この記事の内容星見屋.com 特別協賛!(*)
「ASI AIR」がさらにパワーアップした第2世代の製品「ASI AIR PRO」。集中連載の第3回は「撮影実践編」。「ASI AIR PRO」やCMOSカメラに興味はあるけど、これまでのやり方とどう勝手がちがうのか心配・・・そんな方のために、撮影の全シーケンスを詳細にご紹介したいと思います!

(*)特別協賛とは、本記事のサムネイルおよび記事中にスポンサー様の特別広告枠を掲載することにより対価をいただく形です。記事そのものの編集ポリシーは通常の天リフ記事と同等です。

なお、今回使用したアプリ「ASI AIR」はバージョン1.41のβ(9)。2/8にアプリストアにリリースされているバージョン1.41より少し新しいですが、あくまでβ版。不具合を含めて、詳細は製品版と異なる可能性があることをあらかじめお断りしておきます。

目次

撮影準備

機材のセットアップ



今回使用したシステム構成。主砲はFSQ106ED(F5)、メインカメラはASI 294MC。ガイドスコープは親子亀でタカハシのGT-40。ガイドカメラはASI120MM-mini。

ASI AIR筐体は「孫亀」としてガイド鏡の上に設置しました。ガイドカメラとAIR筐体は近いので問題ないのですが、メインカメラはちょっと遠く、ケーブルの向きによっては50cmの距離ではやや短めでしたが、アルカスイスクランプの組み方を調整すればなんとかなりました。この点でも「ASI AIR PRO」は従来よりも柔軟なシステム構成が可能だと感じました(*)。

(*)ASI AIRは結線が楽になるのがメリットですが、筐体の設置場所には注意が必要です。事前にしっかり仮組みしてチェックしておきましょう。

鏡筒外に這うケーブルは12Vの電源ケーブルと、今回使用したSXP赤道儀の「スターブックテン(SB10)」と接続するLANクロスケーブルの2本です(*)。

(*)赤道儀に12V電源のハブが付くとさらに結線がシンプルになりますね。今後の新製品にはそういう機能も期待したいところです。

上記構成には光学ファインダーは含まれていません。筆者の場合は以前から光学ファインダーはほぼ使用しないのですが、簡単なアンケートを取ってみたところ、アライメント・導入で半数くらいのユーザーは光学ファインダーを使用されているようです。

ASI AIRを使用する場合、この半数くらいの人に対してもほぼ光学ファインダーは不要となることでしょう。導入もアライメントも、ASI AIRのPlate Solvingでこと足りるからです(*)。

(*)唯一、後述するPlate Solve前の主鏡のピント合わせの際にはファインダーがあると便利です。

極軸合わせ

ビクセンのスターブックテンの「ホームポジション」は西向き水平。

ASI AIRには極軸合わせ支援機能(Polar alignment:PA)も入っています。こちらもちゃんと使えるのですが(*)、今回は慣れた極軸望遠鏡を使用しました。

(*)PA機能はメインカメラのPlate solvingを使用します。このため、手順としてはまずASI AIRに接続しメインカメラのピントを合わせておく必要があります。PA機能で使用するPlate Solvingでは、長すぎる焦点距離(画角)ではPlate Solvingができないため、場合によっては画角のより広いガイド鏡(ガイドカメラ)に切り替えて行う必要があるかもしれません。

ASI AIR筐体の起動

http://hoshimiya.com/?pid=147642367

「ASI AIR PRO」からは、シーソー型の電源スイッチが付きました。電源ケーブルをつないでスイッチONでASI AIRが起動し、10秒ほど経つとビープ音が鳴って(*)WiFiランプが点灯します。

(*)ビープ音はもう少し活用してほしい気がします。例えば後述するMedirian Flipのスタンバイ開始の際、Autorunのシーケンス終了時などでは鳴らしてほしいものです。

アプリASI AIRへの接続

ASI AIRが起動したら、使用するスマホ・タブレットをASI AIRのWiFiに接続します。スマホのWiFiを自動接続に設定しておけば、他にWiFiアクセスポイントのない遠征地なら自動的に繫がるのですが、WiFi利用の機器が増えている昨今、接続先はしっかり確認しましょう。SSID(WiFiネットワークの名前)も上の画像はデフォルトですが「自分のこの機器」だとわかる名前に変更しておくべきです(*)。

(*)有名な遠征地では、ネットワーク一覧に「ASIAIR_XXXXX」がずらりと並ぶ状況はすぐにでも来ると予測します。

WiFiに接続したらアプリASI AIRを起動します。起動するとカメラ・架台の設定画面が表示されます。「Main」と「Guide」の2つのカメラはUSBで接続したカメラを一覧から選ぶだけですが、焦点距離(Focal Length)は後述するPlate Solvingやオートガイドで重要な設定値となるのできちんと入力する必要があります(*)。

(*)iOSでは日本語入力モードで半角数字を入れるとエラーになってしまいました。改修されるかも知れませんが注意が必要です。Main Scopeの焦点距離はPlate Solvingの際に正確に計算された値で自動更新されるので、ざっくりでも大丈夫そうです。

架台の設定は自動認識するわけではないので、使用する赤道儀を選択リストから選びます。ここまでの接続確認は事前にやっておくのが吉です。

スターブックテンとの接続

スターブックテン(SB10)とASI AIRは、クロスケーブルで有線LAN接続します。「Telescope Setting」の画面で架台のIPアドレスを設定します。一度入力しておくとASI AIRアプリが前回の設定として記憶してくれるようです。


SB10のIPアドレスは「架台の設定」のメニューから確認できます。

こちらは既知の一般的ノウハウですが、スターブックテンの「架台の設定/架台の種類」で「極軸を合わせた赤道儀」に設定しておきます(*)。

(*)極軸のずれに対する補正量を、アライメントの結果から計算して、赤道儀を先回りして動かす機能ですが、ASI AIRでPlate Solvingを使用する場合は、導入の際に極軸のずれ量を補正する必要もなくなります。

星見屋様で確認されたASI AIR対応の架台と接続設定の一覧 。http://hoshimiya.com/?pid=147642367

ちなみにASI AIRでは、ビクセンのSB10でけでなく、タカハシ・SynScan(Sky-Wather)など、20を超えるメーカーの何百もの赤道儀に対応しています。

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対象の導入とピント合わせ

まず金星にGOTO

さて、準備が終わりました。SB10を使用している状態では、自動導入はASI AIRからでも、SB10からでも、どちらからでも可能。

使う前は「どっちからでもやれるのは混乱の元ではないか」と心配していましたがそんなことはありませんでした。ASI AIRと併用してもSB10の便利さは変わりません。まずは使い慣れたSB10で、いきなり金星に向けてGOTOしてみます(*)。

(*)SB10の場合、事前のアライメントは特に不要でした。Plate Solvingの際に「sync mount」すれば位置情報が架台に同期されます。

GOTO直後の状態。金星の方角に向きましたね。でもアライメントはしていないので、中心には導入されていないはず。

第一関門・メインカメラのピント合わせ

ではASI AIRの画面を見てみましょう。まだ何もしていないので、何も表示されていません^^ 「Preview」画面で右の丸い撮像ボタンを押します。露出時間はまず1秒。

撮像が終わるとスマホに画像がすぐ転送され表示されますが、普通に金星は視野外でした^^;;; 金星よ、どこだ!それどころか星が一つも見当たりません。理由は賢明な読者諸氏ならおわかりでしょう、ピントが合っていないからです。この状態からピント位置を探し出すのが第一関門(*)

(*)最初に使うときは間違いなくハマります。筆者が初めての鏡筒で初めてASI AIRを使ったときはこれで小一時間ハマりました。事前に試写してピント位置に印を付けておくのが大吉です。

ボケていても何かの星像が出てくれるとよいのですが、そうでないときはここから地道に星を「発見」する必要があります。デジタルカメラのライブビューは感度が低く(*)星があまり見えない反面、ほとんど遅延がないので比較的簡単に星が見つかるのですが、CMOSカメラの場合はそうはいきません。気短にピント位置を動かすと合焦位置をすぐ飛び越してしまいます。

(*)EOS 6Dはけっこう暗いですが、EOS Rやライブビューをブーストできるカメラはライブビューでもかなりの星が視認可能だそうです。

ポイントはフォーカス移動をゆっくり少しづつやること。少し動かしては少し待つ。この時ばかりはゲインは最大に設定しておくのが吉。露出時間を短くしてもいいのですが、あまり短くすると荒っぽいピント位置では星が出てきません。

おっ。星発見。ここまで来たら勝ちです。後はほんの少しずつピント位置を変えて、星が小さくなるところを探します。

だいぶ小さくなりましたね。ここまで星がはっきり出てくれば、次にFocusモードにしてもう少しピントを追い込みます。Focusモードでは左の虫眼鏡アイコンをタップすると拡大表示になります。

拡大表示モード。「HFD:10」と表示されているのは星像半径。HFDは「Half Flux Diameter」の略です。

ASI AIRの便利なところは、このHFDがグラフ表示されるところ。グラフを見ながらHFDが最小になる場所を探します。

ただし、ある程度ピントが合っていればPlate Solvingは成功するので、ここではまだざっくりで大丈夫です(*)。

(*)逆にピントが合わせられるまでは必殺技の「Plate Solving」が効かないので、何もできない状態から抜けられなくなります^^;;;

強力なPlate Solving

ピントが合えば後は簡単。Previewモードでとにかく1枚撮影。何が写っているかは考えずに、左のPlate Solveアイコンをタップ。

Plate Solveが始まりました。142個の星が見つかりました。

数秒でPlate Solve終了。自動で赤緯・赤経だけでなく「Angle(カメラの角度)」も計算してくれます。北上構図チェックにも便利ですね。ここで忘れずに「Sync Mount」ボタンをタップして位置情報を架台に同期しておきましょう。この操作で「1スターアライメント」が終わったことになります。

では、あらためてSB10から金星にGOTOしてみましょう。

おめでとう!金星の導入に成功。さすが明るいですねえ^^

ここで一つ注意点を。ASI AIRのプレビュー表示は、通常ではヒストグラムやガイドグラフが表示されているので、プレビュー結果の下1/5ほどがオーバーレイされて隠れてしまっています。

プレビュー画面上の何もアイコンのない部分をタップすることでプレビュー画像のみを表示できます。金星、ど真ん中ですね^^

なお、Plate Solvingを実行するには少なくとも長辺0.4度の画角(FOV:Field of View)が必要なようです。上の画像は試しに4/3センサーのASI294MCで焦点距離を2800mmに設定した場合の画面ですが「画角が狭すぎるのでたぶんPlate Solveに失敗するよ」というメッセージが表示されました。もちろん成功することもあるかもしれませんが、一つの目安として「4/3センサーでは焦点距離2800mmまで」というところは押さえておくべきでしょう。

ガイドスコープのセッティング

さて。金星が無事導入できたので、今度はガイドカメラをセッティングしておきましょう。「Guide Setting」の画面でカメラの接続を確認します。筆者の場合ゲインを最大(H)にした以外(*)はデフォルトです。

(*)ゲインのデフォルトも最大かもしれません。

右の再読込(回転矢印)アイコンをタップするとカメラ映像が表示されます。

画面左の「Guide」アイコンをタップしてガイドカメラの映像を表示ます。金星、デカッ。ビント、ボケボケ^^;;;

カメラを1.25インチスリーブから出し入れして、ピント位置を探します。ちょっと金星の位置がずれてますね。

ガイド鏡画面ではASI AIRから架台を動かすことができないので、SB10のカーソルで架台を動かして中心に移動します。

金星は明るすぎてピント位置がつかみにくいのでゲインを一旦下げます。

露出時間(右下のEXP表示)も0.01秒に下げてピント位置を追い込み。ゲインと露出時間を適宜調整するのは、デジタルカメラのISO感度とシャッタースピードと同じですが、操作に慣れていないと戸惑います。こちらも一度は練習しておきましょう。

いざ、馬頭星雲(IC434)にGOTO

GOTO対象の指定方法

無事ガイドカメラの設定も終わりました。今夜のターゲットは「馬頭星雲」です!馬頭星雲はIC434。筆者は有名な天体でもカタログナンバーは覚えていないので^^;;; あらかじめASI AIRの「My Favorite」に登録しておきました^^

GOTO対象の選択は、対象指定のサブウィンドウの検索(虫眼鏡)アイコンをタップすると開きます。ASI AIRの対象指定はカタログ番号やキーワードで検索できるものの、英語表記になじみがないと「カタログ番号」で検索するしかありません。前述の「お気に入り登録」を活用することをオススメします(*)。

(*)ここで悲しいのはASI AIRに接続しないと(筐体に電源を入れてWiFi接続しておかないと)アプリを起動してもお気に入り登録ができないこと。ちなみに以前はカメラも最低1台接続しなければなりませんでしたが、現在のバージョンはカメラなしでも起動できるようになりました。

自動中心導入は超便利

いざ、GOTO。架台を目的の対象に動かすのは通常の自動導入架台と同じですが、その後自動で1コマ撮像し、Plate Solvingをかけて、細かなずれを補正して対象を完全に中央に導入してくれます

ちなみに、自動中心導入(GoTo Auto-Center)は架台の設定(Telescope Setting)の画面で行います。Offにすることも可能で、自動でPlate Solvingするときの露出時間もここで設定します。今回は2秒で問題なくイケましたが、光害地では長めにするなど適宜調整が必要かもしれません。

導入直後。1秒露出ですが「馬頭」がほんのり見えてきましたね!(*)

(*)「馬の首」そのものが中央になっていないのですが、広がった星雲の座標はどういう基準で設定されているのでしょうか。ステラナビ・Wikipedia・スカイガイド・アプリASI AIRの4つで座標値が全て異なりました。結果的にはアプリASI AIRの位置は縦位置構図でのベストポジションでした。ちなみに、Plate SolveではJ2000分点ではなく「視位置」が表示されています。

ここではじめて気が付きます。「縦構図のほうがいいんじゃね?

第二関門・カメラの「上」はどの方向?

構図を縦位置に変更した後の画像です。

デジタルカメラの「上」はどの向きか。だれでも直感でわかりますよね。でも丸い天体用CMOSカメラの「上」はどこなのか。これは教えられないとわかりません。不肖、天リフ編集長は今回ようやく覚えました。ASI294MCの場合、USBケーブルの出ている側が縦位置の上(*)です。

(*)これまでニュートン反射で使うことが多かったので覚えていませんでしたと言い訳。。ちなみにASI294MC以外については未調査です。ご自分のカメラの向きを確認しておくのが吉です。

FSQ106EDの接眼部を回転させて縦位置に変更。ちょっと構図がずれてしまいましたが、ここでもPlate Solvingが大活躍。GOTO一発で・・・

ばっちり中心に導入。いやこれ、ホントに便利です!ちなみに「しし座のトリオ」のような対象の場合はカタログ番号でGoToするだけでは目的の構図にならないと思います。そんな場合は赤緯・赤経(DEC/RA)の座標を直接設定する必要があります(*)。

(*)この座標値をユーザー座標として登録したいのですが、アプリV1.4ではまだ実装されていないようです。

メインカメラのセッティング

一番下、見切れているのが「Advanced setting」です。

メインカメラの設定をあらためて確認しておきましょう。基本的に設定すべきことは少なく、ゲインだけと考えてよいくらいです。今回は(ASI294MCの)最大ゲインの390で使用しました(*)。

(*)ゲインをいくつにすべきかについては種々議論がありますがここでは割愛します。短い露出でのプレビューを考えると、ゲインは大きく設定するほうが画像が明るく見やすいのは確かです。ちなみに、オフセットの設定は見つけることができませんでした。カメラによっては設定できるのかもしれませんが。

「Advanced Setting」。デフォルトのままでも特に問題ありませんが、「Continues Preview」をonにするとプレビューが連続して自動再表示されるので、最初のピント合わせには使えるかも知れません(*)。

(*)長い露出時間で1枚だけ確認したいときには逆にウザイです。筆者は常時Offで使っています。

プレビュー画面

Nonlinear Strechを「Off」にしたとき。

「Advanced Setting」にプレビュー画面表示の「Nonlinear Strech(ノンリニアストレッチ)」設定がバージョン1.41から追加されました。これをOnにすると表示が明るくなるようです。上の画像は「Off」にした状態。本記事ではこの画像以外はすべて「On」にしています(*)。

(*)使用したバージョンはβ版なので製品版でどうなるかはよくわかりません。キャプチャ画像を見るとOffの方が派手に見えますが、現場ではOnの方が表示が明るくて淡い部分がより見やすいと感じました。

プレビュー画面はピンチ操作で簡単に拡大表示できます。強拡大して星像確認。まあまあいい感じですね!

メインカメラのピント追い込み



念のためピント位置を追い込んでおきます。馬頭星雲はすぐ近くに明るい「アルニタク(みんな大好き^^)」があるのでこれを使いましょう(*)。ピントを追い込むには、露出時間を短くできる明るい星を使うのが吉。HFDが1.53ならまあ満足でしょう(**)。

(*)写野内に明るい星がない場合は、GOTO対象の指定で247個の「Named Star(名前の付いた星)」の中からピント合わせ用の星が選択できます。英語名で探すのはなかなか難儀ですが^^;;こちらも事前にお気に入り登録しておくのがよさそうです。

(**)今回バーティノフマスクとの比較はできませんでしたが、優劣は正直いってよくわかりません。ASI AIRのFocus画面では星像がシーイングでゆらぐたびにHFDが変動するのですが、バーティノフマスクでそれを感じたことはあまりありません。どちらが正確に追い込めるのでしょうか。

オートガイドのセッティング

キャリブレーション

ASI AIRでは、キャリブレーションの設定はデフォルトでは前回の値が保存されています。この設定は不測の電源断などでもキャリブレーション結果を残しておくためのもので、キャリブレーションは基本、撮影毎に行います。

新しくオートガイドを開始する前には、忘れずにClearをタップして前回のキャリブレーションデータを削除します。

ASI AIRのオートガイド機能は、多くのユーザーに馴染みのあるPHD2とほぼ同じなので、PHD2ユーザーならすんなり使うことができるでしょう。ガイドカメラ画像上の星をタップしてガイド星を選んで、右の「十字線」アイコンをタップするとキャリブレーションが始まります。

ご存じの方には説明するまでもないのですが、キャリブレーションとは架台にガイド信号を送り、その結果星がどの方角にどれだけ動くかを測定するためのものです。上の画像はその過程のアニメGIF。西から東へ、北から南へ架台が動いているのがわかるでしょう。

取得されたキャリブレーション結果。

条件によってはこのキャリブレーションの際に、架台の反応が悪くて失敗することがあり、オートガイドの「お悩みの定番」の一つなのですが、今回はすんなり終了。ほっ。

キャリブレーションが終わるとガイドが自動的に始まります。RMSで1.96秒角。まあまあ安定していますね。

ガイドパラメータの設定

「ガイドのパラメータ設定はどうあるべきか」これもオートガイドの「お悩みの定番」の一つなのですが、今回は特にいじらず(たぶん^^;;;)デフォルトのまま。

ガイドパラメータのチューニングについては奥が深すぎるので本稿では割愛します^^;;;(*)

(*)ガイドカメラの性能が向上しシーイングのゆらぎを細かく検知できてしまうのですが、重い架台は基本的には「のろま」なので頻繁に信号を出されても追従できないため、「カメラの露出時間は長め」「ガイド信号の間隔(duration)は長め」「補正量(Aggr)は少なめ」が良い、というのが一般則だと理解しています。

赤枠の中がオートガイドの設定パラメータの指定です。

一つ、実戦的に使える機能が赤緯方向のガイドを止めたり、片方向限定にする設定です。ガイドカメラ画面に表示されている「Dec Mode」の右の緑の部分をタップすると「Auto/South/North/Off」の4通りのオプションが選択できます。「赤緯のガイドが暴れる」ような場合、ここをOffにする、片方向にする、という設定は試す価値があります。

ディザリングの設定

ASI AIRではディザリング撮影が可能。撮影コマ毎に望遠鏡の向きを細かく「散らして」固定ノイズを平均化する機能です。

この設定パラメータも「何が最適なのか」はよくわかっていないのですが^^;; とりあえず上の画像のように設定しました。Pixelsはランダムな移動量の最大ピクセル数、Stabilityは「ガイドが安定したと判断できる最大ガイドエラー量(*)」、Settle Timeはガイドの安定化を判断する時間です。上の設定の場合「直近5秒間のガイドエラーが2秒角以下になったとき」まで次の撮影開始を待つことになります。

(*)RMS ErrorのTotal値

Auto Runで放置撮影

Auto Runの設定

ASI AIRの便利な機能の一つ「Autorun」。撮影シーケンスを登録しておき、それらを自動で実行してくれるものです。「Autorun」の設定は撮影モードを「Autorun」に切り替えた状態で、上の図のアイコンをタップします。

複数のLightフレームやDarkフレームのシーケンスを登録できます(*)。

(*)今回はカラーカメラなのでLightフレームのシーケンスは一つですが、電動フィルターホイールを接続しているときは、LRGBなどの撮像をフィルターを切替えながら自動で行うことも可能です。

撮影シーケンス単位の設定。露出時間、ビニング、撮影枚数、シーケンスのタイプを指定します。露出時間と撮影枚数はリスト入力ですが、右の編集アイコンを指定すれば任意の秒数・枚数を指定可能です。

いざ撮影開始

ようやく準備完了、撮影本番開始です。Previewの撮像開始と同様、右の丸アイコンをタップするとAutorunが開始します。

Autorun実行中は全体のうち何枚の撮影が終わったかと、現在のコマが何秒経過しているかがリアルタイム表示(*)されます。

(*)WiFiが切断したときなどは最新の情報が表示されなくなりますが、再度接続が確立すれば最新化されます。

ディザリングとガイドグラフ

上の画像はディザリングを「あり」にして撮影したときのガイドグラフ。ディザリングの際に架台が動いたタイミングは、ガイドグラフ上に「Dither」の文字が表示されます。上の画像の場合、Dither動作後ほどなくガイドグラフが安定していることがわかります。

ここでの挙動は最影開始の最初の段階では注意して見ておくべきでしょう。ガイドグラフが安定するまでに時間がかかるようなら、ディザリングのパラメータを変えてみることや、ディザリングをあきらめるなどの対処をすると良いでしょう。

自動メリディアンフリップ(子午線越え)

最津影開始後約40分。馬頭星雲がそろそろ南中するころ。今回使用した架台ではハーフピラーを入れているのもあり、2時間分くらいの「イナバウワー」は平気なのですが、東西反転はパターンノイズの軽減効果もあるので、新機能の「自動メリディアンフリップ」を試してみました。

対象が南中直前になると、ガイドグラフの下に「Flipping in 198s」のような文字が表示されます。これはメリディアンフリップに入る前の「待機状態」で、数字がカウントダウンしていきます(*)。

(*)「待機状態」では撮影が中断されます。3分前からもう待機が始まるなんてちょっともったいない・・もう少し短くならないものでしょうか。

所定の時刻が来たらメリディアンフリップが自動的にに始まります。現在撮影中の対象にGOTOし、Plate Solovingした後、対象を中心に入れ直します。その後赤道儀が自動反転するはずなのですが、

なぜかValidate Targetで失敗を繰り返してしまいます。待てど暮らせど、リトライを繰り返すばかり・・・どうやら今回の構成(ビクセンSB10+ASI AIR Ver1.41β)の組み合わせでは正しく動作してくれないようです・・・(*)

(*)ZWO社にレポート予定です。

仕方ないのでメリディアンフリップを「Cancel」してイナバウアーで撮影を継続(*)。しかしこのあたりから時折雲が^^;;;;

(*)この状態では、ガイドグラフが更新されないなど不安定な動作が見られました。そのため、ASI AIRをいったん電源OFF/ONして再起動しています。

便利なはずのメリディアンフリップ、早く動作を確認したいものです。

雲の通過とその影響

いろいろ便利なASI AIRですが、不具合と雲には勝てません。当たり前ですが、雲でガイド星が隠されてしまうと「Star Lost」状態となってオートガイドが停止してしまいます。

ガイド星を失った状態でのプレビュー画面。星がおだんごになってしまいました^^ オートガイドはガイド精度を高めてくれますが、雲が流れるような状況ではより状況を悪くすることもあります。まあ曇ってる時点でよい撮影リザルトは得られないのですが^^;;;

ピント位置のずれの修正

メリディアンフリップが失敗したタイミングで、ピントを再チェックしてみました。この日は日中暖かく、薄明終了直後から撮影を開始したので急激な温度変化は予想どおりなのですが、ピントが大きくずれてしまいました(泣)。きっと後半のコマは没でしょうね・・・

ピントがずれたら直すのみ。再び調整してHFD 1.9に(*)。

(*)HFDはピントの状態を評価するよい指標になりますが、ゲインによっても値が変わってきます。同じ状態での最適ピント位置を相対的に評価するためのもので、絶対的な「良ピント位置」を評価できるものではないことに注意が必要です。

今回は使用していませんが、ASI AIRは電動フォーカサー(EAF)を制御することもできます。なかなか便利で使えるという情報を聞いているので、これもいつか試してみたいと思っています。

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最適なゲインと露出時間は?

ピント合わせ直し後の撮影では、ゲインを390から120に下げて撮影してみました。こちらの比較については今回は割愛します^^;;;

ダーク・バイアス・フラットの撮像

22時過ぎ、雲が増えてきたので撮影終了。残るはダークとバイアスです。こちらも「Autorun」で放置撮影が可能(*)。

(*)LightとDark/Biasのシーケンスを連続して実行することも可能なのですが、Light撮影終了後にシーケンスが中断するわけではなく、一気に実行されてしまうようです。実戦的にはキャップを被せないとDarkにはならないので、現状ではLightとDarkは別々に撮像する必要がありそうですが、シーケンスをあらかじめ登録しておけばチェックマークを入れたシーケンスだけを指定して実行できます。

Biasを撮像中。これはあっという間に終わります。

ダーク撮像中。こちらは2分20枚、正味40分の間待たなくてはなりません。ダーク撮像待ちはいつも辛いですよね・・・(*)

(*)ASI AIRの画面には現在のセンサーの温度が表示されています。温度管理をしっかり行って、事前に撮影しておいたダークライブラリを再利用するようにすれば、大幅に効率が上がるでしょう。

Gain390 2分1コマ

ASI294MCのダーク画像。この画像を見ての通り、右側に「アンプグロー」が出ています。この現象がある限り、CMOSカメラではダークは必須。面倒でもちゃんと撮影しましょう^^(*)

(*)新製品のASI6200では「ゼロ・アンプグロー」を謳っています。「回路の一部が弱赤外線光源となっていたものを改良した」とのことで、これまでもあった「センサーの近くで何かが光っているのではないか」という指摘を裏付けた形になりました。

 

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リザルト

ででん!できあがり

FSQ106ED(F5) ASI294MC gain390 2分×15枚 ダーク15、バイアス30 LPS-P2フィルター SXP赤道儀 ASI AIR PRO 福岡県小石原 センサー温度約10°C

ではリザルトを見ていきましょう。ででんといきなり完成画像。たった?30分の総露光時間ですが、なかなか良い感じではないでしょうか。ASI294MCに惚れ直しました^^ 気温は6°くらいとさほど低くはなかったのですが、非冷却モデルでもけっこういけるものですね。使用したLPS-P2は、比較的透過帯域の広い光害カットフィルターなので、燃える木星雲の色もあまり赤くなりすぎず、青い反射星雲もよく出ていますね。

今回の記事は画像処理のガチ解説ではないので、以下さらりと処理内容と天体CMOSカメラならではの注意点に触れておきます。

簡単にブラウズできないfitsファイル

筆者の環境では、別にインストールしたアプリのファイルアイコンが表示されています。

デジタルカメラで撮影された画像は、WindowsにせよMacにせよ、ファイル一覧上でサムネイルを見ることができますが、天体用CMOSカメラの吐き出す「fitsファイル」はそれができません(*)。

(*)これは何気にすごく不便です。fitsファイルはPhotoshopやLightRoomでも開くことができません。一番困るのは雲が入ったコマを視認しながら除外するような操作や、以前に撮った画像を「これなんだったけ?」と確認するような場合です。撮像ファイルは忘れないうちにしっかり整理しておかないと後でえらい目にあいます(経験者語る)。

DSS(DeepSkyStacker)、ステライメージ、Flat Aid Proなどのfitsが扱えるソフトを準備するのがまず必要条件です。

DSSでコンポジット

今回、画像のコンポジット処理にはDSSを使用しました。DSSでは、Lightフレーム単位で、星像径・自動検出された星の数・バックグラウンドの明るさなどの評価値を一覧することができます。没画像の選別はこの画面で行いました。温度変化によるピント変動で最後の4枚を捨てています。

ダークとバイアスは取得しましたがフラットは省略しました。4/3センサーのASI294MCの場合、周辺光量の豊富な光学系ならフラット処理はソフト補正でもなんとかなりました。

Flat Aid Proで自動ストレッチ

上の画像はコンポジット直後のfitsファイルを「Flat Aid Pro」で読み込んだ直後の状態です。天体用CMOSカメラの画像は、デジカメのような画像処理エンジンが介在しない「無調整」の画像なので、RGBのレベルとオフセットを自分でしっかり合わせなくてはならないのですが、FlatAidProの「自動レベル調整」はボタン1個でざっくり合わせてくれるのでとても便利です(*)。

(*)特に初心者にとっては再現性のある処理はなかなか難しく、こういう機能は大いに助かります。ステライメージやPixInsightなどのソフトにも類似の機能が備わっています。

この画面で「高輝度圧縮(対数現像・デジタル現像)」を合わせてやっておくと、高輝度部の白トビを抑制することができます。

自動ストレッチした後の画像。緑に転んでいた背景が「だいたい黒」になりました。

Photoshopで画像処理

PlatAidProで自動ストレッチした後は、Photoshopで処理を行いました。Camera rawの周辺減光補正で周辺を持ち上げて、トーンカーブ一発で強調をかけます。これだけでここまで出てきます。

この後、細かな色かぶりの補正やさらなる強調を掛けていきますが、細かいところは今回は省略します。

Topaz Denise AIで最終仕上げ

総露出が30分なので強調した画像はけっこうノイジーです。そこで最近流行の「Topaz Denoize AI」を使用してノイズ低減を行いました。操作は簡単でいくつかのオプションとスライダーだけです。効果は予想以上に大きく、ごらんのように暗黒部のザラザラが劇的になめらかになりました(*)。

(*)Topaz Denoize AIはハマると効果絶大ですが、外すと余計に悪くなることもあるようです。

そのほかの注意

スマホ(タブレット)が命

スマホから全ての操作を行うASI AIRでは、スマホが死んだら何もできなくなります。寒冷地では電池が弱ってすぐ残量0%になることもあります。スマホ専用のモバイルバッテリーを準備し給電状態にしておくのが吉です。

スマホが良いのか、画面が大きなタブレットが良いのかは個人の好みもあり一概にはいえませんが、筆者が実際に使った感覚では、画面が小さくてもスマホの方が使いやすく感じました。何かにつけて「片手で保持して操作できる」のは大きいです。

ピント合わせでは大きなタブレットの方が便利かと思っていましたが、実際やってみると大差ありませんでした。タブレットが便利なのはヒストグラムを細かく調整したいときや、スマホではネットにアクセスして暇つぶしをしたいような場合でしょう^^;;;

筐体が生きているかぎりアプリが死んでも(たぶん?)大丈夫

ソフトウェアなので、クラッシュすることもあります。今回もメリディアンフリップの失敗後に一度クラッシュしてしまいました。しかし、撮像などの処理は筐体本体側で動作しているので、アプリをを終了させたり、クラッシュしたとしても「基本的には」ASI AIRは動作を続けています(*)。

(*)でも動作が不安定なときは、筐体側の再起動が必要なことも・・あるかもしれません。

このあたりの信頼性については、今回は未検証です。とりあえず普通には使えていますが、少なくとも現段階では不測の事態は起きうると思って使うべきでしょう。

WiFiはどこまで届くか

ネットワークが切れた状態のアラート表示。「家出」のLineメッセージは今回の記事とは関係ありません^^;;;

撮影中にASI AIR 筐体から離れた場所に移動すると、WiFiの通信が切れることがあります。これは通常使用範囲での想定事項です。通信が切れてもASI AIR筐体は普通に動作しています。電波の届くところに移動すれば、アプリは筐体に再接続して普通に動作が再開します。


ただし、別の自動接続に設定したWiFiネットワークが存在する場合、そちら側に自動接続してしまうので、ASI AIR筐体との接続は自動復帰しません。今回の撮影現場ではビクセンの「ポラリエU」を一緒に使っていたので、そちら側に自動接続してしまった状態の画面。

スマホの設定画面で接続先ネットワークをASI AIRに切り替えれば接続は復帰します。常識の範囲内ではあるのですが、スマホのWiFiネットワーク設定の切替方法はよく確認しておくべきでしょう。

まとめ

21時ごろから断続的に雲が・・・雲には勝てません^^;;

いかがでしたか?

自動メリディアンフリップが動作してくれなかったものの、それを除けばASI AIRによる撮影はほんとうに楽です。デジタルカメラとはいろいろ勝手は違いますし、どちらが敷居が低いか、と問われると間違いなくデジタルカメラですが、ASI AIRを使用することで天体用CMOSカメラ固有のストレスはかなり減るといえるでしょう。

少なくとも天体撮影に威力を発揮する天体用CMOSカメラを使うかぎりにおいては、ASI AIRは最もシンプルで使いやすいソリューションといってよいと思います(*)。スマホ・タブレットだけでOK、パソコン要らずで電源にも優しい。豊富な機能でありながら直感的でシンプルな操作。

(*)デジタルカメラ専用ならステラショット、PCベースのアプリならAPTなどがライバルでしょう。

ただし、アーリーアダプタとして飛びつくなら、それなりの心構えが必要です。これまでのASI AIRアプリのバージョンアップを見てみると、新規機能の初期バージョンにはバグが普通にあります。ASI AIRではバグ対応は早く、時間の問題で解決してはいるのですが、そういうものだという広い心で接することが求められます(*)。

(*)より積極的に不具合を報告しつつ、自分の「こうあるべき理想」を実現すべく、開発元に働きかけていく、開発そのものに参加していくようなアプローチも面白いかもしれません。FacebookのASI AIRコミュニティには日本人を含む世界各国のユーザーが参加していて、様々な事例やテストレポートなどが共有されています。

いずれにしても、ASI AIRはアプリ側がこれからも洗練・安定・高機能化していくことでしょう。どのタイミングで参入するかは貴方の判断次第ですが、天体用CMOSカメラを使うのなら非常に有力な選択肢だと感じました!

次回は「実践的電視観望編」を予定しています。また、天候と時間が許せば、デジタル一眼カメラを使用した撮影もレポートしたいと思います。お楽しみに!

(広告)天体用CMOSカメラのアクセサリも星見屋

  • 本連載は星見屋.com様に機材貸与および特別協賛をいただき、天文リフレクション編集部が独自の責任で企画・制作したものです。文責は全て天文リフレクションズ編集部にあります。
  • 本記事で使用したASI AIR PROは評価機です。また使用したソフトはver1.4.1のベータ(4.66)版です。本記事における不具合に関する記述は2/15時点でのものです。製品版での動作と異なる可能性があります。
  • 記事に関するご質問・お問い合わせなどは天文リフレクションズ編集部宛にお願いいたします。
  • 本記事は極力客観的に実視をもとに作成していますが、本記事によって発生した読者様の事象についてはその一切について責任を負いかねますことをご了承ください。
  • 文中の商品名・会社名は各社の商標および登録商標です。
  • 機材の価格・仕様は執筆時(2020年2月)のものです。
  • 「ASI AIR PRO」のご購入およびご購入のご相談は星見屋.com様にお願いいたします。

  https://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2020/02/a5035df695d996ff38d0561b5b18cb14-1024x768.jpghttps://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2020/02/a5035df695d996ff38d0561b5b18cb14-150x150.jpg編集部レビュー天体用カメラ天体用カメラASI AIRこの記事の内容星見屋.com 特別協賛!(*) 「ASI AIR」がさらにパワーアップした第2世代の製品「ASI AIR PRO」。集中連載の第3回は「撮影実践編」。「ASI AIR PRO」やCMOSカメラに興味はあるけど、これまでのやり方とどう勝手がちがうのか心配・・・そんな方のために、撮影の全シーケンスを詳細にご紹介したいと思います! (*)特別協賛とは、本記事のサムネイルおよび記事中にスポンサー様の特別広告枠を掲載することにより対価をいただく形です。記事そのものの編集ポリシーは通常の天リフ記事と同等です。 なお、今回使用したアプリ「ASI AIR」はバージョン1.41のβ(9)。2/8にアプリストアにリリースされているバージョン1.41より少し新しいですが、あくまでβ版。不具合を含めて、詳細は製品版と異なる可能性があることをあらかじめお断りしておきます。 撮影準備 機材のセットアップ 今回使用したシステム構成。主砲はFSQ106ED(F5)、メインカメラはASI 294MC。ガイドスコープは親子亀でタカハシのGT-40。ガイドカメラはASI120MM-mini。 ASI AIR筐体は「孫亀」としてガイド鏡の上に設置しました。ガイドカメラとAIR筐体は近いので問題ないのですが、メインカメラはちょっと遠く、ケーブルの向きによっては50cmの距離ではやや短めでしたが、アルカスイスクランプの組み方を調整すればなんとかなりました。この点でも「ASI AIR PRO」は従来よりも柔軟なシステム構成が可能だと感じました(*)。 (*)ASI AIRは結線が楽になるのがメリットですが、筐体の設置場所には注意が必要です。事前にしっかり仮組みしてチェックしておきましょう。 鏡筒外に這うケーブルは12Vの電源ケーブルと、今回使用したSXP赤道儀の「スターブックテン(SB10)」と接続するLANクロスケーブルの2本です(*)。 (*)赤道儀に12V電源のハブが付くとさらに結線がシンプルになりますね。今後の新製品にはそういう機能も期待したいところです。 https://twitter.com/tenmonReflexion/status/1228850147674611712 上記構成には光学ファインダーは含まれていません。筆者の場合は以前から光学ファインダーはほぼ使用しないのですが、簡単なアンケートを取ってみたところ、アライメント・導入で半数くらいのユーザーは光学ファインダーを使用されているようです。 ASI AIRを使用する場合、この半数くらいの人に対してもほぼ光学ファインダーは不要となることでしょう。導入もアライメントも、ASI AIRのPlate Solvingでこと足りるからです(*)。 (*)唯一、後述するPlate Solve前の主鏡のピント合わせの際にはファインダーがあると便利です。 極軸合わせ ASI AIRには極軸合わせ支援機能(Polar alignment:PA)も入っています。こちらもちゃんと使えるのですが(*)、今回は慣れた極軸望遠鏡を使用しました。 (*)PA機能はメインカメラのPlate solvingを使用します。このため、手順としてはまずASI AIRに接続しメインカメラのピントを合わせておく必要があります。PA機能で使用するPlate Solvingでは、長すぎる焦点距離(画角)ではPlate Solvingができないため、場合によっては画角のより広いガイド鏡(ガイドカメラ)に切り替えて行う必要があるかもしれません。 ASI AIR筐体の起動 「ASI AIR PRO」からは、シーソー型の電源スイッチが付きました。電源ケーブルをつないでスイッチONでASI AIRが起動し、10秒ほど経つとビープ音が鳴って(*)WiFiランプが点灯します。 (*)ビープ音はもう少し活用してほしい気がします。例えば後述するMedirian Flipのスタンバイ開始の際、Autorunのシーケンス終了時などでは鳴らしてほしいものです。 アプリASI AIRへの接続 ASI AIRが起動したら、使用するスマホ・タブレットをASI AIRのWiFiに接続します。スマホのWiFiを自動接続に設定しておけば、他にWiFiアクセスポイントのない遠征地なら自動的に繫がるのですが、WiFi利用の機器が増えている昨今、接続先はしっかり確認しましょう。SSID(WiFiネットワークの名前)も上の画像はデフォルトですが「自分のこの機器」だとわかる名前に変更しておくべきです(*)。 (*)有名な遠征地では、ネットワーク一覧に「ASIAIR_XXXXX」がずらりと並ぶ状況はすぐにでも来ると予測します。 WiFiに接続したらアプリASI AIRを起動します。起動するとカメラ・架台の設定画面が表示されます。「Main」と「Guide」の2つのカメラはUSBで接続したカメラを一覧から選ぶだけですが、焦点距離(Focal Length)は後述するPlate Solvingやオートガイドで重要な設定値となるのできちんと入力する必要があります(*)。 (*)iOSでは日本語入力モードで半角数字を入れるとエラーになってしまいました。改修されるかも知れませんが注意が必要です。Main Scopeの焦点距離はPlate Solvingの際に正確に計算された値で自動更新されるので、ざっくりでも大丈夫そうです。 架台の設定は自動認識するわけではないので、使用する赤道儀を選択リストから選びます。ここまでの接続確認は事前にやっておくのが吉です。 スターブックテンとの接続 スターブックテン(SB10)とASI AIRは、クロスケーブルで有線LAN接続します。「Telescope Setting」の画面で架台のIPアドレスを設定します。一度入力しておくとASI AIRアプリが前回の設定として記憶してくれるようです。 SB10のIPアドレスは「架台の設定」のメニューから確認できます。 こちらは既知の一般的ノウハウですが、スターブックテンの「架台の設定/架台の種類」で「極軸を合わせた赤道儀」に設定しておきます(*)。 (*)極軸のずれに対する補正量を、アライメントの結果から計算して、赤道儀を先回りして動かす機能ですが、ASI AIRでPlate Solvingを使用する場合は、導入の際に極軸のずれ量を補正する必要もなくなります。 ちなみにASI AIRでは、ビクセンのSB10でけでなく、タカハシ・SynScan(Sky-Wather)など、20を超えるメーカーの何百もの赤道儀に対応しています。 対象の導入とピント合わせ まず金星にGOTO さて、準備が終わりました。SB10を使用している状態では、自動導入はASI AIRからでも、SB10からでも、どちらからでも可能。 使う前は「どっちからでもやれるのは混乱の元ではないか」と心配していましたがそんなことはありませんでした。ASI AIRと併用してもSB10の便利さは変わりません。まずは使い慣れたSB10で、いきなり金星に向けてGOTOしてみます(*)。 (*)SB10の場合、事前のアライメントは特に不要でした。Plate Solvingの際に「sync mount」すれば位置情報が架台に同期されます。 GOTO直後の状態。金星の方角に向きましたね。でもアライメントはしていないので、中心には導入されていないはず。 第一関門・メインカメラのピント合わせ ではASI AIRの画面を見てみましょう。まだ何もしていないので、何も表示されていません^^ 「Preview」画面で右の丸い撮像ボタンを押します。露出時間はまず1秒。 撮像が終わるとスマホに画像がすぐ転送され表示されますが、普通に金星は視野外でした^^;;; 金星よ、どこだ!それどころか星が一つも見当たりません。理由は賢明な読者諸氏ならおわかりでしょう、ピントが合っていないからです。この状態からピント位置を探し出すのが第一関門(*) (*)最初に使うときは間違いなくハマります。筆者が初めての鏡筒で初めてASI AIRを使ったときはこれで小一時間ハマりました。事前に試写してピント位置に印を付けておくのが大吉です。 ボケていても何かの星像が出てくれるとよいのですが、そうでないときはここから地道に星を「発見」する必要があります。デジタルカメラのライブビューは感度が低く(*)星があまり見えない反面、ほとんど遅延がないので比較的簡単に星が見つかるのですが、CMOSカメラの場合はそうはいきません。気短にピント位置を動かすと合焦位置をすぐ飛び越してしまいます。 (*)EOS 6Dはけっこう暗いですが、EOS...編集部発信のオリジナルコンテンツ