11/20 追記)新型のPF-LIIの発売がアナウンスされています。

追記終わり)

ビクセンの「極軸望遠鏡PF-L」が「生産終了・在庫払底」となっています。どうやら今日の時点で更新されたようです(*)。

(*)販売店の流通在庫は一定数存在しているものと推測します。

「極軸望遠鏡PF-L」は2016年に従来品からリプレースされたもので、暗視野照明を内蔵し、日付・時間・経度の設定なしに、パターンが刻まれた北極星を含む3つの星(*)によって、より簡単に極軸合わせを可能にするコンセプトの製品でした。

(*)北半球の場合。北極星と「こぐま座δ」「ケフェウス座51番星」の3つの星を使用します。南半球の場合は、はちぶんぎ座のσ・χ・τの3つの星を使用します。

ビクセンHP・Vixen 天体望遠鏡 極軸望遠鏡PF-L
https://www.vixen.co.jp/product/25803_1/
https://www.vixen.co.jp/product/25803_1/

 

極軸望遠鏡パターン。スマホでコリメート撮影。

なぜディスコン?極軸望遠鏡PF-L

現時点で後継製品のアナウンスは出ていないようですが「後継製品がない」ことは考えづらく、何らかの改良を施した後継製品がアナウンスされることは間違いないでしょう(*)

(*)電子極望になるという希望的予測もしたくなりますが、価格的にも使い勝手的にも、いきなりその形に移行する可能性は極めて低いと予測します。

実は極軸望遠鏡PF-Lに対しては、北極星以外の2つの基準星(「こぐま座δ」「ケフェウス座51番星」)が視野周辺にあるため、光害地では明瞭に見えない場合があり設置しづらいという声がありました(*)。ずばり、倍率を4倍〜5倍くらいに下げた形の新型がリリースされるものと予測します。

(*)現状、一部の販売店では別の極望に換装したものや、電子極望とセットにしたオリジナルセットが販売されています。

倍率を下げることで「はちぶんぎ座ν」が視野内に入ることになれば、南半球用のパターンが「はちぶんぎ座の台形」の4つの星を使用する形になるのかもしれません。

ユーザーへの影響

現時点で後継製品のアナウンスがないため以下全て推測になりますが、「より低倍率で基準星がより見やすくなる改良版」が発売されるのであれば歓迎すべきことだと思います。

一方で、10/19発売のSXP2は従来品(PF-L)が使用されていますから、こちらもいずれ新型になるのでしょうか。店頭在庫製品が新型に入れ替わるのがいつなのか、微妙な感じです。天体望遠鏡パーツという元々生産量が多くない製品であることから、改良による移行期に若干の混乱が発生するのもやむを得ないかもしれません。

アプリ「PF-L Assist」極軸望遠鏡PF-Lをより便利に使うには

しかし、既存製品を使用しているユーザーも、アプリ「PF-L Assist」と併用することで、より簡単に問題なく極軸合わせが可能です。

当初編集子は「(極望パターンの角度を実際の星の位置だけで合わせられるはずなのに)なんでわざわざアプリを使わないといけないのか」と不思議に思っていたのですが、実際にPF-Lを使用してみて理由がわかりました。光害地や月明・薄明時では、おおぐま座δ星が見えなかったり、季節や天候によっては北斗七星とカシオペヤが見にくい(見えない)こともあります。

そんな時にこのアプリを使うと、スマホの画面の通りにパターンを回転させれば、北極星を所定の位置に入れるだけでOKです。しかも歳差による年レベルでの微妙な北極星の位置もアプリに表示され「画面上の位置そのままに」北極星だけを導入すればOK。

実際のところ、周辺の基準星をパターン上のあるべき位置に設定するのは、パターンの角度を正確に設置するためだけなのです。角度が正しければ、周辺の基準星は気にしなくても良いはずなのです。



追記)大事なことを一つ漏らしていました。北極星以外の星も使用することには一つ重要なメリットがあります。星がよく見えすぎる時に編集子もやったことがあるのですが「北極星と思って使用した星が実は北極星でなかった」という事態を、複数の基準星を使用すれば防ぐことができます。

新版と旧版のどちらがいいのか

製品を改良するために(推測ですが)新版にするのですから、当然新版の方が総合的には良いはずです。初心者や光害地では(アプリを使用しなければ)新版のほうが使いやすくなるはずです。

一方で、旧版も(推測ですが)「より高倍率」であるというメリットも逆にあるので、経験者にとっては(アプリと併用する前提であれば)どちらが良いかは好みの問題レベルかもしれません。お値段が据え置きの前提ですが・・・

まとめ

いずれにせよ、現時点では推測の域を出ませんが、改良されるのであれば歓迎すべきことです。このようなユーザーの要望を取り入れ改良するというプロセスが継続的に・円滑に進むこと望むものです。

参考)極軸パターン比較

参考までに天リフ編集部にある極軸望遠鏡のパターンを地上風景の実写画像でいくつか比較してみました。南半球での極軸合わせについても併せて解説しています。

ビクセン・PF-L

パターンは最も洗練されています。カシオペヤと北斗七星だけで角度を合わせるも良し、3星で合わせるも良し。また、南半球用のパターンにも、歳差補正の指標が付いています。

ただし、周辺像がけっこう流れています。高級な光学系は、コスト的にもサイズ的にも使うことはできませんから、やはり倍率6倍を4〜5倍に下げるのが無難な設計でしょう。

ビクセン・旧タイプ極軸望遠鏡

パターンはシンプル。角度を正確に合わせておけば、北極星を指定位置に入れるだけです。歳差補正の目盛も細かく合わせやすくなっています。

しかし、角度を合わせるのが面倒です。日付・時刻・経度の3つの情報を正確に目盛で設定し、水準器で水平を正確に取る必要があります。簡単と言えば簡単ですが、面倒と言えば面倒。しかもそのための目盛板がかなり大型で嵩張ります。収納スペース的にポラリエと同じくらい。PF-Lに改良されたのもうなづけます。

倍率はどちらも6倍。PF-Lを開発した際に光学系をそのまま流用したものと推測します。旧モデルには、はちぶんぎ座の台形の「ν(ニュー)」星のパターンも刻んでありますが、最周辺なので実際はかなり見にくいでしょう。

スカイメモRS

「20年間パターンが変わっていない(完成度の高さ)」とメーカー担当者が自認するだけあって、とても使いやすいパターンです。倍率は4倍と低めなので、こぐま座δ星も無理なく見ることができます。

南半球の場合、「はちぶんぎ座の台形」の4星のうち2つしか使わないことに注意が必要です。代わりに少し離れた10G,7G星を使用します。倍率が低い故に可能な対応ですね。しかし・・・星図と突き合わせで作業しないと無理でしょう^^;;(南半球では当然かもしれませんね)

Sky-Watcher EQ赤道儀など時角円方式

Sky-Watcherやセレストロンをはじめ、多くのメーカーで採用されている2重円+時角目盛方式。アナログ時代は時角を計算するのが大変でしたが、今ではスマホで一発です。

アプリを使う前提であれば、北半球ではこの方式が実は一番合わせやすいのかもしれません。

ただし、南半球では歳差補正の目盛がありません。また、かなり暗い星を使用するので、これまた星図が必須です。

星図はステライメージ10にて作成しました。

南半球用のパターンの4つの○は、「はちぶんぎ座の台形」ではないことに注意が必要です。これ、知らなかったら絶対ハマってますよね・・・編集子は南半球未経験なのですが、今回調べておいてよかったです^^;; https://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2018/10/40e9a7f92c501b83f91a639d3fc54af8-1024x430.jpghttps://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2018/10/40e9a7f92c501b83f91a639d3fc54af8-150x150.jpg編集部マウント11/20 追記)新型のPF-LIIの発売がアナウンスされています。 https://twitter.com/tenmonReflexion/status/1064688813673304065 追記終わり) ビクセンの「極軸望遠鏡PF-L」が「生産終了・在庫払底」となっています。どうやら今日の時点で更新されたようです(*)。 (*)販売店の流通在庫は一定数存在しているものと推測します。 「極軸望遠鏡PF-L」は2016年に従来品からリプレースされたもので、暗視野照明を内蔵し、日付・時間・経度の設定なしに、パターンが刻まれた北極星を含む3つの星(*)によって、より簡単に極軸合わせを可能にするコンセプトの製品でした。 (*)北半球の場合。北極星と「こぐま座δ」「ケフェウス座51番星」の3つの星を使用します。南半球の場合は、はちぶんぎ座のσ・χ・τの3つの星を使用します。 ビクセンHP・Vixen 天体望遠鏡 極軸望遠鏡PF-L https://www.vixen.co.jp/product/25803_1/   なぜディスコン?極軸望遠鏡PF-L 現時点で後継製品のアナウンスは出ていないようですが「後継製品がない」ことは考えづらく、何らかの改良を施した後継製品がアナウンスされることは間違いないでしょう(*)。 (*)電子極望になるという希望的予測もしたくなりますが、価格的にも使い勝手的にも、いきなりその形に移行する可能性は極めて低いと予測します。 実は極軸望遠鏡PF-Lに対しては、北極星以外の2つの基準星(「こぐま座δ」「ケフェウス座51番星」)が視野周辺にあるため、光害地では明瞭に見えない場合があり設置しづらいという声がありました(*)。ずばり、倍率を4倍〜5倍くらいに下げた形の新型がリリースされるものと予測します。 (*)現状、一部の販売店では別の極望に換装したものや、電子極望とセットにしたオリジナルセットが販売されています。 倍率を下げることで「はちぶんぎ座ν」が視野内に入ることになれば、南半球用のパターンが「はちぶんぎ座の台形」の4つの星を使用する形になるのかもしれません。 ユーザーへの影響 現時点で後継製品のアナウンスがないため以下全て推測になりますが、「より低倍率で基準星がより見やすくなる改良版」が発売されるのであれば歓迎すべきことだと思います。 一方で、10/19発売のSXP2は従来品(PF-L)が使用されていますから、こちらもいずれ新型になるのでしょうか。店頭在庫製品が新型に入れ替わるのがいつなのか、微妙な感じです。天体望遠鏡パーツという元々生産量が多くない製品であることから、改良による移行期に若干の混乱が発生するのもやむを得ないかもしれません。 アプリ「PF-L Assist」極軸望遠鏡PF-Lをより便利に使うには しかし、既存製品を使用しているユーザーも、アプリ「PF-L Assist」と併用することで、より簡単に問題なく極軸合わせが可能です。 当初編集子は「(極望パターンの角度を実際の星の位置だけで合わせられるはずなのに)なんでわざわざアプリを使わないといけないのか」と不思議に思っていたのですが、実際にPF-Lを使用してみて理由がわかりました。光害地や月明・薄明時では、おおぐま座δ星が見えなかったり、季節や天候によっては北斗七星とカシオペヤが見にくい(見えない)こともあります。 そんな時にこのアプリを使うと、スマホの画面の通りにパターンを回転させれば、北極星を所定の位置に入れるだけでOKです。しかも歳差による年レベルでの微妙な北極星の位置もアプリに表示され「画面上の位置そのままに」北極星だけを導入すればOK。 実際のところ、周辺の基準星をパターン上のあるべき位置に設定するのは、パターンの角度を正確に設置するためだけなのです。角度が正しければ、周辺の基準星は気にしなくても良いはずなのです。 追記)大事なことを一つ漏らしていました。北極星以外の星も使用することには一つ重要なメリットがあります。星がよく見えすぎる時に編集子もやったことがあるのですが「北極星と思って使用した星が実は北極星でなかった」という事態を、複数の基準星を使用すれば防ぐことができます。 新版と旧版のどちらがいいのか 製品を改良するために(推測ですが)新版にするのですから、当然新版の方が総合的には良いはずです。初心者や光害地では(アプリを使用しなければ)新版のほうが使いやすくなるはずです。 一方で、旧版も(推測ですが)「より高倍率」であるというメリットも逆にあるので、経験者にとっては(アプリと併用する前提であれば)どちらが良いかは好みの問題レベルかもしれません。お値段が据え置きの前提ですが・・・ まとめ いずれにせよ、現時点では推測の域を出ませんが、改良されるのであれば歓迎すべきことです。このようなユーザーの要望を取り入れ改良するというプロセスが継続的に・円滑に進むこと望むものです。 参考)極軸パターン比較 参考までに天リフ編集部にある極軸望遠鏡のパターンを地上風景の実写画像でいくつか比較してみました。南半球での極軸合わせについても併せて解説しています。 ビクセン・PF-L パターンは最も洗練されています。カシオペヤと北斗七星だけで角度を合わせるも良し、3星で合わせるも良し。また、南半球用のパターンにも、歳差補正の指標が付いています。 ただし、周辺像がけっこう流れています。高級な光学系は、コスト的にもサイズ的にも使うことはできませんから、やはり倍率6倍を4〜5倍に下げるのが無難な設計でしょう。 ビクセン・旧タイプ極軸望遠鏡 パターンはシンプル。角度を正確に合わせておけば、北極星を指定位置に入れるだけです。歳差補正の目盛も細かく合わせやすくなっています。 しかし、角度を合わせるのが面倒です。日付・時刻・経度の3つの情報を正確に目盛で設定し、水準器で水平を正確に取る必要があります。簡単と言えば簡単ですが、面倒と言えば面倒。しかもそのための目盛板がかなり大型で嵩張ります。収納スペース的にポラリエと同じくらい。PF-Lに改良されたのもうなづけます。 倍率はどちらも6倍。PF-Lを開発した際に光学系をそのまま流用したものと推測します。旧モデルには、はちぶんぎ座の台形の「ν(ニュー)」星のパターンも刻んでありますが、最周辺なので実際はかなり見にくいでしょう。 スカイメモRS 「20年間パターンが変わっていない(完成度の高さ)」とメーカー担当者が自認するだけあって、とても使いやすいパターンです。倍率は4倍と低めなので、こぐま座δ星も無理なく見ることができます。 南半球の場合、「はちぶんぎ座の台形」の4星のうち2つしか使わないことに注意が必要です。代わりに少し離れた10G,7G星を使用します。倍率が低い故に可能な対応ですね。しかし・・・星図と突き合わせで作業しないと無理でしょう^^;;(南半球では当然かもしれませんね) Sky-Watcher EQ赤道儀など時角円方式 Sky-Watcherやセレストロンをはじめ、多くのメーカーで採用されている2重円+時角目盛方式。アナログ時代は時角を計算するのが大変でしたが、今ではスマホで一発です。 アプリを使う前提であれば、北半球ではこの方式が実は一番合わせやすいのかもしれません。 ただし、南半球では歳差補正の目盛がありません。また、かなり暗い星を使用するので、これまた星図が必須です。 南半球用のパターンの4つの○は、「はちぶんぎ座の台形」ではないことに注意が必要です。これ、知らなかったら絶対ハマってますよね・・・編集子は南半球未経験なのですが、今回調べておいてよかったです^^;;編集部発信のオリジナルコンテンツ