • 電子極望を内蔵し正確で簡単な極軸合わせを実現
  • バランスウェイトを小型のものに換装
  • 「プラスオプション」の三脚アダプターでより軽量なカメラ三脚を使用可能に

極めて合理的。ベースのEQ3以上には「小型でスリム」にはならないものの、やれることは全部やったと評価していいのではないでしょうか。

小型でスリムな鏡筒

鏡筒は、SkyWatcherのEvoStar 72EDです。日本では未発売です。鏡筒径がφ80より細く、すごくスリムです。なにかPentax75SDHFを思わせます。完全に私のツボにハマりました。性能の方はこれから検証です。

この鏡筒は日本では未発売。2枚玉アポ口径72mm、焦点距離420mmF5.8。重量2キロ弱。小型の赤道儀に搭載するにはよいバランスかもしれません。海外の通販サイトAPMでは350ユーロでした。

APM EvoStar 72ED
https://www.apm-telescopes.de/en/telescopes/refracting-telescopes-ota/apochromates/skywatcher-evostar-72ed-ds-pro-ota
https://www.apm-telescopes.de/en/telescopes/refracting-telescopes-ota/apochromates/skywatcher-evostar-72ed-ds-pro-ota

EQ赤道儀にせよAP赤道儀にせよ、焦点距離500〜600mmを搭載することは不可能ではありませんが、初めてディープスカイを撮影する初心者が無理なく使うにはやや長すぎ。その点この鏡筒はよい焦点距離レンジといえるでしょう。写真性能は補正レンズ次第になると思われますが、性能の検証も予定されているようです。

天体撮影に必要なものは全部付ける、そして「マイナスオプション」

天体望遠鏡セット、特に撮影セットになると、買ってすぐ使えるものは皆無です。いろいろ買い足したり、調整したり、交換したり。もちろん、趣味の世界なので、それが楽しいし、私もむしろ、そちら側の人間。

天文機材は架台・鏡筒などを別々に購入し組み合わせるのが「普通」。マニアにとって、セット品は価格メリットがない限りは逆に迷惑ともいえるでしょう。しかし、それに対して疑問が提示されます。

私は、メーカーとか、販売店とかは、目的を達成するための、完全なセットというのを、ユーザがそれを全て選択するかどうかは別にして、提示(用意)できないとおかしいと思うんです。だって、車を買って、納品日に車を取りにいけば、そのまま乗って帰ってこられるじゃないですか。バッテリーは別で買ってください、とかワイパーも別ね、すべて揃ったら始めて乗れますよ。ていうことはないでしょ。

(文字修飾:編集部)

編集子が5年前に浦島太郎状態で天文の世界に戻ってきたときのことを今思い出すと、これは実に的を射た意見だと思います。「天体写真を始めたいのだけど、いったいどんな機材の組み合わせがありうるのか」。この問に直接答えてくれる情報源はありませんでした。メーカーのカタログをつぶさに読み込んで「赤道儀とはこういうもの」「鏡筒とはこういうもの」というイメージを作り、それからその組み合わせをシミュレーションする。まあ楽しい作業ではありましたが、何パターンかの「基本セット」が提示されていれば、そのプロセスはもっとスムーズに進んだでしょう。

まぁ、そんな思いもあって、完全な望遠鏡セットというのを組んでみたかったところがあります。

(中略)

それ以外はカメラも含めて、買えば、もうその日の夜に使える望遠鏡セットを考えたわけです。
もっとも、既に持ってる部品もあると思うので、そこはマイナスオプションという方式で行きたいと思います。

つまり、完全なフルセットを基本として、必要ないものはどんどん外していくという方式です。

(文字修飾:編集部)

編集子の経験に照らしてみると、露よけヒーターが付属しているのはポイント高。独学で始めた人にとって、スマートな露対策に辿り着くまでの壁は実に高いです。なんでこんな必須なものが「欲しけりゃ探せ」的位置づけだったのか(*)。

(*)ビクセンが自社ブランドの露よけヒーターを出すまでは、露よけに対して解決方法を提案している望遠鏡メーカーは皆無でした。編集子自身も今は実に「スマートでない」方法でやっているので、なんとかしたいと思っています。

逆になんでもかんでも付いてくると、経験者には重複するものも出てきますが、そこは「マイナスオプション(要らないものを外す)」で解決。実務的に困難が伴うことも予想されますが、これがきちんと実現できれば、販売店の強い差別化要素になるかもしれません。

小型赤道儀に需要はあるのか

「最近は、小さな赤道儀が減ったなぁと思います。」

なぜ「減った」のでしょうか。

高橋製作所HP・PM1-xy発売のご案内
http://www.takahashijapan.com/ct-news/news_120705_PM-1XY.html
http://www.takahashijapan.com/ct-news/news_120705_PM-1XY.html

こちらは2012年に発売された高橋の小型赤道儀PM1-xy。従来品の「PM-1」を2軸駆動化したものですが、現在ではディスコンになっていて、従来品の「PM-1」のみが販売されています。

推測するに「売れなかった」のでしょう。2軸駆動であるにもかかわらず自動導入対応でなかったのが一つの原因と推測されますが、そもそも「天文マニアには小型赤道儀のニーズが少ない」のかもしれません。

「欲しくなる製品がない」のか「ニーズがそもそもない」のか。どちらなのでしょうか?どちらでもないのでしょうか?

個人的意見ですが「欲しくなる製品がなかった」のではないでしょうか。小型でコンパクトで自動導入対応のスマートでカッコイイ赤道儀、望遠鏡セット。重い機材をエッチラ運ぶのではなく、自宅から車まで何度も往復せずに運べるような、撮影地でもすぐに組み立てて撤収できるような、高性能なライト機材。そんな機材があれば「欲しい」と思います。

まとめ・「入門者向けのCoolな組み合わせセット」の意義

天リフの仮説は「小型軽量でCoolな望遠鏡(セット)には潜在ニーズがあり、それに対するソリューションは現状十分ではない」というものです。その意味で、今回の「SS-one星雲・星団撮影セット」の動向には大いに注目したいと思います。

 

 

 

SS-one星雲・星団撮影セット/入門者向けの小型でCoolなシステムhttp://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2018/10/all-1024x542.jpghttp://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2018/10/all-150x150.jpg編集部天文機材特選ピックアップSS-oneの中の人である「ほんまか」さんのブログ「デジタル星野写真撮影記」に、「SS-one星雲・星団撮影セット」の詳細がアップされています。 https://twitter.com/tenmonReflexion/status/1056096889412575232 デジタル星野写真撮影記・「SS-one星雲・星団撮影セット」の開発・販売 http://honmaka.cocolog-nifty.com/blog/2018/10/ss-one-1108.html 昨日、ちょっとだけ出した望遠鏡セットですが、ここで詳しく説明したいと思います。 その前に、なぜこの望遠鏡セットを開発・販売するに至ったか、それは私の極めて個人的な、ビジネス無視の2つのこだわりがあったからです。 「ほんまか」さんは「極めて個人的」で「ビジネス無視」のこだわりと書かれていますが、書かれている内容には大いに同意できることが含まれています。それを順に見ていきましょう。 小型でスリムな望遠鏡セット 小型でスリムな赤道儀 最近は、小さな赤道儀が減ったなぁと思います。ポタ赤はあるのですが。最近はエントリーモデルでもけっこう大きいというか、ごつごつした感じのが多いです。 現在も製造販売中の代表的な各社の製品を3つにカテゴリ分けしてみました。 1)1軸駆動、自動導入なしのポータブル赤道儀 ポラリエ、ナノトラッカー スカイメモ(S,T,R/RS) SWAT、TOAST 2)小型赤道儀 Sky-Watcher EQ3,EQ5,EQ35M セレストロン AVX ビクセンAP赤道儀 3)中型赤道儀 ビクセンSXシリーズ(SX,SXD,SXPなど) EM-200 Sky-Wacther AZ-EQ5GT、EQ6R ケンコー スカイエクスプローラSEII,EQ6PRO   「ほんまか」さんの指摘は、具体的には2)「小型赤道儀」のカテゴリが「弱い」ということでしょう。AVXもEQ3/5/35Mシリーズも、自動導入仕様にするとかなり「でこぼこ」して嵩張ります。また三脚が頑丈すぎて重い、バランスウェイトが異様にでかい。また、AP赤道儀はコンパクトでとてもスマートなのですが、標準では自動導入非対応です。 そこで「SS-one星雲・星団撮影セット」では、Sky-Wacher EQ3をベースに「小型でスリム」を目指して、赤道儀に以下の対応が行われています。 モーターをSS-oneオリジナルの小型のものに換装 電子極望を内蔵し正確で簡単な極軸合わせを実現 バランスウェイトを小型のものに換装 「プラスオプション」の三脚アダプターでより軽量なカメラ三脚を使用可能に 極めて合理的。ベースのEQ3以上には「小型でスリム」にはならないものの、やれることは全部やったと評価していいのではないでしょうか。 小型でスリムな鏡筒 鏡筒は、SkyWatcherのEvoStar 72EDです。日本では未発売です。鏡筒径がφ80より細く、すごくスリムです。なにかPentax75SDHFを思わせます。完全に私のツボにハマりました。性能の方はこれから検証です。 この鏡筒は日本では未発売。2枚玉アポ口径72mm、焦点距離420mmF5.8。重量2キロ弱。小型の赤道儀に搭載するにはよいバランスかもしれません。海外の通販サイトAPMでは350ユーロでした。 APM EvoStar 72ED https://www.apm-telescopes.de/en/telescopes/refracting-telescopes-ota/apochromates/skywatcher-evostar-72ed-ds-pro-ota EQ赤道儀にせよAP赤道儀にせよ、焦点距離500〜600mmを搭載することは不可能ではありませんが、初めてディープスカイを撮影する初心者が無理なく使うにはやや長すぎ。その点この鏡筒はよい焦点距離レンジといえるでしょう。写真性能は補正レンズ次第になると思われますが、性能の検証も予定されているようです。 天体撮影に必要なものは全部付ける、そして「マイナスオプション」 天体望遠鏡セット、特に撮影セットになると、買ってすぐ使えるものは皆無です。いろいろ買い足したり、調整したり、交換したり。もちろん、趣味の世界なので、それが楽しいし、私もむしろ、そちら側の人間。 天文機材は架台・鏡筒などを別々に購入し組み合わせるのが「普通」。マニアにとって、セット品は価格メリットがない限りは逆に迷惑ともいえるでしょう。しかし、それに対して疑問が提示されます。 私は、メーカーとか、販売店とかは、目的を達成するための、完全なセットというのを、ユーザがそれを全て選択するかどうかは別にして、提示(用意)できないとおかしいと思うんです。だって、車を買って、納品日に車を取りにいけば、そのまま乗って帰ってこられるじゃないですか。バッテリーは別で買ってください、とかワイパーも別ね、すべて揃ったら始めて乗れますよ。ていうことはないでしょ。 (文字修飾:編集部) 編集子が5年前に浦島太郎状態で天文の世界に戻ってきたときのことを今思い出すと、これは実に的を射た意見だと思います。「天体写真を始めたいのだけど、いったいどんな機材の組み合わせがありうるのか」。この問に直接答えてくれる情報源はありませんでした。メーカーのカタログをつぶさに読み込んで「赤道儀とはこういうもの」「鏡筒とはこういうもの」というイメージを作り、それからその組み合わせをシミュレーションする。まあ楽しい作業ではありましたが、何パターンかの「基本セット」が提示されていれば、そのプロセスはもっとスムーズに進んだでしょう。 まぁ、そんな思いもあって、完全な望遠鏡セットというのを組んでみたかったところがあります。 (中略) それ以外はカメラも含めて、買えば、もうその日の夜に使える望遠鏡セットを考えたわけです。 もっとも、既に持ってる部品もあると思うので、そこはマイナスオプションという方式で行きたいと思います。 つまり、完全なフルセットを基本として、必要ないものはどんどん外していくという方式です。 (文字修飾:編集部) 編集子の経験に照らしてみると、露よけヒーターが付属しているのはポイント高。独学で始めた人にとって、スマートな露対策に辿り着くまでの壁は実に高いです。なんでこんな必須なものが「欲しけりゃ探せ」的位置づけだったのか(*)。 (*)ビクセンが自社ブランドの露よけヒーターを出すまでは、露よけに対して解決方法を提案している望遠鏡メーカーは皆無でした。編集子自身も今は実に「スマートでない」方法でやっているので、なんとかしたいと思っています。 逆になんでもかんでも付いてくると、経験者には重複するものも出てきますが、そこは「マイナスオプション(要らないものを外す)」で解決。実務的に困難が伴うことも予想されますが、これがきちんと実現できれば、販売店の強い差別化要素になるかもしれません。 小型赤道儀に需要はあるのか 「最近は、小さな赤道儀が減ったなぁと思います。」 なぜ「減った」のでしょうか。 高橋製作所HP・PM1-xy発売のご案内 http://www.takahashijapan.com/ct-news/news_120705_PM-1XY.html こちらは2012年に発売された高橋の小型赤道儀PM1-xy。従来品の「PM-1」を2軸駆動化したものですが、現在ではディスコンになっていて、従来品の「PM-1」のみが販売されています。 推測するに「売れなかった」のでしょう。2軸駆動であるにもかかわらず自動導入対応でなかったのが一つの原因と推測されますが、そもそも「天文マニアには小型赤道儀のニーズが少ない」のかもしれません。 「欲しくなる製品がない」のか「ニーズがそもそもない」のか。どちらなのでしょうか?どちらでもないのでしょうか? 個人的意見ですが「欲しくなる製品がなかった」のではないでしょうか。小型でコンパクトで自動導入対応のスマートでカッコイイ赤道儀、望遠鏡セット。重い機材をエッチラ運ぶのではなく、自宅から車まで何度も往復せずに運べるような、撮影地でもすぐに組み立てて撤収できるような、高性能なライト機材。そんな機材があれば「欲しい」と思います。 まとめ・「入門者向けのCoolな組み合わせセット」の意義 天リフの仮説は「小型軽量でCoolな望遠鏡(セット)には潜在ニーズがあり、それに対するソリューションは現状十分ではない」というものです。その意味で、今回の「SS-one星雲・星団撮影セット」の動向には大いに注目したいと思います。      編集部発信のオリジナルコンテンツ