先日「本日のピックアップ」で木星の作品をご紹介しましたが、今日は土星をご紹介。

RB星のブログ
土星 2017/05/22-23
木星の後半のシーイングがも一つだったので土星はやめておこうと思ったのですが、覗いてみると木星よりは良い。
透明度が悪く、土星本体も環も赤っぽく見えています。今日は最大エントロピー法の画像復元処理を行っていません。
Registax6のウエーブレットとDerotationで、最後に弱いアンシャープマスクを掛けています。
ほんとに赤い土星でしたが、眼視では綺麗な環が見えていました。

RB星のブログから。
30年前に探査機ボイジャーによって発見された北極付近の六角の模様も見えています。かつては地上からは捉えられなかったものまでが、アマチュアの機材でも撮ることが可能になりました。

ここで、上記画像に記載されたデータから、最新の惑星撮影のテクニックのごくさわりをご紹介してみます。

LRGB



輝度成分をフィルターなし(L)の画像で、色成分をカラー(RGB)の画像で撮影し、別々に撮影し合成したという意味です。
星や星雲も含めて、デジタル天体写真ならではの手法。

L image ZWO ASI290MM

輝度画像(L)を「ZWO ASI290MM」というモノクロCMOSカメラで撮影。通称「赤缶」。センサーサイズわずか1/3インチですが、このカメラは、多くの惑星フリークに愛用されています。小センサーサイズということもあり、実売5万円程度と非常に安価。

F/38 , 1/50sec , 50fps

惑星撮影用カメラに求められるのは、大気の揺らぎによる像の悪化を最小限にするため、短いシャッタースピートで高フレームレートの動画が撮影できること。

この作品の場合、50fpsという通常の動画よりもずっと高いフレームレートで撮影されています。高フレームレートを実現するには、センサーサイズはむしろ小さい方が有利。小さくて高感度で高速に撮影できることが重要になるのです。

3000frames stacked.

3000フレームの撮影データを使用。
惑星撮影は今や動画が常識。ひたすら動画を撮って、その中から空気の揺らぎの影響の少ないものをぬきだして、Registaxなどの専用のソフトウェアで画像処理をします。

De-rotation 18min

土星は約10時間で一回転します。
10分間動画を撮影すると、その間に 土星は6度も回転します。
(360/(10*60/10)=6)
この誤差を補正して、より精細な画像を得る処理が「De-rotation」。

RGB image ZWO ASI224MC

RGBのカラー画像を「ZWO ASI224MC」というカラーCMOSカメラで撮影。
このカメラはASI 290MMのカラー版で、さらに安くて実売4万円。L-RGB合成ではなく、このカメラだけで撮影される方も多いようです。

訂正5/24 14:26)
ASI 290MMのカラー版はASI 290MCでした。
訂正しお詫びさせていただきます。



Celestron C14(35cm Schmidt Cassegrain)

セレストロンの口径35cmシュミットカセグレンC14で撮影。
C14はお値段も重量もヘビー級。
使いこなすには色々と苦労が多いらしいですが、性能をフルに発揮すればこの通り。

より小型で実売10万程度と安価なC8クラスでもシーイング(大気の揺らぎの安定度)次第ではかなりの像が得られるようです。

with a Planetary Atmospheric Despersion Corrector.

通称ADCと呼ばれる、大気による色ずれを補正する装置を使用。
地平線に近づけば近づくほど、大気の屈折によって像にずれが発生してしまいます。薄いくさび状のガラスを通すことで、その色ずれを補正するのがADC。

Seeing :5〜6/10

シーイング(大気の揺らぎの安定度)が最高を10として、5から6くらいだった、という意味。

実際5-6のシーイングがどの程度かはよくわからないのですが、数字から見ると「普通」ということでしょう。
最高」ならいったいどういうことになるのでしょうか?!

なんだかわくわくしますね・・これも惑星の醍醐味?でしょうか。

iwaLab
土星 20170518

もうひとつご紹介します。
左の画像は最初にご紹介した画像と同じLRGBモノクロカメラによるRGBフィルターを使用した色分解撮影ですが、中は近赤外線、右は890nmのメタンバンドで撮影されたもの。

訂正5/24 14:26)
iwaLab様より、モノクロカメラ(L)+カラーカメラ(RGB)ではなく、モノクロカメラのRGB色分解撮影であるとのご指摘を頂戴しました。訂正しお詫びさせていただきます。

このような、IR改造一眼カメラでは写らない波長域で撮影が可能なことも、天体用CMOSカメラの威力。
メタンバンドでは、土星本体と輪っかの明るさが可視光の場合とまるで違っていて驚かされますね。


いかがでしたか?

惑星ニワカの編集子ですが、勉強を兼ねて^^; いろいろデータを紐解いてみました。

C8 2.5xバロー OLYMPUS EM5

上の画像、編集子が初めて撮影した土星(昨年)です。
左側が赤っぽくて右側が青っぽいのが、大気による色ずれ。
大変お恥ずかしい出来ではありますが、全く初めてでもこの程度は撮れる、ということでしょうか。

来年夏には火星が大接近となります。ちょうど木星・土星も同じ夜に見られる位置、これから来年にかけて惑星ブームが訪れるかもしれませんね。 https://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2017/05/P53000243s.jpghttps://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2017/05/P53000243s-150x150.jpg編集部天体写真先日「本日のピックアップ」で木星の作品をご紹介しましたが、今日は土星をご紹介。 RB星のブログ 土星 2017/05/22-23 木星の後半のシーイングがも一つだったので土星はやめておこうと思ったのですが、覗いてみると木星よりは良い。 透明度が悪く、土星本体も環も赤っぽく見えています。今日は最大エントロピー法の画像復元処理を行っていません。 Registax6のウエーブレットとDerotationで、最後に弱いアンシャープマスクを掛けています。 ほんとに赤い土星でしたが、眼視では綺麗な環が見えていました。 RB星のブログから。 30年前に探査機ボイジャーによって発見された北極付近の六角の模様も見えています。かつては地上からは捉えられなかったものまでが、アマチュアの機材でも撮ることが可能になりました。 ここで、上記画像に記載されたデータから、最新の惑星撮影のテクニックのごくさわりをご紹介してみます。 LRGB 輝度成分をフィルターなし(L)の画像で、色成分をカラー(RGB)の画像で撮影し、別々に撮影し合成したという意味です。 星や星雲も含めて、デジタル天体写真ならではの手法。 L image ZWO ASI290MM 輝度画像(L)を「ZWO ASI290MM」というモノクロCMOSカメラで撮影。通称「赤缶」。センサーサイズわずか1/3インチですが、このカメラは、多くの惑星フリークに愛用されています。小センサーサイズということもあり、実売5万円程度と非常に安価。 F/38 , 1/50sec , 50fps 惑星撮影用カメラに求められるのは、大気の揺らぎによる像の悪化を最小限にするため、短いシャッタースピートで高フレームレートの動画が撮影できること。 この作品の場合、50fpsという通常の動画よりもずっと高いフレームレートで撮影されています。高フレームレートを実現するには、センサーサイズはむしろ小さい方が有利。小さくて高感度で高速に撮影できることが重要になるのです。 3000frames stacked. 3000フレームの撮影データを使用。 惑星撮影は今や動画が常識。ひたすら動画を撮って、その中から空気の揺らぎの影響の少ないものをぬきだして、Registaxなどの専用のソフトウェアで画像処理をします。 De-rotation 18min 土星は約10時間で一回転します。 10分間動画を撮影すると、その間に 土星は6度も回転します。 (360/(10*60/10)=6) この誤差を補正して、より精細な画像を得る処理が「De-rotation」。 RGB image ZWO ASI224MC RGBのカラー画像を「ZWO ASI224MC」というカラーCMOSカメラで撮影。 このカメラはASI 290MMのカラー版で、さらに安くて実売4万円。L-RGB合成ではなく、このカメラだけで撮影される方も多いようです。 訂正5/24 14:26) ASI 290MMのカラー版はASI 290MCでした。 訂正しお詫びさせていただきます。 Celestron C14(35cm Schmidt Cassegrain) セレストロンの口径35cmシュミットカセグレンC14で撮影。 C14はお値段も重量もヘビー級。 使いこなすには色々と苦労が多いらしいですが、性能をフルに発揮すればこの通り。 より小型で実売10万程度と安価なC8クラスでもシーイング(大気の揺らぎの安定度)次第ではかなりの像が得られるようです。 with a Planetary Atmospheric Despersion Corrector. 通称ADCと呼ばれる、大気による色ずれを補正する装置を使用。 地平線に近づけば近づくほど、大気の屈折によって像にずれが発生してしまいます。薄いくさび状のガラスを通すことで、その色ずれを補正するのがADC。 Seeing :5〜6/10 シーイング(大気の揺らぎの安定度)が最高を10として、5から6くらいだった、という意味。 実際5-6のシーイングがどの程度かはよくわからないのですが、数字から見ると「普通」ということでしょう。 「最高」ならいったいどういうことになるのでしょうか?! なんだかわくわくしますね・・これも惑星の醍醐味?でしょうか。 iwaLab 土星 20170518 もうひとつご紹介します。 左の画像は最初にご紹介した画像と同じLRGBモノクロカメラによるRGBフィルターを使用した色分解撮影ですが、中は近赤外線、右は890nmのメタンバンドで撮影されたもの。 訂正5/24 14:26) iwaLab様より、モノクロカメラ(L)+カラーカメラ(RGB)ではなく、モノクロカメラのRGB色分解撮影であるとのご指摘を頂戴しました。訂正しお詫びさせていただきます。 このような、IR改造一眼カメラでは写らない波長域で撮影が可能なことも、天体用CMOSカメラの威力。 メタンバンドでは、土星本体と輪っかの明るさが可視光の場合とまるで違っていて驚かされますね。 いかがでしたか? 惑星ニワカの編集子ですが、勉強を兼ねて^^; いろいろデータを紐解いてみました。 C8 2.5xバロー OLYMPUS EM5 上の画像、編集子が初めて撮影した土星(昨年)です。 左側が赤っぽくて右側が青っぽいのが、大気による色ずれ。 大変お恥ずかしい出来ではありますが、全く初めてでもこの程度は撮れる、ということでしょうか。 来年夏には火星が大接近となります。ちょうど木星・土星も同じ夜に見られる位置、これから来年にかけて惑星ブームが訪れるかもしれませんね。編集部発信のオリジナルコンテンツ